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  • 特許-乗客コンベアの長尺物監視装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】乗客コンベアの長尺物監視装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/02 20060101AFI20240227BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B66B29/02 Z
B66B31/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023098263
(22)【出願日】2023-06-15
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 真理子
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-45930(JP,A)
【文献】特開2014-80268(JP,A)
【文献】特開2021-1054(JP,A)
【文献】実開昭61-44471(JP,U)
【文献】特開2014-28667(JP,A)
【文献】特開2012-14302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口から降り口の間に、踏段から天井までの高さが最小高さまで狭まる部分がある乗客コンベアの長尺物監視装置において、
乗客が縦向きで長尺物を持って前記乗り口から乗り込んだ場合に、前記長尺物の上端までの高さが前記最小高さ以上であるか否かを検出する、前記乗り口に設けられた第1センサと、
前記最小高さになる最小高さ地点より前記乗り口側の内レッジに設けられ、前記乗り口から移動してくる物体の高さを検出する第2センサと、
前記第1センサによって前記最小高さ以上の前記長尺物が検出され、かつ、前記第2センサが前記最小高さ以上の前記物体を検出した場合に、前記長尺物が前記最小高さ地点に到達するまでに前記踏段を減速して停止させる制御装置と、
を有することを特徴とする乗客コンベアの長尺物監視装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1センサが前記最小高さ以上の前記長尺物を検出したときに音声アナウンスで前記乗客に警告を行う、
請求項1に記載の乗客コンベアの長尺物監視装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1センサが前記最小高さ以上の前記長尺物を検出した後、前記第2センサが前記最小高さ以上の前記物体を検出したときに音声アナウンスで再び前記乗客に警告を行う、
請求項2に記載の乗客コンベアの長尺物監視装置。
【請求項4】
前記第1センサは、前記乗り口にある正面スカートガードに設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベアの長尺物監視装置。
【請求項5】
前記第1センサは、前記乗り口にあるポールに設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベアの長尺物監視装置。
【請求項6】
前記第1センサは、画像センサである、
請求項1に記載の乗客コンベアの長尺物監視装置。
【請求項7】
前記第2センサは、超音波センサである、
請求項1に記載の乗客コンベアの長尺物監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの長尺物監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、乗客が上下方向(垂直方向)に長い釣り竿や、楽器、武具などの長尺物を持って乗客コンベアに乗る場合に、その長尺物の上端部が天井にぶつからないように監視する監視装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7035139号公報
【文献】WO2020/053004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の監視装置は、建屋の天井に監視カメラを設け、この監視カメラによって長尺物の上端を監視しているが、この監視装置であると建屋の天井に監視カメラを設ける必要があり、その設置に手間が掛かるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、建屋に監視カメラを設置しなくても、乗客が持っている長尺物が天井にぶつかるか否かを監視できる乗客コンベアの長尺物監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、乗り口から降り口の間に、踏段から天井までの高さが最小高さまで狭まる部分がある乗客コンベアの長尺物監視装置において、乗客が縦向きで長尺物を持って前記乗り口から乗り込んだ場合に、前記長尺物の上端までの高さが前記最小高さ以上であるか否かを検出する、前記乗り口に設けられた第1センサと、前記最小高さになる最小高さ地点より前記乗り口側の内レッジに設けられ、前記乗り口から移動してくる物体の高さを検出する第2センサと、前記第1センサによって前記最小高さ以上の前記長尺物が検出され、かつ、前記第2センサが前記最小高さ以上の前記物体を検出した場合に、前記長尺物が前記最小高さ地点に到達するまでに前記踏段を減速して停止させる制御装置と、を有することを特徴とする乗客コンベアの長尺物監視装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1のエスカレータの左側から見た側面図である。
図2】長尺物監視装置のブロック図である。
図3】長尺物監視装置のフローチャートである。
図4】実施形態2のエスカレータの左側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の乗客コンベアについて図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0009】
実施形態1では、乗客コンベアとしてエスカレータ10を用いて図1図3を参照して説明する。エスカレータ10は、建屋1内部の上階と下階の間に架け渡されている。上階にある天井4は水平であり、エスカレータ10の上半分の上方にある天井5は、水平な天井4から下階に向かって傾斜し、水平な下階の天井7と交差する部分に段差部分6が形成されている。この段差部分6が設けられている天井7と、エスカレータ10の踏段30の鉛直方向の距離が、最も狭まる高さを以下では、「最小高さh」という。なお、最小高さhは、予め測定をしておく。
【0010】
そして、本実施形態の長尺物監視装置は、乗客Pが上下方向(鉛直方向)に長い釣り竿や楽器や武具などの長尺物Rを持ってエスカレータ10に乗る場合に、この長尺物Rが最小高さhよりも高いか否かを検出し、長尺物Rが天井5と天井7の段差部分6にぶつからないようにするためのシステムである。なお、長尺物Rの「高さ」とは、例えば図1に示すように乗客Pが長尺物Rを背負った場合には、乗客Pが立つ床面から長尺物Rの上端部までの距離をいうものとする。
【0011】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の全体の構造について図1を参照して説明する。図1は、エスカレータ10を左側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、エスカレータ10の片側(左側)の部材の図示を省略している。なお、本実施形態ではエスカレータ10は下降運転をしているが、その運転の向きにかかわらず、エスカレータ10の前後方向を説明するときは、上階から下階を見下ろし、上階が後側、下階が前側であるものとする。
【0012】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって、支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0013】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機を介してモータ20の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。また、上階側の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する制御装置50が設けられている。
【0014】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0015】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。手摺りベルト38は、不図示のベルトスプロケットが踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0016】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード(内レッジ)44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。スカートガード44の上部は、内レッジを兼ねている。
【0017】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室14の天井には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室16の天井には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が進入したり、引き出されたりする。また、コム60付近のスカートガード44には、上階側のスピーカ54が設けられている。下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。また、コム62付近のスカートガード44には、下階側のスピーカ56が設けられている。
【0018】
(2)長尺物監視装置
次に、乗客Pが縦向きで持っている長尺物Rが、天井5と天井7の段差部分6にぶつからないようにするための長尺物監視装置について説明する。長尺物監視装置は、制御装置50と、それに接続された上第1センサ70と上第2センサ72と下第1センサ74と下第2センサ76を有している。上第1センサ70と上第2センサ72は、エスカレータ10が上階側から下階側に下降運転するときに用いられ、このときは上階側が乗り口で、下階側が降り口である。また、下第1センサ74と下第2センサ76は、エスカレータ10が下階側から上階側に上昇運転するときに用いられ、このときは下階側が乗り口で、上階側が降り口である。
【0019】
上第1センサ70は、左右一対の正面スカートガード40,40のどちらか一方に設けられた画像センサの一種であるTOFカメラセンサであり、その監視範囲は後方で、かつ、斜め上方を向いている。この上第1センサ70であるTOFカメラは、3D-TOFであり、上第1センサ70から見た画像を撮影すると共に、上第1センサ70からその画像に写った物体までの距離を検出できる。上第1センサ70は、制御装置50に接続されている。
【0020】
制御装置50は、上第1センサ70から入力した距離のパラメータを含んだ画像に関して、まず画像内に乗客Pが写っているか否かを画像解析する。次に、乗客Pが写っている場合には、その乗客Pが長尺物Rを縦向きで持っているか否かを画像解析する。次に、乗客Pが長尺物Rを縦向きで持っている場合には、長尺物Rの上端までの距離のパラメータに基づいて、乗降板32から長尺物Rの上端までの高さLを検出する。
【0021】
制御装置50は、乗降板32から長尺物Rの上端までの高さLが、最小高さhより小さい場合には、警告フラグを立てず、大きい場合には警告フラグを立てる。また、制御装置50は、上第1センサ70の検出で警告フラグが立った場合には、上階側のスピーカ54で「荷物が天井にぶつかる危険がありますので、荷物を低くして下さい」といった内容を乗客Pに対して音声アナウンスする。
【0022】
上第2センサ72は、最小高さ地点よりも上階側のスカートガード44の上部(内レッジ)に設けられている。但し、「最小高さ地点」は、段差部分6があり、踏段30と天井7との間の距離が最小高さhになるエスカレータ10の地点を意味する。上第2センサ72は、超音波センサであり、超音波を上階側に向かって発信し、上第2センサ72よりも上階側を移動している踏段30に乗っている乗客Pの長尺物Rの高さを検出する。この検出方法としては例えば、上第1センサ70が長尺物Rを検出した時刻から、上第2センサ72の検出範囲に入るまでの時間を踏段30の移動速度から予め計算しておき、上第1センサ70が縦向きの長尺物Rを検出した時刻から計算した時間が経過した時点で、上第2センサ72が超音波を斜め上方に向かって発信し、物体(長尺物R)から反射があるか否かを検出する。反射がなければ上記した警告フラグを取り下げ、反射があれば警告フラグを立て続ける。
【0023】
制御装置50は、上第1センサ70で警告フラグが立ち、上第2センサ72で警告フラグが取り下げられた場合には何も動作を行わない。一方、制御装置50は、上第2センサ72が警告フラグを立て続けた場合には、乗客Pが長尺物Rを縦向きで持ったままであると判断し、「荷物が天井にぶつかる危険がありますので、荷物を至急低くして下さい」といった音声アナウンスを上階側のスピーカ54で再び行い、また、踏段30の移動速度を駆動回路52で制御して減速し、縦向きの長尺物Rが天井5と天井7の段差部分6に至るまでに、踏段30を停止させる。制御装置50は、必要な場合には、電磁ブレーキ23を用いて踏段30を急停止させる。
【0024】
下第1センサ74は、エスカレータ10が下階側の正面スカートガード42に設けられている。下第2センサ76は、最小高さ地点よりも下階側のスカートガード44の上部(内レッジ)に設けられている。この下第1センサ74と下第2センサ76の構成と動作は、上第1センサ70と上第2センサ72と同様である。
【0025】
なお、上第2センサ72と下第2センサ76は、内レッジの表面に露出しないようにするために窓無しの超音波センサ、すなわち、密閉型の超音波センサを用い、女性などが、上第2センサ72と下第1センサ74とで下から盗撮されているのではないかとの疑いを持たないようにする。
【0026】
(3)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10の電気的構成について図2のブロック図を参照して説明する。
【0027】
エスカレータ10は、踏段30を所定速度で移動させるためのモータ20をインバータ制御する駆動回路52を有している。この駆動回路52には、モータ20の回転を中止させるための電磁ブレーキ23が接続されている。
【0028】
エスカレータ10の制御を行う制御装置50には、駆動回路52、上階側のスピーカ54、下階側のスピーカ56、上第1センサ70、上第2センサ72、下第1センサ74、下第2センサ76が接続されている。
【0029】
(4)長尺物監視装置の動作状態
次に、長尺物監視装置の動作状態について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
ステップS1において、エスカレータ10の運転を開始し、ステップS2に進む。
【0031】
ステップS2において、上第1センサ70は、最小高さhよりも高い長尺物Rを縦向きで持った乗客Pを検出すればステップS3に進み(yの場合)、検出しない場合にはステップS2の動作を継続する(nの場合)。
【0032】
ステップS3において、制御装置50は、上階側のスピーカ54を用いて、縦向きで長尺物Rを持った乗客Pに対し、「荷物が天井にぶつかる危険がありますので、荷物を低くして下さい」といった音声アナウンスで報知する。そしてステップS4に進む。
【0033】
ステップS4において、上第2センサ72が、長尺物Rを縦向きで持った乗客Pをもう一度検出した場合には、ステップS5に進み(yの場合)、検出しない場合にはステップS2に戻る(nの場合)。
【0034】
ステップS5において、乗客Pが天井にぶつかる長尺物Rを持ったまま下降してくるので、制御装置50は、踏段30の移動速度を減速すると共に、上階側のスピーカ54を用いて、乗客Pに再び「荷物が天井にぶつかる危険がありますので、荷物を至急低くして下さい」といった音声アナウンスを報知する。そしてステップS6に進む。
【0035】
ステップS6において、制御装置50は、縦向きの長尺物Rが最小高さ地点に到着するまでに、踏段30を停止させ、ステップS7に進む。
【0036】
ステップS7において、制御装置50は、乗客Pが縦向きの長尺物Rを持ち替えたりして高さを低くする時間を与えるために所定時間(例えば、30秒間)エスカレータ10を停止させ、所定時間経過後にステップS1に戻り、ステップS1において、再びエスカレータ10の運転を開始する。
【0037】
また、エスカレータ10が上昇運転している場合には、下第1センサ74と下第2センサ76を用いる以外は上記ステップS1~S7に従い、下階側から上ってくる長尺物Rを持った乗客Pを監視し、必要に応じて音声アナウンスによる警告やエスカレータ10の運転停止及び再開を行う。
【0038】
(5)効果
本実施形態によれば、乗客Pが縦向きで持った長尺物Rが最小高さhよも高い場合には、上階側の乗降口において音声アナウンスで警告する。乗客Pが長尺物Rを縦向きに持ったまま踏段30に乗って、上第2センサ72で再び長尺物Rを検出した場合には、乗客Pに対し音声アナウンスで再び警告すると共に踏段30を減速し、最小高さ地点に到達するまでに踏段30を停止させるため、長尺物Rが天井5と天井7の段差部分6にぶつかることがない。
【0039】
また、上第1センサ70、上第2センサ72、下第1センサ74、下第2センサ76が、エスカレータ10に取り付けられているため、建屋1の天井4、5、7にカメラを取り付けずに長尺物Rの監視を行うことができる。
【実施形態2】
【0040】
次に、実施形態2について図4を参照して説明する。図4は、エスカレータ10の左側から見た側面図であるが、トラス12内部における構造は、実施形態1のエスカレータ10と同じであるため、その構造の記載については省略している。なお、本実施形態では、図4に示すように、上階にある水平な天井4と水平な下階の天井7と交差する部分に段差部分6が形成されている。この段差部分6が設けられている天井7と、エスカレータ10の踏段30の鉛直方向の距離が、最も狭まる高さである最小高さhである。
【0041】
本実施形態と実施形態1の異なる点は、上第1センサ70と下第1センサ74が設けられている位置にある。実施形態1では上階側の正面スカートガード40と下階側の正面スカートガード42を設けたが、本実施形態では、上階側の乗降口にあるポール78の上端に上第1センサ70を設け、下階側の乗降口にあるポール80に下第1センサ74を設けるものである。
【0042】
本実施形態においても、エスカレータ10の下降時は、ポール78に設けられた上第1センサ70で、乗客Pが縦向きで持った長尺物Rの上端が最小高さhより高いか否かを検出する。エスカレータ10の上昇時は、ポール80に設けた下第1センサ74で、乗客Pが持った長尺物Rの上端が最小高さhよりも高いか否かを検出する。
【0043】
これにより、乗客Pが縦向きで持った長尺物Rが最小高さhよりも高い場合には、上階側の乗り口において音声アナウンスで警告すると共に、警告にもかかわらず乗客Pが長尺物Rをそのまま持っている場合には警告を繰り返して、長尺物Rが天井にぶつからないようにする。また、上第2センサ72で再び長尺物Rを検出した場合には、乗客Pに対し音声アナウンスで再び警告すると共に踏段30を減速し、最小高さ地点に到達するまでに踏段30を停止させるため、長尺物Rが天井7にぶつかることがない。
【変更例】
【0044】
次に上記実施形態の変更例について説明する。
【0045】
(1)変更例1
上記実施形態1と実施形態2では、上第1センサ70と下第1センサ74にTOFカメラを用いたが、これに代えて次のような構成であってもよい。
【0046】
上階側の左右一対の正面スカートガード40,40に、左カメラと右カメラをそれぞれ設け、これらカメラを上第1センサ70として用いる。左カメラで撮影した左画像と右カメラで撮影した右画像からなるステレオ画像と、左カメラと右カメラの視差を用いて、乗客Pなどの奥行きを求め、乗客Pが持っている長尺物Rの高さを検出する。
【0047】
また、下階側の左右一対の正面スカートガード42,42に左カメラと右カメラを設け、これらカメラを下第1センサ74として用いる。
【0048】
(2)変更例2
実施形態1では、長尺物Rを持った乗客Pが最小高さ地点に到達したときには踏段30を停止させ、その後、所定時間経過後に踏段30を再び移動させたが(ステップS7)、これに代えて、踏段30を停止したままでもよい。また、長尺物Rを持った乗客Pが最小高さ地点に到達したときに踏段30を停止させた後、上第2センサ72、又は下第2センサ76が、最小高さ地点にある長尺物Rの高さを検出し、その高さが最小高さhよりも低くなったときに再び踏段30を移動させるようにしてもよい。
【0049】
(3)変更例3
また、上記実施形態では乗客コンベアとしてエスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。なお、動く歩道の上方にある天井の高さが途中で変化している場合に適用する。
【0050】
(4)変更例4
上記各実施形態における建屋1の天井の構造は一例であり、乗り口から降り口の間で踏段30から天井までの高さが、最小高さhまで狭まる天井の構造であれば、本実施形態を適用できる。
【0051】
(5)その他
前記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・建屋、4・・・上階側の天井、5・・・下階側の天井、6・・・段差部分、10・・・エスカレータ、30・・・踏段、32・・・乗降板、34・・・乗降板、36・・・欄干、38・・・手摺りベルト、40・・・正面スカートガード、42・・・正面スカートガード、50・・・制御装置、54・・・スピーカ、56・・・スピーカ、70・・・上第1センサ、72・・・上第2センサ、74・・・下第1センサ、76・・・下第2センサ
【要約】
【課題】建屋に監視カメラを設置しなくても、乗客が持っている長尺物が天井にぶつかるか否かを監視できる乗客コンベアの長尺物監視装置を提供する。
【解決手段】乗り口から降り口の間に、踏段から天井までの高さが最小高さまで狭まる部分があるエスカレータ10の長尺物監視装置であって、高さ方向に最小高さh以上の長さを有する長尺物Rが縦向きで乗り口から侵入したことを検出する、乗り口に設けられた上第1センサ70と、踏段30から最小高さhになる最小高さ地点より乗り口側の内レッジに設けられ、乗り口側から移動してくる踏段30上にある物体の高さを検出する上第2センサ72と、上第1センサ70によって最小高さh以上の長尺物Rが検出され、かつ、上第2センサ72が最小高さh以上の物体を検出した場合に、長尺物Rが最小高さ地点に到達するまでに踏段30を減速して停止させる制御装置50とを有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4