(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】三次元物体の付加製造用の、易焼結性材料を含む配合物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/10 20220101AFI20240227BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240227BHJP
B22F 10/16 20210101ALI20240227BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20240227BHJP
B22F 10/66 20210101ALI20240227BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240227BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240227BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240227BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240227BHJP
B28B 1/24 20060101ALI20240227BHJP
C04B 35/632 20060101ALI20240227BHJP
B22F 1/00 20220101ALN20240227BHJP
【FI】
B22F1/10
B22F9/00 B
B22F10/16
B22F3/02 S
B22F10/66
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y80/00
B28B1/30
B28B1/24 101A
B22F3/02 M
C04B35/632 500
B22F1/00 T
(21)【出願番号】P 2021566051
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 IB2019053749
(87)【国際公開番号】W WO2020225591
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519383061
【氏名又は名称】トリトン テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRITONE TECHNOLOGIES LTD.
【住所又は居所原語表記】12 Amal Street, Park Afek Industrial Zone, Rosh HaAyin, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレド ハガイ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203331(WO,A1)
【文献】特開2018-141225(JP,A)
【文献】国際公開第2018/149748(WO,A1)
【文献】特開2004-296177(JP,A)
【文献】特開2018-080359(JP,A)
【文献】国際公開第2018/156933(WO,A1)
【文献】米国特許第06596224(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/16
B33Y 70/00
B33Y 10/00
B33Y 80/00
B29C 64/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャストモールド製法においてモールド材の配合物と共にキャスト材として使用可能な易焼結性ペースト配合物であって、前記易焼結性ペースト配合物が易焼結性材料の粉末、バインダーおよび水溶液を含み、前記粉末の含有量が前記易焼結性ペースト配合物の総重量に対して少なくとも85重量%であり、前記水溶液が水と水和性有機溶媒とを含み、前記有機溶媒の
蒸発速度が
n-酢酸ブチル基準で0.3~0.8の範囲内である、配合物。
【請求項2】
前記水溶液中の前記水和性有機溶媒の含有量が、前記水溶液の総重量に対して20~80重量%である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記有機溶媒がアルキレングリコールである、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
前記バインダーが、
前記易焼結性材料の焼結温度よりも少なくとも100℃低い温度で熱分解可能である、および/または
前記モールド材が除去される条件下において、前記バインダーが完全な形態を保持する、および/または
前記バインダーのTgが少なくとも30℃である、および/または
前記バインダーが、少なくとも0℃のフィルム形成温度(TMF)によって特徴づけられる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項5】
pHが少なくとも8である、請求項1~4のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項6】
85~95重量%の易焼結性材料の粉末と、
6~10重量%の水溶液であって、水と少なくとも20%の前記有機溶媒を含む水溶液と、
1~2重量%の前記バインダーと
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項7】
前記易焼結性材料が金属である、請求項1~6のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
下記の材料を含むまたは下記の材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の配合物。
88~92重量%の前記易焼結性材料の粉末と、
1~2重量%の前記バインダーと、
0.1~1重量%の消泡剤と、
0.005~0.015重量%のpH調整剤と、
6~9重量%の前記水溶液であって、前記水溶液の総重量に対して20~40重量%の前記水和性有機溶媒を含む水溶液。
【請求項9】
下記の材料を含むまたは下記の材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の配合物。
87重量%、または88重量%、または89重量%の前記易焼結性材料の粉末と、
1~2重量%の前記バインダーと、
0.1~1重量%の消泡剤と、
0.005~0.015重量%のpH調整剤と、
8~9重量%の前記水溶液であって、前記水溶液の総重量に対して20~40重量%の前記水和性有機溶媒を含む水溶液。
【請求項10】
下記の材料を含むまたは下記の材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の配合物。
87重量%、または88重量%、または89重量%、または90重量%の前記易焼結性材料の粉末と、
2.5~3.5重量%のバインダー分散液Aであって、45重量%のアクリル重合体を含むアクリル重合体水溶液を含有するエマルションを含むバインダー分散液Aと、
1.5~2.5重量%のバインダー分散液Bであって、22~23重量%のアクリル重合体と、53~54重量%の水と、20~21重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むバインダー分散液Bと、
0.1~1重量%の消泡剤と、
0.01重量%のpH調整剤と、
2~3重量%の水と、
1~3重量%の前記水和性有機溶媒。
【請求項11】
下記の材料を含むまたは下記の材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の配合物。
87重量%、または88重量%、または89重量%、または90重量%の前記易焼結性材料の粉末と、
1~1.1重量%のバインダー分散液Aであって、45重量%のアクリル重合体を含むアクリル重合体水溶液を含有するエマルションを含むバインダー分散液Aと、
3~4重量%のバインダー分散液Bであって、22~23重量%のアクリル重合体と、53~54重量%の水と、20~21重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むバインダー分散液Bと、
0.2~0.3重量%の消泡剤と、
0.01~0.1重量%のpH調整剤と、
3重量%の水と、
1~2重量%の前記水和性有機溶媒。
【請求項12】
焼結材料を含む三次元物体の形成方法であって、
モールド材配合物を用いて、物体の形状に沿ったモールドを形成し、
請求項1~11のいずれか一項に記載の易焼結性ペースト配合物で前記モールドを充填し、鋳造製品を得、
前記鋳造製品からモールドを除去し、グリーン体を得、
前記グリーン体からバインダーを除去し、ブラウン体を得、
前記ブラウン体を焼結条件に付して、前記物体を形成する、
ことを含む、方法。
【請求項13】
前記充填が、前記易焼結性ペースト配合物の前記モールドへの注入または前記易焼結性ペースト配合物の前記モールドへの射出成形を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モールドの形成が、前記モールド材配合物の複数の層を前記物体の形状に対応するように構成されたパターンに分配して多層モールドを形成することを含む、
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記モールドの除去の前に、前記鋳造製品の硬化をさらに含む、
請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化が、モールドキャスト層または物体を減圧下に一定期間付すことを含む
、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造法に関し、より具体的には、付加製造法や、易焼結性材料を含む物体を提供する他の製法、ならびにその後の焼結材料を含む製品の提供に使用可能な、金属やセラミックスの粉末といった易焼結性材料を含む配合物に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
付加製造法(AM)または固体自由成形(SFF)は、物体のコンピューターモデルを利用して三次元(3D)物体を製造する一般的な製法である。いかなるAMシステムの基本操作も三次元コンピューターモデルの断面への分割、結果の二次元位置データへの翻訳、および三次元構造を層を交互に製造する制御装置へのデータの送り込みからなる。
【0003】
種々のAM技術が存在し、その中にはステレオリソグラフィ、デジタル光処理(DLP)および三次元(3D)プリンティングが含まれる。このような技術は、通常、1種以上の形成材料の交互層積層および硬化によって実施される。
【0004】
三次元プリンティング製法においては、例えば、支持構造の上に層を積層させるための一式のノズルを有するプリンターヘッドから形成材料を分注する。形成材料によっては、その後、任意で適切な装置を用いて、層を固体化、固化または硬化させる。
【0005】
通常、AMにおいては、三次元物体は、コンピューターオブジェクトデータに基づき、物体の形状に対応するパターンに構成された複数の層を形成することで、層ごとに作製される。コンピューターオブジェクトデータは公知のいかなるフォーマットでも良く、標準平面充填言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)形式、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)形式、描画交換形式(DXF)、ポリゴンファイル形式(PLY)あるいはコンピューター支援設計(CAD)に適した他の形式が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0006】
各層は、二次元表面をスキャンし、それをパターン化する付加製造装置によって形成される。スキャンの際に装置は二次元層または表面の複数の標的位置を訪れ、各標的位置または一群の標的位置について、当該標的位置または一群の標的位置が形成材料によって満たされるべきか否か、そしてどの種類の形成材料をそこに送達すべきかを決定する。決定は、表面のコンピューター画像に基づき行われる。
【0007】
付加製造法または3Dプリンティングは、現在、プロトタイプ部品の作製および小規模製造のために広く使用されている。広く使用されている技術は、プラスチック製のフィラメントをコイルから解き、熱溶解させてノズルを通し、平坦化された紐として下に置き、そこから最終的には3D物体が現れる、熱溶解積層法(FDM)である。
【0008】
使用されている他の技術はステレオリソグラフィである。ステレオリソグラフィは、容器内の光重合性樹脂に紫外線(UV)レーザーを当てることで機能する付加製造法である。コンピューター支援製造またはコンピューター支援設計ソフトウエア(CAM/CAD)の助けにより、UVレーザーで予めプログラミングされたデザインまたは形状を光重合性樹脂の入った容器の表面に描く。光重合性樹脂は紫外線に対して光感受性であることから、樹脂は固化し、所望の3D物体の一層を形成する。3D物体が完成するまで、デザインの各層についてこの方法を繰り返す。
【0009】
選択的レーザー焼結(SLS)は別の付加製造層技術であり、高出力レーザー、例えば二酸化炭素レーザー、を使用して、所望の三次元形状を有する塊にプラスチックの小粒子を融着させる。レーザーは、粉体ベッド表面の、部品の(例えば、CADファイルやスキャンデータによる)3Dデジタル描写によって作製された断面をスキャンすることで粉末材料を選択的に融着させる。各断面をスキャンした後に、粉体ベッドを一層分だけ下げて、新しい材料の層をその上に付与し、部品が完成するまでこの方法を繰り返す。
【0010】
その比較的高い溶融温度故に、金属およびセラミックス材料を付加製造法に使用することはより困難である。
【0011】
付加製造技術は、一般的に、層ごとに部品を形成するという組み立て方法故に、機械加工などの従来の製造方法と比べて遅い。
【0012】
さらに、単純な付加製造法では達成することのできないいくつかの形状がある。このような形状のいくつかは、後に除去する支持領域をプリントアウトすることで達成することができる。
【0013】
広く使用されている金属プリント技術はDMLS、即ち、直接金属焼結レーザーである。金属粉末の非常に薄い層を、プリントされる表面全体に広げる。粉末を焼結するために、レーザーをゆっくり且つ安定的に移動する。その後、さらなる粉末の層を付加して焼結させることで、1回に物体の1つの断面を「プリント」する。こうすることで、DMLSは、一連の非常に薄い層によって、徐々に3D物体を組み立てる。
【0014】
3D金属プリントの別の方法は選択的レーザー溶融(SLM)法であり、この方法では、高出力レーザーは金属粉末を単に焼結させるのではなく、完全に溶融させる。選択的レーザー溶融は、非常に高密度で丈夫なプリント物体を製造する。選択的レーザー溶融は、特定の金属にしか使用することができない。この技術は、ステンレス鋼、工具鋼、チタン、コバルト、クロムおよびアルミ部品の付加製造に使用することができる。選択的レーザー溶融は、金属粉末の各層が金属の融点超に加熱されなければならないため、非常に高エネルギーな方法である。SLM製造の際に生じる高温勾配は、最終製品内部の圧迫や断層に繋がり得るものであり、その結果、物性が損なわれる可能性もある。
【0015】
電子線溶融(EBM)は、選択的レーザー溶融と非常に近い付加製造法である。SLMと同様に、非常に高密度のモデルを製造する。2つの技術の違いは、金属粉末を溶融するためにEBMはレーザーではなく電子線を使用する点にある。近年、電子線溶融は限られた数の金属にしか使用することができない。チタン合金がこの方法の主たる出発材料であるが、コバルトクロムも使用することができる。
【0016】
上記金属プリント技術は高価であり、非常に遅く、且つ作製できる大きさおよび使用可能な材料に限界がある。
【0017】
バインダージェット3Dプリンティングは、鋳造用の砂型のプリントや、複雑なセラミックス部品の作製に広く使用されている。これは金属付加製造技術としても知られている。選択的レーザー溶融(SLM)や電子線溶融(EBM)で行われているように材料を溶融する代わりに、接着性のインクによって金属粉末を選択的に結合させる。「グリーン」部品は後に熱工程、即ち、脱バインダーおよび焼結、場合によっては付加材料の浸入、を経験する。
【0018】
セラミックスのプリンティングに関する技術は、Ceramics 3D Printing by Selective Inhibition Sintering - Khoshnevis et al.に開示されており、ここでは、金属と同様に、後に焼結されるセラミックス粉末層の周りを画定する境界線を阻害材料が形成する。続いて阻害層を除去する。
【0019】
Stuart Uramの米国特許公開第2014/0339745号明細書は、モールドキャスト製法を使用して物体を製造する方法であって、付加製造法を用いて作製されたモールドにスリップ混合物を適応し、混合物が中に入ったモールドを焼成することを含む方法を開示する。当該開示は、10~60重量%のアルミン酸カルシウムと充填材との組成物について検討している。
【0020】
粉末射出成形(PIM)は、微粉砕化した金属(MIM、即ち、金属射出成形の場合)またはセラミックス(CIM、即ち、セラミックス射出成形の場合)を計量したバインダー材料と混合することで、射出成形によって扱うことが可能なフィードストックを得る。この成型方法は、フィードストック中のバインダー剤によって嵩増しされ、膨らんだ複雑な部品を、一工程且つ高容積で成形することができる。
【0021】
成形後には、粉末-バインダー混合物を、モールドとバインダーとを除去するための脱バインダー工程、および粉末を高密度化するための焼結に付す。最終製品は、種々の産業や用途に使用される小さな部品である。PIMフィードストックの流動的性質は、レオロジーを用いて定義される。現在の機器能力では、モールド当たりの射出量の典型的な容量が100グラム以下の製品に製造を限定する必要がある。PIMフィードストックとして使用可能な材料の種類は幅広い。続く調整操作は成形形状に対して行われ、ここでバインダー材料が除去され、金属またはセラミックス粒子が拡散接合されて、各寸法が典型的には15%縮小された所望の状態に高密度化される。PIM部品は、プラスチックに用いられるのと同様の精密射出成型で製造されるため、器具は高価になり得る。その結果、PIMはより高容積(higher-volume)の部品にのみ使用されている。
【0022】
金属粒子およびバインダーで形成されたペーストを含むプリント可能な固体(mass)の3Dスクリーンプリンティングにおける使用が、フラウンホーファー生産技術研究所で実施されている。例えば、www(dot)ifam-dd(dot)fraunhofer(dot)deを参照。
【0023】
溶媒無しの水系金属、セラミックスまたは支持ペーストを用いた3D金属プリンティングがwww(dot)rapidia(dot)comに記載されている。プリントされた物体は焼結のために直接炉に移動され、ポリマー製の支持材料は焼結の際に蒸発される。
【0024】
追加の従来技術としては、国際公開公報第2018/203331号、2018年8月29日出願の米国特許仮出願第62/724,120号(代理人整理番号74484)、および2018年12月16日出願の米国特許仮出願第62/780,273号(代理人整理番号75727)が挙げられ、これらはすべて本願の譲受人によるものであり、それらの内容の全てが本参照によって本明細書に組み込まれたものとする。
【発明の概要】
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、キャストモールド製法においてモールド材配合物と共にキャスト材として使用可能な易焼結性ペースト配合物であって、易焼結性ペースト配合物は易焼結性材料の粉末、バインダーおよび水溶液を含み、粉末の含有量は配合物の総重量に対して少なくとも85重量%であり、水溶液は水と水和性有機溶媒とを含み、有機溶媒の蒸発速度は酢酸n-ブチル基準で0.3~0.8の範囲内である、配合物が提供される。
【0026】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水溶液の総量は、配合物の総重量に対して6~10重量%である。
【0027】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水溶液中の水和性有機溶媒の含有量は、水溶液の総重量に対して20~80重量%、または20~60重量%、または20~40重量%である。
【0028】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水和性有機溶媒およびバインダーは、有機溶媒とそこに溶解および/または分散可能なバインダーとの組み合わせから選択されたものである。
【0029】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水和性有機溶媒およびバインダーは、互いに化学的に不活性な組み合わせから選択されたものである。
【0030】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、有機溶媒はアルキレングリコールである、またはアルキレングリコールを含む。
【0031】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーの含有量は、配合物の総重量に対して10重量%以下、または5重量%以下である。
【0032】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーの含有量は、配合物の総重量に対して0.8~2重量%の範囲内である。
【0033】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーは、易焼結性材料の焼結温度よりも少なくとも100℃低い温度で熱分解可能である。
【0034】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、モールド材が除去される条件下において、バインダーは完全な形態を保持する。
【0035】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーのTgは少なくとも30℃である。
【0036】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーは、少なくとも0℃、または少なくとも5℃、または少なくとも10℃のフィルム形成温度(TMF)によって特徴づけられる。
【0037】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物のpHは少なくとも8、または8~10である。
【0038】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物の粘度は10000~50000センチポアズの範囲内である。
【0039】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、5ミリバールまたは10ミリバールの減圧下においてずり減粘挙動を示さない。
【0040】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、モールド材配合物は、少なくとも20個の炭素原子からなる炭化水素を含む。
【0041】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、モールド材配合物は、鉱蝋、例えば、本明細書に記載の鉱蝋を含む。
【0042】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、85~95重量%の易焼結性材料の粉末と、6~10重量%の水溶液であって、水と少なくとも20%の有機溶媒を含む水溶液と、1~2重量%のバインダーとを含む。
【0043】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、pH調整剤、分散剤、消泡剤およびこれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0044】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、易焼結性材料は金属である、または金属を含む。
【0045】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、表1、2または3に記載の材料を含むまたは表1、2または3に記載の材料からなる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、バインダー、水溶液および粉末を室温で混合することを含む、任意の対応する実施形態について本明細書に記載の配合物の製造方法を提供する。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、焼結材料を含む三次元物体の形成方法であって、モールド材配合物を用いて物体の形状に沿ったモールドを形成し、任意の対応する実施形態について本明細書に記載の易焼結性配合物でモールドを充填して鋳造製品を得、鋳造製品からモールドを除去してグリーン体を得、グリーン体からバインダーを除去してブラウン体を得、ブラウン体を焼結条件に付して物体を形成する、ことを含む方法を提供する。
【0048】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、充填は、易焼結性ペースト配合物の(キャスト材配合物としての)モールドへの注入を含む。
【0049】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、充填は、易焼結性ペースト配合物の(キャスト材配合物としての)モールドへの射出成形を含む。
【0050】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、充填は、易焼結性配合物をモールドに広げるためにモールドに押し付けるスキージの使用を含む、あるいは充填は、易焼結性配合物をモールドに広げるためにモールド表面から離れた位置のブレードの使用を含む。
【0051】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、モールドの除去は、加熱およびモールドと有機溶媒との接触の少なくとも1種を含む。
【0052】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、本方法は、モールドの除去の前に、鋳造製品の硬化をさらに含む。
【0053】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、モールドの形成は、モールド材配合物の複数の層を物体の形状に対応するように構成されたパターンに分配して多層モールドを形成することを含む。
【0054】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、本方法は、多層モールドの一層を画定するためにモールド材の第1の層をプリントし、第1のモールドを易焼結性配合物で充填して第1のモールドキャスト層を形成し、第1のモールドキャスト層の上にモールドの第2の層をプリントして、多層モールドの第2の層を画定し、易焼結性配合物で第1の層の上に第2の層を充填することを含む。
【0055】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、本方法は、第1の層の形成後で第2のモールドのプリントの前に、第1の層の表面仕上げを行い、第1の層の仕上げ後の表面の上に第2の層を形成することをさらに含む。
【0056】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、本方法は、充填に続き実施する、モールドキャスト層の硬化をさらに含む。
【0057】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、硬化は、モールドキャスト層または物体を減圧下に一定期間付すことを含む。
【0058】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、本方法は、減圧下に付す前に、モールドキャスト層または物体に熱風を当てることをさらに含む。
【0059】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、減圧は、0.01ミリバール~100ミリバールの範囲内、または0.1ミリバール~25ミリバール、または1~10ミリバールの範囲内である。
【0060】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、一定期間は、10~150秒の範囲内または約30秒である。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、任意の対応する実施形態について本明細書に記載の方法で得られた、焼結材料を含む物品を提供する。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態の一態様においては、本明細書に記載の製品を含む成形品を提供する。
【0063】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含み、特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0064】
本発明の実施形態の3Dプリンティング装置の操作は、選択されたタスクを、手動で、または自動的に、またはこれらを組み合わせて、実行または完了することを含み得る。さらに、本発明の方法および/またはシステムのいくつかの実施形態の実際の機器および装置によれば、いくつかの選択されたタスクを、ハードウェアによって、またはソフトウェアによって、またはファームウェアによって、および/またはこれらの組合せによって、オペレーティングシステムを使用して実施することができる。
【0065】
例えば、本発明のいくつかの実施形態に係る選択されたタスクを実行するハードウェアを、チップまたは回路として実施することができる。ソフトウェアとしては、本発明のいくつかの実施形態に係る選択されたタスクを、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施することができる。本発明の例示的な実施形態においては、本明細書に記載されている方法および/またはシステムのいくつかの例示的な実施形態に係る1つまたは複数のタスクは、データプロセッサ(複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなど)によって実行される。データプロセッサは、オプションとして、命令もしくはデータまたはその両方を記憶する揮発性メモリ、および/または、命令もしくはデータまたはその両方を記憶する不揮発性記憶装置(例えば磁気ハードディスクおよび/またはリムーバブル媒体)、を含む。オプションとして、ネットワーク接続も提供される。オプションとして、ディスプレイおよび/またはユーザ入力デバイス(キーボードやマウスなど)も提供される。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として付属の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、多層成形した製品または部品を製造するための工程を図示する、単純化したフローチャートである。
【
図1B】
図1Aの工程のより詳細な実施形態を示す、単純なフローチャートである。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、モールドの中に広げられたペーストから形成された層を硬化させる工程を図示する、単純化したフローチャートである。
【
図3】個別の層に対して特定の硬化フェーズを繰り返す、
図1A~1Bに示した工程のバリエーションを示す、単純化したフローチャートである。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、多層成形した製品または部品を製造するための工程を図示する、単純化したフローチャートである。
【
図6A】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6B】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6C】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6D】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6E】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6F】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6G】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図6H】本明細書に記載する方法の種々の段階における易焼結性材料粉末のSEM画像を提示する。
【
図7】本明細書に記載の例示的な配合物を用いて作製したダンベル型試験片(dog bone shape)の写真であって、上部の写真は引張強度試験に付す前のグリーン体であり、下部の写真は最終焼結製品である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造法に関し、より具体的には、付加製造法や、易焼結性材料を含む物体を提供する他の製法、ならびにその後の焼結材料を含む製品の提供に使用可能な、金属やセラミックスの粉末といった易焼結性材料を含む配合物に関するが、これに限定されるものではない。当該配合物は、モールドキャスト法および/または減圧下の適用を含む付加製造方法におけるキャスト材として特に有用である。
【0069】
上記背景技術に記載したように、少なくともその一部分に金属および/またはセラミックス材料を含有する三次元物体の付加製造は、機械加工やラピッドプロトタイプ製造などの方法と比べて非常に有利ではあるが、AM法を効率化するにはいくつかの課題が存在する。近年、金属および/またはセラミックスで製造された物体のために実施されるAM方法の一部は、金属/セラミックス粉末、可能であればバインダーをさらに含む金属/セラミックスペーストを使用する。
【0070】
本願の譲受人の国際公開公報第2018/203331号は、比較的速く、複雑な幾何学的構造を製造可能であり、種々の材料に適応可能な、セラミックスおよび/または金属によって製造された物体の付加製造のための方法を開示する。この開示は、従来の成形または機械成形技術ではこれまで不可能であった形状の作製、あるいは公知の付加製造技術による使用が困難または不可能であった材料を使用するため、または公知の付加製造技術で可能な速度よりも高速に形状を作製するために、付加製造を成形法と組み合わせることを教示する。実施例においては、モールド材を使用して付加製造法によりモールドを製造し、その後、モールドを最終製品の材料(キャスト材)で充填する。キャスト材は、易焼結性材料、例えば、金属またはセラミックス粉末等や、本明細書で定義したものを含み得る。変法においては、最終製品の層を個別のモールドを用いて別々に構築し、次の層をその前に成形した層の上に形成する。前に成形した層は、実際は新しい層のモールドを支持するだけでなく、新しい層のための床を提供する。
【0071】
一変法においては、プリンティングユニットは、モールドを形成するための3Dプリンティング材料用の第1のノズルと、充填材(キャスト材)を提供するための第2の別のノズルとを備える。第2のノズルは、異なる大きさのモールドを効率的に充填するために異なる大きさの開口部を提供するように調節されてもよい。他の変法においては、2つの個別のアプリケーター、即ち、モールドのプリンティング用であって、3Dプリンティングに必要な3つの自由度を有するものと、キャスト材によって形成された後にモールドを充填するためのものとが提供される。
【0072】
一変法は、ワックスまたは他のホットメルト(例:相転移インク)または熱硬化性材料を用いてモールドをプリントするためのインクジェットプリントヘッドの使用と、セルフレベリング・キャスト材の使用によって、それがペースト状のときに、キャスト材の積層した層を平坦化する可能性とを含む。キャスト材の平坦化の代わりは、成形直後のキャスト材を振動させることであり、さらなる代わりは、モールド材および/またはキャスト材を充填し、平坦化するためのスキージやブレードといった機械的ツールの使用を含む。
【0073】
この変法においては、キャスト材、例えば、金属またはセラミックスのペーストは液状であり、ドクターブレードまたはスキージによってモールド内部に適応されて薄層を形成する。平削り工程では、硬化したペーストをカッターまたはプレーナで機械加工して平滑な表面を形成する。
【0074】
平削りに先立ち、ペーストは乾燥工程に付されてもよい。乾燥工程においては、ペースト中の液体の一部を除去してもよく、部品の製造速度を低下させないように、乾燥が比較的迅速であることが望ましい。
【0075】
乾燥は、例えば、温風で温度を上昇させることで実施され得る。しかし、国際公開第2018/203331号のような、モールドキャスト層の連続的な体積を含む方法を使用する場合、乾燥をプロセスの要件を満たす温度、時間および他の条件で実施するよう気を付けなければならない。例えば、乾燥温度は、モールド材の典型的には既に低い溶解温度よりも低くすべきでありながらも、AM法が高効率となるように十分に早くなければならない。さらに、高温は熱膨張を起こす可能性もあり、その結果、変形、破壊および/または他の望ましくない影響を物体の物性に与える得る。
【0076】
本願譲受人の2018年8月29日出願の米国仮特許出願第62/724,120号(代理人整理番号74484)は、乾燥、より具体的には、モールド内で層を形成するために使用されるペーストまたは他の充填材の硬化の実施を真空で補助する方法を教示することで、形成層を昇温下で乾燥させることによって生じる問題を解決する方法を教示する。より具体的には、各層においてモールドを形成してからペーストまたは他の物質で充填し、その後、新たに充填した層の表面を真空下に静置することで、層内の液体の沸点が変化するように圧力を低下させる。そうして、液体を蒸発させて層を固化する。固化後に真空を開放し、内部を換気する。
【0077】
本発明者らは、金属、ガラスおよびセラミックスなどの材料を含む製品またはその部分の製造用であるキャスト材、特に国際公開第2018/203331号等に記載の付加製造方法および/またはキャストモールド法を用いる他の製造方法に使用可能なキャスト材として使用可能な、易焼結性材料を含む新規な配合物を設計した。
【0078】
新規配合物は、選択したノズルまたは任意の他のディスペンサーからの分注、効率的な製造を可能せしめる各層の急速な固化と同時に、モールド材の除去、脱バインダーおよび焼結等の他の製造工程との化学的許容性といった(例:付加)製造方法の要件を満たすように設計した。いくつかの実施形態においては、新規配合物は、モールド材と、直前のキャスト層の両方に正しく接着するように設計される。いくつかの実施形態においては、新規配合物は、均質性および/またはキャスト材の寸法に影響を与えることなく(例:熱収縮を経ずに)、減圧下で乾燥されるように設計される。新規配合物は、金属射出成形および易焼結性材料を用いる他の方法に、さらに使用可能である。
【0079】
本発明の実施形態は、易焼結性材料を含む新規配合物、当該配合物をキャスト材として使用する、例えば、金属、セラミックスおよび/またはガラス材料を含む三次元物体のモールドキャスト製造(モールドキャスト付加製造法等)、および当該配合物を用いて作製された物体に関する。
【0080】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の記載に示す、および/または図面および/または実施例で例示する、構成の詳細および要素の配置および/または方法に限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな手段で実施または実行することが可能である。
【0081】
本明細書および当業界において、「モールドキャスト製法」、「モールドキャスティング製法」、「モールドキャスト方法」、「モールドキャスティング方法」、「モールドキャスト法」、「モールドキャスティング法」およびモールドとキャストの組み合わせに関する他の句は、モールド、典型的には犠牲モールドが少なくとも一の自由空間の周りを覆うように形成され、少なくとも一の自由空間が分注可能な(例:流動可能な、流動性の)キャスト材で充填される製法を表す。一度キャスト材が少なくとも部分的に固化し、自立するおよび/または形状を維持するのに十分なほど固くなったら、モールドを除去する。典型的には、モールドキャスト法は、キャスト材を固化するための追加の工程をさらに含む。
【0082】
本明細書において、「モールド材」という句は、モールドの形成に使用される材料を表す。製法の途中でモールド材が固化した場合、この句は固化したモールド材に関連し、モールド材を提供するために分注される固化前の材料は、モールド材配合物と称される。いくつかの実施形態においては、モールド材配合物の固化は、材料の化学組成を変化させず、このような場合、「モールド材配合物」と「モールド材」は代替可能に使用される。
【0083】
本明細書において使用する「キャスト材配合物」または「キャスト配合物」という句は、モールドを充填する、固化前の材料を表す。「キャスト材」という句は、(例:本明細書で定義するグリーン体中の)固化した状態のキャスト材配合物を表す。
【0084】
本明細書で使用する「グリーン体」という句は、付加製造(AM)法で形成された物体であって、少なくともその一部が部分的にしか固化または固体化されておらず、完全に固体化した物体を得るためにさらなる固化が必要な物体を表す。グリーン体は、必須ではないが、典型的には、その幾何学的形状を維持可能な自立性の本体である。本実施形態の文脈においてグリーン体は、モールドキャスト法を用いたAMによって作製され、モールド材が除去された後の物体に関連する。
【0085】
本明細書で使用する「ブラウン体」という句は、モールドキャスト製法で作製され、モールド材およびバインダーを除去した後(脱バインダー後)の物体を表す。
【0086】
以下、本明細書において、「物体」という用語は、付加製造法またはモールドキャスト法の製品を表す。「製品」という用語は、易焼結性材料が焼結または粉末材料を融着させるための他の工程を経た最終製品を表す。製品は最終成形品でもその部分でもよい。
【0087】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいては、モールドキャスト法においてモールドは付加製造法によって形成され、いくつかの実施形態においては、付加製造法は三次元(3D)プリンティング、例えば、三次元(3D)インクジェットプリンティングである。
【0088】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、モールドキャスト法はモールド材の交互積層を含み、ここでは、例えば、国際公開第2018/203331号に記載され、さらに詳細に後述するように、モールド材の各層がキャスト材配合物で充填される。
【0089】
本明細書に記載のキャスト材配合物は、任意の他のモールドキャスト法に使用することもできる。
【0090】
いくつかの実施形態においては、キャスト材配合物は、さらに詳細に後述するように、キャスト材配合物の固化が減圧下で実施されるモールドキャスト法において使用可能である。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、キャスト材配合物が提供される。いくつかの実施形態において、キャスト材配合物はモールドキャスト法、例えば、本明細書の例示的な実施形態に記載したモールドキャスト法に使用可能である。
【0092】
本実施形態に係る配合物は、焼結性材料の粉末および水溶液(本明細書において水性担体とも称する)を含む。いくつかの実施形態において配合物は、水溶液中に分散した易焼結性材料の粉末を含む。
【0093】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、水溶液は水および水和性有機溶媒を含む。いくつかの実施形態においては、水和性有機溶媒は、0.3~0.8、または約0.3~約0.65の範囲の蒸発速度(evaporation rate)によって特徴づけられる。
【0094】
本明細書において使用する蒸発速度は、参照材料として酢酸n-ブチルに参照する。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、キャストモールド製法において、モールド材配合物と共にキャスト材として使用可能な易焼結性ペースト配合物が提供される。本発明のいくつかの実施形態によると、易焼結性ペースト配合物は、任意の対応する実施形態について本明細書に記載する易焼結性材料の粉末(例えば、後述する実施例1参照)、任意の対応する実施形態について本明細書に記載するバインダー(例えば、後述する実施例1参照)、および任意の対応する実施形態について本明細書に記載する水溶液(例えば、後述する実施例1参照)を含む。
【0096】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、粉末の量は、前記配合物の総重量に対して少なくとも85重量%である。本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、粉末の量は、前記配合物の総重量に対して、少なくとも87重量%、または88重量%、または89重量%、または少なくとも90重量%、少なくとも91重量%または少なくとも92重量%である。本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、粉末の量は、前記配合物の総重量に対して、約85~約95、または約88~約92重量%の範囲であり、その中の任意の中間値および副範囲も含む。
【0097】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水溶液は水と、水和性有機溶媒とを含む。
【0098】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、有機溶媒の蒸発速度は、酢酸n-ブチル基準で、0.3~0.8、または0.3~0.7、または0.4~0.8、または0.4~0.7、または0.5~0.7の範囲内である。
【0099】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、(例:水と有機溶媒との)水溶液の総量は、前記配合物の総重量に対して、6~10、または7~10、または6~9、または7~9重量%の範囲であり、その中の任意の中間値および副範囲も含む。
【0100】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水溶液中の水和性有機溶媒の量は、水溶液の総重量に対して、20~80、または20~60、または20~40重量%(重量パーセント)の範囲である。
【0101】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水和性有機溶媒およびバインダーは、バインダーが有機溶媒またはそれを含む水溶液中に溶解可能および/または分散可能なように選択する。「溶解可能または分散可能」とは、水溶液または有機溶媒と混合されたときに沈殿するバインダーの量が、その重量の30%以下、または20%以下、または10%以下であることを意味する。
【0102】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、水和性有機溶媒およびバインダーは、互いに化学的に不活性なものを選択する、即ち、有機溶媒とバインダーとが接触したとき、例えば、室温および/または本明細書に記載するモールドキャスト法(脱バインダーの前)に使用する条件において接触させたときに、互いに化学的に反応しない。
【0103】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、有機溶媒はアルキレングリコール、例えば、下記式で表されるアルキレングリコールである。
RaO-[(CR’R”)z-O]y-Rb
式中、Ra、Rb、R’およびR”はそれぞれ独立に水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、zは1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2または3の整数であり、yは1以上の整数である。好ましくはR’およびR”は共に水素である。好ましくは、RaおよびRbの一方または両方がアルキルである。zが2でyが1のとき、この基はエチレングリコールである。zが3でyが1のとき、この基はプロピレングリコールである。
【0104】
例示的な実施形態によると、有機溶媒はプロピレングリコールであり、いくつかの実施形態においてそれはプロピレングリコールメチルエーテルである。
【0105】
本明細書で定義した蒸発速度を有する他の水和性有機溶媒も想定される。
【0106】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーの量は、前記配合物の総重量に対して、10重量%以下、または5重量%以下、または3重量%以下、または2重量%以下である。
【0107】
いくつかの実施形態においては、バインダーの量は、前記配合物の総重量に対して、0.8~2重量%の範囲であり、その中の任意の中間値および副範囲も含む。
【0108】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーは、脱バインダー工程におけるバインダーの完全な熱分解(thermolization)を確保する、および/またはブラウン体を焼結に付したときにバインダーが残らないことを確保するために、易焼結性材料の焼結温度よりも少なくとも100℃低い温度で熱分解可能である。
【0109】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーは、モールド材を除去する条件下に付されたときに完全な形態を保持する。例えば、バインダーは、モールド材を溶解する有機溶媒と接触したとき、および/またはモールド材の溶融温度において、非溶解性である。
【0110】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、約5ミリバールの減圧下におけるバインダーの体積収縮率は1%未満である。
【0111】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーのTgは少なくとも30℃、または少なくとも40℃である。
【0112】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、バインダーは、少なくとも0℃、または少なくとも5℃または少なくとも10℃のフィルム形成温度(TMF)によって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、TMFは0~10℃の範囲である。いくつかの実施形態においては、TMFは、減圧下で水溶液(水性担体)が蒸発する温度を超えない。
【0113】
バインダーのさらなる特徴および例示的な適切なバインダーは後述する実施例に記載されている。
【0114】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、バインダーは、(メタ)アクリル重合体、即ち、アクリルおよび/またはメタクリル重合体または共重合体からなるまたは含む。アクリル共重合体は、例えば、アクリル/メタクリル骨格単位と、スチレン骨格単位等の芳香族骨格単位とを含む共重合体であり得る。
【0115】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、1以上の付加材料(ここで添加物とも称される)を含む。このような材料としては、例えば、分散剤(分散剤)、pH調整剤、消泡剤、レオロジー改質剤、増粘剤、界面活性剤、等が挙げられる。
【0116】
例示的なこのような材料は後述する実施例に記載されている。
【0117】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物のpHはアルカリ性である、例えば、pHは少なくとも8、または8~10の範囲である。いくつかの実施形態においては、pHはバインダーがそのままでは硬化しないように選択される。
【0118】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物の粘度は10000~50000、または10000~30000センチポアズの範囲であり、その中の任意の中間値および副範囲も含む。
【0119】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、5ミリバールまたは10ミリバールの減圧下においてずり減粘挙動を示さないように設計される。
【0120】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、モールド材配合物またはモールド材は、炭素数が少なくとも20の飽和および/または不飽和の炭化水素を含む。いくつかの実施形態においては、炭化水素は炭素原子及び水素原子からなる。いくつかの実施形態においては、炭化水素の炭素原子数は30、32、34、36、38、40、またはそれ以上である。例示的なモールド材はワックス、例えば、ポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物、任意で酸化ワックスおよび/またはミクロ化ワックスとの組み合わせを含む鉱物蝋である。本明細書に記載する融点、および本明細書に記載する他の所望の/必須の特徴を有する任意の他のワックス材料も想定される。
【0121】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、配合物は、
85~95重量%の、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載した易焼結性材料の粉末と、
6~10重量%の、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載した、水および有機溶媒を含む水溶液と、
1~2重量%の、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したバインダーとを含む。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したキャスト材配合物およびその任意の組み合わせ、ならびに任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したモールド材配合物を含むキットが提供される。キャスト配合物およびモールド材配合物はキット内で個別に梱包されている。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したキャスト材配合物と、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載した製法において配合物を使用するための説明書とを含むキットが提供される。いくつかの実施形態においてキットは、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したモールド材配合物と共に配合物を使用するための説明書を含む。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に記載したキャスト材配合物によって形成されたキャスト材が提供される。いくつかの実施形態においてキャスト材は、水および/または有機溶媒の少なくとも一部が蒸発したときに形成される。
【0125】
「少なくとも一部」とは、水および/または有機溶媒の少なくとも20%、または少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%も意味する。
【0126】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、キャスト材は易焼結性材料粉末およびバインダーを含み、配合物中に存在する場合には、分散剤、消泡剤、レオロジー改質剤および/またはpH調整剤をさらに含む。
【0127】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、キャスト材は、少なくとも95%、または少なくとも97重量%、例えば、95%~約99重量%、または約97重量%~約99重量%の易焼結性材料を含み、キャスト材の残りの成分はバインダーと、配合物中に存在する場合は1種以上の付加成分である。
【0128】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、キャスト材は、本明細書で定義した減圧下(真空)で溶媒を除去して得られる。
【0129】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、キャスト材は、水および/または有機溶媒の、本明細書において定義した少なくとも一部が配合物から除去される条件に配合物が付されることで得られる。
【0130】
いくつかの実施形態によると、このような条件は温風の適応を含む。いくつかの実施形態によると、このような条件は、配合物を減圧下に付すことを含む。いくつかの実施形態によると、これら条件は、(例:本明細書に記載の)温風の適応および減圧下に付すことを含み、必須ではないが好ましくは温風の適応後に減圧下に付すことを含む。
【0131】
温風の適応および減圧下に付すことを実施するための条件は、後に詳細に説明する。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態によると、後述する実施例1に記載したキャスト材配合物が提供される。キャスト材配合物は、本明細書において、易焼結性ペースト配合物とも称する。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態によると、表1、2または3およびその説明によって提示された材料/成分を含む、またはこれらからなるキャスト材配合物が提供される。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態によると、表4およびその説明によって提示された成分を含む、またはこれらからなるキャスト材配合物が提供される。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したキャスト材配合物を作製するための、バインダー、水溶液および粉末を室温で混合することを含む方法が提供される。例示的な方法は後述する実施例で説明する。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に記載するキャスト材配合物を使用する、焼結材料を含むまたは焼結材料からなる物体(例:三次元物体)のための付加製造の方法が提供される。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態によると、付加製造法は、本明細書に記載するモールドキャスト法からなる、または当該モールドキャスト法を含む。
【0138】
使用する一般的な方法は下記工程を含む。
a)物体の一層を画定するために第1のモールドをプリントし、
b)第1のモールドを任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したキャスト材配合物で充填し、物体の第1の層を形成し、
c)第1の層の上に第2のモールドをプリントし、第2の層を画定し、
d)第1の層の上の第2のモールドを、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したキャスト材配合物で充填し、第2の層を形成する。
【0139】
方法は、モールド化多層物体が形成されるまで、モールドのプリンティングとキャスティングを交互に繰り返す。
【0140】
以後、「ペースト」または「キャスト材」に言及した場合、本実施形態および任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したキャスト材配合物が含まれるものとする。
【0141】
いくつかの実施形態においては、プリントする場所に封止フードが設けられ、モールド内にペーストを適応可能なように初めに第1の位置に開かれ、その後閉められて、モールドと、モールド内に適応されたペーストとの周りに気密な封止を提供する。その後、真空源が閉じた封止フード内の空気を排気し、ペーストを真空状態にさらす。真空はペーストから液体を除去し、ペーストを固化させる。
【0142】
グリーン体を得るためのモールド材の除去と、続くブラウン体を得るためのバインダーの除去が実施される。焼結材料を含むまたは焼結材料からなる最終物体を得るために、その後、焼結に付すことができる。
【0143】
最終物体は製品そのものであっても、製品の部分であってもよい。
【0144】
焼結が必要な場合に、不定形を取り扱うための追加の方法が提供される。 本明細書で定義した付加製造法をさらに用いた関連する製法において、製品または部分に相補的な形状を有する支持部材をプリントする。支持部材は、焼結のために炉に入れる前に物体を相補的な形状にはめ込むことで、焼結の際に物体を支持する。
【0145】
図1Aは、本実施形態のいくつかによる形成多層物体の製造方法を示す単純化したフローチャートである。第1のボックス10は、例えば、物体の最終形状に応じて構成されたパターンに基づき、本明細書に記載するモールド材配合物を分注する、物体の一層を画定するための第1のモールドのプリントを表す。モールドは、本明細書で説明したような公知の付加製造技術を用いてプリントしてもよい。ボックス12は、ボックス10でプリントしたモールドを充填するようにキャスト材配合物(例:任意の対応する実施形態において記載したもの)を注入することを表す。その後、キャスト材は、最終的に形成される多層物体の第1の層を形成し得る。
【0146】
ボックス14では、第2の層モールドが、第1の層および/または第1のモールド層の上にプリントされる。場合によっては、第2の層は、少なくとも一の寸法において第1の層よりも小さいため、第2の層のモールドは第1の層のキャスト部の上に積層される。後に詳細に説明するように、キャスト層はプリントを支持するように硬化されてもよいし、第2の層のモールドを支持するのに十分な程度まで第1の層が乾燥するか固化するまで、第2の層のモールドのプリントを保留してもよい。
【0147】
ボックス16では、物体の第2の層を形成するために、(例:任意の対応する実施形態について本明細書に記載した)キャスト材配合物を第2の層のモールドに注入する。ボックス18に示したように、必要な数の層を有する成形多層物体を形成するのに必要な回数だけ工程を繰り返す。異なる層は異なる厚みでもよいことを理解されたい。異なる層は、同じまたは異なるキャスト材配合物を用いて形成され得る。異なるキャスト材配合物は、互いに、例えば、易焼結性材料の種類および/または粒径と粒径分布、1以上のバインダー材料の種類、および/または本明細書に記載する有機溶媒の種類および/または量が異なり得る。
【0148】
注入後、キャスト層の新しい表面は、20および22に示したように、任意で、表面仕上げ用のツールを用いて表面仕上げまたは研磨してもよい。
【0149】
モールドは、キャスト温度および他のキャスト条件においてキャスト材を保持するのに十分な強度を有する標準的モールドプリンティング材料を使用してプリントすることができる。任意の標準3Dプリント技術、例えば、熱溶解積層法(FDM)またはインクジェットプリンティング(例:3Dインクジェットプリンティング)をモールドのプリントに用いてもよい。
【0150】
いくつかの実施形態においては、モールド材の融点温度はキャスト材の融点よりも低く、そうすることで、プリントされた物体の準備が整ったら、加熱によりモールドを取り去ることができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、所望の温度以上に工程が加熱される傾向がある。よって、気流などの冷却工程を使用してもよい。
【0152】
キャスト材配合物の固化は、蒸発またはエネルギー硬化を含む活性化反応、例えば熱硬化や、UV硬化等を含んでもよい。温風/熱風の送風に加えて、IR照射、電磁波照射、またはUV照射も使用することができる。
【0153】
AM法で得られた多層物体は、次に、モールド材を融解させるために加熱するか、モールド材を溶解させるために溶媒に浸漬させることでき、その後、添加材の一部を浸出させるために溶媒に浸漬したり、バインダーを除去するためにより高温で加熱したりしてもよく、さらに粉末を融着させるために焼結させ、さらにはHIP(熱間等方圧加圧)といった他の一般的な熱工程に付すことさえもできる。
【0154】
従って、本実施形態は、易焼結性材料を含む成形物体を作製するための手段を提供し得る。
【0155】
いくつかの実施形態においては、モールド材およびキャスト材は、キャスト材がモールド材に対して非混和性であり、逆もまた同様となるように選択される。例示的な実施形態において、キャスト材配合物は本明細書に記載する水系の配合物であり、モールド材は疎水性の材料、ワックスまたは本明細書に記載する他の長鎖炭化水素である。
【0156】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、本実施形態のキャスト材配合物(ペースト)は、モールドの一方向から流れてモールドを充填し、モールド界面の表面のモールド材の上に層をきちんと積層することを可能にするレオロジー特性を有する。
【0157】
モールド設計の手法は、スリップキャスト材に対するモールド材の荷重を削減させることを可能にする。設計工程の工法は、構造を支持するために、積層されるモールド材の重量が可能な限り広い面積に対して分割されることを確実にすることができる。
【0158】
実施形態においては、キャスト材を注入したときにモールドが完全な形態を保持するように、モールド材の粘度はキャスト材の粘度よりも高くてもよい。キャスト材がモールドを完全に充填できるように、良好な浸潤性を有してもよい。
【0159】
実施形態においては、キャスト材配合物は室温では低粘度であり、モールド材に対して良好な浸潤性を有してもよい。キャスト材配合物は積層後に、本明細書に記載する硬化条件への暴露によって硬化可能でもよい。
【0160】
AM製法において、本明細書に記載する多層物体の形成を使用し、機械的または化学的な欠陥のない強い層間結合をもって製品を組み立てることができる。
【0161】
キャスティングまたは注入は、必要な機械的性質を提供するために材料の厳密な制御と共に昇温下で実施しても良い。注入は、分注制御ユニットからなる液体分注システムを使用してもよい。充填材料の量は、体積、オーバーフロー計数等のサブ・モールド(Sub Mold)・パラメーターに基づいて設定することができる。そして、キャスト材は、スキージまたはブレードといった機械的手段、あるいは任意の振動手法を用いる、自己平坦化特性によって平坦化されてもよい。
【0162】
その後、アセンブリを高温に暴露する、あるいは酸等またはモールド材を溶解するための溶媒への浸漬による化学溶解法、あるいは他の方法によって、サブ・モールド、即ち、個別の層のモールドを、除去してもよい。ワックスをベースとするモールドの場合、適切な温度は50~250℃の範囲内である。
【0163】
脱バインダーおよび焼結工程は、キャスト材の活性部分の脱バインダーおよび焼結を可能せしめるための温度上昇を含んでもよく、脱バインダーおよび焼結のための典型的な温度は、実際の材料および最終製品の必要とする機械特性に応じて、200℃~1800℃である。
【0164】
本実施形態において提案する製法によると、ペーストキャスト材は、高ずり応力下および温度制御下においてキャストされる。本実施形態におけるペーストキャスト材は、高粘度と高硬度でキャストされたキャスト材からなる前の層の上に積層され、低温下に置かれてもよい。
【0165】
乾燥、脱バインダーおよび焼結は、1つの装置に組み込まれているか、または別途提供される加熱炉内で実施することができる。
【0166】
ここで、
図1Aに基づく製法についてより詳細に説明する。
【0167】
製法はキャスト材配合物とモールド材配合物とを使用し得る。モールド材配合物は、例えば、300℃未満で凍結し、シャープな融点を有する材料(鉱物蝋など)でもよい。モールド材は、上述したFDMまたはインクジェット技術などの、制御された付加製造ツールによって適応させることができるため、このような手法に適した材料から選択される。
【0168】
次に
図1Bに参照するが、この製法は、ボックス10に示したように、モールドの作製を含み、融点が少なくとも60℃である鉱物蝋、UV/EB硬化性アクリル、メタクリル、熱硬化性エポキシ、ポリウレタン等のいずれかを使用して、モールド部分を形成することができる。好ましくは、モールド材は本明細書に記載するワックスである。
【0169】
トレイを設置し、第1の層のモールドのサブパートをトレイの上に作製する。
【0170】
キャスト材配合物(例:本明細書に記載のペースト)でモールドを次に充填する12。キャスト材は注ぎ入れてもよいし、実施形態によっては、モールド壁と詳細な接触を確実にするために高ずり応力下でモールド内に射出して、モールドの正しく、完全な充填を確実にする。モールドそのものは射出力に耐えうる機械強度を有してもよい。
【0171】
こうして形成された(n-1)層は、次のn番目の層の基礎を提供する。
【0172】
キャスト材のスラリーまたはペーストの固体化または固化23は、モールド材からなる次の層の荷重を層が受け止められるように行われることが必要となる場合もある。その他の場合は、既に形成された層の粘度で十分となり得る。キャスト材配合物の固体化または固化は、配合物の成分に応じて、種々の手段で達成することができる。次に例示的な手段を列挙する。
バインダーの重合化および/または架橋が生じる硬化条件にキャスト材配合物を付す、
その少なくとも1つの成分が固体化する温度にキャスト材配合物を付す、および/または
液状担体(例:本明細書に記載する水溶液)の少なくとも一部を蒸発させて、ペースト配合物を固化する。
【0173】
当該製法は、次のモールド層14のプリントによって続く。
【0174】
第2のモールド層は、先にキャストしたペースト材料の表面にプリントしてもよいし、前の層からのモールド材の上にも作製されてもよい。
【0175】
次の工程で、第1の層に対して実施したのと同様の手順で、第2のモールド層を充填する-16。固体化24も必要に応じて行われる。
【0176】
製品に必要な追加の層ごとに、固化、プリント、および充填の工程を繰り返す-18。
【0177】
最終製品の形状に固化したキャスト材ペーストは、ここでサブ・モールドに埋め込まれる。
【0178】
ここで最終物体を安定化し得る25。ずり応力を止めながら、スラリーまたはペーストは固化を始めてもよく、そうすることでキャスト材にグリーン強度を付与する。グリーン強度とは、その繊細な部分および鋭利な角を壊すことなく、焼結に付される前の機械的操作に粉末が耐えられるように、押し固めた粉末に付与され得る機械強度である。
【0179】
その後、モールド材を除去してもよい-26。除去には、製品およびモールドをモールドの融点まで加熱し、モールド材を液状化して再利用のために回収することが含まれ得る。代わりに、本明細書に記載するような、モールド材を溶解する適切な有機溶媒中の化学溶解によって、モールドを除去してもよい。
【0180】
全てのモールドおよびサブ・モールド部品の製造において、溶融したモールド材(鉱物蝋等)を再利用のために回収するシンクを設けてもよい。
【0181】
モールドを除去し、本明細書に記載のグリーン体が得られたら、ペーストの犠牲材料(例:バインダー材料)を、例えば、制御下での最適温度への過熱による犠牲材料の分解によって除去する-27。
【0182】
犠牲材料の除去後、活性材料の粉末を固体状に融着(例:焼結)させてもよい。熱処理-ボックス27-例えば、焼結は、製品の所望の最終物性を得るために実施することができる。上述したように、400℃~1800℃の例示的な温度、特に500℃超の温度、を使用してもよい。
【0183】
上記方法の変法は、製造工程の途中で部分の硬化を促進するための真空の適応に基づくものである。
【0184】
物質の沸点は圧力の関数である。例えば、1バール(1気圧)の圧力では、水の沸点は約100℃である。高さ4500mの山の頂上では、しかし、低い大気圧故に、水は85℃ちょうどで沸騰する。例えば、
図5を参照。
【0185】
さらに低い、20ミリバールの近真空圧力では、水の沸点は約25℃であり、10ミリバールの沸点は約7℃であり、さらに低い1ミリバールの真空は、さらに低い沸点を提供するだけでなく、ペーストおよびモールドに残留する液体を引き出すことができる。よって、ペーストの固化に対する真空の効果は実際は乾燥のみならず、捕捉された液体の除去である。
【0186】
上記に基づき、本発明の実施形態は、初めに、例えばモールドのプリントによって、層を形成し、次にペーストでモールドを充填する。形成層は次に、例えば、45℃の熱風で30秒間加熱してもよい。
【0187】
加熱に続き、層の周りに真空封止を形成する真空フードを層にかぶせる。封止は、通常、製造済みの残りの部分に及んでもよい。次に、適切なレベルの真空、例えば、約1ミリバールの圧力レベルになるようにフード内の空気(volume)を吸引し、30秒程度の一定時間保持する。
【0188】
最後に、大気圧になるように内部に通気する。
【0189】
第1の加熱工程は、液体分子(通常は水または多様な溶媒)のエネルギーを増加させるために、部分の表面を励起し得る。
【0190】
実施形態においては、加熱と、続く真空とのサイクルを使用することができる。さらなる実施形態においては、真空を開放するための通気は暖められた空気を用いて実施してもよい。
【0191】
モールド壁内のペーストを固化するための上記方法を実施可能な装置は、モールド内にペーストを適応可能なように初めに第1の位置に開かれ、その後、閉じられて、モールドと、モールド内に適応されたペーストとの周りに気密な封止を提供する封止フードを含んでもよい。その後、真空源が閉鎖位置の封止フード内の空気を排気し、ペーストを真空状態にさらす。真空はペーストから水および他の液体を除去し、ペーストを固化させる。
【0192】
図2は、成形多層物体を製造するための方法を示す、単純化したフローチャートである。第1の層をペーストを用いて形成する-ボックス200。後述するように、実施形態においては、ペーストで充填される面積を内包するようにモールドをプリントし、ペーストをプリントしたモールド内に広げて層を形成してもよい。ペーストから層を形成する他の方法を使用してもよい。
【0193】
ボックス202に示したように、層を加熱する任意の工程が存在する。例えば、温風を新しく形成された層に吹き付けてもよい。真空を用いた固化はペーストの予備加熱無しでも機能するため、加熱は任意である。しかし、加熱の使用は蒸発速度効率(evaporation rate efficiency)を向上させ得る。モールドは、典型的には、プリンティングに続く除去が容易であるように、低融点材料、または代わりに、易溶解性材料で形成されている。よって加熱は、モールド融解温度未満に限定される、例えば、融解温度の20℃以下に保持される。つまり、例えばモールドの融解温度が80℃の場合、加熱は60℃に限定され得る。温風を加熱に使用する場合、温風はモールド材の融点よりも少なくとも少し低い温度に維持される。
【0194】
続いて、新しく形成された層は、例えば、形成されている部分または製品の出現してきた構造の周りの真空フードを閉じることで、気密性のチャンバー内に封止してもよい-ボックス204。
【0195】
次にペーストを固化するために、あらかじめ定めた時間にわたり、層を真空下においてもよい。真空は現在の温度でペースト内の液体が沸騰するのに十分な真空である必要がある。
【0196】
図5は、対数目盛に基づく水の相図を示し、10ミリバール等の低圧力では、水の沸点は6.8℃である。さらに低い圧力である1ミリバールでは、沸点は単に関与する機構となり、低圧力が残存蒸気をペーストから実際に抜き出し得る。真空は、効果が得られるように選択した、あらかじめ決めておいた期間、例えば、30秒間、維持する-ボックス208の通り。ペーストは、独自の相図を示す、水以外の溶媒を含み得ることを指摘しておく。
【0197】
ボックス210のように、真空を開放し、真空フードを取り除く。
【0198】
製法は連続した付加層をそれぞれ前の層の上にプリントすることで、継続してもよい。各層について、モールドをプリントし、本実施形態におけるキャスト材ペースト配合物で充填する。層は封止する。真空とし、必要な時間保持し、その後開放し、最終的に形成された多層製品または部分が得られ得る。
【0199】
図4のボックス20に示したように、現在形成している層の平滑化を実施してもよい。平滑化は、固化の前に、スパチュラ、ブレードなどで表面をなぞることで実施してもよい。代わりに、または加えて、平滑化は固化後に、平削り工程を用いて不用な突起を切り出すことで実施してもよい。さらなる代替としては、平滑化を先に実施し、平削りを固化後に実施してもよい。いずれの場合も、次の層をプリントするための基礎として平滑な表面を提供する。これは次の層が前の層の仕上げ済みの層に上に製造されることを確実にするためである。
【0200】
ここで、
図2に示した実施形態の変法を示す
図3に参照する。
図2と同じ部分は同じ参照番号で示し、本変法の理解のために必要でない限り、再度説明はしない。
図3に示したように、封止204と、減圧下での真空処理206と、一定期間の保持208と、真空の開放とを、個別の層ごとに繰り返し、よって、個別の層は2回、3回またはそれ以上の回数真空下に付されてもよい。
【0201】
加熱202も2回、3回またはそれ以上の回数実施してもよい。一実施形態においては、サイクルを通じて真空フードが層にかぶせられている。層は初めに加熱され、その後、真空フードが適応される。真空にし、必要な時間維持され、その後、温めた空気を真空フード内に流入させることで真空を開放する。暖かい空気をフードから排出することで、再度真空にする。
【0202】
平削りは、固化後に各層に対して実施してもよい。
【0203】
実施形態においては、各サイクルごとに層の硬度を試験する。高度が一定レベル以下のときに、更なるサイクルを実施する。
【0204】
より詳細には、モールドをプリントし、ペースト配合物を適応してスキージでモールドを充填した後、ペーストは濡れている。次の工程である空気乾燥工程において、ペースト中の液体の一部が除去されるが、しかし、層は十分には固くなく、平削り工程を耐えることはできない。
【0205】
真空工程は、作製時に物体中に捕捉された液体の大部分を乾燥させて除去する。
【0206】
真空工程の実施後に層は、切断(平削り)工程を耐えるのに十分な硬度となり得るが、ここで硬度と強度には相関があり、固い層はグリーン強度の高い部分を意味する。グリーン強度については詳細に上述した。
【0207】
硬度を測定するためのいくつかの方法および基準が存在し、工業および冶金の分野で一般的に使用されている方法は圧入硬度の測定である。一般的な圧入硬度の基準は、数ある中でも、ロックウエル、ビッカーズ、ショアおよびブリンネルであり、一実施形態においては、デュロメーターを用いたショアA硬度試験を実施する。ショア硬度が90以上の層は効果的に平坦化させることができる。ショア硬度が90未満の層は、平削り工程で破壊され得る。よって本実施形態においては、真空および加熱のサイクルが層をショア硬度90以上まで硬化させない場合、サイクルを繰り返す。必要な硬度が達成されれば、さらなるサイクルは使用しない。
【0208】
更なる実施形態においては、層が形成されたら初めに真空フードをかぶせ、フード内に温風を導入することで初期加熱を実施することもできる。続く真空は、いくつかの実施形態においては、適切な低圧の温風を使用する。他の加熱方法には、赤外線加熱が含まれる。真空下で放射加熱を行ってもよい。
【0209】
物体の連続層は、層の融着を容易にするために、同じ材料で形成されていてもよいことに着目されたい。代わりに、最終製品が異なる場所に異なる機械物資を必要とする場合、異なるキャスト材配合物を異なる層に使用することもできる。
【0210】
ここで、本実施形態による成形多層物体の製造方法を単純化したフローチャートである
図4に参照する。第1のボックス310は、物体の一層を画定するための第1のモールドのプリントを示す。モールドは公知の付加製造技術(例:3Dインクジェットプリンティング)を用いてプリントしてもよい。ボックス312は、ボックス310でプリントしたモールドを(本実施形態における)キャスト材配合物で充填するために広げることを示す。スキージによってキャスト材配合物をモールド全体に広げてもよい。
【0211】
ペースト状のキャスト材配合物は、次に、最終成形多層物体の第1の層を形成するが、現時点では柔らかく、一定量の液体(本明細書に記載の水溶液)を含み、
図2または3に概要を示した方法を用いて、層を硬化させることができる-ボックス313。
【0212】
ボックス314においては、第2の層のモールドを次に第1の層および/または第1のモールド層の上にプリントする。場合によっては、第2の層は、少なくとも一の寸法において第1の層よりも小さいため、第2の層のモールドは第1の層のキャスト材部分の上に積層される。後に詳細に説明するように、キャスト材の層は第2の層のモールドのプリントを支持するように、ここで硬化された。
【0213】
ボックス316では、物体の第2の層を形成するために、キャスト材配合物を第2の層のモールドに注入する。ボックス317に示したように、
図2または3の硬化工程を実施する。ボックス318に示したように、必要な数の層を有する成形多層物体または部分を形成するために、更に層を付加する。
【0214】
注入後、そして任意で固化の前または後、あるいは両方で、キャスト材層の新しい表面を、320、321、322および323に示したように、任意で、表面仕上げ用のツールを用いて平滑化、表面仕上げ、平坦化または研磨してもよい。
【0215】
モールドは、本明細書に記載のキャスト材を保持するのに十分な強度を有する標準的モールド材を使用してプリントしてもよい。実施形態においては、層をキャストしてもよく、この場合、モールドは、キャスト温度および他のキャスト条件においてキャスト材を保持することが求められ得る。
【0216】
任意の標準3Dプリント技術、例えば、熱溶解積層法(FDM)または3Dインクジェットプリンティングをモールドのプリントに用いてもよい。
【0217】
実施形態においては、モールドプリント材料の融点温度はキャスト材または他の充填材料の融点よりも低く、そうすることで、製品の準備が整ったら、加熱によりモールドを取り去ることができる。代わりに、モールドを適切な溶媒で溶解することもできる。
【0218】
いくつかの実施形態においては、次に最終物体は、モールド材を融解させるために加熱するか、モールド材を溶解させるために溶媒に浸漬してもよく、その後、添加材の一部を浸出させるために溶媒に浸漬したり、バインダーを除去するためにより高温で加熱したりしてもよく、さらに粉末を融着させるために焼結させ、さらにはHIP(熱間等方圧加圧)といった他の一般的な熱工程に付すことさえもできる。従って、本実施形態は、成形セラミックスまたは金属製品あるいは複合製品を作製する手段を提供し得る。
【0219】
いくつかの実施形態においては、キャスト材配合物を広げたときにモールドが完全な形態を保持するように、モールド材の粘度はキャスト材配合物の粘度よりも高くてもよい。キャスト材配合物がモールドを完全に充填できるように、良好な浸潤性を有してもよい。
【0220】
モールド層へのキャスト材配合物の(例:塗広げおよび/または注入による)分注は、必要な機械的性質を提供するための材料の厳密な制御と共に、昇温下で実施しても良い。注入は、分注制御ユニットからなる液体分注システムを使用してもよい。キャスト材配合物の量は、体積、オーバーフロー計数等のサブ・モールド・パラメーターに基づいて設定することができる。そして、キャスト材配合物は、上述したスキージまたはブレードといった機械的手段、あるいは任意の振動手法を用いて、自己平坦化特性によって、平坦化されてもよい。
【0221】
その後、アセンブリの高温暴露または酸等を使用する化学溶解法、あるいはモールド材を溶解するための溶媒への浸漬、あるいは他の方法によって、サブ・モールド、即ち、個別の層のモールドを、除去してもよい。ワックスをベースとするモールドの場合、適切な温度は100~200℃の範囲内である。
【0222】
脱バインダーおよび焼結工程は、キャスト材の活性部分の脱バインダーおよび焼結を可能せしめるための温度上昇を含んでもよく、脱バインダーおよび焼結のための典型的な温度は、実際の材料および最終製品の必要とする機械特性に応じて、200℃~1800℃の範囲内である。
【0223】
本実施形態において提案する製法によると、キャスト材ペースト配合物は高ずり応力下、温度制御下において分注される。本実施形態におけるペーストキャスト材は、硬化されたキャスト材の前の層の上に分注されてもよい。
【0224】
2つの連続する層が同じ材料で構成されている場合、これらは同じ物性を示すと予測される。乾燥および焼結は、1つの装置に組み込まれているか、または別途提供される加熱炉内で実施することができる。
【0225】
【0226】
ペーストキャスト材配合物は、モールド材の氷点よりも高く、且つ融点よりも低い温度で乾燥および硬化させてもよい。キャスト材の第1の層の安定性を確保するために、キャスト材配合物は、静止した非流動性(still non-flowing)材料が硬化し、必要な時には、適切なずり減粘およびチキソトロピーを示し、粘度が変化するまたは変化しないようなレオロジー特性を有するように設計する。
【0227】
図4に再び参照すると、製法は、ボックス310に示したように、モールドの作製においては、3Dプリンティングで、融点が少なくとも120℃の鉱物蝋を使用してモールド部分を形成してもよい。
【0228】
本実施形態のキャスト材配合物で次にモールドを充填する312。キャスト材配合物は注入してもよいし、実施形態によっては、モールド壁と詳細な接触を確実にするために高ずり応力下でモールド内に射出して、モールドの正しく、完全な充填を確実にしてもよい。モールドそのものは射出力に耐えうる機械強度を有してもよい。
【0229】
こうして形成された(n-1)層は、次のn番目の層の基礎を提供する。
【0230】
図2および3に示したようにペーストを固化することは、層がモールド材からなる次の層の荷重を受け止められるようにし得る。
【0231】
当該製法は、次のモールド層314のプリントによって続く。
【0232】
第2のモールド層は、前の層の表面にプリントしてもよく、前の層からのモールド材の上に作製されてもよい。
【0233】
次の工程で、第1の層に対して実施したのと同様の手順で、第2のモールド層を充填する-316。固化317も第2の層のために別途設けてもよい。
【0234】
物体に必要な追加の層ごとに、プリント、充填、任意の加熱、及び固化の工程を繰り返す-318。
【0235】
最終物体の形状に固化したキャスト材には、サブ・モールド、即ち、各層のために製造したモールドが今では埋め込まれている。
【0236】
全ての層が形成されたら、最終物体は任意で安定化してもよい。ずり応力を止めながら、キャスト材配合物は固化を始めてもよく、そうすることでキャスト材にグリーン強度を付与する。
【0237】
次にモールド材を除去してもよい。除去には、製品およびモールドを、モールドの融点まで加熱し、モールド材を液状化して再利用のために回収することが含まれ得る。代わりに、そして好ましくは、本明細書に記載する化学融解によって、モールドを除去してもよい。
【0238】
通常、
図2および3の固化工程は、液状担体(水溶液)をキャスト材から取り除いている。バインダー材料等の他の材料は、最適温度まで制御下で加熱することにより、ここで除去してもよい。モールドは既に除去されているため、加熱はもうモールドの融点による制限を受けない。
【0239】
犠牲材料を除去したのち、粉末を固体状に融着させてもよい。製品の所望の最終性質を得るために、焼結等の熱処理を実施し得る。本明細書に記載する例示的な温度を使用してもよい。
【0240】
本実施形態の配合物を有利に使用可能な例示的なモールドキャスト法は、国際公開第2018/203331号に記載されており、その内容は本参照をもって本願に組み込まれたものとする。
【0241】
本実施形態の配合物を有利に使用可能な例示的なモールドキャスト法は、米国特許仮出願第62/724,120号に記載されており、その内容は本参照をもって本願に組み込まれたものとする。
【0242】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載した方法およびその任意の組み合わせによって得られた製品が提供される。
【0243】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したモールドキャスト製法およびその任意の組み合わせによって得られ得る3Dモールドキャスト物体が提供される。
【0244】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したモールドキャスト製法およびその任意の組み合わせにおいて、モールド材の除去後に得られ得るグリーン体が提供される。
【0245】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したモールドキャスト製法およびその任意の組み合わせにおいて、モールド材およびバインダー材料、および他の添加剤の除去後に得られ得るブラウン体が提供される。
【0246】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、任意の対応する実施形態に関して本明細書に記載したモールドキャスト製法およびその任意の組み合わせによって得られ得る3Dモールドキャスト物体が提供される。
【0247】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、本明細書に記載する製品(例:本明細書に記載する易焼結性ペースト配合物を用い、任意で本明細書に記載する方法を使用して得られた製品)を含む、成形品またはその部分が提供される。
【0248】
例示的な成形品またはその部分としては、大きな物品、例えば、自動車、トラック、電車の車両、飛行機の車体、飛行機のエンジン、船舶、ヨットのマスト、信号機の柱、線路、油井ケーシング、水力発電タービン、核反応機の制御棒、窓、扉、鏡、天体観測用品や、小さな物品、例えば、車両エンジン、ギア、ファスナー、腕時計、調理道具、食品容器、自転車部品、包装品、家電製品の外装、電気器具の吸熱器、高輝度発光ダイオード(LED)照明の基材、金物器具や他の金属製の物品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0249】
本願から発生する特許の存続期間中に多くの関連する成形技術、3Dプリント技術およびキャスト技術が開発されることが期待され、対応する用語の範囲にはこのような新規技術も演繹的に包含されることを意図する。
【0250】
本願から発生する特許の存続期間中に多くの関連するモールド材、易焼結性材料、バインダー、およびその他の本実施形態に使用可能な材料が開発されることが期待され、対応する用語の範囲にはこのような新規技術も演繹的に包含されることを意図する。
【0251】
本明細書で使用する「約」は、±10%または±5%を指す。
【0252】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。
【0253】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0254】
「から実質的になる」という用語は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。但しこれは、追加の成分、工程および/または部分が、請求項に記載の組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0255】
本明細書において、単数形を表す「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数をも対象とする。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
【0256】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0257】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
【0258】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0259】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0260】
上述したように、本明細書に記載され、特許請求の範囲に請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【実施例】
【0261】
ここで、上記の記載と共に本発明を限定することなく説明する以下の実施例に参照する。
【0262】
実施例1
例示的な配合物
ステンレス鋼粉末を易焼結性材料として含む、本実施形態における例示的な配合物を作成するために使用する材料を下記表1に提示した。
【0263】
【0264】
易焼結性材料の粉末は、金属、セラミックスおよび/またはガラスの少なくとも1種の粉末を含み得る。いくつかの実施形態においては、易焼結性材料は、少なくとも500℃、または少なくとも800℃、または少なくとも1000℃の温度で易焼結性であり、そうすることによって焼結の前にバインダーの完全な熱分解が確実となる。
【0265】
「焼結する」とは、粉末を溶融させることなく粘着した塊を形成することを意味する。
【0266】
例示的な易焼結性ガラス材料としては、ソーダ石灰シリカガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸ガラスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0267】
例示的な易焼結性セラミックス材料としては、チタニア、シリカ、ジルコニアおよびアルミナ等の金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0268】
例示的な易焼結性金属材料としては、金、白金、銅、銀、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、バリウム、ベリリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリン、セシウム、クロム、コバルト、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、ホロミウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、ルテチウム、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ネオジミウム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、カリウム、プラセオジミウム、レニウム、ロジウム、ルビジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、タンタル、テルリウム、テルビウム、タリウム、錫、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、イッテルビウム、ジルコニウム、これら金属の2種以上を含む合金、例えば、真鍮、鋼(例:ステンレス鋼)およびブロンズが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0269】
例示的な実施形態において、易焼結性材料はステンレス鋼粉末である、またはステンレス鋼粉末を含む。
【0270】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、粉末の平均粒径は、本明細書に記載するAM法によって形成される層の厚みの50%以下である。例示的な実施形態において、平均粒径は1~約100ミクロン、または1~約50ミクロン、または1~約20ミクロン(例:5~15、または5~10ミクロン)の範囲であり、その中の任意の中間値および副範囲も含む。
【0271】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、粉末は、例えば、バインダージェット付加製造法またはレーザー光付加製造法または電子線付加製造法に通常使用されるよりも高い粒径分布(PSD)によって特徴づけられる。例えば、d(50)が10ミクロン、カットオフが45ミクロンである。論理に縛られるものではないが、高PSDは、より高いタップ密度およびプリントされた物体における粒子のより高密度のパッケージングを提供すると考えられる。
【0272】
「バインダー」は、熱または他の硬化性エネルギーまたは硬化条件(例えば、pH変化)に暴露されたときに、硬化性材料を硬化(固化)可能なものを意味する。バインダーは、典型的には、硬化条件(例:熱などの硬化エネルギー)に暴露されたときにさらなる重合(例:鎖伸長)および/または架橋を経て、硬化した材料を提供する重合性材料または重合体材料を含む。
【0273】
本発明のいくつかの実施形態において、バインダーは、硬化条件下において架橋するポリマー材料である。
【0274】
これら実施形態のいくつかにおいて、バインダーは自己架橋する。
【0275】
本実施形態によると、バインダーは、以下の特性の1以上、好ましくは2以上、好ましくは全てを満たすものから選択される。
減圧下における収縮率が低い(例:1%未満)、
フィルム形成の傾向が低い、例えば、フィルム形成温度(TMF)が5℃超または10℃超、あるいは、キャスト材の固化を実施する(例:真空下の)温度よりも高い、
Tgが少なくとも30℃または少なくとも40℃、
熱分解可能温度が易焼結性材料の焼結温度よりも低い、例えば、1000℃未満、好ましくは600℃未満、または500℃未満であって、モールド材の融点よりも高い、そして
低粘度(例:少なくとも高ずり速度下で溶液様の挙動を示す)、例えば、高ずり速度下で粘度が10000センチポアズ未満であり、任意で、より低いずり速度下ではより高い粘度(例:常温ではずり減粘挙動を示す)である。いくつかの実施形態においては、バインダーは、それぞれが配合物に対して上記性質の1以上を付与する2種以上の異なる材料を含む。例えば、1種のバインダー材料は高いTgを有し、1種のバインダー材料は低粘度であり、1種のバインダー材料は高TMFである、というように、選択したバインダー材料の組み合わせとそれらの相対量が、本明細書においてバインダーについて定義した所望の性質を提供する。
【0276】
例示的な実施形態において、バインダーは2種のバインダー材料、ここでは「バインダーA」および「バインダーB」とも称する、を含む。これら実施形態のいくつかにおいて、バインダーAはニュートン性流体と特徴づけられ、30℃超または40℃超のTgを有する。
【0277】
これら実施形態のいくつかにおいて、バインダーBはずり減粘挙動によって特徴づけられ、レオロジー改質剤としても機能する。
【0278】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、剛性、均質性、硬化工程および任意で行われる次の工程における割れの発生に対する耐性、モールド材を除去するための溶媒に対する耐性等のキャスト材の性質を付与するように、バインダーAおよび/またはBは選択される。
【0279】
例示的な実施形態において、バインダー材料の重量比の範囲は、バインダーA:バインダーBが1:3~3:1の範囲であり、その中の任意の中間値および副範囲も含む。
【0280】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、1以上のバインダー材料は、それぞれ独立に、(メタ)アクリル重合体、例えば、自己架橋性ポリ(メタ)アクリル重合体またはスチレン-アクリル共重合体である。
【0281】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、1以上のバインダー材料は、エマルションとして、あらかじめ水溶液に分散させる。これら実施形態のいくつかにおいて、エマルションは40~60重量%のポリマー性バインダー材料を含む。
【0282】
バインダーAとして適切な例示的な材料としては、下記名称で市販されているエマルションが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Joncryl(登録商標)8224、Joncryl(登録商標)-2178-E、Joncryl(登録商標)537-E、Joncryl(登録商標)8211、Joncryl(登録商標)617、Joncryl(登録商標)652、Joncryl(登録商標)646、Joncryl(登録商標)142E、Joncryl(登録商標)1685、Alberdingk(登録商標)AC 2523。
【0283】
バインダーAとして使用可能な例示的な材料は、Joncryl(登録商標)8224として市販されているエマルションに含まれるポリマー材料である。バインダーBとしての使用に適した例示的な材料としては、下記名称で市販されているエマルションに含まれるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Joncryl(登録商標)661、Rheovis AS 1125、Rheovis AS 1130、Rheovis HS 1303 EB、Rheovis PU 1291、Carbomer 940およびカルボキシメチルセルロース(CMC)。
【0284】
バインダーBとして使用可能な例示的な材料は、Joncryl(登録商標)661である。
【0285】
分散剤(分散剤)としての使用に適した例示的な材料としては乳化剤が挙げられ、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびクエン酸、ならびにDispex Ultra PX 4483、Dispex Ultra PX 4484、Dispex Ultra PX 4275、Dsipex Ultra PX 4575、DISPERBYK 180、DISPERBYK 192およびDISPERBYK 2060の商標で市販されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0286】
例示的な分散剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0287】
例示的な実施形態において、水性担体(例:水)中の分散剤の溶液または分散液を使用する。例示的な実施形態において、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび95重量%の水を含む溶液を分散剤として使用する。
【0288】
消泡剤として適切な例示的な材料には、可塑剤としても機能し得るものであって、所望の表面張力を配合物に付与するものが含まれる。例えば、BYKファミリーの化合物である、BYK 024、FoamStar SI 2210、FoamStar ST 2438、FoamStar SI 2240、Byk 093、Byk 025、Byk 1640、Byk 3455、BYK 1680、Foamex 810の商標で市販されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0289】
pH調整剤として適切な例示的な材料には、易焼結性材料が化学的に安定である(例:酸化を生じない)および/またはバインダーが化学的に安定である(例:架橋および/または更なる重合を行わない)pH値を配合物に付与する材料が挙げられる。
【0290】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、水和性有機溶媒は、本明細書において定義した蒸発速度である0.3~0.9、または0.3~0.8、または0.3~0.7によって特徴づけられる。
【0291】
特定の論理によって拘束されるものではないが、このように相対的に低い蒸発速度は、本明細書に記載するモールドキャストAM製法における配合物の使用を可能にすると考えられ、これは、配合物が分注されたときには溶媒は蒸発しないものの、配合物を分配し、例えば、本明細書に記載する加熱および/または減圧下における硬化に付したときには速やかに蒸発するためである。
【0292】
本願に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、水和性有機溶媒とは、バインダーおよび/またはモールド材と化学的に相互作用しないものである。いくつかの実施形態においては、有機溶媒はモールド材を溶解しない。
【0293】
例示的な溶媒はプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、CAS No.107-98-2(蒸発速度:0.62)である。他の例示的な適切な溶媒としては、プロピレングリコールプロピルエーテル(PnP)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PMA)およびジアセトンアルコール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0294】
水溶液の蒸発速度が0.8、0.9、または1を超えない限り、本明細書に記載する蒸発速度を有する有機溶媒に加えて、より高い蒸発速度を有する水混和性溶媒を水性溶媒に含めることもできる。
【0295】
本明細書を通じて、「水溶液」および「水性担体」という句は代替可能に使用される。
【0296】
本発明のいくつかの実施形態によると、例示的な配合物は以下を含む。
易焼結性材料粉末として、ステンレス鋼316L粉末、即ち、Huarui Chinaより得られた、平均粒子径が8~10ミクロン(例:d50:9ミクロン。
バインダーAとして、Joncryl(登録商標)8224、即ち、水中の45重量%のアクリル重合体。
バインダーBとして、Joncryl(登録商標)661、即ち、約22~23重量%のアクリル重合体、約53~54重量%の水、約20~21重量%のPM溶媒を含むエマルション。
分散剤として、水中の5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム。
消泡剤として、BYK024。
水和性有機溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、CAS No. 107-98-2。
pH調整剤として、モノエタノールアミン。
水として、逆浸透水DI水。
【0297】
本明細書に記載する成分を、必須ではないが、好ましくは室温で混合することで、本実施形態の配合物を作製した。
【0298】
例示的な手順では、バインダーB、水およびpH調整剤を密閉容器、任意で振動ミル内で15分間混合する。その後、消泡剤を添加し、得られた混合物をさらに5分間振動させる。次に有機溶媒を添加し、得られた混合物をさらに5分間振動させ、次に分散剤を添加し、さらなる混合を実施する。次いでバインダーAを添加し、さらに混合物を混合する。この段階で易焼結性材料粉末を添加し、得られた混合物を数時間(例:4時間)混合する。全工程を室温で実施する。
【0299】
下記表2は、本実施形態のいくつかによるキャスト材を形成するために有用な配合物の化学組成を示す。配合物は後述する手順で調製することができる。
【0300】
【0301】
下記表3は、本実施形態のいくつかによる例示的な配合物を100グラム調製するために使用する化学成分を示す。
【0302】
【0303】
ここに示した配合物は、温度21℃において、ブルックフィールドR/Sレオメーター、スピンドルP25で測定したとき、ペースト状である粘度範囲が約10000~50000センチポアズ(例:約30,000センチポアズ)である。
【0304】
実施例2
本明細書に記載するモールドキャスト3Dプリンティング法に、上記表2および表3に示した、本実施形態における例示的な配合物を使用し、本明細書に記載するように、配合物を減圧下で乾燥させた。モールド材配合物としては鉱物蝋、例えば、Fisher-Tropschポリオレフィンワックスと、ミクロ化ワックスと、ある種の酸化ワックスとの混合物を用いた。
【0305】
モールドキャスト法を完了したら、得られたプリント物体を脂肪族有機溶媒(例:ヘプタン類)と昇温下(例:50~70℃)で接触させてモールド材(例:本明細書に記載する炭化水素ワックス)を除去し、キャスト材で形成されたグリーン体を提供する。
【0306】
下記表4は、得られたグリーン体のキャスト材の化学組成を示す。
【0307】
【0308】
得られたグリーン体を次に以下の後処理に付した。
【0309】
「ブラウン体」を提供するために、得られたグリーン体を脱バインダー化(バインダー材料(s0)の除去)に付した。脱バインダー化は加熱、例えば250~650℃、2~10Torrに付すことで実施した。
【0310】
ブラウン体は次に、1000~1400℃の温度範囲、2~10Torrで焼結に付した。
【0311】
図6A~Hは、SEM顕微鏡、製造者:FEIモデルにインストールされたOxford EDSアナライザーとINCAプログラムによる観察によって撮影されたSEM画像であって、2種の倍率の例示的なペースト配合物(
図6Aおよび6B)、それをキャストモールド材中で使用して得られたグリーン体(
図6C)、脱バインダー化で得られた対応するブラウン体(
図6D)、およびそこから製造した、部分焼結された物体(
図6E~H)を示す。
【0312】
図7は、本明細書に記載の例示的な配合物を用いて作製したダンベル型試験片である。上の写真は、引っ張り強度試験に付したグリーン体であり、下の写真は最終焼結製品である。
【0313】
最終焼結製品をISO 6892-1:2016に従ってInstrone 3369装置で分析したところ、引っ張り強度は512MPa、伸長率は66%であった。
【0314】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、修正および変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、修正および変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0315】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
【0316】
さらに本願の基礎出願に係る書類も、本参照をもって本明細書に完全に組み込まれたものとする。