(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】より高い精度を有するセキュアな位相ベース距離測定および方向探索
(51)【国際特許分類】
H04W 64/00 20090101AFI20240227BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20240227BHJP
H04B 17/27 20150101ALI20240227BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20240227BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20240227BHJP
【FI】
H04W64/00 171
G01S5/02 A
H04B17/27
H04W84/10 110
H04W52/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181597
(22)【出願日】2022-11-14
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ウィハルジャ
(72)【発明者】
【氏名】キラン ウルン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター シミレイスキー
(72)【発明者】
【氏名】プーリア ザンド
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207811(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0923121(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
G01S5/02
H04B17/27
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信デバイスの方法であって、前記方法は、
第2の通信デバイスから無線周波数信号を受信するステップと、
前記無線周波数信号に基づいて第1の位置データを生成すること、および、第1のプロセッサを使用して前記第1の位置データをBluetoothホストコントロールインタフェースに準拠した第2のプロセッサへ転送することを含む、第1のモードで動作するステップと、
前記第1のプロセッサを使用して、1つまたは複数の条件を1つまたは複数の閾値と比較し、前記比較に応答して、前記第1のモードでの動作から第2のモードでの動作へ移行するステップと、
前記第2のモードでの動作中、前記無線周波数信号に基づいて第2の位置データを生成し、前記第1のプロセッサを使用して、前記第2のプロセッサへの前記第1の位置データの転送よりも高いデータ転送速度で前記第2の位置データを前記第2のプロセッサへ転送するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の条件を比較することは、距離を表す値を比較すること、バッテリ電力レベルを表す値を比較すること、および、信号品質を表す値を比較すること、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の位置データを生成することは、前記無線周波数信号を第1のサンプリングレートでサンプリングすることを含み、
前記第2の位置データを生成することは、前記無線周波数信号を前記第1のサンプリングレートよりも高い第2のサンプリングレートでサンプリングすることを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1のサンプリングレートは、1MHzである、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の位置データは、時間データ値および位相データ値を含み、
前記第2の位置データは、同相データおよび直交位相(I/Q)データを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、第1のデータパスを介して前記第1の位置データを転送し、第2のデータパスを介して前記第2の位置データを転送するステップをさらに含み、
前記第1のデータパスは、前記第2のデータパスよりも低い最大データ転送速度を有する、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第2の位置データを前記第2のプロセッサへ転送するステップは、前記第2の位置データを、前記第1のプロセッサと前記第2のプロセッサとによって共有されているメモリ部分へ転送することを含む、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記第2のプロセッサに前記メモリ部分から前記第2の位置データを取り出させるメッセージを前記第2のプロセッサへ送信するステップをさらに含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記第2のプロセッサを使用して、位相ベース距離測定アルゴリズムおよび方向探索アルゴリズムのうちの少なくとも1つを実行し、前記第2の通信デバイスに関連付けられた1つまたは複数の位置測定値を生成するステップをさらに含む、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
通信デバイスであって、前記通信デバイスは、
第2の通信デバイスから無線周波数信号を受信するように構成された無線周波数(RF)モデムと、
第1のプロセッサと、
を備え、
前記第1のプロセッサは、
前記無線周波数信号に基づく第1の位置データをBluetoothホストコントロールインタフェースに準拠した第2のプロセッサへ転送する第1のモードで動作し、
1つまたは複数の条件を1つまたは複数の閾値と比較し、
前記比較に応答して、前記第1のモードでの動作から第2のモードでの動作へ移行し、
前記第2のモードでの動作中、前記第2のプロセッサへの前記第1の位置データの転送よりも高いデータ転送速度で、前記無線周波数信号に基づく第2の位置データを前記第2のプロセッサへ転送する、
ように構成されている、
通信デバイス。
【請求項11】
前記第1のプロセッサは、
距離を表す値を比較すること、バッテリ電力レベルを表す値を比較すること、および、信号品質を表す値を比較すること、
のうちの少なくとも1つを行うようにさらに構成されている、
請求項10記載の通信デバイス。
【請求項12】
前記RFモデムは、
前記無線周波数信号を第1のサンプリングレートでサンプリングして前記第1の位置データを生成し、
前記無線周波数信号を前記第1のサンプリングレートよりも高い第2のサンプリングレートでサンプリングして、前記第2の位置データを生成する、
ようにさらに構成されている、
請求項10記載の通信デバイス。
【請求項13】
前記第1のサンプリングレートは、1MHzである、
請求項12記載の通信デバイス。
【請求項14】
前記第1のプロセッサは、時間データ値および位相データ値を含む前記第1の位置データを生成するように構成されており、
前記RFモデムは、同相データおよび直交位相(I/Q)データを含む前記第2の位置データを生成するように構成されている、
請求項10記載の通信デバイス。
【請求項15】
前記第1のプロセッサは、
第1のデータパスを介して前記第1の位置データを転送し、
第2のデータパスを介して前記第2の位置データを転送する、
ようにさらに構成されている、
請求項10記載の通信デバイス。
【請求項16】
前記第1のデータパスは、前記第2のデータパスよりも低い最大データ転送速度を有する、
請求項15記載の通信デバイス。
【請求項17】
前記第1のプロセッサは、前記第2のプロセッサと共有されているメモリ部分に前記第2の位置データを転送するようにさらに構成されている、
請求項15記載の通信デバイス。
【請求項18】
前記第1のプロセッサは、前記第2のプロセッサに前記メモリ部分から前記第2の位置データを取り出させるメッセージを前記第2のプロセッサへ送信するようにさらに構成されている、
請求項17記載の通信デバイス。
【請求項19】
前記通信デバイスは、前記第2のプロセッサをさらに含み、
前記第2のプロセッサは、位相ベース距離測定アルゴリズムおよび方向探索アルゴリズムのうちの少なくとも一方を実行して、前記第2の通信デバイスに関連付けられた1つまたは複数の位置測定値を生成するように構成されている、
請求項10記載の通信デバイス。
【請求項20】
システムであって、前記システムは、
第1のプロセッサおよび第2のプロセッサと、
それぞれ前記第1のプロセッサと前記第2のプロセッサとの間に接続されている第1のデータパスおよび第2のデータパスと、
前記第1のプロセッサに接続された無線周波数(RF)モデムと、
を備え、
前記RFモデムは、無線周波数信号を受信するように構成されており、
前記第1のプロセッサは、
前記第1のデータパスを介して前記無線周波数信号に基づく第1の位置データを前記第2のプロセッサへ転送する、第1のモードにおいて動作し、
1つまたは複数の条件を1つまたは複数の閾値と比較し、
前記比較に応答して、前記第1のモードでの動作から第2のモードでの動作へ移行し、
前記第2のモードでの動作中、
前記第1の位置データの転送よりも高いデータ転送速度で、前記第2のデータパスを介して前記無線周波数信号に基づく第2の位置データを前記第2のプロセッサへ転送する、
ように構成されている、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは無線通信分野に関し、より具体的には無線デバイスの位置測定の精度を向上させるための強化型のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
狭帯域無線、例えばBluetooth Low Energy(LE)またはIEEE802.15.4無線により、他の無線デバイスに対する無線デバイスの位置を決定することができる。無線デバイスの位置(例えば距離、角度)を決定するためのプロシージャは、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索(DF)プロシージャを含みうる。これらのプロシージャは、位相ベースアプローチまたは往復時間(RTT)アプローチを適用することができる。
【0003】
本開示は、添付の図面の各図において、限定ではなく例として図示されている。図中、同様の参照符号は同様の要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】いくつかの実施形態による、無線デバイスの位置測定の精度を向上させる例示的なBluetoothシステムを示すブロック図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、標準モードとエンハンストプロプライエタリモードとの間で選択を行う方法のフローチャートである。
【
図3】いくつかの実施形態による、標準モードとエンハンストプロプライエタリモードとの間で選択を行うための例示的なモードセレクタを示すブロック図である。
【
図4】種々の動作モードを使用して無線デバイスの位置を決定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の説明では、例えば無線デバイスの位置を決定するためのセキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索(DF)プロシージャを使用して、位置測定の精度を向上させるための本明細書に記載の技術の様々な実施形態を良好に理解してもらうために、多くの特定の詳細、例えば特定のシステム、コンポーネント、方法などの例を記載する。ただし、少なくともいくつかの実施形態がこれらの特定の詳細なしに実施可能であることは当業者には明らかであろう。他の事例においては、本明細書に記載の技術を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知のコンポーネント、要素、もしくは方法については詳細には説明せず、または単純なブロック図の形式で提示する。したがって、以下に記載する特定の詳細は単なる例示である。特定の実現形態は例示するこれらの詳細とは異なる場合もあるが、それでもなお本開示の範囲内にあると考えられる。
【0006】
Bluetooth(BT)などの無線技術は、無線デバイスの位置/場所を決定するために、セキュアな位相ベース距離測定および方向探索(DF)などの位置決定技術を使用している。セキュアな位相ベース距離測定では、距離測定アプリケーションが、位相ベースアプローチまたは往復時間(RTT)アプローチに基づいて2つの無線デバイス間の距離を決定することができる。位相ベースアプローチでは、2つの無線デバイスが一定トーン(CT)信号を交換し、一方のデバイスがCT信号に基づいて位相および/または周波数の測定を行う。RTTアプローチでは、2つの無線デバイスがRTTパケットおよびタイミングの報告/測定を交換する。
【0007】
方向探索は、到達角度(AoA)および出発角度(AoD)の概念に基づくものであってよい。方向探索は、無線周波数(RF)信号を受信する(AoA)または送信する(AoD)無線デバイスのアンテナ間で発生する角度位相シフトを利用することができる。通信リンクの両側でアンテナアレイを使用することによって位相シフトデータを決定することができ、この位相シフトデータから位置および方向角度を計算することができる。
【0008】
セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャの双方が、少なくとも部分的に、距離情報および角度情報が抽出される同相および直交位相(I/Q)フォーマットで表現されたデジタル化無線信号に依拠するものでありうる。実施形態では、BluetoothシステムのBluetooth無線装置(例えば、BT無線装置、BTプロセッサおよび/またはメモリなどを含む)が、高いサンプリングレート(例えば12MHz)を使用して自身のアンテナで受信する、到来する無線信号(無線周波数信号とも称する)をサンプリングすることによって、デジタル化無線信号を生成することができる。BTシステムは、セキュアな位相ベース距離測定および方向探索の結果を、Bluetoothホストコントロールインタフェース(HCI)、例えばユニバーサルアシンクロナスレシーバトランスミッタ(UART)を介して、ホスト上で実行されているアプリケーションに報告することができる。
【0009】
しかし、いくつかの原因により、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャから不正確な結果が生じる可能性がある。第一に、Bluetooth位置決定サービスは、低いサンプリングレートを使用して、到来する信号に対してセキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび/または方向探索プロシージャを実行し、低帯域幅結果(「低帯域幅データ」とも称する)を生成するよう、Bluetoothシステムに要求する。Bluetooth位置決定サービスの要件によれば、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャの低帯域幅結果は、ローI/QデータまたはローI/Qサンプルを含むのではなく、捕捉された無線信号から導出された様々な位相測定値および時間測定値を含む。方向探索プロシージャの低帯域幅結果は、Bluetoothシステムが高いサンプリングレート(例えば12MHz)でサンプリング可能であっても、低いサンプリングレート(例えば1MHz)を使用してローI/Qデータセットをサンプリングすることによって生成される。
【0010】
Bluetooth位置決定サービスでは、Bluetoothシステム外部の伝送要件を満たすために、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび/または方向探索プロシージャの低帯域幅の出力が好まれる。当該要件は、Bluetooth位置決定サービスでは、低帯域幅インタフェースであるBluetooth HCIと見なされる。Bluetoothシステムは、低帯域幅UARTを介して当該結果を低帯域幅結果として転送できるようにするために、セキュアな位相ベース距離測定および方向探索の結果の帯域幅を低減しなければならない。換言すれば、Bluetoothシステム外部で送達可能なデータ量は、BluetoothシステムのUARTインタフェースの最大速度(例えば3MHzまたは4MHz)によって制限されている。このため、Bluetoothシステムによって(例えばBTモデムによって)生成されたデータの一部しか、Bluetoothシステム外部にエクスポートする(例えば転送する)ことができない。
【0011】
第二に、Bluetoothシステムに組み込まれているプロセッサは、Bluetoothシステムに接続されたマイクロコントロールユニット(MCU)に組み込まれているプロセッサよりも低い処理能力を有している。このため、高いサンプリングレート(例えば12MHz)でサンプリングされるローI/Qデータセットを低帯域幅フォーマットへ変換するためにBluetoothシステムが実行することのできる計算量は制限されており、このことは、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャの最適でない性能(例えば低解像度、低精度の結果)をもたらす。
【0012】
第三に、ローI/Qデータセットを処理するアルゴリズムはBluetoothシステム内にあるため、このアルゴリズムは、Bluetoothシステムに接続されているカスタマホストデバイスにはアクセスできない。したがって、カスタマは、Bluetoothシステムのファームウェアにおいて提供されているものとは異なる好ましいアルゴリズムを有していても、ローI/Qデータセットへのアクセスを有さないため、当該アルゴリズムを実装することができない。従来のシステムは、Bluetooth位置決定サービスにおいて要求されているデータ出力フォーマット(例えば低帯域幅結果)を正確に実装しており、この場合、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャに対してローI/Qデータを利用することができず、方向探索プロシージャに対する低いサンプリングレート(例えば1MHz)しか存在しない。これにより、これらのプロシージャに対して使用されるアルゴリズムにおけるカスタマの選択が妨げられる。
【0013】
本開示の態様は、無線デバイスの位置/場所を正確に決定すべく、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャを実装するための強化型のシステムおよび方法を開示することにより、上述した欠陥およびその他の欠陥に対処する。以下の節に記載するように、BTシステムは2つのプロセッサを利用しており、それぞれ、自身のメモリ(例えばランダムアクセスメモリ(RAM))と、双方のプロセッサがアクセス可能な、より小さい付加的な共有メモリプールと、を備えている。第1のプロセッサは、BTシステムのBTサブシステム内に常駐している低性能プロセッサであり、BTサブシステムのコンポーネント(例えばBT無線装置など)を動作させるように構成されている。第2のプロセッサは、BTシステムのマイクロコントロールユニット(MCU)内に常駐している高性能プロセッサである。
【0014】
Bluetooth(BT)システムは2つのデータパスを介してMCUに接続されており、当該2つのデータパスによりBTサブシステムがセキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャからの(例えばイベントを含む)結果をMCUに報告することができる。BTサブシステムは、Bluetooth位置決定サービスによって要求されている通りに、第1のデータパスを使用して、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャの低帯域幅結果を報告する。BTサブシステムは、第2のデータパスを使用して、大きなローI/Qデータバッファを高性能プロセッサ(MCU)へ高速で転送する。MCUは、カスタマがMCUにおけるカスタム処理アルゴリズムの適用を希望する場合に完全なローI/Qデータセットに直接にアクセスする(例えば取り出す)ことができるよう、カスタマによってプログラミング可能である。
【0015】
より高いデータスループットは必然的により多くの電力を消費するため、BTシステムは、高い性能が必要ない場合には少ない電力しか消費しないよう、高帯域幅モードと低帯域幅モードとの間の自動切り替えを制御するモードセレクタを含む。カスタマは、所与の様々な条件および用途を考慮して、適切な動作方法を選択するための制御メカニズムを有する。よって、本明細書に記載の実施形態を使用して、従来のBT位置決定プロシージャよりも高精度の位置決定を行うことができる。
【0016】
図1は、無線デバイスの位置測定の精度を向上させる例示的なBluetoothシステムのブロック図を示している。BTシステム100(「通信デバイス」とも称する)は、Bluetooth(BT)サブシステム102およびマイクロコントロールユニット(MCU)サブシステム130を含む。いくつかの実施形態では、BTサブシステム102およびMCUサブシステム130は同じ半導体チップ上にある。いくつかの実施形態では、BTサブシステム102とMCUサブシステム130とは異なる半導体チップ上にあり、例えば、BTサブシステム102が第1の半導体チップ上にあり、MCUサブシステム130が第2の半導体チップ上にある。
【0017】
BTサブシステム102は、無線デバイス(例えば、別のBTシステム100、別のBTサブシステム102)から到来する1つまたは複数の信号を受信するように構成されたアンテナ103を含む。BTサブシステム102は、1つまたは複数の変調方式(例えば、周波数シフトキーイング(FSK)、位相シフトキーイング(PSK))を使用して信号を変調し、変調された信号を、アンテナ103を介して無線デバイス(例えば、別のBTシステム100、別のBTサブシステム102)へ送信するように構成されたBTモデム104を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、BTモデム104が、変調された信号を無線デバイスへ送信したことに応答して、無線デバイスから到来する1つまたは複数の信号を受信するように構成可能である。いくつかの実施形態では、BTモデム104は、到来する1つまたは複数の信号に基づき、サンプリングレート(例えば1MHz~12MHz)を使用して、I/Qデータ(「ローI/Qデータセット」とも称する)を生成するように構成可能である。例えば、BTモデム104は、1MHzのサンプリングレート(「低サンプリングレート」とも称する)を使用して第1のI/Qデータセットを生成し、12MHzのサンプリングレート(「高サンプリングレート」とも称する)を使用して第2のI/Qデータセットを生成するように構成されていてよい。この場合、第2のI/Qデータセットは、第1のI/Qデータセットよりも多くのサンプル(例えばデータポイント)を含む。
【0019】
BTシステム100は、BT処理デバイス108を備えている。BTシステム100は、BT処理デバイス108に接続されておりかつこのBT処理デバイス108によって実行される(暫定的なデータを含む)命令を記憶するように構成された、BTメモリ106を備えている。
【0020】
BTシステム100は、MCUサブシステム130と共有すべきデータ(例えば、測定値、I/Qデータ、ヘッダおよび制御データなど)を記憶するように構成された共有メモリ110を含む。いくつかの実施形態では、共有メモリ110は、アドレス空間112a,112bを含む。いくつかの実施形態では、アドレス空間(例えばメモリ位置の範囲)は、任意のサイズ、例えば4KBを有していてよい。
【0021】
BTサブシステム102は、低速インタフェース123、高速インタフェース125およびプロセッサ間通信(IPC)インタフェース121を含む。BTサブシステム102の1つまたは複数のブロックおよび/またはコンポーネントも、コンポーネント間でのデータおよび/またはメッセージの転送を容易にするために、BTサブシステム102の内部バス(
図1には図示せず)を介して共に接続可能である。
【0022】
MCUサブシステム130は、MCU処理デバイス138を含む。MCUサブシステム130は、MCU処理デバイス138によって実行される命令(暫定的なデータを含む)を記憶するためにこのMCU処理デバイス138に接続されたMCUメモリ(例えばRAM)136を含む。MCUサブシステム130は、低速インタフェース133、高速インタフェース135およびIPCインタフェース131を含む。MCUサブシステム130のブロックおよび/またはコンポーネントのうちの1つまたは複数も、コンポーネント間のデータおよび/またはメッセージの転送を容易にするために、MCUサブシステム130の内部バス(
図1には図示せず)を介して共に接続可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、MCUサブシステム130の低速インタフェース133は、低速パス124を介してBTサブシステム102の低速インタフェース123に接続されている。いくつかの実施形態では、MCUサブシステム130の高速インタフェース135は、高速パス126を介してBTサブシステム102の高速インタフェース125に接続されている。いくつかの実施形態では、MCUサブシステム130のIPCインタフェース131は、IPCパス122を介してBTサブシステム102のIPCインタフェース121に接続されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、BTサブシステム102の低速インタフェース123および高速インタフェース125を、低速通信および高速通信の双方をサポートする単一のインタフェースとすることができる。例えば、BTサブシステム102は、単一のインタフェース(例えば高速インタフェース125と組み合わされた低速インタフェース123)を使用して、第1のデータセットを、低速パス124を介してMCUサブシステム130へ送信し、第2のデータセットを、高速パス126を介してMCUサブシステム130へ送信する。
【0025】
いくつかの実施形態において、MCUサブシステム130の低速インタフェース133および高速インタフェース135を、低速通信および高速通信の双方をサポートする単一のインタフェースとすることができる。例えば、MCUサブシステム130は、単一のインタフェース(例えば高速インタフェース135と組み合わされた低速インタフェース133)を使用して、BTサブシステム102から低速パス124を介して第1のデータセットを受信し、BTサブシステム102から高速パス126を介して第2のデータセットを受信する。
【0026】
いくつかの実施形態では、MCUサブシステム130は、BTサブシステム102から、低速インタフェース133を使用して、第1のデータ転送速度(例えば最大ビットレート)で低速パス124を介して第1のデータセットを受信し(例えば転送し)、第1のデータ速度よりも高い第2のデータ転送速度で高速パス126を介して第2のデータセットを受信する。
【0027】
いくつかの実施形態では、BTモデム104が、到来する1つまたは複数の信号に基づき、サンプリングレート(例えば1MHz~12MHz)を使用して、I/Qデータセット(「ローI/Qデータセット」とも称する)を生成するように構成可能である。例えば、BTモデム104は、1MHzサンプリングレートを使用して第1のI/Qデータセットを生成し、12MHzサンプリングレートを使用して第2のI/Qデータセットを生成するように構成可能である。この場合、第2のI/Qデータセットは、第1のI/Qデータセットよりも多くのサンプル(例えばデータポイント)を含む。いくつかの実施形態では、I/Qデータセットは、同相および直交位相(I/Q)フォーマットのデータを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、BTサブシステム102が、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャ(「位置測定」とも称する)を実行して、セキュアな位相ベース距離測定結果(例えば、低速パス124を介してMCUサブシステム130と共有される位相測定および/またはタイミング報告/タイミング測定)を生成するように構成可能であり、ここで、セキュアな位相ベース距離測定結果は、他のデバイスの結果と組み合わされてBTシステム100と他の無線デバイスとの間の距離を決定する位相測定および/またはタイミング測定を示す。例えば、BTモデム104は、別の無線デバイスから到来する1つまたは複数の信号を、アンテナ103を介して受信するように構成可能である。BTモデム104は、高サンプリングレート(例えば12MHz)を使用して、到来する1つまたは複数の信号に基づき、I/Qデータ(「高サンプリングレート(SR)I/Qデータ」とも称する)を生成するように構成可能である。BTモデム104は、高SRI/Qデータ(および場合により他のデータ)と第1のセキュアな位相ベース距離測定アルゴリズムとを使用して、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャを実行し、Bluetooth規格に準拠したセキュアな位相ベース距離測定結果(「低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果」とも称される)を生成するように構成可能である。すなわち、BTモデム104は、第1のセキュアな位相ベース距離測定アルゴリズムを使用して、高SRI/Qデータを低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果へ変換(例えばフォーマット化)するように構成可能である。BTサブシステム102は、低速インタフェース123および低速パス124を介して、またはIPCインタフェース121およびIPCパス122を介して、低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果をMCUサブシステム130へ送信(例えば、転送、エクスポート)するように構成可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、BTサブシステム102は、方向探索(DF)プロシージャ(「位置測定」とも称する)を実行して、別の無線デバイスがBTシステム100に対して配置されている角度(例えば、度、ラジアン)を示すDF結果を生成するように構成可能であり、このDF結果が低速パス124を介してMCUサブシステム130と共有される。例えば、BTモデム104は、別の無線デバイスから到来する1つまたは複数の信号を、アンテナ103を介して受信するように構成可能である。BTモデム104は、低いサンプリングレート(例えば1MHz)を使用して、到来する1つまたは複数の信号に基づき、I/Qデータ(「低SRI/Qデータ」とも称する)を生成するように構成可能である。
【0030】
BTモデム104は、低SRI/QデータをBT処理デバイス108に送信するように、かつ/または低SRI/QデータをBTメモリ106に記憶するように構成可能である。低SRI/QデータがBTメモリ106に記憶されている場合、BT処理デバイス108は、低SRI/QデータをBTメモリ106からフェッチする(例えば取り出す)ことができる。BT処理デバイス108は、低速インタフェース123および低速パス124を介してまたはIPCインタフェース121およびIPCパス122を介して、低SRI/QデータをMCUサブシステム130へ送信するように構成可能である。
【0031】
MCU処理デバイス138は、低SRI/Qデータの受信に応答して、低SRI/Qデータおよび第1のDFアルゴリズム(「第1のカスタマ提供DFアルゴリズム」とも称される)を使用するDFプロシージャを実行し、DF結果(「低帯域幅DF結果」とも称される)を生成するように構成可能である。MCU処理デバイス138は、カスタマリプレーサブルロジック137から第1のDFアルゴリズムを取り出すように構成可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、BTサブシステム102が、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャを実行して、高速パス126を介してMCUサブシステム130と共有されるセキュアな位相ベース距離測定結果を生成するように構成可能であり、ここで、セキュアな位相ベース距離測定結果は、他のデバイスの結果と組み合わされる位相測定および/またはタイミング報告/タイミング測定によりBTシステム100と他の無線デバイスとの間の距離が決定されることを示す。例えば、BTモデム104は、別の無線デバイスから到来する1つまたは複数の信号を、アンテナ103を介して受信するように構成可能である。BTモデム104は、高サンプリングレート(例えば12MHz)を使用して、到来する1つまたは複数の信号に基づき、I/Qデータ(「高サンプリングレート(SR)I/Qデータ」とも称する)を生成するように構成可能である。BTモデム104は、高SRI/QデータをBT処理デバイス108に送信するように構成可能である。BT処理デバイス108は、当該高SRI/Qデータおよび(本明細書で論じているBT規格に準拠した)低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果を共有メモリ110のアドレス空間112aに記憶するように構成可能である。BT処理デバイス108は、BTメモリ106からヘッダおよび制御データを取り出し(例えば取得し、転送し、捕捉し)、共有メモリ110のアドレス空間112aにこのヘッダおよび制御データを記憶するように構成可能である。
【0033】
BT処理デバイス108は、データがアドレス空間112aから読み出されるべく利用可能となったことを示すIPCメッセージをIPCインタフェース121およびIPCパス122を介してMCUサブシステム130へ送信するように構成可能である。MCU処理デバイス138は、IPCメッセージの受信に応答して、高SRI/Qデータおよび低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果を、高速インタフェース135および高速パス126を介してアドレス空間112aからフェッチする(例えば、取得する、読み出す、捕捉する)ように構成可能である。MCU処理デバイス138は、高SRI/Qデータおよび第2のセキュアな位相ベース距離測定アルゴリズム(例えばカスタマ提供のセキュアな位相ベース距離測定アルゴリズム)を使用して、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャを実行し、セキュアな位相ベース距離測定結果(「高帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果」とも称する)を生成するように構成可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1のセキュアな位相ベース距離測定アルゴリズムと第2のセキュアな位相ベース距離測定アルゴリズムとは異なる。いくつかの実施形態では、高帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果は、Bluetooth規格に準拠していない。いくつかの実施形態では、高帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果は、低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果よりも高い精度を有する。例えば、低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果は、他のデバイスの結果と組み合わされた位相測定および/またはタイミング報告/タイミング測定により100~150ナノ秒の精度内でBTシステム100と他の無線デバイスとの間の距離が決定されることを示すものであってよく、高帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果は、位相測定および/またはタイミング報告/タイミング測定により15ナノ秒未満の精度でBTシステム100と他の無線デバイスとの間の距離が決定されることを示すものであってよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、BTサブシステム102は、方向探索(DF)プロシージャを実行して、別の無線デバイスがBTシステム100に対して配置されている角度(例えば度)を示すDF結果を生成するように構成可能であり、当該DF結果が高速パス126を介してMCUサブシステム130と共有される。例えば、BTモデム104は、別の無線デバイスから到来する1つまたは複数の信号を、アンテナ103を介して受信するように構成可能である。BTモデム104は、高サンプリングレート(例えば12MHz)を使用して、到来する1つまたは複数の信号に基づき、I/Qデータ(「高SRI/Qデータ」とも称する)を生成するように構成可能である。BTモデム104は、高SRI/QデータをBT処理デバイス108に送信するように構成可能である。BT処理デバイス108は、高SRI/Qデータを共有メモリ110のアドレス空間112aに記憶するように構成可能である。BT処理デバイス108は、BTメモリ106からヘッダおよび制御データを取り出し、共有メモリ110のアドレス空間112aに記憶するように構成可能である。
【0036】
BT処理デバイス108は、データがアドレス空間112aから読み出されるべく利用可能となったことを示すIPCメッセージをIPCインタフェース121およびIPCパス122を介してMCUサブシステム130へ送信するように構成可能である。MCU処理デバイス138は、IPCメッセージの受信に応答して、高速インタフェース135および高速パス126を介してアドレス空間112aから高SRI/Qデータをフェッチする(例えば、取得する、読み出す、捕捉する、取り出す)ように構成可能である。MCU処理デバイス138は、高SRI/Qデータおよび第2のDFアルゴリズム(例えばカスタマ提供DFアルゴリズム)を使用してDFプロシージャを実行し、DF結果(「高帯域幅DF結果」とも称される)を生成するように構成可能である。MCU処理デバイス138は、カスタマリプレーサブルロジック137から第2のDFアルゴリズムを取り出すように構成可能である。
【0037】
BT処理デバイス108は、高速パス126に関するセキュアな位相ベース距離測定プロシージャから捕捉されたデータ/結果(例えば高SRI/Qデータおよび低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果)を、ピンポン方式で共有メモリ110のアドレス空間112a,112bに記憶するように構成可能である。例えば、BT処理デバイス108は、到来する第1の信号セットを用いてセキュアな位相ベースの距離測定プロシージャを実行して、第1のデータ/結果セット(例えば高SRI/Qデータおよび低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果)を生成し、当該第1のデータ/結果セットを共有メモリ110のアドレス空間112aに記憶し、データがアドレス空間112aから読み出されるべく利用可能となったことを示すIPCメッセージを、IPCパス122を介してMCUサブシステム130へ送信するように構成可能である。MCUサブシステム130がアドレス空間112aから第1のデータ/結果セットを取り出そうとしたとき(または取り出している間)、BT処理デバイス108は、到来する第2の信号セットを使用してセキュアな位相ベース距離測定プロシージャを実行して、第2のデータ/結果セット(例えば高SRI/Qデータおよび低帯域幅のセキュアな位相ベース距離測定結果)を生成し、当該第2のデータ/結果セットを共有メモリ110のアドレス空間112aに記憶し、データがアドレス空間112bから読み出されるべく利用可能となったことを示すIPCメッセージを、IPCパス122を介してMCUサブシステム130へ送信するように構成可能である。BT処理デバイス108は、MCUサブシステム130がアドレス空間112aから第1のデータ/結果セットを取り出したことを判別することができ、到来する連続的な信号セットを使用してデータ/結果をアドレス空間112a,112bに記憶する、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャの反復へと進むことができる。同様に、BT処理デバイス108は、高速パス126に関するDFプロシージャから捕捉されたデータ/結果(例えば高SRI/Qデータ)を、ピンポン方式で共有メモリ110のアドレス空間112a,112bに記憶するように構成可能である。
【0038】
図2は、いくつかの実施形態による、標準モードとエンハンストプロプライエタリモードとの間で選択を行う方法のフローチャートである。各動作は、
図2では例示の目的で特定の順序での統合動作として示しているが、他の実現形態では、1つまたは複数の動作またはその一部が異なる順序で実行されるかまたは時間的に順次にもしくは並行して重なり合い、または省略され、または1つまたは複数の追加動作が追加され、または方法がいくつかの方式の組み合わせにおいて変更される。いくつかの実施形態では、方法200は、ハードウェア(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ファームウェア、またはこれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行可能である。いくつかの実施形態では、方法200のいくつかのまたはすべての動作は、図のBTシステム100の1つまたは複数のコンポーネントによって実行可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、標準モードは、低速パス124を介してMCUサブシステム130と共有されるセキュアな位相ベース距離測定結果を生成する、(本明細書で説明している)セキュアな位相ベース距離測定プロシージャに対応する。いくつかの実施形態では、標準モードは、低速パス124を介してMCUサブシステム130と共有されるDF結果を生成する(本明細書で説明している)DFプロシージャに対応する。
【0040】
いくつかの実施形態では、エンハンストプロプライエタリモードは、高速パス126を介してMCUサブシステム130と共有されるセキュアな位相ベース距離測定結果を生成する、(本明細書で説明している)セキュアな位相ベース距離測定プロシージャに対応する。いくつかの実施形態では、エンハンストプロプライエタリモードは、高速パス126を介してMCUサブシステム130と共有されるDF結果を生成する(本明細書で説明している)DFプロシージャに対応する。
【0041】
動作204において、いくつかの実施形態では、モードセレクタ202が、標準モードまたはエンハンストプロプライエタリモードのどちらを走らせるかを決定する。いくつかの実施形態では、インテリジェントモードセレクタが、無線周波数(RF)品質、ローカルToA-ToD品質、位相測定品質、ローカルアジャイルマルチパス検出または干渉検出、BTシステム100が別の無線デバイスに対して配置されている現在の角度、またはユーザによる「ロック」モード選択を可能にする(例えばオーバーライドされたインジケータおよび/または信号に基づいて判別される)オーバーライドモード、のうちの1つまたは複数に基づいて、この決定を行うこともできる。いくつかの実施形態では、インテリジェントモードセレクタは、BTサブシステム102またはMCUサブシステム130のコンポーネントであってよい。
【0042】
標準モードがイネーブルとなっている場合、BTシステム100は、動作206に進むことにより、標準モードに従って、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび/またはDFプロシージャを実行する。動作206において、BTシステム100は、自身のハードウェアを使用してデータを捕捉する。動作208において、BT処理デバイス108は、捕捉されたデータに対して最小処理を実行する。例えば、BT処理デバイス108は、BT処理デバイス108が可能とするサンプリングレート(例えば12MHz)よりも低いサンプリングレート(例えば1MHz)を使用してデータをサンプリング/捕捉する。動作210において、BT処理デバイス108は、BT規格に準拠したデータ/結果を生成し、この場合、データ/結果は、BTシステム100のハードウェア(例えば
図1のBTモデム104)によって可能となる精度よりも低い精度を有する。
【0043】
エンハンストプロプライエタリモードがイネーブルとなっている場合、BTサブシステム102は、動作212に進むことにより、エンハンストプロプライエタリモードに従って、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび/またはDFプロシージャを実行する。動作212において、BTサブシステム102は、そのハードウェアを使用して完全なデータを捕捉する。例えば、BT処理デバイス108は、BT規格によって要求されているサンプリングレート(例えば1MHz)よりも高いサンプリングレート(例えば12MHz)を使用して、完全なデータをサンプリング/捕捉する。動作214において、BT処理デバイス108は、IPCパス122を介して完全なデータをMCUサブシステム130に渡す。動作216において、MCU処理デバイス138は、捕捉されたデータに対して高性能処理を実行する。動作218において、MCU処理デバイス138は、BT規格に準拠した第1のデータ/結果セットと、BT規格には準拠していないが第1のデータ/結果セットよりも高い精度を有する第2のデータ/結果セットと、を生成する。動作220において、MCU処理デバイス138は、第1のデータ/結果セットおよび第2のデータ/結果セットをMCU処理デバイス138または別個のデバイス(例えばホストデバイス)において実行するカスタマアプリケーション/ユーザインタフェース(UI)へ送信する。
【0044】
図3には、いくつかの実施形態による、標準モードと拡張プロプライエタリモードとの間で選択を行うための例示的なインテリジェントモードセレクタのブロック図が示されている。インテリジェントモードセレクタ300は、標準モードまたはエンハンストプロプライエタリモードのどちらを走らせる(例えば実行する、実施する)かを決定するように構成されている。いくつかの実施形態では、インテリジェントモードセレクタは、無線周波数(RF)品質(例えば、アクセスアドレス品質、RSSI、計算品質)、BTシステム100から別の無線デバイスまでの現在の距離、BTシステム100が別の無線デバイスに対して配置されている現在の角度、パワーバジェット(例えばバッテリ状態またはバッテリ電力レベル)、またはユーザによる「ロック」モード選択を可能にするオーバーライドモード、のうちの1つまたは複数を示す値および/または閾値に基づいて、当該決定を行うことができる。いくつかの実施形態では、インテリジェントモードセレクタは、BTサブシステム102またはMCUサブシステム130のコンポーネントであってよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、インテリジェントモードセレクタ300は、長い距離であれば高い精度が必要ないことを判別し、したがって標準モード(例えばBT HCI標準モード、粗モード)を選択し、距離が十分に小さい場合にエンハンストプロプライエタリモードを走らせることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、RSSIのレベルが閾値未満であることをインテリジェントモードセレクタが検出すると、このインテリジェントモードセレクタが標準モードからエンハンストプロプライエタリモードへのアジャイルな切り替えのためにローカルで選択を行う。いくつかの実施形態では、セキュアな位相ベース距離測定および到達時間(ToA)推定の場合、インテリジェントモードセレクタ内のアルゴリズムがローIQサンプルを後処理してパケットのToAをより良好に推定するために、エンハンストプロプライエタリモードへの切り替えを決定することができる。いくつかの実施形態では、インテリジェントモードセレクタの決定は、1つの特定のチャネル上での干渉(またはマルチパスフェージング)のローカルでのアジャイルな検出に基づいて選択されうる。
【0047】
図4は、いくつかの実施形態による、セキュアな位相ベース距離測定プロシージャおよび方向探索プロシージャを含む、無線デバイスの位置を決定する方法のフローチャートである。各動作は、
図4では例示の目的で特定の順序での統合動作として示しているが、他の実現形態では、1つまたは複数の動作またはその一部が異なる順序で実行されるか、または時間的に順次にもしくは並行して重なり合い、または省略され、または1つまたは複数の追加動作が追加され、または方法がいくつかの方式の組み合わせにおいて変更される。いくつかの実施形態では、方法400は、ハードウェア(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ファームウェア、またはこれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行可能である。いくつかの実施形態では、方法400のいくつかのまたはすべての動作は、
図1のBTシステム100の1つまたは複数のコンポーネントによって実行可能である。
【0048】
方法400は、いくつかの実施形態では、第2の通信デバイスから無線周波数信号を受信する動作402を含む。
【0049】
方法400は、いくつかの実施形態では、無線周波数信号に基づいて第1の位置データを生成すること、および、第1のプロセッサを使用して第1の位置データをBluetoothホストコントロールインタフェースに準拠した第2のプロセッサへ転送することを含む、第1のモードで動作する動作404を含む。
【0050】
方法400は、いくつかの実施形態では、第1のプロセッサを使用して、1つまたは複数の条件を1つまたは複数の閾値と比較し、当該比較に応答して第1のモードでの動作から第2のモードでの動作へ移行する動作406を含む。
【0051】
方法400は、いくつかの実施形態では、第2のモードでの動作中、無線周波数信号に基づいて第2の位置データを生成し、第1のプロセッサを使用して、第2のプロセッサへの第1の位置データの転送よりも高いデータ転送速度で第2の位置データを第2のプロセッサへ転送する動作408を含む。
【0052】
上記の説明では、詳細な説明のいくつかの部分は、非一時的な記憶媒体内のアナログ信号および/またはデジタル信号またはデータビットについての演算のアルゴリズムおよびシンボル表現に関して提示されている。これらのアルゴリズムの記述および表現は、データ処理分野の当業者が自身の作業の実体を他の当業者に最も効果的に伝達するために使用されている手段である。アルゴリズムとは、本明細書においておよび一般に、所望の結果をもたらすセルフコンシステントなステップのシーケンスであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的な操作を要求するステップである。必ずしもそうとは限らないが、通常、当該物理量は、記憶、転送、接続、比較、およびその他の操作が可能な電気的もしくは磁気的な信号の形態をとる。主として一般的な使用上の理由から、これらの信号をビット、値、要素、シンボル、文字、用語、数などとして言及すると簡便であることが判明している。
【0053】
この説明における「実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」および「様々な実施形態」なる参照は、各実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、ステップ、動作、または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。なお、この説明の種々の場所における「実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」および「様々な実施形態」なる文言の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0054】
この説明は、詳細な説明の一部を成す添付図面への参照を含む。図面は、例示的な実施形態による例示を示す。本明細書において「実施例」とも称されることのあるこれらの実施形態は、本明細書に記載する特許請求される主題の各実施形態を当業者が実施できるように十分に詳細に記載されている。これらの実施形態は組み合わせることができ、また他の実施形態を利用することもでき、または特許請求される主題の範囲および趣旨から逸脱することなく構造的変更、論理的変更および電気的変更を行うことができる。本明細書に記載する実施形態は、主題の範囲を限定することを意図したものではなく、むしろ、当業者がこの主題を実施でき、作製できかつ/または使用できるようにすることを意図したものであることを理解されたい。
【0055】
しかし、これらの用語および同様の用語のすべては適切な物理量に関連付けられるべきであり、これらの量に適用される単なる簡便性のためのラベルにすぎないことに留意されたい。上記の論から明らかなものとして別に規定されていない限り、この説明を通して、「受信する」、「生成する」、「実行する」、「送信する」、「決定する」などの用語を使用した論述は、コントローラのレジスタ内およびメモリ内の物理量(例えば電子的量)として表現されるデータを、コントローラメモリ内もしくはレジスタ内もしくは他の非一時的な情報記憶媒体内の物理量として同様に表現される他のデータへと操作および変換する、集積回路(IC)コントローラもしくは類似の電子デバイスのアクションおよびプロセスを指すことを理解されたい。
【0056】
「例」または「例示的」なる用語は、本明細書では、例、事例、または例示として機能することを意味するものとして使用される。「例」または「例示的」として本明細書に記載するあらゆる態様または設計は、必ずしも他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解されるべきものではない。むしろ、「例」または「例示的」なる用語の使用は、概念を具体的に提示することを意図している。本願において使用しているように、「または」なる用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することが意図されている。すなわち、別の規定がない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」とは、自然な包含的順列のすべてを意味することが意図されている。つまり、XがAを含む;XがBを含む;またはXがAおよびBの双方を含む、という場合、「XはAまたはBを含む」はこれらの事例のいずれのもとでも満たされる。さらに、本願および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞“a”および“an”は、別の規定がない限り、または文脈から単数形を意図していることが明らかでない限り、全体的に「1つ以上」を意味すると解されたい。さらに、全体を通して「実施形態」または「一実施形態」なる用語の使用は、同じであると記載されていない限り、同じ1つまたは複数の実施形態を意味することを意図していない。
【0057】
本明細書に記載する実施形態は、本明細書の動作を実行する装置(例えばAC-DCコンバータおよび/またはESD保護システム/ESD保護回路)にも関しうる。これらの装置は、要求される目的のために特別に構築することができ、またはこれらの装置が選択的に作動させるもしくはリコンフィギュレーションするファームウェアもしくはハードウェアロジックを備えることができる。こうしたファームウェアは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、以下に限定されるものではないが、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または電子命令の記憶に適した任意のタイプの媒体に記憶することができる。用語「コンピュータ可読記憶媒体」とは、1つまたは複数の命令セットを記憶した単一の媒体または複数の媒体を含むものと解されたい。また、用語「コンピュータ可読媒体」とは、機械による実行のための命令セットを記憶し、符号化し、または搬送することができ、かつ本実施形態の方法論のうちのいずれか1つまたは複数を機械に実行させるための任意の媒体を含むものと解されたい。したがって、用語「コンピュータ可読記憶媒体」とは、以下に限定されるものではないが、ソリッドステートメモリ、光学媒体、磁気媒体、機械による実行のための命令セットを記憶することができかつ本実施形態の方法論のうちのいずれか1つまたは複数を機械に実行させるための任意の媒体を含むものと解されたい。
【0058】
上記の説明は、本開示の複数の実施形態の良好な理解を提供するために、多数の特定の詳細、例えば特定のシステム、コンポーネント、方法などの例を示している。上記の説明は例示的であり限定でないことが意図されていることを理解されたい。上記の説明を読み理解した当業者であれば、他の多くの実施形態が明らかとなるであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、前記特許請求の範囲によって権利付与される等価物の全範囲に沿って決定されるべきである。