(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】合金構造用鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240227BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240227BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/14
C21D8/02 B
(21)【出願番号】P 2022519356
(86)(22)【出願日】2020-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2020118043
(87)【国際公開番号】W WO2021057954
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】201910920640.7
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 宏光
(72)【発明者】
【氏名】柳 向椿
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲俊▼江
(72)【発明者】
【氏名】▲挑▼ 瑞▲銀▼
(72)【発明者】
【氏名】万 根▲節▼
(72)【発明者】
【氏名】夏 ▲楊▼青
(72)【発明者】
【氏名】孟 ▲慶▼玉
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012855(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059701(WO,A1)
【文献】特開2014-208876(JP,A)
【文献】特開2001-288531(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057390(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0065166(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106834931(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/14
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学元素の質量百分率が、C:0.35~0.45質量%、Si:0.27~0.35質量%、Mn:0.6~0.8質量%、Al:0.015~0.05質量%、V:0.06~0.1質量%、Zr:0.2~1.0質量%、Mg:0.001~0.005質量%、P:0.025質量%以下、S:0.015質量%以下、N:0.005質量%以下、O:0.001質量%以下、Fe及びその他の不可避的不純物:残部である、ことを特徴とする合金構造用鋼
板。
【請求項2】
Ce、Hf、La、Re、Sc、及びYの化学元素の少なくとも1つをさらに有し、これらの元素の総添加量が1%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の合金構造用鋼
板。
【請求項3】
前記化学元素の質量百分率が以下の少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の合金構造用鋼
板。
V:0.08~0.1質量%、
Zr:0.3~0.7質量%、
Mg:0.001~0.003質量%。
【請求項4】
前記化学元素の質量百分率の比が、以下の少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の合金構造用鋼
板。
Zr/N=40~200、
Zr/V=2~16.7、
Zr/C=0.4~2.8。
【請求項5】
前記化学元素の質量百分率の比が、また、以下の少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の合金構造用鋼
板。
Mg/O=0.5~3、
Mg/S=0.6~5.0。
【請求項6】
前記合金構造用鋼の微細組織のマトリックスがフェライト+パーライトであり、前記合金構造用鋼はZrC、ZrN、MgO、MgS粒子を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の合金構造用鋼
板。
【請求項7】
前記ZrC粒子と前記ZrN粒子の直径が0.2μm~7μmであり、前記ZrC粒子と前記ZrN粒子の合計数が3~15個/mm
2である、ことを特徴とする請求項6に記載の合金構造用鋼
板。
【請求項8】
前記MgO粒子と前記MgS粒子の直径が0.2μm~7μmであり、前記MgO粒子と前記MgS粒子の合計数が5~20個/mm
2である、ことを特徴とする請求項6に記載の合金構造用鋼
板。
【請求項9】
前記ZrC、ZrN、MgO、MgS粒子の直径が0.2μm~7μmである、ことを特徴とする請求項6に記載の合金構造用鋼
板。
【請求項10】
降伏強さが755MPa以上、引張強さが900MPa以上、伸び率が12%以上、衝撃靭性が100J以上である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の合金構造用鋼
板。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の合金構造用鋼
板の製造方法であって、
製錬、精錬及び鋳造のステップ(1)と、
分塊圧延のステップ(2)と、
二次熱延のステップ(3)と、
熱処理:焼入れ+焼戻しのステップ(4)と、を含み、
分塊圧延の加熱温度が1150~1250℃であり、二次熱延の加熱温度が1150~1250℃であり、
熱処理において、焼入れ加熱温度を855~890℃、焼入れ冷却速度を50~90℃/sに制御し、焼戻し加熱温度を645~670℃、焼戻し冷却速度を50~90℃/sに制御する、
ことを特徴とする合金構造用鋼
板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼種及びその製造方法に関し、特に合金構造用鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
40CrVは、機関車のコンロッド、クランクシャフト、プッシュロッド、プロペラ、クロスメンバ、軸スリーブのブラケット、双頭スタッド、ねじ、非浸炭製歯車、窒化処理された各種の歯車やピン、高圧ボイラーの水ポンプ軸(直径30mm未満)、高圧シリンダ、鋼管及びボルト(その動作温度は420℃未満、強度は30MPa)など、可変荷重且つ高荷重の各種の重要な部品の製造に使用することができる。
【0003】
合金構造用鋼の規格(GB/T 3077-2015)に従って、既存の40CrVの成分の範囲は、C 0.37~0.44wt%、Si 0.17~0.37wt%、Mn 0.5~0.8wt%、S 0.015wt%以下、P 0.025wt%以下、Cr 0.8~1.1wt%、V 0.1~0.2wt%、Al 0.015wt以上である。この鋼種の機械的特性は以下の通りである。降伏強度(Rel)が735MPa以上、引張強さ(Rm)が885MPa以上、伸び率が10%以上、硬度が241HB以上、衝撃靭性が71J以上である。
【0004】
技術の発展に伴い、この鋼種の機械的特性は現在の実際の適用や製造の要件を完全に満たすことができず、これに基づき、実際の適用の要件を満たすために、機械的特性がより高く、衝撃靭性がより良く、コストがより合理的である合金構造用鋼が期待される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的の1つは、合金元素を微量で添加するように設計されており、Zr、Mgを適量で添加することで、総酸素量を低く制御し、添加される微量の合金元素の特徴を利用して、この合金構造用鋼の強度及び靭性をさらに高めることにより、この合金構造用鋼に高強度を付与し、且つ材料コストが低い合金構造用鋼を提供することである。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、化学元素の質量百分率が、
C:0.35~0.45質量%、Si:0.27~0.35質量%、Mn:0.6~0.8質量%、Al:0.015~0.05質量%、V:0.06~0.1質量%、Zr:0.2~1.0質量%、Mg:0.001~0.005質量%、P:0.025質量%以下、S:0.015質量%以下、N:0.005質量%以下、O:0.001質量%以下、Fe及びその他の不可避的不純物:残部である合金構造用鋼を提案している。
【0007】
本発明の前記合金構造用鋼において、各化学元素の設計原理は以下の通りである。
【0008】
C:本発明の前記合金構造用鋼において、Cは主に炭化物の析出量や析出温度範囲に影響を与える。Cの質量百分率を低く制御することは、本発明の前記合金構造用鋼の機械的特性を改善するのに有利である。さらに、Cは一定の強化効果があり、ただし、Cの質量百分率が高すぎると材料の耐食性が低下する。製錬設備の生産能力を考慮し、材料の機械的特性と衝撃靭性を両立させるために、本発明の前記合金構造用鋼では、Cの質量百分率は0.35~0.45%に制御される。
【0009】
Si:鋼中では、Siは鋼の強度を高めることができるが、鋼の成形性や靭性には不利である。さらに、Siは製錬中に残留することが多いので、Siの含有量を適切に選択することが重要である。これに基づいて、本発明の前記合金構造用鋼では、Siの質量百分率は0.27~0.35%に制御される。
【0010】
Mn:Mnは弱いオーステナイト元素であり、合金構造用鋼中の硫黄の有害な作用を抑制し、熱可塑性を改善することができる。しかし、Mnの質量百分率が高すぎると、耐食性を確保するのに不利である。製錬中にMnがよく残留することを考慮し、従って、本発明の前記技術的解決手段では、Mnの質量百分率は0.6~0.8%に制御される。
【0011】
Al:本発明の前記合金構造用鋼において、Alは、主として、鋼中の酸素含有量を制御して転位挙動に影響を与えることで合金を強化する。Alの総量を増加させると溶体化温度、機械的特性を明らかに向上させることができるが、塑性が損なわれる。さらに、Alを添加することは、鋼の伸び変形性に有利であり、鋼の加工性を改善する。Alの含有量が高すぎると鋼の衝撃靭性が低下する。これに基づいて、本発明の前記合金構造用鋼では、Alの質量百分率は0.015~0.05%に制御される。
【0012】
V:本発明の前記技術的解決手段において、Vは炭素、酸素と非常に強い親和性を有し、対応する安定な化合物を形成することができる。Vは主に炭化物の形で鋼中に存在し、鋼の組織と結晶粒を微細化し、鋼の強度と靭性を低下させる役割を主に果たす。Vは、高温で固溶体に溶かすと、焼入れ性を増加させ、逆の場合は、炭化物の形で存在する場合、焼入れ性を低下させる。さらに、Vは焼入れ鋼の焼戻し安定性を高め、二次硬化効果をもたらすことができる。合金構造鋼では、バナジウムは一般的な熱処理条件では焼入れ性を低下させるため、合金構造鋼ではマンガン、クロム元素と併用されることが多い。調質鋼では、バナジウムは主に鋼の強度と降伏比を高め、結晶粒を微細化し、過熱感受性を減少させるものである。これに基づいて、本発明の前記合金構造用鋼では、Vの質量百分率は0.06~0.1%に制御される。
【0013】
Zr:本発明の前記合金構造用鋼において、Zrは強炭化物を形成する元素であり、鋼においてニオブ、タンタル、バナジウムと類似している役割を果たす。少量のZrを添加すると、脱ガス、清浄化、結晶粒微細化の役割を果たすことができ、鋼の低温特性に有利であり、打抜き性を向上させる。且つ、少量のZrを添加すると、Zrの一部が鋼中に固溶し、適量のZrC、ZrNが形成され、結晶粒の微細化に有利であり、打抜き性を向上させる。これに基づいて、本発明の前記合金構造用鋼では、Zrの質量百分率は0.2~1.0%に制御される。
【0014】
Mg:Mgは非常に活発な金属元素であり、O、N、Sのいずれとも強い親和性を有する。このため、Mgは、鉄鋼の製錬中に良好な脱酸・脱硫剤として機能し、また鋳鉄にとって良好な球状化剤でもある。しかし、Mgは鋳鉄のマトリックスには溶解しにくく、化合物MgS、MgO、Mg3N2、Mg2Siの状態で存在する。さらに、Mg及びCは、MgC2、Mg2C3のような一連の化合物を形成することもできる。これに基づいて、本発明の前記合金構造用鋼では、Mgの質量百分率は0.001~0.005%に制御される。
【0015】
P及びS:これらはいずれも本願の合金構造用鋼の機械的特性と加工性能に深刻な影響を与え、その質量百分率を厳格に制御しなければならないので、P:0.025%以下、S:0.015%以下とする。
【0016】
N:Nは安定なオーステナイト元素である。Nの質量百分率を低く制御することは、本発明の合金構造用鋼の衝撃靭性を改善するのに有利である。さらに、窒素の質量百分率が高くなると、鋼の靭性や延性が低下し、熱間加工性も低下する。これに基づいて、本発明の合金構造用鋼では、Nの質量百分率はN:0.005%以下に制御される。
【0017】
O:本発明の合金構造用鋼において、Oは主として酸化物介在物として存在し、総酸素含有量が高いと、介在物が多いことを示す。総酸素含有量を低下させることは、材料の総合性能を高めるのに有利である。材料の良好な機械的特性及び耐食性を確保するために、本発明の技術的解決手段では、Oの質量百分率はO:0.001%以下に制御される。
【0018】
さらに、本発明の前記合金構造用鋼において、Ce、Hf、La、Re、Sc、及びYの化学元素の少なくとも1つをさらに有し、これらの元素の総添加量は1%以下である。
【0019】
本発明の技術的解決手段では、好ましくは、鋼中の酸素、硫黄元素を結合し、希土類酸化物及び硫化物を形成し、溶鋼を清浄化し、介在物のサイズを減少させるために、少量の上記希土類元素を添加することができる。そして、形成された希土類酸化物及び硫化物は凝固過程の核形成粒子として、初期凝固結晶粒を微細化することができ、鋼材の性能を改善するのにも寄与する。
【0020】
さらに、本発明の前記合金構造用鋼において、各元素の質量百分率が、以下の少なくとも1つを満たす。
V:0.08~0.1質量%、
Zr:0.3~0.質量7%、
Mg:0.001~0.003質量%。
【0021】
さらに、本発明の合金構造用鋼において、各元素の質量百分率の比が、以下の少なくとも1つを満たす。
Zr/N=40~200、
Zr/V=2~16.7、
Zr/C=0.4~2.8。
【0022】
上述の態様では、N、V、Cに対するZrの質量百分率を制御することによって、ZrC、ZrNの形成量を制御することに有利であり、ZrC、ZrNの形成は結晶粒を微細化し、鋼の機械的特性及び打抜き性を改善する役割を果たすことができ、また、鋼中のNの一部を固化し、固溶したNの質量百分率を減らす役割も果たす。
【0023】
さらに、本発明の合金構造用鋼において、各元素の質量百分率の比が、以下の少なくとも1つも満たす。
Mg/O=0.5~3、
Mg/S=0.6~5.0。
【0024】
上記の態様では、O、Sに対するMgの質量百分率を制御することは、冷却凝固過程において合金内のMgOとMgSの形成量に有利であり、MgSとMgOの形成は結晶粒を更に微細化し、オーステナイト結晶粒を安定化させる役割を果たす一方、合金中のO、Sが結晶粒界に与える危害を減らすこともできることにより、本願の合金構造鋼の衝撃靭性を改善する。
【0025】
さらに、本発明の前記合金構造用鋼において、微細組織のマトリックスが、フェライト+パーライトであり、ZrC、ZrN、MgO、MgS粒子を有する。
【0026】
上記ZrC、ZrN、MgO、MgS粒子とは、ZrC、ZrN、MgO、MgSが合金構造用鋼中に微粒子の形で存在することを意味する。上記粒子は、連続鋳造の冷却凝固過程や熱延過程において、オーステナイト結晶粒子径をさらに微細化して安定化させることができることにより、ビレットや最終製品の表面に欠陥が形成されることを回避するとともに、製品の機械的特性を向上させることができる。
【0027】
さらに、本発明の前記合金構造用鋼において、ZrCとZrN粒子の合計数が3~15個/mm2である。
【0028】
上記の態様では、本願の発明者は、ZrC、ZrN粒子の合計数を3~15個/mm2に制御することにより、結晶粒を微細化し、鋼の機械的特性及び打抜き性を改善し、及び鋼中のNの一部を固化し、固溶したNの質量百分率を減少させることに対して、より良い効果が得られることを発見した。
【0029】
さらに、本発明の合金構造用鋼において、MgOとMgS粒子の合計数が5~20個/mm2である。
【0030】
上記の態様では、本願の発明者は、MgOとMgS粒子の合計数を5~20個/mm2に制御することにより、結晶粒をさらに微細化し、オーステナイト結晶粒を安定化させ、及び合金中のO、Sによる結晶粒界への危害を減少させ、それによって本願の合金構造鋼の衝撃靭性を改善することに対して、より良い効果が得られることを発見した。
【0031】
さらに、本発明の合金構造用鋼において、ZrC、ZrN、MgO、MgS粒子の直径が0.2μm~7μmである。
【0032】
さらに、本発明の合金構造用鋼において、降伏強さが755MPa以上、引張強さが900MPa以上、伸び率が12%以上、衝撃靭性が100J以上である。
【0033】
従って、本発明の別の目的は、機械的特性がより高く、衝撃靭性がより良く、コストがより合理的である合金構造用鋼を得ることができる、上記合金構造用鋼の製造方法を提供することである。
【0034】
上記目的を達成するために、本発明は、上記合金構造用鋼の製造方法であって、
製錬、精錬及び鋳造のステップ(1)と、
分塊圧延のステップ(2)と、
二次熱延のステップ(3)と、
熱処理:焼入れ+焼戻しのステップ(4)と、を含む製造方法を提案している。
【0035】
なお、本発明の製造方法では、ステップ(1)において、電気炉精錬、LF及びVD(又はRH)精錬を用いてもよく、且つVD(又はRH)精錬の末期に、少量の鉄ジルコニウム、マグネシウムアルミニウム合金を順次添加し、鋼中の各化学元素の質量百分率が本願で限定された範囲を満たすと、アルゴンガスを吹き込むソフト撹拌を行い、アルゴンガスの流量を5~8L/minに制御してもよい。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップ(1)において、鋳造は、ブルーム連続鋳造を用い、鋳造速度を0.45~0.65m/minに制御し、モールドフラックスを用い、電流500A、周波数2.5~3.5Hzの結晶器により電磁撹拌し、連続鋳造後のブルームの等軸晶率を20%以上とするようにしてもよい。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップ(2)において、分塊圧延に先立ってビレットを前処理してもよく、例えば、ビレットに対して表面仕上げ、研削を行ってもよく、目に見える表面欠陥を除去し、良好な表面品質を確保する。
【0038】
さらに、本発明の前記製造方法において、ステップ(2)及びステップ(3)では、分塊圧延の加熱温度は1150~1250℃、二次熱延の加熱温度は1150~1250℃である。
【0039】
さらに、本発明の前記製造方法において、ステップ(4)では、焼入れ加熱温度を855~890℃、焼入れ冷却速度を50~90℃/sに制御し、焼戻し加熱温度を645~670℃、焼戻し冷却速度を50~90℃/sに制御する。
【0040】
なお、ステップ(4)において、焼入れに用いられる冷却剤は鉱油であってもよく、焼戻しに用いられる冷却剤は鉱油又は水であってもよい。
【0041】
本発明の前記合金構造用鋼及びその製造方法は、従来技術と比較して、以下のような利点及び有益な効果を有する。
【0042】
本発明の前記合金構造用鋼は、合金元素を微量で添加するように設計されており、Zr、Mgを適量で添加することで、総酸素量を低く制御し、添加される微量の合金元素の特徴を利用して、この合金構造用鋼の強度及び靭性をさらに高めることにより、この合金構造用鋼に高強度を付与し、且つ材料コストが低い。
【0043】
さらに、本発明の前記製造方法によって、機械的特性が極めて高く、衝撃靭性に優れ、製造コストが低い合金構造用鋼を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明の前記合金構造用鋼及びその製造方法をさらに解釈及び説明するが、この解釈及び説明は本発明の技術的解決手段を不適に限定するものではない。
【0045】
実施例1~6及び比較例1~3
実施例1~6の合金構造用鋼は、以下のステップを用いて製造される。
(1)電気炉を用いて、製錬、LF精錬、及び鋳造を行う。
(2)分塊圧延:その加熱温度は1150~1250℃である。
(3)二次熱延:その加熱温度は1150~1250℃である。
(4)熱処理:焼入れ+焼戻し、ここで、焼入れ加熱温度を855~890℃、焼入れ冷却速度を50~90℃/sに制御し、冷却剤として鉱油を用い、焼戻し加熱温度を645~670℃、焼戻し冷却速度を50~90℃/sに制御し、冷却剤として鉱油又は水を用いる。
【0046】
なお、他のいくつかの実施形態では、精錬はRH精錬を採用してもよく、且つVD(又はRH)精錬の末期に、少量の鉄ジルコニウム、及びアルミニウムマグネシウム合金を順次添加し、鋼中の各化学元素の質量百分率が本願に限定された範囲を満たすと、アルゴンガスを吹き込むソフト撹拌を行い、アルゴンガスの流量を5~8L/minに制御してもよい。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップ(1)において、鋳造は、ブルーム連続鋳造を用い、鋳造速度を0.45~0.65m/minに制御し、モールドフラックスを用い、電流500A、周波数2.5~3.5Hzの結晶器により電磁撹拌し、連続鋳造後のブルームの等軸晶率を20%以上とするようにしてもよい。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップ(2)において、分塊圧延に先立ってビレットを前処理してもよく、例えば、ビレットに対して表面仕上げ、研削を行ってもよく、目に見える表面欠陥を除去し、良好な表面品質を確保する。
【0049】
比較例1~3は従来技術の成分及び製造プロセスを用いて得られた。
【0050】
表1に、実施例1~6の合金構造用鋼及び比較例1~3の従来の構造用鋼の各化学元素の質量百分率を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0051】
表2に、得られた実施例1~6の合金構造用鋼及び比較例1~3の従来の構造用鋼における微細組織の状況を示す。
【表2】
【0052】
表3に、実施例1~6の合金構造用鋼及び比較例1~3の従来の合金構造用鋼の具体的なプロセスパラメータを示す。
【表3】
【0053】
本願の実施効果を検証するとともに、従来技術に対する本願の優れた効果を証明するために、実施例1~6の合金構造用鋼及び比較例1~3の従来の構造用鋼に対して力学テストを行った。テストには厚さ25mmの鋼材を用いた。
【0054】
本発明の引張試験(降伏強さRel、引張強さRM、伸び率試験)には、Zwick/roell Z330引張試験機を用いてテストを行い、試験標準は国家標準GB/T 228.1-2010に準じた。そのうち、降伏強さRel、引張強さRM、伸び率のテストは、それぞれ国家標準のうち3.10.1、3.10.2、及び3.6.1で定義された標準に従って行った。
【0055】
衝撃靭性はZwick/Roell PSW 750衝撃試験機を用いてテストを行い、試験標準は国家標準GB/T 229-2007に準じており、合金構造用鋼がシャルピー衝撃試験において吸収したエネルギーを測定することによって、衝撃靭性の数値を取得した。
【0056】
ZrCとZrN粒子の数、MgOとMgS粒子の数、ZrC、ZrN、MgO、MgS粒子の直径の統計及び測定方法は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行い、走査型電子顕微鏡は、型番がツァイス社製走査型電子顕微鏡EVO 18であり、また、オックスフォードスペクトロメータoxford X-max 20と組み合わせて使用され、測定標準はGB/T 30834-2014に従って行った。
【0057】
表4は、様々な実施例及び比較例のテスト結果を示す。
【表4】
【0058】
表2と表4を参照すると、本発明の各実施例の合金構造用鋼は、その微細組織がフェライト+パーライトであり、ZrC、ZrN、MgO、MgS粒子を有し、これらの粒子がオーステナイト結晶粒を微細化し安定化させる役割を果たし、材料の機械的特性の向上に有利であるため、本発明の各実施例の合金構造用鋼は、従来技術による比較例1~3の従来の構造用鋼よりも機械的特性が良好であり、各実施例の合金構造用鋼は、降伏強度が755MPa以上、引張強度が900MPa以上、伸び率が12%以上、衝撃靭性が100J以上であることが分かる。
【0059】
以上のように、本発明の前記合金構造用鋼は、合金元素を微量で添加するように設計されており、Zr、Mgを適量で添加することで、総酸素量を低く制御し、添加される微量の合金元素の特徴を利用して、この合金構造用鋼の強度及び靭性をさらに高めることにより、この合金構造用鋼に高強度を付与し、且つ材料コストが低い。
【0060】
さらに、本発明の前記製造方法によって、機械的特性が極めて高く、衝撃靭性に優れ、製造コストが低い合金構造用鋼を得ることができる。
【0061】
なお、本発明の保護範囲における従来技術の部分は、本出願の書類に示された実施例に限定されるものではなく、先行特許文献、先行公開刊行物、先行公開使用等を含むが、これらに限定されない、本発明の解決手段と矛盾しないすべての先行技術は、本発明の保護範囲に含まれ得る。
【0062】
さらに、本願における各技術的特徴の組み合わせの形態は、本願の請求項に記載された組み合わせの形態又は具体的な実施例に記載された組み合わせの形態に限定されるものではなく、本願に記載されたすべての技術的特徴は、相互に矛盾が生じない限り、任意の方式で自由に組み合わせたり、結合したりすることができる。
【0063】
なお、以上に挙げた実施例は、本発明の具体的な実施例にすぎない。明らかに、本発明は以上の実施例に限定されず、それに基づいて行われる同様の変化又は変形は、当業者が本発明に開示された内容から直接導き出すか、又は容易に想到することができるものであり、いずれも本発明の保護範囲に属すべきである。