IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 仙楽健康科技股▲フン▼有限公司の特許一覧

特許7443521ソフトカプセルのカプセルシェルおよびソフトカプセル
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ソフトカプセルのカプセルシェルおよびソフトカプセル
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240227BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240227BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20240227BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A23L29/231
A23L29/238
A23L29/244
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/30
A23L33/10
A23L33/125
A61K9/48
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/36
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022532719
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2021142079
(87)【国際公開番号】W WO2023273254
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】202110721182.1
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522072334
【氏名又は名称】仙楽健康科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李緒発
(72)【発明者】
【氏名】陳潔偉
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208668(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104721167(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112494453(CN,A)
【文献】国際公開第2009/123257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2wt%~5wt%の第1のゲル化剤、10wt%~35wt%の可塑剤、18wt%~35wt%の易糊化デンプン、4wt%~17wt%の粒状デンプンおよび35wt%~55wt%の水を含むフィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルであって、
第1のゲル化剤はジェランガムであり、該ジェランガムは5.0×10~8.0×10g/molの重量平均分子量および1.0~6.0の分子量分布係数を有し、ソフトカプセルのカプセルシェルにおいて、デンプン粒子の含有量は9wt%~40wt%であり、前記のデンプン粒子は、平均粒子径≧10μmのデンプン粒子であり;前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、胃で崩解するソフトカプセルのカプセルシェルであり;
易糊化デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、モチトウモロコシデンプン、タピオカデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、デキストリン、或マルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数であり;且つ
粒状デンプンは、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、酸処理デンプン、酢酸デンプン、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アルファー化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数である、ソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項2】
ジェランガムが、5.5×10~6.6×10g/molの重量平均分子量を有し、および/またはジェランガムが1.0~4.0の分子量分布係数を有する、請求項1に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項3】
ジェランガムが、5.5×10 ~4.7×10 g/molの重量平均分子量を有する、請求項2に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項4】
ジェランガムとデンプンの総量との重量比が0.05~0.2である、請求項1~3のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項5】
ジェランガムとデンプンの総量との重量比が0.09~0.2である、請求項4に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項6】
ジェランガムの含有量が2.5wt%~5wt%である、請求項4に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項7】
可塑剤の含有量が15wt%~25wt%である、請求項1~6のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項8】
可塑剤が、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項7に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項9】
前記のフィルム形成用組成物が、0.2wt%~10wt%の第2のゲル化剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項10】
前記の第2のゲル化剤が、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項9に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項11】
易糊化デンプンが、ヒドロキシプロピルデンプンまたは酸化ヒドロキシプロピルデンプンから選択される1種または2種であり、粒状デンプンが、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項1~10のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェルを製造する方法であって、
a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;
b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;
c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;および
d)カプセル化および乾燥を含む、方法。
【請求項13】
前記のa)が、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)が、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェルと、
充填物と
を含むソフトカプセル。
【請求項15】
食品、栄養補助食品および医薬品における請求項1~11のいずれか1項に記載のソフトカプセルのカプセルシェル、または請求項14に記載のソフトカプセルの使用。
【請求項16】
ソフトカプセルの製造におけるフィルム形成用組成物の使用であって、
前記のフィルム形成用組成物は、2wt%~5wt%の第1のゲル化剤、10wt%~35wt%の可塑剤、18wt%~35wt%の易糊化デンプン、4wt%~17wt%の粒状デンプンおよび35wt%~55wt%の水を含み、ここで、第1のゲル化剤はジェランガムであり、該ジェランガムは、5.0×10~8.0×10g/molの重量平均分子量および1.0~6.0の分子量分布係数を有し、ソフトカプセルのカプセルシェルにおいて、デンプン粒子の含有量は9wt%~40wt%であり、前記のデンプン粒子は、平均粒子径≧10μmのデンプン粒子であり;前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、胃で崩解するソフトカプセルのカプセルシェルであり;易糊化デンプンは、モチトウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、デキストリン、マルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数であり;粒状デンプンは、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アルファー化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは複数であ使用。
【請求項17】
ジェランガムが、5.5×10 ~6.6×10 g/molの重量平均分子量を有し、および/またはジェランガムが1.0~4.0の分子量分布係数を有する、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
ジェランガムは、5.5×10 ~4.7×10 g/molの重量平均分子量を有する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.05~0.2である、請求項16~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.09~0.2である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
ジェランガムの含有量は2.5wt%~5wt%である、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
可塑剤の含有量は15wt%~25wt%である、請求項16~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記のフィルム形成用組成物は、0.2wt%~10wt%の第2のゲル化剤をさらに含む、請求項16~23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記の第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
易糊化デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプンまたは酸化ヒドロキシプロピルデンプンから選択される1種または2種であり、粒状デンプンは、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化酸化デンプン、またはアセチル化ジスターチアジペートからなる群から選択される1つまたは組み合わせである、請求項16~25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
ソフトカプセルのカプセルシェルは、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む方法によって製造される、請求項16~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み、前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することを含む、請求項27に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品または医薬品の分野に関し、具体的に、ソフトカプセルのカプセルシェルおよびソフトカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルは、医薬品、食品、化粧品などの分野で広く使用されている。ゼラチンは、優れた皮膜形成性および機械的強度を備えているため、ソフトカプセルの伝統的な材料として広く使用されている。しかしながら、ゼラチンは、その自体の特性のため、使用中の品質に関して多くの欠点を示す。例えば、ゼラチン分子は、自己酸化されるか、またはアルデヒド基などの官能基と架橋反応を起こすことで、ゼラチンソフトカプセルの表面に強靱で弾性のある水不溶性フィルムを形成し、薬物の放出を遮断し、ソフトカプセルの崩壊不良になる。さらに、宗教や菜食主義者に加えて、世界中で狂牛病、口蹄疫、有毒カプセルなどの事件が相次いでいるため、ゼラチンの代替品とその製造に関する研究が試みられている。
【0003】
例えば、日本特許第JP2007153851A号では、水、デンプン、および天然ジェランガムを混合することによって得られる非動物由来のソフトカプセルのフィルムの組成物が提案されている。欧州特許第EP2815745A1号では、高アシルジェランガム、少なくとも1種のデンプンおよび少なくとも1種の可塑剤を含むソフトカプセルおよびその製造方法が提案されている。高アシルジェランガムからなるゲルは、軟らかくて弾力性のある質感があり、デンプンと組み合わせると、皮膜の強度が弱くなり、カプセルに成形され場合、シームが薄く、低い破壊力で油漏れしやすくなる。中国特許第CN100528950C号では、a.高アシルジェランガム、b.低アシルジェランガム、c.デンプン、およびd.可塑剤を含む異なるアシルジェランガムとデンプンとの混合物が提案されている。このような混合物で製造されたフィルムは、高い弾性率および優れた強度と伸びを有し、また、作成されたソフトカプセルは、良好な密封性を有する。複合ゲル化剤としての高アシルジェランガムおよび低アシルジェランガムは、皮膜の強度および靭性をある程度改善することができるが、皮膜用液の粘度が高く、輸送中のプレゲル化による皮膜の欠陥やムラ不均一性が生じ、作成されたソフトカプセルはシームが薄く、油漏れしやすい。
【0004】
以上のことから、従来技術で報告されている主要なカプセル材料としてジェランガムを用いたソフトカプセルの製造において、皮膜用液の粘度が高く、輸送中のプレゲル化による皮膜の欠陥やムラ不均一性が生じ、カプセルに成形され場合、シームが薄く、油が漏れやすいなどの多くの欠点があるため、ソフトカプセルの工業生産が不可能である。本分野では、上記の技術的問題を解決する植物性ソフトカプセルが必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定の分子量範囲のジェランガムとデンプンとの比を有するデンプン組成物が、上記の範囲外のデンプン組成物と比較して、ソフトカプセルのカプセルシェルを形成する綜合的な効果、水および胃液中で崩壊する効果においてより優れているという本発明者らの発見に部分的に基づく。さらに、本発明者らは、上記の効果が、カプセルシェル中のデンプン粒子の平均粒子径および含有量に関連することを見出した。すなわち、本発明の効果を達成できるソフトカプセルのカプセルシェル中のデンプン粒子は、含有量が9wt%~40wt%であり、平均粒子径が≧10μmである。
【0006】
さらに、本発明者らの以前の研究は、フィルム形成用組成物へのペクチンの添加が、製造されたソフトカプセルのカプセルシェルの胃の中での崩壊を防ぐことを示した。予想外に、本発明者らは、表5に示すように、特定の分子量範囲内のジェランガムとデンプンとの組み合わせが、ペクチンの存在下でも胃の中で崩壊し得ることを見出した。
【0007】
一局面では、フィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルを提供し、前記のフィルム形成用組成物は、2wt%~5wt%の第1のゲル化剤、10wt%~35wt%の可塑剤、18wt%~35wt%の易糊化デンプン、4wt%~17wt%の粒状デンプンおよび35wt%~55wt%の水を含み、ここで、第1のゲル化剤はジェランガムであり、該ジェランガムは5.0×10~8.0×10g/molの重量平均分子量および/または1.0~6.0の分子量分布係数を有し、ソフトカプセルのカプセルシェルにおいて、デンプン粒子の含有量は9wt%~40wt%であり、前記のデンプン粒子は、平均粒子径≧10μmのデンプン粒子であり;前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、胃で崩解するソフトカプセルのカプセルシェルであり;易糊化デンプンは、モチトウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、デキストリン、マルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数であり;粒状デンプンは、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アルファー化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0008】
一実施形態では、ジェランガムは、5.5×10~6.6×10g/mol、好ましくは5.5×10~4.7×10g/molの重量平均分子量であり、および/またはジェランガムは1.0~4.0の分子量分布係数を有する。
【0009】
一実施形態では、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.05~0.2であり、好ましくは、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.09~0.2であり;好ましくは、ジェランガムの含有量は2.5wt%~5wt%である。
【0010】
一実施形態では、可塑剤の含有量は15wt%~25wt%であり;好ましくは、可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0011】
一実施形態では、前記のフィルム形成用組成物は、0.2wt%~10wt%の第2のゲル化剤をさらに含み、好ましくは、前記の第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0012】
一実施形態では、易糊化デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプンまたは酸化ヒドロキシプロピルデンプンから選択される1種または2種であり、粒状デンプンは、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0013】
一実施形態では、ソフトカプセルのカプセルシェルは、以下の方法によって製造される。前記の方法は、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む。好ましくは、前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含む。前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。
【0014】
別の局面では、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルおよび充填物を含むソフトカプセルを提供する。
【0015】
別の局面では、本発明は、食品、栄養補助食品および医薬品における本発明のソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。
【0016】
別の局面では、本発明は、ソフトカプセルの製造におけるフィルム形成用組成物の使用を提供し、ここで、前記のフィルム形成用組成物は、2wt%~5wt%の第1のゲル化剤、10wt%~35wt%の可塑剤、18wt%~35wt%の易糊化デンプン、4wt%~17wt%の粒状デンプンおよび35wt%~55wt%の水を含み、ここで、第1のゲル化剤はジェランガムであり、該ジェランガムは、5.0×10~8.0×10g/molの重量平均分子量および/または1.0~6.0の分子量分布係数を有し、ソフトカプセルのカプセルシェルにおいて、デンプン粒子の含有量は9wt%~40wt%であり、前記のデンプン粒子は、平均粒子径≧10μmのデンプン粒子であり;前記のソフトカプセルのカプセルシェルは、胃で崩解するソフトカプセルのカプセルシェルであり;ここで、易糊化デンプンは、モチトウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、デキストリン、マルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数であり;粒状デンプンは、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アルファー化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0017】
一実施形態では、ジェランガムは、5.5×10~6.6×10g/mol、好ましくは5.5×10~4.7×10g/molの重量平均分子量、および/または1.0~4.0の分子量分布係数を有する。
【0018】
一実施形態では、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.05~0.2であり、好ましくは、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.09~0.2であり;好ましくは、ジェランガムの含有量は2.5wt%~5wt%である。
【0019】
一実施形態では、可塑剤の含有量は15wt%~25wt%であり;好ましくは、可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0020】
一実施形態では、フィルム形成用組成物は、0.2wt%~10wt%の第2のゲル化剤をさらに含み、好ましくは、前記の第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0021】
一実施形態では、易糊化デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプンまたは酸化ヒドロキシプロピルデンプンから選択される1種または2種であり、粒状デンプンは、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0022】
一実施形態では、ソフトカプセルのカプセルシェルは、以下の方法によって製造される。前記の方法は、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む。
【0023】
一実施形態では、前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含む。前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。
【0024】
本明細書において、本発明のフィルム形成用組成物またはソフトカプセルのカプセルシェルは、ゼラチンを含まない。
【0025】
一局面では、本発明は、食品、栄養補助食品、医薬品および化粧品における本発明のフィルム形成用組成物、ソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。一実施形態では、食品、栄養補助食品または医薬品は、胃吸収用または胃用のものである。なお、胃崩壊効果は、模擬胃液で検証することができる。
【0026】
一局面では、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルを使用して胃に送達する方法を提供する。また、本発明は、胃用薬の調製における本発明のソフトカプセルシェルまたはソフトカプセルの使用を提供する。
【0027】
本発明は、以下のような利点を提供する。
1.優れた綜合的な効果および水や胃液中での崩壊効果を有するソフトカプセルのカプセルシェルを提供し、ソフトカプセルの配合が豊かになる。
2.本発明の前に、表6に示すように、胃で崩壊するソフトカプセルに、ペクチンを添加すべきではないと考えられていた。本発明は、適切な配合およびジェランガムの選択により、ペクチンの存在下でも、優れた胃内崩壊効果を達成し、そのような認知バイアスを克服する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の内容は、本発明をさらに説明するために提供される。
本発明は、本発明のフィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルを提供する。本発明のフィルム形成用組成物は、第1のゲル化剤を含む。第1のゲル化剤の含有量は、2wt%~5wt%であってもよく、例えば2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%、5wt%であってもよい。第1のゲル化剤はジェランガムであってもよい。ジェランガムは、5.0×10~8.0×10g/mol、好ましくは5.5×10~6.6×10g/mol、好ましくは5.5×10~4.7×10の重量平均分子量を有してもよく、例えば6×10g/mol、9×10g/mol、1.5×10g/mol、2×10g/mol、2.5×10g/mol、3×10g/mol、4×10g/mol、5×10g/molまたは6×10g/molを有してもよい。ジェランガムは、1.0~6.0の分子量分布係数を有してもよく、好ましくは1.0~4.0、例えば2、2.5または3の分子量分布係数を有してもよい。
【0029】
フィルム形成用組成物は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤の含有量は、10wt%~35wt%であってもよく、例えば13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、20wt%、25wt%または30wt%であってもよい。可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロース、またはグルコースからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。
【0030】
フィルム形成用組成物は、18wt%~35wt%の易糊化デンプンおよび4wt%~17wt%の粒状デンプンを含む。易糊化デンプンの含有量は、20wt%~30wt%であってもよく、例えば20wt%、25wt%または30wt%であってもよい。粒状デンプンの含有量は、4wt%~17wt%であってもよく、例えば4wt%、5wt%、7wt%、8wt%、10wt%、14wt%または16wt%であってもよい。易糊化デンプンとは、デンプンの完全な糊化後に粒子が破壊または溶解したデンプンを指す。粒状デンプンとは、完全に糊化しにくく、水で膨潤しても粒子が破壊されないデンプンを指す。易糊化デンプンは、モチトウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、デキストリン、またはマルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは組み合わせを含む。粒状デンプンは、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、酸処理デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェート、アルファー化デンプン、アセチル化ジスターチアジペート、またはアセチル化酸化デンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせを含む。
【0031】
一実施形態では、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.05~0.2である。一実施形態では、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.07~0.2である。例えば、ジェランガムとデンプンの総量との重量比は0.05、0.07、0.09、0.1、0.13、0.16または0.2である。
【0032】
フィルム形成用組成物は水を含む。水の含有量は、35wt%~55wt%であってもよく、例えば40wt%、45wt%、50wt%または55wt%であってもよい。
【0033】
フィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含んでもよい。第2のゲル化剤の含有量は、0.2wt%~10wt%であってもよく、例えば0.25wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%または9wt%であってもよい。第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フラックスシードガム、カードランガム、またはタマリンドガムからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0034】
また、本発明は、本発明のフィルム形成用組成物で製造されるソフトカプセルのカプセルシェルを提供する。ソフトカプセルのカプセルシェル内のデンプンの状態は、粒状デンプン(デンプン粒子の平均粒子径≧10μm)、粒子が破壊されたデンプン(デンプン粒子の平均粒子径<10μm)またはデンプン粒子が破壊された後のセグメントであり、ここで、粒状デンプン含有量は、ソフトカプセルのカプセルシェルの総量の9wt%~40wt%であり、例えば10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%または35wt%である。本発明のソフトカプセルのカプセルシェルは、胃で崩解するソフトカプセルのカプセルシェルである。本発明者らは、ソフトカプセルのカプセルシェル内のデンプン粒子が、ソフトカプセルのカプセルシェルの胃内崩壊効果に関連していることを見出した。
【0035】
さらに、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルおよび充填物を含むソフトカプセルを提供する。充填物は、様々な動植物油脂類、または様々な固体の機能性成分とソフトカプセルに適した補助材料で調製された懸濁液、エマルジョン、半固体、または固体の機能性成分と適切な補助材料で調製された固体製剤(例えば、顆粒、マイクロカプセル、粉末、素錠、カプセル)からなる群から選択される1つまたは複数を含んでもよい。
【0036】
さらに、本発明は、本発明のソフトカプセルのカプセルシェルの製造方法を提供する。この方法は、a)可塑剤に第1のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、60~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌すること;c)気泡を除去して皮膜用液を得ること;およびd)カプセル化および乾燥を含む。一実施形態では、前記のa)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含む。前記のa)は、前記の可塑剤に、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を加え、均一に撹拌し、さらに水に加え、60~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。カプセル化は、ソフトカプセル製造ラインを採用し、皮膜用液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、皮膜用液をドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を封入し、圧着して成形し、さらに、タンブルによって仕上げすることで、実施することができる。乾燥は、成形または仕上げしたカプセルを乾燥させ、好ましくは皮膜の水分が8~25%になるまで乾燥させることで、実施することができる。
【0037】
また、本発明は、食品、栄養補助食品、医薬品および化粧品における本発明のデンプンフィルム形成用組成物、ソフトカプセルのカプセルシェル又はソフトカプセルの使用を提供する。
【0038】
本発明のフィルム形成用組成物は、特定の分子量および分布を有するジェランガムを、デンプンと組み合わせて、一定の範囲内に制御することで、所望の機械強度および靭性を有するフィルムを形成し、ソフトカプセルに用いられる場合、皮膜の強度、靭性および成形接着性の点で従来技術のものよりも著しく優れ、ソフトカプセルの工業生産を完全に満たし、媒介である水と人工胃液での崩壊・破裂の要求を満たし、ソフトカプセル技術の代替として使用することができる。
【0039】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。これらの実施例は単なる例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
【0040】
実施例
評価方法
フィルム形成用組成物からなるフィルムおよびソフトカプセルのカプセルシェル中のデンプン粒子を特徴づけるために、以下の方法を使用して、粒子のサイズおよび含有量を測定する。
【0041】
1)デンプン粒子のサイズ:フィルム形成用組成物を混合して加熱することによって調製された皮膜用液を2枚のスライドガラスの間に置き、皮膜用液を加熱、加圧して、95℃でフィルムを形成する。このフィルムを冷却した後、ヨウ素溶液を滴下して染色した。偏光顕微鏡を使用して、複数の観察領域をランダムに選択して写真を撮った。拡大倍率で目盛りを校正した後、撮影領域の各デンプン粒子の粒子径を測定し、それらの算術平均値としてデンプンの粒子径を表した。
【0042】
2)デンプン粒子の含有量:100mgの乾燥フィルムまたは乾燥したソフトカプセルのカプセルシェルを、75℃で15gの脱イオン水に30分間溶解し、この間に数回撹拌してカプセルシェルを完全に溶解した。次に、ソフトカプセルのカプセルシェルを溶解した濁った溶液を4000rpmで15分間遠心分離した。このような条件下で遠心分離した後、粒状デンプンが底部の沈殿物にあり、上層の液体を除去した。底部の沈殿物を十分に乾燥した後、沈殿物の含有量としてデンプン粒子の含有量を表し、ソフトカプセルのカプセルシェル中の粒状デンプンの質量比率を算出した。
本発明の効果をさらに説明するために、以下のソフトカプセルの性能指標を採用して評価、説明を行う。
【0043】
(1)成形
1)皮膜の強度(F)および靭性(T)の指標:テクスチャーアナライザーを使用し、球形プローブ、パンクモードを選択した。試験速度は1.0mm/sであり、皮膜が破裂した時の力の値および対応する距離(mm)を記録した。皮膜が破裂した時の力は大きいほど、皮膜の強度は高くなる。皮膜が破裂した時にプローブが移動した距離は長いほど、皮膜の靭性は高くなる。
【0044】
2)シーム接着特性の指標:シーム以外の位置からカプセルをカットし、内容物を押し出した。次に、シームに対して垂直になるようにカプセルの中央から2つのシームがあるリングを切り取った。2つのシームをスライドガラスに垂直して、リングをスライドガラス上に載置した。顕微鏡で2つのシームおよびシェルの厚さを測定し、シェルの厚さに対する最も薄いシームの厚さの比率P(%)を算出した。
【0045】
表1 ソフトカプセルの皮膜の強度、靭性およびシーム接着性の指標の評価基準
【表1】
【0046】
ソフトカプセルの製造と成形の可能性は、皮膜の強度(F)、靭性(T)およびシーム接着性指標(P)によって総合評価を行った。総合評価は、皮膜の強度が20%、靭性指標が20%、成形接着性が60%の3つの指標を合わせたものであり、総合評価点の総点数は5点であり、点数が高いほど総合性能が良いことを示す。
【0047】
ソフトカプセルの工業生産を満たすには、皮膜の強度と靭性の両方の指標がそれぞれ≧3点であり、シーム接着性指標が≧2点であり、且つ総合評価が≧2.4点である必要がある。
【0048】
(2)崩壊時間
米国薬局方USP<2040>における崩壊時間に関する規制を参照して、ソフトカプセルについて、ハンギングバスケットデバイスを使用して、それぞれ水および模擬胃液で崩壊試験を行った。記号「∨」は60分での崩壊が適格であることを示し、記号「×」は崩壊が不適格であることを示す。
【0049】
本発明は、以下の材料を使用して説明するが、これらに限定されるものではなく、詳細は以下のとおりである。
ジェランガムは微生物代謝ガムである。異なるプロセス条件によって生成されるジェランガムの分子量および分布は異なっており、ジェランガムのレオロジー特性およびゲル特性の違いに反映される。ジェランガムの重量平均分子量(Mw)および分子量分布係数(Mw/Mn)は、SEC/MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角度光散乱測定)により測定された。
ジェランガムA(重量平均分子量(Mw):5.98×10±4.682%、分子量分布係数(Mw/Mn):1.07±1.445%)
ジェランガムB(重量平均分子量(Mw):9.168×10±4.672%、分子量分布係数(Mw/Mn):2.893±5.829%)
ジェランガムC(重量平均分子量(Mw):1.426×10±5.364%、分子量分布係数(Mw/Mn):2.336±6.391%)
ジェランガムD(重量平均分子量(Mw):2.673×10±4.605%、分子量分布係数(Mw/Mn):2.019±6.252%)
ジェランガムE(重量平均分子量(Mw):4.672×10±4.515%、分子量分布係数(Mw/Mn):2.419±5.251%)
ジェランガムF(重量平均分子量(Mw):6.672×10±4.105%、分子量分布係数(Mw/Mn):2.329±5.342%)
ジェランガムG(重量平均分子量(Mw):4.01×10±13.21%、分子量分布係数(Mw/Mn):1.13±1.77%)
ジェランガムH(重量平均分子量(Mw):8.608×10±2.333%、分子量分布係数(Mw/Mn):2.358±5.247%)
ジェランガムI(重量平均分子量(Mw):1.503×10±4.915%、分子量分布係数(Mw/Mn):6.318±5.341%)
【0050】
フィルム形成用組成物でソフトカプセルを製造する方法は、以下の工程を含む。
1)溶解:A)まず、ジェランガムおよび可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら適量の水に加え、60~98℃で加熱しながら、ジェランガムが溶解するまで撹拌し;ジェランガム以外の食用ガムを含む場合、まず、ジェランガム、食用ガムおよび可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、ジェランガムおよび食用ガムが溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;
2)カプセル化:ソフトカプセル製造ラインを採用し、皮膜用液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、皮膜用液をドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を封入し、圧着して成形し、さらに、タンブルによって仕上げすること;
3)乾燥させること:成形または仕上げしたカプセルを、皮膜の水分が8~25%になるまで乾燥させる。
【0051】
実施例1-6
表2に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表2に示す。表2から、実施例1-6において、特定の分子量のジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用したことで、形成された皮膜は、良好な強度、靭性および成形接着性を有し、製造されたソフトカプセルのサンプルは、媒介である水と模擬胃液の両方で崩壊された。一方、対照例1~2において、本発明のフィルム形成用組成物と同じ成分含有量を採用し、対照例1では、重量平均分子量の低いジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用した場合、形成された皮膜は、強度が良好であったが靭性が低く、ソフトカプセルに成形できなくなり;対照例2では、重量平均分子量の高いジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用した場合、形成された皮膜は、通常の強度および靭性を有したが、成形接着性が劣った。また、対照例2では、本発明の範囲外の分子量分布を有するジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用したことによって形成された皮膜は、成形接着性が低く、媒介である水と模擬胃液の両方で崩壊された。
【0052】
実施例7-14
表3に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表3に示す。
実施例7-14において、特定の分子量のジェランガムとデンプンとの組み合わせは、ジェランガムの割合が増加し、デンプンの割合が減少するにつれて、すなわち、ジェランガムとデンプンとの比が増加するにつれて、形成られた皮膜は、強度が向上し、靭性がわずかに向上したが、ソフトカプセルの成形接着性が低下した。特定の分子量範囲のジェランガムとデンプンとの比を有するデンプン組成物は、この範囲外のデンプン組成物よりも総合な効果が優れている。これは予想外である。
【0053】
実施例15-21
表4に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表4に示す。
実施例15-21では、特定の分子量のジェランガムを各種のデンプンと組み合わせることによって製造されたソフトカプセルは、従来技術よりも技術的効果が優れていることを示している。対照例4および対照例5では、カプセルシェル内のデンプン粒子の含有量が低い場合、ソフトカプセルは、模擬胃液で崩壊することができないことを示している。対照例6では、デンプン粒子が比較的多い場合、ソフトカプセルを製造する際に成形性が低いことを示している。
【0054】
実施例22-29
表5および表6に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表5に示す。
実施例22-29では、特定の分子量のジェランガムおよびデンプンを、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、こんにゃくグルコマンナン、低エステルペクチン、カラギーナン、キサンタンガムとそれぞれ組み合わせて製造されたソフトカプセルは、従来技術よりも技術的効果が優れていることを示している。
【0055】
本発明者らの以前の研究は、フィルム形成組成物へのペクチンの添加が、製造されたソフトカプセルのカプセルシェルの胃の中での崩壊を防ぐことを示した。予想外に、本発明者らは、表5および表6に示すように、特定の分子量範囲内のジェランガムとデンプンとの組み合わせが、ペクチンの存在下でも胃の中で崩壊し得ることを見出した。
【0056】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の精神および原理から逸脱することなく行われたその他のいかなる変更、修正、置換、組み合わせ、簡略化は、本願と同等であるとみなされるべきであり、それらのすべては本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0057】
【表2】

【表3】

【表4】
【表5】
【表6】