(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】消火装置の保存容器およびスパウト押さえ、消火装置の気密容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
B65D77/04 B
(21)【出願番号】P 2022208291
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2018114149の分割
【原出願日】2018-06-15
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 亮太
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-310173(JP,A)
【文献】特開2005-335713(JP,A)
【文献】特開2010-280445(JP,A)
【文献】特開2005-162311(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00250042(EP,A1)
【文献】特開2002-225940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウト受け土台を有した保存容器
とスパウト押さえであって、
スパウトと袋が接合された内部容器を挿入し、前記スパウト受け土台にスパウトを設置した状態で内部容器に内容物を充填したときに、内部の空気が排出される開閉自在な空気抜きを有
し、
前記スパウト受け土台と前記スパウト押さえにより前記スパウトを挟持し、
前記スパウト押さえにはサイホン管が接続され、加圧ガス注入口が設けられる
ことを特徴とする
消火装置の保存容器
およびスパウト押さえ。
【請求項2】
スパウトと袋が接合された内部容器と、
スパウト受け土台を有した保存容器と、
スパウト押さえと、を備え、
前記保存容器は、前記内部容器を前記保存容器に挿入し、前記スパウト受け土台に前記スパウトを設置した状態で前記内部容器に内容物を充填したときに、前記保存容器内の空気が排出される開閉自在な空気抜きを有
し、
前記スパウト受け土台と前記スパウト押さえにより前記スパウトを挟持し、
前記スパウト押さえにはサイホン管が接続され、加圧ガス注入口が設けられる
ことを特徴とする
消火装置の気密容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内袋の簡便な着脱が可能で気密性を確保できる内部容器及び容器蓋部を備えた気密容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防蝕や、洗浄時間の節約のため、タンクやドラム缶などの容器の内部に内袋を装入して使用することがあった。その際、内袋に内容物を封入するために、容器の上面を覆う蓋等で内袋のフィルムを挟み込む方法や、樹脂製のキャップのついた内袋を上面の開口した容器に入れる方法がとられていた。しかし、内袋を入れた容器に蓋を被せて蓋の縁で内袋のフィルムを挟むだけでは、容器は気密にならない。そのため、容器内を加圧する消火器等のタンクや、劇物や可燃物等の貯蔵、外気によって劣化しやすい内容物の保管などには用いることができなかった。また、樹脂製のキャップのついた内袋を使用する方法でも、容器の内面が外気に晒されているため内袋との隙間に水分が入るなどして容器が腐蝕する可能性がある。さらに、消火器のような耐圧容器としての使用や、気化しやすい薬品や可燃物の貯蔵については、内袋やキャップが圧力に耐えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、金属容器内に耐蝕性袋体を装入する方法と、熱変形性の有底の樹脂材を装入してから、高圧ガスを封入して金属容器内に圧着する方法が記載されている。しかし、特許文献1では耐蝕性袋体等の開口部の気密性については考慮されておらず、開口部から金属容器の内側面に内容物が漏れる可能性がある。また、耐蝕性袋体を装入する方法では、耐蝕性袋体が金属容器から剥離する虞がある。これに対して特許文献1では、耐蝕性袋体を接着剤で金属容器内部に固定する方法が記載されている。しかし、耐蝕性袋体を金属容器内部に固定する方法や、樹脂材を装入して金属容器内に圧着する方法では、内袋の交換ができないため再利用の際には必ず洗浄が必要となる。洗浄は、内容物によっては容器内に固着し、困難な場合がある。また、丁寧に洗浄しないと、容器内面の樹脂に傷や劣化が生じ、新たに内容物を充填・保管した際に損傷部分から金属容器の内側面に内容物が漏れる危険がある。
【0005】
そこで本発明は、気密性の袋にスパウトを接合した内部容器を、外部容器に装入し、容器蓋部でスパウトの上面を押圧し密閉できるようにすることで、耐腐蝕性、気密性、密閉性、耐圧性を有し容易に内容物を入れ替えて再利用できる気密容器の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、以下の構成を有する。
【0007】
本発明は、スパウト受け土台を有した保存容器であって、スパウトと袋が接合された内部容器を挿入し、前記スパウト受け土台にスパウトを設置した状態で内部容器に内容物を充填したときに、内部の空気が排出される開閉自在な空気抜きを有することを特徴とする保存容器である。
【0008】
また、本発明は、スパウトと袋が接合された内部容器と、スパウト受け土台を有した保存容器と、を備え、前記保存容器は、前記内部容器を前記保存容器に挿入し、前記スパウト受け土台に前記スパウトを設置した状態で前記内部容器に内容物を充填したときに、前記保存容器内の空気が排出される開閉自在な空気抜きを有することを特徴とする気密容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保存容器または気密容器により、内部容器に内容物を充填したときに、保存容器内の空気を排出することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における内部容器2の全体図である。
【
図2】本発明の一実施形態における内部容器2のスパウト21部分の上面図と切断部端面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における気密容器1の分解図である。
【
図4】本発明の一実施形態における組み付け後の気密容器1の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態における組み付け後の気密容器1のスパウト21部分を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態である気密容器1は、内容物として各種消火剤を充填する消火装置の消火剤タンクである。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における内部容器2の全体図であり、取り付け前の内部容器2をスパウト21が取り付けられている方向から見た図である。内部容器2は、長方形の袋22における端部近傍に開口部221を設け、スパウト21を接合したものであり、後述のタンク4に装入して使用する。
【0016】
袋22は、耐腐蝕性のフィルムから形成されているため内容物の侵蝕を受けず、劣化による穴があかない。また、フィルムは気密性、バリア性があり、内容物がタンク4内面に漏れ出さない。そのため、タンク4の内面に腐蝕等の変性を生じさせることがない。また、タンク4の内面が汚れることがないので、内部容器2を取り出して交換するだけでタンク4内面の洗浄に代えることができる。袋22には柔軟性があるため、気密容器1にある程度の大きさの開口があれば、取り付けや取り外しの際に折りたたんで出し入れすることができる。また、袋22は、膨らんだ際にタンク4内面よりやや大きくなるように作られる。このため、内容物の充填時にタンク4の内面と袋22の間に隙間が生じない。内容物の充填時には袋22に折り目や皺が発生するが、フィルムに柔軟性があるため破損しない。なお、袋22の形状は長方形でなくてもよく、円筒形等でもよい。袋22には内容物を出し入れするための開口部221があり、スパウト21が接合されている。
【0017】
スパウト21は、中央が開口していて内部容器2への内容物の出入口となっている。また、スパウト21があることで、後に説明するように開口を塞いだ際に容器の気密性を確保できる。さらに、スパウト21は、内部容器2のタンク4内部への落下を防止する。そして、内容物を取り出した後には、スパウト21を掴んで引き出すことで容易に内部容器2を取り外すことができる。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態における内部容器2のスパウト21部分の上面図と切断部端面図である。スパウト21は、エラストマー等の柔軟性・伸縮性のある樹脂やゴムを射出成型して作られており、気密性、耐腐蝕性があり、袋22よりも厚さを有している。
図2(a)は、
図1のスパウト21の部分を拡大した図である。また、
図2(b)は、
図2(a)のスパウト21及びその近傍の袋22をA-A線で切断して側方から見た切断部端面図である。
【0019】
第1リング211は、内側に開口を囲む第1開口端212を有した厚さ1mmの平板状のリングであり、スパウト21の上部に設けられる。胴体213は筒型形状であり、第1リング211よりも薄い0.5mmの厚さであり、伸縮性を有している。第2リング214は、スパウト21の下部にある平板状のリングであり、0.5mmの厚さを有し、内側に開口を囲む第2開口端215を有している。袋22はフィルムにより形成され、開口部221を有している。
【0020】
スパウト21は、第1リング211の内側の第1開口端212に胴体213の一端が接続し、胴体213の他端で第2リング214の内側の第2開口端215に接続した構造を有している。そしてスパウト21は、第2リング214の下面で、袋22の開口部221の外縁の上面と密閉して接合している。第1リング211の内側、胴体213の内壁、第2リング214の内側からなるスパウト21の開口は、袋22の開口部221へと連通し、袋22の内部につながっている。
【0021】
袋22とスパウト21は、スパウト21下端の平板な第2リング214によって平面で隙間なく接合されるので、接合部分に高い気密性と強度を持たせることができるとともに、内部容器2の製造が容易である。本実施形態では、ヒートシールによってスパウト21の第2リング214を袋22に接合している。また、タンク4の中へ装入するため、胴体213、第2リング214、袋22はともに容易に変形するが、第1リング211は胴体213の厚さ以上の厚さを有するので、容易には湾曲しづらくリング形状を保ちやすい。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態における気密容器1の分解図である。
図3は気密容器1の組付けを模式的に表している。気密容器1はタンク4、内部容器2、スパウト押さえ3から構成され、容器蓋部であるスパウト押さえ3は押さえ部材31とカバーナット32から構成される。
【0023】
外部の保存容器であるタンク4は鉄製であり、気密性と耐圧性を持つ。上部にスパウト受け土台41を有し、スパウト受け土台41の中央は円筒状に開口していてタンク4の内部に連通している。そしてスパウト受け土台41は、上端の外周に外ネジ411が設けられている。内部容器2は前述のように袋22にスパウト21を接合したものである。押さえ部材31は円盤状であり、ステンレス等の耐腐蝕性のある金属で製造される。押さえ部材31の中央にはサイホン管311を取り付けるための孔が設けられてサイホン管311が接続され、中央からはずれた位置には後述の加圧ガス注入口312が設けられている。
押さえ部材31の円周部分は上部が張り出してフランジ部314となっており、中央は肉厚部315となっている。フランジ部314には下側にOリング313をはめ込むための溝が設けられている。加圧部材であるカバーナット32は鉄製であり、内側に内ネジ321(
図5にて図示)が設けられており上部外周が6角形のレンチ作用部322となっていて、中央が大きく開口している。レンチ作用部322と内ネジ321の間には、内方に突出して押部323が形成されている。
【0024】
気密容器1の組付けは、通常以下の手順で行う。始めに内部容器2をタンク4に装入する。まず袋22を、スパウト21が遠い部分から、スパウト受け土台41の開口を通じてタンク4の内部に装入する。そして、スパウト21の第2リング214と胴体213を押圧して変形させ、スパウト受け土台41の開口に押し込む。このとき、第1リング211が開口から中へ落下しないように注意しなければならないが、第1リング211はやや厚いため湾曲しにくく、開口には入りにくい。第1リング211をスパウト受け土台41の外部受け面に設置すると、第2リング214と胴体213が広がってスパウト21が元の形状に戻る。
次に、スパウト21の開口を通して内部容器2内に内容物を充填する。そうすると、内容物による圧力で、袋22がタンク4内で膨張してタンク4内面に押圧される。このとき、タンク4の上方に設けた開閉自在な空気抜き(図示せず)からタンク4内の空気が排出される。袋22は、余ったフィルムが重なった状態でタンク4の内部を覆う。
【0025】
次に、サイホン管311とOリング313が取り付けられた押さえ部材31を、タンク4に取り付ける。まずサイホン管311をスパウト21の内側に装入し、その後に押さえ部材31をスパウト21の上面に被せる。そしてカバーナット32を押さえ部材31の上に被せ、内ネジ321(
図5にて説明)とスパウト受け土台41の外ネジ411により螺合し、レンチでレンチ作用部322を回転させて締め付ける。カバーナット32とスパウト受け土台41との締め付け圧力により、押部323に押された押さえ部材31のフランジ部314が、スパウト21の第1リング211を押圧する。第1リング211はある程度の厚みと柔軟性を有するため、締め付け圧力により変形してスパウト受け土台41の外部受け面とOリング313に密着する。第1リング211に加えOリング313があることで気密性はさらに高まり、高い圧力にも耐える気密性を保持した気密容器1が実現する。その後は、押さえ部材31の上部に、サイホン管311と加圧ガス注入口312に接続するホース等を取り付ける。
なお、上述のように内容物を充填してから押さえ部材31をタンク4に取り付けるのではなく、押さえ部材31をタンク4に取り付けてから、加圧ガス注入口312等を介して内容物を充填してもよい。
組付けた気密容器1を消火装置として使用する場合、加圧ガス注入口312から加圧ガスを注入し、各種の消火剤等の内容物をサイホン管311に流入させ、押さえ部材31を通して内容物を外部へ圧出する。
【0026】
スパウト押さえは単一部材でも良いが、本実施形態のスパウト押さえ3は押さえ部材31とカバーナット32の二つの部品に分離しているため、蓋部の螺合時にカバーナット32だけが回転し、押さえ部材31は回転しにくい。そのため、スパウト21に回転方向の力がかかりにくく、回転によって第1リング211の上面に損傷が発生しにくい。また、サイホン管311や加圧ガス注入口312にホース等を接続した状態でスパウト押さえ3を取り付けても、押さえ部材31が回転しないためにホースにねじれが生じにくい。さらに、内部容器2の中でサイホン管311が回転して袋22を巻き込むのを回避できる。押さえ部材31は任意の向きに固定できるため、加圧ガス注入口312に外部の部品を接続して消火装置等を構成する際に、加圧ガス注入口312を適切な位置に容易に配置できる。
また、カバーナット32と分離しているため押さえ部材31はコンパクトになり、サイホン管311の取り回しが容易になる。
【0027】
図4は本発明の一実施形態における組み付け後の気密容器1の断面図である。
カバーナット32はスパウト受け土台41と螺合して接続している。押さえ部材31は、スパウト21の上に載置され、カバーナット32の螺合によりスパウト受け土台41の方向に押し付けられている。スパウト21はスパウト受け土台41の上部、内面、下部に沿ってはまっており、スパウト受け土台41が内容物と接触しないように保護し、腐蝕等を防止している。スパウト21には柔軟性があって厚さがあるため、内容物の充填の際にノズル等を差し込んでも、破損しづらい。
【0028】
押さえ部材31は、スパウト21の
図2に示した第1リング211を上面から押さえつけている。また、本実施形態ではタンク4内面の丸みを帯びた下端から内容物を取り込むため、押さえ部材31に取り付けたサイホン管311はタンク4の中心を縦に通っている。カバーナット32の内側の開口では押さえ部材31の上面が露出し、サイホン管311や加圧ガス注入口312にホース等が取り付けできるようになっている。カバーナット32は押さえ部材31の脱落を防ぐと同時に、押さえ部材31を押圧する加圧部材として機能し、第1リング211による気密容器1の密閉性を確保している。
【0029】
図4は、装入した袋22に内容物が充填されていない状態の気密容器1であり、袋22とタンク4内面の間に隙間を有している。内容物の充填や加圧ガスの注入により袋22は拡がり、タンク4の内面に押着され、またこのとき袋22の余分なフィルムは重なる。内容物の充填時には、タンク4と袋22の隙間に空気が残留するが、タンク4内面は腐蝕しない。タンク4の内側は全体が気密になっているため、外部物質による腐蝕から守られている上、袋22に気密性やバリア性があるため、内容物による腐蝕も起こらない。
【0030】
本発明の気密容器1には、二重の気密空間が内包されている。一つは、内部容器2の気密空間であり、もう一つは内部容器2を内部に有する気密容器1の気密空間である。内部容器2の気密空間は袋22、スパウト21、押さえ部材31に囲まれた部分であり、耐腐蝕性があり、気密性・密閉性により、内部容器2の外のタンク4内や気密容器1外部に内容物が漏れない。また、耐圧性のあるタンク4に囲まれているため、柔軟な内部容器2を破損させずに内圧を高めることができる。
【0031】
気密容器1の気密空間は、タンク4、第1リング211、押さえ部材31に囲まれた部分であり、気密性・密閉性により外部との物質の出入りがなく、耐圧性を備える。タンク4、押さえ部材31のそれぞれには耐圧性があり、しかも押さえ部材31が第1リング211を挟んでタンク4のスパウト受け土台41に押し付けられシールされているため圧力が逃げない。なお、内部容器2の気密空間も、気密容器1の気密空間も、ともに第1リング211が押圧されることによって密閉されている。
【0032】
図5は本発明の一実施形態における組み付け後の気密容器1のスパウト21部分を拡大した断面図であり、
図4の上部を拡大したものである。
図5には、内部容器2であるスパウト21と袋22のほか、タンク4と、その口部であるスパウト受け土台41、及びスパウト押さえ3を構成する押さえ部材31とカバーナット32が示されている。気密容器1は、カバーナット32の内周の下部に設けられた内ネジ321とスパウト受け土台41の外周上部の外ネジ411との螺合により、フランジ部314、第1リング211が挟み込まれて押圧されることにより密封されている。
【0033】
組み付け後の気密容器1では、第1リング211は、スパウト受け土台41の外部受け面に乗っている。第1リング211は、スパウト押さえ3を取り付けていない状態では内部容器2の落下止めの役割を果たしている。内部容器2取り付けの際や内容物の充填によりスパウト21が下方に引かれた際に、スパウト21がはずれないように第1リング211で支える。また、蓋部を取り付けた状態では、第1リング211は
図5のようにスパウト受け土台41と押さえ部材31に挟まれて圧縮され、シール材として機能する。第1リング211は押圧されることにより、スパウト受け土台41の外部受け面や押さえ部材31のフランジ部314下部の押さえ面との隙間を埋めて密着し、タンク4の内部と内部容器2を密閉することができる。
【0034】
スパウト21の胴体213は、スパウト受け土台41の円柱状の内面を覆うように配設されており、内部容器2内の圧力が高くなった際には膨張し、スパウト受け土台41の内面に密着する。胴体213は柔軟性を有しており膨張するので、割れや孔などが生じない。本実施形態では、胴体213は、膨張のための柔軟性を確保するために第1リング211よりも薄く形成される。
【0035】
押さえ部材31は、下面が直接内容物に触れるため耐腐蝕性のステンレス等により製造する。一方、タンク4は内容物に触れることがないため、耐腐蝕性のステンレス等で製造する必要がなく、通常の鉄製でよい。押さえ部材31は、肉厚部315を有しているため耐圧性が高い。かつ、肉厚部315の外径と、第1リング211及び胴体213の内径との差は僅かであるため、肉厚部315がスパウト21の第1リング211及び胴体213の内側に挿入された際に押さえ部材31が揺動せず安定する。サイホン管311と加圧ガス注入口312は、
図4に記載するように押さえ部材31においてスパウト21の開口の内側に位置する。
【0036】
内容物を取り出した後には、内部容器2は容易に取り外して交換できる。まずカバーナット32によるネジ止めを外して、押さえ部材31を外し、次にスパウト21の胴体213、第2リング214を引き出す。このとき、第1リング211の外側を部分的に持ち上げるようにして胴体213と共に変形させ、スパウト21を引き出すようにすれば、作業者は内容物にほとんど触れずに内部容器2を引き出すことが可能である。第1リング211はある程度は変形しにくいが、力を加えれば変形する。その後、タンク4内を洗浄することなく新たな内部容器2を装入して、タンク4を再利用できる。また交換の際、内部容器2の内部に内容物が多少残留していても、他の器材を汚さずに取り出して廃棄できる。
【0037】
本発明によれば、第1リング211がリング形状を保ったままスパウト受け土台41の外部受け面に乗るため、組み付けや取り外しの際にも内部容器2がタンク4内に落下することがない。さらに内容物を出した後に、タンク4からスパウト21を持って引き抜くことで、使用済みの内部容器2を取り外すことができ、新しい内部容器2に容易に交換することができる。このときタンク4の内面を洗浄する必要がない。また、内部容器2と気密容器1の二重の気密空間となっているため、内容物を十分に気密に密閉できるとともに、耐圧性のタンク4に囲まれているため、内部容器2を内側から加圧しても内部容器2が破損しない。また、タンク4内面が内容物にも外部物質にも触れないため腐蝕しない。
【0038】
<変形例>
【0039】
スパウトには第2リング214がなくてもよい。スパウトは一体成形であることが好ましいが、強固に接続されれば胴体とリング等、パーツを接着等により一体化したものでも良い。袋とスパウトの一体成型等により内部容器を製造する場合には、第2リング214がない。袋へスパウトを接合する場合は実施形態のヒートシールに限らず、接着剤を用いるなど他の接合方法でもよい。スパウトは保存容器の内部形状や袋の形状により適切な位置で袋に取り付けることができ、取り付け位置は
図1のような位置でなくてもよい。超高圧のタンク等に用いる場合には、スパウトを銅等により形成してもよい。金属であっても銅等は柔軟性を有し、内容物によっては耐腐蝕性を有する。また、タンク4の空気抜きは必要に応じて設ければ良く、なくても良い。
本願の実施形態において、スパウト21の第1リング211を胴体213と第2リング214よりも厚手のものとして、胴体213と第2リング214では膨張し易く、第1リング211ではシーリング性能を高くした。しかし、第1リングと胴体を1mm、第2リングを0.5mmというように、第2リングだけ薄くしてスパウト受け土台41と第2リングとの密着性を高めてもよい。さらに、第1リングと第2リングを1mm、胴体を0.5mmとしたり、第1リングを1mm、胴体を0.5mm、第2リングを1.5mmとしたりするように、スパウト受け土台41と胴体の密着性を高めてもよい。第1リングと胴体を1mm、第2リングを1.5mmというようにしてもよい。第2リングがない場合も含めて、第1リングの厚さは胴体の厚さ以上であることが好ましい。しかし、タンク等の形状や圧力等によっては、第1リングの厚さを胴体の厚さより薄くすることもありうる。
【0040】
気密容器を貯蔵のみの用途で使用する場合は、スパウト押さえには、サイホン管311、加圧ガス注入口312がない蓋としてもよく、蓋である押さえ部材に内容物の出し入れ口を付けてもよい。スパウト押さえは、押さえ部材31とカバーナット32に分かれておらず、一体であってもよい。この場合、スパウト押さえの取り付け・取り外しは簡略化され容易になる。
【0041】
スパウト21の着脱を簡便に行うために、タンク4に閉鎖可能な開口を設けてもよい。開口から空気が出入りすることにより、袋22が着脱し易くなる。開口を十分な大きさとすれば、手などを挿入して袋22の形状を整えることもできる。また、第2のスパウト受け土台の開口を設け、第2のスパウト受け土台41に対応して内部容器2に第2のスパウト21を設けてもよい。スパウト受け土台41はタンク4の上方に加えて下方にあっても良いし、下方だけにあっても良い。スパウト受け土台41とスパウト21をタンク4の下方に設けた場合、内容物を自重により取り出すことができる。スパウト受け土台41とスパウト21は3つ以上でも良く、一つのタンク4の中にスパウト21を有した内部容器2を複数設置しても良い。
Oリング313は柔軟性のある樹脂やゴムによる緩衝材であるが、金属等によって製作してもよい。
図5にはドーナツ状の細いリングとして示しているが、平板状のリング等でもよい。また、Oリング313とOリング313取り付け用の溝を省略し、押さえ部材のみの構造としてもよい。このとき押さえ部材のスパウト21との接触面に凸部を設けて面圧を大きくし、シール性を向上させてもよいし、同様に第1リング211の押さえ部材との接触面に凸部を設けて面圧を大きくして、シール性を向上してもよい。
【0042】
スパウト押さえは、使用圧力に対する耐圧性と、内容物に対する耐腐食性を有していれば、素材はステンレス等の耐腐蝕性金属に限らず、樹脂やセラミックス、木材等でも良い。
またスパウト押さえは、螺合による押圧ではなく、カムロック式による押圧でもよい。この場合、実施形態のスパウト押さえ3に相当するカムロック式のスパウト押さえにより、第1リングを上から押圧して密閉する。これにより実施形態と同様に、気密容器内に、スパウト押さえ、第1リング、内部容器の気密空間と、スパウト押さえ、第1リング、タンクの気密空間の二重の気密空間を作ることができる。カムロック式ではスパウト押さえを全く回転させずに容器を密閉することができる。
またスパウト押さえによる蓋としては、クラウンキャップ式による軽程度の押圧でもよいし、スナップフィット等スパウト21にあまり圧力をかけない方式で容器を密閉してもよい。これらの場合は、食品の輸送や保存等の耐圧性の必要が無い用途で気密性を確保できる。
【0043】
外部の保存容器は実施形態のタンク4のような耐圧容器でなくてもよいし、気密性がなくてもよいが、金属製容器や硬質樹脂製容器のように形状を保てる容器であることが好ましい。典型的には鉄製のタンクのほかにドラム缶や一斗缶、ポリタンクなどが考えられる。ドラム缶等の既存の保管用容器を用いる場合は、口金に合わせた形状のスパウトを使用してもよいし、口金に取り付け可能な形状のスパウト受け土台を使用してもよい。酸や溶剤、ペンキ、粉粒体などを長期間保管する際は、容器には耐圧性よりも耐腐蝕性が求められるが、本発明で非耐圧の気密容器を使用した場合でも、二重の気密空間により高い密閉性を備えているため、外部の容器の内面が保護され、腐蝕しない。またこの場合でも洗浄に変えて内部容器を交換することが可能である。
【0044】
本発明で外部の容器に気密性の容器を使用しない場合は、気密空間は内部容器内のみとなる。外部の容器が気密容器でなくても内部容器の高い密閉性により、内容物の劣化や漏れ出し、外部物質の侵入を防ぐことができ、内部容器の交換も容易である。この場合、外部の容器としては、例えば籠状の容器等を使用することができる。
【0045】
袋22をタンク4に挿入した後、内容物を充填する前に、押さえ部材31をタンク4に取り付けてから加圧ガス注入口312等を介して加圧ガスを注入し、袋22を予め膨らませてタンク4内部を覆ってから内容物を充填してもよい。この場合、内容物の荷重による力が袋22にかかりにくく、またタンク4内部に袋22が上部まで密着した状態で充填が行われるため、内容物の充填容量を最大化できる。
また、加圧ガス注入口をスパウト押さえ3ではなく袋22を覆うタンク部分に設け、内容物の圧出の際にはタンクと袋22の間を加圧して袋22を圧縮するようにしてもよい。
このとき、サイホン管311は無くてもよく、また袋22が内容物とともに圧出されないようにサイホン管311の代わりに枠状や網状の構造物を備えてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 気密容器、2 内部容器、21 スパウト、211 第1リング、212 第1開口端、213 胴体、214 第2リング、215 第2開口端、22 袋、221 開口部、3 スパウト押さえ、31 押さえ部材、311 サイホン管、312 加圧ガス注入口、313 Oリング、314 フランジ部、315 肉厚部、32 カバーナット、321 内ネジ、322 レンチ作用部、323 押部、4 タンク、41 スパウト受け土台、411 外ネジ