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特許7443578整流器、エネルギー供給装置およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】整流器、エネルギー供給装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240227BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H02M7/12 A
B81B3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022578750
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021062811
(87)【国際公開番号】W WO2022002473
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】102020208058.5
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】20193518.6
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ランブレヒト,ランツィスカ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガート,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】ツァップ,イェルク
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0148592(US,A1)
【文献】特開2019-126217(JP,A)
【文献】特開2017-123329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流バルブで形成された整流回路を有する整流器であって、前記整流回路において前記電流バルブがMEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)で形成されており、
前記整流器がスイッチングコントローラ(60)を有し、前記スイッチングコントローラ(60)は、前記MEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)を切り替えるようにおよび開くように制御するように構成されており、
前記スイッチングコントローラ(60)は、前記整流器に供給する電圧(80)が、ゼロ電圧(N)に対して最小間隔(THRESH1,THRESH2)を下回るときに、前記MEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)を開くように構成されている、
整流器。
【請求項2】
前記整流回路が、ブリッジ回路であるか、またはブリッジ回路を有し、または前記整流回路が、ブリッジレスPFC回路を有する、請求項1記載の整流器。
【請求項3】
前記ブリッジ回路が、グレッツ回路であるか、またはグレッツ回路を有する、請求項記載の整流器。
【請求項4】
前記MEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)が、切り替えられるようにまたは開かれるように制御されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項5】
前記整流回路が、前記MEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)に対して並列に接続されたダイオード(D1,D2,D3,D4)を含んでいる、請求項1から4のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項6】
前記ダイオード(D1,D2,D3,D4)は、前記MEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)が開かれているときに、前記ダイオード(D1,D2,D3,D4)が、前記整流器の残りの部分と共に、整流回路を形成するように、方向付けられて接続されている、請求項記載の整流器。
【請求項7】
前記整流器(50)に供給する電圧(80)が交流電圧である、請求項1から6のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項8】
前記スイッチングコントローラ(60)は、前記整流器(50)に供給する電圧(80)が、高調波成分(OWAN)のための閾値を上回るときに、前記MEMSスイッチ(S1,S2,S3,S4)を開くように、構成されている、請求項1から7の1つに記載の整流器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の整流器(50)を有するエネルギー供給装置。
【請求項10】
端末装置と請求項に記載のエネルギー供給装置とを有するシステムであって、前記エネルギー供給装置において前記端末装置(20)が前記端末装置(20)のエネルギー供給のために前記エネルギー供給装置(30)と相互に接続可能である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流器、エネルギー供給装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギー供給は、一般に交流電圧を介して行われる。しかし、コンピュータまたはスマートフォンまたは自動化技術の多数のコンポーネンなどの電子端末は、通常、半導体素子の集中的な使用により、たいていは低い直流電圧を必要とする。そのような半導体素子は、たいてい、動作のための明確な電圧レベルを必要とし、したがって、直流電圧を必要とする。さらに、非常に多くの電子機器は、系統電圧を、しばしば5Vから30Vの範囲にある安全な直流電圧に変換するために、ガルバニック絶縁も必要とする。このために、たいてい、単に電源ユニットとも呼ばれるクロック同期式電源が使用される。
【0003】
交流電圧を整流するために、ダイオード整流器が知られており、ダイオード整流器は、後続のコンバータ(これは、たいてい電気的絶縁を有する)と組み合わせて、通常80%から90%の間の効率を有する。95%までの効率を達成するために、通常は、出力側の整流ダイオードを極めて効率の良い低電圧MOSFETに置き換えた共振型コンバータが使用される。ただし、可変入力電圧で汎用的に使用する場合には、共振コンバータで中間回路電圧を予備調整する必要がある。
【0004】
このような予備調整は、通常、アクティブ力率改善、すなわちアクティブ・パワーファクタ・コレクション(アクティブPFC)によって行われ、これは、付加的に、ほぼ正弦波の電流経過を提供し、このことは効率をさらに高め、したがって、系統電源ラインの負担を最小化する。しかし、アクティブ力率改善によるこのような予備調整も効率限界に遭遇する。
【0005】
さらに、力率改善を有するブリッジレス整流器トポロジーが知られている。しかしながら、そのような整流器トポロジーは、一方で、より大きな設置スペースを必要とし、他方で、それらは高価である。
【0006】
基本的には、ダイオードは、トランジスタ、例えば、MOSFETで置き換えることができる。しかし、並列に多くのトランジスタを接続することは高価であり、トランジスタは、一般に耐電圧が十分でなく、しばしば十分に低い電圧降下を持っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、改良された整流器、改良されたエネルギー供給装置、および改良されたシステムを提供することである。特に、整流器、エネルギー供給装置およびシステムは、より大きなエネルギー効率で動作することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこの課題は、請求項1記載の特徴事項を有する整流器によって、請求項10記載の特徴事項を有するエネルギー供給装置によって、ならびに請求項11記載の特徴事項を有するシステムによって解決される。好ましい発展形態は、関連する従属請求項、以下の説明および図面に明記されている。
【0009】
本発明による整流器は、電流バルブで形成された整流回路を有し、その整流回路において電流バルブはMEMSスイッチで形成されている。
【0010】
MEMSスイッチ(MEMS=「微小電気機械システム」)なる用語は、本発明の意味では、電気的に、特に静電的に作動させることができる微小機械的に製造された可動スイッチング素子を有するスイッチを意味するものとして理解されるべきである。
【0011】
本発明によれば、電流バルブはMEMSスイッチの形で提供されるが、従来技術では、電流バルブは、通常、ダイオードの形で存在する。しかし、そのようなダイオードの使用は、例えば230Vの系統末端電圧の従来から知られている整流器の場合、全体装置出力電力に対して約1%の範囲の損失をもたらす。米国の120V系統または日本の100V系統のような低い系統電圧ならびにこれらの系統電圧のそれぞれの公差において、系統ダイオード整流器の損失は、全体装置出力電力に対して2パーセントの値に達し得る。そのような整流器によって実現されるエネルギー供給装置について、少なくとも95%の効率を得ようと努力する場合、出力電力におけるこれらの損失は、大きな問題を突きつける。さらに、これまでは受け入れなければならなかった損失電力は、放熱のための付加的なコンポーネントを必要とする高い冷却需要を引き起こす。さらに、その熱発生は、公知の整流器の早期故障のリスクの原因となる。
【0012】
それに対して、MEMSスイッチの形態の電流バルブを有する整流器は、数多くの利点を有する。
【0013】
MEMSスイッチは、特に低い接触抵抗を有し、その結果として、格別に低い損失が生じる。したがって、整流器、ひいてはこのような整流器を備えたエネルギー供給装置も、格別に高いレベルの効率で設計することができる。さらに、MEMSスイッチを電流バルブとして使用する場合に、故障の確率が著しく低下する。
【0014】
低損失の結果として、MEMSスイッチを使用する場合には、さらに複雑な放熱コンポーネントも省略することができるので、本発明による整流器は、格別にコスト効率よく製造することができる。さらに、本発明によって可能な放熱コンポーネントの省略のおかげで、整流器は、格別に軽量かつコンパクトに形成することができる。したがって、特に、エネルギー供給装置は、より軽量かつコンパクトに形成することができる。
【0015】
熱発生が僅かであるため、より高い周囲温度での動作も実現可能である。
【0016】
有利に、ほとんど電力なしで、MEMSスイッチを切り替える制御、すなわち、開くまたは閉じる制御をすることができるので、MEMSスイッチは、その制御の結果として、エネルギー効率を、言うに値するほど低下させることはない。
【0017】
さらに、MEMSスイッチによって、約2~10マイクロ秒の非常に短いスイッチング時間を有利に達成することができる。したがって、最大50~60Hzのスイッチング周波数は、8マイクロ秒の周期を仮定すると、MEMSスイッチを使用して容易に達成することができる。さらに、MEMSスイッチは順方向電圧が低く、エージングが無視できるほど小さく、また、系統電源の電圧ピークが発生した場合に過電流から保護されるように、制御回路によって十分に迅速にスイッチオフすることができる。
【0018】
格別に好ましくは、整流器は、整流回路の出力側に接続された電力変換器、特にアクティブ力率改善、すなわちアクティブPFCを備えた電力変換器を有する。この場合、整流回路は、MEMSスイッチとして構成された電流バルブによって、ほとんど電力なしで、制御することができ、すなわち切り替えることができる。
【0019】
好ましくは、本発明による整流器において、前記整流回路はブリッジ回路であるか、または前記整流回路はブリッジ回路を有する。
【0020】
好ましくは、本発明による整流器において、前記ブリッジ回路はグレッツ回路であるか、または前記ブリッジ回路はグレッツ回路を有する。
【0021】
それに代えて、またその上に、好ましくは、前記整流回路が、ブリッジレス整流回路、特にブリッジレスPFC回路である。このような整流回路には、グレッツ回路のアームが、50~150kHzの典型的な動作周波数で動作するアクティブ制御されるトランジスタに置き換えられるトポロジーが含まれる。昇圧段のトランジスタは、さらに部分的な系統整流を生じさせ、したがって、追加のダイオード損失を節約することができる。そのようなトポロジーにおいては、例えば50または60Hzの系統周波数でのみスイッチングしなければならない電流バルブが使用されている。これらの用途では、損失をさらに低減するために、電流バルブとしてMEMSスイッチを使用することができる。
【0022】
本発明による整流器では、MEMSスイッチは、切り替えるように、または開くように制御されていることが好ましい。したがって、MEMSスイッチは、通常、静電的な制御によって、MEMSスイッチを閉じるようにおよび/または開くように制御することができ、例えば、静電的に偏向することができる屈曲要素によって、該屈曲要素が、その屈曲要素の偏向の結果として、スイッチ接点を互いに接触方向に移動させ、または互いに離間させる。
【0023】
本発明による整流器において、前記整流回路は、好適には、MEMSスイッチに対して並列に接続されたダイオード、特に半導体ダイオードを有する。
【0024】
このような並列接続されたダイオードによって、MEMSスイッチは、系統電圧の電圧ピークの結果としての大きな電流の流れに対して有利に保護することができる。いわゆるサージパルスは、MEMSスイッチの動作中に発生する可能性があり、これは、例えば、整流器の出力側に接続されたコンデンサの充電電流によって引き起こされ得る。コンデンサは典型的には比較的低インピーダンスの部品であるので、コンデンサの現在の電圧を超える系統電圧の電圧上昇は、10~20マイクロ秒の間、数100A付近の値を取る高電流パルスに至り得る。このような大電流パルスにより、MEMSスイッチの電気接点は容易に互いに溶着し得る。
【0025】
MEMSスイッチを通る結果として生じる電流は、並列に接続されたダイオードの手段によって効果的に制限することができる。なぜならば、例えばシリコンダイオードの場合、ダイオードの順方向電圧は、数100Aの順方向電流であっても最大1.5Vであるからである。したがって、MEMSスイッチに印加される最大電圧を制限することができる。したがって、MEMSスイッチにおける制限された電圧と、MEMSスイッチの内部抵抗は、結果として、MEMSスイッチを流れる順方向電流を効果的に制限する。さらに、有利なことに、順方向電流の受動的制限が、言うに値するほどの時間遅延なしに可能である。これは、特に、電流が数マイクロ秒以内に増加し得るサージパルスの場合、特別に重要である。
【0026】
本発明による整流器において、ダイオードは、次のように方向付けされて接続されていることが好ましい。すなわち、MEMSスイッチが開いた位置にあるときに、ダイオードが整流器の他の部分と共に整流回路、好ましくはブリッジ回路、特にグレッツ回路を形成するように、方向付けされて接続されている。
【0027】
本発明のこの発展形態では、ダイオードは、その開いた位置にあるMEMSスイッチの機能を引き受けることができる。ダイオードは、整流のためのMEMSスイッチの動作が重要であることが明らかであるそのような動作フェーズで有利に整流を引き受けることができる。一方、動作時間の大部分において、MEMSスイッチは整流を引き受けることができるので、本発明による整流器による整流の効率が著しく高くなり、同時に整流器のフェールセーフ動作が可能になる。
【0028】
本発明による整流器は、本発明の有利な発展形態では、スイッチングコントローラを有し、このスイッチングコントローラは、MEMSスイッチを切り替える制御および開く制御をするように構成されている。スイッチングコントローラは、整流器により整流される交流電圧の周波数でMEMSスイッチを切り替えるように構成されている、その結果、MEMSスイッチは、スイッチング位置を整流電圧の周波数で変更することができる。
【0029】
MEMSスイッチを制御することによって、整流は、MEMSスイッチの適切な回路によって容易に達成することができる。
【0030】
本発明による整流器では、スイッチングコントローラが、系統電圧のゼロ通過領域でMEMSスイッチを開くように構成されていることが有利である。特に、産業用電力系統では、パワーエレクトロニクスが系統電圧に反作用を及ぼし、系統電圧の正弦波経過からの逸脱を生じさせる。極端な場合、歪みがあると、系統電圧のゼロ通過を正確に決定することが困難になり、MEMSスイッチの誤作動およびその結果としての電気的短絡のリスクが増大する。しかし、MEMSスイッチを通る大きな短絡電流は、容易にそれらを損傷する可能性がある。スイッチングコントローラによって、系統電圧、すなわちゼロになる系統電圧に極めて近い電圧値でMEMSスイッチを開くことができ、したがって、本発明による整流器のフェールセーフ性を高めることができる。
【0031】
本発明による整流器において、スイッチングコントローラは、整流器に供給する電圧、特に交流電圧が、ゼロ電圧からの最小間隔を下回ったときにMEMSスイッチを開くように構成されていることが好ましい。
【0032】
このように、本発明による整流器では、ゼロに向かう系統電圧に近い電圧値でMEMSスイッチを開くことができるので、エネルギー供給装置のフェールセーフ性がさらに高まる。非常に低い系統電圧の範囲において、電流の瞬時値は同様に非常に小さいので、特に、電流と電圧が同相のアクティブ高調波制限(PFC)を使用する場合には、MEMSスイッチのスイッチオフによる整流器の電力損失の増加や、半導体ダイオードによる比較的高い電圧降下は無視できる。
【0033】
本発明による整流器において、スイッチングコントローラは、整流器に供給する電圧、特に交流電圧が、高調波成分に対する閾値を上回ったときに、MEMSスイッチを開くように構成されることが好ましい。
【0034】
高い高調波成分とその結果として生じる系統電圧の正弦波経過からの偏差は、系統電圧のゼロ通過の時宜に適った予測を困難にし、MEMSスイッチを誤って切り替え、したがって短絡を引き起こすリスクを増大させる。このリスクは、MEMSスイッチがある特定の高調波成分で開かれる本発明の発展形態によって効果的に低減される。その結果、本発明によるエネルギー供給装置のフェールセーフ性および動作信頼性が著しく高まる。
【0035】
本発明による整流器において、スイッチングコントローラは、系統電圧の電圧値および/または系統電圧の時間的経過を検出するための1つまたは複数の検出手段を有するのが好適である。特に好ましくは、スイッチングコントローラは、電圧値または時間的経過に基づいて系統電圧の高調波成分を決定する高調波成分決定装置を有する。これに代えて、またはこれに加えて、スイッチングコントローラは、1つまたは複数の電流検出手段を有し、この電流検出手段は、MEMSスイッチおよび/または場合によっては並列接続されたダイオード整流器の1つまたは複数またはすべてを介する電流を検出するように構成されている。
【0036】
本発明による整流器において、スイッチングコントローラは、1つまたは複数の、またはすべてのMEMSスイッチを流れる貫通電流が、その貫通電流に対する閾値を上回る場合に、MEMSスイッチを開くように構成されていることが好ましい。
【0037】
本発明によるエネルギー供給装置は、上記のような本発明による整流器を有する。
【0038】
本発明によるシステムは、端末装置と、本発明によるエネルギー供給装置とを有し、端末装置は、端末装置のエネルギー供給のために、エネルギー供給装置に相互接続可能である。
【0039】
以下において、本発明を図面に示された実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明による整流器を含む本発明によるエネルギー供給装置を有する本発明によるシステムを概略的に原理図で示す。
図2図2は、第1のスイッチング位置にある図1による整流器を概略的に回路図で示す。
図3図3は、第2のスイッチング位置にある図2による整流器を概略的に回路図で示す。
図4図4は、第1のスイッチング位置にある図1による整流器の他の実施例を示す。
図5図5は、第2のスイッチング位置にある図4による整流器を概略的に回路図で示す。
図6図6は、図2および図3ならびに図4および図5による整流器を制御するための制御方法を概略的に原理図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1に示す本発明によるシステムは、自動化システム10であり、制御装置20の形態の端末装置と、エネルギー供給装置30とを含んでいる。制御装置20には、エネルギー供給装置30によって、制御装置20を動作させるために必要とする直流電圧が供給される。
【0042】
エネルギー供給装置30には、交流電圧接続部40によって交流電圧が供給される。エネルギー供給装置30は、本発明による整流器50を有し、この整流器50は、交流電圧を直流電圧に変換する。整流器50は、スイッチングコントローラ60によって制御される。整流器50の構造およびスイッチングコントローラ60の動作モードは、以下において、さらに詳細に説明する。オプションとして使用されるコンバータ55において、整流され、場合によってはアクティブPFCにおいてより高い電圧レベルにされた系統電圧は、たいてい、より低い出力電圧に変換される。
【0043】
図2および図3を参照して、整流器50を第1の実施例において説明する。
【0044】
整流器50は、4つの電流バルブのグレッツ回路を含み、このグレッツ回路は、交流電圧接続部40に供給される交流電圧80を直流電圧に変換し、この直流電圧は、整流器50のコンデンサ90を充電する。コンデンサ90は、整流器50の中間回路コンデンサを形成する。
【0045】
本発明によれば、グレッツ回路の4つの電流バルブは、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4として存在し、これらのスイッチは、図示の実施例では、ドイツ特許出願公開第102017215236号明細書「MEMSスイッチおよびMEMSスイッチの製造方法」に記載されているように、製造されて、形成されている。グレッツ回路は、その回路トポロジーに関して、既知のグレッツ回路に対応し、これは、電流バルブとしてダイオードで形成されている。このようなグレッツ回路は、例えば、次のURL、en.wikibooks.org/wiki/Electronics_Fundamentals/Diode_Circuitの下で説明されている。
【0046】
MEMSスイッチS1,S2,S3,S4は、グレッツ回路を形成するために、電気接続線70によって、それ自体公知の方法で接続されている。グレッツ回路は、MEMSスイッチS2およびS3が閉じられて、かつMEMSスイッチS1およびS4が開かれているときには、この時点で(図2の表示において)下側に供給される交流電圧80の正電圧をコンデンサ90の上部電極に導く。これに対応して、この時点で上側に供給される交流電圧80の負電圧は、コンデンサ90の下部電極に導かれる。これに対して。図3のスイッチング位置では、整流器50のグレッツ回路において、MEMSスイッチS1およびS4が閉じられており、MEMSスイッチS2およびS3が開いているため、上側に供給される交流電圧80のこの時点での正電圧がコンデンサ90の上部電極に導かれ、下側に供給される交流電圧80のこの時点での負電圧がコンデンサ90の下部電極に導かれる。
【0047】
その結果、整流器50では、MEMSスイッチS1およびS4ならびにS2およびS3が、それぞれ、交流電圧80の零通過時に、開のスイッチング位置から閉のスイッチング位置に移行されるか、または閉のスイッチング位置から開のスイッチング位置に移行されるときに、常に、コンデンサ90の上部電極に正の電圧が存在し、コンデンサ90の下部電極に負の電圧が存在する。したがって、このような動作において、図2および図3のスイッチング位置は、交流電圧80の周波数にともなって交互に現れ、コンデンサ90は、それに対応して印加される直流電圧によって充電される。
【0048】
MEMSスイッチS1,S2,S3,S4は、上述の方法でスイッチングコントローラ60によって制御され、その結果、MEMSスイッチ1,S2,S3,S4は、電流バルブとして動作し、従来技術で使用されダイオードで形成される電流バルブに取って代わる。
【0049】
第2の実施例では、整流器50は、図2および図3に示されている整流器50と同様に構成されている。この第2の実施例の整流器50は、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4のうちの1つにそれぞれ並列に接続された追加の保護ダイオードD1,D2,D3,D4を有する点だけ上述したものとは異なる。その際に、保護ダイオードD1,D2,D3,D4は、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4が開位置にあった場合に、保護ダイオードD1,D2,D3,D4が、制御されるMEMSスイッチS1,S2,S3,S4の電流バル機能の代わりになるように、正確に、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4に並列に接続されており、かつ方向付けされている。このようにして、電圧ピークの結果としてMEMSスイッチS1,S2,S3,S4に生じ得る損傷を回避することができる。基本的には、特にいわゆるサージパルスのような電圧ピークが整流器50に生じることがある。このような電圧ピークは、コンデンサ90の現在の電圧を超える交流電圧の電圧増加を意味する。コンデンサ90の低オーム抵抗のために、このような電圧ピークは、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4を通る非常に大きな電流パルスをもたらすことがある。このような大きな電流パルスは、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4のスイッチ接点の溶着につながる可能性がある。これに対して、保護ダイオードD1,D2,D3,D4は、大電流であっても、数ボルトの比較的低い順方向電圧を有する。図示の実施例において、保護ダイオードD1,D2,D3,D4は、シリコンダイオードで形成され、それは、数100 Aの電流強度でさえ、せいぜい1.5Vの順方向電圧を有する。保護ダイオードD1,D2,D3,D4によって、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4にそれぞれ加わる最大電圧は、高々1.5Vに制限される。したがって、MEMSスイッチS1、S2、S3、S4の内部抵抗100が固定されているため、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4のそれぞれを通して流れる最大電流は制限される。したがって、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4のスイッチ接点の溶着は、保護ダイオードD1,D2,D3,D4によって効果的に回避される。MEMSスイッチは、ダイオードとは対照的に、両方向に電流を流すことができるので、PFC (オプションユニット65として示されている)を用いた正弦波の系統電流によるアクティブ高調波制限を使用する場合、動作上の制約から、ダイオードまたはダイオードのような挙動を有する可制御スイッチが使用され、その結果、コンデンサ90の電圧が系統電圧の瞬時値よりも高いときには、電流がコンデンサから系統に逆流することはない。
【0050】
スイッチングコントローラ60は、図6に示すスイッチング方法に従って動作する。
【0051】
時間tにわたる瞬時交流電圧80の経過曲線ISSPAVは、スイッチングコントローラ60の図示されていない電圧測定器によって連続的に測定される。
【0052】
インダクタンスを放電させる結果としてアーク放電することを避けるために、MEMSスイッチS1、S2、S3、S4は、検出された交流電圧に依存してオフに切り替えられる。この目的のために、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4は、交流電圧80が予測されるゼロ点に到達する前にオフに切り替えられる。その際、整流は、わずかな損失しか生じない保護ダイオードD1,D2,D3,D4によって行われる。
【0053】
この目的のために、閾値THRESH1,THRESH2が定義され、両閾値によって、ゼロ電圧Nの周りに図示の実施例では対称である電圧範囲が形成され、その範囲内でMEMSスイッチS1,S2,S3,S4がスイッチオフされるので、この電圧範囲内の電圧の整流は、保護ダイオードD1,D2,D3,D4を用いてのみ行われる。このようにして、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4は、予測されるゼロ点から閾値THRESH1,THRESH2によって定義される安全マージンを下回る交流電圧の瞬時電圧値でオフに切り替えられる。この対応するスイッチオフは、図示された実施例において、次のようにして達成される。すなわち、交流電圧80の瞬時電圧値が閾値THRESH1,THRESH2によって特徴付けられる電圧範囲外にある場合にのみ、スイッチングコントローラ60が、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4を駆動信号MEMSAによって作動させ、前記電圧範囲に到達したときに駆動信号MEMSAをオフにするようにして、達成される。
【0054】
図6に示す実施例の発展形態においては、瞬時電圧経過ISSPAVが使用されるだけでなく、瞬時電圧経過ISSPAVから、追加的に瞬時電圧経過ISSPAVの高調波成分が算出される。十分に大きな高調波成分が存在する場合、瞬時電圧経過ISSPAVは、正弦波状の目標電圧経過SOSPAVから非常に大きく逸脱するので、交流電圧80のゼロ通過が目標電圧経過SOSPAVに基づいて予測されるよりも早く発生するという無視できないリスクが存在する。実施例のこの発展形態において、MEMSスイッチS1,S2,S3,S4は、一方では交流電圧80の瞬時電圧値が閾値THRESH1,THRESH2によって特徴付けられる電圧範囲の外側にあって、同時に高調波成分が十分に小さい場合にのみ、駆動信号MEMSAによって作動させられる。図示の実施例では、閾値THRESH1,THRESH2は、交流電圧の最大電圧値の20パーセントならびに-20パーセントである。図示の実施例において、高調波成分は、30パーセントの最大限界を上回らなければ十分に小さい。その他の点に関しては図示の実施例に対応している他の実施例では、閾値THRESH1,THRESH2に他の値が適用され、また、高調波成分に他の限界が適用される。
【符号の説明】
【0055】
10 自動化システム
20 制御装置
30 エネルギー供給装置
40 交流電圧接続部
50 整流器
60 スイッチングコントローラ
80 交流電圧
90 コンデンサ
100 内部抵抗
S1,S2,S3,S4 MEMSスイッチ
D1,D2,D3,D4 保護ダイオード
ISSPAV 瞬時電圧経過
SOSPAV 目標電圧経過
THRESH1 閾値
THRESH2 閾値
N ゼロ電圧
MEMSA 駆動信号
OWAN 高調波成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6