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特許7443470工具支持装置、及び該工具支持装置を備えた工作機械
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】工具支持装置、及び該工具支持装置を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/22 20060101AFI20240227BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20240227BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B23F5/22
B23Q3/155 K
B23C9/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022183241
(22)【出願日】2022-11-16
【審査請求日】2023-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】西木 孝浩
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-017085(JP,A)
【文献】特開2019-042847(JP,A)
【文献】特開2013-202746(JP,A)
【文献】特開2005-254365(JP,A)
【文献】特開2002-018643(JP,A)
【文献】特開2001-079718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0250701(US,A1)
【文献】米国特許第04657447(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107405707(CN,A)
【文献】特開2015-054364(JP,A)
【文献】特開2016-047558(JP,A)
【文献】特開2014-104578(JP,A)
【文献】特開昭57-089541(JP,A)
【文献】米国特許第04590661(US,A)
【文献】中国実用新案第213672266(CN,U)
【文献】中国実用新案第202461703(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
B23Q 3/155
B23C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホブ工具を保持する工具主軸と、
前記工具主軸を回転可能に保持する工具主軸台と、
前記ホブ工具を前記工具主軸に保持させる保持機構と、
前記工具主軸を回転させる工具主軸駆動部と、
ワークを保持するワーク主軸と、
前記ワーク主軸を回転可能に保持するワーク主軸台と、
前記ワーク主軸を回転させるワーク主軸駆動部と、
前記工具主軸台とワーク主軸台とを相対的に移動させる送り駆動部と、
前記工具主軸駆動部、ワーク主軸駆動部及び送り駆動部を制御する制御装置とを備えた工作機械であって、
前記工具主軸台に対して着脱可能に設けられ、前記保持機構により前記工具主軸に保持された前記ホブ工具の非保持側の端部を、前記工具主軸台に装着された状態で回転可能に支持する支持フレームと、
前記工具主軸台に装着された前記支フレームを、前記ホブ工具を介さないで前記工具主軸台に固定する固定機構とを有し、
前記固定機構は、前記支フレームを前記工具主軸台対して取外し不可に固た固定状態と該固定解除た固定解除状態とに切替え可能に構成され、
前記制御装置は、前記保持機構を駆動して前記ホブ工具を前記工具主軸に保持させた後、前記ホブ工具の非保持側の端部を支持し、且つ前記工具主軸台に装着された状態の前記支持フレームを、前記固定機構を駆動して前記工具主軸台に固定し、この後、前記工具主軸駆動部、ワーク主軸駆動部及び送り駆動部を制御して、前記ワーク主軸に保持されたワークを加工するように構成された工作機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記固定機構前記固定解除状態にした状態で、前記工具主軸台を所定方向に移動させることにより、その移動に伴う動作力を利用して、前記支持フレームを前記工具主軸台に対して着脱させるように構成され請求項1記載の工作機械
【請求項3】
記支持フレームは、
前記工具主軸台に装着された状態で、前記工具主軸台に形成された被係合部に係合し、且つ前記工具主軸に保持された前記ホブ工具の周囲を囲環状をした環状部と、
軸受を有し、前記工具主軸に保持された前記ホブ工具の非保持側の端部を前記軸受によって回転可能に支持する支持部と、
記支持部と前記環状部とを連結する連結部と、から構成されている請求項1又は2記載の工作機械
【請求項4】
前記工具主軸台に設けられる前記被係合部は、前記工具主軸の軸線と同芯状に形成された環状テーパ面を有し
記支フレームの前記環状部は、前記軸受の軸線と同芯状に形成された環状テーパ面を有し、
前記被係合部の環状テーパ面に、前記環状部の環状テーパ面が嵌合するように構成された請求項3記載の工作機械
【請求項5】
前記固定機構は、前記支持フレームが前記工具主軸台に装着された状態において、前記工具主軸台の内部に形成された流体通路を介して供給される流体圧の作用により、前記固定状態と前記固定解除状態と切替え可能に構成されている請求項1又は2記載の工作機械
【請求項6】
前記工具主軸台は、外面形成された被装着部を備え該被装着部は、前記工具主軸の軸線方向から見て、該工具主軸から半径方向にオフセットした位置に取付座面を有するとともに、該取付座面に設けられた被係合部を有し、
記支持フレームは、
工具主軸台の被装着部に装着された状態で、前記被装着部の取付座面に形成された被係合部に係合するとともに、記取付座面に当接する座面当接部と、
軸受を有し、前記工具主軸に保持された前記ホブ工具の非保持側の端部を前記軸受によて回転可能に支持する支持部と
前記支持部と前記座面当接部とを連結する連結部と、から構成されている請求項1又は2記載の工作機械
【請求項7】
工具主軸に装着可能な前記ホブ工具を含む複数の工具を収容する工具マガジン、及び工具交換アームを有し、前記工具マガジンに保持された工具と前記工具主軸に保持された工具とを前記工具交換アームにより交換する工具交換装置と、
記支フレームを収容する収容部と、を更に備え、
前記送り駆動部は、前記工具主軸台を、前記工具交換装置との間で工具交換が可能な工具交換位置と、前記収容部との間で前記支フレームの着脱を行うことが可能な着脱位置とに移動させるように構成され
記制御装置は、前記工具マガジンに収容された前記ホブ工具を前記工具主軸に装着する際には、前記送り駆動部により前記工具主軸台を工具交換位置に移動させた後、前記工具交換装置によって、前記工具マガジンに収容された前記ホブ工具を前記工具主軸に装着させ、装後、前記送り駆動部により前記工具主軸台を前記工具交換位置から前記着脱位置まで移動させ、その移動に伴う動作力を利用して、前記工具主軸台に前記固定機構が固定解除状態にある前記支持フレームを装着させ、装後、前記固定機構を固定状態に切替えるように構成されている請求項1記載の工作機械。
【請求項8】
前記制御装置は、前記ホブ工具によるワークの加工完了後、前記工具主軸台に固定された前記支フレーム取り外すに、先ず、前記送り駆動部によ、前記工具主軸台を前記着脱位置に移動させて、記支フレームを前記収容部に収容した後、前記固定機構による記支フレームの固定を解除この後、前記送り駆動部により前記工具主軸台を前記着脱位置から離反するように移動させることで、前記支フレームを前記工具主軸台から取り外すように構成されている請求項7記載の工作機械。
【請求項9】
記収容部に収容された前記支フレームを移動不能に係止する係止状態と、係止が解除された係止解除状態とに切替え可能な係止装置をに備えている請求項8記載の工作機械。
【請求項10】
記収容部は、前記工具マガジンに対して前記工具主軸台を挟んで反対側に配置されている請求項7から9のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記工具主軸が位置する空間である加工エリアと、前記工具マガジンが収容されるマガジン収容空間とを区画する区画壁を有し、前記収容部は、前記マガジン収容空間内に設けられている請求項7から9のいずれか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具支持装置、及び該工具支持装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工具主軸に保持されたホブ工具と、ワーク主軸に保持されたワークとを同期回転させることでワークの周面に歯形を創生加工する工作機械が知られている。このホブ工具は、工具主軸と共に工具主軸台に片持ち支持されている。
【0003】
この種の工作機械においては、工具主軸に保持された工具の自動交換を可能にするべく工具交換装置を備える場合がある(例えば、特許文献1参照)。工具交換装置は、工具マガジンと工具主軸との間で工具交換動作を実行する。工具マガジンには、ホブ工具の他に、エンドミルやフライス工具等の様々な工具がストックされている。工具交換装置は、制御部からの指令を受けて、工具マガジンにストックされた複数の工具の中から次工程工具を選択し、選択した次工程工具と、工具主軸に保持されている加工完了工具との交換動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-017085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す工作機械では、ホブ工具が工具主軸(第1支持部)と共に工具主軸台(第1支持部)に片持ち支持されているため、ホブ工具の剛性が不足して歯形の加工精度が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、ホブ工具を高剛性の支持フレームに両持ち支持させた工具アッセンブリを用意し、この工具アッセンブリごと工具回転部材に保持させることが考えられる。
【0007】
しかしこの場合、工具交換を行う際に、工具交換装置によって工具アッセンブリごと交換する必要があるので、工具交換装置が大型化する。すなわち、工具アッセンブリは工具単体に比べて重たいので、例えば、回転式の工具交換アームを用いて工具交換を行う場合には、工具交換アームを回転させるためのモータを大型化せざるを得ない。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、ホブ工具を両持ち支持可能な工具支持装置及び該工具支持装置を備えた工作機械を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の一局面は、
ホブ工具を回転可能に支持する第1支持部と、
前記ホブ工具における前記第1支持部に支持される側とは反対側を回転可能に支持する第2支持部とを備え、
前記第2支持部は、
前記第1支持部に前記ホブ工具が支持された状態で、該第1支持部に着脱可能に装着される回転支持ユニットと、
前記第1支持部に装着された前記回転支持ユニットを当該第1支持部に固定するための固定機構部とを有し、
前記固定機構部は、前記回転支持ユニットを前記第1支持部に固定された固定状態と該固定が解除された固定解除状態とに切替え可能に構成され、
前記回転支持ユニットは、
前記第1支持部に装着された装着状態において当該第1支持部に設けられた被係合部に係合する第1支持係合部と、
前記ホブ工具の先端部にその回転を許容する状態で係合するホブ先端係合部と、
を有している工具支持装置に係る。
【0010】
この工具支持装置によれば、第1支持部に回転支持ユニットを装着することで、回転支持ユニットに設けられた第1支持係合部が第1支持部に設けられた被係合部に係合し、ホブ先端係合部がホブ工具の先端部にその回転を許容する状態で係合する。この結果、第1支持部と回転支持ユニットとによってホブ工具が両持ち状態で支持される。すなわち、ホブ工具の基端部は第1支持部によって支持され、ホブ工具の先端部は回転支持ユニットのホブ先端係合部によって支持される。第1支持部に回転支持ユニットを装着した後は、固定機構部により回転支持ユニットを第1支持部に固定してホブ加工を開始すればよい。このホブ加工は、上述したようにホブ工具が第1支持部と回転支持ユニットとによって両持ち支持された状態で行われる。したがって、ホブ工具を第1支持部のみで片持ち支持する場合に比べて、ホブ工具の剛性を高めて歯形の加工精度を向上させることができる。
【0011】
また、前記工具支持装置よれば、回転支持ユニットはホブ工具から分離可能な別ユニットで構成されている。したがって、交換用のホブ工具が複数存在する場合であっても、これら複数のホブ工具に対して共通の1つの回転支持ユニットを用意すればよい。よって、回転支持ユニットをホブ工具の数だけ用意する必要がないので、部品点数を抑制して、安価な構成によりホブ工具の両端支持化を実現することができる。
【0012】
前記第1支持部は、所定方向に移動可能に構成され、前記回転支持ユニットは、前記固定機構部が前記固定解除状態にある状態で前記第1支持部が行う予め定めた移動動作の動作力を利用して前記第1支持部に着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1支持部に対する回転支持ユニットの着脱動作を、第1支持部が行う予め定めた移動動作を利用して自動的に行うことができる。したがって、作業者が第1支持部に回転支持ユニットを手作業で装着する必要がなく、このため、作業者の肉体的負担を低減することができるとともに、ホブ工具への切替えを迅速に行うことができる。
【0014】
前記回転支持ユニットは、前記第1支持部に装着された装着状態において前記ホブ工具の長さ方向に沿って延設される支持フレームと、前記支持フレームに軸受を介して支持された前記ホブ先端係合部としての自由回転部材とを有し、前記支持フレームは、その延設方向の一端部を構成し、前記第1支持係合部を有するとともに、前記回転支持ユニットの装着状態において前記ホブ工具の周囲を環状に囲む環状部と、前記延設方向の他端部を構成し、前記軸受を保持する軸受保持部と、前記軸受保持部と前記環状部とを連結する連結部と、を有していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、回転支持ユニットを第1支持部に装着する際には、支持フレームの一端部を構成する環状部の内側にホブ工具が貫通するように、第1支持部又は回転支持ユニットを移動させればよい。そして、支持フレームの環状部に設けられた第1支持係合部を、第1支持部に設けられた被係合部に係合させるとともに、支持フレームに支持されたホブ先端係合部としての自由回転部材とを、ホブ工具の先端部に係合させることで、第1支持部への回転支持ユニット(支持フレーム)の装着が完了する。したがって、第1支持部に対する回転支持ユニットの装着を簡単な直線移動により実現することができる。また、回転支持ユニットが、ホブ工具に対して径方向外側にオフセットすることもないので周辺のスペース効率を向上させることができる。
【0016】
前記第1支持部に設けられる前記被係合部は、前記第1支持部の軸線と同芯状に形成された環状テーパ面からなり、前記回転支持ユニットに設けられる前記第1支持係合部は、前記自由回転部材との軸線と同芯状に形成された環状テーパ面からなることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、回転支持ユニットを第1支持部に装着した際に、回転支持ユニットに設けられた第1支持係合部としての環状テーパ面と、第1支持部に設けられた被係合部としての環状テーパ面とが係合する。この結果、第1支持部の支持軸線と、回転支持ユニットに設けられた自由回転部材との軸線とが同軸に位置決めされる。これにより、ホブ工具の回転軸線が傾くのを防止し、延いては、ホブ工具による歯形の加工精度を向上させることができる。
【0018】
前記固定機構部は、前記回転支持ユニットに設けられていて、前記回転支持ユニットが前記第1支持部に装着された状態において、前記第1支持部の内部に形成された流体通路を介して供給される流体圧を基に、前記固定状態と前記固定解除状態とを切替え可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
これによれば、固定機構部を回転支持ユニットに設けるようにしたことで、既存の第1支持部の構造を大幅に変更することなく、回転支持ユニットを第1支持部に固定することができる。したがって、ホブ工具の両持ち支持を実現するための第1支持部の改造工数を最小限に止めてコストを低減することができる。
【0020】
前記回転支持ユニットは、第1支持部に取付けた外付け部材に装着するようにしてもよい。すなわち、前記工具支持装置において、前記第1支持部は、刃物台と、該刃物台に回転自在に支持される工具回転部材と、該刃物台の外側面に取付固定される外付け部材を含み、前記外付け部材は、前記工具回転部材の軸線方向から見て、該工具回転部材の側方にオフセットした位置にユニット取付座面を有し、前記回転支持ユニットは、前記第1支持部に装着された装着状態において前記ホブ工具の長さ方向に沿って延設される支持フレームと、前記支持フレームに軸受を介して支持された前記ホブ先端係合部としての自由回転部材とを有し、前記支持フレームは、その延設方向の一端部を構成し、前記第1支持係合部を有するとともに、前記回転支持ユニットの装着状態において前記外付け部材の前記ユニット取付座面に当接する座面当接部と、前記延設方向の他端部を構成し、前記軸受を保持する軸受保持部と、前記軸受保持部と前記座面当接部とを連結する連結部と、を有している態様を採用することができる。
【0021】
これによれば、第1支持部に設けられた外付け部材によって、工具回転部材からオフセットした位置にユニット取付座面を確保することができる。したがって、第1支持部のうち、構造が複雑になりがちな工具回転部材の周辺部分にユニット取付座面を確保する必要がない。よって、第1支持部の構成を簡素化してコストを低減することができる。
【0022】
本発明の他の局面は、
前記工具支持装置を備えた前記工作機械であって、
前記第1支持部に装着可能な複数の工具をストックする工具マガジン、及び、工具交換アームを有していて、前記工具マガジンに保持された工具と前記第1支持部に保持された工具とを前記工具交換アームにより交換する工具交換装置と、
前記回転支持ユニットを収容するユニット収容部と、
前記第1支持部を、前記工具交換装置との間で工具交換が可能な工具交換位置と、前記ユニット収容部との間で前記回転支持ユニットの着脱を行うことが可能なユニット着脱位置とに移動可能な第1支持駆動部と、
前記第1支持駆動部、前記工具交換装置、及び前記固定機構部の作動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記工具交換装置によって前記ホブ工具への工具交換を行う際には、前記第1支持駆動部により前記第1支持部を前記工具交換位置に位置させた後、該工具交換装置によって、前記第1支持部に支持された前記第1支持部に前記ホブ工具を装着させ、該装着後に、前記固定機構部を前記固定解除状態にした状態で、前記第1支持駆動部により前記第1支持部を前記工具交換位置から前記ユニット着脱位置まで移動させることで、該移動動作時の移動動作力を利用して、当該第1支持部に前記回転支持ユニットを装着させ、該装着後は、前記固定機構部を前記固定状態に切替えるように構成されている工作機械に係る。
【0023】
この工作機械によれば、ホブ工具を使用する際には、制御部による制御の下、工具交換装置により第1支持部にホブ工具が装着され、その後、第1支持駆動部により第1支持部がユニット着脱位置に移動される。これにより、第1支持部に回転支持ユニットが装着され、ホブ工具が、該第1支持部と回転支持ユニットとによって両持ち支持される。第1支持部への回転支持ユニットの装着が完了した後は、固定機構部が固定解除状態から固定状態に切替ることで第1支持部に回転支持ユニットが固定される。前記第1支持部への回転支持ユニットの装着には、第1支持部のユニット着脱位置への移動動作力が利用される。したがって、第1支持部に回転支持ユニットを装着するための専用装置(例えばロボット等)を別途設けることなく、既存設備(第1支持駆動部)を利用して第1支持部に回転支持ユニットを装着することができる。
【0024】
前記制御部は、前記ホブ工具によるワークの加工完了後に、前記第1支持部に固定された前記回転支持ユニットを脱着する際には、先ず、前記第1支持駆動部によって、前記第1支持部を前記ユニット着脱位置に移動させることで前記回転支持ユニットを前記ユニット収容部に収容し、次いで、前記固定機構部により前記回転支持ユニットの固定を解除するとともに、前記第1支持駆動部により前記第1支持部を所定方向に沿って前記ユニット着脱位置から離間移動させることで、該離間移動時の移動動作力を利用して前記回転支持ユニットを前記第1支持部から脱着させるように構成されていることが好ましい。
【0025】
これによれば、ホブ工具によるワークの加工完了後は、制御部による制御の下、第1支持駆動部により第1支持部がユニット着脱位置に移動される。これにより、第1支持部に装着されている回転支持ユニットがユニット収容部に収容される。ユニット収容部に回転支持ユニットが収容された後は、固定機構部が固定解除状態に切替って第1支持部に対する回転支持ユニットの固定が解除され、該固定解除後に、第1支持駆動部により第1支持部がユニット着脱位置から所定方向に離間移動される。これにより、第1支持部から回転支持ユニットが脱着される。この回転支持ユニットの脱着には、第1支持部の離間移動時の移動動作力が利用される。したがって、第1支持部から回転支持ユニットを脱着するための専用装置(例えばロボット等)を別途設けることなく、既存設備(第1支持駆動部)を利用して第1支持部から回転支持ユニットを脱着することができる。
【0026】
前記工作機械は、前記ユニット収容部に収容された前記回転支持ユニットを移動不能に係止する係止状態と該係止が解除された係止解除状態とに切替え可能な係止装置をさらに備えていることが好ましい。
【0027】
これによれば、例えば、第1支持駆動部により第1支持部をユニット着脱位置まで移動させる際、及び、ユニット着脱位置から離間移動させる際に、係止装置によって回転支持ユニットをユニット収容部に移動不能に係止しておくことで、第1支持部に対する回転支持ユニットの装着及び脱着を円滑に且つ確実に行うことができる。
【0028】
前記ユニット収容部は、前記工具マガジンに対して前記第1支持部を挟んで反対側に配置されていることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、工具マガジンに対して第1支持部を挟んで反対側に位置するデッドスペースを利用してユニット収容部を配置することができる。
【0030】
前記工作機械は、前記第1支持部が収容される加工エリアと、前記工具マガジンが収容されるマガジン収容空間とを区画する区画壁を有しており、前記ユニット収容部は、前記マガジン収容空間内に設けられていてもよい。
【0031】
これによれば、ユニット収容部をマガジン収容空間内に設けることで、工具交換時の第1支持部の移動先である工具交換位置と、第1支持部に回転支持ユニットを着脱する際の第1支持部の移動先であるユニット着脱位置とを極力近づけることができる。よって、第1支持部にホブ工具を装着してから、第1支持部をユニット着脱位置に移動するまでの時間を短縮することができる。延いては、サイクルタイムを短縮して生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、第1支持部にホブ工具が保持された状態で、該第1支持部に着脱可能に装着される回転支持ユニットと、回転支持ユニットを第1支持部に固定された固定状態と該固定が解除された固定解除状態とに切替える固定機構部とを備えるとともに、回転支持ユニットには、第1支持部に形成された被係合部に係合する第1支持係合部と、ホブ工具の先端部にその回転を許容する状態で係合するホブ先端係合部とを設けるようにしたことで、ホブ工具を両持ち可能な工具支持装置及び該工具支持装置を備えた工作機械が安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態1における工具支持装置が適用される工作機械を示す全体斜視図である。
図2図2は、工具主軸台を示す正面図である。
図3図3は、工具支持装置を示す右側から見た側面図である。
図4図4は、回転支持ユニットを示す斜視図である。
図5図5は、図4におけるV-V線断面図である。
図6図6は、ユニット収容部の構成を示す概略図である。
図7図7は、工作機械の制御系の構成を示すブロック図である。
図8A図8Aは、工具交換制御の内容を説明するための説明図である。
図8B図8Bは、工具交換制御の内容を説明するための説明図である。
図8C図8Cは、工具交換制御の内容を説明するための説明図である。
図8D図8Dは、ユニット装着制御の内容を説明するための説明図である。
図8E図8Eは、ユニット装着制御の内容を説明するための説明図である。
図8F図8Fは、ユニット装着制御の内容を説明するための説明図である。
図8G図8Gは、ユニット装着制御の内容を説明するための説明図である。
図8H図8Hは、ユニット装着制御の内容を説明するための説明図である。
図8I図8Iは、ユニット装着制御の内容を説明するための説明図である。
図9図9は、実施形態2における工具支持装置を示す斜視図である。
図10図10は、図9において回転支持ユニットを取外した状態を示す斜視図である。
図11図11は、工具主軸台の外付け部材に設けられたユニット取付座面を示す平面図である。
図12図12は、実施形態2において、ホブ工具の先端がユニット収容部側を向くように工具主軸台を旋回させた状態を示す斜視図である。
図13図13は、実施形態2の変形例を示す図12相当図である。
図14図14は、実施形態3を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施形態)
図1は、実施形態における工具支持装置500(図3参照)が適用される工作機械1を示す全体斜視図である。尚、以下の説明において、前側、後側、左側及び右側は、工作機械1を基準とする方向であって図1の方向軸に示す通りである。
【0036】
工作機械1は、5軸制御の複合旋盤であって、ベッド2と、該ベッド2上にZ軸方向(左右方向)に対向するように配置された第1ワーク主軸台3及び第2ワーク主軸台4と、第1ワーク主軸台3及び第2ワーク主軸台4の間にX軸方向(上下方向)及びZ軸方向に移動可能に配置されたタレット刃物台5と、ベッド2上にX軸方向,Y軸方向(前後方向)及びZ軸方向に移動可能に配置された工具主軸台6(刃物台の一例)と、工具主軸台6に保持されて工具9を回転駆動する工具主軸7(工具回転部材の一例)と、工作機械1の各部の動作を制御する制御部100(図7参照)とを備えている。工具主軸7には、工具9としてホブ工具90やエンドミル及びフライス工具など様々な工具を装着可能になっている。以下の説明において、これらの工具を特に区別しない場合には、工具9と称するものとする。また、前記工具主軸台6及び工具主軸7が第1支持部を構成している。
【0037】
ベッド2上におけるワークWの加工エリアS1の左側には、前記工具主軸7に装着された工具9と、次工程で使用する工具9とを交換する工具交換装置8が配置されている。
工具交換装置8は、後述するように2つの工具マガジン8aを有している。2つの工具マガジン8aは、加工エリアS1の左側に隣接するマガジン収容空間S2内に収容されている。
【0038】
加工エリアS1とマガジン収容空間S2とは、前後方向に沿って鉛直に配置された区画壁16により区画されている。区画壁16の中央部には、工具交換用の開口部16aと、開口部16aを開閉するスライド式のATCシャッタ17とが設けられている。本例では、ATCシャッタ17は、上下方向にスライド可能に構成されているが、これに限ったものではなく、例えば左右方向にスライド可能に構成されていてもよい。
【0039】
また、工具交換装置8に対して工具主軸台6を挟んで反対側には、ユニット収容部20が設けられている。ユニット収容部20には、ホブ加工を行う際に工具主軸台6に装着される後述の回転支持ユニット40が収容されている。
【0040】
前記第1ワーク主軸台3は、ベッド2の上面に固定されていて、第1ワーク主軸10をZ軸と平行なC軸回りに回転自在に保持する。一方、前記第2ワーク主軸台4は、第2ワーク主軸11を、前記第1ワーク主軸10と同軸に保持してC軸回りに回転自在に保持する。第2ワーク主軸台4は、送りモータ33a及び送りねじ(図示しない)によって前記Z軸方向に移動する。第1ワーク主軸10は第1主軸モータ(図示しない)によって駆動され、第2ワーク主軸11は第2主軸モータ(図示しない)によって駆動される。ホブ加工時には、ワークWを第1ワーク主軸10と第2ワーク主軸11とによって両端支持しながらC軸回りに回転させる。
【0041】
タレット刃物台5は、Z軸と平行な軸線回りに旋回可能なタレット5aを有していて、送りモータ及び送りねじ(いずれも図示しない)によってZ軸方向及びX軸方向に移動可能に構成されている。タレット5aの外周部には、工具5bが周方向に間隔を空けて放射状に配置されている。
【0042】
工具主軸台6は、ベッド2の上面に立設されたコラム12に、サドル13、スライダ14、及びラム15を介して連結されている。
【0043】
コラム12は、ベッド2の上面の左右両端部に跨がる門型状をなしている。前記サドル13は、コラム12の前側面に設けられた一対のガイドレール(図示しない)に摺動可能に係合することでZ軸方向に移動自在に構成されている。サドル13は、上下一対の送りねじ31(図1では一方のみを示す)及び一対の送りモータ30bによって前記Z軸方向に駆動される。
【0044】
前記スライダ14は、サドル13の前側面に設けられた左右一対のガイドレール(図示しない)に摺動可能に係合することでX軸方向に移動自在に構成されている。スライダ14は、一対の送りねじ32(図1では一方のみを示す)及び一対の送りモータ30cによってX軸方向に駆動される。
【0045】
前記ラム15は、スライダ14に形成されたラム案内穴14aに挿入された状態で図示しない案内板によりY軸方向に移動可能に支持されている。そして、このラム15は、スライダ14の下端部に配置された1つの送りねじと送りモータ(いずれも図示しない)とによってY軸方向に駆動される。
【0046】
また、前記工具主軸台6は、ラム15に回転自在に支持された旋回駆動シャフト(図示しない)に固定されている。そして、工具主軸台6は、該旋回駆動シャフトに連結された旋回モータ(図示しない)によって、Y軸と平行なB軸回りに旋回可能に構成されている。
【0047】
[工具交換装置]
図1に示すように、工具交換装置8は、前後方向に並ぶ2つの工具マガジン8aと、工具交換アーム(図示しない)とを有している。各工具マガジン8aは、上下方向に長い楕円形状のフレームと、このフレームに沿って周回するチェーンと、このチェーンに取付けられた複数の工具ポットとを有している。各工具ポットには、ホブ工具90やエンドミル及びフライス工具などの様々な工具9が着脱可能に保持されている。ホブ工具90は、摩耗時の交換目的や、異なる形状の歯形を形成する目的で工具マガジン8a内に複数ストックされている。
【0048】
工具交換アームは、図示しないモータによってZ軸と平行な軸線回りに回転駆動される。工具交換時には、ATCシャッタ17が開放するとともに、工具主軸台6が工具交換位置(後述の図8B参照)に移動する。これにより、工具主軸7に保持された工具9がマガジン収容空間S2内に水平に進入する。そして、この進入した工具9と、工具マガジン8aにより所定位置に割り出された次工程工具9とが工具交換アームによって交換される。
【0049】
[工具主軸台]
図2に示すように、工具主軸台6は、旋回ハウジング6a及び主軸ハウジング6bを有している。
【0050】
旋回ハウジング6aは、外観視で矩形箱状をなしている。旋回ハウジング6aの背面には、円弧板状の取付板部6cが一体形成されている。取付板部6cの周縁部には、複数の貫通孔6dが周方向に間隔を空けて形成されている。取付板部6cは、各貫通孔6dに挿通されたボルト(図示しない)により前記旋回駆動シャフトに回転一体に固定されている。
【0051】
主軸ハウジング6bは、その回転軸線が旋回ハウジング6aの回転軸線(B軸)と直交する状態で該旋回ハウジング6aに固定されている。主軸ハウジング6bは、軸対称の筒状に形成されている。主軸ハウジング6bの内部には、工具主軸7を回転可能に支持する軸受や、工具主軸7を駆動するビルトインモータ、及び、工具9を工具主軸7に固定するためのドローバ機構(いずれも図示しない)などが収容されている。
【0052】
主軸ハウジング6bは、その先端側の一部が外部に露出するように旋回ハウジング9aに取付けられている。すなわち、主軸ハウジング6bは、旋回ハウジング6aの内部に収容された円筒状の非露出部6eと、旋回ハウジング6aの外部に露出した外部露出部6fとからなる。
【0053】
外部露出部6fは、主軸ハウジング6bの基端側から先端側に向かって並ぶフランジ部6g及び大径円筒部6h及び小径円筒部6iを有している。フランジ部6gは、旋回ハウジング6aの下面に図示しないボルトにより固定されている。
【0054】
大径円筒部6hと小径円筒部6iとの境界に位置する段差面6jには、周方向の全周に亘って延びる環状溝6kが形成されている。環状溝6kの内周面は、先端側ほど縮径する環状テーパ面6lとされている。この環状テーパ面6lが、刃物台に形成された被係合部に相当する。
【0055】
小径円筒部6iは、その外周面の先端部に環状係合突部6mを有している。環状係合突部6mは、小径円筒部6iの外周面から径方向外側に僅かに突出している。
【0056】
[工具主軸]
図2に示すように、工具主軸7は、主軸ハウジング6bの内側に図示しない軸受を介して支持されている。工具主軸7の先端部には、工具9を装着するための工具装着孔7a(後述する図5にのみ示す)が形成されている。図2の例では、工具装着孔7aに装着される工具9の一例としてホブ工具90を図示している。
【0057】
[ホブ工具]
ホブ工具90は、第1ワーク主軸10及び第2ワーク主軸11に支持されたワークW(図1参照)の周面に歯形を形成するホブ加工用の工具である。
【0058】
図2に示すように、ホブ工具90は、工具本体部91とホルダ部92とを有している。工具本体部91は、軸部91aと、軸部91aと同軸に形成された大径の刃部91bとを有している。軸部91aの先端部は、先端側ほど縮径するテーパ軸状に形成されている。刃部91bは、ワークWを加工する部位である。刃部91bは、加工する歯形に応じた複数条の刃列を有している。
【0059】
ホルダ部92は、ホブ工具90を含む全ての工具9において同一形状とされている。ホルダ部92は、フランジ部92a、シャンク部92b及びプルボルト92cを有している。
【0060】
フランジ部92aは、工具交換時において工具交換装置8の工具交換アームに把持される部位である。フランジ部92aは、シャンク部92bの先端部に接続されている。フランジ部92aは、シャンク部92bよりも径方向外側に鍔状に突出している。フランジ部92aの外周面には、周方向に延びるV字状の把持溝92dが全周に亘って形成されている。工具交換時には、工具交換アーム(図示しない)の両端部に形成された把持爪がこのV字状の把持溝92dに係合することで、工具交換アームにホブ工具90が把持される。
【0061】
シャンク部92bは、前記工具装着孔7aに嵌合するテーパ軸状に形成されている。プルボルト92cは、シャンク部92bと同軸にその基端部に接続されている。このプルボルト92cは、主軸ハウジング6bの内部に収容されたドローバ機構によって軸方向の基端側に引き込まれる。これにより、ホブ工具90のシャンク部92bが工具装着孔7aの内壁面に着脱不能に固定される。そうして、ホブ工具90は、工具主軸7に対して片持ち状態(基端側の部分のみが工具主軸7に固定された状態)で保持される。
【0062】
ここで、本例の工作機械1では、ホブ加工を行う際には、工具主軸台6に回転支持ユニット40を装着固定することで、ホブ工具90を片持ち状態から両持ち状態に変換可能になっている。この回転支持ユニット40と後述する固定機構部60とが第2支持部を構成している。
【0063】
[回転支持ユニット]
図3は、工具主軸台6に回転支持ユニット40を装着した状態を示す右側から見た側面図であり、図4は、回転支持ユニット40を示す外観斜視図である。
【0064】
回転支持ユニット40は、工具主軸台6に着脱可能に装着される支持フレーム50と、支持フレーム50を工具主軸台6に着脱不能に固定するための固定機構部60(後述する図5参照)と、支持フレーム50に軸受70を介して保持されたホブ先端係合部としての自由回転部材80とを有している。
【0065】
支持フレーム50は、工具主軸台6に装着された装着状態においてホブ工具90の長さ方向に沿って延設されている。
【0066】
具体的には、支持フレーム50は、環状部51、軸受保持部52及び連結部53を有している。
【0067】
環状部51は、支持フレーム50の延設方向の一端部においてホブ工具90の周囲を囲むように形成されている。環状部51は、環状本体部51aと、環状本体部51aの端部に装着された端部装着リング51bとで構成されている。環状本体部51aは、前記軸受保持部52及び連結部53と一体形成されている。
【0068】
端部装着リング51bは、図5に示すように、環状本体部51aとは別部材で構成されている。端部装着リング51bは、円筒部51c、インロー部51d及び環状突出部51eを有している。インロー部51d及び環状突出部51eは、円筒部51cと同軸にその内側縁部に沿って形成されており、インロー部51dは軸方向の先端側に突出し、環状突出部51eは軸方向の基端側に突出している。インロー部51dは、環状本体部51aの内周面に嵌合している。環状突出部51eは、環状テーパ面51f(第1支持係合部の一例)を有している。環状テーパ面51fは、環状突出部51eの内周面を構成していて、軸方向の基端側から先端側に向かって縮径している。環状テーパ面51fは、工具主軸台6側に設けられた環状テーパ面6lに係合する。
【0069】
前記軸受保持部52は、環状部51に対して軸方向に間隔を空けて配置されている。軸受保持部52は、環状部51の軸線に対して垂直に配置されている。軸受保持部52には、軸受装着孔52aが貫通形成されている。軸受装着孔52aは、環状部51と同軸に形成されている。軸受装着孔52aには、軸方向に間隔を空けて並ぶ一対の軸受70が嵌装されている。
【0070】
自由回転部材80は、一対の軸受70の内輪の内側に挿入される円柱部80aと、該円柱部80aの下端部に形成されたフランジ部80bとからなる。フランジ部80bは、一対の軸受70に対する自由回転部材80の軸方向位置を規制している。自由回転部材80は、一対の軸受70に対してフランジ部80bとは反対側に設けられたナット81により脱落不能に固定されている。そうして、自由回転部材80は、一対の軸受70を介して軸受保持部52に回転可能に保持されている。自由回転部材80における環状部51側の端面には、ホブ工具90の先端部に係合する先端係合孔80cが形成されている。先端係合孔80cは、ホブ工具90の先端部の形状に対応するテーパ孔状に形成されている。
【0071】
前記連結部53は、環状部51と軸受保持部52とを連結する部位である。具体的には、連結部53は、環状部51の軸線と平行に延びる矩形柱によりに構成されている。そして、連結部53は、環状部51の周方向の1カ所と軸受保持部52の端縁部とを連結している。尚、本例では、連結部53は1つの矩形柱で構成されているが、これに限ったものではない。すなわち、連結部53は、矩形柱に限らず例えば台形板状や円弧状であってもよく、また、連結部53の数も1つに限ったものではなく2つ以上であってもよい。
【0072】
[固定機構部]
図5に示すように、固定機構部60は、前記支持フレーム50における環状部51の内側に設けられている。
【0073】
固定機構部60は、端部装着リング51bの内側ガイド面51gに沿って軸方向に摺動する摺動リング61と、端部装着リング51bの先端面に固定された環状の固定リング62と、摺動リング61の内側に配置された可撓リング63と、可撓リング63を脱落不能に保持する保持リング64とを有している。
【0074】
そして、端部装着リング51bと固定リング62と摺動リング61とによって環状の油圧室U0が形成されている。この油圧室U0は、摺動リング61の外周面に形成されたピストン突部61aを挟んで対向する第1油圧室U1と第2油圧室U2とからなる。
【0075】
可撓リング63は、リング本体部63aと、基端部がリング本体部63aに接続された複数の可撓片部63bと、各可撓片部63bの先端部に形成された係合爪部63cとを有している。リング本体部63aは、保持リング64に形成された保持溝64aに嵌合して保持されている。可撓片部63bは、摺動リング61の内周面に当接している。
【0076】
そして、第1油圧室U1に油圧が供給されると、摺動リング61に設けられたピストン突部61aが図5の右側に押されて摺動リング61全体が右側に移動する。これにより、可撓片部63bがその基端部を支点に径方向内側に倒れる。この結果、可撓片部63bの先端部に形成された係合爪部63cが、主軸ハウジング6bの先端に形成された環状係合突部6mに係合する。これにより、主軸ハウジング6bと回転支持ユニット40とが軸方向に分離不能に連結(固定)される。
【0077】
一方、第2油圧室U2に油圧が供給されると、摺動リング61に設けられたピストン突部61aが図5の左側に押されて摺動リング61全体が左側に移動する。これにより、可撓片部63bが復元力によりその基端部を支点として径方向外側に広がる。この結果、図5の実線で示すように、可撓片部63bの先端部に形成された係合爪部63cと、主軸ハウジング6bの先端に形成された環状係合突部6mとの係合が解除される。これにより、主軸ハウジング6bと回転支持ユニット40との軸方向の連結(固定)が解除される。
【0078】
このように、固定機構部60は、回転支持ユニット40を、工具主軸台6(詳しくは主軸ハウジング6b)に固定された固定状態と、該固定が解除された固定解除状態とに切替え可能に構成されている。
【0079】
第1油圧室U1及び第2油圧室U2への油圧供給経路L1,L2は、回転支持ユニット40を主軸ハウジング6bに装着することによって確立される。すなわち、主軸ハウジング6bには、各油圧室U1,U2に作動油を供給するための2つの油圧供給流路(図示しない)が形成され、回転支持ユニット40を主軸ハウジング6bに装着すると、この2つの油圧供給流路が、回転支持ユニット40の端部装着リング51bに形成された2つの油圧供給路(図示しない)に連通する。これにより、前記油圧供給経路L1,L2が確立される。
【0080】
[ユニット収容部]
回転支持ユニット40は、ホブ加工の非実行中は前記ユニット収容部20に収容されている。回転支持ユニット40は、後述するように工具主軸台6の左右方向の移動動作によって工具主軸台6に装着される。
【0081】
ユニット収容部20は、矩形箱状に形成されていて、第2ワーク主軸台4の上側に配置されている。ユニット収容部20は、連結板21を介して工作機械1のベッド2に固定されている。連結板21とユニット収容部20の下面とは補強リブ22により連結されている。
【0082】
図6に示すように、ユニット収容部20の底壁20cには、回転支持ユニット40を支持する第1支持部23及び第2支持部24が立設されている。
【0083】
回転支持ユニット40は、環状部51の軸線がZ軸と平行で且つ連結部53が工作機械1の正面から見て手前側に位置する状態で第1支持部23及び第2支持部24の上側に載置される。
【0084】
また、ユニット収容部20内には、第1支持部23及び第2支持部24の上側に載置された回転支持ユニット40を係止するためのユニット係止装置25が設けられている。
【0085】
ユニット係止装置25は、一対の係合ピン25aと、一対の係合ピン25aを保持する保持板25bと、保持板25b進退させるシリンダ25cとを有している。保持板25bは、シリンダ25cによって係止位置と係止解除位置との間で移動される。係止位置では、一対の係合ピン25aが支持フレーム50に形成された一対の係合孔25dに係合する。これにより、支持フレーム50を含む回転支持ユニット40全体が左右方向(Z軸方向)に移動不能に係止される。一方、係止解除位置では、一対の係合ピン25aが支持フレーム50から離間することで、回転支持ユニット40が左右方向(Z軸方向)に移動可能になる。
【0086】
ユニット収容部20の左側壁20aには、矩形状の開口部20bが形成されている。回転支持ユニット40は、この開口部20bを介してユニット収容部20に出し入れされる。
【0087】
[制御系の構成]
図7に示すように、工作機械1は、その全体動作を制御する制御部100を有している。制御部100は、CPU、ROM及びRAMを有するコンピュータからなる。
【0088】
制御部100は、主軸回転駆動部101、送り駆動部102、主軸旋回駆動部103、前記工具交換装置(ATC:Automatic tool changer)8、シャッタ駆動部104、油圧供給装置105、及び前記ユニット係止装置25に信号の授受可能に接続されている。
【0089】
主軸回転駆動部101は、上述した工具主軸7を駆動するためのビルトインモータを含んで構成されている。
【0090】
送り駆動部102は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向におけるワークWと工具9との相対移動を実現するための送りモータ(例えば上述した送りモータ30a~30c)を含んで構成されている。送り駆動部102が第1支持駆動部に相当する。
【0091】
主軸旋回駆動部103は、上述した工具主軸台6をB軸回りに旋回駆動するための旋回モータを含んで構成されている。
【0092】
シャッタ駆動部104は、ATCシャッタ17を開閉駆動するためのモータを含んで構成されている。
【0093】
油圧供給装置105は、前記油圧供給経路L1,L2(図5参照)への作動油の供給制御を行うことで、固定機構部60を固定状態と固定解除状態とに切替える。
【0094】
制御部100は、ROM等に記憶されたNCプログラムに基づいてワークWの加工制御を実行する。制御部100は、実行中のNCプログラム中から工具交換指令を抽出した場合には、工具交換装置8に工具交換制御を実行させる。この工具交換制御では、上述したように工具交換アームを用いて工具主軸7と工具マガジン8aとの間で工具交換を実行する。
【0095】
また、制御部100は、NCプログラム中から工具9の交換指令を抽出した場合において、当該工具交換指令により指定される次工程工具がホブ工具90であると判定したときには、工具交換制御の実行後、工具主軸台6に回転支持ユニット40を装着固定するためのユニット装着制御を実行する。制御部100は、ホブ工具90を用いた加工動作が終了した後は、工具主軸台6から回転支持ユニット40を脱着するユニット脱着制御を実行する。
【0096】
[工具交換制御及びユニット装着制御]
図8A図8Iは、ホブ工具90への工具交換制御(図8A図8C)及びユニット装着制御(図8D図8I)の内容を説明するための説明図である。各図中の太矢印は、次に実行するべき動作を示している。
【0097】
図8Aは、工具主軸台6に支持された工具主軸7(図2参照)にホブ工具90以外の所定工具95が装着された状態を示している。
【0098】
ホブ工具90への工具交換制御では、制御部100による制御の下、ATCシャッタ17をシャッタ駆動部104により開位置に移動させるとともに、工具主軸台6を、送り駆動部102及び主軸旋回駆動部103により上述の工具交換位置に移動させる(図8B参照)。
【0099】
そして、この移動完了後に、工具交換装置8により、工具マガジン8a内に収容された次工程工具であるホブ工具90と、工具主軸7に装着されている所定工具95との工具交換を実行する。そして、工具交換により工具主軸7に装着されたホブ工具90を、前記ドローバ機構により工具主軸7に固定する(図8C参照)。
【0100】
工具主軸7へのホブ工具90の装着固定が完了した後は、図8D図8Iに示すようにユニット装着制御が実行される。ユニット装着制御では、先ず、制御部100による制御の下、工具主軸台6を、送り駆動部102により右側に退避移動させるとともに、ATCシャッタ17をシャッタ駆動部104により閉位置に移動させる(図8D参照)。
【0101】
次いで、工具主軸台6を、主軸旋回駆動部103により図8Dの反時計回り方向に180°回転させる。これにより、ホブ工具90の先端がユニット収容部20の開口部20bに対向する状態になる(図8E)。図8Eの状態では、ホブ工具90の軸心は、ユニット収容部20内に収容された回転支持ユニット40の環状部51と同軸になる。尚、装置構成によっては同軸にならないこともあり得るが、その場合には、送り駆動部102により工具主軸台6の位置を調整すればよい。
【0102】
そうして、ホブ工具90の軸心と回転支持ユニット40の環状部51の軸心とが同軸になった後、固定機構部60を、油圧供給装置105により固定解除状態(図5の状態)に維持しつつ、工具主軸台6を送り駆動部102により右側に水平移動させてユニット着脱位置(図8F参照)まで移動させる。
【0103】
この工具主軸台6のユニット着脱位置への移動動作により、回転支持ユニット40の環状部51に設けられた環状テーパ面51f(図5参照)が、工具主軸台6に設けられた環状テーパ面6lに係合する。また、ホブ工具90の先端部が環状部51の内側を貫通して自由回転部材80の先端係合孔80cに係合する。そして、この係合完了後に(換言すると、工具主軸台6への回転支持ユニット40の装着完了後に)、固定機構部60を油圧供給装置105により固定状態に切り替える。これにより、回転支持ユニット40が工具主軸台6に対して分離不能に固定される。
【0104】
工具主軸台6に対する回転支持ユニット40の固定が完了した後は、ユニット係止装置25によって保持板25bを係止解除位置に移動させる(図8G参照)。この状態で、工具主軸台6を、送り駆動部102により左側に向かって退避移動させることで、回転支持ユニット40がユニット収容部20から引出される。これにより、工具主軸台6への回転支持ユニット40の装着が完了する。
【0105】
尚、回転支持ユニット40の装着完了後は、工具主軸台6を主軸旋回駆動部103により反時計回り方向に回転させる(図8I参照)。そして、工具主軸7をワークWと同期回転させることで当該ワークWの周面に歯形を形成する。
【0106】
以上、ユニット装着制御について説明したが、ユニット脱着制御(工具主軸台6から回転支持ユニット40を取外す制御)については、ユニット装着制御とは逆の順序の動作、(つまり図8I図8H図8G→…図8Aの順に進む動作)を実行するだけでよいので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0107】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態の工具支持装置500(図9参照)は、回転支持ユニット40を含み、該回転支持ユニット40は、工具主軸台6に設けられた環状テーパ面6l(被係合部の一例)に係合する環状テーパ面51f(第1支持係合部の一例)と、ホブ工具90の先端部にその回転を許容する状態で係合する自由回転部材80(ホブ先端係合部の一例)とを有している。
【0108】
これによれば、工具主軸台6と回転支持ユニット40に設けられた自由回転部材80とによってホブ工具90が両持ち状態で支持される。したがって、ホブ工具90を工具主軸台6のみで片持ち支持する場合に比べて、ホブ工具90の剛性を高めて歯形の加工精度を向上させることができる。また、回転支持ユニット40はホブ工具90とは分離された別ユニットであるため、工具マガジン8a内にストックされた複数のホブ工具90に対して共通の1つの回転支持ユニット40を用意すればよい。よって、回転支持ユニット40をホブ工具90の数だけ用意する必要がないので、部品点数を抑制して、安価な構成によりホブ工具90の両端支持化を実現することができる。
【0109】
また、工具主軸台6は、左右方向(所定方向の一例)に移動可能に構成されている。そして、回転支持ユニット40は、固定機構部60が固定解除状態にある状態で工具主軸台6が行う右側への直線移動動作(予め定めた移動動作)の動作力を利用して該工具主軸台6に着脱可能に構成されている(図8E図8H参照)。
【0110】
これによれば、工具主軸台6に対する回転支持ユニット40の着脱動作を、工具主軸台6が行う右側への直線移動動作を利用して自動的に行うことができる。したがって、作業者が工具主軸台6に回転支持ユニット40を手作業で装着する必要がない。このため、作業者の肉体的負担を低減することができるとともに、ホブ工具90への切替えを迅速に行うことができる。また、工具主軸台6に回転支持ユニット40を装着するための専用ロボットなどを別途設ける必要もないので、工具主軸台6への回転支持ユニット40の装着を安価な構成により行うことができる。
【0111】
本実施形態では、回転支持ユニット40は、工具主軸台6に装着された装着状態においてホブ工具90の長さ方向に沿って延設される支持フレーム50と、支持フレーム50に軸受70を介して支持された前記自由回転部材80とを有している。支持フレーム50は、その延設方向の一端部を構成し、前記環状テーパ面51fを有するとともに、前記ホブ工具90の周囲を環状に囲む環状部51と、その延設方向の他端部を構成し、前記軸受70を保持する軸受保持部52と、軸受保持部52及び環状部51を連結する連結部53とを有している。
【0112】
これによれば、回転支持ユニット40を工具主軸台6に装着する際には、支持フレーム50の一端部を構成する環状部51の内側をホブ工具90が貫通するように、工具主軸台6を移動させればよい。したがって、工具主軸台6に対する回転支持ユニット40の装着を簡単な直線移動により実現することができる。また回転支持ユニット40が、ホブ工具90に対して径方向外側にオフセットすることもないので工具周辺のスペース効率を向上させることができる。
【0113】
前記工具主軸台6に設けられる環状テーパ面6lは、工具主軸7の軸線と同芯状に形成されている。また、支持フレーム50に設けられる環状テーパ面51fは、自由回転部材80の軸線と同芯状に形成されている。
【0114】
これによれば、工具主軸台6に回転支持ユニット40を装着した際に、工具主軸台6に設けられた環状テーパ面6lと、支持フレーム50に設けられる環状テーパ面51fとが係合する。この結果、工具主軸台6に設けられた工具主軸7の軸線と、回転支持ユニット40に設けられた自由回転部材80の軸線とが同軸に位置決めされる。これにより、ホブ工具90の回転軸線が傾くのを防止し、延いては、ホブ工具90による歯形の加工精度を向上させることができる。
【0115】
また、前記固定機構部60は、回転支持ユニット40に設けられている。そして、固定機構部60は、回転支持ユニット40が工具主軸台6に装着された状態において、工具主軸台6の内部に形成された油圧供給路(流体通路の一例)を介して供給される作動油の油圧を基に、固定状態と固定解除状態とを切替え可能に構成されている。
【0116】
これによれば、固定機構部60を回転支持ユニット40に設けるようにしたことで、既存の工具主軸台6の構造を大幅に変更することなく、回転支持ユニット40を工具主軸台6に固定することができる。したがって、ホブ工具90の両持ち支持を実現するための工具主軸台6の改造工数を最小限に止めてコストを低減することができる。
【0117】
また、ユニット収容部20内にはユニット係止装置25が設けられている。ユニット係止装置25は、回転支持ユニット40を移動不能に係止する係止状態と該係止が解除された係止解除状態とに切替え可能に構成されている。
【0118】
これによれば、送り駆動部102によって工具主軸台6をユニット着脱位置まで移動させる際、及び、ユニット着脱位置から離間移動させる際に、ユニット係止装置25によって回転支持ユニット40をユニット収容部20に移動不能に係止しておくことで、工具主軸台6に対する回転支持ユニット40の装着及び脱着を円滑に且つ確実に行うことができる。
【0119】
また、ユニット収容部20は工具マガジン8aに対して工具主軸台6を挟んで反対側に配置されている。
【0120】
これによれば、工具マガジン8aに対して工具主軸台6を挟んで反対側に位置するデッドスペース(本実施形態では第2ワーク主軸台4の上側のスペース)を利用してユニット収容部20を配置することができる。よって、ユニット収容部20を追加することにより工作機械1が大型化するのを防止することができる。
【0121】
(実施形態2)
図9は、実施形態2を示している。この実施形態では、回転支持ユニット240を工具主軸台6の外付け部材6pに装着する点が前記実施形態1とは異なっている。尚、以下の実施形態において、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0122】
すなわち、本実施形態の工具主軸台6は、オプションで取付けられる外付け部材6p
を有しており、回転支持ユニット240はこの外付け部材6pにプルボルト203を介して装着固定される。
【0123】
[外付け部材]
図10に示すように、外付け部材6pは、工具主軸台6の旋回ハウジング6aの前側面にボルトで固定されている。旋回ハウジング6aの前側面には、外付け部材6pを取付けるための円板状の取付座部6nが設けられている。
【0124】
外付け部材6pは、前後方向に厚みを有する略6角形状の角柱からなる。外付け部材6pは、工具主軸7の軸線が鉛直を向く基準状態において、外付け部材6pの下端面が水平になるように配置されている。この下端面は、回転支持ユニット240を取付けるためのユニット取付座面6qとして機能する。ユニット取付座面6qは、工具主軸7の軸線方向から見て前側にオフセットした位置に配置されている。
【0125】
図11に示すように、ユニット取付座面6qには、4つのクランプ孔6rが設けられている。
【0126】
各クランプ孔6rは、外付け部材6pに内蔵された4つのクランプ装置65のそれぞれに設けられている。各クランプ装置65は、ボールロック式の油圧クランプ装置であって、クランプ孔6rに挿入されるプルボルト203(図12参照)を油圧駆動のボールロック機構により引き込んでクランプする。
【0127】
外付け部材6pの内部には、各クランプ装置65に油圧を供給するための油圧供給流路(図示しない)が形成されている。各クランプ装置65への作動油の供給制御は、制御部100からの指令を受けた油圧供給装置105により実行される。尚、各クランプ装置65への油圧供給を停止すると、図示しない付勢部材によりボールロックが解除されてアンクランプ状態となる。
【0128】
[回転支持ユニット]
図12に示すように、回転支持ユニット240は、不使用時(ホブ加工非実行時)には実施形態1と同様にユニット収容部20に収容されている。尚、図12では、見易さを考慮して、ユニット収容部20内に設けられるユニット係止装置25を省略して示している。
【0129】
図9及び図12に示すように、回転支持ユニット240は、支持フレーム250及び自由回転部材260を有している。
【0130】
支持フレーム250は、外付け部材6pのユニット取付座面6qに当接する矩形ブロック状の座面当接部251と、自由回転部材260を保持する矩形板状の軸受保持部252と、座面当接部251と軸受保持部252とを連結する傾斜梁状の連結部253とを有している。
【0131】
座面当接部251は、前記ユニット取付座面6qに当接する当接座面251a(図12参照)を有している。当接座面251aの四隅にはプルボルト203が突設されている。
【0132】
軸受保持部252及び自由回転部材260の構成は、実施形態1で説明した軸受保持部52及び自由回転部材80の構成と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0133】
[ユニット装着制御]
本実施形態のユニット装着制御の基本的な動作は、実施形態1と同様であるため相違点についてのみ説明する。本例では、図12に示す状態(実施形態1の図8Eに相当する状態)から、工具主軸台6を右側に駆動してユニット着脱位置まで移動させると、回転支持ユニット240の当接座面251aに突設された4つのプルボルト203が、工具主軸台6の外付け部材6pに形成されたクランプ孔6rに係合する。この係合後に、各クランプ装置65によってプルボルト203をクランプすることで、回転支持ユニット240が外付け部材6pに分離不能に固定される。
【0134】
そうして、本実施形態では、クランプ孔6rが、刃物台である工具主軸台6に形成された被係合部に相当し、プルボルト203が刃物台に形成された被係合部に係合する第1支持係合部に相当する。また、クランプ装置65が固定機構部に相当する。
【0135】
尚、ユニット脱着制御については、ユニット装着制御とは逆の順序の動作を実行するだけでよいので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0136】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態では、工具主軸台6は、その外側面に取付固定される外付け部材6pを有している。そして、外付け部材6pは、工具主軸7の軸線方向から見て、前側(工具主軸7の側方の一例)にオフセットした位置にユニット取付座面6qを有している。
【0137】
これによれば、工具主軸台6に設けられた外付け部材6pによって、工具主軸7からオフセットした位置にユニット取付座面6qを確保することができる。したがって、工具主軸台6のうち、構造が複雑になりがちな工具主軸7の周囲にユニット取付座面6qを確保する必要がない。よって、工具主軸台6の改造や追加工を最小限に止めてコストを抑制することができる。
【0138】
(実施形態2の変形例)
図13は、実施形態2の変形例を示している。この変形例では、外付け部材6pのユニット取付座面6qに保護板300を装着可能に構成されている点が実施形態2とは異なる。
【0139】
保護板300は矩形板状をなしている。保護板300の四隅には、プルボルト301が突設されている。
【0140】
保護板300は、ホブ加工の実行中は、ユニット収容部20の下側に設けられた保護板収容部26に収容されている。ホブ加工が終了して回転支持ユニット240をユニット収容部20に収容した後は、工具主軸台6を図13の二点鎖線矢印で示す経路で移動させる。これにより、前記ユニット取付座面6qの各クランプ孔6rと、保護板300に設けられた各プルボルト301とが係合する。この状態で各クランプ装置65によりプルボルト301をクランプすることで、ユニット取付座面6qに保護板300が装着固定される。尚、保護板収容部26内には、回転支持ユニット40の係止装置と同様の考え方で、保護板30を係止するための係止装置(図示しない)が設けられている。
【0141】
本変形例によれば、ホブ加工の非実行中は、外付け部材6pのユニット取付座面6qに保護板300が装着固定される。したがって、ホブ加工以外の加工が実行されているときに、ユニット取付座面6qに切屑が付着したり、クランプ孔6r内に切屑が侵入したりするのを防止することができる。
【0142】
(実施形態3)
図14は、実施形態3を示している。この実施形態では、ユニット収容部20の設置箇所が前記実施形態1及び2とは異なる。
【0143】
すなわち、本実施形態では、ユニット収容部20は、マガジン収容空間S2内に設けられている。図中の実線は、工具主軸台6を工具交換位置に移動させた状態を示し、図中の2点鎖線は、工具主軸台6をユニット着脱位置に移動させた状態を示している。
【0144】
この図からも分かるように、本実施形態では、工具交換位置とユニット着脱位置とを極力近付けることができるので、工具主軸7にホブ工具90を装着した後に、工具主軸台6に回転支持ユニット240を装着するまでの時間を短縮することができる。よって、加工サイクルタイムを短縮して生産性を向上させることができる。
【0145】
(他の実施形態)
前記実施形態では、工具主軸台6に支持された工具主軸7にホブ工具90を保持させるようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、タレット刃物台5に支持された工具主軸にホブ工具を保持させるようにしてもよい。この場合、例えば、タレット刃物台5を前後方向(Y軸方向)に移動可能に構成し、タレット刃物台5の前側又は後側にユニット収容部20を配置することが考えられる。これにより、タレット刃物台5の前後方向の移動動作によって該タレット刃物台5に対する回転支持ユニット240の着脱を行うことができる。尚、この場合は、タレット刃物台5が本発明における刃物台に相当する。
【0146】
また、前記実施形態では、ホブ工具90の先端部に係合するホブ先端係合部は、軸受70に支持された自由回転部材80により構成されているが、これに限ったものではなく、例えば円錐状の係合固定部材で構成されていてもよい。この場合、例えば係合固定部材の頂部を、ホブ工具90の先端面に形成した小径孔に係合させるなどすればよい。これにより、ホブ工具90と係合固定部材との接触面積を極力低減して摩擦抵抗を抑えつつ、ホブ工具90の先端部を係合固定部材によって回転可能に支持することができる。
【0147】
前記実施形態では、固定機構部60は、回転支持ユニット240に取付けられているが、これに限ったものではなく、例えば工具主軸台6に取付けられていてもよい。また、固定機構部60は、前記実施形態で説明したような油圧駆動式に限らず、例えば電動式アームを使用した構成を採用してもよいし、磁気吸引力を使用した構成を採用してもよい。
【0148】
前記実施形態では、支持フレーム50の環状部51は、環状本体部51aと端部装着リング51bとの2つの部材で構成されているが、これに限ったものではなく、例えば端部装着リング51bを環状本体部51aに一体形成するようにしてもよい。
【0149】
尚、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1 :工作機械
6 :工具主軸台(刃物台、第1支持部)
7 :工具主軸(第1支持部)
6l :環状テーパ面(被係合部)
6p :外付け部材
6q :ユニット取付座面
6r :クランプ孔(被係合部)
8 :工具交換装置
8a :工具マガジン
9 :工具
16 :区画壁
20 :ユニット収容部
40 :回転支持ユニット(第2支持部)
50 :支持フレーム
51 :環状部
51f :環状テーパ面(第1支持係合部)
52 :軸受保持部
53 :連結部
60 :固定機構部
65 :クランプ装置(固定機構部、第2支持部)
70 :軸受
80 :自由回転部材
90 :ホブ工具
100 :制御部
102 :送り駆動部(第1支持駆動部)
203 :プルボルト(第1支持係合部)
240 :回転支持ユニット
250 :支持フレーム
251 :座面当接部
252 :軸受保持部
253 :連結部
260 :自由回転部材
500 :工具支持装置
S1 :加工エリア
S2 :マガジン収容空間
W :ワーク
【要約】
【課題】ホブ工具を両持ち支持可能な工具支持装置及び該工具支持装置を備えた工作機械を安価に提供する。
【解決手段】工具支持装置500は、工具回転部材7にホブ工具90が保持された状態で、刃物台6に着脱可能に装着される回転支持ユニット40と、回転支持ユニット40を刃物台6に固定された固定状態と該固定が解除された固定解除状態とに切替える固定機構部とを備えている。回転支持ユニット40には、刃物台6に形成された被係合部に係合する第1支持係合部と、ホブ工具90の先端部にその回転を許容する状態で係合するホブ先端係合部80とが設けられている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図9
図10
図11
図12
図13
図14