(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】複合基板及びその製造方法、弾性表面波共振器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240227BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
(21)【出願番号】P 2022543079
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 CN2020135659
(87)【国際公開番号】W WO2021143409
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】202010054453.8
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520281859
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 河
(72)【発明者】
【氏名】羅 海龍
(72)【発明者】
【氏名】李 偉
(72)【発明者】
【氏名】斉 飛
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-031213(JP,A)
【文献】特開平08-154033(JP,A)
【文献】特開2002-057549(JP,A)
【文献】特開2013-223025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合基板の製造方法であって、
第1の基板を提供することと、
前記第1の基板上に、多結晶材料層を少なくとも含むパッド層を堆積することと、
前記多結晶材料層上に、音響波共振を発生させるための
圧電フィルムを物理的又は化学的堆積方法によって堆積することと、
前記
圧電フィルムを再結晶アニール処理することで、前記
圧電フィルムを
結晶状態を多結晶に変化させることと、を含み、
再結晶アニール
処理は、昇温工程及び冷却工程を含み、
前記昇温工程は、前記
圧電フィルムを昇温して溶融状態に到達させることを含む、
ことを特徴とする複合基板の製造方法。
【請求項2】
前記
圧電フィルムを再結晶アニール処理した後に、
前記
圧電フィルムの表面粗さが10nm未満になるように、前記
圧電フィルムの上面を機械的又は機械的化学的研磨プロセスによって研磨処理することをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項3】
前記
圧電フィルムの上面を研磨処理した後に、
前記
圧電フィルムの表面厚さの均一度が2%よりも小さくなるように、前記
圧電フィルムの上面をイオンビームトリミングプロセスによってトリミングすることをさらに含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合基板の製造方法。
【請求項4】
前記
圧電フィルムの材質は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ゲルマニウム酸ビスマス、ランガサイト、オルトリン酸アルミニウム又はニオブ酸カリウムのうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項5】
前記
圧電フィルムの厚さは、0.01~10μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項6】
前記再結晶アニール処理は、
前記第1の基板、第1の基板上に堆積されたパッド層及び
圧電フィルムを全体として炉管アニールによって均一に加熱することを含み、
又は、
前記
圧電フィルムをレーザアニールによって局所的に加熱して再結晶させることを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項7】
前記レーザアニールは、真空、窒素ガス又は酸素ガス雰囲気中で、前記
圧電フィルムをレーザアニールすることを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の複合基板の製造方法。
【請求項8】
前記再結晶アニール処理は、前記第1の基板、第1の基板上に堆積されたパッド層及び圧電フィルムを全体として炉管アニールによって均一に加熱することを含み、
前記
圧電フィルムの材質は、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムであり、
前記
圧電フィルムを前記炉管アニールによって再結晶アニール処理することは、
前記第1の基板、パッド層及び
圧電フィルムを全体として1100~1300℃で5~30秒均一に加熱してから、降温速度が5℃/s未満になるように室温までに冷却させることを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の複合基板の製造方法。
【請求項9】
前記
圧電フィルムを形成することは、
純度が99.99%よりも大きいターゲットを用いて、微結晶又は非結晶の前記
圧電フィルムを物理的気相堆積法によって形成することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項10】
前記多結晶材料層は、多結晶アルミナ、多結晶二酸化ケイ素又は多結晶炭化ケイ素を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項11】
前記パッド層は、前記第1の基板と前記多結晶材料層との間に設けられた音響波反射層をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項12】
前記音響波反射層の材料は、アルミナ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素又は炭化ケイ素、又はそれらの組合せを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の複合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造分野に関し、特に複合基板及びその製造方法、弾性表面波共振器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信技術の発展に伴い、移動データ伝送量も急速に上昇している。そのため、周波数リソースが限られており、できるだけ少ない移動通信機器を使用すべきであるという前提の下で、無線基地局、マイクロ基地局、またはリピータなどの無線パワー送信機器の送信パワーを高めることが考慮されなければならない問題になっているとともに、移動通信機器のフロントエンド回路におけるフィルタパワーの要求もますます高くなっていることを意味している。
【0003】
現在、無線基地局などの機器におけるハイパワーフィルタは、キャビティフィルタを主とし、そのパワーは百ワット以上に達することができるが、このフィルタのサイズは大きすぎる。誘電体フィルタを使用する装置もあり、その平均パワーは5ワット以上に達することができるが、このフィルタのサイズも大きい。このキャビティフィルタは、サイズが大きいため、無線周波数フロントエンドチップに集積できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、無線基地局などの機器におけるハイパワーフィルタは、キャビティフィルタを主とし、そのパワーは百ワット以上に達することができるが、このフィルタのサイズは大きすぎる。誘電体フィルタを使用する装置もあり、その平均パワーは5ワット以上に達することができるが、このフィルタのサイズも大きい。このキャビティフィルタは、サイズが大きいため、無線周波数フロントエンドチップに集積できない。
【0005】
半導体マイクロマシニングプロセス技術に基づくフィルムフィルタのうちの主なフィルタは、弾性表面波共振器(SAW)である。従来技術では、弾性表面波共振器に用いられる圧電基板は、一般的に、シリコン基板と単結晶圧電ウェハーをボンディングして薄型化してから形成される。しかしながら、単結晶圧電ウェハー材料は非常に脆く、半導体プロセスにおいて割れやすく、プロセスメニューには特殊な設計が必要であり、生産効率が低減してしまう。そして、現在最大のウェハーのサイズはまだ6インチにとどまっており、多くのフィルタメーカーのプロセスラインで使用されているのはまだ4インチプロセスであり、単一のウェハーで生産されるフィルタチップの数が比較的少ない。また、単一のウェハーのコストが比較的高いため、弾性表面波フィルタのコストをさらに下げることができない。
【0006】
そのため、どのように圧電ウェハーがプロセスにおいて割れることを解決し、基板の生産効率を向上させ、コストを低減させるかは、現在直面している課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電誘導フィルムウェハが製作中で割れやすく、コストが高く、効率が低いという問題を解決するための複合基板及びその製造方法、弾性表面波共振器及びその製造方法を開示する。
【0008】
上記技術課題を解決するために、本発明によれば、
複合基板の製造方法であって、
第1の基板を提供することと、
前記第1の基板上に、多結晶材料層を少なくとも含むパッド層を堆積することと、
前記多結晶材料層上に、音響波共振を発生させるための圧電誘導フィルムを物理的又は化学的堆積方法によって堆積することと、
前記圧電誘導フィルムを再結晶アニール処理することで、前記圧電誘導フィルムを多結晶に到達させることと、を含み、
結晶アニールは、昇温工程及び冷却工程を含み、
前記昇温工程は、前記圧電誘導フィルムを昇温して溶融状態に到達させることを含む複合基板の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
複合基板であって、
第1の基板と、
前記第1の基板の上面に位置し、多結晶材料層を少なくとも含むパッド層と、
音響波共振を発生させるための圧電誘導フィルムであって、前記多結晶材料層の上方に位置する多結晶の圧電誘導フィルムと、を含む複合基板がさらに提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の複合基板を含む弾性表面波共振器がさらに提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
前記複合基板を含む弾性表面波共振器の製造方法であって、
前記複合基板を提供することと、
前記圧電誘導フィルムに第1のインターディジタルトランスデューサ及び第2のインターディジタルトランスデューサを形成することとを含む弾性表面波共振器の製造方法がさらに提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0013】
従来技術では、一般的に単結晶を弾性表面波共振器の圧電フィルムとして使用しており、多結晶を弾性表面波共振器として使用する圧電フィルムはなく、主な原因としては、業界では、多結晶圧電フィルムが音響波の伝播に不利であることが共振器の性能に影響を与えると考えられているためである。しかし、発明者らは、多結晶圧電フィルムが単結晶粒子から作られているにもかかわらず、単結晶粒子が整列せず、一致した結晶方向を形成していないが、圧電フィルムの結晶方向が圧電性能に与える影響が非常に小さいことを発見したため、本態様で形成された多結晶圧電フィルムは、単結晶フィルムに比べて、製作されるデバイスの性能が一致する。本態様では、基板上に多結晶材料層を形成し、前記多結晶材料層が比較的良好な結晶方向を有することで、その上に堆積された圧電誘導フィルムに対してアニールプロセスを行った後、結晶方向が比較的良好な多結晶の圧電誘導フィルムを得る。基板上に多結晶圧電誘導フィルムを形成するこのプロセスは、圧電ウェハを基板上にボンディングする従来の方法に比べて、圧電結晶体が割れ、生産効率が低く、コストが高いという問題を回避する。堆積して再結晶してから、多結晶圧電フィルムを形成することによって、従来の単結晶圧電フィルムの成長プロセスに比べてシンプルで、低コストである。そして、多結晶圧電フィルムは、単結晶圧電フィルムに比べて構造強度がより高く、割れにくい。また、堆積及びアニール技術は、ウェハーサイズに制限がなく、6インチ、8インチなどの生産プロセスに適用できる。そして、多結晶粒子の応力が集中しないため、単一方向の応力が大きいことなく、単結晶に比べて、圧電フィルムが割れるリスクが大幅に低減する。
【0014】
さらに、多結晶圧電フィルムは、表面粗さが10nmより小さく、平坦度が非常に高く、多結晶圧電フィルムは、音響波エネルギーの散乱をできるだけ減らすことができる。
【0015】
さらに、多結晶材料自体又は基板と多結晶材料との間に音響波反射層が形成され、縦音響波が音響波反射層に伝送される時、回圧電誘導フィルム内に反射され、音響波エネルギーの損失を減少させ、共振器のQ値を向上させる。
【0016】
さらに、結晶後の圧電誘導フィルムの表面に対して研磨処理及びイオンビームトリミングを行うことにより、圧電誘導フィルムの表面平坦度を向上させ、圧電誘導フィルムの圧電特性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面を結び付けながら、本発明の例示的な実施例についてさらに詳細に記述することにより、本発明の上記及び他の目的、特徴及び長所は、より明らかになり、本発明の例示的な実施例では、同様の参照符号は、通常、同じ構成要素を表す。
【
図1】本発明の一実施例による複合基板の製造方法のフローチャートを示す。
【
図2】本発明の一実施例による複合基板の構造概略図を示す。
【
図3】本発明の一実施例による複合基板の構造概略図を示す。
【
図4】本発明の一実施例による複合基板の構造概略図を示す。
【
図5】本発明の一実施例による弾性表面波共振器の構造概略図を示す。
【
図6】本発明の別の実施例による弾性表面波共振器の構造概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、図面及び具体的な実施例を結び付けながら、本発明についてさらに詳細に説明する。以下の説明及び図面に基づいて、本発明の効果及び特徴は、より明確になるだろう。なお、本発明の技術案の発想は、本明細書に記載された特定の実施例に限定されるものではなく、様々な異なる形態で実施することができる。図面はいずれも非常に簡略化された形式を採用し、いずれも非正確な比率を使用し、本発明の実施例を容易かつ明確に支援する目的にのみ用いられる。
【0019】
理解すべきこととしては、要素または層が他の要素または層「の上にある」、「と隣接する」、「に接続される」または「に結合される」と呼ばれる場合、直接他の要素または層上にあったり、それに隣接したり、接続されたり、他の要素または層に結合されたりしてもよいし、又は介在する素子又は層が存在してもよい。逆に、素子が他の素子又は層「...上に直接位置する」、「...直接隣接する」、「に直接接続される」又は「に直接結合される」と呼ばれる場合、介在する素子又は層が存在しないことを理解すべきである。用語の第1、第2、第3のなどを用いて様々な素子、部材、領域、層及び/又は部分を説明することができるが、これらの素子、部材、領域、層及び/又は部分はこれらの用語に限定されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は1つの素子、部材、領域、層又は部分と別の素子、部材、領域、層又は部分を区別するために用いられる。従って、本発明の教示から逸脱することなく、以下に説明する第1の素子、部材、領域、層又は部分は、第2の素子、部材、領域、層又は部分として表すことができる。
【0020】
空間関係用語例えば「...下にある」、「...下面にある」、「下面の」、「...の下にある」、「...の上にある」、「上面の」などは、図に示す1つの素子又は特徴と他の素子又は特徴の関係を説明するために、ここで説明の便宜上使用される。空間関係用語は、図に示す向きの他に使用または操作におけるデバイスの異なる向きを包含することができることを理解すべきである。例えば、図面におけるデバイスをひっくり返すと、「他の素子の下面」又は「その下方にある」又は「その下にある」として説明された素子又は特徴の向きは、この別の要素又は特徴の「上」となる。従って、例示的な用語の「...下面にある」及び「...下にある」は、上方及び下方の二つの向きを包含できる。デバイスは、別の向き(90度回転またはそれ以外の向き)とすることができ、本明細書において使用する空間関係の記述語はそれに応じて解釈できる。
【0021】
ここで用いられる用語の目的は具体的な実施例を説明するためのものにすぎず、本発明を制限するものではない。ここで使用する場合、文脈が明らかに他の方式を指摘しない限り、単数形の「1」、「1つ」及び「前記/該」は複数の形式を含むことを意図する。さらに用語の「構成」及び/又は「含む」は、該明細書に使用される場合、前記特徴、整数、ステップ、操作、部材及び/又は部品の存在を確定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、部材、部品及び/又はグループの存在又は追加を排除しない。ここで使用される場合、用語の「及び/又は」は関連して列挙された項目の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0022】
本明細書の方法は一連のステップを含み、かつ本明細書に示されたこれらのステップの順序はこれらのステップを実行できる唯一の順序ではなく、いくつかのステップを省略し及び/又はいくつかの本明細書に記載されていない他のステップを該方法に追加することができる。ある図面における部材が他の図面における部材と同じである場合、全ての図面においてこれらの部材を容易に認識することができるが、図面の説明をより明確にするために、本明細書は全ての同じ部材の符号を各図に示すことはない。
【0023】
実施例1
本発明の一実施例は、複合基板の製造方法を提供し、
図1は、本発明の一実施例による複合基板の製造方法のフローチャートを示し、
図1を参照し、複合基板の製造方法は、
S01:第1の基板を提供することと、
S02:前記第1の基板上に、多結晶材料層を少なくとも含むパッド層を堆積することと、
S03:前記多結晶材料層上に、音響波共振を発生させるための圧電誘導フィルムを物理的又は化学的堆積方法によって堆積することと、
S04:前記圧電誘導フィルムに対して再結晶アニール処理を行うことで、前記圧電誘導フィルムを多結晶に到達させることであって、前記結晶アニールは、昇温工程及び冷却工程を含み、前記昇温工程は、前記圧電誘導フィルムを昇温して溶融状態に到達させることを含む、こととを含む。
【0024】
図2~
図4は、本発明の一実施例による複合基板の製造方法の異なる段階の構造概略図を示し、
図2~
図4を参照し、複合基板の製造方法は、以下のことを含む。
【0025】
図2を参照し、第1の基板10を提供するステップS01を実行する。
【0026】
第1の基板10の材質は、半導体プロセスに適用される材料を選択し、この材料は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーバイ(SiC)、カーボンゲルマニウムシリコン(SiGeC)、インジウム砒素(InAs)、ガリウム砒素(GaAs)、リン化インジウム(InP)又は他のIII/V化合物半導体の材料のうちの少なくとも1種であってもよく、又は、シリコンオンインシュレーター(SOI)、積層シリコンオンインシュレーター(SSOI)、積層シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(S-SiGeOI)、シリコンゲルマニウムオンインシュレーター(SiGeOI)及びゲルマニウムオンインシュレーター(GeOI)であってもよく、又は両面研磨ウエハ(Double Side Polished Wafers、DSP)であってもよく、アルミナなどのセラミック基板、石英又はガラス基板などであってもよい。
【0027】
本実施例では、第1の基板10の材質は、抵抗値が10KOhm.cmよりも大きいP型シリコンである。高抵抗値の基板材料を選択する原因としては、第1の基板の上方に交流電気がある時、交流電気が電磁波を発生させ、電磁波が放射して一部の電気エネルギーを損失し、低周波条件において、放射損失が比較的小さい一方、高周波条件において、放射損失が増加してしまい、高抵抗値の基板材料を用いると、電磁波の放射を減少させ、電気エネルギーの損失を減少させることができる。
【0028】
図3を参照し、前記第1の基板10上に、多結晶材料層を少なくとも含むパッド層20を堆積するステップS02を実行する。
【0029】
多結晶材料層は、良好な結晶方向を有し、後期のプロセスにおいて、形成された圧電誘導フィルムを結晶化する際、圧電誘導フィルムは、結晶材料層の結晶方向に従って結晶化する。前記多結晶材料層の材料は、多結晶アルミナ、多結晶二酸化ケイ素又は多結晶炭化ケイ素を含む。本実施例では、パッド層20は、多結晶アルミナである。前記多結晶材料層が比較的良好な結晶方向を有することで、その上に堆積された圧電誘導フィルムに対してアニールプロセスを行った後、比較的良好な結晶方向を有する多結晶の圧電誘導フィルムを得る。基板上に多結晶圧電誘導フィルムを形成するこのプロセスは、圧電ウェハを基板上にボンディングする従来の方法に比べて、圧電結晶体が割れ、生産効率が低く、コストが高いという問題を回避する。
【0030】
前記第1の基板10上に、パッド層20を堆積する(本実施例では、多結晶材料層を堆積する)方法は、第1の基板10上に、厚さが2000オングストローム~10000オングストロームの多結晶材料層を物理的気相堆積又は化学的気相堆積によって堆積して形成することを含む。多結晶材料層の厚さは、薄すぎてはならない。そうでなければ、多結晶材料層は、それ自体の品質が悪く、後期のプロセスにおいてその上面に形成された圧電誘導フィルムの品質に影響を与えてしまう。そして、多結晶材料層は、音響波反射層として、一定の厚さに達する必要がある。多結晶材料層は、厚すぎてはならない。そうでなければ、生産効率に影響を与えてしまう。
【0031】
別の実施例では、前記パッド層20は、前記多結晶材料層と第1の基板10との間に形成される音響波反射層をさらに含む。音響波反射層は、後期のプロセスにおいて形成された圧電誘導フィルムと比較的大きいインピーダンス不整合を有するため、音響波が音響波反射層に伝送される時、音響波反射層は、音響波を圧電誘導フィルム内に反射し、音響波のエネルギー損失を減少させる。音響波反射層の材料は、アルミナ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素又は炭化ケイ素を含む。
【0032】
前記第1の基板10上に、パッド層20(音響波反射層及び多結晶材料層を含む)を堆積する方法は、第1の基板10上に、厚さが2000オングストローム~10000オングストロームの音響波反射層を物理的気相堆積又は化学的気相堆積によって堆積して形成することと、音響波反射層上に、厚さが2000オングストローム~10000オングストロームの多結晶材料層を物理的気相堆積又は化学的気相堆積法によって形成することとを含む。多結晶材料層の形成方法は、従来技術に属し、ここでこれ以上説明しない。
【0033】
説明すべきこととして、前記音響波反射層と前記多結晶材料層は、同一層であってもよく、この場合、前記パッド層の材料は、多結晶アルミナ、多結晶二酸化ケイ素又は多結晶炭化ケイ素であってもよい。
【0034】
図4を参照し、前記多結晶材料層上に、音響波共振を発生させるための圧電誘導フィルム30を物理的又は化学的堆積方法によって堆積するステップS03を実行する。
【0035】
物理的気相堆積法によって圧電誘導フィルム材料を多結晶材料層上に堆積し、圧電誘導フィルム材料の厚さ範囲は、一般的に、0.01~10μmであり、本実施例では、厚さ範囲は、0.4um~5umである。圧電誘導フィルム材料の厚さの選択は、主に2つの側面を配慮し、一方は、共振器の性能を実現できることであり、他方は、プロセスの安定性が制御可能であることである。物理的気相堆積法は、真空蒸着、スパッタリングめっき、イオンめっきを含む。物理的気相堆積に用いられる圧電材料のターゲットの純度が99.99%よりも大きいことで、堆積された圧電誘導フィルムが比較的少ない不純物又は傷を有することを確保し、共振器及びフィルタの歩留まりが量産の目標値に達することを確保する。形成された圧電誘導フィルム30は、微結晶又は非結晶である。本実施例では、堆積される圧電誘導フィルム30は、弾性表面波共振器に用いられる。圧電誘導フィルム30の材料は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ゲルマニウム酸ビスマス、ランガサイト、オルトリン酸アルミニウム又はニオブ酸カリウムのうちの1つまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0036】
ニオブ酸リチウム圧電誘導フィルムを堆積する時、選択するスパッタリングターゲットは、酢酸リチウムと五酸化二タンタルを原料として焼結されたものであり、スパッタリングイオン源に用いられる気体は、アルゴンガスである。
【0037】
引き続き
図4を参照し、前記圧電誘導フィルム30に対して再結晶アニール処理を行うことで、前記圧電誘導フィルム30を多結晶に到達させ、前記結晶アニールは、昇温工程及び冷却工程を含み、前記昇温工程は、前記圧電誘導フィルム30を昇温して溶融状態に到達させることを含むステップS04を実行する。
【0038】
前記圧電誘導フィルム30を溶融状態に到達させる温度を用いて、前記圧電誘導フィルム30に対して再結晶アニール処理を行う。再結晶アニール処理の方法は、2種を含み、一方は、第1の基板、パッド層、圧電誘導フィルム全体を均一に加熱し、例えば炉管を用いて前記圧電誘導フィルム30、前記パッド層20、前記第1の基板10全体を加熱して、前記圧電誘導フィルム30を溶融状態に到達させることで、前記圧電誘導フィルム30を再結晶させることである。他方は、圧電誘導フィルム30を局所的に加熱し、例えばレーザを用いて前記圧電誘導フィルム30に対して走査加熱を行って前記圧電誘導フィルム30を溶融状態に到達させることで、前記圧電誘導フィルム30を再結晶させることである。
【0039】
第1の再結晶アニール方法は、具体的には、圧電誘導フィルム30が堆積された第1の基板10を高温炉、例えば横型炉、縦型炉内に入れ、急速熱処理(RTP)を行うことと、1100~1200度の温度下で2~5分間加熱することを含む。
【0040】
第2の再結晶アニール方法は、具体的には、真空、窒素ガス又は酸素ガス雰囲気中で、周波数1~10KHzで0.8~15ジュール/平方センチメータのパルスレーザを前記圧電誘導フィルムに5秒~20秒作用させ(異なる圧電誘導フィルムによって、作用時間が異なる)、走査形態で圧電誘導フィルムの温度を1000~1400に加熱し、溶融状態に到達させ、再結晶することを含む。
【0041】
本実施例では、圧電誘導フィルム30の材質は、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムであり、炉管アニールを用いて前記圧電誘導フィルム30に対して再結晶アニール処理を行うことは、前記第1の基板10、パッド層20、圧電誘導フィルム30全体を1100度~1300度に5~30秒均一に加熱し、そして温度低減レート5℃/秒未満で室温に冷却させることで、圧電誘導フィルム30の浮き又は割れことを回避する、ことを含む。
【0042】
本実施例では、圧電誘導フィルム30の再結晶が完了した後、研磨処理された前記圧電誘導フィルム30の表面粗さが10nm未満になるように、機械的又は機械的化学的研磨プロセス、例えば化学的機械的研磨(CMP)によって圧電誘導フィルム30の上面を研磨処理することをさらに含む。前記圧電誘導フィルム30の上面を研磨処理した後、トリミングされた前記圧電誘導フィルム30の表面厚さの均一度が2%よりも小さくなるように、イオンビームトリミングプロセスによって前記圧電誘導フィルム30の上面をトリミングすることをさらに含む。イオンビームのトリミング精度は、nmスケールに達することができ、圧電誘導フィルム30の局所及び全体の表面の高さをトリミングすることを実現できる。トリミングされた基板全体上の圧電誘導フィルムの高さが一致することで、隣接するデバイスの性能一致性を向上させ、共振器の歩留まりを向上させる。
【0043】
本実施例では、イオンビームトリミングプロセスは、イオンビーム電流 25ミリアンペア~200ミリアンペア、走査時間 30秒~10分間のパラメータを用いる。
【0044】
結晶後の圧電誘導フィルムの表面に対して研磨処理及びイオンビームトリミングを行うことによって、圧電誘導フィルムの表面平坦度を向上させ、圧電誘導フィルムの圧電特性を向上させる。
【0045】
実施例2
本発明の一実施例は、複合基板を提供し、
図4は、本発明の一実施例による複合基板の構造概略図を示し、
図4を参照し、前記複合基板は、
第1の基板10と、
前記第1の基板10の上面に位置し、多結晶材料層を少なくとも含むパッド層20と、
音響波共振を発生させるための圧電誘導フィルム30であって、前記多結晶材料層の上方に位置し、多結晶である、圧電誘導フィルム30とを含む。
【0046】
本実施例では、第1の基板10の材質は、抵抗値が10KOhm.cmよりも大きいP型シリコンである。高抵抗値の基板材料を選択する原因として、第1の基板の上方に交流電気がある時、交流電気が電磁波を発生させ、電磁波が放射して一部の電気エネルギーを損失し、低周波条件において、放射損失が比較的小さい一方、高周波条件において、放射損失が増加してしまい、高抵抗値の基板材料を用いると、電磁波の放射を減少させ、電気エネルギーの損失を減少させることができるからである。
【0047】
本実施例では、前記パッド層20は、単層フィルム構造、即ち、多結晶材料層であり、前記多結晶材料層は、多結晶アルミナ、多結晶二酸化ケイ素又は多結晶炭化ケイ素を含む。
【0048】
別の実施例では、前記パッド層は、前記第1の基板と前記多結晶材料層との間に設けられる音響波反射層をさらに含む。前記音響波反射層の材料は、アルミナ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素又は炭化ケイ素を含む。
【0049】
説明すべきこととして、前記音響波反射層と前記多結晶材料層は、同一層であってもよく、この場合、前記パッド層の材料は、多結晶アルミナ、多結晶二酸化ケイ素又は多結晶炭化ケイ素を含む。音響波反射層の作用は、縦音響波が音響波反射層に伝送される時、圧電誘導フィルム内に反射され、音響波エネルギーの損失を減少させ、共振器のQ値を向上させることである。
【0050】
別の実施例では、前記第1の基板は、キャビティ又はブラッグ反射層を含む音響反射構造をさらに含む。前記音響反射構造は、圧電誘導フィルムから第1の基板に伝達された縦音響波を圧電誘導フィルム内に反射し、音響波のエネルギー損失をさらに減少させるために用いられる。
【0051】
実施例3
本発明の一実施例は、弾性表面波共振器の製造方法をさらに提供し、
図5は、本発明の一実施例による弾性表面波共振器の構造図を示し、
図5を参照し、前記方法は、
前記複合基板を提供することと、
前記圧電誘導フィルム30上に第1のインターディジタルトランスデューサ41及び第2のインターディジタルトランスデューサ42を形成することとを含む。
【0052】
前記圧電誘導フィルム30の表面の上方に第1の導電性フィルムを形成する。マグネトロンスパッタリング、蒸着などの物理的気相堆積又は化学的気相堆積法によって、圧電誘導フィルムの表面の上方に第1の導電性フィルムを形成することができる。第1の導電性フィルムの材質は、いずれかの適切な導電性材料、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、白金金、ニッケルなどの金属のうちの1種で製造されるか、又は上記合金で製造される。
【0053】
前記第1の導電性フィルムをパターン化し、第1のインターディジタルトランスデューサ41及び第2のインターディジタルトランスデューサ42を形成する。本実施例では、製作される共振器は、弾性表面波共振器(SAW)であり、前記第1の導電性フィルムのパターン化方法は、ドライエッチング、及びウェットエッチングを含む。そのうち、第1のインターディジタルトランスデューサ41は、互いに平行に交互する複数の第1の導電性フィンガーを含み、第2のインターディジタルトランスデューサ42は、互いに平行に交互する複数の第2の導電性フィンガーを含む。第1のインターディジタルトランスデューサ41と第2のインターディジタルトランスデューサ42とが互いに平行することは、2つの場合を含む。一方は、第1の導電性フィンガーと第2の導電性フィンガーとが互いに平行し、交互に設置され、他方は、第1のインターディジタルトランスデューサ41と第2のインターディジタルトランスデューサ42とが別々に設置され、第1の導電性フィンガーと第2の導電性フィンガーとが互いに平行するが、互いに交互しない。本実施例では、第1の場合に従って設置される。無論、第1のインターディジタルトランスデューサ41と第2のインターディジタルトランスデューサ42とは、交差しない限り、平行しなくてもよい。
【0054】
一実施例では、前記複合基板に音響反射構造が形成され、前記第1のインターディジタルトランスデューサ及び第2のインターディジタルトランスデューサは、前記音響反射構造が囲んだ領域の上方に形成される。
【0055】
図6を参照し、一実施例では、前記音響反射構造は、第1のキャビティ51であり、前記第1のキャビティ51を形成することは、
前記第1の基板10の、前記圧電誘導フィルムから離れる面(第1の基板の底面)に、底部から前記パッド層20の底面が露出される前記第1のキャビティ51をエッチングプロセスによって形成することと、
第2の基板50を提供し、前記第1の基板10の底面にボンディングし、前記第1のキャビティ51を密封することとを含む。
【0056】
前記第1のキャビティ51を形成する前、前記第1の基板10の厚さが0.5~5μmになるように、前記第1の基板10の底面を薄型化することをさらに含み、前記第2の基板50の厚さは、300~500μmである。
【0057】
別の実施例では、前記音響反射構造は、ブラッグ反射層であり、前記ブラッグ反射層を形成することは、
前記第1の基板の底面に、底部から前記パッド層が露出される第2のキャビティをエッチングプロセスによって形成することと、
前記第2のキャビティの底部に、少なくとも2セットインターリーブの第1の音響インピーダンス層及び第2の音響インピーダンス層を形成することとを含み、前記第1の音響インピーダンス層の硬度は、前記第2の音響インピーダンス層の硬度より高く、そのうち、前記第1の音響インピーダンス層の材料は、タングステンを含む金属又は、炭化ケイ素、ダイヤモンドを含む媒体で構成され、前記第2の音響インピーダンス層は、酸化ケイ素又は窒化ケイ素を含む。
【0058】
実施例4
本発明の一実施例は、上記の複合基板を含む弾性表面波共振器をさらに提供する。弾性表面波共振器の構造は、実施例3の、弾性表面波共振器の製造方法の部分を参照する。ここでこれ以上説明しない。
【0059】
多結晶の圧電誘導フィルムは、非結晶の圧電誘導フィルムに比べて比較的高い結晶化度及び比較的高い結合数を有することにより、弾性表面波フィルタの性能を向上させる。
【0060】
さらに、多結晶材料自体又は第1の基板と多結晶材料との間に音響波反射層を形成し、縦音響波が音響波反射層に伝送される時、圧電誘導フィルム内に反射され、音響波エネルギーの損失を減少させ、共振器のQ値を向上させる。
【0061】
説明すべきこととして、本明細書の各実施例については、いずれも関連する方式で説明され、各実施例の間の同じ部分及び類似部分は互いに参照すればよく、各実施例について重点的に説明するのはいずれも他の実施例との相違点である。特に、構成の実施例は、基本的に方法の実施例と類似しているため、説明は比較的簡単であり、関連点については、方法の実施例の一部の説明を参照すればよい。
【0062】
上記の説明は、本発明の好適な実施例についての説明にすぎず、本発明の範囲についての任意の限定ではなく、当業者が上記開示に従って行ったいかなる変更、修飾も、特許請求の範囲の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0063】
10-第1の基板、20-パッド層、30-圧電誘導フィルム、41-第1のインターディジタルトランスデューサ、42-第2のインターディジタルトランスデューサ、50-第2の基板、51-第1のキャビティ。