(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】高速投入器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/666 20060101AFI20240227BHJP
H01H 33/64 20060101ALI20240227BHJP
H02B 13/035 20060101ALI20240227BHJP
H01H 33/664 20060101ALI20240227BHJP
H01H 33/662 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01H33/666 L
H01H33/64 A
H02B13/035 301H
H01H33/664 B
H01H33/662 R
(21)【出願番号】P 2022576940
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002455
(87)【国際公開番号】W WO2022157978
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 和長
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 芳充
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186162(JP,A)
【文献】特開平5-190063(JP,A)
【文献】実開昭52-121653(JP,U)
【文献】特開昭60-044932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/666
H01H 33/64
H02B 13/035
H01H 33/664
H01H 33/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸上で開離して対向配置され、かつ互いに接近可能な駆動電極および対向電極を有し、前記駆動電極および前記対向電極の間に外部から電圧が印加される接点部と、
前記駆動電極に接続されており、投入動作時に前記駆動電極に対して前記対向電極に接近する第1方向の駆動力を与える駆動部、前記駆動電極に対して前記対向電極から開離する第2方向に常に復帰力を与える駆動側付勢部、および定常時に前記駆動電極と前記対向電極とが開離した状態で前記駆動電極の前記第2方向の変位を規制する駆動側ストッパを有する駆動機構部と、
前記対向電極に接続されており、前記対向電極に対して前記駆動電極に接触する前記第2方向に常に復帰力を与える対向側付勢部、および定常時に前記駆動電極と前記対向電極とが開離した状態で前記対向電極の前記第2方向の変位を規制する対向側ストッパを有する衝撃緩衝部と、
を備え、
前記投入動作は、
前記駆動電極が前記駆動部の駆動力によって前記対向電極に接近する接近ステップと、
前記駆動電極が前記対向電極に接触して前記対向電極と共に前記第1方向に変位した後、前記駆動側付勢部の復帰力、および前記対向側付勢部の復帰力によって前記対向電極と共に変位方向を前記第2方向に反転する接触ステップと、
前記対向電極が前記対向側ストッパによって前記第2方向の変位を規制され、前記駆動電極が前記対向電極から開離する開離ステップと、
を備える、
高速投入器。
【請求項2】
前記投入動作は、
前記接近ステップにおいて、前記駆動電極が前記駆動部の駆動力によって前記対向電極に接近して通電を開始し、
前記接触ステップにおいて、前記駆動電極が前記対向電極との通電を継続し、
前記開離ステップにおいて、前記駆動電極が前記対向電極から開離しつつ、前記駆動電極および前記対向電極の間にアーク放電を発生させる、
請求項1に記載の高速投入器。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記駆動電極に接続された良導体の反発体と、
前記反発体と対向配置されたコイルと、
を備え、
前記駆動部が前記駆動電極に与える駆動力は、前記コイルに電流を印加することで前記反発体に発生する誘導反発力である、
請求項1または請求項2に記載の高速投入器。
【請求項4】
前記駆動側付勢部および前記対向側付勢部のうち少なくともいずれか一方はコイルばねである、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高速投入器。
【請求項7】
前記駆動電極および前記対向電極の接触部を収容し、絶縁ガスが封入された圧力容器をさらに備え、
前記駆動電極および前記対向電極それぞれの一部は、前記圧力容器の気密を保ちつつ前記圧力容器の外部に延出している、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の高速投入器。
【請求項8】
前記絶縁ガスは、六フッ化硫黄ガス、窒素、二酸化炭素、酸素および空気のうち少なくともいずれか1つにより構成されている、
請求項7に記載の高速投入器。
【請求項9】
前記衝撃緩衝部は、前記圧力容器に収容されている、
請求項7または請求項8に記載の高速投入器。
【請求項10】
前記駆動電極および前記対向電極の接触部を収容する真空容器をさらに備え、
前記駆動電極の一部は、前記真空容器の気密を保ちつつ前記真空容器の外部に延出している、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の高速投入器。
【請求項11】
前記衝撃緩衝部は、前記真空容器に収容されている、
請求項10に記載の高速投入器。
【請求項12】
前記駆動電極および前記対向電極における少なくとも一部は、耐アーク性を有する金属材料により形成されており、
前記金属材料は、銅クロム合金である、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の高速投入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高速投入器に関する。
【背景技術】
【0002】
定常時は高電圧が印加された端子間の絶縁を保持し、任意のタイミングで高速に端子間を導通させて大電流を通電可能とする投入器がある。投入器は、電力送電系統における高速接地装置やバイパススイッチ、直流遮断器の転流回路用投入器、核融合プラズマ生成用の電流源投入器など、様々な用途で使用されている。
【0003】
投入器の一例として、電極駆動式投入器がある。電極駆動式投入器は、定常時に高電圧が印加される対向配置された一対の主電極を持つ。一対の主電極は、一方の主電極を可動電極とされ、他方の主電極を固定電極とされている。可動電極は、固定電極に対して離接動作できるように配置されている。投入動作時に、可動電極が駆動部によって固定電極と接触する方向に動作する。可動電極と固定電極との間の距離が、印加電圧に対する絶縁距離以下となると、可動電極と固定電極との間でアーク放電が発生し、投入器は通電を開始する。可動電極はアーク放電を継続しつつ固定電極と接触する。投入器は、可動電極が固定電極に接触した状態で通電を継続し、投入動作を終了する。
【0004】
しかし、電極駆動式投入器では、電極間でのアーク放電発生後、電極同士を接触させた状態で投入動作を終了する。このため、大電流投入時において、アーク放電によって融解した電極表面の金属が冷却され、電極同士がスポット的に溶着する。溶着した電極同士は開路動作時に引き離され、溶着部が千切れることで電極に鋭利な突起が形成される。この鋭利な突起は、電極間が開き高電圧が印加される定常時において電界集中部となり、電極間の絶縁性能を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開昭55-163724号公報
【文献】日本国特開2019-186162号公報
【文献】日本国実公昭57-007127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電極間の溶着から生じた突起による耐電圧性能の低下を抑制できる高速投入器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の高速投入器は、接点部と、駆動機構部と、衝撃緩衝部と、を持つ。接点部は、駆動電極および対向電極を持つ。駆動電極および対向電極は、互いに同軸上で開離して対向配置されている。駆動電極および対向電極は、互いに接近可能である。駆動電極および対向電極の間には、外部から電圧が印加される。駆動機構部は、駆動電極に接続されている。駆動機構部は、駆動部、駆動側付勢部および駆動側ストッパを持つ。駆動部は、投入動作時に駆動電極に対して対向電極に接近する第1方向の駆動力を与える。駆動側付勢部は、駆動電極に対して対向電極から開離する第2方向に常に復帰力を与える。駆動側ストッパは、定常時に駆動電極と対向電極とが開離した状態で駆動電極の第2方向の変位を規制する。衝撃緩衝部は、対向電極に接続されている。衝撃緩衝部は、対向側付勢部および対向側ストッパを持つ。対向側付勢部は、対向電極に対して駆動電極に接触する第2方向に常に復帰力を与える。対向側ストッパは、定常時に駆動電極と対向電極とが開離した状態で対向電極の第2方向の変位を規制する。投入動作は、接近ステップと、接触ステップと、開離ステップと、を持つ。接近ステップでは、駆動電極が駆動部の駆動力によって対向電極に接近する。接触ステップでは、駆動電極が対向電極に接触して対向電極と共に第1方向に変位した後、駆動側付勢部の復帰力、および対向側付勢部の復帰力によって対向電極と共に変位方向を第2方向に反転する。開離ステップでは、対向電極が対向側ストッパによって第2方向の変位を規制され、駆動電極が対向電極から開離する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図10】第3の実施形態の高速投入器を示す断面図。
【
図11】第3の実施形態の高速投入器を示す断面図。
【
図12】第3の実施形態の高速投入器を示す断面図。
【
図13】第4の実施形態の高速投入器を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の高速投入器を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を示す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0010】
(第1の実施形態)
図1から
図4は、第1の実施形態の高速投入器を示す断面図である。
図1は、非通電の遮断状態にある定常時の高速投入器1を示している。
図2から
図4は、通電可能な投入状態にある高速投入器1の投入動作時の動作過程を示している。
【0011】
図1に示すように、高速投入器1は、接点部2と、駆動機構部3と、衝撃緩衝部4と、を備える。接点部2は、駆動機構部3および衝撃緩衝部4に接続されている。
【0012】
接点部2について説明する。
接点部2は、駆動電極11と、対向電極12と、圧力容器13と、を備える。
【0013】
駆動電極11および対向電極12は、それぞれ棒状に形成され、同軸上に配置されている。駆動電極11および対向電極12は、駆動電極11の先端、および対向電極12の先端が互いに開離して対向するように配置されている。駆動電極11および対向電極12は、互いに接近可能である。駆動電極11および対向電極12は、相対的に直進動作をすることで、それぞれの先端が互いに離れた開路状態と、それぞれの先端が互いに接触する閉路状態と、を切り替え可能である。以下、駆動電極11および対向電極12の延在方向を軸方向と称する。
【0014】
駆動電極11は、先端に設けられた放電部11aと、放電部11aに接続された通電軸11bと、を備える。対向電極12は、先端に設けられた放電部12aと、放電部12aに接続された通電軸12bと、を備える。放電部11a,12aは、アーク放電への耐損耗性(耐アーク性)が高い材料で形成されている。通電軸11b,12bは、導電性の高い材料で形成されている。本実施形態では、アーク放電への耐損耗性が高い材料は銅タングステン合金である。本実施形態では、導電性の高い材料は銅合金である。ただし、駆動電極11および対向電極12を形成する材料は上記材料に限定されない。駆動電極11および対向電極12のうち少なくとも放電部11a,12aは、アーク放電への耐損耗性が高い金属材料により形成されていればよく、銅タングステン合金の他に、例えば銅クロム合金で形成されていてもよい。また、駆動電極11および対向電極12それぞれは、放電部11a,12aから通電軸11b,12bにわたって同一の材料で形成されていてもよい。
【0015】
圧力容器13は、絶縁筒14と、第1フタ15と、第2フタ16と、を備える。
絶縁筒14は、円筒状の絶縁物容器14aと、絶縁物容器14aの両端に固定された金属製のフランジ14b,14cと、を備える。フランジ14bには第1フタ15が導通可能に接続されている。フランジ14cには第2フタ16が導通可能に接続されている。第1フタ15および第2フタ16は、それぞれ円板状の板材である。第1フタ15および第2フタ16は、それぞれ絶縁筒14の端部の開口を閉塞するように、フランジ14b,14cに全周にわたって気密に接合されている。第1フタ15および第2フタ16それぞれの中心部には、貫通孔が設けられている。第1フタ15の貫通孔には、環状のシール部17が装着されている。第2フタ16の貫通孔には、環状のシール部18が装着されている。
【0016】
圧力容器13は、駆動電極11および対向電極12における互いの接触部を収容している。圧力容器13は、駆動電極11および対向電極12の放電部11a,12aの全体と、駆動電極11および対向電極12の通電軸11b,12bそれぞれの一部と、を封入している。通電軸11bは、第1フタ15の貫通孔を貫通し、圧力容器13の外部に延出している。通電軸12bは、第2フタ16の貫通孔を貫通し、圧力容器13の外部に延出している。通電軸11bは、第1フタ15の貫通孔においてシール部17の内周面に密着している。通電軸11bは、圧力容器13の気密を保ちつつ、シール部17に摺接しながら軸方向に移動可能である。通電軸12bは、第2フタ16の貫通孔においてシール部18と密着している。通電軸12bは、圧力容器13の気密を保ちつつ、シール部18に摺接しながら軸方向に移動可能である。
【0017】
圧力容器13は、絶縁ガスを封入している。絶縁ガスとして、例えば六フッ化硫黄(SF6)ガスを用いることができる。ただし、絶縁ガスとして、六フッ化硫黄ガスの他に、窒素、二酸化炭素、酸素および空気のうちいずれか単体、またはそれらの混合ガスを用いてもよい。圧力容器13に封入される絶縁ガスの圧力は、大気圧以上である。
【0018】
圧力容器13の内部には、金属製の第1シールド19および第2シールド20が配置されている。各シールド19,20は、円筒状に形成されている。各シールド19,20は、互いに同心状に配置され、軸方向に並んでいる。第1シールド19の第1端は、第1フタ15に結合して導通している。第2シールド20の第1端は、第2フタ16に結合して導通している。第1シールド19の第2端、および第2シールド20の第2端は、圧力容器13の内部で互いに対向している。第1シールド19の第2端、および第2シールド20の第2端それぞれの外周縁は、R面取り加工されている。
【0019】
第1シールド19は、駆動電極11を囲っている。第2シールド20は、対向電極12を囲っている。駆動電極11の通電軸11bは、第1シールド19の内周に設けられた集電部21に摺接しながら、第1シールド19との導通状態を保ちつつ軸方向に移動可能となっている。対向電極12の通電軸12bは、第2シールド20の内周に設けられた集電部22に摺接しながら、第2シールド20との導通状態を保ちつつ軸方向に移動可能となっている。これにより、駆動電極11は、集電部21を介して第1シールド19、第1フタ15および第1フランジ14bと導通している。対向電極12は、集電部22を介して第2シールド20、第2フタ16および第2フランジ14cと導通している。
【0020】
通電軸11bの端部は、圧力容器13の外部で絶縁操作ロッド23に接続されている。通電軸11bは、絶縁操作ロッド23を介して駆動機構部3に接続されている。通電軸12bの端部は、圧力容器13の外部で絶縁操作ロッド24に接続されている。通電軸12bは、絶縁操作ロッド24を介して衝撃緩衝部4に接続されている。駆動機構部3および衝撃緩衝部4が絶縁物である絶縁操作ロッド23,24を介して接点部2に接続することで、接点部2および駆動機構部3が電気的に絶縁され、接点部2および衝撃緩衝部4が電気的に絶縁されている。
【0021】
駆動機構部3について説明する。
駆動機構部3は、駆動電極11に接続されている。駆動機構部3は、駆動軸31と、機構箱32と、駆動部33と、位置保持部34と、駆動側制動部35と、を備える。
【0022】
駆動軸31は、一部が機構箱32の内部に収容された状態で機構箱32の外側に延出している。駆動軸31は、機構箱32の外側で、絶縁操作ロッド23を介して駆動電極11の通電軸11bに接続されている。これにより、駆動軸31は、駆動電極11と一体に変位する。
【0023】
駆動部33は、電磁反発操作機構である。駆動部33は、駆動軸31に接続された金属製のリング36(反発体)と、機構箱32に固定されたコイル37と、を備える。リング36およびコイル37は、機構箱32の内部で軸方向に対向して配置されている。リング36のうちコイル37に対向する箇所には、特に電気抵抗率が低い良導体36aが固定されている。リング36は、コイル37に対して接点部2側に配置されている。本実施形態では、良導体36aは無酸素銅であり、リング36のうち良導体36a以外の部位は高強度の超々ジュラルミンである。コイル37に図示しない励磁回路からコイル電流を印加することで、リング36(特に良導体36a)にはコイル電流と逆方向の誘導電流が生じる。コイル電流が通電するコイル37と、誘導電流が通電するリング36との間には、反発方向のローレンツ力が発生する。駆動部33は、コイル37およびリング36の間に発生するローレンツ力を、投入動作時の駆動力として利用する。リング36に発生した駆動力は、駆動軸31および絶縁操作ロッド23を介して、駆動電極11を対向電極12に接近する方向(第1方向)に変位させる。
【0024】
位置保持部34は、駆動側復帰ばね38(駆動側付勢部)と、駆動側ばね受け39と、駆動側ストッパ40と、を備える。駆動側ばね受け39は、駆動軸31に結合されている。ベース41は、駆動側ばね受け39に対して、接点部2側に配置されている。ベース41は、駆動軸31を囲うように配置されている。ベース41は、機構箱32に固定されている。駆動側復帰ばね38は、駆動側ばね受け39とベース41との間に圧縮状態で設置された圧縮コイルばねである。駆動側復帰ばね38は、駆動側ばね受け39に対して、接点部2から開離する方向(第2方向)のばね力を常に与える。以後、駆動側復帰ばね38のばね力を駆動側復帰力と称する。
【0025】
ベース41には、駆動側ストッパ40が固定されている。駆動側ストッパ40は、駆動側ばね受け39に対して接点部2側とは反対側に配置されている。駆動側ストッパ40は、駆動軸31を囲うように配置されている。駆動側ストッパ40は、駆動側復帰力を受ける駆動側ばね受け39と接触することで、定常時における駆動軸31および駆動電極11を位置決めする。
【0026】
駆動側制動部35は、シリンダ42と、ピストン43と、を備える。本実施形態では、駆動側制動部35はショックアブソーバである。シリンダ42の内部には作動油が充填されている。ピストン43をシリンダ42に対して押し込むと、作動油の粘性抵抗によって、ピストン43には変位量と速度に応じた減衰力が生じる。減衰力は、ピストン43の押し込み方向の反対方向に発生する。また押し込んだピストン43を解放すると、シリンダ42の内部に設置された図示しない復帰ばねによって、ピストン43はシリンダ42から押し出され、所定の位置で静止する。シリンダ42は、機構箱32と固定されている。ピストン43は、駆動側ばね受け39が駆動側ストッパ40に接触して静止した定常時において、駆動軸31の端部と接触し、かつシリンダ42に対して押し込まれた状態で設置されている。
【0027】
衝撃緩衝部4について説明する。
衝撃緩衝部4は、対向電極12に接続されている。衝撃緩衝部4は、対向軸51と、機構箱52と、位置保持部53と、対向側制動部54と、を備える。
【0028】
対向軸51は、一部が機構箱52の内部に収容された状態で機構箱52の外側に延出している。対向軸51は、機構箱52の外側で、絶縁操作ロッド24を介して対向電極12の通電軸12bに接続されている。これにより、対向軸51は、対向電極12と一体に変位する。
【0029】
位置保持部53は、対向側復帰ばね55(対向側付勢部)と、対向側ばね受け56と、対向側ストッパ57と、ベース58と、を備える。対向側ばね受56は、対向軸51に結合されている。ベース58は、対向側ばね受け56に対して、接点部2側とは反対側に配置されている。ベース58は、機構箱52に固定されている。対向側復帰ばね55は、対向側ばね受け56とベース58との間に圧縮状態で設置された圧縮コイルばねである。対向側復帰ばね55は、対向側ばね受け56に対して、接点部2に接近する方向のばね力を常に与えるよう配置されている。以後、対向側復帰ばね55のばね力を対向側復帰力と称する。
【0030】
ベース58には、対向側ストッパ57が固定されている。対向側ストッパ57は、対向側ばね受け56に対して接点部2側に配置されている。対向側ストッパ57は、対向軸51を囲うように配置されている。対向側ストッパ57は、対向側復帰力を受ける対向側ばね受け56と接触することで、定常時における対向軸51および対向電極12を位置決めする。
【0031】
対向側制動部54は、シリンダ59と、ピストン60と、ストッパ61と、を備える。本実施形態では、対向側制動部54は、駆動側制動部35と同様にショックアブソーバである。シリンダ59およびピストン60の構成は、駆動側制動部35のシリンダ42およびピストン43の構成と同一である。
【0032】
シリンダ59は、ベース58を介して機構箱52に固定されている。ピストン60は、対向側ばね受け56が対向側ストッパ57に接触して静止した定常時において、対向側ばね受け56に非接触であり、かつシリンダ59から押し出され、所定の位置で制止した状態で設置されている。
【0033】
ストッパ61は、ベース58に固定されている。ストッパ61は、対向側ばね受け56がピストン60をシリンダ59に対して押し込む過程で対向側ばね受け56に接触し、ピストン60の押し込み量を一定値以内に制限するよう配置されている。
【0034】
本実施形態の高速投入器1は、接点部2の圧力容器13における第1フタ15および第2フタ16を端子として、外部の回路に接続される。駆動電極11と、絶縁操作ロッド23と、駆動軸31と、リング36と、駆動側ばね受け39とは、一体となって動作する駆動側可動部71を形成する。対向電極12と、絶縁操作ロッド24と、対向軸51と、対向側ばね受け56とは、一体となって動作する対向側可動部72を形成する。
【0035】
高速投入器1が非通電の遮断状態である定常時について説明する。
図1に示すように、駆動側可動部71は、駆動側ばね受け39が駆動側復帰ばね38によって駆動側ストッパ40に押し付けられた位置で静止している。駆動電極11の放電部11aの端面は、シールド19のR面取り加工された端面と面一となる位置に配置されている。
【0036】
対向側可動部72は、対向側ばね受け56が対向側復帰ばね55によって対向側ストッパ57に押し付けられた位置で静止している。対向電極12の放電部12aの端面は、シールド20のR面取り加工された端面と面一となる位置に配置されている。
【0037】
高速投入器1が外部の回路に接続されると、端子となる第1フタ15および第2フタ16の間に電圧が印加される。第1フタ15は、駆動電極11および第1シールド19と導通して同電位となっている。第2フタ16は、対向電極12および第2シールド20と導通して同電位となっている。よって高速投入器1に印加された電圧は、圧力容器13の内部で駆動電極11および第1シールド19と、対向電極12および第2シールド20と、の間に印加されている。
【0038】
定常時は、駆動電極11および対向電極12は互いに十分に離れた開路状態であり、駆動電極11および対向電極12付近の電界が圧力容器13に封入された絶縁ガスの絶縁破壊電界に比べて十分低くなっている。このため、駆動電極11と対向電極12との間が電気的に絶縁されている。よって高速投入器1は端子間が非導通の遮断状態となっている。
【0039】
高速投入器1が非通電の遮断状態である定常時から、通電可能な投入状態に変化し、最終的に定常時の遮断状態に復帰する投入動作について説明する。なお、以下の投入動作の説明では、外部回路に高速投入器1が接続されて、駆動電極11および対向電極12に高電圧が印加された状態を述べる。
【0040】
投入動作は、
図1に示す定常時において、駆動部33のコイル37に図示しない励磁回路からコイル電流を印加し、リング36に駆動力を発生させることで開始する。投入動作は、接近ステップと、接触ステップと、開離ステップと、をこの順に備える。
【0041】
接近ステップについて説明する。接近ステップでは、
図1に示す状態から
図2に示す状態を経て、
図3に示す状態に至る。
【0042】
駆動側可動部71は、駆動部33の駆動力を受ける。ここで駆動部33の駆動力は、駆動側復帰ばね38による駆動側復帰力に比べて十分に大きい。駆動側可動部71は、駆動部33の駆動力によって、駆動側復帰ばね38を圧縮しながら、駆動電極11を対向電極12に接近させる方向に変位を開始する。
【0043】
駆動電極11が対向電極12に接近すると、駆動電極11および対向電極12付近の電界が高くなる。駆動電極11および対向電極12付近の電界が圧力容器13に封入された絶縁ガスの絶縁破壊電界に比べて高くなることで、駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとの間で絶縁破壊が生じる。
図2に示す位置まで駆動電極11が対向電極12に接近すると、絶縁破壊によって駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとの間でアーク放電73が発生する。駆動電極11および対向電極12は、アーク放電73によって導通状態となるため、第1フタ15および第2フタ16間も導通状態となる。外部回路との接続端子である第1フタ15および第2フタ16間が導通状態となることで、高速投入器1は投入状態に変化して通電を開始する。
【0044】
その後、
図3に示すように駆動電極11が対向電極12に接触するまで、駆動側可動部71は単独で変位し続ける。このとき、駆動側制動部35のピストン43は、駆動側可動部71の変位に伴い、シリンダ42の内部に設置された図示しない復帰ばねによってシリンダ42から押し出される。
【0045】
接触ステップについて説明する。接触ステップでは、
図3に示す状態から
図4に示す状態を経て、再度
図3に示す状態に復帰する。
【0046】
図3に示すように、駆動電極11の放電部11aが対向電極12の放電部12aに接触する。これにより、駆動電極11および対向電極12の接触部を介して駆動電極11と対向電極12との導通が維持される。よって高速投入器1も、通電可能な投入状態を継続する。このとき、シリンダ42から押し出されたピストン43は、所定の位置で静止する。ただし、ピストン43は、接近ステップで静止してもよい。
【0047】
駆動電極11の放電部11aが対向電極12の放電部12aに接触した後、対向側可動部72は駆動部33の駆動力によって加速した駆動側可動部71に押される。これにより、
図4に示すように、駆動側可動部71および対向側可動部72は、駆動電極11が対向電極12に接触した状態で駆動力の出力方向に共に変位する。
【0048】
駆動部33の駆動力は、駆動電極11が対向電極12に接触した後に減衰する。駆動力は、リング36とコイル37との距離が大きくなることで低下する。さらに駆動力は、コイル電流が減衰することで低下する。なお、駆動部33の駆動力は、駆動電極11が対向電極12に接触する前から減衰し始めてもよい。一方、駆動側可動部71は駆動側復帰ばね38を圧縮し、対向側可動部72は対向側復帰ばね55を圧縮しつつ変位する。このため、駆動側可動部71および対向側可動部72それぞれに対して駆動力とは反対方向に作用する駆動側復帰力および対向側復帰力が増加する。さらに対向側可動部72の対向側ばね受け56は、対向側制動部54のピストン60をシリンダ59に対して押し込むことで、押し込み方向と反対方向の減衰力を受ける。また駆動側可動部71は、対向側可動部72に接触して加速させる際に、運動量を分け与え、減速する。よって駆動側可動部71は、対向側可動部72に接触後に対向側可動部72と共に変位しつつ大きく減速し、十分に減速した後に、対向側可動部72の対向側ばね受け56がストッパ61に接触することで停止し、
図4に示す状態となる。
【0049】
なお、
図3に示す状態から
図4に示す状態に移行する過程において、駆動電極11および対向電極12は、接触時の反発力によって一時的に開離しても、アーク放電を介して導通を維持し、再接触時に接触部を介した導通を再開する。よって高速投入器1も、通電可能な投入状態を継続する。
【0050】
駆動側可動部71および対向側可動部72は、停止後、駆動側復帰ばね38の駆動側復帰力と、対向側復帰ばね55の対向側復帰力とによって、変位方向を反転する。駆動側可動部71および対向側可動部72は、駆動力の出力方向とは反対方向に加速されて変位し、再度、
図3に示す状態となる。ここで対向側可動部72は、対向側ばね受け56が対向側ストッパ57と接触することで停止する。
【0051】
なお
図4に示す状態から
図3に示す状態に復帰する過程において、基本的に駆動電極11および対向電極12は接触状態であり、接触部を介した導通を維持する。駆動電極11および対向電極12は、仮に一時的に開離しても、アーク放電を介して導通を維持する。よって高速投入器1も、通電可能な投入状態を継続する。
【0052】
開離ステップについて説明する。開離ステップでは、
図3に示す状態から
図2に示す状態を経て、
図1に示す状態に至る。
【0053】
図3および
図2に示すように、駆動側可動部71は、対向側可動部72の停止後、対向電極12が対向側ストッパ57によって変位を規制されるので、駆動側復帰ばね38の駆動側復帰力によって単独で変位する。ここで駆動側可動部71は、駆動軸31が駆動側制動部35のピストン43をシリンダ42に対して押し込むことで、押し込み方向と反対方向の減衰力を受け、減速し始める。
【0054】
図3に示す状態から
図2に示す状態に復帰する過程において、対向側可動部72は停止しており、駆動電極11の放電部11aは対向電極12の放電部12aから開離する。一方で、駆動電極11および対向電極12はアーク放電73を介して導通を維持しており、高速投入器1も、通電可能な投入状態を継続する。
【0055】
最終的に駆動側可動部71は、駆動側制動部35の減衰力を受け減速し、駆動側ばね受け39が駆動側ストッパ40に接触することで停止して、
図1に示す状態に復帰する。このとき、駆動部33の駆動力は完全に減衰している、または駆動側復帰力に比べて十分に小さくなっており、駆動側可動部71は
図1の状態に保持される。
【0056】
図2に示す状態から
図1に示す状態に復帰する過程または、
図1に示す状態への復帰後において、駆動電極11および対向電極12の間で生じていたアーク放電は、外部回路における電流の遮断または減衰によって消弧される。これにより、駆動電極11および対向電極12は、再度電気的に絶縁された状態になる。以上により、高速投入器1は端子間が非導通の遮断状態に復帰し、投入動作を終了する。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態の高速投入器1では、駆動部33により駆動電極11に駆動力を与えることで、最初に駆動電極11が対向電極12に接近する。駆動電極11が対向電極12に接近すると、駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとの間でアーク放電が発生して通電を開始する。次いで駆動電極11が通電を継続しつつ対向電極12に接触して対向電極12と共に駆動力の出力方向に変位する。この際、駆動電極11および対向電極12は駆動側復帰ばね38および対向側復帰ばね55の復帰力によって減速する。次いで駆動電極11および対向電極12は復帰力によって変位方向を反転する。次いで対向電極12が対向側ストッパ57によって変位を規制されることで、駆動電極11が駆動側復帰ばね38の復帰力によって対向電極12から開離する。駆動電極11が対向電極12から開離する過程で、駆動電極11と対向電極12との間にアーク放電が発生し、通電が継続される。次いで駆動電極11が駆動側ストッパ40によって変位を規制されることで、駆動電極11が定常時の位置に復帰する。駆動電極11が対向電極12から開離する過程、または定常時の位置に復帰した状態でアーク放電が消弧することで通電を終了する。以上により、本実施形態の高速投入器1は、電極駆動式の高速投入器として動作する。したがって、本実施形態によれば、トリガ放電式の高速投入器のようなトリガ電極が不要であるため、トリガ放電式に比べて多数回の動作が可能な高速投入器1を提供できる。また、本実施形態によれば、トリガ放電式の高速投入器では必須の高価なパルス電源が不要であるため、トリガ放電式に比べて機器コストが低い高速投入器1を提供できる。
【0058】
また、本実施形態の高速投入器1は、投入動作時に駆動電極11が対向電極12に接触した後、駆動側可動部71が対向側可動部72と共に駆動力の動作方向に変位することで、駆動側可動部71の運動量を対向側可動部72に分け与える。さらに、駆動側可動部71は、駆動側復帰ばね38の駆動側復帰力に加えて、対向側復帰ばね55の対向側復帰力、および対向側制動部54の減衰力を受けることで、大きく減速する。この構成によれば、投入動作時に、駆動電極11を対向電極12に接近させ、放電部11a,12a間でアーク放電による導通を開始させた後に、駆動電極11が対向電極12に接触して駆動側可動部71が減速する。よってアーク放電による導通開始までは駆動側可動部71は殆ど減速せず、放電部11a,12a間の電界を急速に上昇させることができるため、アーク放電の発生開始時間の短縮とばらつきを低減できる。これにより、投入時間がより短く、さらに投入時間のばらつきが小さい高速投入器1を提供できる。さらに上記構成によれば、対向電極12は、投入動作時に駆動電極11に接触した後に、駆動電極11と共に駆動力の出力方向に動作可能であるため、接触時の衝撃力を低減することができる。よって駆動電極11と対向電極12との接触時の衝撃力による、機器の損傷を抑制することが可能であり、多数回の操作が可能な高速投入器1を提供できる。
【0059】
また、高速投入器1は、投入動作時に、駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとの間でアーク放電を発生させて通電を開始する。さらに、駆動電極11の放電部11aを対向電極12の放電部12aに接触させた後、通電を継続しつつ放電部11aを放電部12aから開離させて、投入動作を終了する。この構成によれば、投入動作時に、アーク放電によって金属表面が一部融解した駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとが接触後、冷却される前に再度開離して投入動作を終了する。このため、放電部11a,12aに溶着部が発生することを抑制できる。よって、溶着部を引き離した際に生じる鋭利な突起が放電部11a,12aの表面に形成されることを抑制できる。これにより、電極間が開き高電圧が印加される定常時において、鋭利な突起による電界集中部の発生を防ぐことができる。したがって、電極間の絶縁性能を維持し、耐電圧性能の低下を抑制できる高速投入器1を提供できる。
【0060】
また、高速投入器1は、投入動作において駆動電極11の放電部11aが対向電極12の放電部12aから開離しつつ、放電部11a,12a間にアーク放電を発生させる。この構成によれば、仮に放電部11a,12aの接触時に溶着部が生じ、放電部11a,12aの開離時に鋭利な突起が形成された場合でも、アーク放電によって鋭利な突起を蒸発させ、除去することができる。これにより、電極間が開き高電圧が印加される定常時において、鋭利な突起による電界集中部の発生を防ぐことができる。したがって、電極間の絶縁性能を維持し、耐電圧性能の低下を抑制できる高速投入器1を提供できる。
【0061】
駆動部33は、金属製のリング36と、機構箱32に固定されたコイル37と、を持つ電磁反発操作機構であり、リング36に発生させる誘導反発力によって駆動電極11に駆動力を与える。この構成によれば、投入動作時に、油圧やばねの復元力、モータの電磁力等によって駆動する構成よりも短時間で、駆動電極11を対向電極12に接近させ、放電部11a,12a間でアーク放電による導通を開始させることができる。したがって、投入時間が短い高速投入器1を提供できる。
【0062】
駆動側復帰ばね38および対向側復帰ばね55はコイルばねである。この構成によれば、駆動電極11および対向電極12に線形の復帰力を与えることができる。よって、定常時の静止位置における駆動電極11および対向電極12の安定的な保持、および投入動作時における駆動電極11および対向電極12の確実な減速を両立できる。
【0063】
高速投入器1は、駆動側制動部35を持つ。駆動側制動部35は、投入動作時に、対向側復帰ばね55の復帰力によって駆動部33の駆動力の出力方向とは反対方向に変位する駆動電極11に接触し、駆動電極11を減速させる。この構成によれば、定常時の静止位置に向けて変位する駆動電極11の運動量を減衰させることができる。したがって、駆動電極11の停止時の衝撃力による機器の損傷を抑制できる。
【0064】
高速投入器1は、対向側制動部54を持つ。対向側制動部54は、投入動作時に、駆動電極11に接触して駆動部33の駆動力によって駆動電極11と共に変位する対向電極12に接触し、対向電極12を減速させる。この構成によれば、投入動作時における反転位置に向けて変位する駆動電極11および対向電極12の運動量を減衰させることができる。したがって、駆動電極11および対向電極12の反転時の衝撃力による機器の損傷を抑制できる。
【0065】
高速投入器1は、絶縁ガスが封入された圧力容器13を持つ。圧力容器13は、駆動電極11および対向電極12の接触部を収容している。駆動電極11および対向電極12それぞれの一部は、圧力容器13の気密を保ちつつ圧力容器13の外部に延出している。この構成によれば、駆動電極11および対向電極12それぞれに連係された可動部を圧力容器13の外側に配置できる。これにより、高速投入器1の保守作業等の作業性を向上させることができる。また、駆動電極および対向電極のうち少なくともいずれか一方の全体が圧力容器に収容された構成と比較して、圧力容器13を小型化できる。よって、絶縁ガスの使用量を削減できる。
【0066】
駆動電極11の放電部11a、および対向電極12の放電部12aは、耐アーク性を有する金属材料により形成されている。この構成によれば、投入動作時に、アーク放電による放電部11a,12aの表面の融解を抑制できる。このため、放電部11a,12aに溶着部が発生することを抑制できる。よって、溶着部を引き離した際に生じる鋭利な突起が放電部11a,12aの表面に形成されることを抑制できる。これにより、電極間が開き高電圧が印加される定常時において、鋭利な突起による電界集中部の発生を防ぐことができる。したがって、電極間の絶縁性能を維持し、耐電圧性能の低下を抑制できる高速投入器1を提供できる。
【0067】
(第2の実施形態)
図5から
図8は、第2の実施形態の高速投入器を示す断面図である。
図5は、非通電の遮断状態にある定常時の高速投入器101を示している。
図6から
図8は、通電可能な投入状態にある高速投入器101の投入動作時の動作過程を示している。
【0068】
図5に示す第2の実施形態は、駆動電極11および対向電極12の接触部が真空容器112に収容されている点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
図5に示すように、高速投入器101は、第1の実施形態の接点部2に代えて接点部102を備える。接点部102は、駆動機構部3および衝撃緩衝部4に接続されている。接点部102は、駆動電極11と、対向電極12と、圧力容器111と、真空容器112と、を備える。
【0070】
圧力容器111の構成は、基本的に第1の実施形態の圧力容器13と同様である。圧力容器111と駆動電極11および対向電極12との関係も、第1の実施形態と同様である。第1の実施形態の圧力容器13と異なる点として、本実施形態の圧力容器111の内部には、真空容器112が封入されている。圧力容器111は、第1の実施形態と同様に絶縁ガスを封入している。絶縁ガスの圧力は、真空容器112内部との圧力差を低減するため、大気圧から大気圧の3倍程度が好適である。
【0071】
真空容器112の内部は、真空状態に保持されている。真空容器112は、絶縁筒113と、第1端板114と、第2端板115と、第1ベローズ116と、第2ベローズ117と、を備える。
【0072】
絶縁筒113は、円筒状の絶縁物容器である。第1端板114および第2端板115は、金属製である。第1端板114および第2端板115は、それぞれ円板状の板材である。第1端板114は、絶縁筒113の第1端の開口を閉塞するように絶縁筒113に気密に接合されている。第2端板115は、絶縁筒113の第2端の開口を閉塞するように絶縁筒113に気密に接合されている。第1端板114および第2端板115それぞれの中心部には、貫通孔が設けられている。第1端板114の貫通孔には、第1ベローズ116の第1端が気密に接合されている。第2端板115の貫通孔には、第2ベローズ117の第1端が気密に接合されている。第1ベローズ116および第2ベローズ117は、軸方向に伸縮可能な蛇腹構造の金属菅であり、薄板で形成されている。真空容器112は、第2端板115が支持部118を介して圧力容器111の第2フタ16に接続されることで圧力容器111に固定されている。
【0073】
真空容器112は、駆動電極11および対向電極12の接触部を収容している。真空容器112は、駆動電極11および対向電極12の放電部11a、12aの全体と、駆動電極11および対向電極12の通電軸11b,12bそれぞれの一部と、を封入している。通電軸11bは、第1端板114の貫通孔を貫通し、真空容器112の外部に延出している。通電軸12bは、第2端板115の貫通孔を貫通し、真空容器112の外部に延出している。
【0074】
駆動電極11の通電軸11bは、第1ベローズ116の第2端に気密に接合されている。通電軸11bは、真空容器112の気密を保ちつつ、軸方向に移動可能となっている。対向電極12の通電軸12bは、第2ベローズ117の第2端に気密に接合されている。通電軸12bは、真空容器112の気密を保ちつつ、軸方向に移動可能となっている。
【0075】
圧力容器111の内部には、第1の実施形態のシールド19,20に代えて、金属製の第1集電フランジ119および第2集電フランジ120が配置されている。各集電フランジ119,120は、円環状に形成されている。各集電フランジ119,120は、互いに同心状に配置されている。第1集電フランジ119は、第1フタ15に隣接して固定され、第1フタ15と導通している。第2集電フランジ120は、第2フタ16に隣接して固定され、第2フタ16と導通している。駆動電極11は、第1集電フランジ119の内側を貫通している。対向電極12は、第2集電フランジ120の内側を貫通している。駆動電極11の通電軸11bは、第1集電フランジ119の内周に設けられた集電部21に摺接しながら、第1集電フランジ119との導通状態を保ちつつ軸方向に移動可能となっている。対向電極12の通電軸12bは、第2集電フランジ120の内周に設けられた集電部22に摺接しながら、第2集電フランジ120との導通状態を保ちつつ軸方向に移動可能となっている。これにより、駆動電極11は、集電部21を介して第1集電フランジ119、第1フタ15およびフランジ14bと導通している。対向電極12は、集電部22を介して第2集電フランジ120、第2フタ16および第2フランジ14cと導通している。さらに駆動電極11は、第1ベローズ116および第1端板114と導通している。また、対向電極12は、第2ベローズ117、第2端板115および支持部118と導通している。
【0076】
駆動電極11の通電軸11bの端部は、圧力容器111の外部で絶縁操作ロッド23に接続されている。駆動電極11は、絶縁操作ロッド23を介して駆動機構部3に接続されている。対向電極12の通電軸12bの端部は、圧力容器111の外部で絶縁操作ロッド24に接続されている。対向電極12は、絶縁操作ロッド24を介して衝撃緩衝部4に接続されている。駆動機構部3および衝撃緩衝部4が絶縁物である絶縁操作ロッド23,24を介して接点部102に接続することで、接点部102および駆動機構部3が電気的に絶縁され、接点部102および衝撃緩衝部4が電気的に絶縁されている。
【0077】
本実施形態の高速投入器101は、接点部102の圧力容器111における第1フタ15および第2フタ16を端子として、外部の回路に接続される。駆動電極11と、絶縁操作ロッド23と、駆動軸31と、リング36と、駆動側ばね受け39とは、一体となって動作する駆動側可動部71を形成する。対向電極12と、絶縁操作ロッド24と、対向軸51と、対向側ばね受け56とは、一体となって動作する対向側可動部72を形成する。
【0078】
高速投入器101が非通電の遮断状態である定常時について説明する。
図5に示すように、駆動側可動部71は、駆動側ばね受け39が駆動側復帰ばね38によって駆動側ストッパ40に押し付けられた位置で静止している。対向側可動部72は、対向側ばね受け56が対向側復帰ばね55によって対向側ストッパ57に押し付けられた位置で静止している。
【0079】
高速投入器101が、外部の回路に接続されると、端子となる第1フタ15および第2フタ16の間に電圧が印加される。第1フタ15は、駆動電極11と導通して同電位となっている。第2フタ16は、対向電極12と導通して同電位となっている。よって高速投入器101に印加された電圧は、真空容器112の内部で駆動電極11と対向電極12との間に印加されている。
【0080】
定常時は、駆動電極11および対向電極12は互いに十分に離れた開路状態であり、駆動電極11および対向電極12付近の電界が真空容器112内部の真空の絶縁破壊電界に比べて十分低くなっている。このため、駆動電極11と対向電極12との間が電気的に絶縁されている。よって高速投入器101は端子間が非導通の遮断状態となっている。
【0081】
高速投入器101が非通電の遮断状態である定常時から、通電可能な投入状態に変化し、最終的に定常時の遮断状態に復帰する投入動作について説明する。なお、以下の投入動作の説明では、外部回路に高速投入器101が接続されて、駆動電極11および対向電極12に高電圧が印加された状態を述べる。
【0082】
高速投入器101の投入動作は、基本的に第1の実施形態の高速投入器1における投入動作と同様である。高速投入器101の投入動作も、
図5に示す定常時にて、コイル37に図示しない励磁回路からコイル電流を印加し、リング36に駆動力を発生させることで開始する。
【0083】
投入動作時の高速投入器101は、
図5の状態から
図6の状態および
図7の状態を経て、
図8の状態に順に動作後、
図8の状態から
図7の状態および
図6の状態を経て、
図5の状態に順に動作し、最終的に
図5の状態に復帰する。これは、第1の実施形態において、投入動作時の高速投入器1が、
図1の状態から
図4の状態に動作後、
図4の状態から
図1の状態に動作し、最終的に
図1の状態に復帰する一連の動作に対応している。
【0084】
投入動作時の高速投入器101が、第1の実施形態の高速投入器1と異なる点は、アーク放電が真空容器112の内部で発生することである。
高速投入器101において、駆動側可動部71が変位して駆動電極11および対向電極12が互いに接近すると、駆動電極11および対向電極12付近の電界が高くなる。駆動電極11および対向電極12付近の電界が真空容器112内部の真空の絶縁破壊電界に比べて高くなることで、駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとの間で絶縁破壊が生じる。
図6に示す位置まで駆動電極11が対向電極12に接近すると、絶縁破壊によって駆動電極11の放電部11aと対向電極12の放電部12aとの間でアーク放電73が発生する。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の高速投入器101によれば、駆動電極11および対向電極12が第1の実施形態と同様に動作するので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、真空容器112が駆動電極11および対向電極12の接触部を収容している。この構成によれば、高速投入器101の投入動作時に、アーク放電が真空容器112の内部で発生する。これにより、絶縁ガス雰囲気下でのアーク放電と異なり、アーク放電による絶縁ガスの分解を抑制することができる。これにより、電極間が開き高電圧が印加される定常時において、絶縁ガスの絶縁性能低下による意図しない絶縁破壊の発生を防ぐことが可能であり、電極間の絶縁性能を維持可能な高速投入器101を提供できる。
【0087】
(第3の実施形態)
図9から
図12は、第3の実施形態の高速投入器を示す断面図である。
図9は、非通電の遮断状態にある定常時の高速投入器201を示している。
図10から
図12は、通電可能な投入状態にある高速投入器201の投入動作時の動作過程を示している。
【0088】
図9に示す第3の実施形態は、衝撃緩衝部204が真空容器212に収容されている点で、第2の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0089】
図9に示すように、高速投入器201は、第2の実施形態の接点部102および衝撃緩衝部4に代えて、接点部202および衝撃緩衝部204を備える。
【0090】
接点部202について説明する。
接点部202は、駆動機構部3および衝撃緩衝部204に接続されている。接点部202は、第2の実施形態の圧力容器111および真空容器112に代えて、圧力容器211および真空容器212を備える。
【0091】
圧力容器211は、第2の実施形態の第2フタ16に代えて、第2フタ213を備える。第2フタ213は、貫通孔およびシール部が設けられていない点で第2フタ16と異なる。第2フタ213は、絶縁筒14の開口を完全に閉塞している。圧力容器211と駆動電極11との関係は、第2の実施形態と同様である。圧力容器211は、対向電極12の全体を収容している。本実施形態の圧力容器211の内部には、真空容器212が封入されている。圧力容器211は、第2の実施形態の圧力容器111と同様に絶縁ガスを封入している。絶縁ガスの圧力は、真空容器212内部との圧力差を低減するため、大気圧から大気圧の3倍程度が好適である。
【0092】
真空容器212は、内部が真空状態に保持されている。真空容器212は、第2の実施形態の第2端板115に代えて、第2端板214を備える。第2端板214は、絶縁筒113の第2端の開口を閉塞するように絶縁筒113に気密に接合されている。第2端板214は、貫通孔が設けられておらず、ベローズが固定されていない点で第2端板115と異なる。第2端板214は、圧力容器211の第2フタ213に隣接して固定され、第2フタ213と導通している。
【0093】
真空容器212は、駆動電極11および対向電極12の接触部を収容している。真空容器212は、駆動電極11の放電部11aの全体と、駆動電極11の通電軸11bの一部と、対向電極12の全体と、衝撃緩衝部204と、を封入している。対向電極12の通電軸12bは、真空容器212の内部で衝撃緩衝部204に接続されている。衝撃緩衝部204については後述する。
【0094】
圧力容器211の内部には、第2の実施形態の圧力容器111の内部に配置されていた集電フランジ120が配置されていない。第2の実施形態において集電フランジ120に設けられていた集電部22は、衝撃緩衝部204に配置されている。
【0095】
衝撃緩衝部204について説明する。
衝撃緩衝部204は、真空容器212に収容されている。衝撃緩衝部204は、真空容器212の第2端板214に固定されている。衝撃緩衝部204は、上記他の実施形態の対向軸51、機構箱52および対向側制動部54を備えておらず、かつ位置保持部53に代えて位置保持部221を備える。
【0096】
位置保持部221は、上記他の実施形態の対向側ストッパ57およびベース58に代えて、対向側ストッパ222およびベース223を備える。また、本実施形態では、対向側ばね受け56に対向電極12の通電軸12bが直接結合されている。ベース223は、対向側ばね受け56に対して、接点部202側とは反対側に配置されている。ベース223は、第2端板214に隣接して固定されている。ベース223は、第2端板214と導通している。ベース223には、対向側ストッパ222が固定されている。対向側ストッパ222は、対向側ばね受け56に対して接点部202側に配置されている。対向側ストッパ222は、対向電極12を囲うように配置されている。対向側ストッパ222の内周には、集電部22が設けられている。対向電極12の通電軸12bは、集電部22に摺接しながら、衝撃緩衝部204との導通状態を保ちつつ軸方向に移動可能となっている。これにより、対向電極12は、集電部22を介して衝撃緩衝部204、第2端板214、第2フタ213および第2フランジ14cと導通している。
【0097】
本実施形態の高速投入器201は、接点部202の圧力容器211における第1フタ15および第2フタ213を端子として、外部の回路に接続される。駆動電極11と、絶縁操作ロッド23と、駆動軸31と、リング36と、駆動側ばね受け39とは、一体となって動作する駆動側可動部71を形成する。対向電極12と、対向側ばね受け56とは、一体となって動作する対向側可動部272を形成する。
【0098】
高速投入器201が非通電の遮断状態である定常時について説明する。
図9に示すように、駆動側可動部71は、駆動側ばね受け39が駆動側復帰ばね38によって駆動側ストッパ40に押し付けられた位置で静止している。対向側可動部272は、対向側ばね受け56が対向側復帰ばね55によって対向側ストッパ222に押し付けられた位置で静止している。
【0099】
高速投入器201が、外部の回路に接続されると、端子となる第1フタ15および第2フタ213の間に電圧が印加される。第1フタ15は、駆動電極11と導通して同電位となっている。第2フタ213は、対向電極12と導通して同電位となっている。よって高速投入器201に印加された電圧は、真空容器212の内部で駆動電極11と対向電極12との間に印加されている。
【0100】
定常時は、駆動電極11と対向電極12が十分に離れた開路状態であり、駆動電極11と対向電極12付近の電界が真空容器212内部の真空の絶縁破壊電界に比べて十分低くなっている。このため、駆動電極11と対向電極12との間が電気的に絶縁されている。よって高速投入器201は端子間が非導通の遮断状態となっている。
【0101】
高速投入器201が非通電の遮断状態である定常時から、通電可能な投入状態に変化し、最終的に定常時の遮断状態に復帰する投入動作について説明する。なお、以下の投入動作の説明では、外部回路に高速投入器201が接続されて、駆動電極11および対向電極12に高電圧が印加された状態を述べる。
【0102】
高速投入器201の投入動作は、基本的に第2の実施形態の高速投入器101における投入動作と同様である。高速投入器201の投入動作も、
図9に示す定常時にて、コイル37に図示しない励磁回路からコイル電流を印加し、リング36に駆動力を発生させることで開始する。
【0103】
投入動作時の高速投入器201は、
図9の状態から
図10の状態および
図11の状態を経て、
図12の状態に順に動作後、
図12の状態から
図11の状態および
図10の状態を経て、
図9の状態に順に動作し、最終的に
図9の状態に復帰する。これは、第2の実施形態において、投入動作時の高速投入器101が、
図5の状態から
図8の状態に動作後、
図8の状態から
図5の状態に動作し、最終的に
図5の状態に復帰する一連の動作に対応している。
【0104】
投入動作時の高速投入器201が、第2の実施形態の高速投入器101と異なる点は、
図11の状態から
図12の状態に移行する際に、対向側可動部272の対向側ばね受け222が、対向側復帰ばね55から対向側復帰力のみを受けて減速し、停止することである。
【0105】
以上に説明したように、本実施形態の高速投入器201によれば、駆動電極11および対向電極12が第1の実施形態と同様に動作するので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0106】
さらに、本実施形態では、衝撃緩衝部204が真空容器212に収容されている。この構成によれば、対向側可動部272は、上記他の実施形態の対向側可動部72と比べて、絶縁操作ロッド24および対向軸51を備えない分、軽量化を可能とされる。よって投入動作時において、対向側可動部272が駆動側可動部71と接触する際に生じる衝撃力を更に低減することができる。よって駆動電極11と対向電極12との接触時の衝撃力による、機器の損傷を抑制することが可能であり、多数回の操作が可能な高速投入器201を提供できる。
【0107】
また、本実施形態によれば、対向電極12の全体が真空容器212に収容されることで、第2の実施形態において対向電極12と接続されていた第2ベローズ117が不要となる。第2の実施形態における対向電極12は、駆動電極11との接触後に急加速するため、対向電極12と接続された第2ベローズ117には大きな機械的負荷が生じ、損傷の原因となる可能性がある。よって本実施形態では第2ベローズ117を排することで、損傷による真空容器212の真空漏れを回避することが可能であり、より多数回の操作が可能な高速投入器201を提供できる。
【0108】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態の高速投入器を示す断面図である。
図13は、非通電の遮断状態にある定常時の高速投入器301を示している。
図13に示す第4の実施形態は、衝撃緩衝部304が真空容器112の外側で圧力容器211に収容されている点で、第3の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0109】
図13に示すように、高速投入器301は、第3の実施形態の接点部202および衝撃緩衝部204に代えて、接点部302および衝撃緩衝部304を備える。
【0110】
接点部302について説明する。
接点部302は、駆動機構部3および衝撃緩衝部304に接続されている。接点部302は、第3の実施形態の真空容器212に代えて、第2の実施形態の真空容器112を備える。真空容器112は、第2端板115が支持部118を介して圧力容器211の第2フタ213に接続されることで圧力容器211に固定されている。第2端板115は、第2フタ213と導通している。
【0111】
衝撃緩衝部304について説明する。
衝撃緩衝部304の構成は、基本的に第3の実施形態の衝撃緩衝部204と同様である。衝撃緩衝部304は、真空容器112の外側で圧力容器211に収容されている。衝撃緩衝部304は、真空容器112の第2端板115と圧力容器211の第2フタ213との間に配置されている。衝撃緩衝部304は、ベース223が第2フタ213に隣接して固定されていることで、圧力容器211に固定されている。衝撃緩衝部304は、第2フタ213と導通している。
【0112】
本実施形態の高速投入器301は、接点部302の圧力容器211における第1フタ15および第2フタ213を端子として、外部の回路に接続される。駆動電極11と、絶縁操作ロッド23と、駆動軸31と、リング36と、駆動側ばね受け39とは、一体となって動作する駆動側可動部71を形成する。対向電極12と、対向側ばね受け56とは、一体となって動作する対向側可動部272を形成する。なお、高速投入器301の動作は、第3の実施形態の高速投入器201の動作と同様であるため説明を省略する。
【0113】
以上に説明したように、本実施形態の高速投入器301によれば、駆動電極11および対向電極12が第1の実施形態と同様に動作するので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0114】
さらに、本実施形態では、衝撃緩衝部304が圧力容器211に収容されている。この構成によれば、対向側可動部272は、第1の実施形態および第2の実施形態の対向側可動部72と比べて、絶縁操作ロッド24および対向軸51を備えない分、軽量化を可能とされる。したがって、第3の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0115】
また、対向側可動部272の摺動部を真空容器112から排することができるので、真空容器112内の異物の発生を抑制できる。よって、接点部302の保守作業を減らして、高速投入器301の保守作業等の作業性を向上させることができる。
【0116】
なお、上記実施形態では、駆動機構部3の駆動部33の例として電磁反発操作機構を説明したが、この構成に限定されない。例えば駆動部として、蓄圧した油圧の圧力差を駆動力として用いる油圧操作機構や、蓄勢したコイルばねの力を駆動力として用いるばね操作機構等を適用しても良い。ただし、駆動力の開放に時間を要する点や、駆動電極11と対向電極12との接触後に駆動力を急減させることが困難である点から、電磁反発機構が駆動部として有利である。
【0117】
また、上記実施形態では、駆動電極11および対向電極12が、絶縁物である絶縁操作ロッド23,24を介して、駆動機構部3および衝撃緩衝部4に接続されているが、この構成に限定されない。駆動電極および対向電極は、駆動機構部および衝撃緩衝部に直接接続され、電気的に導通していても良い。
【0118】
また、上記実施形態では、駆動機構部3および衝撃緩衝部4に、駆動側制動部35および対向側制動部54を設けているが、この構成に限定されない。駆動機構部および衝撃緩衝部は、定常時の駆動電極および対向電極の位置を保持し、かつ投入動作時に定常時の状態へ復帰させる力を出力する位置保持部を設けていれば良い。
【0119】
また、上記実施形態では、駆動側復帰ばね38および対向側復帰ばね55をコイルばねとしたが、この構成に限定されない。駆動側復帰ばねおよび対向側復帰ばねとして皿ばねや空気ばね等を用いても良い。
【0120】
また、上記実施形態では、駆動側制動部35および対向側制動部54が、作動油の粘性抵抗を利用して減衰力を出力するショックアブソーバであるが、この構成に限定されない。駆動側制動部および対向側制動部は、空気の粘性抵抗を利用した空気ダンパでも良いし、ゴムの減衰機構を利用したゴムダンパでも良い。ただし、押し込み量に対する減衰力の立ち上がり特性を考慮すると、作動油の粘性抵抗を利用したショックアブソーバが制動部として有利である。
【0121】
また、上記実施形態では、対向側制動部54にショックアブソーバへの押し込み量を制限するストッパ61を設けたが、この構成に限定されない。対向側可動部が、対向側復帰ばねの対向側復帰力、およびショックアブソーバの減衰力の少なくともいずれか一方によって減速されて停止するのであれば、ストッパを設けなくても良い。
【0122】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、投入動作時に駆動電極に対して対向電極に接近する方向の駆動力を与える駆動部と、駆動電極に対して対向電極から開離する方向に常に復帰力を与える駆動側付勢部と、定常時に駆動電極と対向電極とが開離した状態で駆動電極の変位を規制する駆動側ストッパと、対向電極に対して駆動電極に接触する方向に常に復帰力を与える対向側付勢部と、定常時に駆動電極と対向電極とが開離した状態で対向電極の変位を規制する対向側ストッパと、を持つので、電極間の溶着から生じた突起による耐電圧性能の低下を抑制できる。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。