IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルーム エネルギー コーポレイションの特許一覧

特許7443417触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法
<>
  • 特許-触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法 図1
  • 特許-触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法 図2
  • 特許-触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法 図3A
  • 特許-触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法 図3B
  • 特許-触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法 図4
  • 特許-触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】触媒インク組成物および水素ポンピングプロトン交換膜電気化学セルの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20240227BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240227BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20240227BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALN20240227BHJP
   H01M 8/2495 20160101ALN20240227BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALN20240227BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240227BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240227BHJP
   C01B 3/36 20060101ALN20240227BHJP
   C25B 1/02 20060101ALN20240227BHJP
   C25B 9/23 20210101ALN20240227BHJP
   C25B 11/032 20210101ALN20240227BHJP
   C25B 11/052 20210101ALN20240227BHJP
   C25B 11/054 20210101ALN20240227BHJP
   C25B 11/069 20210101ALN20240227BHJP
   C25B 11/081 20210101ALN20240227BHJP
   C25B 11/089 20210101ALN20240227BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M4/86 B
H01M4/86 H
H01M4/92
H01M8/0662
H01M8/2495
H01M8/1004
H01M8/10 101
H01M8/12 101
C01B3/36
C25B1/02
C25B9/23
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/054
C25B11/069
C25B11/081
C25B11/089
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079275
(22)【出願日】2022-05-13
(65)【公開番号】P2022176910
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】202141022143
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ランガナタン,スリカンス
(72)【発明者】
【氏名】ラダクリシュナン,ヴィジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ニルギュード,ヴァイハヴ
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-016415(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107658485(CN,A)
【文献】特開平06-052871(JP,A)
【文献】特開平10-270057(JP,A)
【文献】特開2009-205917(JP,A)
【文献】特開2007-165306(JP,A)
【文献】特表2017-525103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/92
H01M 8/06
H01M 8/10
H01M 8/12
H01M 8/24
C25B 1/00
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1担体に分散された第1触媒粒子、疎水性ポリマー結合剤、及びアイオノマー結合剤を含む第1アノードインクを吐出し、
前記第1アノードインクを熱処理して、アノードの第1アノード触媒層を形成し、
第2アノードインクを前記第1アノード触媒層上に吐出し、前記第2アノードインクは第2担体に分散された第2触媒粒子及びアイオノマー結合剤を含み、
前記第2アノードインクを熱処理して、アノードの第2アノード触媒層を形成し、
カソードインクを吐出し、
前記カソードインクを熱処理して、カソード層を形成することを含む、
膜電極接合体(MEA)の形成方法。
【請求項2】
前記第1アノードインクは、アノードガス拡散層(GDL)上に吐出され、前記カソードインクは、カソードGDL上に吐出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオン伝導性プロトン交換膜の対向する側面にアノード及びカソードを配置してMEAを組み立て、MEAをホットプレスすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1触媒粒子は、一酸化炭素の酸化を優先的に触媒するように構成され、
前記第2触媒粒子は、水素イオンの生成を優先的に触媒するように構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
疎水性ポリマー結合剤がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み、アイオノマー結合剤がスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1アノードインクの熱処理は、前記第1アノードインクを室温で乾燥させ、乾燥した前記第1アノードインクを約280℃から約420℃の範囲の温度で加熱することを含み、
前記第2アノードインクの熱処理は、第2アノードインクを室温で乾燥させ、乾燥した第2アノードインクを約50℃から約80℃の範囲の温度で加熱することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
乾燥した第1アノードインクの加熱は、アイオノマー結合剤の分子骨格からの官能鎖の脱離をもたらし、
乾燥した第2アノードインクの加熱は、アイオノマー結合剤の分子骨格からの官能鎖の脱離をもたらさない、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1担体及び前記第2担体が、水及び有機溶媒を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
有機溶媒がアルコール系又はアルコール含有溶媒を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有機溶媒が、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、乳酸エチル、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル、ヘプタノールまたはこれらの組み合わせを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒が、乳酸エチル及びPGMEAの混合物を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1担体及び前記第2担体が、安定剤をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1触媒粒子は、第1Pt-Ru合金を含み、
前記第2触媒粒子は、第1Pt-Ru合金よりも高いPt:Ru比を有する第2Pt-Ru合金を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1アノード触媒層は、担持量が約0.8mg/cm~約1.2mg/cmの前記第1触媒粒子を含み、
前記第2アノード触媒層は、担持量が約0.5mg/cm~約0.9mg/cmの前記第2触媒粒子を含み、
前記第1触媒粒子の担持量は、前記第2触媒粒子の担持量より高い、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カソードインクが、担体に分散された白金触媒粒子と疎水性結合を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の第1アノード触媒層を形成するためのアノードインクであって、
白金又は白金合金を含む触媒粒子と、
アイオノマー結合剤と、
疎水性ポリマー結合剤と、
グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、乳酸エチル、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチルまたはヘプタノールから選ばれる少なくとも2つの溶媒と、
水と、を含む、
アノードインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、触媒インク組成物、及び燃料電池システムにおいて水素回収に使用される電気化学セルを形成するためにインク組成物を堆積させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料に蓄えられたエネルギーを高い効率で電気エネルギーに変換することができる電気化学デバイスである。高温形燃料電池には、固体酸化物形燃料電池と溶融炭酸塩形燃料電池がある。これらの燃料電池は、水素および/または炭化水素燃料を用いて動作する。燃料電池には、固体酸化物形再生燃料電池のように、電気エネルギーを動力として酸化された燃料を還元して酸化されていない燃料に戻すことができるような、逆方向の動作も可能なものがある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、本開示の一実施形態による燃料電池システムの模式図である。
図2図2は、本開示の一実施形態による燃料電池システムの模式図である。
図3A図3Aは、本開示の一実施形態による燃料電池システムの模式図である。
図3B図3Bは、図3Aの燃料電池システムの中央カラムの断面透視図である。
図4図4は、本開示の様々な実施形態による、PEM電気化学セルの概略側断面透視図である。
図5図5は、本開示の様々な実施形態による、電気化学セルスタックを含むポンプセパレータの概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明のいくつか実施形態によれば、膜電極接合体(MEA)を形成する方法は、第1担体に分散された、第1触媒粒子、疎水性ポリマー結合剤、及びアイオノマー結合剤を含む第1アノードインクを吐出すること、前記第1アノードインクを熱処理してアノードの第1アノード触媒層を形成すること、前記第1アノード触媒層上に第2アノードインクを吐出し、前記第2アノードインクは、第2担体に分散された第2触媒粒子およびアイオノマー結合剤を含み、前記第2アノードインクを熱処理してアノードの第2アノード触媒層を形成すること、カソードインクを吐出すること、並びに、前記カソードインクを熱処理してカソード層を形成すること、を含む。
【0005】
本発明の様々な実施形態によれば、一酸化炭素(CO)耐性膜電極接合体のアノード層を形成するためのアノードインクは、白金または白金合金を含む触媒粒子、アイオノマー結合剤、疎水性結合剤、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、乳酸エチル、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル、又はヘプタノールから選ばれる少なくとも2種の溶媒、及び水を含む。
【0006】
本発明の様々な開示の実施形態によれば、膜電極接合体(MEA)は、イオン伝導性プロトン交換膜と、膜の第1側面と接触するアノードと、膜の第2側面に接触し、第3触媒粒子及びカソードGDLを含むカソードと、を含む。アノードは、アノードガス拡散層(GDL)と、第1触媒粒子、疎水性ポリマー結合剤、及び分子骨格に官能基鎖を欠く第1アイオノマー結合剤を含む第1アノード触媒層と、第2触媒粒子、及び分子骨格に官能基鎖を含む第2アイオノマー結合剤を含む第2アノード触媒層と、を含む。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0007】
ある要素または層が他の要素または層上に「ある」または「接続されている」と言及されるとき、それは他の要素または層上に直接または直接接続することができ、または介在する要素または層が存在してもよいことが理解される。対照的に、要素が他の要素または層に「直接的に」または「直接的に接続されている」と言及される場合、介在する要素または層が存在しない。 本開示の目的のために、「X、Y、及びZの少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、又は2つ以上の項目X、Y、及びZの任意の組み合わせ(例えば、XYZ、XYY、YZ、ZZ)として解釈できることが理解される。
【0008】
値の範囲が提供される場合、文脈が明らかに他に指示しない限り、その範囲の上限および下限と、その述べられた範囲内の他の述べられたまたは介在する値との間の、下限の単位の10分の1までの各介在する値は、本発明の範囲に包含されると理解される。これらの小さい範囲の上限および下限は、記載された範囲内の特に除外された制限を条件として、独立して小さい範囲に含まれることも本発明内に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外した範囲もまた本発明に含まれる。また、「約」という用語は、例えば5~10%程度の軽微な測定誤差を指す場合もあることが理解されよう。さらに、本明細書で使用される重量パーセント(wt%)および原子パーセント(at%)はそれぞれ、対応する組成物の総重量のパーセントまたは総原子数のパーセントを意味する。
【0009】
「その後」、「それから」、「次に」などの言葉は、必ずしもステップの順序を限定することを意図しておらず、これらの言葉は、方法の説明を通じて読者を導くために使用され得る。さらに、例えば冠詞「a」、「an」または「the」を用いて単数形の請求項要素に言及することは、要素を単数形に限定するものと解釈してはならない。
【0010】
本発明の第1及び第2実施形態は、電気化学ポンプセパレータが、固体酸化物形燃料電池システムなどの燃料電池システムと共に使用される方法を示すものである。他の燃料電池システムも使用され得ることに留意されたい。
【0011】
第1実施形態のシステムでは、燃料電池スタックに供給される燃料入口流を加湿するために、燃料加湿器が使用される。第2実施形態のシステムでは、燃料加湿器は省略されてもよい。燃料電池スタックの燃料排気流の一部は、燃料入口流に直接リサイクルされ、燃料入口蒸気を加湿する。燃料電池スタック燃料排気流の他の一部は、セパレータに供給され、分離された水素は、その後、燃料入口流に供給される。
【0012】
図1は、本開示の第1実施形態による燃料電池システム100を示す模式図である。システム100は、固体酸化物形燃料電池スタックなどの燃料電池スタック101(イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック電解質、ニッケル-YSZサーメットなどのアノード電極、およびランタンストロンチウムマンガナイトなどのカソード電極を含むスタックの一つの固体酸化物形燃料電池を示すように模式的に図示)を含む。
【0013】
また、システム100は、燃料排気流から水素を電気化学的に分離する電気化学ポンプセパレータ150を含む。ポンプセパレータ150は、ポリマー電解質からなる任意の適切なプロトン交換膜デバイスを含んでもよい。ポンプセパレータ150は、好ましくは高温のスタック、低水和イオン交換膜セルのスタックなど、一酸化炭素耐性電気化学セルのスタックからなる。これらのセルは、一般に100℃超から約200℃の温度範囲内で動作する。したがって、システム100の熱交換器は、好ましくは燃料排気流を約120℃~約200℃、例えば、約160℃~約190℃の温度に保つ。
【0014】
また、システム100は、燃料電池スタック101の燃料排気口103をポンプセパレータ150のアノード入口151に動作可能(すなわち、流体的)に接続する燃料排気導管153を含む。また、システム100は、ポンプセパレータ150のカソード出口158を、スタック101の燃料入口105を外部燃料源に動作可能(すなわち、流体的)に接続する燃料入口導管111、に接続する生成物導管157を含んでいる。また、システム100は、ポンプセパレータ150のアノード出口152をアノードテールガス酸化装置(ATO)140または大気ベントに動作可能(すなわち、流体的)に接続するセパレータ排気導管159を含む。
【0015】
システム100は、燃料入口導管111及びセパレータ排気導管159に動作可能に接続された燃料加湿器119をさらに含む。作動中、燃料加湿器119は、セパレータ排気導管159へのセパレータ排気出力に含まれる水蒸気を用いて、リサイクル水素を含む燃料導管111内の燃料を加湿する。燃料加湿器119は、例えば米国特許番号6,106964及び米国公開番号10/368,425(いずれも参照によりその全体が本書に組み込まれる)に記載されているように、Nafion(登録商標)膜加湿器などの高分子膜加湿器、エンタルピーホイール又はその複数の水吸着剤層を含んでもよい。例えば、1つの好適な加湿器は、Perma Pure LLCから入手可能な水蒸気及びエンタルピー伝達Nafion(登録商標)ベースの、水透過性膜からなる。燃料加湿器119は、燃料排気流から燃料入口流に水蒸気とエンタルピーを受動的に移動させ、燃料入口流に2~2.5の水蒸気/炭素比を提供する。燃料入口導管111内の燃料の温度は、燃料加湿器119によって、約80~約90℃に上昇させることができる。
【0016】
また、システム100は、燃料入口導管111及び燃料排気導管153に動作可能に接続された復熱式熱交換器121(例えば、アノード復熱器)を含む。熱交換器121は、燃料排気導管103内の燃料排気から取り出された熱を使用して、燃料入口導管111内の燃料を加熱する。熱交換器121は、流入する燃料の温度を上げるのに役立ち、燃料排気の温度を下げるので、凝縮器でさらに冷却することができ、燃料加湿器119を損傷しないようにすることができるようなものである。
【0017】
燃料電池が外部燃料改質型電池である場合、システム100は、燃料改質器123を含む。改質器123は、炭化水素燃料入口流を水素及び一酸化炭素含有燃料流に改質し、これをスタック101に供給する。改質器123は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2004年12月2日出願の米国特許出願番号7,422,810に記載されているように、燃料電池スタック101で発生する熱によって、及び/又はは任意のATO140で発生する熱によって放射状、対流状、及び/又は伝導的に加熱されてもよい。あるいは、スタック101が、改質が主にスタックの燃料セル内で起こる内部改質タイプのセルを含む場合、外部改質器123を省略することができる。
【0018】
また、システム100は、スタック101の空気入口107に流体的に接続された空気入口導管130を含む。任意選択で、システム100は、空気入口導管130に動作可能に接続され、燃料排気導管153内の燃料排気から抽出された熱を使用して空気入口導管130内の空気を予熱するように構成された空気予熱熱交換器125を含んでいる。所望であれば、この熱交換器125は省略することができる。
【0019】
また、システム100は、スタック101の空気排気口109をATO140に流体的に接続する空気排気導管132を含む。システム100は、好ましくは、空気入口導管130及び空気排気導管132に動作可能に接続された空気熱交換器127を含む。この熱交換器127は、空気排気導管132内の燃料電池スタック空気排気(すなわち、酸化剤又はカソード排気)から抽出された熱を用いて、空気入口導管130内の空気をさらに加熱する。予熱熱交換器125が省略される場合、空気は、送風機または他の吸気装置によって、熱交換器127に直接供給される。
【0020】
また、システム100は、生成物導管157及び空気入口導管130に動作可能に接続された任意の水素冷却熱交換器129を任意に含む。熱交換器129は、空気入口導管130を通って流れる空気を用いて、ポンプセパレータ150から出力される分離された水素から熱を抽出する。
【0021】
また、システム100は、燃料排気導管153に動作可能に接続された任意の水性ガスシフト(WGS)反応器128を含んでもよい。WGS反応器128は、燃料排気中の水の少なくとも一部を遊離水素(H)に変換する任意の適切な装置とすることができる。例えば、WGS反応器は、燃料排気流中の一酸化炭素及び水蒸気の一部又は全部を二酸化炭素及び水素に変換する触媒を含む管又は導管を含む。このように、WGS反応器128は、燃料排気中の水素の量を増加させる。触媒は、酸化鉄またはクロム促進酸化鉄触媒とすることができる。WGS反応器128は、燃料熱交換器121と空気予熱熱交換125の間で、燃料排気導管153に動作可能に接続することができる。
【0022】
システム100は、以下のように動作することができる。燃料入口流(「燃料」または「燃料流」とも呼ばれる)は、燃料入口導管111を通じて燃料電池スタック101に供給される。燃料は、メタン、水素及び他のガスと共にメタンを含む天然ガス、プロパン又は他のバイオガス、一酸化炭素のような炭素燃料の混合物、メタノール等の酸素化炭素含有ガス、水蒸気、Hガス又はそれらの混合物等の水素含有ガスを含む他の酸素ガスを含むが、これらに限定されず、任意の適切な炭化水素燃料を含むことができる。例えば、混合物は、石灰または天然ガスの改質から得られる合成ガスを含んでもよい。
【0023】
燃料流が加湿器119を通過すると、燃料流は加湿される。加湿された燃料は、燃料熱交換器121を通過し、加湿された燃料は燃料電池スタック燃料排気によって加熱される。加熱され加湿された燃料は、次に、好ましくは外部改質器である燃料改質器123に提供される。例えば、燃料改質器123は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2004年12月2日出願の米国特許番号7,422,810に記載の改質器から構成されてもよい。
【0024】
燃料改質器123は、炭化水素燃料を部分的又は全体的に改質し、炭素含有燃料および遊離水素含有燃料を形成することができる任意の好適な装置とすることができる。例えば、燃料改質器123は、炭化水素ガスを、遊離水素と炭素含有ガスとの混合ガスに改質することができる任意の好適な装置とすることができる。例えば、燃料改質器123は、天然ガスなどの加湿されたバイオガスが水蒸気メタン改質反応を介して改質され、遊離水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気及び任意の残留量の未改質バイオガスを形成する触媒被覆通路から構成されてもよい。次いで、遊離水素及び一酸化炭素は、燃料電池スタック101の燃料(すなわち、アノード)入口105に供給される。したがって、燃料入口導管111における燃料の流れ方向に関して、加湿器119は、改質器123の上流に位置する熱交換器121の上流に位置し、スタック101の上流に位置する熱交換器121の上流に位置する。
【0025】
空気入口導管130を通してスタック101に供給される空気又は他の酸素含有ガス(すなわち、酸化剤)(「空気入口流」又は「空気流」とも呼ばれる)は、空気排気導管132内のカソード排気を用いて、空気熱交換器127によって加熱される。所望であれば、空気入口導管130内の空気は、空気をスタック101に提供する前に、空気流の温度をさらに上昇させるために、水素冷却熱交換器129を通過し、及び/又は、空気予熱熱交換器125を通過してもよい。
【0026】
作動中、スタック101は、供給された燃料と空気を用いて発電し、燃料排気と空気排気を発生させる。燃料排気は、水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなどの一部の未反応炭化水素燃料、および他の反応副生成物および不純物を含んでいてもよい。燃料排気は、スタック101に供給される燃料の約25%を含んでいてもよい。
【0027】
燃料排気は、燃料排気口103から出力され、燃料排気導管153によってポンプセパレータ150に供給される。ポンプセパレータ150は、燃料排気に含まれる水素(H)の少なくとも一部を電気化学的に分離する。分離された水素は、カソード出口158から出力され、生成物導管157によって燃料入口導管111に供給され、そこで水素と導入される新鮮な燃料とが混合される。好ましくは、水素は、加湿器119の上流で燃料入口導管111に供給される。
【0028】
燃料排気導管153内の燃料排気流は、まず熱交換器121に供給され、そこでその温度が好ましくは200℃未満に下げられる一方、流入する燃料の温度は上昇させられる。WGS反応器128及び空気予熱熱交換器125が存在する場合、燃料排気はWGS反応器128を通して供給され、水蒸気の少なくとも一部及び残留一酸化炭素の大部分を二酸化炭素と水素に変換する。その後、燃料排気の温度は、熱交換器125を通過する間に、空気入口導管130内の空気に熱を伝達することにより、さらに低下する。燃料排気の温度は、例えば約90℃~110℃に低下させることができる。
【0029】
次いで、燃料排気は、導管153を介してポンプセパレータ150のアノード入口151に供給される。ポンプセパレータ150は、燃料排気流中の水素の約85%などのように、燃料排気から水素の大部分を分離することができる。燃料排気中に残留する水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、及び残留する炭化水素ガスは、導管159によって加湿器119に供給することができる。
【0030】
燃料加湿器119では、燃料排気中の水蒸気の一部を燃料入口導管111内の燃料に移動させ、燃料の加湿を行う。燃料は、露点80℃~90℃に加湿することができる。次に、燃料排気流の残りは、スタック101からの空気(すなわち、カソード)排気とともにATO140に供給され、そこでガスが酸化されて低品質の熱を提供する。ATOからの排気は、ATO排気導管161に供給することができる。ATO140からの熱は、改質器123を加熱するために使用されてもよく、システム100の他の部分に供給されてもよく、または建物の加熱システムなど、システム100の外部の装置に供給されてもよい。
【0031】
ポンプセパレータ150によって分離された水素は、出口158から出力され、生成物導管157によって燃料入口導管111に提供され、そこで導入される燃料と混合される。所望であれば、燃料入口導管111に供給される前に、水素は熱交換器129で冷却され、そこで水素流は空気入口導管130内の空気と熱交換することができる。水素の温度は、燃料入口導管111に供給される前に、熱交換器129で下げられる。このように、炭化水素燃料は、電気化学的水素ポンプセパレータ150でアノード排気ガスから回収された低露店、周囲温度付近のリサイクル水素と混合される。
【0032】
このように、燃料排気の流れ方向に関して、熱交換器121は、WGS反応器128の上流に位置し、熱交換器125の上流に位置し、ポンプセパレータ150の上流に位置し、加湿器119および燃料入口導管111の上流に位置する。
【0033】
図2は、本開示の第2実施形態に係る燃料電池システム200を示す模式図である。システム200は、システム100と似ており、共通する多数の構成要素を含んでいる。システム100及び200の両方に共通するそれらの構成要素には、図1及び図2において同じ番号が付されており、これ以上の説明は省略する。
【0034】
システム100とシステム200との間の違いの一つは、好ましくは、必ずしも加湿器119を欠いているわけではないことである。その代わりに、水蒸気を含むスタック燃料排気流の一部が、スタック燃料入口流に直接再利用される。燃料排気流中の水蒸気は、燃料入口流を加湿するのに十分である。
【0035】
システム200は、燃料排気スプリッタ201、リサイクル導管203、送風機またはコンプレッサ205、及びミキサー207を含むことができる。スプリッタ201は、コンピュータ又はオペレータ制御の多方向弁、例えば三方弁、又は他の流体分割装置であってもよい。スプリッタ201は、燃料排気導管153及びリサイクル導管203に動作可能に接続することができる。特に、スプリッタ201は、燃料排気導管153内の燃料排気の全て又は一部をリサイクル導管203に選択的に分流させるよう構成することができる。
【0036】
ミキサー207は、燃料入口導管111、リサイクル導管203、及び生成物導管157に動作可能に接続することができる。リサイクル導管203は、スプリッタ201スプリッタ201をミキサー207に流体的に接続することができる。ミキサー207は、新鮮な燃料を、リサイクル導管203によって供給される燃料排気及び/又は生成物導管157によって供給される水素と混合するように構成することができる。
【0037】
送風機又はコンプレッサ205は、リサイクル導管203に動作可能に接続することができる。送風機又はコンプレッサ205は、燃料排気をリサイクル導管203を通してミキサー207に移動させるように構成することができる。動作において、送風機又はコンプレッサ205は、制御可能に、ミキサー207を介して、燃料入口導管111に所望の量の燃料排気を供給する。
【0038】
システム200を動作させる方法は、システム100を動作させる方法と同様である。違いの一つは、燃料排気がスプリッタ201によって少なくとも2つの流れに分離されることにある。第1燃料排気流は燃料入口流にリサイクルされ、第2流はポンプセパレータ150に導入され、第2燃料排気流に含まれる水素の少なくとも一部が、第2燃料排気流から電気化学的に分離される。第2燃料排気流から分離された水素は、その後、生成物導管157によって燃料入口導管111に供給される。例えば、燃料排気の50%から70%の間、例えば約60%が送風機又はコンプレッサ205に供給され、残りがポンプセパレータ150に向かって供給されてもよい。
【0039】
好ましくは、燃料排気は、最初に熱交換器121及び125、並びにWGS反応器128を通って流れ、その後、スプリッタ201に供給される。燃料排気は。熱交換器125において、約200℃以下、例えば約120℃~約180℃に冷却され、2つの流れに分けられるスプリッタ201に供給される前に、冷却されてもよい。これは、送風機が約200℃以下の温度を有するガス流を動かすように適合され得るので、燃料排気流の所定の量を燃料入口導管111に制御可能に再利用するために低温送風機205を使用することを可能にする。
【0040】
送風機又はコンプレッサ205は、コンピュータ又はオペレータ盛業であってもよく、以下に説明する条件に応じて、燃料入口流に提供される燃料排気流の量を変化させることができる。いくつかの実施形態では、システム200は、生成物導管157に動作可能に接続された選択弁210を任意に含んでもよい。選択弁210は、水素貯蔵装置、車両内のPEM(すなわち、固体高分子電解質膜としても知られる)燃料電池などの水素使用装置、または水素貯蔵容器などの補助装置212に流体的に接続されてもよい。例えば、水素の全てまたは一部を補助装置212またはミキサー207のいずれかに供給してもよく、または水素をミキサー207および補助装置212に交互に供給してもよい。
【0041】
送風機又はコンプレッサ205及び任意の選択弁210は、以下の条件のうちの1つ以上に基づいてガス流を制御可能に変化させるために、コンピュータ又はオペレータによって操作することができる。i)システム100の検出または観察された条件(すなわち、燃料入口流中の水素の量の変化を必要とするシステム動作条件の変化)、ii)コンピュータに提供された以前の計算、または燃料入口流中の水素の時間的な調整を必要とするオペレータに知られている条件、iii)スタック101の動作パラメータにおける所望の将来の変化、現在発生している変化または最近の過去の変化、例えば、スタックによって生成された電気のユーザによる電力需要の変化、水素の価格と比較した電気または炭化水素燃料の価格変化、及び/又はiv)水素使用装置などの水素使用者による水素の需要の変化、電気の価格と比較した水素または炭化水素燃料価格の変化など。
【0042】
燃料排気(すなわち、テール)ガスから分離された水素の少なくとも一部を燃料入口導管111にリサイクルすることにより、燃料電池システムの高効率運転が得られると考えられる。さらに、全体の燃料利用率が向上する。電気効率(すなわち、AC電気効率)は、1パスあたりの燃料利用率が約75%(すなわち、燃料の約75%がスタックを通る各パス中に利用される)である場合、第1及び第2実施形態の方法について約50%~約60%の間、例えば、約54%~約60%の間とすることが可能である。約94~約95%の有効燃料利用率は、1パスあたりの利用率が約75%であり、燃料排気ガス水素の約85%がポンプセパレータ150によって燃料電池スタックにリサイクルされる場合に得られる。さらに高い効率は、1パスあたりの燃料利用率を約76~80%など、75%より高くすることによって得られる場合がある。定常状態では、第1及び第2実施形態の方法は、水蒸気メタン改質が燃料電池への供給ガスを作成するために使用される場合、水蒸気を発生させる必要性を排除する。燃料排気流は、水蒸気/炭素比が2~2.5で、スタックへの燃料入口流を加湿するのに十分な水蒸気を含んでいる。燃料の利用率が上がり、蒸気を発生させるための熱量がなくなるため、全体の電気効率が向上する。一方、水素をリサイクルしない場合、スタック内の燃料利用率が約75%から約80%で、交流電気効率は約45%である。
【0043】
図3Aは、本開示の第3実施形態による燃料電池システム300の模式図である。システム300は、第1及び第2実施形態のシステム100及び200に関して先に説明した構成要素と同様の多数の構成要素を含んでよく、これらの図1及び図2と同じ番号を付してよく、詳細な説明は省略する。
【0044】
図3Bは、本開示の第3実施形態に係る燃料電池システム300の中央カラム301の断面透視図である。あるいは、中央カラム301は、第1及び第2実施形態のシステム100、200のいずれかに含まれてもよい。したがって、中央カラム301は、システム100、200に関して先に説明した構成要素と同様の構成要素を多数含んでいてもよく、これらには、図1及び図2と同様の番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0045】
第1及び第2実施形態に関して説明した構成要素に加えて、システム300において、カラム301は、ホットボックス302の内部に配置されてもよく、触媒部分酸化(CPOx)反応器170、CPOx送風機180(例えば、エア送風機)、システム送風機182(例えば、メインエア送風機)、陽極リサイクル送風機205及びミキサー207はホットボックス302の外側に配置されてもよい。しかしながら、本開示は、ホットボックス302に対する各構成要素が特定の位置に限定されるものではない。
【0046】
図3Aを参照すると、CPOx反応器170は、燃料入口から燃料入口流を受け取る。燃料入口は、CPOx反応器170に供給される燃料の量を制御するための弁を含む実用ガスラインとすることができる。CPOx送風機180は、システム300の起動中にCPOx反応器170に空気を供給し、その後、燃料電池スタック101が750~900℃などの700℃を超える定常動作温度に達すると定常動作モード中にオフにされてもよい。定常状態における燃料及び/又は起動時の燃料と空気の混合物は、燃料入口導管111によってミキサー207に供給することができる。
【0047】
メインエア送風機182は、空気流(例えば、空気入口流)を、空気入口導管130を通して空気予熱熱交換器125に供給するように構成されてもよい。ATO排気流は、ATO140からATO排気導管161を通って空気熱交換器(例えば、カソード復熱器)127に流れる。排気は、空気熱交換器127からATO排気導管161を通って蒸気発生器160に流れる。排気は、蒸気発生器160から排気導管161を通って、ホットボックス302の外に流れる。
【0048】
水は、水タンクや水管等の水源190から、水導管163を通って蒸気発生器160に流れる。蒸気発生器160は、ATO排気導管161から供給されるATO排気の熱を利用して水を蒸気に変換する。蒸気は、蒸気発生器160か水導管163を介してミキサー207に供給される。代替的に、所望であれば、蒸気は燃料入口流に直接供給されてもよく、及び/又はアノード排気流は、燃料入口流に直接供給され、続いて、結合された燃料流の加湿が行われてもよい。
【0049】
システム300は、システム300の様々な要素(例えば、送風機182、184及び205並びに燃料制御弁)を制御するよう構成されたシステムコントローラ225をさらに含んでもよい。コントローラ225は、格納された命令を実行するように構成された中央処理装置を含んでもよい。例えば、コントローラ225は、燃料組成データに従って、システム300を通る燃料及び/又は空気流を制御するように構成されてもよい。
【0050】
図3Bを参照すると、中央カラムは、1つ以上の燃料電池スタック101が配置され得るベース310から延在していてもよい。燃料入口導管111及び燃料排気導管153は、スタック101から、ベース310を通って、カラム301まで延びていてもよい。
【0051】
カラム301は、ATO140を少なくとも部分的に規定する円筒形の外壁及び内壁を含んでもよい。燃料熱交換器121は、改質器123の周囲に配置されてもよい。燃料熱交換器121及び/又は改質器123にWGS触媒を設けることにより、任意の第1追加WGS反応器128Aを燃料熱交換器121及び/又は改質器に組み込んでもよい。ATO140は、燃料熱交換器121を取り囲んでいてもよい。燃料電池スタック101は、ATO140を取り囲んでいてもよく、空気熱交換器127(図3Aに示す)は、ホットボックス302内の燃料電池スタック101を取り囲んでいてもよい。
【0052】
WGS反応器128は、燃料熱交換器121の上方に配置されている。空気予熱熱交換器125は、WGS反応器128の上方に配置されている。空気予熱熱交換器125にWGS触媒を設けることにより、任意の第2追加WGS反応器128Bを空気予熱熱交換器125に組み込んでもよい。
【0053】
燃料排気導管153は、燃料電池スタック101、燃料熱交換器121、WGS反応器128、及び空気予熱器125を流体的に接続することができる。したがって、スタック101から出力された燃料排気流は、燃料熱交換器121の外面に沿ってカラム301の底部に流入し、WGS反応器128及び空気予熱熱交換器125の内部を流れてからカラム301の頂部に出てくることができる。
【0054】
燃料入口導管111は、スタック101、燃料熱交換器121、及び燃料改質器123を燃料入口に流体的に接続することができる。したがって、燃料入口流は、カラム301の上部に流入し、カラム301の下部を出てスタック101に提供される前に、燃料熱交換器121及び燃料改質器123に提供されてもよい。
【0055】
例えば、燃料熱交換器121は、燃料入口流を燃料排気流から分離するように構成された波形セパレータを含んでもよい。いくつかの実施形態では、燃料熱交換器121が複合燃料熱交換器121及びWGS反応器128Aとして動作するように、燃料排気と接触する燃料熱交換器121の表面はWGS触媒でコーティングされてもよい。言い換えれば、燃料熱交換器121は、燃料入口と燃料排気の流れの間で熱を伝達することと、燃料排気中の水と一酸化炭素を遊離水素と二酸化炭素に変換することの両方を行うように動作してもよい。このように、WGS反応性を高めるために、カラム301内の追加の容積がWGS反応に専用化されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、カラム301は、燃料排気流の一部をATO140に迂回させるように構成されたスプリッタ201を含んでもよい。燃料排気流の残りは、空気予熱熱交換器125において、任意のさらなる処理に適合する温度まで冷却されてもよい。燃料排気流を運ぶ空気予熱熱交換器125の導管は、一酸化炭素含有量のさらなる減少及び水の水素への変換が望まれる場合、熱交換器125が任意の第2追加WGS反応器128Bとして機能できるように、任意にWGS触媒で被覆されてもよい。
【0057】
図3Aに示す別の任意の実施形態は、統合された第3追加のWGS反応器触媒を有する電気化学ポンプセパレータ150を含む。この任意の実施形態の一態様では、上述のアノード触媒は、WGS触媒でもある。この任意の実施形態の別の態様では、WGS触媒は、電気化学ポンプセパレータ150のアノード全体または電気化学ポンプセパレータ150のアノードの一部にコーティングされてもよい。この任意の別の実施形態の別の態様では、WGS触媒は、電気化学ポンプセパレータ150とWGS触媒との間に位置する空気予熱器125が存在しないように、電気化学ポンプセパレータ150と同じハウジング内に位置する。例えば、WGS触媒は、燃料排気流が電気化学ポンプセパレータ150のアノードに到達する前にWGS反応器触媒を通過するように、電気化学ポンプセパレータ150を含むハウジングのアノード室の表面上にコーティングされてもよい。WGS反応器触媒は、PtRu、Cu、Cu-Zn、Cu-Zn-Al、Pt、Pt-Ni、Ni、Fe-Cr、又はFe-Cr-Cuから構成されてもよい。WGS反応器触媒は、約200~450℃、例えば約200~250℃の動作温度を有してもよく、これは、一酸化炭素及び水を使用可能な水素(プラス廃棄二酸化炭素)に最大限変換するために望ましい場合がある。
【0058】
プロトン交換膜(PEM)セル
【0059】
一酸化炭素(「CO」)は、多くの水素ポンプ材料にとって毒であり、ポンプ電圧(電力)を大幅に増加させる。従来、プロトン交換膜(「PEM」、固体高分子電解質膜としても知られている)燃料電池におけるCO耐性のために、Pt-Ruなどの二元触媒が採用されており、100ppm未満のCO濃度で適切な性能を示している。しかし、このような触媒は、CO濃度が高くなると性能が著しく低下する可能性がある。また、安定した性能を確保するためには、一般的には抽気が必要になる。
【0060】
図1、2、3A及び3Bのシステムなどの燃料電池システムは、燃料として使用される天然ガスの蒸気改質からの改質物のような、かなりの割合のCOを含む燃料電池燃料排気流を生成する場合がある。例えば、燃料排気は100ppmを超えるCO濃度、例えば150~900ppmを有していてもよい。
【0061】
したがって、本発明の様々な実施形態は、100ppmを超えるCO濃度を有する水素含有ガスが供給された場合に、水素ポンプとして安定的に動作することができる膜電極接合体(MEA)を含むPEMセルを提供する。
【0062】
図4は、本発明の様々な実施形態による、PEM電気化学セル400の断面図である。PEMセル400の1つ以上は、図1、2、及び3Aのポンプセパレータ150に含まれてもよい。
【0063】
図4を参照すると、PEMセル400は、膜電極接合体(MEA)410を含んでもよく、これは、流場プレート(例えば、バイポーラプレート)402の間に配置されてもよい。MEA410は、アノード420とカソード430との間に配置されたポリマー電解質膜440を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アノード420は、アノードガス拡散層(GDL)426を含んでもよく、カソード430は、カソードGDL436を含んでもよい。アノードGDL426は、図3Aに示すSOFCスタック101からの燃料電池燃料排気流などの水素含有ガスをアノード420に流通させるように構成されてもよい。カソードGDL436は、アノード420から電解質膜440を通過してカソード430に拡散した水素を回収するように構成されてもよい。
【0064】
より詳細に後述するように、アノード420は、アノードGDL426上に堆積される(例えば、積み込まれ、及び/又はコーティングされる)触媒粒子の1以上の層を含むことができ、カソード430は、カソードGDL436上に堆積される(例えば、積み込まれ、及び/又はコーティングされる)触媒粒子の1以上の層を含むことができ、それぞれのガス拡散電極(GDE)を形成することができる。したがって、アノード420は、ガス拡散アノード420と称されることがあり、カソード430は、ガス拡散カソード430と称されることがある。あるいは、アノード及び/又はカソード触媒粒子層は、アノードGDL426及びカソードGDL436の代わりに膜440上に堆積されてもよく、及び/又は膜440とアノードGDL426及びカソードGDL436の少なくとも1つの両方上に堆積されてもよい。
【0065】
流場プレート402は、水素含有ガスをアノードGDL426に供給するように構成された入口流場404及びカソードGDL436から水素ガスを受け取るように構成された出口流場406を含むことができる。特に、入口流場404及び/又は出口流場406は、アノードGDL426及びカソードGDL436と連動して、膜440における圧力及び/又は反応物濃度を制御するように構成された流路を含んでもよい。
【0066】
アノードGDL426及びカソードGDL436は、物質移動損失を低減し、高い電気伝導性を提供し、水の輸送を効果的に管理するように構成された材料で形成することができる。例えば、アノードGDL426及びカソードGDL436は、電気伝導率及び効果的な物質移動を提供するために、多孔質炭素材料、例えば、炭素紙、炭素布、炭素フェルト、又はこれらの組み合わせなどの多孔質基材を含んでもよい。また、アノードGDL426及びカソードGDL436は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの疎水性材料を含んでもよい。例えば、アノードGDL426の基材は、約5重量%(「wt%」)~約50wt%、例えば、約10wt%~約30wt%のPTFEを担持していてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、アノードGDL426及びカソードGDL436は、任意に、微細多孔質層を含んでもよい。様々な実施形態において、アノードGDL426及びカソードGDL436は、アノード420及びカソード430の機能性に一致するように複数の積層された層を含んでもよい。アノードGDL426及びカソードGDL436は、製造プロセスの要件に従って、シート、ロール、フォイル等から形成される。
【0068】
いくつかの実施形態では、アノード420は、膜440に面するアノードGDL426の表面上に堆積された微細多孔質層428を含んでもよい。微細多孔質層428は、PTFEなどの疎水性材料、又は疎水性材料とカーボンブラックなどの導電性材料との混合物を含んでもよい。微細多孔質428は、アノード水分制御を改善するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、アノード420は、アノードGDL426、微細多孔質層428、及び単一のアノード層(例えば、単一のアノード触媒層)422又は424を含んでもよい。別の実施形態では、カソード430は、アノードの微細多孔質層428に加えて、又はアノードの微細多孔質層428の代わりに、微細多孔質層を含んでもよい。
【0069】
膜440は、プロトン交換膜のような任意の適切なプロトン伝導膜を含んでもよい。膜440は、化学式を有するスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体などのイオノマーを含んでもよい。CHF13は、Nafion(登録商標)という商品名で販売されている。あるいは、膜440は、ポリリン酸とポリベンゾイミダゾールポリマーからなるポリベンゾイミダゾール(PBI)ベースのリン酸膜などのリン酸膜、LaPOのようなプロトン伝導性酸化物、固体酸(リン酸二水素セシウム、CsHPOなど)、およびペロブスカイト型セレート、ニオブ酸塩、リン酸塩、没食子酸塩、BaCeYO(BCO)、BaZrYO(BZO)、LaSrPO、BaCaNbO(BCN)、LaCaNbO、またはLaBaGaO(LBGO)のようなジルコニウム酸塩などの特定のペロブスカイト(ABO)材料が含まれ、それらはChem. Soc. Rev., 2010, 39, 4370-4387に記載されているものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0070】
PEMセル400は、水素ポンピングモード(すなわち、電解槽として)動作してもよく、外部電位がアノード420とカソード430との間に印加され、アノード側に供給される燃料排気はプロトンと電子に解離する。電子は外部からカソード430に送られ、プロトンは膜440を通ってカソード430に輸送(すなわち、ポンプ)され、水素イオンが電子と再結合し、水素発生が起こる。
【0071】
セル400に供給される燃料電池の排気は、100ppmを超えるCO濃度を有する場合がある。したがって、MEA410は、そのようなCO濃度を許容するよう構成することができる。特に、アノード420は、抽気を利用する必要なく、100ppmを超えるCO濃度への長期の曝露を許容するよう構成することができる。しかしながら、所望であれば、アノード420に供給される燃料排気には抽気が追加されてもよい。
【0072】
様々な実施形態によれば、アノード420及び/又はカソード430は、Pt、Ru、Ni、Rh、Mo、Co、Ir、Feなどの1つ又は複数の触媒金属、及び/又は部分充填3d軌道を含む他のdブロック金属からなる触媒粒子を含んでもよい。例えば、触媒粒子は、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Fe、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、W、Zn、またはそれらの任意の組み合わせからなる元素金属または合金を含んでもよい。例えば、アノード触媒粒子は、Pt-Ru、Cu-Zn、Cu-Zn-Al、Pt-Ni、Fe-Cr、またはFe-Cr-Cuなどの合金触媒を含んでもよい。
【0073】
触媒粒子はそれぞれ、単一の触媒金属、または触媒金属の合金を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アノードは、異なる触媒金属及び異なる粒子サイズを含む可能性のある触媒粒子を含んでもよい。例えば、触媒粒子は、平均粒径が数ナノメートルから1ミクロン未満の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、触媒粒子は、触媒効率を向上させ、コストを削減するために、触媒金属のシェルと、コアとして異なる(例えば、より安価な)金属又は材料とを有する、コア-シェル構成を含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、アノード420は、水素ポンピング(例えば、プロトン生成)のための主触媒としてPtを含んでもよく、COの酸化を促進し、COの逆水ガスシフト反応を抑制するための副触媒としてRu、Ni、Rhなどを含んでもよい。
【0075】
アノード420及び/又はカソード430は、触媒粒子を担持することができる1つ又は複数の担持材料を含んでもよい。触媒担持材料は、低減された触媒担持、増加した電気伝導度、及びより良い電極印刷特性を提供するように選択されてもよい。一般的な担持材料は、カーボンブラック(例えば、Vulcan XC 72R炭素粉末、またはKetjen Black粉末)、グラファイト粉末、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、ナノホーン、炭素繊維、炭素ウィスカーなどのような炭素系材料が含まれてもよい。他の実施形態では、触媒担持材料は、非炭素系材料、例えば、W、Ti、Moなどの金属の炭化物、酸化物、窒化物などを含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、アノード及びカソード420、430は、約0.05mg/cm~約3mg/cm、例えば約0.1mg/cm~約2mg/cmの範囲の触媒粒子担持量を有してよい。特に、アノード420は、約0.1mg/cm~約3mg/cm、例えば約0.1mg/cm~約2mg/cmの触媒粒子担持量を有してもよい。カソード430は、約0.05mg/cm~約1mg/cm、例えば約0.05mg/cm~約0.5mg/cmの範囲の触媒粒子担持量を有していてもよい。
【0077】
様々な実施形態において、アノード420及び/又はカソード430は、結合剤を含んでもよい。例えば、結合剤は、PTFEなどの疎水性結合剤及び/又はNafion(登録商標)などのアイオノマー結合剤を含んでもよい。アノード420及び/又はカソード430は、約5wt%~約50wt%、例えば約10wt%~約40wt%、又は約10wt%~約30wt%の結合剤又は結合剤の組み合わせを含んでもよい。
【0078】
様々な実施形態によれば、アノード420は、単層であってもよく、2層、3層、又はそれ以上の層を含む多層アノードであってもよい。例えば、図4に示すように、アノード420は、アノードGDL426に接触し、COの電気化学的酸化を優先的に触媒してCO2を形成するように構成された第1触媒粒子を含む第1アノード触媒層422(例えば、第1アノード触媒サブ層)と、第2アノード触媒層424(例えば、第2アノード触媒サブ層)であって、膜440に接触し、Hからの水素イオン(すなわち、プロトン)の生成を優先的に触媒するように構成された第2触媒粒子を含んでいる。
【0079】
第1アノード触媒層422はアノードGDL426に結合されてもよく、第2アノード触媒層424(例えば、第2サブ層)は二層アノード420において膜440に結合されてもよい。アノード420に追加のアノード層が存在する場合、第1アノード触媒層422は、一般的に第2アノード触媒層424とアノードGDL426の間に位置し、第2アノード触媒層424は、一般的に第1アノード触媒層422と電解質膜440の間に位置する。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1アノード触媒層422は、第2アノード触媒層424よりも高い触媒粒子担持量を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2アノード層422、424における触媒粒子の担持量は、膜440に垂直な厚み方向で変化してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、第1アノード触媒層422は、第1触媒粒子と、PTFEなどの疎水性結合剤とを含んでもよい。疎水性結合剤は、第1アノード触媒層422の水分含有量を制御するように構成されてもよい。例えば、第1アノード触媒層422は、約5wt%~約50wt%、例えば約10wt%~約40wt%、又は約10wt%~約30wt%の、PTFEなどの疎水性接合剤を含んでもよい。
【0082】
第1触媒粒子は、上述したように触媒金属または金属合金を含んでもよい。例えば、第1触媒粒子は、約60:40~約40:60、又は約50:50の範囲のPt:Ru原子比を有するPt-Ru合金粒子から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、第1アノード触媒層422は、約0.3mg/cmから約1.2mg/cm、例えば約0.8mg/cmから約1.2mg/cm、約0.9mg/cmから約1.1mg/cm、または約1mg/cmにわたる担持量でPt-Ru合金粒子などの第1触媒粒子を含んでもよい。
【0083】
第1アノード触媒層422は、例えば、水性ガスシフト反応を介して一酸化炭素を優先的に酸化するように構成されていてもよい。従って、第1アノード層は、第2アノード触媒層424のCO被毒を低減するように構成されていてもよい。
【0084】
第2アノード触媒層424は、第1触媒粒子とは異なる組成を有する第2触媒粒子と、アイオノマー結合剤とを含んでもよい。第2触媒粒子は、上述したように、触媒金属または金属合金を含んでもよい 例えば、第2触媒粒子は、約55:45~約70:30、又は約66:33の範囲のPt:Ru原子比を有するPt-Ru合金粒子を含んでいてもよい。一実施形態において、第1アノード層及び第2アノード層の両方がPt-Ru合金触媒粒子からなる場合、第2アノード触媒層424中のPt-Ru触媒粒子は、第1アノード触媒層422中のPt-Ru触媒粒子より高いPt:Ru原子比を有していてもよい。第2アノード触媒層424は、Nafion(登録商標)などのアイオノマー結合剤を含んでもよい。しかしながら、本開示は、任意の特定のアイオノマー結合剤に限定されるものではない。様々な実施形態において、第2アノード触媒層424は、約0.3mg/cm~約1.2mg/cm、例えば約0.5mg/cm~約0.9mg/cm、約0.6mg/cm~約0.8mg/cm、又は約0.7mg/cmの範囲の担持量でPt-Ru合金粒子などの第2触媒粒子を含んでもよい。
【0085】
いくつかの代替的な実施形態では、第1及び第2アノード層422、424は、同様のPt:Ru原子比又は同じPt:Ru原子比を有する触媒粒子を含んでもよい。例えば、第1及び第2アノード層422、424は、約90:10から約10:90、例えば約80:20から約20:80、又は約70:30から約30:70の範囲のPt:Ru原子比を有する触媒粒子を含んでもよい。
【0086】
カソード430は、カソードGDL436と膜440との間に配置された第3触媒層432を含んでもよい。第3触媒層432は、第3触媒粒子と、アイオノマー結合剤とを含んでもよい。第3触媒粒子は、上述したように、触媒金属または金属合金を含んでもよい。例えば、第3触媒粒子は、PtまたはPt合金を含んでもよい。また、第3触媒層432は、上述したように、炭素系材料または金属酸化物、窒化物、もしくは炭化物材料からなる触媒担体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第3触媒層432は、炭素系材料によって担持され、Nafion(登録商標)などのアイオノマー結合剤で結合されたPt触媒粒子を含んでもよい。第3触媒層432は、約0.025mg/cm~約0.75mg/cm、例えば約0.05mg/cm~約0.5mg/cmの範囲の負荷でPt粒子などの第3触媒粒子を含んでもよい。
【0087】
カソード430とアノード420との間に電位が印加されると、第2アノード触媒層424、膜440およびカソード430は、水素ポンプとして動作するように構成されてもよい。特に、第2アノード触媒層424で生成された水素イオンは、アノード420とカソード430との間に印加される電位差によって膜440を介して輸送され、その後、カソード430で水素イオンが再結合して水素ガス(H)を発生してもよい。
【0088】
他の実施形態では、アノード420は、第1触媒粒子、第2触媒粒子、アイオノマー、及びPTFEを含む単層構造を含んでもよい。例えば、アノード420は、微細多孔質層428と、微細多孔質層428と膜440との間に配置された単一の触媒層(422又は424)とを含んでもよい。 第1触媒粒子と第2触媒粒子との相対量は、膜440の平面に垂直な方向にとったアノード420の厚さ方向において、0:1~1:0に変化する。例えば、アノード420は、アノードGDL426に隣接する第1触媒粒子の濃度が相対的に高く、膜440に隣接する第1触媒粒子の濃度が相対的に低くてもよく、また、アノード420は、膜440に隣接する第2触媒粒子の濃度が相対的に高く、アノードGDL426に隣接する第2触媒粒子の濃度が相対的に低くてもよい。すなわち、アノード420は、アノードGDL426に隣接するPt:Ru比が低く、膜440に隣接するPt:Ru比が高いように、アノード420のPtとRuの相対量がアノード420の厚さ方向で変化してもよい。例えば、Pt:Ru比は、いくつかの実施形態において、厚み方向に、90:10~10:90の範囲であってよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、アイオノマー及びPTFEの相対量は、膜440の平面に垂直な方向で捉えたアノード420の厚さ方向において、0:1~1:0に変化してもよい。いくつかの実施形態では、アノード420は、アイオノマーとPTFEとの50:50の重量比を含んでもよい。アイオノマー及びPTFEは、二重結合剤として一緒に結合されてもよい。アノード420は、任意に、PTFE及び/又はアイオノマーを含む微多孔質層を含んでもよい。
【0090】
電極インク組成物及びMEA形成方法
【0091】
様々な実施形態において、アノード420及び/又はカソード430触媒層422、424及び432の少なくとも1つは、それぞれのアノード及びカソードGDL426、436上に対応するアノード及び/又はカソードのインクを堆積させてそれぞれのGDEを形成することができる。微細多孔質層428が存在する場合、アノード触媒層又は層422及び/又は424は、微細多孔質層428上に堆積されてもよい。あるいは、インクの一方または両方が膜440上に堆積されてもよい。
【0092】
アノードまたはカソード電極の微細構造(例えば、触媒の分散、多孔性、および屈曲度)は、MEAの機能性能を決定する上で重要である場合がある。二層電極の各層に異なる結着剤を有する二層電極を形成するために、各層に異なる電極インク組成物を用いてもよく、及び/又は電極インクを形成し、塗布し、及び/又は塗布後に処理する異なる方法を用いてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、電極インクは、液体担体中に分散された固体成分を含んでもよい。固体成分は、触媒粒子、結合成分(すなわち、結合剤)、及び任意に触媒担体成分を含んでもよい。担体は、1つ又は複数の溶媒、及び任意の1つ又は複数の安定剤成分を含んでもよい。溶媒は、有機溶媒、無機溶媒、水、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。安定剤成分は、1つ以上の界面活性剤及び/又は1つ以上の単純な有機リガンドを含んでもよい。
【0094】
担体は、電極インクに安定性を与えるように選択された材料で形成されてもよい。例えば、担体は、固体成分をコロイド懸濁液として懸濁するように構成された1つ又は複数の溶媒及び/又は安定剤を含んでもよい。特に、溶媒及び/又は安定剤は、高い表面積及び低い固体担持量を有するミクロン又はナノメートルサイズの触媒粒子を安定的に懸濁させる観点、並びに結着剤の溶解性の観点から選択することができる。いくつかの実施形態では、担体の成分は、所望の触媒担持量、所望のインク湿潤性能に基づいて、及び/又は電極インクから形成される電極の所望の電気性能に基づいて選択することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、電極インクは、電極インクの総重量パーセントを基準にして、約2wt%~約20wt%の範囲の量で固体成分を含んでもよい。電極インクは、電極インクの総重量パーセントを基準にして、約5wt%~約50wt%の範囲の量で担体を含んでもよい。
【0096】
適切な触媒粒子は、上記のように、Pt、Ru、Ni、Rh、Mo、Co、Ir、Fe、及び/又は部分的に満たされた3d軌道を含む他のdブロック金属などの1つ又は複数の触媒金属を含んでもよい。例えば、触媒粒子は、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Fe、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、W、Zn、またはそれらの任意の組み合わせからなる元素金属または合金を含んでもよい。例えば、アノード触媒粒子は、Pt-Ru、Pt-Co、Pt-Mn、Cu-Zn、Cu-Zn-Al、Pt-Ni、Fe-Cr、またはFe-Cr-Cuなどの合金触媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、触媒粒子は、約70:30~約30:70、約60:40~約40:60、または約50:50の範囲のPt:Ru原子比を有するPt-Ru合金粒子から構成されてもよい。
【0097】
触媒粒子はそれぞれ、単一の触媒金属、または触媒金属の合金を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アノード触媒層は、異なる触媒金属及び/又は異なる粒子サイズの触媒粒子を含んでもよい。 例えば、触媒粒子は、平均粒径が数ナノメートルから1ミクロン未満、例えば10nmから900nmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、触媒粒子は、触媒効率を向上させ、コストを削減するために、触媒金属シェルと、コアとして異なる(例えば、より安価な)金属又は材料とを有する、コア-シェル構成を含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、電極インクは、固体成分の総重量を基準にして、約30wt%~約100wt%の範囲の量で、Pt-Ru合金粒子などの触媒粒子を含んでもよい。 いくつかの実施形態では、触媒粒子は、電極インク及び/又はインク溶媒への溶解性を改善するために、有機リガンドで官能化されてもよい(例えば、官能化表面層を含んでもよい)。
【0099】
結合成分は、PTFE等の疎水性ポリマー結合剤、及び/又はNafion(登録商標)等の商品名で販売されている化学式CHF13S・Cを有するスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体等のアイオノマー結合剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合成分は、電極インクの固形分量の約5wt%~約50wt%、例えば約10wt%~約40wt%、または約10wt%~約30wt%を占めてもよい。
【0100】
触媒担持成分は、低減された触媒担持、増加した電気伝導度、及びより良い電極印刷特性を提供するように構成された1つ又は複数の担体材料を含んでもよい。一般的な支持材料は、カーボンブラック(例えば、Vulcan XC 72R炭素粉末、又はKetjen Black粉末)、グラファイト粉末、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、ナノホーン、炭素繊維、炭素ウィスカー等のような炭素系材料も含むことができる。他の実施形態では、触媒担持成分は、非炭素系材料、例えば、W、Ti、Moなどの金属の炭化物、酸化物、窒化物などを含んでもよい。
【0101】
溶媒の特性は、対応する電極インクから形成される電極の性能および/または製造可能性に影響を与える可能性があります。 例えば、溶媒は、その所望の極性、蒸気圧、誘電率、粘度、安定性、及び/又は沸点に基づいて選択されることがある。また、インクをGDLに塗布する際の所望のインクの濡れ挙動に基づいて、溶媒を選択することも可能である。
【0102】
適切な溶媒は、同類のアルコール、エーテル、エステル、ケトン、酸、アミン、グリコール、グリム、グリセロール、それらの組み合わせなどの有機溶媒を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、電極インク溶媒は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、乳酸エチル、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル、ヘプタノール、それらの組み合わせなどを含んでもよい。有機溶媒又はその組み合わせは、単独で使用されてもよく、又は望ましい分散及び/又は表面湿潤特性を達成するために選択され得る比率で、他の溶媒及び/又は水と混合されてもよい。 様々な実施形態において、電極インクは、電極インクの総重量を基準にして、約5wt%~約50wt%の範囲の量の1つ以上の溶媒を含んでもよい。
【0103】
安定剤は、触媒の粒子径、表面積、担持量に基づいて、及び/又は電極インクに含まれる溶媒の性質に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、電極インク安定剤は、電極インクによって形成される電極層の焼結温度以下であるバーンオフ温度を有していてもよい。焼結温度は、触媒の種類及び関連する結合成分の熱安定性に依存し得る。例えば、PTFEなどの疎水性結合剤は、Nafion(登録商標)などのアイオノマー結合剤よりも高い熱安定性を有する場合がある。
【0104】
安定化剤は、1つ以上の界面活性剤及び/又は1つ以上の単純な有機リガンドを含んでもよい。電極インクの界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、両性、及び/又は非イオン性界面活性剤を含んでもよい。例えば、好適な界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレス硫酸ナトリウム(SLS)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体(例えば、狭範囲エトキシレート)、フルオロ界面活性剤、これらの組み合わせ、又は同様のものを含んでもよい。適切な単純な有機リガンドは、チオール、アミン、酸、ホスフィン、ポリオール、これらの組み合わせ、又は同様のものを含み得る。様々な実施形態において、電極インクは、電極インクの総重量を基準にして、2wt%未満、例えば0.25wt%~約1wt%、又は約0.5wt%の安定剤を含んでもよい。
【0105】
電極インクは、超音波処理、磁気撹拌、ボールミル、遊星ミル、高圧混合、他の機械的混合法、それらの組み合わせなど、任意の適切な混合プロセスを使用して形成することができる。 いくつかの実施形態では、固体成分は、磁気攪拌及び超音波処理を用いて、電極インクの担体中に分散することができる。
【0106】
本発明者らは、IPAなどのアルコール系溶媒が、触媒粒子及び/又はPTFEなどの疎水性ポリマー結合剤と反応することを認識した。したがって、一実施形態では、アルコール系又はアルコール含有溶媒を含む電極インクは、水、アルコール系及び非アルコール系溶媒の組み合わせ、及び/又はアイオノマー(例えば、親水性アイオノマー)及び疎水性ポリマー結合剤の両方を含む結合成分(すなわち、剤)を含むこともできる。
【0107】
いくつかの実施形態において、多層アノードは、2つ以上の異なるアノードインクを使用して形成されてもよい。例えば、二層アノード420を形成するために、第1アノードインクを使用して第1アノード触媒層422を形成してもよく、第2アノードインクを使用して第2アノード触媒層424を形成してもよい。
【0108】
第1アノードインクの固体成分は、第1触媒粒子、PTFEなどの疎水性結合剤、およびNafion(登録商標)の商品名で販売されている化学式CHF13S・Cを有するスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体などのアイオノマー結合剤、を含んでもよい。第1アノードインクの固形分成分は、任意に触媒担体成分を含むこともできる。
【0109】
特定の理論に拘束されることを望まないが、比較的高い温度(例えば、ポリマー結合剤焼結温度)での第1アノードインクの焼結は、第1アノードインクに含まれるアイオノマー結合剤(例えば、Nafion(登録商標))の分子骨格から官能鎖を脱離することができると考えられている。その結果、第1アノード触媒層422に含まれるNafion(登録商標)は、PTFE疎水性結合剤と同様の構造を有する骨格が残される可能性がある。したがって、第1アノード触媒層中の異なる結着剤は、焼成後に互いに大きく異なる特性を有することはないだろう。さらに、第1アノードインクに、PTFEなどの疎水性高分子結合剤に加えてアイオノマー結合剤を添加することにより、PTFEなどの疎水性結合剤を著しく重合させたり、触媒粒子と反応させたりせずに、アルコール系またはアルコール含有溶剤を使用することができるようになる。
【0110】
第2アノードインクの固体成分は、第2触媒粒子と、Nafion(登録商標)の商品名で販売されている化学式CHF13S・Cを有するスルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素樹脂-コポリマーなどのアイオノマー結合剤と、任意の触媒担持成分とを含んでも良い。カソードインクの固体成分は、第3触媒粒子と、アイオノマー結合剤と、任意の触媒担体成分とを含んでもよい。
【0111】
第1、第2、及び第3触媒粒子は、上述したような触媒粒子を含んでもよい。 例えば、第1触媒粒子及び第2触媒粒子は、Pt触媒及びRu触媒を含んでもよく、第3触媒粒子は、Pt触媒を含んでもよい。ただし、第1触媒粒子と第2触媒粒子は、異なるPt:Ruの原子比を有していてもよい。例えば、第1触媒粒子は、約60:40~約40:60、又は約50:50の範囲のPt:Ru原子比を有していてもよく、第2触媒粒子は、約55:45~約70:30、又は約66:33の範囲のPt:Ru原子比を有していてもよい。特に、第2触媒粒子は、第1触媒粒子よりも高いPt:Ru原子比を有していてもよい。あるいは、第1触媒粒子、第2触媒粒子及び第3触媒粒子は、互いに異なる金属又は合金から構成されてもよい。例えば、第1触媒粒子、第2触媒粒子及び第3触媒粒子の少なくとも1つは、Pt-Ru合金触媒粒子からなり、第1触媒粒子、第2触媒粒子及び第3触媒粒子の少なくとも1つの他の1つは、Pt-Mo及び/又はPt-Co合金触媒粒子からなるものであってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、第1及び第2アノードインク、並びにカソードインクは、例えば、水、乳酸エチル(飽和炭素原子に結合したOH基を含み、アルコール系又はアルコール含有溶剤と考えられる)、及びPGMEAを含む担体を含んでもよい。担体中の水と安定剤成分の量は、Nafion(登録商標)とPTFEの両方を担体中に分散させるように設定することができる。
【0113】
MEA400は、アノード及びカソードのインクを使用して形成することができる。インクは、GDL上又はポリマー膜上などのMEA基材上に直接分注することができる。電極インクは、意図された基板上に触媒粒子の均一な層を生成することができる任意の技法を用いて分注されてもよい。例えば、適切な分注プロセスは、ブラシ、ロッドコーティング、スクリーン印刷、超音波噴霧、空気噴霧、ロールツーロールコーティング、スロットダイコーティングなどを含んでもよい。他の実施形態では、インクは、別の基板上に分注され、乾燥及び/又は焼結されて触媒デカールを形成し、これをMEA基板に転写してもよい。 いくつかの実施形態では、MEAは、上記のプロセスの組合せを用いて製造することができる。
【0114】
一実施形態では、第1アノードインクは、第1GDL426上に堆積され、風乾され、熱処理(例えば、焼結)されて第1アノード触媒層422を形成することができる。例えば、第1アノードインクは、室温で、約10分~約1時間風乾され、その後、約280℃~約420℃、例えば約300℃~約400℃、約325℃~約375℃、又は約350℃の範囲の第1温度で、約15分~1時間、例えば約30分の範囲の時間加熱することができる。 この高温焼結により、第1アノードインクに含まれるアイオノマー結合剤(例えば、Nafion(登録商標))の分子骨格から官能鎖が脱離する場合がある。その結果、第1アノード触媒層422に含まれるNafion(登録商標)は、PTFE疎水性結合剤と同様の構造を有する骨格を残すことができる。いくつかの実施形態において、第1触媒粒子を活性化させるために、不活性雰囲気中または活性雰囲気中(例えば、還元性雰囲気または酸化性雰囲気)で加熱を行うことができる。
【0115】
第1アノードインクは、担体中に分散された、第1触媒粒子、及びアイオノマー結合剤(例えば、Nafion(登録商標))、及び疎水性結合剤(例えば、PTFE)、並びに任意に触媒担体を含んでもよい。 いくつかの実施形態において、第1アノードインクは、ロッドコーティングを使用して分散されてもよい。担体は、例えば、水、乳酸エチル、PGMEA、及び/又は任意選択の安定剤成分を含むことができる。担体中の水、乳酸エチル、PGMEA、及び/又は安定剤の量は、Nafion(登録商標)及びPTFEの両方を担体中に分散させるように構成することができる。
【0116】
次に、第2アノードインクは、第1アノード触媒層422上に堆積され、風乾され、焼結されて第2アノード触媒層424を形成することができる。例えば、第2アノードインクは、室温で、約10分~約1時間風乾され、その後、約50℃~約80℃、例えば55℃~約65℃、又は約60℃の範囲の第2温度で、約8時間~約14時間、例えば約12時間の範囲の時間加熱することができる。第2温度は第1温度より低いが、第2加熱ステップは第1加熱ステップより長い。このステップの比較的低い加熱温度は、アイオノマーが分子骨格からの官能鎖の脱離をもたらさないように、第2アノード触媒層424中のNafion(登録商標)結合剤の構造を維持することができる。いくつかの実施形態において、第2触媒粒子を活性化するために、焼結は、不活性雰囲気中又は活性雰囲気中(例えば、還元性又は酸化性雰囲気中)で実施することができる。
【0117】
カソードインクは、GDL436に塗布され、風乾され、焼結されてカソード430を形成することができる。 例えば、カソードインクは、室温で、約10分~約1時間風乾され、その後、約50℃~約80℃、例えば55℃~約65℃、又は約60℃の範囲の温度で、約8時間~約14時間、例えば約12時間の範囲の時間、加熱することができる。 いくつかの実施形態において、加熱は、第3触媒粒子を活性化するために、不活性雰囲気中又は活性雰囲気中(例えば、還元性又は酸化性雰囲気)で実施することができる。 カソードインクは、第1及び/又は第2アノードインクの塗布の前、後、又は塗布中に塗布されてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、カソード430及び/又は第2アノード触媒層424のような、結合剤としてアイオノマーを含む電極層は、別々の担体上で製造されてもよい。第2アノード触媒層424は、第1アノード触媒層422がアノードGDL426(又は、存在すればアノードGDL426上の微細多孔質層428)に結合された後、担体から除去され、デカール積層プロセスによって第1アノード触媒層422に適用/結合されてもよい。他の実施形態では、第2アノード触媒層424は、担体から除去され、デカール積層プロセスによって、膜440に適用/結合されてもよい。いくつかの実施形態では、カソード430は、担体から除去され、デカール積層プロセスによって、カソードGDL436に適用/結合されてもよい。
【0119】
他の実施形態では、第2アノード触媒層424及び/又はカソード430触媒層432をそれぞれの担体から取り外し、膜440の対向する面に接着してもよい。第1アノード触媒層422は、アノードGDL426に接合された後、膜440上に配置され、カソードGDL436は、カソード430触媒層432上に配置されてもよい。
【0120】
他の実施形態では、アノード420は、膜440上に第2アノードインクを堆積させ、次に第2アノードインクを乾燥及び焼結させて第2触媒層424を形成し、膜440に接着させてもよい。第1アノードインクは、アノードGDL426(または、微細多孔質層428が存在する場合)のアノード側に堆積され、その後、乾燥及び焼結されて第1触媒層422を形成してもよく、これは第2触媒層424と接合されてもよい。カソード430の触媒層432は、カソードGDL436又は膜440のカソード側にカソードインクを堆積させることによって形成されてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、セル400は、MEA410の対向する側に配置されたガスケット450を含んでもよい。 例えば、ガスケット450は、流場プレート402に形成された溝内に配置されてもよい。 ガスケット450は、PTFE、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、シリコン、フッ素化シリコン、フッ素ゴム、フッ素化炭素系合成ゴムなどで形成されてもよい。 ガスケット450は、平板状のガスケットであってもよいし、液状射出成形法等を用いてガスケット材料を吐出することにより形成されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、MEA410は、1つ又は複数の任意のサブガスケット452を含んでもよい。サブガスケット452は、膜440上に配置されてもよく、膜440の活性領域を少なくとも部分的に規定するように構成されてもよい。 サブガスケット452は、膜440に接着される単層又は多層構造であってよい。 例えば、サブガスケット452は、膜440及び/又は陽極及び陰極420、430に機械的に結合、熱的に結合、又は接着結合されてもよい。サブガスケット452は、動作条件下でガスケット450及び膜440に適合する材料で形成されることが好ましい。 例えば、サブガスケット452は、PTFE、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリスーパースルホン、ポリエチレンテレフタレート等から形成されてもよい。サブガスケット452の厚さは、膜440、アノード及びカソードGDL426、436、アノード420、カソード430、及びガスケット450の厚さなど、MEA410の他の要素の厚さと関連して決定されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、MEA410は、カソード430が膜440の第1側面(例えば、カソード側)に接触し、第2アノード触媒層424が膜440の反対側の第2側面(例えば、アノード側)に接触するように、膜440をアノードGDL426及びカソードGDL436の間に配置して組み立てることができる。サブガスケットは、組立工程中に膜440上に配置することができる。
【0124】
次に、組み立てられたMEA410は、膜440、アノード420、カソード430、アノード及びカソードGDL層426、436、及び/又はサブガスケット452を結合するためにホットプレスされてもよい。ホットプレスは、膜440及びアノード及びカソードGDL層426、436の特性を損なうことなく、MEA410の層を結合するのに十分な温度及び圧力で実施されてもよい。 例えば、MEA410は、約40℃~約160℃、例えば約60℃~約140℃の範囲の温度、及び約15kg/cm~約75kg/cm、例えば約25kg/cm~約60kg/cmの範囲の圧力でホットプレスされてもよい。 ホットプレスは、約30秒~約15分、例えば、約1分~約10分の範囲の持続時間実施されてもよい。いくつかの実施形態では、ホットプレスは、膜安定性を向上させるために、膜440をナトリウム形態に変換するように構成されてもよい。
【0125】
ポンプセパレータ
【0126】
図5は、本開示の様々な実施形態による、電気化学セルスタック500を含むポンプセパレータ150の断面図である。 図5を参照すると、スタック500は、ポンプセパレータ150のハウジングの内部に配置されてもよく、図4に示すように、流場プレート402によって分離されたMEA410を含んでもよい。さらに、スタック500は、スタック500の対向する端部に配置されたMEA410上に配置されたエンドプレート408を含んでもよい。エンドプレート408は、エンドプレート408がそれぞれ入口流場404または出口流場406のみを含むことを除いて、流れ場プレート402と同様であってよい。
【0127】
電圧源または電流源502は、スタック500に電気的に接続されてもよい。特に、電圧源又は電流源502は、エンドプレート408に電気的に接続されてもよく、MEA410を横切って電圧ポテンシャル又は電流を印加するように構成されてもよい。
【0128】
本明細書に記載された燃料電池システム及び構成要素は、所望により他の実施形態及び構成を有していてもよい。また、所望により他の構成要素を追加してもよい。さらに、本明細書の任意の実施形態に記載され、及び/又は任意の図に示される任意のシステム要素又は方法ステップは、そのような使用が明示的に記載されていない場合でも、上述の他の適切な実施形態のシステム及び/又は方法において使用することもできることを理解されたい。
【0129】
本発明の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。それは、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図したものではなく、修正および変形は、上記の教示に照らして可能であり、または本発明の実施から獲得することができる。本明細書は、本発明の原理およびその実用化を説明するために選択されたものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義されることが意図されている。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5