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特許7443570ネオジム鉄ボロン磁石及びその製造方法並びに応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ネオジム鉄ボロン磁石及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20240227BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240227BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240227BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20240227BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20240227BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240227BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01F1/057 150
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F3/00 F
B22F3/24 K
B22F3/24 L
C22C33/02 J
C22C33/02 K
H02K15/03 A
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022573291
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2021095528
(87)【国際公開番号】W WO2021238867
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】202010464304.9
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】史丙強
(72)【発明者】
【氏名】劉磊
(72)【発明者】
【氏名】馬丹
(72)【発明者】
【氏名】宿云▲ティン▼
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135529(JP,A)
【文献】特開2018-093202(JP,A)
【文献】特開2018-056188(JP,A)
【文献】特開2006-303433(JP,A)
【文献】特開2018-107928(JP,A)
【文献】特開2010-119190(JP,A)
【文献】特開2009-088206(JP,A)
【文献】特開2018-082145(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02254131(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0158582(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090250(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0213583(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0061568(US,A1)
【文献】特表2019-508879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 1/04- 1/05
C22C 5/00-25/00
C22C 27/00-28/00
C22C 30/00-30/06
C22C 33/02
C22C 35/00-45/10
H01F 1/00- 1/117
H01F 1/40- 1/42
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H02K 1/17
H02K 1/27- 1/2798
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ボロン磁石であって、化学式R1-R2-Fe-M-Bで表され、高保磁力区域と高残留磁気区域の複合構造を有し、
そのうち、R1は少なくともNdを含有する希土類元素であり、R2は少なくともDy及び/又はTbを含有する重希土類元素であり、Mは少なくともCoを含有する遷移金属元素であり、
前記ネオジム鉄ボロン磁石は、R2を含有する高保磁力区域を有すると共にR2を含有する高残留磁気区域を有し、
前記高残留磁気区域の表層及び磁石内部1mmでのR2濃度差△1≦0.1wt%であり、
前記高保磁力区域の表層及び前記ネオジム鉄ボロン磁石内部1mmでのR2濃度差△2≧0.15wt%であり、
R2を、R1-Fe-M-B基構造の基体磁石の表面の2つの対向する面のみに成膜し、
前記2つの対向する面は、前記磁石の磁化方向に垂直ではなく、且つ、前記磁石の成形時のプレス方向に垂直ではない2つの対向する面である、
ことを特徴とするネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項2】
前記ネオジム鉄ボロン磁石におけるR2の含有量≦1.0wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項3】
前記ネオジム鉄ボロン磁石におけるR2の含有量≦0.8wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項4】
前記ネオジム鉄ボロン磁石におけるR2の含有量≦0.5wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項5】
前記基体磁石は正六面体であり、
記高保磁力区域と高残留磁気区域の分布は、以下の図1に示される、ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
図1
【請求項6】
前記△2/△1≧1.5である、ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項7】
前記△2/△1≧2である、ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項8】
前記高保磁力区域の幅は1~5mmであり、且つ中心区域は高残留磁気区域を有し、そのうち、前記高保磁力区域は表層から磁石内部へ延びるように定義され、R2の濃度差が1%である場合、高保磁力区域の幅とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項9】
前記高保磁力区域の幅は1.5~4mmである、ことを特徴とする請求項8に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項10】
前記R1はNd元素を含む以外、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)及びスカンジウム(Sc)の中の少なくとも1種をさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項11】
前記ネオジム鉄ボロン磁石における前記R1の含有量は28~32wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項12】
前記R2はDy及び/又はTb元素を含む以外、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びイットリウム(Y)の中の少なくとも1種をさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項13】
前記MはCoを含む以外、Cu、Ga、Zr、Ti、Al、Mn、Zn及びWの中の少なくとも1種をさらに含む、ことを特徴とする請求項12に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項14】
前記ネオジム鉄ボロン磁石における前記Coの含有量は1~3wt%であり、
前記ネオジム鉄ボロン磁石におけるCoを除くMの他の遷移金属元素の含有量≦2wt%であり、
前記ネオジム鉄ボロン磁石における前記Bの含有量は0.5~1.3wt%であり、
前記ネオジム鉄ボロン磁石には不可避的な不純物がさらに含まれる、
ことを特徴とする請求項13に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項15】
下記のステップ:
R1-Fe-M-B基構造の基体磁石を製造又は準備し、少なくともDy及び/又はTbを含有する重希土類元素R2を前記基体磁石の表面の2つの対向する面に成膜し、次に拡散処理を行い、R2元素は基体磁石の粒界に沿って磁石の表面から内部に拡散し、粒界で濃化し、前記ネオジム鉄ボロン磁石を得るステップを含む、
ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ボロン磁石の製造方法。
【請求項16】
前記基体磁石は正六面体である、ことを特徴とする請求項15に記載のネオジム鉄ボロン磁石の製造方法。
【請求項17】
前記R2元素の磁石表面での成膜方法は、真空蒸着、マグネトロンスパッタリング又はコーティング方法から選択される、ことを特徴とする請求項15に記載のネオジム鉄ボロン磁石の製造方法。
【請求項18】
前記磁石の2つの対向する面に同量のR2元素を真空蒸着し、マグネトロンスパッタリングし、又はコーティングする、ことを特徴とする請求項15に記載のネオジム鉄ボロン磁石の製造方法。
【請求項19】
前記拡散処理の真空度<10 -2 Paである、ことを特徴とする請求項15に記載のネオジム鉄ボロン磁石の製造方法。
【請求項20】
前記拡散処理時に、まず1回目の昇温を行った後に保温し、次に急冷して降温し、さらに2回目の昇温と保温を行った後、拡散処理を完了させる、ことを特徴とする請求項15に記載のネオジム鉄ボロン磁石の製造方法。
【請求項21】
請求項に記載のネオジム鉄ボロン磁石を含む、ことを特徴とする磁性鋼。
【請求項22】
請求項に記載のネオジム鉄ボロン磁石を含む、ことを特徴とする埋め込み式モータ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、出願人の下記の先行出願の優先権:2020年5月27日付けで中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202010464304.9で、発明名称が「ネオジム鉄ボロン磁石及びその製造方法並びに応用」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ネオジム鉄ボロン磁石分野に属し、具体的にはネオジム鉄ボロン磁石及びその製造方法並びに応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
ネオジム鉄ボロン系焼結磁石は、第4世代の永久磁石材料として、その優れた磁気特性のため「磁気キング」と呼ばれ、自動車、風力発電、圧縮機、エレベーター及び産業自動化などの多くの分野で広く適用されている。
【0004】
高速モータの運転中に、巻線と鉄心による熱量により、モータ内のネオジム鉄ボロン系焼結磁石が高温環境に曝されるとともに、巻線の逆方向磁場からの作用によって熱減磁が発生しやすくなる。それには、高速モータ用のネオジム鉄ボロン磁石は、一定の保磁力を備える必要があることで十分な耐熱減磁機能を提供することにより、磁石が高温下でも磁場を安定的に出力できることを保証し、モータのパワー出力を確保する。
【0005】
従来技術では、磁石の保磁力を向上させるために、一般的には、ネオジム鉄ボロン磁石にDy(ジスプロシウム)及び/又はTb(テルビウム)などの重希土類元素を添加することで、磁石の異方性を向上させ、磁石の保磁力を向上させる目的を達成する。しかし、Nd(ネオジム)の代わりにDy及び/又はTbを添加することにより、Dy-Fe-B又はTb-Fe-Bが形成され、両者の磁気分極の強度はNd-Fe-Bより明らかに低いため、磁石の残留磁気が低下し、即ち、最終的に磁石が提供できる磁場強度が低下するため、モータパワーの低下を引き起こすか、又はモータのパワー出力を保証するようにモータ内の磁性鋼の使用量を増加する必要がある。同時に、重希土類は埋蔵量及び優れた特性のため、非常に高価であり、磁石のコストも重希土類の使用量の増加に伴って大幅に増加する。
【0006】
近年、重希土類の使用量を低減し、磁石の保磁力指標を向上させることは、多くの学者の研究の焦点の1つになっている。そのうち、現在、結晶粒微細化技術と拡散技術は、広く認められている最も効果的な2つの方法である。結晶粒微細化技術は、結晶粒のサイズを縮小し減少させ、できる限り単一ドメインの結晶を形成し、単一の磁石結晶粒内の磁区の数を減らし、結晶粒の内部欠陥を減らし、磁石の保磁力を向上させる目的を達成することである。しかし、結晶粒微細化技術による保磁力の改善効果は限定され、且つ結晶粒のサイズの減少に伴い、磁石の酸化活性の増加は不可避的であり、さらに結晶粒のサイズの減少により磁化しにくいという問題が生じるため、現在の設備や工具の精度と信頼性については、更に厳しい要件が求められ、産業上の量産が極めて困難である。拡散技術は、Dy及び/又はTbなどの重希土類元素を精度よく投入し、磁石の表面から磁石の内部に拡散させ、粒界で濃化して磁石の保磁力を向上させることである。
【0007】
粒界拡散技術は、極少量の重希土類を使用することで、残留磁気が顕著に低下することなく、保磁力を大幅に向上させることができるため、業界で広く認知され、適用されている。粒界拡散技術は、ネオジム鉄ボロン業界における古典的な拡散理論の再度の革新的な発展であり、その主な原理は、高温条件下で、Dy及び/又はTbなどの重希土類元素が粒界相に沿って、磁石の表面から磁石の中心に拡散し、粒界相で濃化されて存在し、主相結晶粒の外縁層のNdを置換し、主相結晶粒の外縁にDy又はTbが濃化した1層のシェル構造を形成し、結晶粒の外縁での異方性磁場を高めて、保磁力を大幅に向上させる効果を達成することである。粒界拡散技術は、その拡散駆動力がDy及び/又はTbの濃度差であるため、磁石の内部まで入り込んだ後、磁石の表面から内部へDy及び/又はTbの濃度差が形成され、さらにそのHcjも磁石の表面から内部へ勾配分布の現象が示される。
【0008】
自動車駆動モータ用磁性鋼や空調圧縮機モータ用磁性鋼のような高速運転モータに埋め込まれるように組み立てられる磁性鋼の場合、実際の使用プロセスにモータ全体の温度が上昇することによって引き起こされる熱減磁は、全体として均一に発生することではなく、コーナー部、特にモータのケイ素鋼板と接触する4つのエッジで発生することがよくある。磁石の他の区域は、逆に消磁が発生しにくい。粒界拡散技術は、その独特なHcjの分布規律により、高速運転の埋め込まれるように組み立てられるモータで広く認知され、適用されている。
【0009】
文献『Anisotropic diffusion mechanism in grain boundary diffusion processed Nd-Fe-B sintered magnet』には、ネオジム鉄ボロン磁石が、異なる方向に拡散処理を行い、その拡散効果が一致せず、そのうち、磁化方向に沿ったその拡散効果が最適であり、拡散材料が更に奥深い磁石の内部へ拡散でき、非磁化方向に、拡散材料の拡散深さが限定され、主に材料の表層位置に集中することが記載されている。これに対応して、磁石が磁化方向に拡散する場合、そのHcjが大幅に増加すると同時に、そのBrの減少もわずか大きくなり、非磁化方向に拡散する場合、大部分の拡散材料が磁石の表層位置に集中し、磁石の内部構造が不均一で、直角度が比較的悪く、さらに磁石の減磁耐性に影響を与えることも決定する。
【0010】
通常、業界の大部分の企業や学者は、磁化方向への拡散、又は磁石の6つの面のいずれにも拡散を行うことを研究し、このように少なくとも磁化方向への拡散を保証することで、最高の拡散効果を実現し、Hcjの大幅の向上を達成する。
【0011】
特許文献CN 101939804Aには、磁石の表面に磁化方向に平行な4つの面をコーティングすることにより、磁石は特に磁石の縁部で比較的高い保磁力を得ることができ、高温下でも消磁しにくく、永久磁石回転モータに適用されることが記載されている。当該特許文献は、モータの実際の運行状態と拡散磁石の特別な規律とを効果的に組み合わせ、磁石の減磁耐性を保証した基礎上、磁石の磁束を効果的に維持する。しかし、磁化方向に平行な磁石の4つの表面で拡散材料をコーティングすると、その磁石の内部構造が不均一で、直角度が悪いという問題は依然として解決されておらず、その減磁耐性は向上するが、向上に限界がある。磁化方向に平行な4つの面をコーティングし、浸漬法を使用する場合、磁化方向に垂直な2つの対向する面を遮断する必要があり、且つ重力の作用により拡散材料が磁石の表面での分布が不均一であり、マグネトロンスパッタリングを使用する場合は、4つの面全てに拡散材料を付着させることには複数回処理する必要があり、生産効率が低く、量産コストが高い。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明は、上記の技術問題と実際量産の困難さを改善するために、ネオジム鉄ボロン磁石及びその製造方法並びに応用を提供する。
【0013】
ネオジム鉄ボロン磁石であって、化学式R1-R2-Fe-M-Bで表され、前記ネオジム鉄ボロン磁石は高保磁力区域と高残留磁気区域の複合構造を有し、
そのうち、R1は少なくともNdを含有する希土類元素であり、R2は少なくともDy及び/又はTbを含有する重希土類元素であり、Mは少なくともCoを含有する遷移金属元素である。
【0014】
好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン磁石におけるR2の含有量≦1.0 wt%であり、例えば≦0.8 wt%、好ましくは≦0.5 wt%である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記ネオジム鉄ボロン磁石は、R2の含有量が高い高保磁力区域を有すると共にR2の含有量が低い高残留磁気区域を有する。例えば、前記高保磁力区域と高残留磁気区域の分布は基本的に図1に示される。
【0016】
そのうち、前記高残留磁気区域の表層及び磁石内部約1 mmでのR2濃度差△1≦0.1%であり、
そのうち、前記高保磁力区域の表層及び前記ネオジム鉄ボロン磁石内部約1 mmでのR2濃度差△2≧0.15%である。
【0017】
そのうち、前記△2/△1≧1.5であり、好ましくは△2/△1≧2であり、例示的には△2/△1=5.5、6.33、7.4である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記高保磁力区域の幅は1~5 mm、好ましくは1.5~4 mmであり、且つ中心区域は高残留磁気区域を有し、磁石の磁束の減少を効果的に回避することができる。そのうち、前記高保磁力区域は表層から磁石内部へ延びるように定義され、R2の濃度差が1%である場合、高保磁力区域の幅とする。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記ネオジム鉄ボロン磁石は、基本的に図1に示される構造を有する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記R1はNd元素を含む以外、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)及びスカンジウム(Sc)の中の少なくとも1種をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、ネオジム鉄ボロン磁石における前記R1の含有量は28~32 wt%であり、例えば29~31 wt%、例示的には28 wt%、29 wt%、30 wt%、31 wt%、32 wt%である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記R2はDy及び/又はTb元素を含む以外、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びイットリウム(Y)の中の少なくとも1種をさらに含んでもよい。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記Mは、Coを含む以外、Cu、Ga、Zr、Ti、Al、Mn、Zn及びWなどの中の少なくとも1種をさらに含んでもよく、例えば、MはCo、Al、Cu及びGaの中の少なくとも1種から選ばれる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ネオジム鉄ボロン磁石における前記Coの含有量は1~3 wt%であり、例えば1.5~2.5 wt%、例示的には1 wt%、1.5 wt%、2 wt%、2.5 wt%、3 wt%である。
【0025】
本発明の実施形態によれば、ネオジム鉄ボロン磁石におけるCoを除くMの他の遷移金属元素の含有量≦2 wt%であり、例えば≦1.5 wt%、また例えば≦1 wt%、例示的には0.1 wt%、0.15 wt%、0.2 wt%、0.3 wt%、0.35 wt%、0.4 wt%、0.5 wt%、0.6 wt%、0.7 wt%、0.8 wt%、0.9 wt%、1.0 wt%である。
【0026】
本発明の実施形態によれば、ネオジム鉄ボロン磁石における前記Bの含有量は0.5~1.3 wt%であり、例えば0.8~1.05 wt%、例示的には0.8 wt%、0.9 wt%、0.98 wt%、1.0 wt%、1.05 wt%である。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記ネオジム鉄ボロン磁石には、C、Nなどの中の少なくとも1種のような不可避的な不純物がさらに含まれる。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記ネオジム鉄ボロン磁石は優れた減磁耐性を有する。例えば、磁性鋼の動作温度下で、ネオジム鉄ボロン磁石の直角度≧0.9である。磁石の減磁耐性は、主に磁石自体の減磁耐性とモータの動作負荷点に依存する。動作温度下での磁石の直角度は、磁石自体の減磁耐性とモータ動作負荷点とのマッピング関係を決定し、直角度が高いほど、磁石自体の減磁耐性が高くなり、モータ動作負荷点による影響が小さくなる。
【0029】
本発明は、以下のステップを含む上記ネオジム鉄ボロン磁石の製造方法をさらに提供する。
【0030】
R1-Fe-M-B基構造の基体磁石を製造又は準備し、少なくともDy及び/又はTbを含有する重希土類元素R2を前記基体磁石の表面の2つの対向する面に成膜し、次に拡散処理を行い、R2元素は基体磁石の粒界に沿って磁石の表面から内部に拡散し、粒界で濃化し、前記ネオジム鉄ボロン磁石を得る。
【0031】
そのうち、前記R1、R2、M及びBはいずれも上記した意味と含有量を有する。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記基体磁石は、本分野での既知の方法で製造して得ることができ、例えば溶錬、粉末化、プレス成形及び熱処理などのステップによって製造して得ることができる。
【0033】
例えば、上記の各元素の含有量に従って原料粉末を配合し、原料粉末は加熱(例えば1400~1520℃)により溶鋼に溶融され、急冷による降温後、核形成し、結晶化し、徐々に成長して合金フレークを形成する。
【0034】
例えば、前記粉末化は、ジェットミル粉砕法を使用して、平均粒径が1~5 μm、好ましくは2~4 μmのジェットミル粉末を得る。
【0035】
例えば、プレス成形前に、前記ジェットミル粉末に本分野での既知の潤滑剤を添加し、十分に混合した後、外部磁場の作用下で粉末をプレス成形する。
【0036】
例えば、前記熱処理の温度は1050~1100℃であり、例示的には1070℃、1075℃である。前記熱処理の保温時間は200~400 minであり、例示的には270 min、300 minである。
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記基体磁石は正六面体である。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記2つの対向する面は、基体磁石の磁化方向に垂直ではなく、且つ基体磁石の成形時のプレス方向(即ち磁化方向)に垂直ではない2つの対向する面である。具体的には図2に示される。R2元素はこの2つの対向する面に成膜することで、拡散した重希土類元素の有効利用率を更に効果的に向上させ、重希土類元素の浪費を回避し、且つ最大限に磁石の残留磁気の低下による影響を回避することができる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、前記R2元素の基体磁石表面での成膜方法は、真空蒸着、マグネトロンスパッタリング、コーティングなどの方法を含むが、これらに限定されない本分野での既知の方法を選択することができる。例えば、前記基体磁石の2つの対向する面に同量のR2元素を真空蒸着し、マグネトロンスパッタリングし、又はコーティングする。例示的には、それぞれの面において、R2元素の使用量は≦0.5 wt%、例えば0.4 wt%、0.2 wt%である。
【0040】
本発明の実施形態によれば、前記拡散処理の真空度<10-2 Paである。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記拡散処理時に、まず1回目の昇温を行った後に保温し、次に急冷して降温し、さらに2回目の昇温と保温を行った後、拡散処理を完了させる。例えば、前記1回目の昇温に至る温度は850~950℃であり、例えば880~930℃、例示的には900℃である。例えば、前記1回目の保温時間は500~700 minであり、例えば550~650 min、例示的には600 minである。例えば、前記急冷して降温に至る温度は15~40℃であり、例えば20~35℃、例示的には25℃(室温)である。例えば、前記急冷による降温の速度は5~30℃/minであり、例えば10~20℃/min、例示的には5℃/min、10℃/min、15℃/min、20℃/min、25℃/min、30℃/minである。例えば、前記2回目の昇温に至る温度は500~600℃であり、例えば520~580℃、例示的には550℃である。例えば、前記2回目の保温時間は200~300 minであり、例えば220~270 min、例示的には240 minである。
【0042】
本発明は、上記方法により製造して得たネオジム鉄ボロン磁石をさらに提供する。
【0043】
本発明は、埋め込み式モータにおける上記ネオジム鉄ボロン磁石の応用をさらに提供する。
【0044】
本発明は、前記ネオジム鉄ボロン磁石を含む磁性鋼をさらに提供する。
【0045】
本発明は、上記ネオジム鉄ボロン磁石及び/又は磁性鋼を含む埋め込み式モータをさらに提供する。好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン磁石及び/又は磁性鋼は、前記モータに埋め込まれるように組み立てられている。
【0046】
本発明の有益な効果:
本発明のネオジム鉄ボロン磁石は少量のDy/Tbを使用することで、磁石の減磁に対する高温耐性を大幅に向上させ、且つ磁石の磁束の減少を抑制することができ、埋め込み式高速モータに適用できる。当該磁石の製造方法により、さらに材料の利用率及び生産効率を大幅に向上させることができ、量産の実現性を有する。
【0047】
発明者は、重希土類元素の拡散方向が磁石のC軸に平行である場合、磁石の磁化方向に平行な方向に沿った重希土類元素の拡散深さが最大であり、且つ拡散効果が最適であり、重希土類元素が磁石の内部に拡散し、磁石の表面から磁石の中心区域へ保磁力の勾配分布を形成することができることを見出した。しかし、埋め込み式モータに適用された磁石の場合、図3に示すように、消磁が発生しやすい区域は最表面の一層のみにあり、内部にほとんど消磁が発生せず、即ち、磁石の内部に拡散した重希土類元素が浪費であり、且つ拡散過程では主相結晶粒の内部への拡散が不可避的であるため、磁石の残留磁気が低下し、モータの出力パワーの大きさに影響を与える。
【0048】
発明者は、磁石のプレス方向に垂直な表面に重希土類の成膜、拡散を行った場合、磁化方向への拡散と比較して、拡散深さが非常に浅く、保磁力の増幅が比較的低く、且つ磁石の動作温度下での直角度<0.9で非常に悪く、モータ運行時の磁石の減磁耐性に大きく影響を与えることをさらに見出した。磁石のプレス方向に垂直ではなく、且つ磁化方向に垂直ではない磁石の2つの対向する面に重希土類の成膜、拡散を行った場合、重希土類元素の拡散深さが同様に比較的小さいが、磁石の保磁力の増幅は、磁石のプレス方向への拡散と磁化方向への拡散との間にあり、且つ動作温度下での直角度≧0.9である。
【0049】
溶錬工程においてフレークが冷却し、結晶化して成長する場合、主相の結晶粒は接触面から自由面へ成長する時にC軸に垂直に成長し、フレークの断面では主相のC軸が隣接する2つの粒界相に垂直であると示されている。フレークがHD破砕を受ける場合、粒界から断裂され、即ち、C軸により指向された主相の結晶粒表面の前端と後端はいずれも一部の粒界相を付帯している。ジェットミルで微粉末に粉砕された後、磁化中にプレスを行う時に、磁場の作用下で主相の結晶粒が偏向し、次にプレスを行う時に、プレス方向に垂直な結晶粒の間には粒界相がなく、又は非常に薄い粒界相を有し、プレス方向に平行な結晶粒の間での粒界相が比較的厚いと示されている。固液焼結段階では、比較的厚い粒界相が熔融して液相になり、フラックスの役割を果たし、主相結晶粒の成長を促進し、又は、毛細管張力の原理によって隣接する2つの主相結晶粒の間に充填して粒界相を形成し、又は、比較的大きい三角粒界相又は比較的厚い二元粒界相を形成し、RE元素は活性があるため、その間に希土類酸化物などの不純物化合物を形成しやすくなる。従って、プレス方向に平行な粒界相の均一性が比較的悪く、不純物が多く、置換拡散反応が発生しにくいため、プレス方向に沿って拡散した磁石保磁力の増幅が小さくなり、直角度が低くなる。プレス方向に垂直である方向において、粒界相がなく又は粒界相が比較的薄いため、焼結時にプレス方向に平行な粒界相の液化充填により、粒界相が修復され、連続的で均一的な薄い粒界相が形成され、置換拡散反応が発生しやすいが、磁石のC軸に垂直であり、その拡散深さ及び効果は配向方向への拡散よりもわずかに悪い。従って、プレス方向と拡散方向に同時に垂直な拡散は、その拡散深さ及び拡散効果がモータ運行時の磁石の実際の消磁しやすい区域と高度に一致し、重希土類の効率的な適用を達成し、且つ直角度が≧0.9であることを確保することができ、磁石の減磁耐性を保証する。
【0050】
磁石の磁化方向に垂直な表面に重希土類の成膜が行われていないため、磁化方向に垂直な表面の大部分の区域での重希土類の含有量が比較的低く、その残留磁気の低下が顕著に抑制され、磁石の磁束の大きさが維持されることを効果的に保証する。磁石の磁化方向に垂直な表面を除いて、磁石ブロックの4つの表面に成膜と拡散が行われる特許文献CN 101939804Aと比較して、本発明は、磁石の2つの対向する面のみに成膜と拡散が行われ、生産工程が簡略化されるだけでなく、重希土類の使用量が低減され、産業化生産の実現性が大幅に向上し、埋め込み式高速モータの応用分野に適用し、埋め込み式高速モータが動作温度で高速運転する時、その消磁しやすい区域は磁石のモータケイ素鋼板部品と接触するエッジ位置であるため、エッジが高保磁力を有する時、磁性鋼の高温熱減磁現象の発生を効果的に抑制することができる。埋め込み式モータ中の磁性鋼の、消磁が発生する表層区域の範囲が比較的小さく、その拡散によって得られた高保磁力区域は、磁石の消磁しやすい区域に対応する(図3に示す)。図3に示される埋め込み式組立法により、磁石の減磁耐性を効果的に向上させ、且つ磁石の磁束の減少を顕著に抑制することができる。
【0051】
〔図面の簡単な説明〕
図1]本発明にかかるネオジム鉄ボロン磁石の高残留磁気区域と高保磁力区域の模式図である。
【0052】
図2]本発明にかかるネオジム鉄ボロン磁石の拡散面の模式図である。
【0053】
図3]埋め込み式モータ(a)及び磁性鋼(b)の構成図である。
【0054】
図4]保磁力と拡散深さとの関係図である。
【0055】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0056】
特に明記しない限り、下記の実施例で使用される原材料及び試薬はいずれも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0057】
実施例において、重希土類元素の濃度差の測定方法は次の通りである。
【0058】
高残留磁気区域:磁石の磁化方向に垂直な面の中心位置の表層及び延びた磁石内部から、1*1*1 mmの小さな試験片をそれぞれ加工し、酸浸漬により全体を熔融した後、分光法によりそのR2の含有量及びR2の含有量の差△1を測定した。
【0059】
高保磁力区域:高残留磁気区域から離れた当該区域の1つの側面を表層として定義し、表層及び延びた磁石内部から、1*1*1 mmの小さな試験片をそれぞれ加工し、酸浸漬により全体を熔融した後、分光法によりそのR2の含有量及びR2の含有量の差△2を測定した。
【0060】
本発明にかかる直角度は、最終磁石をサンプルの標準サイズとして、磁気測定器によりテストされた。本発明にかかる保磁力の勾配分布は、磁石上で加工された1*1*1 mmの試験片によって、強パルスPFM06装置でテストされた。
【0061】
実施例1
R1-Fe-M-B基磁石を製造し、下記の成分配合比に従って原料合金を製造した。そのうち、R1はNdであり、含有量は30.5 wt%であり、Coの含有量は1.5 wt%であり、MはAl、Cu及びGaであり、含有量はそれぞれ0.1 wt%、0.1 wt%及び0.15 wt%であり、Bの含有量は0.95%であり、残部はFeとC、Nなどの不可避的な不純物である。ネオジム鉄ボロン基材磁石の具体的な製造プロセスは次の通りである。
【0062】
a)溶錬:真空誘導溶解炉を使用して、上記準備した原材料を坩堝に入れ、1480℃に加熱し、原材料を溶鋼に溶融し、完全に溶解した溶鋼を急冷ロールに注ぎ、急速に降温し、ロール表面に核を形成し、結晶化し、徐々に成長して合金フレークを形成した。
【0063】
b)粉末化:得られた合金フレークをHD破砕処理し、次にジェットミル研磨を行い、平均粒径SMDが3.0 μmのジェットミル粉末を得た。
【0064】
c)プレス成形:ジェットミル粉末に0.3 wt%の潤滑剤を添加し、ミキサーを使用して材料を120 min混合した後、コンプレッサーのフィルムキャビティに入れ、2.5 Tの外部磁場の作用下でプレス成形する。
【0065】
d)焼結:プレスした圧粉体を焼結炉に入れ、1075℃で300 min保温し、次に20℃/minの冷却速度で室温まで急冷し、ネオジム鉄ボロン系焼結基材磁石を製造した。
【0066】
マグネトロンスパッタリング法を使用して、基材磁石を10-10-10 mmの小さなシートに加工し、表1に従って基材磁石の表面にDy金属をスパッタコーティングした。
【0067】
【表1】
【0068】
次に表1の方式に従って処理された磁石をそれぞれ拡散炉装置に入れて拡散処理を行い、真空充填度が<10-2 Paに達し、次に900℃まで昇温し、600 min保温し、15℃/minの速度で室温まで急冷した後にさらに550℃まで昇温して、240 min保温し、磁石の完成品を得た。その完成品の磁気特性と成分をテストし、テスト結果は表2に示される。
【0069】
【表2】
【0070】
上記の実験を比較して、実験1、2、3、4を比較して、保磁力、直角度及び磁気モーメントの指標を総合的に比較すると、実験4の総合性能が最も高く、且つ高保磁力区域の幅は2.4 mmであり、モータ高速運転時の消磁しやすい区域をカバーすることができる。さらに、拡散方向に従って試験片を加工し、保磁力と拡散深さとの関係をテストし、図4に示される。図から分かるように、磁化方向に沿って拡散する実験2は、その保磁力の平均値が最も高く、且つ拡散深さに沿った変動が最も小さく、プレス方向に沿って拡散する実験3は、その保磁力が拡散表面で鋭いピークを形成し、磁石内部の1 mmでの保磁力には急激に低下する現象があり、且つ中心位置の保磁力が非拡散磁石とほぼ相当しており、実験4は、磁石表面層0~3 mmでのその保磁力の性能が段階的に低下し、最外層の保磁力が実験2の磁化方向への拡散よりも優れ、即ちその最表層の減磁耐性が実験2よりも優れ、>3 mmの箇所で徐々に平坦になり、且つ保磁力が非拡散磁石より約250 kA/m高く、その減磁耐性も一定の程度向上した。
【0071】
実施例2
R1-Fe-M-B基磁石を製造し、下記の成分配合比に従って原料合金を製造した。そのうち、R1はNdであり、含有量は31 wt%であり、Dyの含有量は0.5 wt%であり、Coの含有量は2.0 wt%であり、MはAl、Cu及びGaであり、含有量はそれぞれ0.15 wt%、0.15 wt%及び0.1 wt%であり、Bの含有量は0.98%であり、残部はFeとC、Nなどの不可避的な不純物である。ネオジム鉄ボロン基材磁石の具体的な製造プロセスは次の通りである。
【0072】
a)溶錬:真空誘導溶解炉を使用して、上記準備した原材料を坩堝に入れ、1460℃に加熱し、原材料を溶鋼に溶融し、完全に溶解した溶鋼を急冷ロールに注ぎ、急速に降温し、ロール表面に核を形成し、結晶化し、徐々に成長して合金フレークを形成した。
【0073】
b)粉末化:得られた合金フレークをHD破砕処理し、次にジェットミル研磨を行い、平均粒径SMDが2.8 μmのジェットミル粉末を得た。
【0074】
c)プレス成形:ジェットミル粉末に0.2 wt%の潤滑剤を添加し、ミキサーを使用して材料を180 min混合した後、コンプレッサーのフィルムキャビティに入れ、2.5 Tの外部磁場の作用下でプレス成形する。
【0075】
d)焼結:プレスした圧粉体を焼結炉に入れ、1070℃で270 min保温し、次に10℃/minの冷却速度で室温まで急冷し、ネオジム鉄ボロン系焼結基材磁石を製造した。
【0076】
基材磁石をそれぞれ、40-8-20と40-8-2.5の方形シートに加工し(20と2.5方向は磁化方向の厚さ)、表3に従って、コーティング法により基材磁石の表面でTb金属をコーティングした。
【0077】
【表3】
【0078】
次に表3の方式に従って処理された磁石を拡散炉装置に入れて拡散処理を行い、真空充填度が<10-2 Paに達し、次に900℃まで昇温し、600 min保温し、15℃/minの速度で室温まで急冷した後にさらに550℃まで昇温して、240 min保温し、磁石の完成品を得た。実験6の拡散処理後の40-8-20の方形シートを40-8-2.5の試験片に加工し、実験5と実験7の試験片と共に磁気特性と成分をテストした。テスト結果は表4に示される。
【0079】
【表4】
【0080】
実験6は、実験7と比較して、その3 mmの箇所での保磁力はわずか低いが、最表層の保磁力が実験7より156 kA/m高く、磁石に対する外部磁場の消磁作用を効果的に抑制することができ、同時に、磁気モーメントが約0.6%高くなり、磁気モーメントの減少を効果的に回避し、磁石の磁場の効率的な出力を保証した。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されないものである。本発明の要旨と原則内で行われた修正、等価置換、改良などは、何れも本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】本発明にかかるネオジム鉄ボロン磁石の高残留磁気区域と高保磁力区域の模式図である。
図2】本発明にかかるネオジム鉄ボロン磁石の拡散面の模式図である。
図3】埋め込み式モータ(a)及び磁性鋼(b)の構成図である。
図4】保磁力と拡散深さとの関係図である。
図1
図2
図3
図4