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特許7443389切削ツール、切削ツールを製造するための方法、及びワークピースの加工のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】切削ツール、切削ツールを製造するための方法、及びワークピースの加工のための方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20240227BHJP
   B23P 15/34 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23P15/34
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021552789
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055505
(87)【国際公開番号】W WO2020182534
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】19162539.1
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591106875
【氏名又は名称】セコ ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パレッタ, マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマンス, ハンス
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-114308(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108927562(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2002-0077582(KR,A)
【文献】米国特許第4285618(US,A)
【文献】中国実用新案第201161304(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00-9/00;
B23P 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコアを含むワークピースの加工のための、縦方向軸(A)を有し、前記縦方向軸(A)を中心に回転の方向(R)に回転可能である、回転可能な切削ツール(1)であって、
前端(2)と、
前記前端(2)と反対側の後端(3)であって、前記切削ツールは、ツールホルダ又はマシンスピンドルに固定されるよう適合されている、後端(3)と、
前記前端(2)と前記後端(3)との間に、前記縦方向軸(A)の周りを伸長する周囲面(4)と、
前記周囲面(4)に形成された、切り屑を排出するための一式のらせんフルート(5)であって、前記前端(2)から前記後端(3)に向かって、前記縦方向軸(A)に関して、45°≦α≦65°である第1のらせん角度αにて伸長し、第1の深さ(d)を有する一式のらせんフルート(5)と、
一式のらせんリッジ(6)であって、前記らせんリッジ(6)はそれぞれ、第1の関連するらせんフルート(5’)と第2の関連するらせんフルート(5’’)とを含むペアの隣接するらせんフルート(5’、5’’)の間に関連付けられて形成されており、前記第2の関連するらせんフルート(5’’)は、前記回転の方向(R)において、前記第1の関連するらせんフルート(5’)の後ろに位置する、一式のらせんリッジ(6)と、
前記周囲面(4)に形成され、前記第1の深さ(d)より浅い第2の深さ(d)を有し、前記らせんフルート(5)により割り込まれるようになっている少なくとも1つのらせん溝(7)と、
を含み、
前記少なくとも1つのらせん溝(7)は、前記らせんリッジ(6)と交差し、前記らせんリッジ(6)のそれぞれの上に複数のランド(8)が形成されるようになっており、前記ランド(8)はそれぞれ、前記第1の関連するらせんフルート(5’)と前記第2の関連するらせんフルート(5’’)との間を伸長し、前記らせんリッジ(6)のそれぞれの上に複数の切削歯(11)が形成されるようになっており、前記切削歯(11)はそれぞれ、前記複数のランド(8)のペアの関連して隣接するランド(8’、8’’)により、少なくとも区切られており、前記ペアの関連して隣接するランド(8’、8’’)は、第1の関連するランド(8’)と第2の関連するランド(8’’)とを含み、前記第2の関連するランド(8’’)は、前記前端(2)から、前記第1の関連するランド(8’)よりも遠い軸方向の距離に位置する、回転可能な切削ツール(1)であって、
前記少なくとも1つのらせん溝(7)は、前記縦方向軸に関して、90°<β≦100°である第2のらせん角度βにて伸長し、
前記複数の切削歯の各切削歯(11)は、
前記第1の関連するランド(8’)と前記第2の関連するランド(8’’)との間の遷移部に形成されている第2のリッジ(10)と、
前記第1の関連するランド(8’)と前記第1の関連するらせんフルート(5’)との間の遷移部に形成された切削エッジ(9)と、
前記第2の関連するランド(8’’)と前記第1の関連するらせんフルート(5’)との間の遷移部に形成されたクリアランスエッジ(16)と、
を含み、
前記第2のリッジ(10)と、前記切削エッジ(9)と、前記クリアランスエッジ(16)と、は、前記切削歯(11)の半径方向に最も外側の点を構成し、前記切削ツールの切削半径(r)にて置かれている歯先(12)に合流することを特徴とする、
回転可能な切削ツール(1)。
【請求項2】
複数の歯の前記切削歯(11)のそれぞれの前記切削エッジ(9)は、前記縦方向軸に鉛直する面にて見た際に、前記歯先(12)から、前記縦方向軸(A)と前記歯先(12)との間を伸長する半径方向の線に関して、角度γにて、半径方向に内向きに伸長する、請求項1に記載の切削ツール。
【請求項3】
前記縦方向軸に鉛直する面にて見た際に、-20°≦γ≦+30°、より好ましくは、-5°≦γ≦+20°、最も好ましくは、γ=0°である、請求項2に記載の切削ツール。
【請求項4】
前記第2のリッジはそれぞれ、前記歯先(12)と一致する第1の端(13)と、前記回転の方向(R)において、前記第1の端(13)の後ろにある第2の端(14)と、を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項5】
前記第2のリッジのそれぞれの前記第2の端と前記縦方向軸(A)との間の半径方向の距離は、前記第2のリッジのそれぞれの前記第1の端と前記縦方向軸(A)との間の半径方向の距離以下である、請求項4に記載の切削ツール。
【請求項6】
前記少なくとも1つのらせん溝(7)の伸長の方向に沿って測定される、前記複数のランドのそれぞれの最も広いランド幅(w)は、前記少なくとも1つのらせん溝(7)の伸長の方向に沿って測定される、2つの隣り合うらせんリッジ(6)上にある2つの前記ランドの間の最も短い距離(w’)の30%未満、好ましくは、20%未満、より好ましくは、15%未満、最も好ましくは、10%未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項7】
前記少なくとも1つのらせん溝(7)の伸長の方向に沿って測定される、前記複数のランドの各ランド(8)は、前記ランド(8)がその上に置かれる、前記らせんリッジ(6)の伸長の方向に沿って変化するランド幅(w)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項8】
同じ前記らせんリッジ(6)上に置かれるペアの隣接する前記第2のリッジ(10’、10’’)のそれぞれの間において、前記ペアの隣接する第2のリッジ(10’、10’’)は、第1の関連する第2のリッジ(10’)と第2の関連する第2のリッジ(10’’)とを含み、前記第1の関連する第2のリッジ(10’)は、前記第2の関連する第2のリッジ(10’’)より、前記前端(2)に近く位置し、前記ランド幅(w)は、前記第1の関連する第2のリッジ(10’)から、前記第2の関連する第2のリッジ(10’’)に向かって広くなる、請求項7に記載の切削ツール。
【請求項9】
前記第1の深さ(d)は、前記らせんフルートのそれぞれの表面と前記縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離(r)が、前記切削半径(r)の55%から70%、より好ましくは、前記切削半径(r)の60%から65%であるようになっている、請求項1から8のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項10】
前記第2の深さ(d)は、前記複数のランドの各ランド(8)の表面と前記縦方向軸(A)との間の最も短い半径方向の距離(r)が、前記切削半径(r)の85%から99.9%、より好ましくは、前記切削半径(r)の92%から99%、最も好ましくは、前記切削半径(r)の95%から97%であるようになっている、請求項1から9のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項11】
前記複数のランドの各ランド(8)は、曲面の形態である、請求項1から10のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項12】
前記切削ツール(1)の軸方向に測定される、前記切削ツール(1)の2つの前記歯先(12)の間の最も短い軸方向の距離yは、0mm<y≦0.3mmである、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項13】
前記最も短い軸方向の距離(Y)は、前記らせんリッジ(6)の最初のものの上に置かれた第1の歯先(12’)と、前記回転の方向(R)において、第1のらせんリッジ(6)の直後に置かれた、前記らせんリッジ(6)の2番目のものの上に置かれた第2の歯先(12’’)と、の間にて測定され、前記第2の歯先(12’’)は、前記第1の歯先(12’)よりも、前記前端(2)に近く置かれる、請求項12に記載の切削ツール。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の切削ツールを製造するための方法であって、
円形のベースを有する円筒状のツールブランクを提供することと、
第1の研削面と、好ましくは、前記第1の研削面に関して、35°から55°の角度θにて形成されている第2の研削面と、を有する第1の砥石車を使用して、前記一式のらせんフルート(5)を形成することと、
第1の研削面と、好ましくは、前記第1の研削面に関して、10°から20°の角度θにて形成されている第2の研削面と、を有する第2の砥石車を使用して、前記少なくとも1つのらせん溝を形成することと、
を含む、方法。
【請求項15】
ハニカムコアを含むワークピースの加工のための方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の切削ツールを提供することと、
同時に、前記切削ツールを前記回転の方向(R)に回し、前記切削ツールを、前記ワークピースに関して送り方向に移動させ、又は、前記ワークピースを、前記切削ツールに関して移動させ、前記切削歯の前記切削エッジの少なくともいくつかが、前記ハニカムコアとかみ合うようにすることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに係る、ハニカムコアを含むワークピースの加工のための回転可能な切削ツールに関する。特に、排他的ではないが、切削ツールは、ハニカムコアからなるワークピースの加工に適している。本発明はさらに、そのような切削ツールを製造するための方法と、ハニカムコアを含むワークピースの加工のための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
高い強度を比較的低い重量にて提供するそれらの能力により、ハニカム構造は、航空宇宙産業でのアプリケーションに一般的に使用される。典型的には、ハニカム構造は、サンドウィッチ構造を形成するために、繊維強化塑性材料などの薄いシート間に積層されたハニカムコア材料を含む。そのような構造の加工のために、回転可能な切削ツールが一般的に使用される。回転可能な切削ツールは、その切削ツールの縦方向軸の周りを伸長するらせんリッジ上に形成された複数の周辺切削エッジを有する。
【0003】
DE102009015262は、そのような積層されたハニカム構造の加工のために使用されてよい切削ツールを開示する。切削ツールの周囲面においては、切り屑を排出するための、一式の比較的深いらせんフルートが伸長し、比較的浅い溝が、らせんフルートに関しての角度にて伸長する。2つの隣接する深いらせんフルートの間の遷移部においては、線形の切削エッジが形成され、これは、らせんフルートに沿って伸長する。切削エッジは、浅い溝により形成されたランドにより割り込まれている。このツール構成は、繊維強化塑性層を含む積層構造の加工に適した、比較的強い切削エッジをもたらすが、加工中に大きな切削力と発熱をももたらし、したがって、ツール寿命を短くし、加工コストを上げる。
【0004】
ハニカムコアを含むものの、サンドウィッチ構造に必ずしも含まれないワークピースの加工のためには、それを用いることで、長いツール寿命と改善された加工の経済性とを達成できる切削ツールを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の主な目的は、従来技術の不都合な点の少なくとも1つを克服又は緩和すること、若しくは、有益な代替品を提供することである。特に、その目的は、ハニカムコアを含むワークピース、又は、ハニカムコアからなる、つまり、サンドウィッチ構造に含まれないハニカムコアからなるワークピースの加工に適した切削ツールを提供することである。さらに、その目的は、従来技術による切削ツールと比較して、加工の経済性が改善される、ツール寿命が改善されたそのような切削ツールを提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様によると、その主な目的は少なくとも、請求項1の特徴部に画定された特徴を示す、はじめに画定された切削ツールを用いて達成される。
【0007】
切削ツールは、縦方向軸を有する。この縦方向軸を中心に、切削ツールは回転の方向に回転可能である。切削ツールは、
前端と、
前端と反対側の後端であって、切削ツールは、ツールホルダ又はマシンスピンドルに固定されるよう適合されている、後端と、
前端と後端との間に、縦方向軸の周りを伸長する周囲面と、
周囲面に形成された、切り屑を排出するための一式のらせんフルートであって、前端から後端に向かって、縦方向軸に関して、45°≦α≦65°である第1のらせん角度αにて伸長し、第1の深さを有する一式のらせんフルートと、
一式のらせんリッジであって、らせんリッジはそれぞれ、第1の関連するらせんフルートと第2の関連するらせんフルートを含むペアの隣接するらせんフルートの間に関連付けられて形成されており、第2の関連するらせんフルートは、回転の方向において、第1の関連するらせんフルートの後ろに位置する、一式のらせんリッジと、
周囲面に形成され、第1の深さより浅い第2の深さを有し、らせんフルートにより割り込まれるようになっている少なくとも1つのらせん溝と、
を含み、
少なくとも1つのらせん溝は、らせんリッジと交差し、らせんリッジのそれぞれの上に複数のランドが形成されるようになっており、ランドはそれぞれ、第1の関連するらせんフルートと第2の関連するらせんフルートの間を伸長し、らせんリッジのそれぞれの上に複数の切削歯が形成されるようになっており、切削歯はそれぞれ、複数のランドのペアの関連して隣接するランドにより少なくとも区切られており、ペアの関連して隣接するランドは、第1の関連するランドと第2の関連するランドとを含み、第2の関連するランドは、前端から、第1の関連するランドよりも遠い軸方向の距離に位置する。
【0008】
このツールは、少なくとも1つのらせん溝は、縦方向軸に関して、90°<β≦100°である第2のらせん角度βにて伸長し、複数の切削歯の各切削歯はそれぞれ、
第1の関連するランドと第2の関連するランドとの間の遷移部に形成された第2のリッジと、
第1の関連するランドと第1の関連するらせんフルートとの間の遷移部に形成された切削エッジと、
第2の関連するランドと第1の関連するらせんフルートとの間の遷移部に形成されたクリアランスエッジと、
を含み、
第2のリッジと、切削エッジと、クリアランスエッジと、は、切削歯の半径方向に最も外側の点を構成し、切削ツールの切削半径にて置かれる歯先に合流することを特徴とする。
【0009】
切削ツールは、前端から後端に向かって伸長する切削部位を有する。切削部位は、切削歯を含む。切削ツールはまた、後端から前端に向かって伸長する載置部位を有してよい。切削ツールは、ツールホルダに直接、又は、中間部を介して固定されるよう適合されていてよいが、ホルダと一体に形成されてもよい。切削ツールは、典型的には、ツールホルダ又はマシンスピンドルに、後端をツールホルダ又はマシンスピンドルに向けて固定されるよう適合されていてよい。
【0010】
縦方向軸は、切削ツールの中心軸である。
【0011】
角度αは、らせんフルートの少なくとも1つに対して、又は、一式のらせんフルート内のすべてのらせんフルートに対して、一部に沿って、又は、切削部位全体に沿って、一定であってよい。
【0012】
特に、排他的ではないが、らせんフルートは、互いに同一又は実質的に同一であってよい、及び/又は、互いから等しく離れていてよい。少なくとも2つのらせんフルートが、互いに並列であってよい。
【0013】
特に、排他的ではないが、1つのらせんフルートの第1の深さは、そのエクステンションに沿って一定であってよい。特に、排他的ではないが、一式のらせんフルート内のすべてのらせんフルートは、それらのエクステンションに沿って一定の第1の深さを有してよい。
【0014】
複数のランドに含まれるランドはそれぞれ、互いに同一又は実質的に同一であってよい。代替的に、1つのらせんリッジに沿う複数のランドに含まれるランドはそれぞれ、互いに同一又は実質的に同一であってよい。
【0015】
第2のらせん角度βが、90°<β≦100°の範囲内にあり、第1のらせん角度αが、45°≦α≦65°の範囲内にある場合、これらは共に、比較的低い切削力をもたらす。らせん溝を生成するためには、角度βは、90°超でなければならない。さらに、角度βが90°に等しいと、溝はいずれのピッチも有さなくなり、これは、切削歯と歯先との好ましくない軸方向の分布をもたらすであろう。また、βが100°超であれば、切削ツールに関連する恩恵が損なわれる。比較的低い切削力により、発熱は比較的少量となり、これにより、ツール寿命が伸び、したがって、加工の経済性も上がる。
【0016】
切削エッジは、比較的浅いらせん溝とらせんフルートとにより形成されたランドの間の遷移部に形成されるため、及び、第2のリッジは、1つのらせんリッジに沿って互いに隣接して形成された2つのランドの間の遷移部、つまり、交差部に形成されるため、2つの隣接するらせんフルートの間の交差部、つまり、遷移部に形成される線形の切削エッジはない。その代わりに、隣接するらせんフルートは、らせんリッジ上に形成されたランド、つまり、一連のランドにより互いから分けられる。ここでは、隣接するランドは、それらの間の遷移部、つまり、交差部に形成された第2のリッジによってのみ分けられる。したがって、加工中に発生する切削力は、らせんフルートに沿って伸長する線形の切削エッジを含む切削ツールと比較して、減少し得る。切削アクションはしたがって、2つの隣接するらせんフルートの間の交差部に形成された線形の切削エッジの代わりに、ランドとらせんフルートとの間の遷移部に形成された切削エッジにより行われる。ランドとらせんフルートとの間の遷移部に形成された切削エッジは、そのような線形の切削エッジより適した伸長の方向を有することがわかっている。
【0017】
提案する切削ツールの構成は、ハニカムコアの加工に特に適する、比較的鋭い切削エッジをもたらす。
【0018】
少なくとも1つのらせん溝が、らせんフルートと同じ軸方向のエクステンションを有する必要は必ずしもない。らせん溝(単一又は複数)は、より短い軸方向のエクステンションを有してよい。これにより、切削ツールの1つ又はそれ以上の部位(単一又は複数)に、異なる切削ジオメトリが提供されてよい。これは、例えば、薄い層の間に挟まれたハニカムコア材料を含む積層構造の加工に適する場合がある。この場合、異なる切削ジオメトリは、繊維強化ポリマーの加工により適する、より強い切削エッジを提示する切削ジオメトリであってよい。例えば、異なる切削ジオメトリを持つ部位は、切削ツールの前端に関連して、及び/又は、切削ツールの後端の近くに提供されてよい。
【0019】
切削ツールは、切り屑を排出するための、4つ、又は5つ、又は6つ、又はそれ以上のらせんフルートを含んでよい。切削ツールは、1つの実施形態によると、8つのらせんフルートを含んでよい。
【0020】
切削ツールは、切削ツールの前端に形成された少なくとも2つの前部切削エッジをさらに含んでよい。前部切削エッジの数は、好ましくは、切り屑を排出するためのらせんフルートの数より少なくてもよい。
【0021】
第1のらせん角度αは、45°と65°との間にあるべきである。切削力の好ましい方向、したがって、満足のできる切削アクションを確かにするために、45°の下限が選択される。第1のらせん角度αが45°より小さいと、得られる切削力の方向は、好ましくないものとなる。より大きいらせん角度を持つフルートを作成することが難しくなるため、65°の上限が選択される。
【0022】
1つの実施形態によると、複数の歯の切削歯のそれぞれの切削エッジは、縦方向軸に鉛直する面にて見た際に、歯先から、縦方向軸と歯先との間を伸長する半径方向の線に関して、角度γにて、半径方向に内向きに伸長する。切削エッジのそのようなエクステンションは、2つのらせんフルートの間の交差部に形成された切削エッジのエクステンションよりも、ハニカムコアの加工に好ましいことがわかっている。ここでは、切削エッジは、ツールの周囲に伸長し、半径方向に内向きには伸長しない。
【0023】
さらなる1つの実施形態によると、角度γは、縦方向軸に鉛直する面にて見た際に、-20°≦γ≦+30°、より好ましくは、-5°≦γ≦+20°、最も好ましくは、γ=0°であるようになっている。最も適する値は、-20°≦γ≦+30°であることがわかっている。角度γが-20°未満であれば、達成される切削アクションはあまり好ましいものではなく、より多くの熱が生じる。角度γが+30°超であれば、弱すぎる切削歯となってしまう。より改善された性能は、-5°≦γ≦+20°の際にみられる。製造の観点からは、γ=0°が好ましい。回転の方向において、歯先に隣接して、縦方向軸と歯先との間に伸長する半径方向の線の後ろに伸長する場合、つまり、切削ツールの回転の方向に見られるように、切削エッジに対する接線が、半径方向の線の後ろに伸長する場合、角度γは、正であると画定される。
【0024】
1つの実施形態によると、第2のリッジはそれぞれ、歯先と一致する第1の端と、回転の方向において、第1の端の後ろにある第2の端と、を有する。第2のリッジは、好ましくは、直線を形成してよい、及び/又は、少なくとも1つのらせん溝の伸長の方向に並列するエクステンションを有してよい。
【0025】
1つの実施形態によると、第2のリッジのそれぞれの第2の端と縦方向軸との間の半径方向の距離は、第2のリッジのそれぞれの第1の端と縦方向軸との間の半径方向の距離以下である。好ましくは、回転の方向において、第1の端の後ろに置かれる第2のリッジ上のすべての点は、縦方向軸からの、第1の端より短い半径方向の距離上に置かれ、加工中に、第2のリッジとワークピースの表面との間にクリアランスが提供されるようになっている。これは、製造の観点から有益であり、切削力に良い影響がある。これは、切削力が減ることを意味する。
【0026】
1つの実施形態によると、少なくとも1つのらせん溝の伸長の方向に沿って測定される、複数のランドのそれぞれの最も広いランド幅は、少なくとも1つのらせん溝の伸長の方向に沿って測定される、2つの隣り合うらせんリッジ上にある2つのランドの間の最も短い距離の30%未満、好ましくは、20%未満、より好ましくは、15%未満、最も好ましくは、10%未満である。
【0027】
1つの実施形態によると、少なくとも1つのらせん溝の伸長の方向に沿って測定される、複数のランドの各ランドは、ランドがその上に置かれる、らせんリッジの伸長の方向に沿って変化するランド幅を有する。
【0028】
1つの実施形態によると、同じらせんリッジ上に置かれるペアの隣接する第2のリッジのそれぞれの間において、ペアの隣接する第2のリッジは、第1の関連する第2のリッジと第2の関連する第2のリッジとを含み、第1の関連する第2のリッジは、第2の関連する第2のリッジより、前端に近く位置し、ランド幅は、第1の関連する第2のリッジから、第2の関連する第2のリッジに向かって広くなる。したがって、ランド幅は、第2のリッジから離れる方向に、つまり、クリアランスエッジに沿って、切削ツールの前端から離れて移動させる際に長くなる。これにより、クリアランスエッジはそのクリアランス機能を取得し、同時に、少なくとも1つのらせん溝とランドとが、容易に生成される。
【0029】
1つの実施形態によると、第1の深さは、らせんフルートのそれぞれの表面と縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離が、切削半径の55%から70%、又は、切削半径の60%から65%であるようになっている。55%から70%の上記の間隔内では、ツールは最高の生産性を有する。らせんフルートのそれぞれの表面と縦方向軸との間の最も短い距離が、切削半径の55%未満であれば、切削ツールは良好な切り屑排出能力を有する。なぜなら、らせんフルートが深いからである。しかし、速い送り速度に耐えるにはツールが弱すぎる場合があり、その結果として、送り速度を遅くしなければならなくなる。らせんフルートのそれぞれの表面と縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離はその代わりに、切削半径の70%超であれば、ツールは良好な強度を有する。しかし、切り屑排出能力が下がり、関連付けられた切り屑の排出が困難なことによる過剰な発熱、したがって、ツール寿命が短くなることを回避するために、送り速度を遅くしなければならなくなる。らせんフルートのそれぞれの表面と縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離が、切削半径の60%から65%であれば、最高の性能と最長のツール寿命が達成される。
【0030】
第1の深さ(つまり、らせんフルートの深さ)と、らせんフルートのそれぞれの表面と縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離と、の合計は、切削半径に等しい。
【0031】
1つの実施形態によると、第2の深さは、複数のランドの各ランドの表面と縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離が、切削半径の85%から99.9%、より好ましくは、切削半径の92%から99%、最も好ましくは、切削半径の95%から97%であるようになっている。85%から99.9%の上記の間隔内では、ツールはその最高の生産性を達成し得る。複数のランドの各ランドの表面と縦方向軸との間の半径方向の距離が、切削半径の少なくとも85%であれば、切削歯は十分に強く、高い送り速度に耐えることができる。複数のランドの各ランドの表面と縦方向軸との間の半径方向の距離が99.9%超でなければ、クリアランスエッジは十分なクリアランス角度を有し、したがって、発熱は限定される。さらに、切削エッジには、所望する生産性を達成することに適した長さが与えられ得る。
【0032】
第2の深さ(つまり、らせん溝の深さ)と、ランドのそれぞれの表面と縦方向軸との間の最も短い半径方向の距離と、の合計は、切削半径に等しい。
【0033】
1つの実施形態によると、複数のランドの各ランドは、曲面の形態である。これにより、切削エッジに、所望する角度γを与えることができ、クリアランスエッジにも、所望するクリアランス角度を与えることができる。
【0034】
1つの実施形態によると、切削ツールの軸方向に測定される、切削ツール(1)の2つの歯先の間の最も短い軸方向の距離yは、0<y≦0.3mm、好ましくは、0.05≦y≦0.2mmである。下限により、切削歯が、異なる軸方向の位置にて置かれることが確かとなり、上限は、切削性能が下がらないことを確かにする。0.05≦y≦0.2mmの間隔内であれば、切削歯の良好な軸方向の分布が提供され、ツール寿命の改善をもたらす。
【0035】
1つの実施形態によると、最も短い軸方向の距離yは、らせんリッジの最初のものの上に置かれた第1の歯先と、回転の方向において、第1のらせんリッジの直後に置かれた、らせんリッジの2番目のものの上に置かれた第2の歯先と、の間にて測定される。ここで、第2の歯先は、第1の歯先よりも、前端に近く置かれる。これにより、材料が段階的に除去され、発熱をさらに抑えてツール寿命を改善する。
【0036】
本発明の別の態様によると、提案する切削ツールを製造するための方法が提供される。この方法は、
円形のベースを有する円筒状のツールブランクを提供することと、
第1の研削面と、好ましくは、第1の研削面に関して、35°から55°の角度θにて形成される第2の研削面と、を有する第1の砥石車を使用して、一式のらせん状の切り屑排出フルートを形成することと、
第1の研削面と、好ましくは、第1の研削面に関して、10°から20°の角度θにて形成される第2の研削面と、を有する第2の砥石車を使用して、少なくとも1つのらせん溝を形成することと、
を含む。
【0037】
本発明のさらに別の態様によると、ハニカムコアを含むワークピースの加工のための方法が提供される。この方法は、
提案する切削ツールを提供することと、
同時に、切削ツールを回転の方向に回し、切削ツールを、ワークピースに関して送り方向に移動させ、又は、ワークピースを、切削ツールに関して移動させ、切削歯の切削エッジの少なくともいくつかが、ハニカムコアとかみ合うようにすることと、
を含む。
【0038】
本発明の他の利点及び好適な実施形態は、以下の詳細説明から見られるであろう。
【0039】
本発明の実施形態を、以下の添付の図面を参照して、非限定例を用いて、以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の実施形態に係る切削ツールの側面図である。
図2図2は、図1の切削ツールの斜視図である。
図3図3は、図1の切削ツールの一部位の側面図である。
図4図4は、図1の切削ツールの一部位の斜視図である。
図5図5は、図1の切削ツールの一部位を示す詳細図である。
図6図6は、図1の線VI-VIに沿う断面図である。
図7図7は、図1の線VII-VIIに沿う断面図である。
図8図8は、図6の断面図の一部位を示す詳細図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る、切削ツールを製造する方法を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る、ハニカム構造の加工のための方法を示すフローチャートである。
【0041】
添付の図面は模式的なものであり、個々の構成要素は必ずしもそれらの原寸にて描かれておらず、本発明のいくつかの特徴の寸法は、明確さのために誇張される場合があることに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1から図2は、本発明の実施形態に係る、ハニカムコアを含む、又は、これからなるワークピースの加工のための回転可能な切削ツール1を示す。切削ツール1は、縦方向軸Aを有する。切削ツール1は、この縦方向軸Aを中心に、回転の方向Rに回転可能である。縦方向軸Aは、切削ツール1の前端2と反対側の後端3との間を伸長する。後端3から伸長して、載置部位が提供される。この載置部位は、ツールホルダ(図示せず)に固定されるよう適合されている。載置されると、切削ツール1の後端3はしたがって、ツールホルダと向かい合う。また、前端2を含む切削ツール1の一部位をより詳細に示す図3から図4と、切削ツール1の断面図を示す図6から図7と、をも参照する。
【0043】
切削ツール1の周囲面4は、前端2と後端3との間に、縦方向軸Aの周りを伸長する。周囲面4では、切り屑を排出するための一式のらせんフルート5、ここに示す実施形態では、8つのらせんフルート5が形成される。らせんフルート5は、前端2から後端3に向かって、縦方向軸Aに関して、45°≦α≦65°の第1のらせん角度αにて伸長する。
【0044】
図6及び図8に示すように、らせんフルート5は、第1の深さdを有する。これは、縦方向軸A上にその中心が置かれ、切削ツール1の切削半径rに対応する半径を有する仮想的な円筒上の点から縦方向軸Aに向かって半径方向に測定される。第1の深さdは、らせんフルートのそれぞれの底と縦方向軸との間の半径方向の距離rが、切削ツール1の切削半径rの55%から70%、好ましくは、切削半径rの60%から65%であるようになっている。したがって、d+r=rである。
【0045】
ペアの隣接するらせんフルート5’、5’’のそれぞれの間には、らせんリッジ6が形成される。したがって、ここに示す実施形態では、一式の8つのらせんリッジ6が形成される。らせんリッジ6はそれぞれ、第1の関連するらせんフルート5’と第2の関連するらせんフルート5’’とを含むペアの隣接するらせんフルート5’、5’’に関連付けられる。ここでは、第2の関連するらせんフルート5’’は、回転の方向Rにおいて、第1の関連するらせんフルート5’の後ろに位置する。
【0046】
らせん溝7は、図3に示すように、周囲のエンベロップ表面に、縦方向軸Aに関して、90°<β≦100°の第2のらせん角度βにて形成される。明確さのために、らせん溝7のエクステンションは、破線によりマークされる。
【0047】
ここに示す実施形態では、β=91°である。図3図6、及び図8に示すように、らせん溝7は、上記に画定する仮想的な円筒上の点から縦方向軸Aに向かって半径方向に測定される第2の深さdを有する。第2の深さdは第1の深さdより浅く、らせん溝7がらせんフルート5により割り込まれるようになっている。明確さのために、らせん溝7のエクステンションは、図3において破線によりマークされる。
【0048】
第2の深さdは、ランド8のそれぞれの半径方向に最も内側の点と縦方向軸Aとの間の半径方向の距離rが、切削ツール1の切削半径rの85%から99.9%、好ましくは、切削半径rの92%から99%、より好ましくは、切削半径rの95%から97%であるようになっている。したがって、d+r=rである。
【0049】
らせん溝7は、らせんリッジ6と交差し、複数のランド8が、らせんリッジ6のそれぞれの上に形成されるようになっている。ランド8はそれぞれ、第1の関連するらせんフルート5’と第2の関連するらせんフルート5’’との間を伸長する。らせん溝7とらせんリッジ6との交差部はまた、らせんリッジ6のそれぞれの上の複数の同一切削歯11の形成をももたらす。
【0050】
切削歯11はそれぞれ、複数のランド8のペアの関連して隣接するランド8’、8’’、すなわち、第1の関連するランド8’と第2の関連するランド8’’とに関連付けられ、これらにより区切られる。切削歯11はそれぞれ、らせんフルート5’、5’’によりさらに区切られる。第2の関連するランド8’’は、前端2から、第1の関連するランド8’よりも遠い軸方向の距離に位置し、また、その結果として、回転の方向Rにおいて、第1の関連するランド8’の後ろに位置する。
【0051】
らせんリッジ6上の切削歯11はそれぞれ、第1の関連するランド8’と第2の関連するランド8’’との間の遷移部に形成された第2のリッジ10を含む。したがって、複数の鋭い第2のリッジ10が、らせんリッジ6のそれぞれの上に形成される。第2のリッジ10は、ここに示す実施形態のように、らせん溝7に沿って短いエクステンションを有してよい。さらに、切削歯11はそれぞれ、第1の関連するランド8’と第1の関連するらせんフルート5’との間の遷移部に形成された切削エッジ9と、第2の関連するランド8’’と第1の関連するらせんフルート5’との間の遷移部に形成されたクリアランスエッジ16と、を含む。第2のリッジ10と、切削エッジ9と、クリアランスエッジ16と、は、切削歯11の半径方向に最も外側の点を構成し、切削ツール1の切削半径rにて置かれる歯先12に合流する。
【0052】
図5を参照する。これは、同一の第1、第2、及び第3の切削歯11’、11’’、及び11’’’を、より詳細に示す。第1の切削歯11’は、切削ツール1の前端2に最も近く置かれる。第2の切削歯11’’は、ペアの関連して隣接するランド8’、8’’に関連付けられ、これらにより区切られる。第1、第2、及び第3の切削歯11’、11’’、及び11’’’はそれぞれ、第2のリッジ10’、10’’、及び10’’’と、切削エッジ9’、9’’、及び9’’’と、クリアランスエッジ16’、16’’、及び16’’’と、に関連付けられる。
【0053】
ランド8’は、ペアの隣接する第2のリッジ10’、10’’により区切られる。そのうち、第1の関連する第2のリッジ10’は、第2の関連する第2のリッジ10’’より、前端2に近く位置する。ランド8’は、ランド8’上の位置から見て、凹状の曲面の形態であり、平ら又は実質的に平らな最前部位8aと、曲がった最後部位8bと、を持つ。
【0054】
ランド8’のランド幅wは、らせんリッジ6の伸長の方向に沿って変化する。第1の関連する第2のリッジ10’から第2の関連する第2のリッジ10’’に向かって、これらの間を移動すると、平らな最前部位8aのランド幅wは、最後部位8bに向かって広くなる。その後、曲がった最後部位8bに沿って移動すると、ランド幅wは狭くなる。ランド8のそれぞれについて、らせん溝7の伸長の方向に沿って測定される、ランド8の最も広いランド幅wは、らせん溝7の伸長の方向に沿って測定される、隣り合うらせんリッジ6’、6’’上にある2つのランド8’、8’’の間の最も短い距離w’の30%未満、好ましくは、20%未満、より好ましくは、15%未満、最も好ましくは、10%未満である。
【0055】
第2の切削歯11’’の切削エッジ9’’と第1の切削歯11’のクリアランスエッジ16’とは共に、ペアの関連する第2のリッジ10’、10’’の間を伸長する曲線を形成する。ワークピースの加工中、ランド8の最前部位8aと、同様に、クリアランスエッジ16と、は、逃げ面を形成する。これらは、加工されたハニカム構造とは接触しない。らせんリッジ6上に置かれる切削エッジ9について、第1の関連するらせんフルート5’は、すくい面を構成する。
【0056】
切削歯11のそれぞれの切削エッジ9は、縦方向軸に鉛直する面にて見た際に、歯先12から、縦方向軸Aと歯先12との間を伸長する半径方向の線に関して、角度γにて、半径方向に内向きに伸長する。ここに示す実施形態では、角度γは、図8に示すような、小さい正の角度である。角度γは、歯先12に隣接する切削エッジ9の第1の端にて測定される。その第1の端での切削エッジ9が、切削エッジ9が、回転の方向Rにて見た、縦方向軸Aと歯先12との間の半径方向の線の前に伸長するような伸長の方向を有していれば、角度γは負の値を有する。その第1の端での切削エッジ9が、切削エッジ9が、回転の方向Rにて見た、縦方向軸Aと歯先12との間の半径方向の線の後ろに伸長するような伸長の方向を有していれば、角度γは正の値を有する。図8では、角度γは正の値を有する。角度γは、縦方向軸に鉛直する面にて見た際に、-20°≦γ≦+30°、より好ましくは、-5°≦γ≦+20°、最も好ましくは、γ=0°であるようなものであってよい。
【0057】
切削歯11のそれぞれのクリアランスエッジ16はまた、歯先12から内向きにではあるが、図6に示すような、縦方向軸Aと歯先12との間を伸長する半径方向の線に関して、角度φにて伸長する。角度φは、ここに示す実施形態では、約70である。一般的に、切削ツールの他の特徴とは独立して、角度φは、50°≦φ<90°のようなものであるべきである。角度φが90°以上であれば、クリアランスエッジ16は、クリアランスの機能を有さず、これは、不必要な発熱と短いツール寿命とをもたらす。角度φが50°未満であれば、歯の熱伝導率が下がり、歯の切削ゾーンにおいて生じた熱が、歯先から十分に早く放熱されない。これは、短いツール寿命をもたらす場合がある。
【0058】
図5を再度参照すると、(第2のリッジ10’’により示される)第2のリッジ10はそれぞれ、歯先12と一致する第1の端13と、回転の方向Rにおいて、第1の端13の後ろにある第2の端14と、を有する。第2のリッジ10の第2の端14と縦方向軸Aとの間の半径方向の距離は、第2のリッジ10の第1の端13と縦方向軸Aとの間の半径方向の距離以下である。換言すると、第2の端14は、第1の端13よりも、縦方向軸Aに近く置かれる。したがって、切削エッジ9の後ろでは、第2のリッジ10は、加工中にワークピースとは接触しない。
【0059】
切削ツール1の軸方向、つまり、縦方向軸Aに沿って測定される、切削ツール1の2つの歯先の間の最も短い軸方向の距離yは、0<y≦0.3mmである。この距離yは、らせんリッジ6の最初のものの上に置かれた第1の歯先12’と、図3に示すような、回転の方向Rにおいて、第1のらせんリッジ6の直後に置かれた、らせんリッジ6の2番目のものの上に置かれた第2の歯先12’’と、の間にて測定される。第2の歯先12’’は、第1の歯先12’よりも、前端2に近く置かれる。単一のらせん溝7を含む切削ツール1について、2つの歯先12の間の最も短い軸方向の距離yは、らせんリッジ6の数により除算されるらせん溝7のピッチにより近似できる。8つのらせんリッジ6と、8mmの切削半径rと、91°の第2のらせん角度βと、を有する切削ツール1について、軸方向の距離yは、約0.13mmである。
【0060】
切削ツール1は、ここに示す実施形態では、切削ツール1の前端2にて形成された2つの前部切削エッジ15をさらに含む。また、ツールを単に、輪郭切削又はエッジミリングに使用するのであれば、前部切削エッジのない切削ツールを提供することもできる。また、切削ツールの一部位のみに、少なくとも1つのらせん溝が提供されてよい。つまり、少なくとも1つのらせん溝は必ずしも、縦方向軸に沿って、らせんフルートと同じ長さに伸長しなくともよい。例えば、らせんフルートは、切削ツールの前部切削エッジから伸長してよく、一方、らせん溝(単一又は複数)は、切削ツールの後端により近い位置から伸長してよい。
【0061】
ここに示す実施形態では、らせん溝7が1つのみ、周囲面4に形成される。しかし、らせんリッジ6の1つの上に形成された2つの隣接するランド8が交差して第2のリッジ10を形成するのであれば、1つを超えるらせん溝が提供されてよい。
【0062】
本発明の実施形態に係る、上述するような切削ツールを製造するための方法を、図9のフローチャートに示す。
【0063】
第1のステップ101では、円形のベースを有する円筒状のツールブランクが提供される。ツールブランクは、例えば、焼結炭化物ツールブランクであってよい。
【0064】
第2のステップ102では、切り屑を排出するための一式のらせんフルート5が、第1の研削面と、好ましくは、第1の研削面に関して、35°から55°の角度θにて形成される第2の研削面と、を有する第1の砥石車を使用して形成される。第1の研削面はしたがって、らせんフルート5の第1の側壁を形成し、第2の研削面は、らせんフルート5の第2の側壁を形成する。砥石車は、例えば、らせんフルート5の所望する底面プロファイルによって、V字又は丸められたプロファイルを有してよい。
【0065】
第3のステップ103では、単一のらせん溝7又は複数の溝が、第1の研削面と、好ましくは、第1の研削面に関して、10°から20°の角度θにて形成される第2の研削面と、を有する第2の砥石車を使用して形成される。第2の砥石車は、好ましくは、らせんリッジ6上に曲線状のランド8を生成する丸められたプロファイルを有する。ランド8のランド幅wは、らせん溝7を生成する際に使用される研削深さに依存する。第1の砥石車と第2の砥石車とは、同じ砥石車であってよいが、第2の砥石車は、第1の砥石車とは別のものであることが好ましい。
【0066】
ステップ103は、ステップ102の前又は後に行われてよい。らせんフルート5とらせん溝7とを研削することは共に、らせんリッジ6と、第2のリッジ10と、切削エッジ9と、ランド8と、を生成する。
【0067】
本発明の実施形態に係る、ハニカムコアを含むワークピースの加工のための方法を、図10のフローチャートに示す。
【0068】
第1のステップ201では、上述するような切削ツール1が提供され、ツールホルダに固定される。
【0069】
第2のステップ202では、切削ツール1は、同時に、回転の方向Rに回り、ハニカムワークピースに関して送り方向に移動し、切削ツール1の切削エッジ9の少なくともいくつかが、ハニカムコアとかみ合うようになる。複数の切削エッジ9がしたがって、ハニカムコアから材料を除去する。第2のステップ202では、また、ハニカムワークピースをツールに向かって移動させることもできる。また、切削ツールとハニカムワークピースとの双方を移動させることもできる。
【0070】
ここでの実施形態は、上記の実施形態に限定されない。様々な代替例、変更例、及びそれらの等価例が使用されてよい。したがって、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲に画定する実施形態の範囲を限定するものとみなすべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10