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特許7443439絶縁特性に優れた電力ケーブル用軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】絶縁特性に優れた電力ケーブル用軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/44 20060101AFI20240227BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240227BHJP
   C08K 5/3465 20060101ALI20240227BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240227BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240227BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20240227BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01B3/44 Z
C08L23/08
C08K5/3465
C08K3/26
C08K5/098
C08K5/20
C08L23/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022138949
(22)【出願日】2022-09-01
(65)【公開番号】P2023042569
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122134
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウヌン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジュニョン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヨンソン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057321(JP,A)
【文献】特開2014-012395(JP,A)
【文献】国際公開第97/008218(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01344793(EP,A1)
【文献】特開2021-075709(JP,A)
【文献】特開2008-255191(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110498997(CN,A)
【文献】特開2019-147944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/16- 3/56
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)と成分(B)との総重量を基準に、
(A)プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合され得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体60重量%~100重量%と、
(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体~40重量%と、を含む電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物であって、
前記成分(A)と前記成分(B)100重量部に対して、(C)β晶を形成するためのβ晶核剤0.02重量部~0.5重量部をさらに含み、前記ポリオレフィン樹脂組成物をキシレン溶剤で常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(溶剤抽出物)の含有量が25重量%~45重量%である電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)をキシレン(xylene)溶剤で常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(溶剤抽出物)の含有量が1重量%~45重量%である、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
135℃デカリン溶媒にて測定される前記溶剤抽出物の固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gである、請求項2に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融温度(Tm)が150℃~165℃である、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で230℃にて測定する際、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融指数が0.5g/10分~20.0g/10分である、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)中のエチレン含有量が5重量%~90重量%である、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)が、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】
前記β晶核剤(C)が、ガンマ-キナクリドン、デルタ-キナクリドン、キナクリドンキノン、インディゴゾール、およびチバンチン有機顔料(cibantine organic pigment)、二量体アルミニウム酸塩で変性された炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムとピメリン酸との混合物、二酸性カルシウム塩および亜鉛塩、アジピン酸またはスベリン酸のジアミン、N,N-ジシクロヘキシル-テレフタルアミドおよびN’,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレン-ジカルボキシ-アミドからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項9】
酸化防止剤、中和剤、UV安定剤、長期耐熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強剤、充填剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項10】
135℃デカリン溶媒にて測定される前記溶剤抽出物の固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gである、請求項に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィン樹脂組成物の溶融温度(Tm)が150℃~165℃である、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項12】
ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で230℃にて測定する際、前記ポリオレフィン樹脂組成物の溶融指数が0.5g/10分~20.0g/10分である、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項13】
動的機械分析装置(DMA)により測定する際、前記ポリオレフィン樹脂組成物のゴム成分のガラス転移温度が、-60℃~-40℃と-40℃~-20℃との間でそれぞれ現れる、請求項1に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の電力ケーブル用ポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造され、高圧または超高圧電力ケーブルの絶縁層である、ポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項15】
曲げ弾性率が400MPa未満である、請求項14に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項16】
常温にて測定する際に体積抵抗が1016Ωcm以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱(aging)した後の体積抵抗も1016Ωcm以上である、請求項14に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項17】
伸び率が400%以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱した後の伸び率が、初期(加熱前)伸び率に対して75%以上である、請求項14に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項18】
前記ポリオレフィン樹脂成形品が80μm厚のフィルム状の場合、直流絶縁破壊強度が300kV/mm以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱した後の直流絶縁破壊強度が300kV/mm以上である、請求項14に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項19】
前記ポリオレフィン樹脂成形品が、長さ30mm、幅15mm、厚さ2mmの大きさを有するとき、130℃にて6時間、1.6kgの荷重を加えた後の変形率が50%未満である、請求項14に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁特性に優れ、電力ケーブルに用いられるのに好適な軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。詳細には、本発明は絶縁特性に優れるのみならず、耐熱性、耐電圧特性、空間電荷制御能力、および機械的物性に優れるので、高圧および超高圧の電力ケーブルに用いられるのに好適な軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリプロピレン樹脂は、優れた剛性と高い耐熱性、化学薬品に対する安定性と高い絶縁特性により、電子製品の重要部品の包装、自動車用電気部品のハウジング、電気製品の主要部位の保護、小型電熱器表面など、高い電圧に対する絶縁特性および耐熱性が同時に求められる製品に広く利用される。
【0003】
また、ポリプロピレンは、機械的強度、耐摩耗性および耐水性に優れるとともに誘電特性に優れるため、超高圧製品の絶縁に有効である。
【0004】
しかし、ポリプロピレン樹脂は、剛性が高く、折り曲げの際に白化現象が発生するため、屈曲のある部品に適用するのが難しく、衝撃に脆弱であり、特に低温にて容易に破壊される性質があるため、野外環境に架設される高圧または超高圧電線の絶縁体として使用するには不適である。
【0005】
現在、電線用絶縁材料としては、誘電率が低いとともに極性のないポリエチレン(polyethylene)、エチレン-プロピレンゴム共重合体(ethylene-propylene rubber;EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム共重合体(ethylene-propylene-diene rubber;EPDM)などが使用されている。また、高圧および超高圧の電流を大量に移送する目的から、耐熱性を改善するために低密度ポリエチレン(low density polyethylene)を架橋した架橋ポリエチレン(XLPE)が用いられている。
【0006】
ところで、架橋ポリエチレンの場合、架橋残渣により直流絶縁体の絶縁性能を減少させる空間電荷が累積されるという問題が生じる。製品の寿命が尽きたり不良が発生したりした場合、リサイクルが不可能なため、それを焼却するしかないので環境にやさしくなく、リサイクルの際には別途の設備費用が追加で発生する。また、架橋過程で発生する架橋副産物による環境汚染の可能性が大きく、水架橋による製品の乾燥過程がさらに必要であり、押出時に発生する熱によって過剰に架橋されると、加工性が制限されるという欠点がある。
【0007】
このような欠点を改善するために、耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂にEPR、エチレン-α-オレフィンゴム(ethylene-α-olefin rubber)、EPDM等を混合して、軟質性あるいは衝撃性を改善しようとする試みがあった。この場合、ポリプロピレンマトリックスとゴムとの相分離が発生して電気絶縁特性が低下したり、ゴムの割合が高すぎるとマトリックスとゴムとの相反転が発生して耐熱特性が低下したりすることが生じ得る。
【0008】
このような問題を解決するために、ポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン樹脂組成物において、軟質性と耐衝撃性を改善するとともに、耐電圧特性と耐熱性を確保する研究が進められている。
【0009】
例えば、特許文献1では、ポリプロピレンにエチレン-α-オレフィンゴムやEPDMを混合して、冷却速度による交流破壊電圧強度の変化を観察したが、耐熱性および軟質性の改善に関する言及はなかった。
【0010】
特許文献2では、ポリプロピレン樹脂にナノ無機粒子を混合して、体積比抵抗および絶縁破壊強度に優れた絶縁物質を調製する方法を開示しているが、ナノ無機粒子をポリプロピレンに均一に分散させ難いという欠点がある。
【0011】
特許文献3では、α-オレフィンとプロピレンとの共重合体を用いて、軟質性を確保した熱可塑性重合体を開示しているが、ゴムの含有量が少ないと絶縁素材として適用する際に、軟質性が低下して架設および設置が難しく、ゴムの含有量が多いと機械的物性を左右するポリプロピレンの利点がなくなるという問題が生じる。
【0012】
特許文献4では、ポリプロピレンに絶縁流体を添加して、絶縁特性が向上し、リサイクルが可能な電力ケーブル用絶縁層を開示しており、特許文献5では、結晶サイズを減らすために有機核剤を添加したポリプロピレン樹脂を絶縁層に用いた電力ケーブルについて開示している。しかし、ポリプロピレンの高い剛性により可撓性が低下する問題を解決するために、多量のゴムを追加的に混練しているため、不均一な混練による部分的な物性低下が発生することがあり、結晶サイズを減らすために添加した有機核剤に起因するコストの上昇と、そこから誘発される欠点が存在することとなり、電力ケーブルの絶縁層にポリプロピレンを使用するためには、これに対する改善が必要なのが実情である。
【0013】
特許文献6には、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン共重合樹脂あるいはエチレン-α-オレフィン共重合ゴムからなり、耐久性、耐衝撃性、耐寒衝撃性が改善されたポリプロピレン樹脂組成物が開示されているが、-40℃にて耐寒衝撃改善に関する実際の結果は開示されておらず、電線に適用するための軟質性確保のために混合するエチレン-プロピレンゴムあるいはエチレン-α-オレフィンゴムの含有量が増加すると、引張特性および機械的物性、加熱変形が激しいため、電線用素材としては不適である。
【0014】
一方、高圧および超高圧の電力ケーブルは、通常ドラムに巻き付けられて移送され、架設時にも地形によって曲げや反りが発生する。電力ケーブルの使用電圧が上がるほど絶縁層の厚さが増加するため、このような軟質特性の重要性が大きくなる。
【0015】
したがって、前記で述べた特許文献の欠点を補完して、絶縁特性に優れ、高圧および超高圧の電力ケーブルに用いられるのに好適な軟質ポリプロピレン系ポリオレフィン樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2013/0148028号
【文献】韓国公開特許第10-2012-0086071号公報
【文献】韓国特許第10-1784333号公報
【文献】韓国公開特許第10-2014-0102407号公報
【文献】韓国特許第10-1810542号公報
【文献】韓国特許第0246138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、絶縁特性に優れるのみならず、耐熱性、耐電圧特性、空間電荷制御能力および機械的物性に優れ、高圧および超高圧の電力ケーブルに用いられるのに好適な軟質ポリオレフィン樹脂組成物を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、前記ポリオレフィン樹脂組成物から製造される成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するための本発明の一実施例により、成分(A)と成分(B)の総重量を基準に、(A)プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合され得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体60重量%~100重量%と、(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体0~40重量%と、を含むポリオレフィン樹脂組成物であって、成分(A)と成分(B)100重量部に対して、(C)β晶を形成するためのβ晶核剤0.02重量部~0.5重量部をさらに含む、ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【0020】
本発明の具体例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)をキシレン(xylene)溶剤で常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(溶剤抽出物)の含有量は1重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%であり得る。
【0021】
本発明の具体例において、前記溶剤抽出物は、135℃のデカリン溶媒にて測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。
【0022】
本発明の具体例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融温度(Tm)は150℃~165℃であり得る。
【0023】
本発明の具体例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で230℃にて測定する際に溶融指数が0.5g/10分~20.0g/10分、好ましくは0.5g/10分~10.0g/10分であり得る。
【0024】
本発明の具体例において、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)中のエチレン含有量は5重量%~90重量%であり、好ましくは10重量%~70重量%であり得る。
【0025】
本発明の具体例において、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0026】
本発明の具体例において、β晶核剤(C)は、ガンマ-キナクリドン、デルタ-キナクリドン、キナクリドンキノン、インディゴゾール、およびチバンチン有機顔料(cibantine organic pigment)、二量体アルミニウム酸塩で変性された炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムとピメリン酸との混合物、二酸性カルシウム塩および亜鉛塩、アジピン酸またはスベリン酸のジアミン、N,N-ジシクロヘキシル-テレフタルアミドおよびN’,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレン-ジカルボキシ-アミドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0027】
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、UV安定剤、長期耐熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強剤、充填剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。
【0028】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂組成物をキシレン溶剤で常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(溶剤抽出物)の含有量は25重量%~45重量%、好ましくは30重量%~40重量%であり得る。
【0029】
本発明の具体例において、前記溶剤抽出物は、135℃のデカリン溶媒にて測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。
【0030】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂組成物の溶融温度(Tm)は150℃~165℃であり得る。
【0031】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂組成物は、ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で230℃にて測定する際に溶融指数が0.5g/10分~20.0g/10分、好ましくは0.5g/10分~10.0g/10分であり得る。
【0032】
本発明の具体例において、動的機械分析装置(dynamic mechanical analyzer)で測定する際、ポリオレフィン樹脂組成物はゴム成分のガラス転移温度が-60℃~-40℃と-40℃~-20℃との間でそれぞれ現れ得る。
【0033】
本発明の他の実施例により、前記ポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造されるポリオレフィン樹脂成形品が提供される。
【0034】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は、曲げ弾性率が400MPa未満であり得る。
【0035】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は、常温にて測定する際に体積抵抗が1016Ωcm以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱(aging)した後の体積抵抗もまた1016Ωcm以上であり得る。
【0036】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は伸び率が400%以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱した後の伸び率が、初期(加熱前)伸び率に対して75%以上であり得る。
【0037】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品が80μm厚のフィルム状の場合、直流絶縁破壊強度が300kV/mm以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱した後の直流絶縁破壊強度が300kV/mm以上であり得る。
【0038】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品が、長さ30mm、幅15mm、厚さ2mmの大きさを有するとき、130℃にて6時間1.6kgの荷重を加えた後の変形率が50%未満であり得る。
【0039】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は、高圧または超高圧電力ケーブルの絶縁層であり得る。
【発明の効果】
【0040】
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、絶縁特性に優れるのみならず、耐熱性、耐電圧特性、空間電荷制御能力、および機械的物性に優れる。したがって、これにより製造されるポリオレフィン樹脂成形品は、高圧および超高圧の電力ケーブルに用いられるのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[ポリオレフィン樹脂組成物]
本発明の一実施例により、成分(A)と成分(B)の総重量を基準に、(A)プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合され得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体60重量%~100重量%と、(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体0~40重量%と、を含むポリオレフィン樹脂組成物であって、成分(A)と成分(B)100重量部に対して、(C)β晶形成用のβ晶核剤0.02重量部~0.5重量部をさらに含む、ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【0042】
(A)エチレン-プロピレンブロック共重合体
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を含む。この際、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合され得られるものである。
【0043】
本発明の具体例において、まず、プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体のポリプロピレン系マトリックスが重合され、次いで、該ポリプロピレン系マトリックスにエチレン-プロピレンゴム成分がブロック共重合され、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)樹脂が調製され得る。
【0044】
本発明の具体例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)をキシレン溶剤で常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(溶剤抽出物)の含有量は1重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%であり得る。エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)中の溶剤抽出物の含有量が45重量%を超えると、ポリプロピレン系マトリックスとゴム成分との間に相転移が発生して加熱変形率が高く、引張強度と伸び率が低いため、電線に適用するには不適である。
【0045】
本発明の具体例において、前記溶剤抽出物は、135℃のデカリン溶媒にて測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。溶剤抽出物の固有粘度が1.0dl/g未満であると、成形品の衝撃強度が低下し、3.0dl/gを超えると、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)内でゴム成分の凝集が発生し、ポリプロピレン系マトリックスとゴム成分との界面で空間電荷累積および電界歪みが発生する。
【0046】
本発明の具体例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融温度(Tm)は150℃~165℃であり得る。エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融温度が150℃より低いと、成形品の耐熱性が十分でなく、熱による樹脂の変性が発生し得る。したがって、運転温度および瞬間温度が130℃以上まで上昇する高電圧電力ケーブルに適用するには不適である。
【0047】
本発明の具体例において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で230℃にて測定する際、溶融指数が0.5g/10分~20.0g/10分、好ましくは0.5g/10分~10.0g/10分であり得る。エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融指数が0.5g/10分未満であると、押出温度および負荷が上昇して生産性が低下し、炭化物が発生し、20g/10分を超えると、押出物を形成する際にたわみ現象が生じ得るため、望ましくない。
【0048】
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)との総重量を基準に、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を60重量%~100重量%の含有量で含む。エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の含有量が60重量%未満であると、成形品の耐熱性が低下し、加熱変形特性が低下するため、高温の運転において外形の変化が深刻となり得る。
【0049】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を調製する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のエチレン-プロピレンブロック共重合体の調製方法をそのまま、または適宜変形して用い得る。
【0050】
好ましくは、バルク反応器2基と気相反応器1基とが直列に連結され連続的に重合し得る、ミツイ(MITSUI)社のハイポール製造プロセス(Hypol process)を用いて、通常の技術者に公知の重合方法によりエチレン-プロピレンブロック共重合体を調製し得る。
【0051】
具体的に、1段目および2段目の反応器では、プロピレンを単独注入してプロピレン単独重合体を生成するか、エチレンをさらに注入してエチレン-プロピレンランダム共重合体を生成し得る。エチレン-プロピレンランダム共重合体の重合の際には、各重合反応器において同量のエチレンが共重合され得る。続く3段目の反応器では、エチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴム成分をブロック共重合することにより、最終的なエチレン-プロピレンブロック共重合体が得られる。生成される共重合体の溶融指数は、各反応器に水素を注入して制御し得る。
【0052】
前記重合段階において、触媒は当業界に公知の触媒を制限なく使用し得る。例えば、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒または単一位置触媒などを用いることができ、高い立体規則性を有するポリプロピレン樹脂を調製し得る触媒を用いることが好ましい。
【0053】
本発明の具体例において、触媒は、塩化マグネシウムまたはジアルコキシマグネシウム担体にチタン化合物と内部電子供与体とを反応させて調製され得る。例えば、チーグラー・ナッタ触媒は、反応開始剤であるハロゲン化合物または窒素ハロゲン化合物の存在下で、金属マグネシウムおよびアルコールを反応させて得られるジアルコキシマグネシウム粒子からなる担体と四塩化チタンおよび内部電子供与体を含んでなり得る。
【0054】
なお、ジアルコキシマグネシウム担体の調製に用いられる金属マグネシウム粒子の形状に大きく制限はないが、その平均粒径が10μm~300μmの粉末状が好ましく、50μm~200μmの粉末状がより好ましい。金属マグネシウムの平均粒径が10μm未満であると、生成物である担体の平均粒径が小さくなり過ぎるため、好ましくない。金属マグネシウムの平均粒径が300μmを超えると、担体の平均粒子サイズが大きくなり過ぎ、担体の形状が均一な球状になり難いため、好ましくない。
【0055】
前記で得られた触媒は、助触媒として有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム)および外部電子供与体としてジアルキルジアルコキシシラン系化合物(例えば、ジシクロペンチルジメトキシシラン)とともに用いることが好ましい。
【0056】
(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)を含み得る。エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、成形品の軟質性を改善する役割を果たし得る。
【0057】
本発明の具体例において、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)中のα-オレフィンは、炭素数が3~8であり得る。具体的に、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。好ましくは、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)が、エチレン-プロピレンゴムであり得る。
【0058】
本発明の具体例において、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)中のエチレン含有量が5重量%~90重量%であり、好ましくは10重量%~70重量%であり得る。具体的に、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)をフーリエ変換赤外分光光度計で測定する際、エチレン含有量が5重量%~90重量%、好ましくは10重量%~70重量%であり得る。エチレン含有量が5重量%未満であると、エチレン-プロピレンゴムが結晶化してポリオレフィン樹脂組成物の耐寒衝撃強度が減少し、エチレン含有量が90重量%を超えると、ゴム共重合体が得られ難い。
【0059】
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)との総重量を基準に、前記エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)を0~40重量%の含有量で含み得る。エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)が追加されると成形品の軟質性は改善するが、40重量%を超えると成形品の耐熱特性が急激に減少し得る。
【0060】
エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、前記で述べたハイポール製造プロセスに続く4段目の気相反応器において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の存在下で、エチレンとα-オレフィン単量体とをさらに供給して重合し得る。
【0061】
他の方法として、ハイポール製造プロセスで得られたエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)に、商業的に入手可能なエチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)をブレンドすることにより、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を調製することもできる。
【0062】
商業的に入手可能なエチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、Versify(登録商標;DOW)、Vistamaxx(登録商標;ExxonMobil)、Tafmer(登録商標;MITSUI)、KEP(錦湖石油化学)、Engage(登録商標;DOW)、Exact(登録商標;ExxonMobil)、Lucene(登録商標;LG化学)、Solumer(SK化学)などが挙げられるが、これらに特に制限されるものではない。
【0063】
(C)β晶核剤
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、β晶核剤(C)をさらに含む。β晶核剤(C)は、成形品を成形する際にβ晶の生成を促進して、耐熱性の低下することなく、軟質性、絶縁特性、耐電圧特性を改善する役割を果たし得る。
【0064】
本発明の具体例において、β晶核剤(C)は、ガンマ-キナクリドン、デルタ-キナクリドン、キナクリドンキノン、インディゴゾール、およびチバンチン有機顔料、二量体アルミニウム酸塩で変性された炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムとピメリン酸との混合物、二酸性カルシウム塩および亜鉛塩、アジピン酸またはスベリン酸のジアミン、N,N-ジシクロヘキシル-テレフタルアミドおよびN’,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレン-ジカルボキシ-アミドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0065】
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)100重量部に対して、β晶核剤(C)を0.02重量部~0.5重量部の含有量で含み得る。
【0066】
β晶核剤(C)の含有量が0.02重量部未満であると、β晶が十分に形成されないため、成形品の伸び率、耐衝撃性および耐電圧特性が大きく改善されないことがあり得る。β晶核剤(C)の含有量が0.5重量部を超えると、β晶がスフェルライト(spherulite)に十分に成長できないため、成形品の耐衝撃性、耐電圧特性および空間電荷制御効果が低下する。
【0067】
(D)添加剤
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で添加剤(D)をさらに含み得る。具体的に、本発明の実施例によるポリプロピレン樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)100重量部に対して、0.3重量部~2.0重量部の含有量で添加剤(D)を含み得る。添加剤(D)の含有量が0.3重量部未満であると、添加剤の効果が期待できず、2.0重量部を超えると、添加剤効果の増加が微々たるもので、製品の経済性が低下することがあり、添加剤が不純物として作用して電気的特性を低下させ得る。
【0068】
例えば、添加剤(D)は、酸化防止剤、中和剤、UV安定剤、長期耐熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強剤、充填剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料などを含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0069】
好ましい実施形態として、本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含み得る。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤などが用いられ、具体的にペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される1つ以上を含み得るが、これらに特に制限されるものではない。
【0070】
好ましい実施形態として、本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物は、中和剤をさらに含み得る。中和剤は、ヒドロタルサイトおよびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0071】
[ポリオレフィン樹脂組成物の調製]
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物を調製する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のブレンド法をそのまま、または適宜変形して用い得る。
【0072】
具体的に例えると、前記で述べた各樹脂と添加剤とを必要な量だけニーダー(kneader)、ロール(roll)、バンベリーミキサー(Banbury mixer)などの混練機または1軸/2軸押出機などに投入した後、これらの機器を用いて投入された原料をブレンドする方法により、本発明のポリオレフィン樹脂組成物が調製され得る。
【0073】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂組成物をキシレン溶剤で常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(溶剤抽出物)の含有量は25重量%~45重量%、好ましくは30重量%~40重量%であり得る。ポリオレフィン樹脂組成物中の溶剤抽出物の含有量が25重量%未満であると、成形品の強度が高いため可撓性が低下する。ポリオレフィン樹脂組成物中の溶剤抽出物の含有量が45重量%を超えると、ポリプロピレン系マトリックスとゴム成分との間の相転移が発生して加熱変形率が高く、引張強度と伸び率が低いため、電線に適用するには不適である。
【0074】
本発明の具体例において、前記溶剤抽出物は、135℃のデカリン溶媒にて測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。溶剤抽出物の固有粘度が1.0dl/g未満であると、成形品の衝撃強度が低下し、3.0dl/gを超えると、樹脂組成物内でゴム成分の凝集が発生し、ポリプロピレン系マトリックスとゴム成分との界面で空間電荷の累積および電界歪みが発生する。
【0075】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂組成物の溶融温度(Tm)は150℃~165℃であり得る。ポリオレフィン樹脂組成物の溶融温度が150℃より低いと、成形品の耐熱性が十分でなく、熱による樹脂の変性が発生し得る。したがって、運転温度および瞬間温度が130℃以上まで上昇する高電圧電力ケーブルに適用するには不適である。
【0076】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂組成物は、ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で230℃にて測定する際、溶融指数が0.5g/10分~20.0g/10分、好ましくは0.5g/10分~10.0g/10分であり得る。ポリオレフィン樹脂組成物の溶融指数が0.5g/10分未満であると、押出温度と負荷が上昇して生産性が低下し炭化物が発生し、20g/10分を超えると、押出物を形成する際にたわみ現象が発生し得るため、望ましくない。
【0077】
本発明の具体例において、動的機械分析装置(DMA)で測定する際、ポリオレフィン樹脂組成物は、ゴム成分のガラス転移温度が-60℃~-40℃と-40℃~-20℃との間でそれぞれ現れ得る。ゴム成分の前記ガラス転移温度が-60℃~-40℃においてのみ現れると、樹脂組成物の混練性が落ちて白化が発生することがあり、ポリプロピレン系マトリックスとゴム成分との界面で電界歪みが発生し得る。ゴム成分の前記ガラス転移温度が-40℃~-20℃においてのみ現れると、-40℃にて測定した耐寒打撃特性が低下する。
【0078】
[成形品]
本発明の他の実施例により、前記ポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造されるポリオレフィン樹脂成形品が提供される。
【0079】
本発明の実施例によるポリオレフィン樹脂組成物から成形品を製造する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知の方法を用い得る。例えば、本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物を、射出成形、押出成形、キャスティング成形などと通常の方法により成形してポリオレフィン樹脂成形品を製造し得る。
【0080】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は、曲げ弾性率が400MPa未満であり得る。成形品の曲げ弾性率がこの範囲内であると、成形品の軟質性に優れ、これを超高圧電力ケーブルの絶縁層に適用する際、絶縁層の厚さが厚くても可撓性に優れるので、高圧または超高圧電力ケーブルの架設が容易である。
【0081】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は体積抵抗が1016Ωcm以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱(aging)した後の体積抵抗も1016Ωcm以上であり得る。成形品の体積抵抗がこの範囲内であると、成形品が絶縁体として好ましく機能し得る。
【0082】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は、伸び率が400%以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱した後の伸び率が、初期(加熱前)伸び率に対して75%以上であり得る。成形品の伸び率が400%未満であると、成形品の曲げ部における最外郭部位において破断が起こり得る。
【0083】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品が80μm厚のフィルム状の場合、直流絶縁破壊強度が300kV/mm以上であり、同一試験片を140℃にて30日間加熱した後の直流絶縁破壊強度が300kV/mm以上であり得る。成形品の直流絶縁破壊強度が該範囲であると、成形品の耐電圧特性に優れ、絶縁体として好ましく機能し得る。
【0084】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品が長さ30mm、幅15mm、厚さ2mmの大きさを有するとき、130℃にて6時間1.6kgの荷重を加えた後の変形率が50%未満であり得る。成形品の変形率が該範囲であると、成形品が絶縁体として好ましく機能し得る。成形品の変形率が該範囲を超えると、送電および配電の際に熱が発生して、成形品の形状および構造が崩壊され得る。
【0085】
本発明の具体例において、ポリオレフィン樹脂成形品は、高圧または超高圧電力ケーブルの絶縁層であり得る。
【0086】
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0087】
(実施例1~3および比較例1~5)
[エチレン-プロピレンブロック共重合体の調製]
エチレン-プロピレンブロック共重合体の重合は、バルク反応器2基と気相反応器1基とが直列に連結され連続的に重合し得るミツイ(MITSUI)社のハイポール製造プロセス(Hypol process)を用いた。バルク反応器である、1段目反応器の運転温度と圧力は68℃~75℃、25kg/cm~35kg/cmであり、2段目反応器の運転温度と圧力は、60℃~67℃、20kg/cm~30kg/cmであった。気相反応器である3段目反応器の運転温度と圧力は、75℃~82℃、15kg/cm~20kg/cmであった。1、2段目のバルク反応器にてプロピレン単独重合体を重合する場合には、各反応器にプロピレンとともに水素をさらに注入して溶融指数を調整しており、エチレン-プロピレンランダム共重合体を重合する場合には、各反応器にて同量のエチレンが共重合できるように、エチレンとプロピレンとの割合を調整した。
【0088】
[ポリオレフィン樹脂組成物の調製]
エチレン-プロピレンブロック共重合体の調製後、前記ハイポール製造工程に続く4段目の気相反応器においてエチレン-プロピレンブロック共重合体の存在下で、エチレンとα-オレフィン単量体とをさらに供給してエチレン-α-オレフィン共重合体を連続的に共重合するか、Versify(DOW)、Vistamaxx(ExxonMobil)、Tafmer(MITSUI)、KEP(錦湖石油化学)、Engage(DOW)、Exact(ExxonMobil)、Lucene(LG化学)、Solumer(SK化学)の中から選択されるエチレン-α-オレフィン共重合体をエチレン-プロピレンブロック共重合体にブレンドした。詳細な樹脂の成分と物性は、表1に示す通りである。前記で得られた樹脂にβ晶核剤としてNAB82(GCHテクノロジー)またはα晶核剤としてMillard3988(DMDBS;MILLIKEN)を添加して、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
【0089】
(試験例)
前記実施例1~3および比較例1~5で調製された組成物および成形品試験片の物性を以下のような方法および基準に従って測定した。その結果を下記表1および表2に示す。
【0090】
(1)溶融指数(melt index)
ASTM D 1238の方法により、2.16kgの荷重で230℃にて測定した。
【0091】
(2)溶剤抽出物(xylene soluble)含有量
ポリプロピレン樹脂または組成物をキシレンに1%濃度で140℃にて1時間溶かした後、常温にて2時間経過後抽出してその重量を測定し、樹脂または組成物全重量に対する百分率で表示した。
【0092】
(3)溶剤抽出物の固有粘度
粘度測定器を用いて、135℃のデカリン溶媒にて前記(2)において得られた溶剤抽出物の固有粘度を測定した。
【0093】
(4)溶融温度(melting temperature)
TA Instrument Q2000 示差走査熱量計(DSC)を用いて、サンプルを200℃にて10分間等温に維持して熱履歴を除去した後、200℃から30℃まで毎分10℃ずつ冷却しながら結晶化させ、同じ熱履歴を有するようにした後、30℃にて10分間等温に維持し、さらに毎分10℃ずつ昇温させながらピーク温度から溶融温度(Tm)を求めた。
【0094】
(5)ガラス転移温度(glass transition temperature)
動的機械分析装置(DMA;TA instrument Q800)を用いて-140℃から2℃/分の速度で145℃まで昇温させ、応力緩和曲線(stress relaxation curve)からゴム成分のガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0095】
(6)曲げ弾性率(flexural modulus;FM)
ASTM D 790の方法により測定した。射出試験片の規格は100mm×10mm×3mmであった。
【0096】
(7)加熱変形
射出温度240℃にて長さ30mm、幅15mm、厚さ2mmの試験片を成形し、KS C IEC 60811-508の方法により130℃にて6時間1.6kg荷重を加えて変形された厚さを得て、変形された厚さを初期厚さで除して変形率を得た。
【0097】
(8)IZOD衝撃強度
ASTM D 256の方法により-40℃にて測定した。
【0098】
(9)破断伸び率
IEC 60811-501に基づいて25mm/分の条件で測定した。老化後の実験は、同一試験片を140℃のコンベクションオーブンで30日間老化させた後、伸び率を測定し、伸び残率はこの値を初期伸び率で除して求めた。
【0099】
(10)直流絶縁破壊電圧
ポリプロピレン試験片は、実験用押出機(HAAKE extruder)を用いて80μm厚のシートを作製した後、ASTM D 149-92の方法により、直径12.7mmの球対球電極(sphere electrodes)を用いて常温にて直流絶縁破壊電圧を測定した。老化後の実験は、同じ試験片を140℃のコンベクションオーブンで30日間老化させた後、直流絶縁破壊電圧を測定した。
【0100】
(11)体積抵抗
射出温度240℃にて、10cm×10cm、2mm厚の射出試験片を製造し、これを2日間常温にて老化させた後、ASTM D257に従って測定した。老化後の実験は、同一試験片を140℃のコンベクションオーブンで30日間老化させた後、体積抵抗を測定した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
前記表1および表2から確認されるように、本発明の範囲に属する実施例の樹脂組成物から製造される成形品は、曲げ弾性率が低いので軟質性に優れており、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体の低いガラス転移温度によって耐衝撃特性に優れていた。
【0104】
比較例1および2の組成物は、β晶核剤を含んでいないため、成形品の軟質性が十分ではなかった。比較例3および4の組成物は、溶剤抽出物の含有量が高いため、成形品の耐熱性と電気的特性が好ましくなかった。比較例5の組成物は、β晶核剤の含有量が高すぎるため、成形品の物性が改善する効果がむしろ低下した。
【0105】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、絶縁特性に優れるのみならず、耐熱性、耐電圧特性、空間電荷制御能力および機械的物性に優れる。したがって、これにより製造されるポリオレフィン樹脂成形品は、高圧および超高圧の電力ケーブルの絶縁層として効果的に使用され得る。