(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】レンズ装置およびそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20240227BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240227BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20240227BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240227BHJP
G03B 35/08 20210101ALI20240227BHJP
G03B 17/17 20210101ALI20240227BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240227BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/18
G03B19/07
G03B15/00 W
G03B15/00 U
G03B35/08
G03B17/17
H04N23/55
(21)【出願番号】P 2023003584
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2018127360の分割
【原出願日】2018-07-04
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】江部 裕基
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053728(WO,A1)
【文献】特開2012-133015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
G03B 35/00-37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの光学系を有し、
前記二つの光学系はそれぞれ、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の前レンズ群、中間群、後レンズ群から成り、
前記二つの光学系における前記前レンズ群はそれぞれ、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズを有し、
前記二つの光学系における前記中間群はそれぞれ、前記前レンズ群に
隣り合う位置に配置された、光路を折り曲げる第1反射部材と、前記後レンズ群に
隣り合う位置に配置された、光路を折り曲げる第2反射部材と、を有し、
前記二つの光学系において最も物体側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔をDin、前記二つの光学系において最も像側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔をDoutとしたとき、
0.05<Dout/Din<0.50
なる条件式を満足することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第1反射部材の反射面と前記第2反射部材の反射面の間の屈折力は正であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記中間群の焦点距離をfm、前記光学系の焦点距離をfとしたとき、
2.00<fm/f<20.00
なる条件式が満足されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記前レンズ群の焦点距離をfn、前記後レンズ群の焦点距離をfpとしたとき、
0.10<|fn/fp|<0.50
なる条件式が満足されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記前レンズ群の最も物体側の面から前記第1反射部材の反射面までの光軸上の距離をL1、前記前レンズ群の最も物体側の面から像面までの光軸上の距離をLとしたとき、
0.10<L1/L<0.60
なる条件式が満足されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第2反射部材の反射面から前記後レンズ群の最も像側の面までの光軸上の距離をL2、前記前レンズ群の最も物体側の面から像面までの光軸上の距離をLとしたとき、
0.10<L2/L<0.50
なる条件式が満足されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記前レンズ群は負レンズを2枚有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記後レンズ群は正の屈折力を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記後レンズ群は正レンズを2枚、負レンズを1枚有することを特徴とする請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項10】
光路の折り曲げ回数は2回であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記後レンズ群は最も物体側に配置された正レンズを有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記二つの光学系の水平画角はそれぞれ、150°以上であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項13】
前記二つの光学系において最も物体側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔は40mm以上65mm以下であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記二つの光学系は、互いに同一の光学系であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のレンズ装置と、前記二つの光学系によって形成される光学像を撮像する撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
前記二つの光学系による光学像は、一つの前記撮像素子によって撮像されることを特徴とする請求項15に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置に関し、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
バーチャルリアリティー等の臨場感の得られるコンテンツに用いられる映像を撮影するために、広角かつ立体撮影可能な撮像装置が求められている。
【0003】
特許文献1には一つの撮像素子上に二つの光学系による光学像を形成させることで立体撮影を可能とした構成の撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、二つ共軸系の光学系を撮像素子上に並べて配置しているため、二つの光学系の光軸の間隔が小さくなってしまう。より自然な立体画像(映像)を取得するために特許文献1の構成で基線長を大きくしようとすると、装置を撮像素子ごと大型化しなければならなかった。
【0006】
本発明は、小型でありながら基線長を大きくすることのできる立体撮影可能なレンズ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ装置は、二つの光学系を有し、前記二つの光学系はそれぞれ、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の前レンズ群、中間群、後レンズ群から成り、前記二つの光学系における前記前レンズ群はそれぞれ、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズを有し、前記二つの光学系における前記中間群はそれぞれ、前記前レンズ群に隣り合う位置に配置された、光路を折り曲げる第1反射部材と、前記後レンズ群に隣り合う位置に配置された、光路を折り曲げる第2反射部材と、を有し、前記二つの光学系において最も物体側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔をDin、前記二つの光学系において最も像側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔をDoutとしたとき、
0.05<Dout/Din<0.50
なる条件式を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型でありながら基線長を大きくすることのできる立体撮影可能なレンズ装置を実現することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】レンズ装置の二つの光学系によって形成されたイメージサークルを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のレンズ装置及びそれを有する撮像装置の実施例について、添付の図面に基づいて説明する。
【0011】
[実施例1]
図1は、実施例1のレンズ装置の要部断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施例のレンズ装置100は二つの光学系101、102を有する。光学系101、102は不図示の筐体によって保持されている。本実施例において光学系101、102は後に述べる反射部材の反射方向を除いて同一であるため、以降の説明では代表として光学系101について述べる。以下、本願明細書において光学系101、102が同一であると言う場合、反射部材の反射方向を除いてレンズ構成等が同一であることを意味する。
【0013】
光学系101は、二つの反射部材103、105を有する。第1反射部材103は光路を折り曲げる反射面R1を有する。第2反射部材105は光路を折り曲げる反射面R2を有する。第1反射部材103と第2反射部材105の間には開口絞りSPが設けられている。
【0014】
図1において、IPは像面(近軸結像位置)である。像面IPには、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子またはフィルムが配置される。
【0015】
像面IPには、光学系101、102によって像(光学像)が形成される。すなわち、本実施例のレンズ装置100において、二つの光学系による二つの光学像は一つの撮像素子上に形成される。
【0016】
図2は、像面IP上に形成される二つのイメージサークル(光学像が形成される領域。有効像円形)IC1、IC2を表している。IC1は光学系101によって形成されたイメージサークルであり、IC2は光学系102によって形成されたイメージサークルである。このように、本実施例では視差のついた2枚の画像を1枚の撮像素子で取得することができる。
【0017】
次に、本実施例の光学系101について具体的に述べる。
【0018】
図3は、本実施例の光学系101の断面図である。ただし、反射部材103、105により折り曲げられた光路は展開して示している。
【0019】
光学系101は、物体側から像側へ順に、前レンズ群N、中間群M、後レンズ群Pを有する。
【0020】
前レンズ群Nは負の屈折力を有している。中間群Mは、前レンズ群Nに隣接する位置に配置された第1反射部材103と、後レンズ群Pに隣接する位置に配置された第2反射部材105と、を有して構成されている。本実施例では、第1反射部材103と第2反射部材105は共にプリズムであるが、単なるミラーであっても良い。反射部材としてプリズムを用いる場合、光の入射面と出射面は平面であっても曲面であっても良い。
【0021】
図3に示す符号R1とR2は、反射面R1と反射面R2の位置を示している。
【0022】
図4は、本実施例の光学系101の無限遠合焦時の収差図である。各収差図においてFnoはFナンバー、ωは半画角(°)である。球面収差図において、実線はd線(波長587.6nm)、2点鎖線はg線(波長435.8nm)の球面収差を表している。非点収差図において実線(S)はd線におけるサジタル像面、破線(M)はd線におけるメリディオナル像面の非点収差を表している。歪曲収差図はd線の歪曲を示している。色収差図はg線の色収差を示している。これらは以降の収差図においても同様である。
【0023】
次に、本実施例の光学系101の特徴について述べる。
【0024】
臨場感の得られる画像(映像)を撮影するためには、広角なレンズで立体撮影可能な構成とし、さらにその基線長を大きくとることが重要である。
【0025】
本実施例の光学系101では、前レンズ群Nを負の屈折力としている。これにより、撮影画角を広角化している。
【0026】
また、本実施例の光学系101では、反射面を有する中間群Mの前後に前レンズ群Nと後レンズ群Pを設けている。これによって、光学系101を小型としつつ高い光学性能を実現している。広角の撮像光学系の場合、光学系101において最も物体側の面である第1面における周辺画角の光は急峻なため、第1面に反射面を設けようとすると反射面が大型化してしまう。また、光学系101における最も像側の面である最終面に反射面を配置しようとすると場合、反射面を設けるためにバックフォーカスをある程度確保する必要が生じる。その結果、前レンズ群Nのパワーを強くする必要が生じ、歪曲収差や倍率色収差を良好に補正することが困難となる。一方、本実施例のように、反射面を光線の高さが比較的低い中間群Mに設けることで、装置全体を小型に構成することができる。さらに、光線の高さが比較的高い位置に配置される前レンズ群Nと後レンズ群Pの構成を適切に設計することで歪曲収差や非点収差を容易に補正することができる。
【0027】
また、本実施例の光学系101は、反射部材103、105による光路の折り曲げにより、以下の条件式を満足するように構成されている。
0.05<Dout/Din<0.50 (1)
【0028】
ここで、Dinは二つの光学系101、102において最も物体側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔、Doutは最も像側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔である。
【0029】
条件式(1)は、二つの光学系101、102の物体側のレンズ面同士の距離と像側のレンズ面同士の距離の間隔を規定するものである。条件式(1)を満足することで十分な基線長を確保しつつ装置全体を小型に構成することが可能となる。
【0030】
条件式(1)の下限値を下回ると、最も像側のレンズ面頂点同士の間隔が小さくなりすぎ、二つの光学系101、102の後レンズ群P同士が干渉してしまう。または、最も物体側のレンズ面の面頂点同士の間隔が大きくなりすぎる。この場合、人間の眼で見て自然な立体映像を撮影することが困難となる。上限値を超えると、最も物体側のレンズ面の面頂点同士の間隔が小さくなりすぎ、基線長を確保できない。この場合も自然な人間の眼で見て自然な立体映像を撮影することが困難となる。または、後レンズ群P同士の間隔が大きくなりすぎ、装置全体が大型化してしまう。
【0031】
以上の構成により、本実施例ではレンズ装置100を小型に構成しつつ基線長を大きくすることができている。
【0032】
なお、条件式(1)の数値範囲は、以下の条件式(1a)の範囲とすることが好ましく、(1b)の範囲とすることがより好ましい。
0.07<Dout/Din<0.47 (1a)
0.10<Dout/Din<0.45 (1b)
【0033】
次に、本実施例のレンズ装置100における好ましい構成について述べる。以下に述べる好ましい構成は、二つの光学系101、102のうち少なくとも一方が満たしていれば良い。より好ましくは、二つの光学系101、102を同一の構成とするなどして、二つの光学系101、102の両方で以下に述べる好ましい構成を満足していると良い。
【0034】
中間群において、第1反射部材103の反射面R1と第2反射部材105の反射面R2の間の屈折力は正であることが好ましい。
【0035】
本実施例の光学系101では、中間群Mにおいて2回光路を折り曲げているため、中間群Mはある程度大きくなる。また、中間群Mには、前レンズ群Nから発散光が入射する。したがって、中間群Mに正の屈折力の成分を設けない場合には、後レンズ群Pの物体側のレンズ面の径が大きくなってしまう。これに対して、第1反射部材103の反射面R1と第2反射部材105の反射面R2の間の屈折力を正とすることで、後レンズ群Pを小さく構成することが可能となる。本実施例では、第1反射部材103と第2反射部材105の間に正レンズと負レンズを接合した正の屈折力を有する接合レンズを配置している。これによって、後レンズ群Pの径を小さくしつつ、さらに軸上色収差を良好に補正している。
【0036】
なお、第1反射部材103、第2反射部材105としてプリズムを用いる場合、第1反射部材103の光出射側の面および第2反射部材105の光入射側の面の屈折力も、反射面R1と反射面R2の間の屈折力として寄与するものとする。
【0037】
また、前レンズ群Nは正レンズを1枚、負レンズを2枚有することが好ましい。前レンズ群Nの負の屈折力を強くすることで光学系101を広角化しつつ小型化できる。このとき、負の屈折力を2枚以上の負レンズで分担することにより、歪曲収差や非点収差の発生を抑えることができる。また、正レンズを1枚以上入れることで、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0038】
また、後レンズ群Pは正の屈折力を有することが好ましい。これによって、光学系101の屈折力配置を逆望遠タイプとすることができ、広角化とバックフォーカスの確保を両立することができる。
【0039】
さらに、後レンズ群Pが正の屈折力を有する場合、後レンズ群Pは正レンズを2枚、負レンズを1枚有することが好ましい。後レンズ群Pの正の屈折力を2枚以上の正レンズで分担することにより、コマ収差や非点収差の発生を抑えることができる。また、負レンズを1枚以上入れることで、軸上色収差や倍率色収差を良好に補正することが可能となる。
【0040】
さらに、光学系101における光路の折り曲げ回数は2回であることが好ましい。光路の折り曲げ回数が多いほど、反射部材を設けるための物理的な空間が拡大してしまう。また、光学系101が複雑な構成となってしまう。
【0041】
さらに、後レンズ群Pは最も物体側に配置された正レンズを有することが好ましい。後レンズ群Pに物体側から入射する軸外光線は発散光であるため、後レンズ群Pの最も物体側のレンズに正の屈折力を持たせることで後レンズ群Pの最も物体側に配置されるレンズより像側に配置されるレンズの径を小さくすることができる。これによって、二つの光学系101、102の後レンズ群P同士が干渉することを防ぐことが容易となる。
【0042】
また、二つの光学系101、102によって形成される二つの光学像(イメージサークルIC1、IC2)は、一つの撮像素子で撮像されることが好ましい。これによって、撮像素子を含めた装置全体を小型化することができる。
【0043】
次に、本実施例のレンズ装置100の光学系101が満足することが好ましい条件について述べる。以下に述べる好ましい条件は、二つの光学系101、102のうち少なくとも一方が満たしていれば良い。より好ましくは、二つの光学系101、102の両方で以下に述べる好ましい条件を満足していると良い。
2.00<fm/f<20.00 (2)
0.10<|fn/fp|<0.50 (3)
0.10<L1/L<0.60 (4)
0.10<L2/L<0.50 (5)
【0044】
ここで、fmは中間群Mの焦点距離である。fは光学系101の全系の焦点距離である。fnは前レンズ群Nの焦点距離である。fpは後レンズ群Pの焦点距離である。L1は前レンズ群Nの最も物体側のレンズ面から第1反射部材103の反射面R1までの光軸上の距離である。Lは光学系101の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離である。L2は第2反射部材105の反射面R2から後レンズ群Pの最も像側のレンズ面までの光軸上の距離である。ここで、「光軸上の距離」とは、反射部材による光路の折り曲げを展開した状態(
図3に示す状態)における光軸上の距離を言う。
【0045】
条件式(2)は、中間群Mの焦点距離に関して好ましい範囲を規定するものである。条件式(2)の下限値を下回ると、中間群Mの屈折力が強くなりすぎ、球面収差や軸上色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(2)の上限値を超えると、中間群Mの屈折力が弱くなりすぎて、二つの光学系101、102の後レンズ群Pの径が大きくなってしまう。
【0046】
条件式(2)の数値範囲は、以下の条件式(2a)の範囲とすることが好ましく、条件式(2b)の範囲とすることがより好ましい。
3.00<fm/f<19.00 (2a)
4.00<fm/f<18.00 (2b)
【0047】
条件式(3)は、後レンズ群Pの焦点距離と前レンズ群Nの焦点距離の比を規定するものである。条件式(3)の下限値を下回ると、前レンズ群Nの負の屈折力が強くなりすぎ、倍率色収差や歪曲収差を良好に補正することが困難となる。条件式(3)の上限値を超えると、後レンズ群Pの屈折力が強くなりすぎ、コマ収差や非点収差を良好に補正することが困難となる。
【0048】
条件式(3)の数値範囲は、以下の条件式(3a)の範囲とすることが好ましく、条件式(3b)の範囲とすることがより好ましい。
0.12<|fn/fp|<0.45 (3a)
0.14<|fn/fp|<0.40 (3b)
【0049】
条件式(4)は、前レンズ群Nにおける最も物体側の面から、反射面R1までの光軸上の距離について好ましい範囲を規定するものである。条件式(4)の下限値を下回ると、前レンズ群Nにおける最も物体側の面から、反射面R1までの間隔が小さくなりすぎ、前レンズ群Nに含まれるレンズに適切な厚みを付与することが困難となる。その結果、倍率色収差や歪曲収差を良好に補正することが困難となる。また条件式(4)の上限値を超えると、前レンズ群Nに含まれるレンズの径が大きくなりすぎ、光学系101が大型化してしまい好ましくない。
【0050】
条件式(4)の数値範囲は、以下の条件式(4a)の範囲とすることが好ましく、条件式(4b)の範囲とすることがより好ましい。
0.20<L1/L<0.50 (4a)
0.30<L1/L<0.45 (4b)
【0051】
条件式(5)は、反射面R2から後レンズ群Pにおける最も像側の面までの光軸上の距離について好ましい範囲を規定するものである。条件式(5)の下限値を下回ると、反射面R2から後レンズ群Pにおける最も像側の面までの間隔が小さくなりすぎ、後レンズ群Pに含まれるレンズに適切な厚みを付与することが困難となる。その結果、コマ収差や非点収差を良好に補正することが困難となる。また条件式(5)の上限値を超えると、後レンズ群Pに含まれるレンズの径が大きくなりすぎ、光学系101が大型化してしまい好ましくない。
【0052】
条件式(5)の数値範囲は、以下の条件式(5a)の範囲とすることが好ましく、条件式(5b)の範囲とすることがより好ましい。
0.15<L2/L<0.40 (5a)
0.19<L2/L<0.30 (5b)
【0053】
また、光学系101の水平画角は150°以上であることが好ましい。水平画角とは、光学系101の光軸と光学系102の光軸を含む面における画角を言う。なお、ここで言う画角とはイメージサークルの最外周に到達する光の画角を言う。光学系101の水平画角は150°以上とすることで、レンズ装置100を用いた立体撮影によって得られる画像(映像)の臨場感をより高めることが可能となる。
【0054】
また、光学系101と光学系102の最も物体側に配置されたレンズの面頂点同士の間隔(物体側の基線長。Din)は40mm以上65mm以下であることが好ましい。これは、人間の眼の基線長が60mm程度であるためである。光学系101と光学系102の物体側の基線長は40mm以上65mm以下とすることで、自然に立体視可能な画像(映像)を得ることができる。
【0055】
次に、他の実施例について述べる。
【0056】
図5は実施例2における光学系101の断面図である。実施例2では、実施例1と同様に第1反射部材103、第2反射部材105を共にプリズムで構成している。ただし、実施例2では実施例1と異なり、中間群Mの第1反射部材103の光出射側の面と、第2反射部材105の光入射側の面を曲面とすることで第1反射部材103の反射面と第2反射部材105の反射面の間の屈折力を正としている。
【0057】
図6は実施例2の光学系101における収差図である。
【0058】
図7は実施例3における光学系101の断面図である。実施例3の光学系101は、前レンズ群N、中間群M、後レンズ群Pの構成が実施例1、2と異なる。実施例3における中間群Mでは、実施例1と同様に、第1反射部材103、第2反射部材105は共にプリズムとしている。
【0059】
図8は実施例3の光学系101における収差図である。
【0060】
図9は実施例4の光学系101の断面図である。実施例4の光学系101は、第1反射部材103、第2反射部材105が共にミラーで構成されている点で実施例1、2、3と異なる。
【0061】
【0062】
次に、各実施例の光学系に対応する数値実施例1乃至4を示す。各数値実施例は、無限遠合焦状態を表している。各数値実施例において、面番号は物体側から数えた際の光学面の順序である。rは物体側から数えて第i番目(iは自然数)の光学面(第i面)の曲率半径、dは第i面と第i+1面との間の間隔である。nd、νdは、レンズのd線に対する屈折率、アッベ数である。
【0063】
また、各数値実施例において、非球面形状のレンズ面については、面番号の後に*(アスタリスク)の符号を付加している。また、各非球面係数における「e±P」は「×10±P」を意味している。光学面の非球面形状は、光軸方向における面頂点からの変位量をx、光軸方向に垂直な方向における光軸からの高さをh、近軸曲率半径をR、円錐定数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10とするとき、以下の式(A)により表される。
x=(h2/R)/[1+{1-(1+k)(h/R)2}1/2]+A4×h4+A6×h6+A8×h8+A10×h10 (A)
【0064】
[数値実施例1]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 29.782 1.75 2.00100 29.1 34.32
2 10.263 7.49 20.00
3 14.582 0.95 2.00100 29.1 16.55
4 8.736 4.58 13.86
5 -40.268 1.00 1.77200 50.0 13.42
6 18.947 2.55 12.80
7 19.251 3.23 1.68134 31.9 13.15
8 -25.358 0.50 12.89
9 44.500 0.80 1.43875 94.7 11.52
10 13.913 4.00 10.60
11 ∞ 13.50 1.51633 64.1 10.53(プリズム)
12 ∞ 1.50 9.79
13(絞り) ∞ 0.50 10.22
14 19.580 3.29 1.52310 50.8 10.57
15 -11.282 1.00 1.95375 32.3 10.56
16 -16.753 1.01 10.87
17 ∞ 13.40 1.51633 64.1 10.44(プリズム)
18 ∞ 1.56 11.65
19* 37.785 1.46 1.58313 59.4 12.55
20 101.565 0.10 12.78
21 11.866 4.98 1.43875 94.7 13.56
22 -18.915 0.75 2.00330 28.3 13.27
23 19.599 0.50 13.54
24 19.286 4.78 1.43875 94.7 14.33
25 -16.809 13.50 15.00
像面 ∞
非球面データ
第19面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.90105e-005 A 6=-1.57449e-008 A 8=-1.85511e-009
各種データ
焦点距離 5.57
Fナンバー 2.80
半画角(°) 89.8
像高 8.75
レンズ全長 88.66
BF 13.50
入射瞳位置 10.06
射出瞳位置 -32.81
前側主点位置 14.96
後側主点位置 7.93
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -16.38
2 3 -23.69
3 5 -16.57
4 7 16.55
5 9 -46.51
6 11 0.00
7 14 14.20
8 15 -39.77
9 17 0.00
10 19 102.33
11 21 17.48
12 22 -9.50
13 24 21.33
【0065】
[数値実施例2]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 24.253 1.75 1.95375 32.3 25.99
2 8.333 7.72 15.80
3 16.867 0.95 1.84100 43.2 11.38
4 6.574 2.66 9.31
5 -63.543 1.00 1.84750 43.0 9.04
6 16.412 0.07 8.71
7 9.874 1.56 1.92286 18.9 8.77
8 14.686 5.29 8.31
9 ∞ 8.00 1.88300 40.8 7.21(プリズム)
10 -33.333 8.26 6.23
11(絞り) ∞ 2.00 6.97
12 20.000 8.00 1.51633 64.1 7.36(プリズム)
13 ∞ 7.90 7.20
14 21.772 2.26 1.43875 94.9 10.00
15 -32.397 1.00 10.19
16 -27.028 2.62 1.45600 90.9 10.25
17 -9.753 0.66 10.51
18 -8.981 1.20 1.96300 24.1 10.30
19 -18.860 0.50 11.26
20 17.051 3.50 1.43875 94.7 12.17
21 -24.348 14.73 12.18
像面 ∞
各種データ
焦点距離 3.25
Fナンバー 2.80
半画角(°) 79.1
像高 4.40
レンズ全長 81.63
BF 14.73
入射瞳位置 8.79
射出瞳位置 1601.83
前側主点位置 12.05
後側主点位置 11.48
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -14.07
2 3 -13.37
3 5 -15.30
4 7 28.27
5 9 37.75
6 12 38.73
7 14 30.06
8 16 31.94
9 18 -18.93
10 20 23.46
【0066】
[数値実施例3]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 29.003 1.75 2.00100 29.1 33.84
2 10.353 9.81 20.00
3 27.827 0.95 2.00100 29.1 14.10
4 10.911 5.58 12.05
5 -14.687 1.00 1.92250 36.0 9.36
6 20.939 0.65 9.19
7 29.084 2.26 1.89286 20.4 9.34
8 -16.390 3.71 9.33
9 ∞ 8.50 1.88300 40.8 6.72(プリズム)
10 ∞ 2.21 4.85
11(絞り) ∞ 0.60 5.22
12 571.710 1.69 1.52310 50.8 5.32
13 -20.256 2.00 5.47
14 ∞ 8.50 1.88300 40.8 5.51(プリズム)
15 ∞ 1.42 7.87
16* -56.169 1.71 1.43875 94.7 8.60
17 -12.502 0.98 9.25
18 -176.273 2.63 1.43875 94.9 10.13
19 -13.451 0.50 10.70
20 -31.094 1.20 2.00540 27.7 10.86
21 26.939 0.50 11.42
22 25.291 4.73 1.43875 94.9 12.12
23 -9.963 20.00 12.95
像面 ∞
非球面データ
第16面
K = 0.00000e+000 A 4=-3.70913e-004 A 6=-1.45620e-008 A 8=-7.58114e-008
各種データ
焦点距離 4.40
Fナンバー 4.00
半画角(°) 91.5
像高 7.00
レンズ全長 82.89
BF 20.00
入射瞳位置 10.16
射出瞳位置 -81.55
前側主点位置 14.36
後側主点位置 15.60
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -16.88
2 3 -18.45
3 5 -9.23
4 7 12.02
5 9 0.00
6 12 37.43
7 14 0.00
8 16 36.22
9 18 33.03
10 20 -14.21
11 22 16.99
【0067】
[数値実施例4]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 27.246 1.75 1.95375 32.3 28.03
2 8.333 9.26 16.01
3* -934.503 0.95 1.95375 32.3 10.73
4 11.819 5.54 9.44
5 -18.679 1.00 1.88067 41.1 7.47
6 13.556 0.65 7.38
7 18.400 1.85 1.89286 20.4 7.61
8 -28.681 17.00 7.63
9 ∞ 8.00 5.40(ミラー)
10(絞り) ∞ 2.18 6.78
11 20.000 1.92 1.51633 64.1 7.22
12 -74.590 6.00 7.20
13 ∞ 6.00 6.78(ミラー)
14* 36.227 1.57 1.43875 94.9 7.09
15 -32.397 1.43 7.26
16 541.636 2.57 1.43875 94.9 7.41
17 -8.431 0.50 7.51
18 -12.760 1.20 1.95375 32.3 7.19
19 79.880 0.50 7.38
20 11.804 2.53 1.43875 94.9 7.69
21* -19.379 13.12 7.67
像面 ∞
非球面データ
第3面
K = 0.00000e+000 A 4= 6.44677e-005 A 6=-5.47254e-006 A 8= 2.43046e-007 A10=-6.92399e-009 A12= 7.73097e-011
第14面
K = 0.00000e+000 A 4=-3.11886e-004 A 6=-3.26508e-006 A 8=-1.12520e-007
第21面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.15426e-007 A 6= 1.95918e-008 A 8= 6.63050e-010
各種データ
焦点距離 1.80
Fナンバー 2.80
半画角(°) 90.2
像高 2.50
レンズ全長 85.52
BF 13.12
入射瞳位置 8.75
射出瞳位置 -1027.09
前側主点位置 10.55
後側主点位置 11.32
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -13.18
2 3 -12.23
3 5 -8.79
4 7 12.79
5 11 30.76
6 14 39.25
7 16 18.95
8 18 -11.46
9 20 17.14
【0068】
以下の表1、2に各実施例における種々の値を示す。
【0069】
【0070】
【0071】
[撮像装置]
次に本発明の撮像装置の実施例について述べる。
図11は、本実施例の撮像装置(デジタルスチルカメラ)200の概略図である。撮像装置200は、撮像素子260を有するカメラ本体250と、上述した実施例1乃至4のいずれかと同様である光学系220を備えるレンズ装置210を備える。レンズ装置210とカメラ本体250は一体に構成されていても良いし、着脱可能に構成されていても良い。なお、
図11には一つの光学系しか図示していないのは、奥行方向に二つの光学系が並んで配置されているためである。
【0072】
本実施例の撮像装置200は、レンズ装置210を有することによって、小型でありながら大きな基線長での立体撮影が可能となっている。
【0073】
なお、上述した各実施例のレンズ装置は、
図11に示したデジタルスチルカメラに限らず、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 レンズ装置
101、102 光学系
N 前レンズ群
M 中間群
P 後レンズ群
103 第1反射部材
105 第2反射部材