(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ポリマー粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20240227BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20240227BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C08J3/16 CFD
A61K8/85
C09D167/00
(21)【出願番号】P 2023112742
(22)【出願日】2023-07-10
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2022112804
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195642(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016080(WO,A1)
【文献】特開2016-222897(JP,A)
【文献】特開2004-099883(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056908(WO,A1)
【文献】特開2022-161001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
A61K 8/00-8/99
A61Q
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子(A)を含有し、三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における反射光強度比が0.1~0.6であ
り、前記生分解性高分子(A)がポリエステル系樹脂である、ポリマー粒子。
【請求項2】
三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における最小反射光強度測定角度(Rmin)が-35°~0°であり、かつ、-40°~60°の範囲における最大反射光強度測定角度(Rmax)が30°~60°である、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項3】
平均粒子径が1~100μmである、請求項1又は2に記載のポリマー粒子。
【請求項4】
オレイン酸吸油量が30~150ml/100gである、請求項1又は2に記載のポリマー粒子。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項
1又は2に記載のポリマー粒子。
【請求項6】
前記ポリマー粒子が界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%である、請求項1又は2に記載のポリマー粒子。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリマー粒子を含む、化粧料。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のポリマー粒子を含む、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有し、透明性に優れたポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子は、化粧品、塗料、光学用途、樹脂、建材などへ多く使用されている。粒子に求められる機能としては、光拡散性、隠蔽性、塗工性、感触付与などがある。粒子の素材としては、有機物、無機物など様々な素材からなる粒子があり、有機物からなる粒子は無機粒子と比較してソフトな感触を有することから、化粧品や塗料などにおいて、感触付与などの点で好ましく用いられている。また、粒子の光学特性を利用して、艶消し効果や、明度を向上させることが検討されている。
有機物からなる粒子としては、例えば、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、シリコーン系のポリマー粒子などが挙げられる。また、近年、環境への関心が高まる中で、環境への負荷の少ない粒子が求められており、特に生分解性を有する粒子が注目されている。
例えば特許文献1では、環境負荷低減の粒子として、非石油原料由来のポリ乳酸からなるポリ乳酸系樹脂微粒子の製造方法およびポリ乳酸系樹脂微粒子が記載されている。また特許文献2では、生分解性を有するポリエステル系熱可塑性樹脂からなる多孔質樹脂微粒子が、特許文献3では、真球度が0.90~1.00、かつ光散乱指数が0.5~1.0の略球状樹脂微粒子が記載されている。しかし、これらの粒子は、樹脂成分を有機溶剤に溶解して粒子を得るため、粒子内部に空洞が形成されやすく、透明性に劣るものであり、化粧品や塗料などに使用した場合に、塗膜の透明性を保持することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2012/105140号公報
【文献】WO2017/056908号公報
【文献】特開2016-222897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生分解性を有し、透明性に優れたポリマー粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の物性を示すポリマー粒子とすることで、生分解性を有し、透明性に優れたポリマー粒子が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明のポリマー粒子は以下<1>~<9>の態様を含む。
<1> 生分解性高分子(A)を含有し、三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における反射光強度比が0.1~0.6である、ポリマー粒子。
<2> 三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における最小反射光強度測定角度(Rmin)が-35°~0°であり、かつ、-40°~60°の範囲における最大反射光強度測定角度(Rmax)が30°~60°である、<1>に記載のポリマー粒子。
<3> 平均粒子径が1~100μmである、<1>又は<2>に記載のポリマー粒子。
<4> オレイン酸吸油量が30~150ml/100gである、<1>~<3>のいずれかに記載のポリマー粒子。
<5> 前記生分解性高分子(A)が、セルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれかに記載のポリマー粒子。
<6> 前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、<5>に記載のポリマー粒子。
<7> 前記ポリマー粒子が界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種をさらに含有し、前記ポリマー粒子に占める前記界面活性剤及び前記水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%である、<1>~<6>のいずれかに記載のポリマー粒子。
<8> <1>~<7>のいずれかに記載のポリマー粒子を含む、化粧料。
<9> <1>~<7>のいずれかに記載のポリマー粒子を含む、コーティング組成物。
【0007】
本発明の化粧料は前記ポリマー粒子を含む。
本発明のコーティング組成物は前記ポリマー粒子を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリマー粒子は、透明性に優れる。
本発明のポリマー粒子は、生分解性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施例1の粒子1を含むオイル塗膜を文字に重ねた写真
【
図4】実施例2の粒子2を含むオイル塗膜を文字に重ねた写真
【
図5】比較例1の粒子9を含むオイル塗膜を文字に重ねた写真(一部重ならない部分含む)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリマー粒子は、生分解性高分子(A)を含有し、三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における反射光強度比が0.1~0.6である。
本発明のポリマー粒子が特定の反射光強度比を有することで透明性に優れる理由は、拡散反射光強度が小さく、粒子内部での光の乱反射が小さいために、透明性に優れると考えている。該反射光強度比が0.1未満であると、特定な角度においてのみ強い光反射性を有するため、ポリマー粒子の光透過性が劣り、透明性に劣る。一方、該反射光強度比が0.6超であると拡散反射光強度が大きく、粒子の内部での光の乱反射が大きいため、ポリマー粒子の透明性が低下する。
【0011】
本発明のポリマー粒子は、生分解性高分子(A)を含有する。
生分解性高分子(A)の25℃における水への溶解度は0g/ml~0.01g/mlである。該溶解度はより好ましくは0g/ml~0.005g/ml、さらに好ましくは0g/ml~0.001g/mlである。
本発明のポリマー粒子に占める生分解性高分子(A)の含有量は、10~100重量%であると、生分解性に優れるため好ましい。該含有量の下限は、(1)30%重量、(2)50重量%、(3)60重量%、(4)70重量%、(5)80重量%、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該含有量の上限は、(1)99.999重量%、(2)99.99重量%、(3)99.9重量%、(4)99重量%、(5)98重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。また、例えば、本発明の反射光強度比の粒子が得られやすい点で、50~100重量%がより好ましく、60~100重量%がさらに好ましく、70~100重量%が特に好ましい。
【0012】
前記生分解性高分子(A)は25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlの高分子であれば特に限定されないが、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、蜜蝋等の自然由来ワックス;セルロース、セルロースアセテート、エチルセルロース、セルロースエーテル誘導体、酢酸セルロースプロピオン酸セルロース、酢酸セルロース酪酸セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン、澱粉等の多糖類系樹脂;ポリ乳酸、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレテレフタレートサクシネート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレードヴァリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。前記生分解性高分子(A)は、上記成分を1種含有していてもよく、2種以上を含有してもよい。
【0013】
前記生分解性高分子(A)は、環境への負荷低減に優れる点で、自然由来ワックス、多糖類系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種であると好ましく、セルロースアセテート、エチルセルロース、セルロースエーテル誘導体、酢酸セルロースプロピオン酸セルロース、酢酸セルロース酪酸セルロース、セルロース誘導体等のセルロース系樹脂、セルロース、及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種であるとより好ましく、ポリエステル系樹脂であると更に好ましい。これらの生分解性高分子(A)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有すると柔らかい感触を得ることができ、さらに生分解性により優れるため好ましい。ポリエステル系樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族多価アルコール及び脂肪族多価カルボン酸を構成成分として含む脂肪族ポリエステル系樹脂や、脂肪族オキシカルボン酸成分を構成成分として含む脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの脂肪族多価アルコールは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンジカルボン酸、これらの無水物等が挙げられる。これらの脂肪族多価カルボン酸は、1種又は2種類以上を併用してもよい。
前記脂肪族オキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシジメチル酪酸、ヒドロキシメチル酪酸、これらの低級アルキルエステル若しくは、エステル等の誘導体が挙げられる。これらの脂肪族オキシカルボン酸成分は、1種又は2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル系樹脂の構成成分が前記脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸及び脂肪族オキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1つを含み、さらに芳香族多価カルボン酸又はその誘導体を含むものであれば特に限定はない。
前記芳香族多価カルボン酸としては、例えば、o-フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。前記脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂の構成成分に占める芳香族多価カルボン酸由来の構成成分の割合は、生分解性の点で40ユニットmol%以下であると好ましい。これらの芳香族多価カルボン酸は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
特に好ましい脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレードヴァリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル等が挙げられる。
【0017】
前記生分解性高分子(A)がセルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の成分を含有する場合、前記生分解性高分子(A)に占めるセルロース、セルロース系樹脂及びポリエステル系樹脂の合計の重量割合は10~100重量%であると生分解性が優れるため好ましい。該重量割合はより好ましくは30~100重量%、さらに好ましくは50~100重量%、最も好ましくは70~100重量%である。
【0018】
本発明のポリマー粒子は、前記生分解性高分子(A)以外の樹脂(以下、その他の樹脂と呼ぶことがある。)を含んでもよい。
その他の樹脂としては、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。その他の樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明のポリマー粒子は、三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における反射光強度比が0.1~0.6である。該反射光強度比が0.1未満または0.6超であると透明性に劣る。該反射光強度比の下限は、好ましくは0.15、より好ましくは0.20、さらに好ましくは0.22、特に好ましくは0.25である。該反射光強度比の上限は、好ましくは0.55、より好ましくは0.5、さらに好ましくは0.48、特に好ましくは0.45である。また、例えば0.15~0.6が好ましく、0.2~0.6がより好ましい。なお、反射光強度比は、-40°~60°の範囲における反射光強度の最小値と最大値の比であり、実施例に記載の方法によるものである。
【0020】
本発明のポリマー粒子は、三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における最小反射光強度測定角度(Rmin)が-35°~0°であり、かつ、-40°~60°の範囲における最大反射光強度測定角度(Rmax)が30°~60°であると、より透明性に優れるため好ましい。最小反射光強度測定角度(Rmin)および最大反射光強度測定角度(Rmax)が特定の数値範囲であると、粒子の正反射光強度が拡散反射光強度より大きく、粒子の内部での光の乱反射がより小さく、透明性に優れると考えている。該最小反射光強度測定角度(Rmin)の下限は、(1)-33°、(2)-30°、(3)-28°、(4)-25°の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。該最小反射光強度測定角度(Rmin)の上限は(1)-2°、(2)-5°、(3)-8°、(4)-10°の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。また、例えば-35°~-2°がより好ましく、-35°~-5°がさらに好ましい。
一方、該最大反射光強度測定角度(Rmax)の下限は、(1)33°、(2)35°、(3)38°、(4)40°の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。該最大反射光強度測定角度(Rmax)の上限は(1)58°、(2)55°、(3)53°、(4)50°の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。また、例えば35°~60°がより好ましく、38°~58°がさらに好ましい。なお、最小反射光強度測定角度(Rmin)及び最大反射光強度測定角度(Rmax)は実施例に記載の方法によるものである。
【0021】
本発明のポリマー粒子は、特に限定はないが、平均粒子径が1~100μmであると、本発明の反射光強度比の粒子が得られやすい点で好ましい。該粒子径の上限は、50μmが好ましく、40μmがより好ましく、30μmがさらに好ましく、20μmが特に好ましい。一方、該粒子径の下限は、1.5μmが好ましく、2μmがより好ましく、2.5μmがさらに好ましく、3μmが特に好ましい。また、例えば2~50μmがより好ましく、2~30μmがさらに好ましい。なお、ポリマー粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法によるものである。
【0022】
本発明のポリマー粒子の粒度分布の変動係数CVは、特に限定はないが、3~60%であると、本発明の反射光強度比の粒子が得られやすく、より透明性にも優れる点で好ましい。該変動係数CVの上限は、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、特に好ましくは40%以下である。該変動係数CVの下限は、好ましくは5%、より好ましくは7%、さらに好ましくは10%である。該変動係数CVは、以下に示す計算式(1)及び(2)で算出される。
【0023】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、x
iはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0024】
本発明のポリマー粒子の真球度は、特に限定はないが、0.6~1.0であると本発明の反射光強度比の粒子が得られやすい点で好ましく、また、塗膜に使用した際に滑り性が優れるため好ましい。該真球度は、より好ましくは0.65~1.0、さらに好ましくは0.70~1.0、特に好ましくは0.75~1.0である。なお、ポリマー粒子の真球度は、画像解析により算出されるものであると好ましく、走査型電子顕微鏡等で撮影した粒子の短径/長径から計算することができる。例えば、短径と長径の比が1の場合、真球度は1となる。
【0025】
本発明のポリマー粒子は、生分解性高分子(A)以外に、界面活性剤、有機物、及び無機物から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、高級脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、長鎖スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩類等のアニオン活性剤;第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩等のカチオン活性剤;ポリオキシアルキレンオキサイド付加アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、PEG-水添ひまし油、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、高級脂肪酸PEGグリセリル類、高級脂肪酸ソルビタン類、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリンエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート類等のノニオン活性剤;アミノ酸系、ベタイン型、水添レシチン、レシチン等の両性界面活性剤;変性ジメチコン等のシリコーン系活性剤等が挙げられる。界面活性剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
有機物としては、特に限定されないが、水溶性高分子、ワックス、オイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸系化合物等が挙げられる。有機物は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
水溶性高分子としては、生分解性高分子(A)を除く成分であり、25℃における水への溶解度が0.01g/ml超であるものであれば特に限定はないが、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、マンナン、キシラン、キシログルカン、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。
前記の中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種を使用すると本発明の反射光強度比を有するポリマー粒子が得られやすく、透明性にも優れる点で、好ましい。
【0028】
ワックスとしては、例えば、高級アルコール、合成ワックス、パラフィン等が挙げられる。
オイルとしては、例えば、アーモンド油、オリーブ油、コメヌカ油、スクワラン、シリコーンオイル、ミネラルオイル、アルカン、安息香酸アルキル等が挙げられる。
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セロチン酸等が挙げられる。
脂肪酸金属塩としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カリウム、ミスチリン酸亜鉛、ミスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム等が挙げられる。
アミノ酸系化合物としては、例えば、N-ラウロイル-L-アルギニン、N-ラウロイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-オレイルイル-L-リジン、N-パルミトイル-L-リジン、N-ステアノイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-ミリストノイル-L-リジン、N-カプリロイル-L-リジン、N-デカノイル-L-リジン等が挙げられる。
【0029】
無機物としては、特に限定されないが、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、スメクタイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化珪素、シケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化チタン、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0030】
本発明のポリマー粒子は、特に限定されないが、界面活性剤および水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種をさらに含有し、ポリマー粒子に占める界面活性剤及び水溶性高分子の合計の重量割合が0.001~10重量%であると、本発明の反射光強度比を有しやすく、透明性にも優れる点で好ましい。該重量割合の下限は、(1)0.002重量%、(2)0.005重量%、(3)0.01重量%、(4)0.02重量%、(5)0.05重量%、(6)0.1重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該重量割合の上限は、(1)8重量%、(2)6重量%、(3)5重量%、(4)4重量%、(5)3重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。また、例えば0.001~6重量%がより好ましく、0.001~5重量%がさらに好ましく、0.001~4重量%が特に好ましい。
【0031】
本発明のポリマー粒子は、特に限定されないが、JIS K6950:2000に準拠した測定による10日後の生分解率が1%以上であると好ましい。該生分解率の下限は、(1)3%、(2)5%、(3)10%、(4)15%、(5)20%、(6)25%、(7)30%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。
【0032】
本発明のポリマー粒子の吸油量は、特に限定されないが、30~150ml/100gであると化粧料へ配合して使用する場合に、さらりとした感触が優れる点で、好ましい。
該吸油量の下限は、(1)35ml/100g、(2)40ml/100g、(3)45ml/100g、(4)50ml/100g、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該吸油量の上限は、(1)140ml/100g、(2)130ml/100g、(3)120ml/100g、(4)110ml/100g、(5)100ml/100g、(6)90ml/100g、(7)85ml/100g、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。なお、ポリマー粒子の吸油量は、実施例に記載の方法によるものである。また、例えば30~130ml/100gがより好ましく、30~110ml/100gがさらに好ましく、30~90ml/100gが特に好ましい。
【0033】
本発明のポリマー粒子の吸水量は、特に限定されないが、20~150ml/100gであると水性コーティング剤へ配合して使用する場合に、分散性が優れる点で、好ましい。該吸水量の下限は、(1)25ml/100g、(2)30ml/100g、(3)35ml/100g、(4)40ml/100g、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該吸水量の上限は(1)140ml/100g、(2)130ml/100g、(3)120ml/100g、(4)110ml/100g、(5)100ml/100g、(6)90ml/100g、(7)85ml/100g、の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。なお、ポリマー粒子の吸水量は、実施例に記載の方法によるものである。また、例えば30~130ml/100gがより好ましく、30~110ml/100gがさらに好ましく、30~90ml/100gが特に好ましい。
【0034】
〔ポリマー粒子の製造方法〕
本発明のポリマー粒子の製造方法は、生分解性高分子(A)と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る工程1と、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程2と、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程3とを含む、粒子の製造方法であると特定の反射光強度比を有する本発明のポリマー粒子を効率よく製造できるため好ましい。
本発明の粒子の製造方法は、有機溶剤を不使用であると、特定の反射光強度比を有する粒子を好適に作成できるため、好ましい。有機溶剤を使用せず粒子を作成することで、粒子形成時に粒子内部に空洞形成の要因となる物質を含有しないため、特定の反射光強度比を有する粒子が得られやすくなる。
【0035】
生分解性高分子(A)は、前記のものを使用することができる。生分解性高分子(A)の25℃における水への溶解度が0g/ml~0.01g/mlであることで、生分解性高分子(A)に水が含有されにくく、本発明の特定の反射光強度比を有する本発明のポリマー粒子を得られやすくなる。
【0036】
本発明の粒子は、製造時に界面活性剤を混合すると、本発明の特定の反射光強度比を有するポリマー粒子を効率よく製造でき、透明性にも優れるため好ましい。
界面活性剤は、特に限定されないが、本発明の効果を奏する範囲となるよう、粒子を構成する成分に応じて適宜選定される。
界面活性剤としては、前記のものを使用することができる。
前記界面活性剤の中でも、ノニオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤を使用すると、特定の反射光強度比を有する粒子が得られやすく、好ましい。特に、ノニオン界面活性剤を使用すると、最小反射光強度測定角度(Rmin)および最大反射光強度測定角度(Rmax)が本発明の特定の数値範囲となりやすく、好ましい。さらにHLB値が1~13のノニオン界面活性剤を使用すると好ましく、該HLB値はより好ましくは1~10、さらに好ましくは1~7、特に好ましくは1~4である。
また、エステル型やエステル塩型の界面活性剤を使用すると、特定の反射光強度比を有する粒子をより得られやすく、透明性にもより優れるため好ましい。
【0037】
水溶性高分子は、前記のものを使用することができ、目的とする粒子の粒子径サイズによって選定すると好ましい。取扱いの観点から、4%水溶液の20℃での粘度が2~200000mPa・sである水溶性高分子であると好ましい。
【0038】
(工程1)
工程1は生分解性高分子(A)と、界面活性剤と、水溶性高分子と水とを混合し、予備混合液を得る工程である。
本発明のポリマー粒子が、生分解性高分子(A)、界面活性剤及び水溶性高分子以外の他の成分を含有する場合には、他の成分について、本工程で混合すると好ましい。
【0039】
前記工程1において、生分解性高分子(A)の混合割合は、特に限定されないが、水100重量部に対し、1~150重量部の割合で混合すると均一な形状の粒子が得られやすい点で好ましい。該混合割合の下限は、より好ましくは3重量部、さらに好ましくは5重量部、最も好ましくは10重量部である。一方、該混合割合の上限は、より好ましくは120重量部、さらに好ましくは100重量部、最も好ましくは80重量部である。
【0040】
前記工程1において、界面活性剤の混合割合は、特に限定されないが、生分解性高分子(A)100重量部に対し、0.001~10重量部の割合で混合すると、特定の反射光強度比を有する粒子が得られやすく、透明性にも優れるため好ましい。該混合割合の下限は、好ましくは0.01重量部、更に好ましくは0.05重量部、最も好ましくは0.1重量部である。該混合割合の上限は、好ましくは7重量部、更に好ましくは5重量部、最も好ましくは3重量部である。
【0041】
前記工程1において、水に対する水溶性高分子の混合割合は、特に限定されないが、水100重量部に対し、0.1~100重量部の割合で混合すると粒子の分散性が優れ、また特定の反射光強度比を有する粒子が得られやすく、透明性にも優れるため好ましい。該混合割合の下限は、より好ましくは0.5重量部、さらに好ましくは1重量部、最も好ましくは2重量部である。一方、該混合割合の上限は、より好ましくは80重量部、さらに好ましくは70重量部、最も好ましくは60重量部である。
【0042】
(工程2)
工程2は前記工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程である。
工程2における加熱攪拌中の圧力は、特に限定されないが、分布の均一な粒子を得られやすい点で加圧下で行うと好ましく、0.1~10MPaであるとより好ましい。該圧力の下限は加熱時の温度における水の飽和蒸気圧以上の圧力であるとさらに好ましい。
加熱温度は、特に限定されないが、80~300℃であると粒子形状が均一になる点で好ましく、生分解性高分子(A)の融点以上の温度であると、特定の反射光強度比を有する粒子が得られやすく、好ましい。加熱温度のより好ましい温度は、生分解性高分子(A)の融点より5℃以上高い温度であり、さらに好ましくは10℃以上、最も好ましくは15℃以上高い温度である。融点以上の温度に加熱することで、生分解性高分子(A)が熱溶解し、界面活性剤の親油基が生分解性高分子(A)へ作用して樹脂構造へ影響を与えやすく、また、生分解性高分子(A)と水との界面に界面活性剤と水溶性高分子が均一に存在することで、特定の反射光強度比を有する粒子が得られやすくなる。
また、工程2において、生分解性高分子(A)の融点以上の温度に加熱し、かつ、0.1MPa以上の加圧下で攪拌を行うと、最小反射光強度測定角度(Rmin)および最大反射光強度測定角度(Rmax)が本発明の特定の数値範囲となりやすく好ましい。
【0043】
攪拌方法は、特に限定されないが、混合物が混合する程度に攪拌されていればよい。
加熱時間は、特に限定されないが、1~30時間であると好ましい。加熱時間が1時間未満であると、分散が不均一になることがあり、また熱融解が不十分な場合があり特定の反射光強度比を有する粒子の製造効率が低下することがある。加熱時間が30時間超であると、生産効率が悪くなることがある。加熱時間の下限は、より好ましくは2時間、さらに好ましくは3時間、最も好ましくは5時間である。加熱時間の上限は、より好ましくは25時間、さらに好ましくは20時間、最も好ましくは15時間である。
【0044】
(工程3)
工程3は前記工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程である。前記工程2の加熱分散液を冷却することで、ポリマー粒子の分散液を得ることができる。
冷却方法は、特に限定されないが、前記工程2の加熱分散液を5~50℃に冷却すると好ましい。冷却速度は特に限定されず、冷却設備により急冷してもよく、空気冷却により自然冷却してもよい。攪拌条件は、特に限定されないが、工程2の攪拌速度で攪拌していてもよく、攪拌を停止してもよい。
冷却後の分散液は、本発明のポリマー粒子を含む水分散液である。
【0045】
本発明のポリマー粒子の使用形態は、分散液でもよく、湿粉でもよく、乾燥粉体でもよい。
湿粉は、例えば、遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等を用いて、工程3の分散液を脱水処理し、得ることができる。工程3の分散液は、液粘度を下げる措置を実施した後、前記脱水処理を行うと簡便である。液粘度を下げる方法としては、特に限定されないが、水を追加して希釈する方法、水溶性成分を塩析する方法、水溶性成分を酸化剤や酵素等により分解する方法等が挙げられる。
乾燥粉体は、上記湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末とすることができる。また、工程3で得られた分散液を噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末を得ることもできる。
【0046】
本発明のポリマー粒子は、化粧料、塗料、光学用途、樹脂、建材などへ使用することが可能である。なかでも、本発明のポリマー粒子は、透明性に優れることから、化粧料やコーティング組成物へ好適に用いることができる。例えば、化粧料に配合した場合には、明度を保持したまま、仕上がりに違和感のない化粧料を得ることができる。また、コーティング組成物に配合した場合には、透明性を保持することができる。
化粧料に用いる場合、公知の化粧料成分と組み合わせて使用することができる。化粧料成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、アルコール類、水、保湿剤、ゲル化剤、増粘剤、本発明のポリマー粒子以外の粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、機能性成分等が挙げられる。本発明のポリマー粒子を配合した化粧料の形態としては、粉末状、固形状、クリーム状、ゲル状、液状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。化粧料全体に占める本発明のポリマー粒子の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。
コーティング組成物に用いる場合、公知のコーティング成分と組み合わせて使用することができる。コーティング組成物全体に占める本発明のポリマー粒子の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明のポリマー粒子の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例、及び比較例のポリマー粒子について次に示す要領で物性を測定し、さらに評価を行った。
【0048】
(粒子径の測定)
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)、日機装株式会社製)を使用し、湿式測定法により超音波を120秒照射し、測定を実施した。平均粒子径(D50)は体積基準測定による頻度の累積が50%の値を採用した。
【0049】
(反射光強度比、最小反射光強度測定角度、及び最大反射光強度測定角度の測定)
ツヤ無黒色紙に紙製両面テープを貼り、粒子を少量振掛け、化粧筆を用いて軽くなぞり、均一に広げた。黒色紙を机面に垂直にして3回机の上に軽くたたき、付着していない粒子を取り除き、試験片とした。三次元変角光度計(GP-200、村上色彩研究所製)を使用し、入射角-45°における-90°~90°の反射光強度を測定した。-40°~60°の範囲における反射光強度の最小値と最大値から、下記式により反射光強度比を算出した。
反射光強度比=(-40°~60°の範囲における反射光強度の最小値)/(-40°~60°の範囲における反射光強度の最大値)
また、-40°~60°の範囲における反射光強度が最小値及び最大値となる測定角度を、それぞれ最小反射光強度測定角度(Rmin)、及び最大反射光強度測定角度(Rmax)とした。
【0050】
(吸水量、吸油量の測定)
JIS-K5101吸油量の測定法に基づき、吸水量測定はイオン交換水を、吸油量測定はオレイン酸を用いて測定した。
【0051】
(粒子の透明性の評価)
粒子の水分散液をスライドガラスに広げ、カバーガラスで押さえた試料を、光学顕微鏡(Nikon ECLIPSE)で観察し、任意に選んだ粒子20個の透明性を、以下の基準で評価した。
◎;光を透過し内側に影がみられない粒子の個数が20個中18個以上であり、透明性に優れる。
〇;光を透過し内側に影がみられない粒子の個数が20個中15個以上18個未満であり、透明性にやや優れる。
×;光を透過し内側に影がみられない粒子の個数が20個中15個未満であり、透明性に劣る。
【0052】
(塗膜の透明性の評価)
粒子とトリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリルを3:7の重量割合で混合し、厚さ0.1mmのPETシート上にフィルムアプリケーターで100μmの塗膜を作成した。文字を印刷した紙に塗膜を重ねて文字の見え方を観察し、塗膜の透明性を以下の基準で評価した。
◎;文字を明確に目視で確認でき、透明性に優れる。
〇;ぼやけてみえるが、文字を目視で確認でき、透明性にやや優れる。
×;文字が確認できず、透明性に劣る。
【0053】
(透明性の総合評価)
透明性について、粒子の透明性評価及び塗膜の透明性評価の結果より、◎:3点、〇:2点、×:0点とし各評価の合計点から以下の基準で評価を行った。
(例;粒子の透明性評価が◎、及び、塗膜の透明性評価が〇の場合、3点(◎)+2点(〇)=5点となり、評価が◎(5点以上)となる。)
◎;5点以上であり、透明性に優れる
〇;4点であり、透明性にやや優れる
×;3点以下であり、透明性に劣る
【0054】
〔実施例1〕
水300重量部とポリブチレンサクシネートアジペート100重量部とソルビタンモノラウレート0.5重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子1を得た。
粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は0.2%、ポリビニルアルコールの含有量は0.1%だった。得られた粒子1の評価結果を表1に示す。また粒子1の光学顕微鏡写真を
図1に、透明性評価時の粒子を含むオイル塗膜の写真を
図3に示す。
【0055】
〔実施例2〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート100重量部とソルビタンモノステアレート1重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子2を得た。粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は0.8%、ポリビニルアルコールの含有量は0.6%だった。得られた粒子2の評価結果を表1に示す。また粒子2の透明性評価時の粒子を含むオイル塗膜の写真を
図4に示す。
【0056】
〔実施例3〕
水200重量部とポリブチレンサクシネートアジペート100重量部とソルビタンモノラウレート2重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子3を得た。
粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は1.0%、ポリビニルアルコールの含有量は0.2%だった。得られた粒子3の評価結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例4〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート100重量部とソルビタンモノラウレート2重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子4を得た。粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は1.2%、ポリビニルアルコールの含有量は0.6%だった。得られた粒子4の評価結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例5〕
水300重量部とポリブチレンサクシネートアジペート50重量部とポリブチレンサクシネート50重量部とソルビタンモノステアレート0.1重量部とポリビニルアルコール30重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで10時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子5を得た。粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は0.04%、ポリビニルアルコールの含有量は0.4%だった。得られた粒子5の評価結果を表1に示す。
【0059】
〔実施例6〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート99重量部とソルビタンモノラウレート2重量部とアルカンオイル1重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液を多量の水で希釈し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子6を得た。粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は1.1%、ポリビニルアルコールの含有量は1.8%だった。得られた粒子6の評価結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例7〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート100重量部とソルビタンモノラウレート0.05重量部とポリビニルアルコール30重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、多量の水で洗浄後、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子7を得た。粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は0.001%、ポリビニルアルコールの含有量は0%だった。得られた粒子7の評価結果を表1に示す。
【0061】
〔実施例8〕
水300重量部とポリヒドロキシアルカノエート100重量部とソルビタンモノステアレート0.01重量部とN-ラウロイル-L-リジン1重量部とメチルセルロース10重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、粒子の水分散液を得た。
水分散液を多量の水で希釈し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子8を得た。粒子中に含まれる界面活性剤の含有量は0%、メチルセルロースの含有量は0%だった。得られた粒子8の評価結果を表1に示す。
【0062】
〔比較例1〕
水240重量部とポリブチレンサクシネート40重量部と3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール120重量部と疎水性フュームドシリカ3重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を120℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで1.5時間攪拌した後、25℃まで冷却し、粒子の分散液を得た。ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子9を得た。得られた粒子9の評価結果を表1に示す。また粒子9の光学顕微鏡写真を
図2に、透明性評価時の粒子を含むオイル塗膜の写真を
図5に示す。
【0063】
〔比較例2〕
市販の生分解性を有するポリマー粒子(TEGO FEEL EVONIC製)の評価結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
実施例1~8の粒子は、生分解性高分子(A)を含有し、三次元変角光度計を用いて入射角-45°で光照射した際の-40°~60°の範囲における反射光強度比が0.1~0.6であるため、透明性に優れる。さらに、実施例1~8の粒子は生分解性高分子を有しているため、生分解性を有する。
一方、比較例1、2の粒子は、反射光強度比が0.6超であるため、透明性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のポリマー粒子は、生分解性を有するため、環境に優しい。本発明のポリマー粒子は、透明性に優れることから、化粧料やコーティング組成物へ好適に用いることができる。例えば、化粧料に配合した場合には、明度を保持したまま、仕上がりに違和感のない化粧料を得ることができる。また、コーティング組成物に配合した場合には、透明性を保持することができる。
本発明のポリマー粒子は、透明性に優れることから、化粧料、塗料、コーティング組成物、フィルム、成形体等などの各種製品への配合剤として利用することが可能である。