(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】パーキンソン病の治療に使用するための新規なカテコールアミンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/473 20060101AFI20240227BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
C07D 221/06 20060101ALN20240227BHJP
C07H 17/02 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K31/473
A61K31/706
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/30
A61P43/00 123
C07D221/06
C07H17/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023119693
(22)【出願日】2023-07-24
(62)【分割の表示】P 2020528199の分割
【原出願日】2018-11-23
【審査請求日】2023-08-02
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クラウス,ジェルビッグ
(72)【発明者】
【氏名】クヴェルノ,リスベット
(72)【発明者】
【氏名】ユール,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン,モルテン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特許第7320507(JP,B2)
【文献】特表2010-536889(JP,A)
【文献】Sun, Yan et al.,Oral bioavailability and brain penetration of (-)-stepholidine, a tetrahydroprotoberberine agonist a,British Journal of Pharmacology,2009年,Vol.158, No.5,pp.1302-1312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩、
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)硫酸水素塩、及び
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)、
からなる群から選択される化合物又は前記化合物のいずれかの薬剤として許容される塩を含み
、
前記化合物が、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質からなる群から選択される化合物と併せて使用される、
医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が、以下の式(Id-ia)によって表される、
(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【化1】
【請求項3】
前記化合物が、以下の式(Id-ib)によって表される、
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【化2】
【請求項4】
前記化合物が、以下の式(Id-iia)によって表される、
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【化3】
【請求項5】
前記化合物が、以下の式(Id-iib)によって表される、
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)硫酸水素塩、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【化4】
【請求項6】
前記化合物が、以下の式(Id-iab)によって表される、
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【化5】
【請求項7】
パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害を治療するための医薬組成物であって、
(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩、
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)硫酸水素塩、及び
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)、
からなる群から選択される化合物又は前記化合物のいずれかの薬剤として許容される塩を含み、
前記化合物が、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質からなる群から選択される化合物と併せて使用される、医薬組成物。
【請求項8】
パーキンソン病を治療するための請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物が、以下の式(Id-ia)によって表される、
(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
7又は
8に記載の医薬組成物。
【化6】
【請求項10】
前記化合物が、以下の式(Id-ib)によって表される、
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
7又は
8に記載の医薬組成物。
【化7】
【請求項11】
前記化合物が、以下の式(Id-iab)によって表される、
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
7又は
8に記載の医薬組成物。
【化8】
【請求項12】
前記化合物が、以下の式(Id-iia)によって表される、
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
7又は
8に記載の医薬組成物。
【化9】
【請求項13】
前記化合物が、以下の式(Id-iib)によって表される、
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)硫酸水素塩、又はその薬剤として許容される塩である、請求項
7又は
8に記載の医薬組成物。
【化10】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミンアゴニスト(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,
3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオ
ールのプロドラッグである化合物と、パーキンソン病並びに/又は限定されないが、下肢
静止不能症候群、ハンチントン病及びアルツハイマー病など、及びまた限定されないが、
精神分裂病、注意欠陥多動障害及び薬物嗜癖などの神経精神疾患及び障害など、ドーパミ
ンアゴニストでの治療が治療上有益な他の症状の治療でのその使用とを提供する。本発明
は、本発明の化合物を含む医薬組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、年齢と共に一層蔓延する一般的な神経変性疾患であり、世
界的に推定で七百万人~一千万人の人々に影響を及ぼす。パーキンソン病は、運動性及び
非運動性の両方の症状を特徴とする多面的な疾患である。運動性症状としては、安静時振
せん(震え)、動作緩慢/無動症(動作の緩慢さ及び欠如)、筋固縮、姿勢の安定性及び
歩行機能不全が挙げられ、非運動性症状としては、神経精神障害(例えば、鬱病、精神病
性症状、不安、感情鈍麻、軽度認知障害及び認知症)並びに自律神経障害及び睡眠障害(
Poewe et al.,Nature Review,(2017)vol3 ar
ticle 17013:1-21)が挙げられる。
【0003】
パーキンソン病の病態生理の重要な顕著な特徴は、線条体及び他の脳領域へのドーパミ
ン作動性神経支配を提供する黒質緻密部における色素性ドーパミン作動性神経細胞の減少
である。かかる進行性神経変性は、ドーパミン線条体レベルの低下を引き起こし、その結
果、最終的に大脳基底核回路網の一連の変化が生じ、最後にパーキンソン病の4つの主要
運動特徴が現れる。線条体におけるドーパミンの主要な標的は、組織分布的突起が突出し
た、D1又はD2受容体を選択的に発現する中型有棘GABA作動性神経細胞(MSN)
からなる。線条体淡蒼球系「間接的経路」とも呼ばれる、外側淡蒼球に投射するGABA
作動性MSNは、D2受容体(MSN-2)を発現する。線条体黒質系「直接経路」とも
呼ばれる、黒質網様部及び内側淡蒼球に投射するGABA作動性-MSNは、D1受容体
(MSN-1)を発現する。ニューロン減少のためのドーパミンの欠乏により、2つの経
路の活性が不均衡となり、その結果、視床及び皮質出力活性が著しく減少し、最終的に運
動機能不全が生じる(Gerfen et al,Science(1990)250:
1429-32;Delong,(1990)Trends in Neuroscie
nce 13:281-5;Alexander et Crutcher,(1990
)Trends in Neuroscience 13:266-71及び概説に関し
てはPoewe et al.,Nature Review(2017)vol.3
article 17013:1-21)。
【0004】
パーキンソン病に罹患しており、且つ運動性症状のコントロールを目標とする患者に利
用可能な最も有効な治療戦略は、主に間接的及び直接的ドーパミンアゴニストである。古
典的且つ金標準の療法としては、脳において脱カルボキシル化されてドーパミンを形成す
るL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)の慢性的な経口摂取が挙
げられる。他のアプローチは、D1及びD2受容体サブタイプの両方に作用するアポモル
ヒネ又はプラミペキソール、ロピニロール及びD2受容体サブタイプに対して優勢に向け
られる他のアゴニストなどのドーパミン受容体アゴニストの投与を含む。D1及びD2受
容体サブタイプの両方の活性化のため並びに間接的-直接的経路の全体論的な再平衡のた
め(すなわちD2アゴニストのみが間接的経路の機能不全を逆戻りさせる)、最適なMR
(動かすと症状が軽減すること)は、L-DOPA及びアポモルヒネの両方の使用で得ら
れる。
【0005】
以下に示す構造を有するL-DOPA及びアポモルヒネは、現在、臨床的使用において
最も有効なPD薬物である。
【化1】
【0006】
L-DOPAは、ドーパミンのプロドラッグであり、運動性パーキンソン病の治療にお
ける最も有効な薬物であり続けている。しかしながら、治療の数年(すなわちハネムーン
期間)後、疾患の固有の進行(すなわちドーパミン作動性神経細胞の持続した減少)及び
L-DOPAの乏しい薬物動態学的(PK)プロファイルのために合併症が起こる。その
合併症としては、1)薬物の最適な「時間通りの効果」中に起こる異常な不随意運動であ
るジスキネジア、及び2)その期間中にL-DOPAのポジティブな効果が徐々に減少し
、症状が再び現れるか又は悪化する変動外の期間(Sprenger and Poew
e,CNS Drugs(2013),27:259-272)が挙げられる。
【0007】
直接ドーパミン受容体アゴニストは、ドーパミン自己受容体並びに中型有棘神経細胞M
SN-1及びMSN-2上に位置するシナプス後ドーパミン受容体を活性化することがで
きる。アポモルヒネは、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)部位を有するドー
パミンアゴニストのクラスに属する。フェネチルアミンモチーフと組み合わせた場合、カ
テコールアミンは、アポモルヒネの場合と同様に経口バイオアベイラビリティが低いか又
は全くない場合が多い。アポモルヒネは、臨床的に、非経口送達(一般に、断続的な皮下
投与又はポンプによる日中の連続的な非経口的注入)ではあるが、PD治療に使用される
。アポモルヒネに関して、動物研究から、経皮送達又は植込錠によって可能性のある投与
形態が提供され得ることが示されている。しかしながら、植込錠からのアポモルヒネの送
達がサルで研究された場合(Bibbiani et al.,Chase Exper
imental Neurology(2005),192:73-78)、大部分の事
例において、植込手術後の局所的刺激及び他の合併症を防ぐために動物を免疫抑制薬デキ
サメタゾンで治療しなければならなかったことが判明した。吸入及び舌下製剤などのPD
におけるアポモルヒネ療法の代替の送達戦略が広範に探求されている(例えば、Gros
set et al.,Acta Neurol Scand.(2013),128:
166-171及びHauser et al.,Movement Disorder
s(2016),Vol.32(9):1367-1372を参照されたい)。しかしな
がら、これらの試みは、PDの治療に対して依然として臨床的になされていない。
【0008】
カテコールアミンの非経口製剤の代替法は、経口投与ができるように遊離カテコールヒ
ドロキシル基をマスクするプロドラッグの使用を含む。しかしながら、臨床的使用のため
のプロドラッグの開発に伴う既知の問題は、ヒトにおける親化合物への転化を予測するこ
とに伴う困難さである。
【0009】
十二指腸送達のための全体的に被覆されたN-プロピル-アポモルヒネ(NPA)(国
際公開第02/100377号パンフレット)及びD1-様アゴニストAdrogoli
de、A-86929のジアセチルプロドラッグ(Giardina and Will
iams;CNS Drug Reviews(2001),Vol.7(3):305
-316)など、カテコールアミンの種々のエステルプロドラッグが文献で報告されてい
る。Adrogolideは、経口投与後に男性において広範な肝初回通過代謝を受け、
その結果、低い経口バイオアベイラビリティ(約4%)を有する。PD患者において、静
脈内(IV)Adrogolideは、L-DOPAと同等の抗パーキンソン有効性を有
する(Giardina and Williams;CNS Drug Review
s(2001),Vol.7(3):305-316)。
【0010】
カテコールアミンのエステルプロドラッグに加えて、代替のプロドラッグアプローチは
、対応するメチレン-ジ-オキシ(MDO)アセタールとして、ホルムアルデヒド以外の
他のアルデヒドから誘導されるアセタール又は種々のケトンから誘導されるケタールとし
て2つのカテコールヒドロキシル基のマスキングを含む。このプロドラッグの原理は、例
えば、Campbell et al.,Neuropharmacology(198
2);21(10):953-961並びに米国特許第4543256号明細書、国際公
開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パ
ンフレットに記述されている。
【0011】
カテコールアミンプロドラッグの提案される他のアプローチは、例えば、国際公開第2
001/078713号パンフレット及びLiu et al.,Bioorganic
Med.Chem.(2008),16:3438-3444で提案されるエノン誘導
体の形成である。カテコールアミンプロドラッグのさらなる例については、例えば、So
zio et al.,Exp.Opin.Drug Disc.(2012);7(5
):385-406を参照されたい。
【0012】
以下に化合物(I)として示される化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-
1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,
7-ジオールは、国際公開第2009/026934号パンフレットに開示されている。
トランス異性体は、化合物がラットにおいて低い経口バイオアベイラビリティを有するこ
とを示唆する薬理学的データを含む、Liu et al.,J.Med.Chem.(
2006),49:1494-1498、次いでLiu et al.,Bioorga
nic Med.Chem.(2008),16:3438-3444に以前に開示され
た。最初に、Cannon et al.,J.Heterocyclic Chem.
(1980);17:1633-1636にラセミ化合物が開示された。
【化2】
化合物(I)は、混合D1及びD2活性を有するドーパミン受容体アゴニストである。化
合物(I)の3つのプロドラッグ誘導体が当技術分野で公知である。
【0013】
Liu et al.,J.Med.Chem.(2006),49:1494-14
98及びLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008
),16:3438-3444は、ラットにおいて活性化合物(I)に転化されることが
示された、以下に示す式(Ia)のエノン誘導体を開示している。
【化3】
【0014】
国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/0269
35号パンフレットは、以下の式(Ib)を有するMDO誘導体を含む、化合物(I)の
2種類のプロドラッグ誘導体を開示している。
【化4】
【0015】
ラット及びヒト肝細胞における化合物(I)への化合物(Ib)の転化は、国際公開第
2010/097092号パンフレットにおいて実証されている。さらに、化合物(Ia
)及び(Ib)並びに活性「親化合物」(I)の生体内薬理学は、パーキンソン病に関し
て様々な動物モデルにおいて試験されている(国際公開第2010/097092号パン
フレット)。化合物(I)並びに化合物(Ia)及び(Ib)の両方とも有効であると判
明しており、化合物(Ia)及び(Ib)が生体内で化合物(I)に転化されると示され
ている。3種すべての化合物が、L-dopa及びアポモルヒネに関して確認されたより
も長い作用持続時間を有することが報告された。
【0016】
国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/0269
35号パンフレットで開示されている化合物(I)の他のプロドラッグは、式(Ic)の
従来のエステルプロドラッグである。
【化5】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この分野で長年にわたって関心の対象となっているにもかかわらず、PDの治療のため
の効率的で、忍容性がよく且つ経口的に作用する薬の開発に関する要求は、依然として明
らかに対処されていない。連続的なドーパミン作動性刺激を提供し得る、作用安定なPK
プロファイルを与える混合D1/D2アゴニストのプロドラッグ誘導体は、かかる未対処
の要求を満たし得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、パーキンソン病の治療のための新規な化合物に関する。さらに詳細には、本
発明は、化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,
10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールの新規なプロド
ラッグ誘導体(化合物(I))に関する。本発明の化合物は、化合物(I)の経口送達に
特に有用であると証明された。
【0019】
したがって、本発明は、式(Id)
【化6】
(式中、R1は、Hであり、且つR2は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選
択されるか、又は
R1は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選択され、且つR2は、Hであるか
、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表されるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(ii)によって表されるか、又は
R1は、置換基(i)であり、且つR2は、置換基(ii)であるか、又は
R1は、置換基(ii)であり、且つR2は、置換基(i)であり、
【化7】
ここで、
*は、結合点を示し、
置換基(i)上の結合点での炭素原子は、S立体配置である)
の化合物又はその薬剤として許容される塩に関する。
【0020】
一実施形態において、本発明は、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容され
る塩と、1種又は複数の薬剤として許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、薬物として使用される式(Id)による化合物に関す
る。
【0022】
一実施形態において、本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候
群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥
多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療で使用するための、式
(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩に関する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候
群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥
多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療の方法であって、治療
有効量の、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩を、それを必要とす
る患者に投与することを含む方法に関する。
【0024】
一実施形態において、本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候
群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療のための、又は精神
分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療のた
めの薬物を製造するための、式(Id)による化合物又はその薬剤として許容される塩の
使用に関する。
【0025】
本発明に関連して、置換基(i)上での結合点での炭素原子は、(i)のアノマー位置
にあることが理解される。
【0026】
定義
本発明の化合物
本発明により包含される化合物の参照は、本発明の化合物の遊離物質(両性イオン)、
本発明の化合物の薬剤として許容される塩、酸付加塩又は塩基付加塩など、並びに本発明
の化合物及びその薬剤として許容される塩の多形及び無形質形態を含む。さらに、本発明
の化合物及びその薬剤として許容される塩は、非溶媒和状態及び水、エタノール等の薬剤
として許容される溶媒との溶媒和状態で潜在的に存在し得る。溶媒和状態及び非溶媒和状
態の両方が本発明によって包含される。
【0027】
薬剤として許容される塩:
本発明に関連して、薬剤として許容される塩は、非毒性、すなわち生理学的に許容され
る塩を表すことが意図される。
【0028】
「薬剤として許容される塩」という用語は、親分子における窒素原子上の無機酸及び/
又は有機酸で形成される塩である、薬剤として許容される酸付加塩を含む。前記酸は、例
えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜硝酸、硫酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、乳
酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、フマル
酸、グルタミン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、ゲンチシン酸、サッカリン及びスル
ホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレン
-2-スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸から選択さ
れ得る。
【0029】
「薬剤として許容される塩」という用語は、式(Id)の化合物の酸性基上の無機塩基
及び/又は有機塩基で形成される塩である、薬剤として許容される塩基付加塩も含む。前
記塩基は、例えば、水酸化亜鉛及び水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム
などのアルカリ金属塩基、並びに水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムなどのアルカ
リ土類金属塩基、並びにコリン、ジエチルアミン、トリメチルアミン及びトリエチルアミ
ンなどの有機塩基から選択され得る。
【0030】
薬剤として許容される塩を形成するのに有用な酸及び塩基の他の例は、例えば、Sta
hl and Wermuth(Eds),Handbook of Pharmace
utical salts.Properties,selection,and us
e,Wiley-VCH2008に記載されている。
【0031】
固体形態
本発明に関連して、本発明の化合物が固体形態である場合、これは、前記化合物が水性
液体、有機液体及びその混合物などのいずれかの液体に溶解されていないことを示す。本
発明は、本発明の化合物の遊離物質(両性イオン)の固体形態及び本発明の化合物の薬剤
として許容される塩の固体形態を包含する。「固体形態」という用語は、本発明の化合物
及びその塩の非晶質形態並びに本発明の化合物及びその塩の結晶質形態の両方を包含する
。
【0032】
プロドラッグ
本発明に関連して、「プロドラッグ」又は「プロドラッグ誘導体」という用語は、哺乳
動物、好ましくはヒトなどの生体対象に投与した後、体内で薬理学的活性部位に転化され
る化合物を意味する。転化は、好ましくは、マウス、ラット、イヌ、ミニブタ、ウサギ、
サル及び/又はヒトなどの哺乳動物内で起こる。本発明に関連して、「化合物(4aR,
10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒド
ロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのプロドラッグ」、又は「式(I)の化合
物のプロドラッグ」、又は「化合物(I)のプロドラッグ」は、投与後、体内で化合物(
4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オ
クタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールに転化される化合物であると理解
される。前記投与は、当技術分野で公知の医薬組成物の従来の投与経路により、好ましく
は経口投与であり得る。
【0033】
本発明に関連して、「親化合物」及び「親分子」という用語は、対応するプロドラッグ
の転化で得られる薬理学的活性部位を意味する。例えば、化合物(Ia)、(Ib)、(
Ic)の1つ又は本発明の化合物のいずれかの「親化合物」は、式(I)の化合物である
と理解される。
【0034】
化学的製造
本発明に関連して、「化学的製造によって誘導された」とは、前記化合物が、限定され
ないが、本明細書の実験セクションに記載のプロセスの1つなど、化学プロセスによって
製造されていることを意味する。
【0035】
薬物動態学的定義及び略語
本明細書で使用される「PKプロファイル」は、「薬物動態学的プロファイル」の略語
である。本明細書に記載の薬物動態学的プロファイル及び薬物動態学的パラメーターは、
ノンコンパートメントモデリングを用いて、本発明の化合物を経口投与した後、式(I)
の化合物について得られた血漿中濃度-時間データに基づく。省略されたPKパラメータ
ーは、Cmax(最高濃度);tmax(Cmax到達時間);t1/2(半減期);A
UC0-∞(投与時点から無限時間までの曲線下面積)である。
【0036】
治療有効量:
本発明に関連して、化合物の「治療有効量」という用語は、前記化合物の投与を含む治
療的介入において所定の疾患及びその合併症の臨床症状を軽減するか、阻止するか、部分
的に阻止するか、取り除くか又は遅らせるのに十分な量を意味する。これを達成するのに
適した量は、「治療有効量」と定義される。それぞれの目的に有効な量は、例えば、疾患
又は損傷の重症度並びに対象の体重及び全身状態に応じて異なる。適切な投薬量の決定は
、熟練した医師の一般の技術の範囲内にすべてある通常の実験を用いて、値のマトリック
スを構築し、そのマトリックスにおける様々なポイントを試験することによって達成され
ることが理解されるであろう。
【0037】
本発明に関連して、本発明の化合物の「治療有効量」とは、本発明の前記化合物が好ま
しくは経口経路によって哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合、所定の疾患及びそ
の合併症の臨床症状を軽減するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又は遅
らせるのに十分な化合物(I)の量を提供することができる、本発明の前記化合物の量を
意味する。
【0038】
治療及び処置:
本発明に関連して、「治療」又は「処置」は、疾患の臨床症状を緩和するか、阻止する
か、部分的に阻止するか、取り除くか又はその進行を遅らせる目的のための患者の管理及
びケアを示すことが意図される。治療されるべき患者は、好ましくは、哺乳動物、特にヒ
トである。
【0039】
治療のための症状:
本発明の化合物は、パーキンソン病及び/又はドーパミンアゴニストでの治療が治療上
有益である他の症状など、神経変性疾患及び障害の治療に対して意図される。
【0040】
治療の適応症は、運動性及び/又は非運動性障害を特徴とし、且つその根底にある病態
生理の一部が線条体仲介回路網の機能不全である様々な中枢神経系疾患を含む。かかる機
能性障害は、限定されないが、パーキンソン病(PD)、下肢静止不能症候群、ハンチン
トン病及びアルツハイマー病などの神経変性疾患だけでなく、限定されないが、精神分裂
病、注意欠陥多動障害及び薬物嗜癖などの神経精神疾患でも見られる。
【0041】
神経変性疾患及び障害に加えて、ドーパミン作動性代謝回転の増加が有益であり得る他
の症状において、認知の様々な面を含む精神機能が改善される。それは、抑うつ症患者に
おいて正の効果も有し得、食欲抑制薬として肥満症の治療及び薬物嗜癖の治療でも使用さ
れ得る。それは、微細脳機能障害(MBD)、ナルコレプシー、注意欠陥多動障害及び精
神分裂病の潜在的にネガティブな症状、ポジティブな症状及び認知症状を改善し得る。
【0042】
下肢静止不能症候群(RLS)及び周期性四肢運動障害(PLMD)は、ドーパミンア
ゴニストで臨床的に治療される別の適応症である。さらに、性交不能、勃起機能不全、S
SRI誘発性機能障害、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)及び特定の下垂体腫瘍(プロラ
クチノーマ)も、ドーパミンアゴニストで治療することにより改善される可能性がある。
ドーパミンは、循環器系及び腎系の調節に関与し、したがって、腎不全及び高血圧症は、
本発明の化合物の代替の適応症と見なされ得る。
【0043】
本発明は、上記の疾患及び障害を治療するための、本発明の化合物の使用を包含する。
【0044】
併用
本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物は、単独の活性化合物としてスタン
ドアローン治療で使用される。本発明の他の実施形態において、式(Id)の化合物は、
パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に有用な他の薬剤と併用して使用され
得る。式(Id)の化合物と、神経変性疾患又は障害の治療に有用である他の化合物とを
治療有効量で併用投与することを含む、本発明の方法に関連して本明細書で使用される「
併用使用」、「~と併用して」及び「~の組み合わせ」等の用語は、前記他の化合物と共
にいずれかの順序で式(Id)の化合物を同時に又は逐次投与することを意味することが
意図される。
【0045】
2種類の化合物は、同時に又は2種類の化合物の投与間に時間を挟んで投与され得る。
2種類の化合物は、同一医薬製剤若しくは組成物の一部として又は別々の医薬製剤若しく
は組成物において投与され得る。2種類の化合物は、同日又は異なる日に投与され得る。
それらは、同じ経路、例えば経口投与、皮下注射、経皮投与、デポー、筋肉内注射若しく
は静脈内注射などにより、又は一方の化合物が例えば経口投与されるか若しくはデポーに
よって投与され、もう一方の化合物が例えば注入される異なる経路により投与され得る。
2種類の化合物は、1日、1週若しくは1か月に1回若しくは2回などの同じ投与計画又
は間隔により、又は例えば一方が1日に1回投与され、もう一方が1日、若しくは週、若
しくは月に2回投与される異なる投与計画によって投与され得る。
【0046】
一部の場合、治療される患者は、式(Id)の化合物での治療が開始される際、神経変
性疾患又は障害の治療で有用な1種又は複数の他の化合物での治療を既に受けていること
ができる。他の場合、神経変性疾患又は障害の治療に有用な1種又は複数の他の化合物で
の治療が開始される際、患者は、式(Id)の化合物での治療を既に受けていることがで
きる。他の場合、式(Id)の化合物での治療及び神経変性疾患又は障害の治療に有用な
1種又は複数の他の化合物での治療は、同時に開始される。
【0047】
併用治療のための化合物
本発明に関連して、式(Id)の化合物と併せて使用される化合物は、例えば、L-D
OPA、ドロキシドパ、セレジリン又はラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポ
ン又はトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアン
タゴニスト、アマンタジン又はメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ド
ネペジル又はガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、
クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプ
ラゾール又はブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬から選択され得る。
【0048】
小分子に加えて、併用される化合物は、例えば、抗体標的化α-シヌクレイン、Tau
又はA-βタンパク質など、神経変性疾患又は障害の治療における新興生物製剤アプロー
チも包含し得る。
【0049】
投与経路
単独の活性化合物として又は他の活性化合物と併せて、式(Id)の化合物を含む医薬
組成物は、経口、経直腸、経鼻、経頬粘膜、舌下、経肺、経皮及び非経口的(例えば、皮
下、筋肉内及び静脈内)経路などのいずれかの適切な経路による投与のために特に製剤化
され得る。本発明に関連して、経口経路が好ましい投与経路である。
【0050】
その経路は、処置される対象の全身状態及び年齢、処置される状態の性質並びに活性成
分に応じて異なると理解される。
【0051】
医薬製剤及び賦形剤
以下において、「賦形剤」又は「薬剤として許容される賦形剤」という用語は、限定さ
れないが、担体、充填剤、希釈剤、付着防止剤、結合剤、コーティング、着色剤、崩壊剤
、風味、流動促進剤(glidant)、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味料、溶媒、賦形
剤(vehicle)及び補助剤などの医薬品賦形剤を意味する。
【0052】
本発明は、本明細書において実験セクションで開示される化合物の1つなど、式(Id
)の化合物を含む医薬組成物も提供する。本発明は、式(Id)の化合物を含む医薬組成
物を製造するプロセスも提供する。本発明による医薬組成物は、Remington,T
he Science and Practice of Pharmacy,22th
edition(2012),Edited by Allen,Loyd V.,J
r.に開示される技術など、従来の技術に従い、薬剤として許容される賦形剤を用いて製
剤化され得る。
【0053】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、好ましくは、経口投与のための医薬組成物である
。経口投与のための医薬組成物としては、錠剤、カプセル剤、粉剤及び顆粒などの固形経
口剤形、並びに液剤、乳剤、懸濁剤及びシロップ剤などの液体経口剤形、並びに適切な液
体に溶解又は懸濁される粉末及び顆粒が挙げられる。
【0054】
固形経口剤形は、個々の単位(例えば、錠剤又はハード若しくはソフトカプセル剤)と
して提供されることができ、それぞれが所定の量の活性成分、好ましくは1種又は複数の
適切な賦形剤を含有する。適切な場合、固形剤形は、腸溶コーティングなどのコーティン
グを用いて製造され得るか、又は当技術分野でよく知られている方法に従って遅延性若し
くは徐放性などの活性成分の放出制御を提供するように製剤化され得る。適切な場合、固
形剤形は、例えば、口腔内分散性錠剤など、唾液中で崩壊する剤形であることもできる。
【0055】
固形経口剤形に適した賦形剤の例としては、限定されないが、微結晶性セルロース、ト
ウモロコシデンプン、ラクトース、マンニトール、ポビドン、クロスカルメロースナトリ
ウム、ショ糖、シクロデキストリン、タルカム、ゼラチン、ペクチン、ステアリン酸マグ
ネシウム、ステアリン酸及びセルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。同様に、
固形製剤は、モノステアリン酸グリセリン又はヒプロメロースなど、当技術分野で公知の
遅延性又は徐放性製剤のための賦形剤を含み得る。固体材料が経口投与のために使用され
る場合、製剤は、例えば、活性成分を固形賦形剤と混合し、続いてその混合物を従来の錠
剤化機器で圧縮することによって製造され得るか、又は例えば粉末状、ペレット状若しく
はミニ錠剤状の製剤をハードカプセル内に入れられ得る。固形賦形剤の量は、大幅に異な
るが、通常、投薬単位あたり約25mg~約1gの範囲である。
【0056】
液体経口剤形は、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、経口ドロップ剤又は液体充填カ
プセル剤として提供され得る。液体経口剤形は、水性又は非水性液中の溶液又は懸濁液の
ための粉末としても提供され得る。液体経口剤形に適した賦形剤の例としては、限定され
ないが、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、
ポロキサマー、ソルビトール、ポリソルベート、モノグリセリド及びジグリセリド、シク
ロデキストリン、ヤシ油、パーム油及び水が挙げられる。液体経口剤形は、例えば、水性
又は非水性液中に活性成分を溶解若しくは懸濁することにより、又は水中油型若しくは油
中水型液体エマルジョンに活性成分を組み込むことにより製造され得る。
【0057】
着色剤、風味及び保存剤等のさらなる賦形剤が固形及び液体経口製剤に使用され得る。
【0058】
非経口投与のための医薬組成物としては、注射又は注入のための滅菌水溶液及び非水溶
液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、注射又は注入のための濃縮物並びに使用前に注射
又は注入のために滅菌溶液又は分散液に溶解される滅菌粉末が挙げられる。非経口製剤に
適した賦形剤の例としては、限定されないが、水、ヤシ油、パーム油及びシクロデキスト
リンの溶液が挙げられる。水性製剤は、必要に応じて適切に緩衝化し、十分な生理食塩水
又はグルコースで等張性を付与されるべきである。
【0059】
他のタイプの医薬組成物としては、坐剤、吸入剤、クリーム剤、ゲル剤、経皮パッチ、
植込錠及び口腔内又は舌下投与のための製剤が挙げられる。
【0060】
医薬製剤に使用される賦形剤は、意図する投与経路に適合し、活性成分と適合性である
ことが必須である。
【0061】
用量:
一実施形態において、本発明の化合物は、1日あたり約0.0001~約5mg/kg
体重の量で投与される。特に、1日量は、1日あたり0.001~約1mg/kg体重の
範囲であり得る。正確な投薬量は、処置すべき対象の頻度及び投与形式、性別、年齢、体
重及び全身状態、処置すべき状態の性質及び重症度、処置されるべき付随する疾患、処置
の所望の効果並びに当業者に公知の他の因子に応じて異なる。
【0062】
成人の一般的な経口投薬量は、本発明の化合物0.1~100mg/日の範囲であり、
例えば0.05~50mg/日、0.1~10mg/日又は0.1~5mg/日の範囲で
ある。好都合には、本発明の化合物は、約0.01~50mg、例えば0.05mg、0
.1mg、0.2mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg又
は50mgまでの量で前記化合物を含有する単位剤形で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】化合物(I)と、化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)との間の体内での抱合及び脱抱合の平衡状態の図示である。
【
図2】実施例4による経口投与後に得られる、ウィスターラットにおけるPKプロファイルである。プロファイルは、それぞれの化合物に対して対象3匹からの平均血漿中濃度に基づく。X軸:時間(時);Y軸:以下の化合物の投与後に得られた化合物(I)(pg/mL)の血漿中濃度
。
【数1】
:化合物(Ia);
【数2】
:化合物(Ib);
【数3】
:化合物(Id-ia);
【数4】
:化合物(Id-ib);
【数5】
:化合物(Id-iia);
【数6】
:化合物(Id-iib)、
【数7】
:化合物(Id-iab)、及び
【数8】
:化合物(Id-iiab)。
【
図3-4】賦形剤(H
2O、経口)又は化合物(Id-ia)(10、30、100又は300μg/kg、経口)での治療後の、且つ標準治療(SoC):アポモルヒネ(APO、3mg/kg、皮下)、プラミペキソール(PPX、0.3mg/kg、皮下)と比較した歩行活動時間経過(
図3)及び総移動距離(
図4)である。60分の試験チャンバ内の習慣化期間後にt=60分において動物に投与し、その後、活動を350分間モニターした。ダン多重比較検定と共にクラスカル-ウォリス検定を用いてデータを評価し、全体のP値<0.0001が得られた。
図3:X軸:時間(分);Y軸:移動距離(cm)±SEM/5分-bins。
図4:Y軸:総移動距離(cm)±SEM。ポストホック比較(賦形剤群に対する)の有意性レベルが示される:*<0.05、**<0.01、***<0.001、****<0.0001。
【
図5-6】化合物(Id-ia)と化合物(I)との血漿中濃度間の関係及び化合物(Id-ia)(100μg/kg、経口)によって誘発される機能亢進(
図5)、並びに血漿アポモルヒネ濃度とアポモルヒネ(3mg/kg、皮下)によって誘発される機能亢進との対応する関係(
図6)である。X軸時間(分);Y軸左:移動距離(cm)±SEM/5-分-bins;Y軸右(
図5):化合物(I)の血漿中濃度(pg/mL);Y軸右(
図6):アポモルヒネの血漿中濃度(ng/mL)。□:移動距離(cm)●血漿濃度。
【
図7】ラット(7a)及びヒト(7b)肝細胞における化合物(I)への化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iab)の転化である。X軸時間(分);Y軸:化合物(I)の濃度(pg/mL)。
【数9】
:化合物(Id-ia);
【数10】
:化合物(Id-ib);
【数11】
:化合物(Id-iia);
【数12】
:化合物(Id-iib);
【数13】
:化合物(Id-iab)。
【
図8】ラット(8a)及びヒト(8b)全血における化合物(I)への化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の転化である。X軸時間(分);Y軸:化合物(I)の濃度(pg/mL)。
【数14】
:化合物(Id-ia);
【数15】
:化合物(Id-ib);
【数16】
:化合物(Id-iia);
【数17】
:化合物(Id-iib)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明者らは、表2に記載の生体外データを有するデュアルD1/D2アゴニストであ
る(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a
-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール[化合物(I)]のプロドラ
ッグである新規な化合物を同定した。
【0065】
本発明者らは、化合物(I)が、グルクロニド誘導体(Id-ia)及び(Id-ib
)並びに硫酸誘導体(Id-iia)及び(Id-iib)とラット及びヒト肝細胞にお
いて抱合することを確認した。抱合体は、
図1に示されるように、体内での抱合及び脱抱
合により、化合物(I)に転化されることが示された。
【0066】
グルクロニド及び硫酸誘導体は、腸内で不安定であることが一般に知られている。誘導
体は、非常に極性及び可溶性の代謝産物として形成されて、体からの化合物の除去を促進
し、結果的に容易に排出される。例えば、胆管カニューレ挿入されたラットにおいて、グ
ルクロニド及び硫酸抱合体は、多くの場合に胆汁中で見つけられ、その脱抱合体(すなわ
ち親化合物)は、大便中で見つけられる。ときに続いて再吸収される親化合物への腸内の
グルクロニド及び硫酸抱合体のバックコンバージョン(back-conversion
)は、腸肝再循環プロセスの一部として知られている。上述されるように、アポモルヒネ
などのフェネチルカテコールアミンの経口投与は、一般に、バイオアベイラビリティが低
いために成功しないことが証明されている。同様に、化合物(I)も低い経口バイオアベ
イラビリティを有する(Liu et al.,Bioorganic Med.Che
m.(2008),16:3438-3444)。これを念頭において、且つ胃腸管にお
けるグルクロニド及び硫酸抱合体の不安定性を考慮すると、化合物(I)のグルクロニド
及び硫酸抱合体の経口投与を用いて、化合物の十分な血漿曝露を達成できることは、期待
されないであろう。
【0067】
経口送達のためのプロドラッグとしてグルクロニド誘導体を適用する原則は、レチノイ
ン酸に関して(Goswami et al.,J.Nutritional Bioc
hem.(2003)14:703-709)並びにモルヒネに関して(Stain-T
exier et al.,Drug Metab.及びDisposition(19
98)26(5):383-387)考察されている。いずれの研究からも、誘導体を経
口投与した後の親化合物の曝露レベルが非常に低いことが示された。他の研究では、腸管
システム自体からのプロドラッグの乏しい吸収に基づく、潰瘍性大腸炎の治療のための、
大腸へのブデソニドの局所送達のためのプロドラッグとしてのブデソニド-β-D-グル
クロニドの使用が示唆されている(Nolen et al.,J.Pharm Sci
.(1995),84(6):677-681)。
【0068】
それにもかかわらず、意外にも、本発明者らは、ラット及びミニブタにおける化合物(
I)の代謝産物としてすべて同定されたグルクロニド抱合体(Id-ia)、(Id-i
b)並びに硫酸抱合体(Id-iia)及び(Id-iib)の経口投与により、血漿中
の化合物(I)の全身的な曝露を提供し、化合物(I)の経口活性プロドラッグとしての
化合物(I)のグルクロニド及び硫酸誘導体の有用性が示唆されることを見出した。本発
明者らは、それぞれ両方のカテコールヒドロキシル基においてグルクロニド又は硫酸のい
ずれかで置換されている化合物(Id-iab)及び(Id-iiab)を探求し、これ
ら2種類の化合物もプロドラッグ活性を示すことをさらに見出した。
【0069】
実施例4に従い、ウィスターラットへの化合物(Ia)及び(Ib)の経口投与並びに
化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id
-iab)及び(Id-iiab)の経口投与から得られる化合物(I)の血漿プロファ
イルを
図2に示す。すべての化合物について、化合物(I)287μg/kgに対応する
化合物(Ib)300μg/kgの用量に等しくなるように分子量によって用量が補正さ
れた。本発明者らは、ウィスターラットへの化合物(Ia)及び(Ib)の経口投与によ
り、化合物(I)の初期及び高ピーク濃度が得られることを見出した。かかる高ピーク濃
度は、ヒトにおいて、例えば悪心、嘔吐及びめまいなどのドーパミン作動性副作用を伴う
可能性がある。対照的に、化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、
(Id-iib);(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与によって吸収速度が
遅くなり、血漿中の化合物(I)の持続性曝露を伴う急速なピーク濃度を防ぐ。さらに、
得られた化合物(I)のAUCは、化合物(Ib)の投与後に得られるAUCよりも一般
に低いが、ウィスターラットにおける化合物(I)の血漿曝露は、24時間を通して維持
される。しかしながら、副作用を誘発すると予想される化合物(I)のピーク濃度が低い
ことから、より高い用量の化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、
(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)を投与して、化合物(Ia
)及び(Ib)を投与することから達成可能な濃度と比較して、化合物(I)のより高い
総血漿中濃度が潜在的に達成され得る。化合物(Ic)のPK特性を調査した際、本発明
者らは、化合物(I)の血漿中濃度が非常に低く、経口投与のための化合物(I)のプロ
ドラッグとして化合物(Ic)が不適当なままであることを見出し、本発明の化合物の経
口バイオアベイラビリティは、非常に予測不可能であることが確認された。ウィスターラ
ットでのPK研究についてのPKパラメーターを表3に列挙する。
【0070】
PK実験は、実施例5に従ってミニブタに化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(
Id-iia)及び(Id-iib)を経口投与することでも実施された。この研究から
、4種すべての化合物がミニブタにおいて化合物(I)に転化され、経口投与後に化合物
(I)の血漿曝露が提供されることが実証された。この研究のPKパラメーターを表4に
列挙する。
【0071】
ヒトにおける化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-i
ib)及び(Id-iab)のバイオコンバージョンは、実施例1の実験によって支持さ
れ、ラット及びヒト肝細胞における式(I)の化合物への化合物の転化が示され、化合物
(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib)についてラット
及びヒト血液において示された(
図7及び8)。
【0072】
したがって、結論として、本発明の化合物は、化合物(I)の経口活性プロドラッグと
して有用であり、且つ既知のプロドラッグ(Ia)及び(Ib)で確認されるピークCm
axを回避し、化合物(Ic)よりも著しく高い化合物(I)のAUCが得られるPKプ
ロファイルを提供することがラットにおいて確認された。本発明の好ましい化合物は、グ
ルクロニド抱合体(Id-ia)、(Id-ib)及び(Id-iab)である。
【0073】
比較例として、アポモルヒネの、グルクロニド1つとスルフェート2つとの抱合体((
2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル
-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル
]オキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸;[(
6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジ
ベンゾ[de,g]キノリン-10-イル]硫酸水素塩及び[(6aR)-10-ヒドロ
キシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノ
リン-11-イル]硫酸水素塩)がウィスターラットに投与された。4977μg/kg
の高い用量でウィスターラットにアポモルヒネの抱合体を経口投与した結果、グルクロニ
ド抱合体の投与からの1時点(4時間)での916pg/mlを除いて、血漿中のアポモ
ルヒネの測定可能な曝露(定量化の下限500pg/ml)が生じず、アポモルヒネの抱
合体の経口バイオアベイラビリティが低い/ないことが示された。比較すると、アポモル
ヒネ3000μg/kg自体を経口投与した結果、アポモルヒネ3000μg/kgを皮
下投与した後に見られるよりも100倍を超えて低い血漿AUCが生じ、アポモルヒネの
既知の不十分な経口バイオアベイラビリティが確認された。本発明の化合物の経口アベイ
ラビリティがかなり予想外であることがこれによってさらに裏付けられる(実験について
は、実施例4を参照されたい)。
【0074】
化合物(Id-ia)は、実施例6に従ってラットの歩行活動アッセイにおいてさらに
調べられた。化合物(Id-ia)の経口投与後に得られるドーパミン作動性作用がアッ
セイから実証された(
図3、4及び5を参照されたい)。(Id-ia)を含む本発明の
化合物は、生体外ドーパミン作動性活性を保持しない(実施例2及び表1を参照されたい
)という事実から、ラット歩行活動アッセイにおける化合物(Id-ia)の作用は、化
合物(I)への化合物(Id-ia)の転化によって得られることがさらに示されている
。
【0075】
最終的に、先行技術の化合物(Ib)に伴う重要な問題は、この化合物が5-HT2B
受容体のアゴニストであることである。長期間の曝露後の心臓弁膜症(VHD)の病因と
5-HT2B受容体アゴニストが関連していることから、かかる化合物は、慢性疾患の治
療での使用に適していない(Rothman et al.,Circulation(
2000),102:2836-2841及びCavero and Guillon,
J.Pharmacol.Toxicol.Methods(2014),69:150
-161)。したがって、本発明の化合物のさらなる利点は、5-HT2Bアゴニストで
ないことである(実施例3及び表1を参照されたい)。
【0076】
本発明の化合物は、パーキンソン病及び/又はドーパミンアゴニストでの治療が治療上
有益である他の症状など、神経変性疾患及び障害の治療において有用である。経口投与に
適している化合物は、パーキンソン病における新規な治療パラダイムを提供する可能性を
有する。
【0077】
本発明の一実施形態において、化合物は、神経変性疾患又は障害のスタンドアローン治
療として使用される。本発明の他の実施形態において、化合物は、L-DOPA、セレジ
リン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなど
のCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタ
ジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくは
ガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、
リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若し
くはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物など、PD
治療のための他の薬剤と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-
βタンパク質と併せて使用される。
【0078】
本発明の実施形態
以下において、本発明の実施形態が開示される。第1実施形態は、E1で示され、第2
実施形態は、E2で示される。
【0079】
E1.式(Id)
【化8】
(式中、R1は、Hであり、且つR2は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選
択されるか、又は
R1は、以下の置換基(i)及び(ii)の1つから選択され、且つR2は、Hであるか
、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表されるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(ii)によって表されるか、又は
R1は、置換基(i)であり、且つR2は、置換基(ii)であるか、又は
R1は、置換基(ii)であり、且つR2は、置換基(i)であり、
【化9】
*は、結合点を示し、
置換基(i)上の結合点での炭素原子は、S立体配置である)
による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0080】
E2.R1は、Hであり、且つR2は、置換基(i)及び(ii)の1つから選択され
るか、又は
R1は、置換基(i)及び(ii)の1つから選択され、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表されるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(ii)によって表される、実施形態1による化
合物又はその薬剤として許容される塩。
【0081】
E3.R1は、置換基(i)であり、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、両方とも以下の置換基(i)によって表される、実施形態1による化合
物又はその薬剤として許容される塩。
【0082】
E4.以下の式(Id-ia)
【化10】
によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0083】
E5.以下の式(Id-ib)
【化11】
によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0084】
E6.以下の式(Id-iab)
【化12】
によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0085】
E7.R1は、Hであり、且つR2は、置換基(ii)であるか、又は
R1は、置換基(ii)であり、且つR2は、Hであるか、又は
R1及びR2は、いずれも置換基(ii)によって表される、実施形態1による化合物又
はその薬剤として許容される塩。
【0086】
E.8.以下の式(Id-iia)
【化13】
によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0087】
E9.以下の式(Id-iib)
【化14】
によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0088】
E10.以下の式(Id-iiab)
【化15】
によって表される、実施形態1による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0089】
E11.(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒド
ロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,
4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)
テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6
-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,
5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒド
ロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素
塩、
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)硫酸水
素塩、
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S
,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4
a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オ
キシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン
酸)、
(Id-iiab):(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩
)
からなる群から選択される、実施例1による化合物又はこれらの化合物のいずれかの薬剤
として許容される塩。
【0090】
E12.前記化合物は、哺乳動物の体外で誘導される、実施形態1~11のいずれかに
よる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0091】
E13.前記化合物は、化学的製造によって誘導される、実施形態1~12のいずれか
による化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0092】
E14.前記化合物は、単離形態上にある、実施形態1~13のいずれかによる化合物
又はその薬剤として許容される塩。
【0093】
E15.前記化合物は、その中で天然に平衡状態にある化合物を実質的に含有しない単
離形態上にある、実施形態1~14のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容され
る塩。
【0094】
E16.前記化合物は、式(I)の化合物を実質的に含有しない単離形態上にある、実
施形態1~15のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0095】
E17.化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(化合物(I
))のプロドラッグである化合物であって、前記プロドラッグが、(4aR,10aR)
-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ
[g]キノリン-6,7-ジオール287μg/kgに対応する用量でウィスターラット
に経口投与された場合、前記プロドラッグは、(4aR,10aR)-1-n-プロピル
-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6
,7-ジオールのCmaxが500~2500pg/mL、例えば750~2500pg
/mL、例えば1000~2500pg/mL、例えば1000~2000pg/mLで
あるPKプロファイルを提供する、化合物又は前記化合物の薬剤として許容される塩。
【0096】
E18.化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(化合物(I
))のプロドラッグであり、前記プロドラッグが、(4aR,10aR)-1-n-プロ
ピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン
-6,7-ジオール287mg/kgに対応する用量でウィスターラットに経口投与され
た場合、前記プロドラッグは、(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,
4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール
のAUC0-∞が7000pg*h/mLを超える、例えば8000を超える、例えば9
000を超える、例えば10000を超える、例えば11000を超える、例えば120
00を超える、例えば13000を超える、例えば14000を超える、例えば1500
0を超える、例えば16000pg*h/mLを超える、PKプロファイルを提供する、
実施形態17に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0097】
E19.前記PKプロファイルは、本明細書の実施例4に記載のPK実験によって得ら
れたものである、実施形態17~18のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容さ
れる塩。
【0098】
E20.固体形態である、実施形態1~19のいずれかによる化合物又はその薬剤とし
て許容される塩。
【0099】
E21.実施形態1~20のいずれかによる化合物の薬剤として許容される塩。
【0100】
E22.実施形態1~20のいずれかによる化合物の酸付加塩である、実施形態21に
よる薬剤として許容される塩。
【0101】
E23.実施形態1~20のいずれかによる化合物の塩基付加塩である、実施形態21
による薬剤として許容される塩。
【0102】
E24.治療において使用するための、実施形態1~23のいずれかによる化合物又は
その薬剤として許容される塩。
【0103】
E25.薬物として使用するための、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はそ
の薬剤として許容される塩。
【0104】
E26.前記薬物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口薬物である、実
施形態25による薬物として使用するための化合物又は薬剤として許容される塩。
【0105】
E27.治療有効量の、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として
許容される塩と、1種又は複数の薬剤として許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【0106】
E28.経口投与のためのものである、実施形態27による医薬組成物。
【0107】
E29.経口医薬組成物である、実施形態27~28のいずれかによる医薬組成物。
【0108】
E30.固形経口剤形である、実施形態27~29のいずれかによる医薬組成物。
【0109】
E31.経口投与のための錠剤又はカプセル剤である、実施形態27~30のいずれか
による医薬組成物。
【0110】
E32.パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬
剤をさらに含む、実施形態27~31のいずれかによる医薬組成物。
【0111】
E.33.L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エ
ンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノ
シン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リ
バスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害
剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロ
ペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬又は抗体
標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質からなる群から選択される化
合物をさらに含む、実施形態27~31のいずれかによる医薬組成物。
【0112】
E34.パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマ
ー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは
薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療に使用するための、実施形態1~23の
いずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0113】
E35.実施形態34による治療で使用するためのものであり、前記神経変性疾患又は
障害は、パーキンソン病である、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤
として許容される塩。
【0114】
E36.実施形態34~35のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記
化合物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬
剤と併せて使用される、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許
容される塩。
【0115】
E37.実施形態34~35のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記
化合物は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エン
タカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシ
ン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバ
スチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤
及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペ
リドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群
から選択される化合物と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-
βタンパク質と併せて使用される、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬
剤として許容される塩。
【0116】
E38.実施形態34~37のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記
治療は、前記化合物の経口投与によって行われる、実施形態1~23のいずれかによる化
合物又はその薬剤として許容される塩。
【0117】
E39.実施形態34~38のいずれかによる治療で使用するためのものであり、前記
化合物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの医薬組成物中に含まれる、実施形
態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩。
【0118】
E40.パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマ
ー病などの神経変性疾患若しくは障害又は精神分裂病、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜
癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療の方法であって、治療有効量の、実施例1~2
3のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩を、それを必要とする患者に
投与することを含む方法。
【0119】
E41.前記神経変性疾患又は障害は、パーキンソン病である、実施形態40による方
法。
【0120】
E42.実施形態1~23のいずれかによる前記化合物又はその薬剤として許容される
塩は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用である他の薬剤と
併せて使用される、実施形態40~41のいずれかによる方法。
【0121】
E43.実施形態1~23のいずれかによる前記化合物又はその薬剤として許容される塩は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される、実施形態40~41のいずれかによる方法。
【0122】
E44.前記投与は、経口経路によって行われる、実施形態40~43のいずれかによ
る方法。
【0123】
E45.実施形態1~23のいずれかによる前記化合物又はその薬剤として許容される
塩は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口医薬組成物中に含まれる、実施形
態40~44のいずれかによる方法。
【0124】
E46.パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマ
ー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療のための、又は精神分裂病、注意欠陥多動障
害若しくは薬物嗜癖などの神経精神疾患若しくは障害の治療のための薬物の製造における
、実施形態1~23のいずれかによる化合物又はその薬剤として許容される塩の使用。
【0125】
E47.前記神経変性疾患又は障害は、パーキンソン病である、実施形態46による方
法。
【0126】
E48.前記薬物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療において有用
である他の薬剤と併せて使用される、実施形態46~47のいずれかによる使用。
【0127】
E49.前記薬物は、L-DOPA、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B
阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンな
どのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミ
ン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステ
ラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザ
ピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病
薬からなる群から選択される化合物と併せて、又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau
若しくはA-βタンパク質と併せて使用される、実施形態46~47のいずれかによる使
用。
【0128】
E50.前記薬物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口薬物である、実
施形態46~49のいずれかによる使用。
【0129】
本発明に関連して、置換基(i)上の結合点の炭素原子(実施形態1に示す)は、(i
)のアノマー位置にあることが理解される。
【0130】
本明細書に記載の刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、その全体とし
て、且つ各参考文献が個々に及び具体的に参照により組み込まれるかのように示され且つ
その全体が記載されているのと同程度に(法律によって認められる最大限度まで)参照に
より本明細書に組み込まれる。
【0131】
見出し及び小見出しは、本明細書において便宜的に使用され、本発明を限定するものと
決して解釈されるべきではない。
【0132】
1つ又は複数の要素に言及する場合に「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有
する」などの用語を用いた、本発明のいずれかの態様又は本発明の態様の本明細書におけ
る説明は、別段の指定がない限り又は文脈に明確に矛盾がない限り、その1つ又は複数の
特定の要素「からなる」、「から本質的になる」又は「実質的に含む」、本発明の同様の
態様又は本発明の態様に対する支持を提供することが意図される(例えば、特定の要素を
含むと本明細書に記載される組成物は、別段の指定がない限り又は文脈に明確に矛盾がな
い限り、その要素からなる組成物も述べていると理解されるべきである)。
【0133】
本明細書におけるいずれかの及びすべての実施例又は例示的な用語(「例えば(for
instance)」、「例えば(for example)」、「例として」及び「
それ自体」など)の使用は、単に本発明をより明確にすることが意図され、別段の指定が
ない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0134】
本明細書に記載の本発明の種々の態様、実施形態、実行及び特徴は、別々に又はいずれ
かの組み合わせで特許請求され得ると理解されるべきである。
【0135】
本発明は、適用可能な法律によって認められる通り、本明細書に添付される特許請求の
範囲に記載された主題のすべての修正形態及び均等物を包含する。
【0136】
本発明の化合物
【0137】
【0138】
実験セクション
本発明の化合物の製造
式(Id)の化合物は、有機化学分野で公知の合成方法又は当業者によく知られた修正
形態と共に、以下に記載の方法によって製造される。本明細書で使用される出発原料は、
市販されているか、又は当技術分野で公知の慣例的な方法、例えば“Compendiu
m of Organic Synthetic Methods,Vol.I-XII
”(Wiley-Interscience出版)などの標準参考図書に記載の方法によ
って製造することができる。好ましい方法としては、限定されないが、以下の方法が挙げ
られる。
【0139】
そのスキームは、本発明の化合物の合成に有用な方法を表す。それらは、本発明の範囲
を決して限定することを意図するものではない。
【0140】
LC-MS法
以下に同定される方法を用いてLC-MS分析データを得た。
【0141】
方法550:カラムマネジャー、二成分溶媒マネジャー、試料オーガナイザー、PDA
検出器(254nMで操作)、ELS検出器及び陽イオンモードで動作するAPPI源を
備えたTQ-MSを含む、Waters AquityからなるWaters Aqui
ty UPLC-MSでLC-MSを行った。
LC条件:カラムは、水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(
95:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配1.2ml/分を用いて、
60℃で動作する、Acquity UPLC BEH C18 1.7μm;2.1×
50mmであった。
勾配:
0.00分 10%B
1.00分 100%B
1.01分 10%B
1.15分 10%B
合計実施時間:1.15分
【0142】
方法551:カラムマネジャー、二成分溶媒マネジャー、試料オーガナイザー、PDA
検出器(254nMで動作)、ELS検出器及び陽イオンモードで動作するAPPI源を
備えたTQ-MSを含む、Waters AquityからなるWaters Aqui
ty UPLC-MSでLC-MSを行った。
LC条件:カラムは、水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(
95:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配1.2ml/分を用いて、
60℃で動作する、Acquity UPLC HSS T3 1.8μm;2.1×5
0mmであった。
勾配:
0.00分 2%B
1.00分 100%B
1.15分 2%B
合計実施時間:1.15分
【0143】
方法555:カラムマネジャー、二成分溶媒マネジャー、試料オーガナイザー、PDA
検出器(254nMで動作)、ELS検出器及び陽イオンモードで動作するAPPI源を
備えたTQ-MSを含む、Waters AquityからなるWaters Aqui
ty UPLC-MSでLC-MSを行った。
LC条件:カラムは、水+0.05%トリフルオロ酢酸(A)及びアセトニトリル/水(
95:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二成分勾配0.6ml/分を用いて、
60℃で動作する、Acquity UPLC BEH C18 1.7μm;2.1×
150mmであった。
勾配:
0.00分 10%B
3.00分 100%B
3.60分 10%B
合計実施時間:3.6分
【0144】
方法111:190~800nMで動作するPDA検出器及びポジティブモードで動作
するESI源を備えたMSからなるShimadzu LCMS-2020でLC-MS
を実施した。
LC条件:カラムは、水+0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル+0.1%ギ酸(B)
からなる勾配0.5ml/分を用いて、25℃で動作するPhenomenex Kin
etex EVO C18 2.6?m;2.1×100mmであった。
勾配:
0.00分 2%B
1.00分 2%B
10.00分 90%B
13.00分 90%B
13.10分 2%B
18.00分 2%B
合計実施時間:18分
【0145】
方法222:190~800nMで動作するPDA検出器及びポジティブモードで動作するESI源を備えたMSからなるShimadzu LCMS-2020でLC-MSを実施した。
LC条件:カラムは、水+0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル(B)からなる勾配0.5ml/分を用いて、25℃で動作するPhenomenex Kinetex EVO C18 2.6?m;2.1×100mmであった。
勾配:
0.00分 2%B
1.00分 2%B
10.00分 90%B
13.00分 90%B
13.10分 2%B
18.00分 2%B
合計実施時間:18分
【0146】
分取LCMSを、以下に同定される方法を用いて実施した。
質量/UV検出の組み合わせを用いたWaters AutoPurification
システム。
カラム:Sunfire 30×100mm、粒子5um。水+0.05%トリフルオロ
酢酸(A)及びアセトニトリル/水(3:5)+0.05%トリフルオロ酢酸からなる二
成分勾配90ml/分を用いて40℃で動作する。
勾配:
0.00分 98%A
5.00分 50%A
5.50分 98%A
6.00分 98%A
【0147】
ポジティブ又はネガティブモードで動作するエレクトロスプレーを備えたBruker
Compact qTOFで高分解能(HighRes)MSを実施した。直接注入を
用い、ギ酸ナトリウムで較正を行った。
【0148】
本発明の化合物の製造 - 一般的方法
例えば、国際公開第2009/026934号パンフレットに開示されるように製造す
ることができる化合物(I)を本発明の化合物の合成に中間体として使用した。簡単に言
えば、本発明の化合物(Id-ia)及び(Id-ib)は、ジクロロメタン中のDIP
EA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)の存在下においてトリイソプロピルシリル
クロリドと(I)を反応させ、モノシリル化中間体(4aR,10aR)-1-プロピル
-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10
a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-オール及び(4aR,10aR)-1-プ
ロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10
,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-オールの混合物を得て、それを続い
てt-ブチルオキシカルボニル保護性基での保護、Boc保護にかけて、中間体t-ブチ
ル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ)
-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-
イル)カーボネート[A]及びt-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-6-
((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オ
クタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)カーボネート[Bを得ることにより、(I
)から製造することができ、続いて、TEA-3HF(トリエチルアミントリヒドロフル
オリド)を使用してシリル基の除去及びアセチル無水物を用いて再保護を行い、(4aR
,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテー
トと、(4aR,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピ
ル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6
-イルアセテートの混合物が得られる。次いで、ルイス酸触媒として、三フッ化ホウ素ジ
エチルエーテラート(BF3-OEt2)の存在下において、四酢酸共役供与体((2S
,3R,4S,5S,6S)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン
-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート)を用いてグルクロニド共役を行い、目
的の共役付加物(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7
-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ
ベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ
-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートと、(2S,3R,4S,5S,
6S)-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,
4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)
-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリ
アセテートとの混合物を得た。次いで、湿潤メタノール中のKCNを用いて、粗混合物を
加水分解にかけて、(Id-ia)及び(Id-ib)が得られ、それをカラムクロマト
グラフィーによって分離することができる。簡単に言えば、本発明の化合物(Id-ii
a)及び(Id-iib)は、((I)をピリジン中のピリジン三酸化硫黄と反応させ、
モノスルフェート(Id-iia)及び(Id-iib)の混合物を提供することにより
、(I)から製造することができ、それをカラムクロマトグラフィーによって分離するこ
とができる。
【0149】
本発明の例示的な化合物
(Id-iia):(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素
塩、及び
(Id-iib):(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル硫酸水素
塩。
【化16】
(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オ
クタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(1.51g)を室温で窒素
雰囲気下においてピリジン(25ml)中に懸濁し、ピリジン三酸化硫黄錯体(2.31
g)を添加し、懸濁液を室温で攪拌した。15及び23時間後、さらなるピリジン三酸化
硫黄錯体(2×(2.1g、13.1mmol))を添加し、混合物を室温で一晩攪拌し
た。合計2日間攪拌した後、粗混合物をMeOH/ジクロロメタンで希釈し、濾過助剤で
直接蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/トリエチルアミン/
MeOH、95:5:0~70:5:25)によって精製し、比約3:1の2種類のスル
フェートが得られた。混合物をMeOH10mLに懸濁し、水50mLをゆっくりと添加
し、得られた懸濁液を室温で攪拌した。7時間後、懸濁液を濾過し、沈殿物を水2×10
mLで洗浄し、40℃において真空オーブン内で一晩乾燥させ、固形物として1.26g
の粗収量を得た。分取LC-MSを用いて、スルフェートの混合物を分離し、(Id-i
ib)と(Id-iia)とのいずれも、50mL MeOH中で還流し、室温で32時
間攪拌することにより、粉砕による精製にかけた。懸濁液を濾過し、沈殿物をMeOH
2×5mLで洗浄し、40℃において真空オーブン内で一晩乾燥させ、次いでアセトニト
リル50mLに懸濁し、室温で19時間攪拌し、沈殿物をアセトニトリル2×10mLで
洗浄し、40℃において真空オーブン内で乾燥させて、固形物として(Id-iib)(
4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10
,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル硫酸水素塩(0.52g、1.
5mmol、収率30%)及び固形物として(Id-iia)(4aR,10aR)-7
-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ
ベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩(0.15g、0.45mmol、収率9%
)を得た。
【0150】
(Id-iib)
LCMS(方法555)1.29分.
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 9.06(s,1H),8.89(
s,1H),6.89(d,J=8.2Hz,1H),6.58(d,J=8.3Hz,
1H),3.52(d,J=12.1Hz,1H),3.35-3.32(m,1H),
3.31-3.22(m,2H),3.10-3.01(m,2H),2.97(dd,
J=17.4,5.1Hz,1H),2.74(dd,J=15.6,11.1Hz,1
H),2.18(dd,J=17.4,11.6Hz,1H),1.97-1.69(m
,5H),1.68-1.56(m,1H),1.35(qd,J=13.0,3.8H
z,1H),0.96(t,J=7.3Hz,3H).
【0151】
(Id-iia)
LCMS(方法555)1.37分.
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 9.07(s,1H),8.84(
s,1H),6.82(d,J=8.3Hz,1H),6.70(d,J=8.3Hz,
1H),3.51(d,J=12.0Hz,1H),3.34-3.30(m,1H),
3.26(bs,2H),3.17-2.94(m,3H),2.75-2.67(m,
1H),2.35(dd,J=17.6,11.9Hz,1H),1.90(t,J=1
3.8Hz,2H),1.85-1.69(m,3H),1.67-1.57(m,1H
),1.40-1.31(m,1H),0.95(t,J=7.3Hz,3H).
【0152】
(Id-iiab):(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩
)(トリエチルアミン塩)
【化17】
(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オ
クタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(0.500g、1.68m
mol)及びピリジン三酸化硫黄錯体(5.34g、33.6mmol)をアセトニトリ
ル(10ml)に懸濁し、トリエチルアミン(7.02ml、50.4mmol)を室温
で添加した。懸濁液を80℃に加熱し、窒素雰囲気下において16.5時間攪拌した。混
合物を室温に冷却し、濾過助剤(10g)上で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(
溶離剤:酢酸エチル/トリエチルアミン/MeOH、75:5:20~45:5:50)
によって精製し、オイル(1.51g)を得た。オイルをMeOH(10mL+DMSO
3滴)で希釈し、t-ブチルメチルエーテル(MTBE)(2×10mL)をシリンジで
添加した。油状固体が即座に沈殿した。懸濁液を濃縮し、得られた残留物をMeOH(2
0mL)及びトリエチルアミン(5mL)に吸収させて、濾過した。2分間にわたってM
TBE(40mL)を濾液に添加し、固形物が徐々に沈殿した。沈殿物を濾過し、真空オ
ーブン内で35℃において15分間乾燥させて、
1H NMR分析により(4aR,10
aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ
[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩)を固形物として、且つトリエチルア
ミンとの1:1.3錯体として得た(0.531g、0.957mmol、収率57%)
。
LCMS(方法555)rt=1.00分.
酸性条件でジスルフェートが不安定であるため、LCMSにより純度の良好な検出は得ら
れない。
1H NMR(600MHz,DMSO-d
6)δ 8.93(s,1H),8.80(
s,1H),7.40(d,J=8.5Hz,1H),6.77(d,J=8.6Hz,
1H),3.48(d,J=11.7Hz,1H),3.37-3.19(m,5H),
3.10(q,J=7.3Hz,7.8H,トリエチルアミン),3.02(s,1H)
,2.76-2.67(m,1H),2.46(dd,J=17.7,12.2Hz,1
H),1.85(d,J=11.3Hz,2H),1.81-1.56(m,4H),1
.37-1.26(m,1H),1.17(t,J=7.3Hz,11.7H,トリエチ
ルアミン),0.95(t,J=7.3Hz,3H).
HRMS(ESI):C16H21NO8S22-[M-2H+]のm/z計算値209
.5360,測定値209.5360.
【0153】
(Id-ia)、(Id-ib)及び(Id-iab)の製造のための中間体
中間体:(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキ
シ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-
6-オール及び(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル
)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノ
リン-7-オール。
【化18】
(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オ
クタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール塩酸塩(2.21g、7.43mm
ol)をジクロロメタン(80ml)に室温で窒素雰囲気下において懸濁し、N,N-ジ
イソプロピルエチルアミン(4.44g、6.0ml、34.4mmol)を添加し、続
いてトリイソプロピルシリルクロリド(2.73g、3.0ml、14.16mmol)
を添加し、混合物を室温で92時間攪拌した。MeOH10mLを添加し、粗混合物を蒸
発させ、ジクロロメタン/ヘプタンで2回同時蒸発させて、ジクロロメタンに再溶解し、
濾過助剤上で直接蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:n-ヘプタン/酢酸エ
チル/トリエチルアミン、100:0:0~35:60:5)によって精製し、オイルと
して、(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル)オキシ
)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6
-オール(3.14g)と、(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソプ
ロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベン
ゾ[g]キノリン-7-オールとの混合物として3.14gを得た。NMR(CDCl3
)からシリル化異性体の>30:1混合物であることが判明した。
【0154】
中間体:t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピル
シリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g
]キノリン-6-イル)カーボネート[A]及びt-ブチル((4aR,10aR)-1
-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,
10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)カーボネート[B]。
【化19】
前の工程からの混合物(4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピ
ルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[
g]キノリン-6-オールと、(4aR,10aR)-1-プロピル-6-((トリイソ
プロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベ
ンゾ[g]キノリン-7-オール(2.94g、7.04mmol)とを窒素雰囲気下に
おいてジクロロメタン(30ml)に溶解し、0℃に冷却した。ピリジン(6.00ml
)に続いてジ-t-ブチルジカーボネート(6.30g)を添加し、反応混合物を3~4
時間、室温に温め、次いで一晩室温で攪拌した。MeOH10mLを添加し、反応混合物
を蒸発させ、ジクロロメタン/n-ヘプタンで2回同時蒸発させ、ジクロロメタンに溶解
し、濾過助剤上で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(溶離剤:n-ヘプタン/酢酸
エチル/トリエチルアミン、100:0:0~75:20:5)による精製により、オイ
ルとして、t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピ
ルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[
g]キノリン-6-イル)カーボネート[A]と、t-ブチル((4aR,10aR)-
1-プロピル-6-((トリイソプロピルシリル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)カーボネート[B]と
の混合物(3.6g)が得られた。乾燥後にNMR(CDCl3)から位置異性体の混合
物が示された。
【0155】
中間体:(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロ
ピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-
7-イルアセテート及び(4aR,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキ
シ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[
g]キノリン-6-イルアセテート。
【化20】
t-ブチル((4aR,10aR)-1-プロピル-7-((トリイソプロピルシリル
)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノ
リン-6-イル)カーボネート(3.600g、6.95mmol)(前の工程からの[
A]:[B]の混合物)を0℃で窒素雰囲気下においてTHF(150ml)に溶解し、
トリエチルアミントリヒドロフルオリド(2.97g、3.00ml、18.42mmo
l)を添加し、混合物を0℃で攪拌した。0℃で3時間後、ピリジン(10.0ml、1
24mmol)及び無水酢酸(4.33g、4.00ml、42.4mmol)を0℃で
反応混合物に直接添加し、反応混合物を室温に温めた。16時間後、MeOH20mLを
添加し、反応混合物を蒸発させ、ジクロロメタン/ヘプタンに再溶解し、濾過助剤上で蒸
発させ、続いて乾燥カラム真空クロマトグラフィーで精製して、(4aR,10aR)-
6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテート及び(4aR
,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルアセテー
トをオイル/泡として得た。
LCMS(方法550)rt=0.56分,[M+H]
+=404e/z.
【0156】
中間体:(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7-アセ
トキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ
[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H
-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート及び(2S,3R,4S,5S,6S)
-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4
a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)-6-
(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテ
ート。
【化21】
(4aR,10aR)-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-
1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イ
ルアセテート(2.489g、6.17mmol)(想定される、(4aR,10aR)
-6-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,
5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルアセテートと、(4a
R,10aR)-7-((t-ブトキシカルボニル)オキシ)-1-プロピル-1,2,
3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルアセテ
ートとの混合物)を室温で窒素雰囲気下においてジクロロメタン(60ml)に溶解し、
(2S,3R,4S,5S,6S)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-
ピラン-2,3,4,5-テトライルテトラアセテート(7.529g、20.01mm
ol)を添加し、続いて三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(6.72g、6.0ml
、47.3mmol)を添加し、混合物を室温で5日間攪拌した。混合物をジクロロメタ
ン及びMeOHで希釈し、濾過助剤上で蒸発させた。乾燥カラム真空クロマトグラフィー
によって精製し、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-
7-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒド
ロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒド
ロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートと、(2S,3R,4S,5S
,6S)-2-(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3
,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ
)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルト
リアセテート(4.37g)との混合物を泡/固形物として得た。
LC-MS(方法555)rt=1.94分,[M+H]
+=620e/z.
【0157】
中間体:メチル(2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(4aR,10aR)-1
-プロピル-6-[(2S,3R,4S,5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-
6-メトキシカルボニル-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3,4,4a,5,
10,10a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[g]キノリン-7-イル]オキシ]-3,
4,5-トリアセトキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボキシレート
【化22】
(2S,3S,4S,5R,6R)-2-(メトキシカルボニル)-6-(2,2,2
-トリクロロ-1-イミノエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイ
ルトリアセテート(1.286g、2.69mmol)及び(4aR,10aR)-1-
プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリ
ン-6,7-ジオール塩酸塩(0.4g、1.343mmol)をジクロロメタン(5.
28g、4.00ml、62.2mmol)に溶解し、次いで三フッ化ホウ素ジエチルエ
ーテラート(0.381g、0.340ml、2.69mmol)を窒素雰囲気下におい
て添加し、8mLバイアル中で窒素下において混合物を3日間攪拌した。さらなる(2S
,3S,4S,5R,6R)-2-(メトキシカルボニル)-6-(2,2,2-トリク
ロロ-1-イミノエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリア
セテート(1.286g、2.69mmol)、及び
三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.381g、0.340ml、2.69mmo
l)を添加し、混合物を4時間攪拌し、次いで混合物を飽和水溶液NaHCO
3(30m
L)中に注ぎ、次いでジクロロメタン(2×20mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥
させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空内で乾燥状態まで蒸発させた。粗製フォームをヘプ
タン/酢酸エチル(1:1)に懸濁し、一晩攪拌した。続いてエーテル中のHCl(0.
672ml、1.343mmol、2モル)を添加し、混合物を1時間攪拌し、真空内で
乾燥状態まで蒸発させ、MTBE(40mL)を添加し、混合物を加熱して還流し、室温
に冷却し、次いで混合物を濾過し、固形物を真空オーブン内で40℃において1日間乾燥
させ、メチル(2S,3S,4S,5R,6S)-6-[[(4aR,10aR)-1-
プロピル-6-[(2S,3R,4S,5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6
-メトキシカルボニル-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-3,4,4a,5,1
0,10a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[g]キノリン-7-イル]オキシ]-3,4
,5-トリアセトキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボキシレート塩酸塩(1.085
4g、1.167mmol、収率87%)を得た。
LC-MS方法550rt=0.63分,[M+H]
+=895.7e/z.
【0158】
(Id-ib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6
-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,
5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒド
ロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、及び
(Id-ia):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6
-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,
5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒド
ロ-2H-ピラン-2-カルボン酸。
【化23】
(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((4aR,10aR)-7-アセトキシ
-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]
キノリン-6-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラ
ン-3,4,5-トリイルトリアセテートと、(2S,3R,4S,5S,6S)-2-
(((4aR,10aR)-6-アセトキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5
,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)-6-(メト
キシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(
3.82g、6.17mmol)との混合物をMeOH(100ml)及び水(20ml
)に溶解し、0℃に冷却し、シアン化カリウム(7.295g、112mmol)を添加
し、懸濁液を17.5時間ゆっくりと室温にした。粗混合物を濾過助剤上で蒸発させて乾
燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/MeOH/水1
00:0:0~0:50:50)によって粗混合物を精製し、(Id-ib)及び(Id
-ia)の比5~6:1を得た。混合物を分取LCMSによって分離した。(Id-ib
)を含有する収集ピーク1画分をプールし、蒸発させ、同様の手法で製造された(Id-
ib)-TFA186mgの他のバッチと合わせ、MeOHを用いて蒸発させ、乾燥させ
て固形物を得た。(Id-ib)をEtOH10mLに再懸濁し、MTBE100mLを
添加し、得られた懸濁液を室温で8時間攪拌し、懸濁液を濾過し、沈殿物を2×10mL
MTBEで洗浄し、真空オーブン内で一晩乾燥させて、(2S,3S,4S,5R,6
S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-
1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キ
ノリン-7-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸に対応する固
形物として(Id-ib)1.601gを得た。(Id-ia)を含有する収集ピーク2
画分をプールし、蒸発させ、MeOHが入った小さいフラスコに移し、蒸発させ、MeO
H約12mLに再溶解し、分取LCMSによって再精製し、蒸発させてフォーム/固形物
を得た。適切な画分をプールし、蒸発させ、小さいフラスコにMeOHと共に移し、蒸発
させ、同様の手法で製造された40.7mg(Id-ia)の他のバッチと合わせた。合
わせたバッチをEtOH2.5mLに溶解し、MTBE25mLを添加し、懸濁液を室温
で攪拌した。8時間後、懸濁液を濾過し、沈殿物を2×2.5mL MTBEで洗浄し、
真空オーブン内で一晩乾燥させて、固形物として(Id-ia)362.2mgを得た。
(Id-ia)をEtOH約10mLに懸濁し、MTBE50mLを添加し、懸濁液を室
温で攪拌し、19時間後に濾過し、沈殿物を2×10mL MTBEで洗浄し、真空オー
ブン内において40℃で乾燥させて、固形物として(2S,3S,4S,5R,6S)-
3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プ
ロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン
-6-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(Id-ia)0.
279gを得た。
【0159】
(Id-ib)
LCMS(方法551)rt=0.37分.
1H NMR(600MHz,メタノール-d4)δ 7.02(d,J=8.4Hz,
1H),6.65(d,J=8.4Hz,1H),4.73(d,J=7.7Hz,1H
),3.89(d,J=9.7Hz,1H),3.68-3.58(m,2H),3.5
4(dd,J=9.3,7.7Hz,1H),3.49(t,J=9.1Hz,1H),
3.47-3.36(m,2H),3.30(dt,J=11.2,5.6Hz,1H)
,3.21-3.11(m,3H),2.85(dd,J=15.4,11.3Hz,1
H),2.35(dd,J=17.6,11.5Hz,1H),2.12-2.02(m
,2H),2.02-1.84(m,3H),1.81-1.71(m,1H),1.4
9(qd,J=13.0,3.7Hz,1H),1.09(t,J=7.3Hz,3H)
.
【0160】
(Id-ia)
LCMS(方法551)rt=0.39分.
1H NMR(600MHz,メタノール-d4)δ 6.87(d,J=8.3Hz,
1H),6.74(d,J=8.4Hz,1H),4.62(d,J=7.9Hz,1H
),3.75(dd,J=17.7,4.9Hz,1H),3.66-3.62(m,2
H),3.61-3.51(m,2H),3.50-3.35(m,3H),3.31-
3.22(m,1H),3.14(qd,J=12.7,4.0Hz,2H),2.83
(dd,J=15.2,11.3Hz,1H),2.37(dd,J=17.7,11.
7Hz,1H),2.12(d,J=13.4Hz,1H),2.08-2.00(m,
1H),1.98-1.83(m,3H),1.81-1.71(m,1H),1.44
(qd,J=13.2,3.9Hz,1H),1.09(t,J=7.3Hz,3H).
【0161】
(Id-iab):(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S
,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4
a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オ
キシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン
酸)
【化24】
合成A
(1S,4aR,10aR)-1-プロピル-6,7-ビス(((2S,3R,4S,
5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ
-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オク
タヒドロベンゾ[g]キノリン(0.25g、0.269mmol)を水(1.209g
、1.209ml、67.1mmol)に溶解し、MeOH(3.83g、4.84ml
、120mmol)及びKOH(0.393g、0.270ml、3.22mmol、4
6%)を添加し、密閉バイアル内で室温において一晩攪拌した。一晩で沈殿物が形成し、
それを濾過によって単離した。固形物をMeOH(1.5mL)で洗浄し、(2S,2’
S,3S,3’S,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4
aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒ
ドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイル)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリ
ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸)2カリウム(0.096g、
0.139mmol、収率51.6%)を得た。
LC-MS方法551rt 0.31分,[M+H]
+=614.2e/z.
【0162】
合成B
(1S,4aR,10aR)-1-プロピル-6,7-ビス(((2S,3R,4S,
5S,6S)-3,4,5-トリアセトキシ-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ
-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オク
タヒドロベンゾ[g]キノリン(0.2585g、0.278mmol)を水(1.25
0g、1.25ml、69.4mmol)に溶解し、MeOH(3.96g、5ml、1
24mmol)及びKCN(0.344g、5.28mmol)を添加し、密閉バイアル
で室温において一晩攪拌した。一晩で沈殿物が形成し、それを濾過によって単離した。固
形物をMeOH(1.5mL)で洗浄し、(2S,2’S,3S,3’S,4S,4’S
,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-(((4aR,10aR)-1-プロピル
-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,
7-ジyl)ビス(オキシ))ビス(3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-
ピラン-2-カルボン酸)2カリウム(0.0963g、0.139mmol、収率50
.1%)を得た。
LC-MS 方法551 rt=0.34分,[M+H]+=614.6e/z.
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 7.09(d,J=8.5Hz,1
H),6.84(d,J=8.5Hz,1H),4.91-4.79(m,1H),4.
78-4.66(m,1H),3.93(bs,22H(OH/水)),3.42(d,
J=9.8Hz,1H),3.37-3.21(m,7H),3.19(s,1H),3
.11(dd,J=16.2,4.9Hz,1H),2.90(d,J=11.0Hz,
1H),2.67(ddd,J=12.9,10.7,5.6Hz,1H),2.49(
dd,J=15.9,10.9Hz,1H),2.39-2.27(m,1H),2.1
5(dt,J=17.5,11.5Hz,2H),2.05(td,J=10.4,4.
9Hz,1H),1.86(d,J=11.7Hz,1H),1.67-1.38(m,
5H),1.03(qd,J=12.3,5.1Hz,1H),0.85(t,J=7.
3Hz,3H).
【0163】
本発明の範囲によって包含されるさらなる化合物
以下の2種類の化合物も本発明の範囲によって包含される:
(Id-iaiib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキ
シ-6-(((4aR,10aR)-1-プロピル-7-スルホ-1,2,3,4,4a
,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル)オキシ)テトラヒ
ドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸、及び
(Id-iiaib):(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキ
シ-6-(((4aR,10aR)-1-プロピル-6-スルホ-1,2,3,4,4a
,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル)オキシ)テトラヒ
ドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸。
【化25】
【0164】
PK比較のためのアポモルヒネ抱合体の製造
(R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベ
ンゾ[de,g]キノリン-10-イル硫酸水素塩
【化26】
アポモルヒネ塩酸塩半水化物1.0g(3.19mmol、1.0当量)をアルゴン雰
囲気下において室温でピリジン3.3mLに懸濁した。三酸化硫黄-ピリジン錯体1.7
g(10.68mmol、3.34当量)をこの懸濁液に添加し、温度40℃において1
7時間攪拌し、分取HPLCによって精製した。主要な異性体(R)-11-ヒドロキシ
-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン
-10-イル硫酸水素塩を単離し(78mg)、UV純度98.8%であった。
LC-MS 方法111 rt=5.18分,[M+H]
+=348.1e/z.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 9.91(br,1H),9.30
(s,1H),8.27(d,J=5.0Hz,1H),7.39(m,1H),7.2
0(d,J=5.0Hz,1H),7.10(d,J=5.0Hz,1H),6.84(
d,J=5.0Hz,1H),4.42(bs,1H),3.77(bs,1H),3.
45(d,J=10.0Hz,2H),3.25-3.21(m,1h),3.20-3
.10(m,4h),2.71(t,J=10.0Hz,1H).
【0165】
(R)-10-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベ
ンゾ[de,g]キノリン-11-イル硫酸水素塩:
【化27】
(R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジ
ベンゾ[de,g]キノリン-10-イル硫酸水素塩と同じ方法を用いたが、マイナー成
分(minor component)を得るためにわずかな変更のみ行った。反応時間
を3時間に減らし、三酸化硫黄-ピリジンを3回に分けて添加した(850mgから開始
し、且つ500mgから2回開始して、3回のバッチを実施した)。反応混合物をプール
し、分取HPLCで精製し、マイナーな異性体(R)-10-ヒドロキシ-6-メチル-
5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-11-イル硫
酸水素塩50mgを得た。
LC-MS 方法222 rt=4.99分,[M+H]
+=348.1e/z.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 10.00(br,1H),9.3
0(s,1H),8.26(bs,1H),7.23(bs,1H),7.11(bs,
1H),7.01(d,J=10.0Hz,1H),6.78(d,J=10.0Hz,
1H),3.50-2.20(m,7h).
【0166】
中間体:(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((R)-11-ヒドロキシ-6-
メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10
-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,
5-トリイルトリアセテート
【化28】
アポモルヒネ(遊離塩基)480mg(1.796mmol)及び1,2,3,4-テ
トラ-o-アセチル-β-D-グルコピランウロネート4.72g(12.54mmol
、7.0当量)をアルゴン雰囲気下において室温でジクロロメタン40mLに溶解した。
10分で溶解された出発原料により、青色の溶液が得られた。この溶液に三フッ化ホウ素
エチルエーテラート3.0mL(3.45g、13.5当量)をアルゴン雰囲気下におい
て添加し、それを室温で2時間攪拌した。重炭酸ナトリウム飽和溶液80mLに反応を注
ぎ、10分間攪拌し、次いで分離した。水相をCH
2Cl
2(3×40mL)で抽出した
。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液(1×40mL)及びブライン(1×40
mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて固形物4.5gを得た
(理論収量約1.0g)。CH
2Cl
2:MeOH=96:4を用いて、フラッシュクロ
マトグラフィーで粗生成物を精製した。精製後、(2S,3R,4S,5S,6S)-2
-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H
-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)
テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート190mgを得た。
【0167】
(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(((R)-1
1-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de
,g]キノリン-10-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸
【化29】
(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル
-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル
)オキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-ト
リイルトリアセテート250mg(0.432mmol)をMeOH6.1mL及び水1
.2mLの混合物に溶解し、0℃に冷却した。その温度でKCN526mg(8.07m
mol、18.7当量)を添加した。反応混合物を攪拌し、室温に温め、さらに2時間攪
拌した。反応を濾過し、水-アセトニトリル-0.1%TFA溶離剤中で直接、分取HP
LCで精製した。回収された画分からアセトニトリルを室温において真空中で蒸発させ、
水性残留物を凍結乾燥させて、粉末として(2S,3S,4S,5R,6S)-3,4,
5-トリヒドロキシ-6-(((R)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,
7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル)オキシ)テトラ
ヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸のTFA塩133mgを得た。その構造は、LC
MS及びNMRによって検証された。
LC-MS 方法111 rt=4.30分,[M+H]
+=444.2e/z.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 12.84(br,1H),10.
00(bs,1H),8.87(s,1H),8.29(d,J=10.0Hz,1H)
,7.40(m,1H),7.21(d,J=5.0Hz,1H),7.02(d,J=
10.0Hz,1H),6.83(d,J=5.0Hz,1H),5.77(s,1H)
,5.45-5.20(m,2H),4.84(d,J=5.0Hz,1H),4.34
(bs,1H),3.92(d,J=10.0Hz,1H),3.76(bs,1h),
3.55-3.00(m,11H,OH/水),2.75-3.30(m,4H).
【0168】
本発明の化合物の生体外及び生体内での特徴付け
実施例1a:ラット及びヒト肝細胞における本発明の化合物の転化
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含
むDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)(pH7.4)に懸濁されたヒト又はラット
由来の肝細胞と共に、1μg/mLにおいて化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(
Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)をそれぞ
れインキュベートした。インキュベーションでの細胞濃度は、1×106生細胞/mLで
あった。インキュベーションは、ガラス管内において37℃で実施し、総インキュベーシ
ョン体積3.5mLであり、それぞれの試験アイテムに対して二重反復でインキュベーシ
ョンを行った。肝細胞懸濁液3.5mLを37℃に設定された水浴中で10分間平衡化し
、その後、DMSO(ジメチルスルホキシド)中の試験アイテムのストック溶液3.5μ
Lを添加し、穏やかにチューブを反転させることにより、インキュベーションが開始され
た。インキュベーションにおける最終溶媒濃度は、0.1%DMSOであった。肝細胞懸
濁液の均一性が確実になった後、0.25、5、15、30及び60分の所定の時点で6
00μLの試料をインキュベーションから採取した。0.5Mクエン酸中に氷冷アスコル
ビン酸(100mg/mL)60μL及び氷冷100mM糖酸1.4-ラクトン30μL
を含有する、湿った氷上の1mL Nuncクライオチューブに、採取された体積を添加
した。チューブを混合し、氷冷の20%ギ酸溶液35μLを添加した。チューブを十分に
混合し、-80℃で保管して分析を待った。(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-
iia)及び(Id-iib)の投与からの(I)の分析のために使用される分析方法及
び装置は、「化合物(Ic)、(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(
Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの化合物(I)の
分析のために使用される装置」のセクションにおいて実施例4及び5に記載の方法及び装
置であった。
【0169】
(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの(I)の分析に使用される分析
方法及び装置は、試料と沈殿溶液(10%メタノール(MeOH)及び1%ギ酸を含むア
セトニトリル(MeCN))との等しいアリコートを混合すること、続いて16000g
において4℃で10分間遠心分離することからなった。上清を回収し、LC-MS/MS
によって分析した。質量分析計:Waters Acquity-Waters Xev
o TQ-MS。分析カラム:Acquity UPLC HSS T3、100×2.
1mm、1.8μm。移動相A:水中で0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル中0.
2%ギ酸。5分で95/5%から60/40に移動する勾配。流量0.3mL/分。研究
試料及び分析標準における(I)のMRMモニタリング。
【0170】
図7から、ラット及びヒト肝細胞の両方における(Id-ia)、(Id-ib)、(
Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iab)から化合物(I)への時間依存
的転化が示される。(Id-iiab)について、化合物(I)の形成は、所定の試験条
件において検出することができなかった。
【0171】
実施例1b:新鮮なラット及びヒトの血液中での本発明の化合物の転化
ヒト血液(ドナー3名の平均)及びラット血液(ドナー45匹の平均)中の(Id-i
a)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の(I)への転化を、そ
れぞれ(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)1μg
/mLでスパイクされた37℃の新鮮血液中で示し、(I)を単離血漿中で0、5、15
、30及び60分において測定した。「化合物(Ic)、(Id-ia)、(Id-ib
)、(Id-iia)、(Id-iib)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の
投与からの化合物(I)の分析に使用される装置」のセクションにおいて以下の実施例4
及び5に記載される分析方法及び装置である。
【0172】
図8から、ラット及びヒト血液の両方中の(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-
iia)及び(Id-iib)から化合物(I)への時間依存的転化が示される。
【0173】
実施例2:ドーパミンアゴニスト活性
ドーパミンD1受容体アゴニズム
HD Biosciences(China)によって開発されたプロトコルを用いて
、CisBioからのHTRF cAMPを使用してドーパミンD1受容体アゴニズムを
測定した。簡潔には、アッセイは、細胞によって産生された天然cAMPと、XL-66
5で標識化されたcAMPとの競合イムノアッセイにおける細胞によるcAMPの産生を
測定する、ホモジニアス時間分解-蛍光共鳴エネルギー移動(HTRF)アッセイである
。クリプテート標識化抗cAMP抗体がトレーサーを可視化する。製造元からの説明書に
従ってアッセイを実施した。
【0174】
マイクロプレートのウェルに試験化合物を添加した(384フォーマット)。ヒトD1受容体を発現するHEK-293細胞を1000細胞/ウェルでプレーティングし、室温で30分間インキュベートした。cAMP-d2トレーサーをウェルに添加し、続いて抗cAMP抗体-クリプテート調製物を添加し、暗所で室温において1時間インキュベートした。337nmレーザー(「TRFライトユニット」)でドナーを励起し、続いて200マイクロ秒の時間窓にわたる615nm及び665nmでのクリプテート及びd2発光(繰り返し間の時間窓2000マイクロ秒/100フラッシュを測定することによってHTRF cAMPを測定した(遅延時間100マイクロ秒)。Envisionマイクロプレートリーダー(パーキンエルマー(PerkinElmer))でのHTRF測定を実施した。615nmに対して665nmにおいて発光比としてHTRFシグナルを計算した。DMSO溶媒又は30uMドーパミンを含むコントロールウェルを使用して、試験化合物について読み取られたHTRF比を0%及び100%刺激に正規化した。Xlfit4(IDBS,Guildford,Surrey,UK,モデル205)を使用して、シグモイド型用量反応(可変勾配)を用いて、非線形回帰によって試験化合物効力(EC50)を推定した。
y=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))
式中、yは、試験化合物の所定の濃度に対する正規化されたHTRF比測定値であり、xは、試験化合物の濃度であり、Aは、無限化合物希釈での推定効力であり、Bは、最大効力である。Cは、EC50値であり、Dは、ヒル(Hill)勾配係数である。EC50推定値は、非依存的実験から得られ、対数平均が計算された。
【0175】
ドーパミンD2受容体アゴニズム
HD Biosciences(China)によって開発されたカルシウム動員アッ
セイプロトコルを用いて、ドーパミンD2受容体アゴニズムを測定した。簡潔には、ヒト
D2受容体を発現するHEK293/G15細胞を、密度15000細胞/ウェルにおい
て透明底のマトリゲル(Matrigel)コート384ウェルプレートにプレーティン
グし、5%CO2の存在下において37℃で24時間増殖させた。細胞をカルシウム感受
性蛍光染料Fluo8と共に、37℃において暗所で60~90分間インキュベートした
。Ca2+及びMg2+を有する1×HBSSバッファー中の3倍濃縮溶液で試験化合物
を調製した。化合物プレートからFLIPR(Molecular Devices)の
細胞プレートに化合物を添加した後、カルシウム流入シグナルを直ちに記録した。蛍光デ
ータを正規化して、0%及び100%刺激のそれぞれの刺激なし(バッファー)及び完全
刺激(ドーパミン1μM)に対する反応を得た。Xlfit4(IDBS,Guildf
ord,Surrey,UK,モデル205)を使用して、シグモイド型用量反応(可変
勾配)を用いて、非線形回帰によって試験化合物効力(EC50)を推定した。
y=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))
式中、yは、試験化合物の所定の濃度に対する正規化された比測定値であり、xは、試験
化合物の濃度であり、Aは、無限化合物希釈での推定効力であり、Bは、最大効力である
。Cは、EC50値であり、Dは、ヒル勾配係数である。EC50推定値は、非依存的実
験から得られ、対数平均が計算された。
【0176】
実施例3:5-HT2Bアゴニスト活性及び結合アッセイ
5-HT2Bアゴニスト活性アッセイ
HTRF検出法を用いて、Eurofins/Cerep(France)により、イ
ノシトール一リン酸(IP1)産生に対する化合物の作用を測定して、ヒト5-HT2B
受容体での化合物(I)、(Ia)及び(Ib)のアゴニスト活性の評価を行った。簡潔
には、ヒト5-HT2B受容体がトランスフェクトCHO細胞において発現された。10
mM Hepes/NaOH(pH7.4)、4.2mM KCl、146mM NaC
l、1mM CaCl2、0.5mM MgCl2、5.5mMグルコース及び50mM
LiClを含有するバッファー中に細胞を懸濁し、次いで密度4100細胞/ウェルに
おいてマイクロプレートに分配し、バッファー(基礎コントロール)、試験化合物又は参
照アゴニストの存在下において37℃で30分間インキュベートした。刺激されたコント
ロールの測定のために、個々のアッセイウェルは、1μM 5-HTを含有した。インキ
ュベーション後、細胞を溶解し、蛍光受容体(フルオロフェン(fluorophen)
D2標識化IP1)及び蛍光供与体(ユーロピウムクリプテートで標識化された抗IP1
抗体)を添加した。室温において60分後、λ(Ex)337nm並びにλ(Em)62
0及び665nmにおいて、マイクロプレートリーダー(Rubystar,BMG)を
使用して蛍光の移行を測定した。665nmで測定されたシグナルを620nmで測定さ
れたシグナルで割ることにより、IP1濃度を決定した(比率)。その結果を1μM 5
-HTに対するコントロールの応答のパーセントとして表した。標準参照アゴニストは、
5-HTであり、それを数通りの濃度でそれぞれの実験で試験して、濃度反応曲線を作成
し、その曲線から、そのEC50値は、ドーパミン機能性アッセイについて上述のように
計算される。
【0177】
5-HT2B結合アッセイ
ヒト5-HT2B受容体に対する化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-i
ia)、(Id-iib)及び(Id-iab)の親和性の評価をEurofins/C
erep(フランス(France))で放射性リガンド結合アッセイにおいて決定した
。50mM トリスHCl(pH7.4)、5mM MgCl2、10μMパージリン及
び0.1%アスコルビン酸を含有するバッファー中の試験化合物の非存在下又は存在下に
おいて、ヒト5HT2B受容体を発現するCHO細胞から調製された膜ホモジネートを0
.2nM[125I](±)DOI(1-(4-ヨード-2,5-ジメトキシフェニル)
プロパン-2-アミン)と共に室温で60分間インキュベートした。非特異的な結合は、
1μM(±)DOIの存在下において決定される。インキュベーション後、0.3%ポリ
エチレンイミン(PEI)で予浸されたガラス繊維フィルター(GF/B,Packar
d)を通して、試料を真空下において迅速に濾過し、96試料細胞ハーベスター(Uni
filter,Packard)を使用して、氷冷50mMトリスHClで数回すすいだ
。フィルターを乾燥させ、シンチレーションカクテル(Microscint 0,Pa
ckard)を使用してシンチレーション計数器(Topcount,Packard)
において放射能についてカウントした。コントロール放射性リガンド特異的な結合の抑制
パーセントとして結果を表す。標準参照化合物は、(±)DOIであり、それを数通りの
濃度でそれぞれの実験で試験して、競合曲線が得られ、その曲線からそのIC50が計算
される。
【0178】
【0179】
実施例4:ラットにおけるPK実験
すべての実験に関して、約0.68mLの血液試料を尾又は舌下静脈から採取し、予め
冷却されており、且つ水中のアスコルビン酸80μL及び100mMD-糖酸1,4ラク
トン40μLからなる安定化溶液で調製されたK3EDTAチューブに血液試料を入れた
。チューブを6~8回穏やかに反転させ、十分に混合し、次いで湿った氷上に置いた。遠
心分離するまで、回収チューブを湿った氷上に30分までの間置いた。湿った氷から除去
した後、遠心分離を直ちに開始した。遠心分離が終了した直後に試料を湿った氷上に戻し
た。予め冷却されたギ酸(20%)を含有する適切に標識された3つのクライオチューブ
のそれぞれに血漿130μLの3つの副試料を移した(チューブは、予めスパイクされて
おり、使用前に冷蔵保存された)。チューブの蓋を直ちに取り換え、穏やかに6~8回反
転させることにより、血漿溶液を完全に混合した。サンプリング後60分以内に試料を名
目上-70℃において凍結保存した。遠心条件は、4℃で3000Gにおいて10分間で
あった。回収後、血漿を氷水上に置いた。約-70℃での最終保存。
【0180】
固相抽出又は直接タンパク質沈殿に続いて、UPLC-MS/MSによって血漿試料を
分析した。応答を補正する内標準を使用した、化合物(I)の特異的な質量/電荷トラン
ジションのモニタリングによる陽イオンモードでのエレクトロスプレーを用いたMS検出
。適切なノンコンパートメント技術を用いて標準ソフトウェアを使用して、濃度-時間デ
ータを分析し、誘導PKパラメーターの推定値を得た。
【0181】
化合物(Ia)を投与することからの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Sciex API
5000。分析カラムWaters BEH UPLC Phenyl 100×2.
1mmカラム、粒径1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム(水性)+0.5
%ギ酸。移動相B:アセトニトリル。6.1分で95/5%から2/98%に移動する勾
配。流量0.5mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング(
多重反応モニタリング)。
投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,
Sulzfeld,GermanyによってHanウィスターラットが供給された。自動
制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手
した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラッ
トは、食餌に自由にアクセスできた。研究(4週間の毒性研究)中、経管栄養法によって
ラットに(Ia)の用量を1日1回経口投与した。(Ia)300μg/kgが投与され
たラットから、雄のサテライト動物3匹からの血液試料)を29日目の以下の時点:投与
後0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間で採取した。
【0182】
化合物(Ib)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity -Sciex AP
I5000。分析カラムWaters BEH UPLC Phenyl 100×2.
1mmカラム、粒径1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム(水性)+0.5
%ギ酸。移動相B:アセトニトリル。6.1分で95/5%から2/98に移動する勾配
。流量0.5mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories(
UK)によってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明
及び暗サイクルを維持した。標準実験室食餌(Teklad 2014C Diet)が
ラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。研究(26週間の毒性研
究)中、経管栄養法によってラットに(Ib)の用量を1日1回経口投与した。(Ib)
300μg/kgが投与されたラットから、雄のサテライト動物3匹からの血液試料を1
82日目の以下の時点:投与後0.5、1、2、4、8及び24時間で採取した。
【0183】
化合物(Ic)、(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)、(Id-iib
)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与からの化合物(I)の分析に使用さ
れる装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xe
vo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 100×2.1mm、1
.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム+0.2%ギ酸。移動相B:アセトニト
リル+0.2%ギ酸。11.0分で95/5%から5/95%に移動する勾配。流量0.
3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の投与
及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,Wi
ga GmbH,GermanによってHanウィスターラットが供給された。自動制御
の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手した
標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラットは
、食餌に自由にアクセスできた。(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及
び(Id-iib)のそれぞれを単回経口経管栄養法投与で雄のHanウィスターラット
に経管栄養法によって経口投与した。(Id-ia)及び(Id-ib))633μg/
kg又は(Id-iia)及び(Id-iib)392μg/kgが投与されたラットか
ら、雄の動物3匹からの血液試料を1日目の以下の時点:投与後1、2、4、6、8及び
24時間で採取した。
化合物(Ic)、(Id-iab)及び(Id-iiab)の投与及び血液サンプリン
グ:Envigo,UKによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工
的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。標準実験室食餌Teklad 2014C
がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。(Ic)、(Id-i
ab)及び(Id-iiab)のそれぞれを単回経口経管栄養法で雄のHanウィスター
ラットに経管栄養法によって経口投与した。ラットに(Id-iab)793μg/kg
、(Id-iiab)703μg/kg及び(Ic)494μg/kgを投与した。雄の
動物3匹からの血液試料を1日目の以下の時点:投与後1、2、4、6、8及び24時間
で採取した。
【0184】
アポモルヒネ並びに対応するグルクロニド抱合体:(((2S,3S,4S,5R,6S
)-6-[[(6aR)-11-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒ
ドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10-イル]オキシ]-3,4,5-トリ
ヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸及び硫酸抱合体:[(6aR)-11
-ヒドロキシ-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,
g]キノリン-10-イル]硫酸水素塩及び[(6aR)-10-ヒドロキシ-6-メチ
ル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-11-イ
ル]硫酸水素塩)を投与することからの分析アポモルヒネに使用される装置:
質量分析計(UPCLC-MS/MS)Waters Acquity I-Clas
s-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity HSS T3 C
18 50×2.1mm、1.8μm。移動相A:10mMギ酸アンモニウム0.2%ギ
酸:アセトニトリル(95:5)。移動相B:10mMギ酸アンモニウム0.2%ギ酸:
アセトニトリル(5:95)。2.40分で95/5%から5/95%に移動する勾配。
流量0.3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRM検出。
投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,
Wiga GmbH,GermanyによってHanウィスターラットが供給された。自
動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入
手した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラ
ットは、食餌に自由にアクセスできた。雄のHanウィスターラットにアポモルヒネを単
回投与で皮下投与するか若しくは経管栄養法により経口投与するか、又はアポモルヒネ抱
合体を単回投与で皮下投与するか若しくは経管栄養法により経口投与した。3000μg
/kg(アポモルヒネ)又は3899μg/kg(硫酸抱合体)又は4977μg/kg
(グルクロニド抱合体)が投与されたラットから、雄の動物3匹からの血液試料を1日目
の以下の時点:皮下投与の0.25、0.5、1、2、4及び8時間並びに経口投与した
後の0.5、1、2、4、8及び24時間で採取した。
【0185】
【0186】
実施例5:ミニブタにおけるPK実験
血液試料約0.5mLをシリンジによって頚静脈から採取し、実施例4のラットについ
て記載の安定化溶液を含む、予め冷却されたEDTAチューブに血液試料を入れた。血漿
中の化合物の濃度を測定した。固相抽出又は直接タンパク質沈殿に続いて、UPLC-M
S/MSによって血漿試料を分析した。応答を補正する内標準を使用して、問題の化合物
の特異的な質量/電荷トランジションのモニタリングによる陽イオンモードでのエレクト
ロスプレーを用いたMS検出。適切なワンコンパートメント技術を用いて標準ソフトウェ
アを使用して、濃度-時間データを分析し、誘導PKパラメーターの推定値を得た。
【0187】
化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の投与
からの化合物(I)の分析に使用される装置。
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xe
vo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 100×2.1mm、1
.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム+0.2%ギ酸。移動相B:アセトニト
リル+0.2%ギ酸。11.0分で95/5%から95/5%に移動する勾配。流量0.
3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
Ellegaard,DKによって供給された雌のEllegaard Gotting
enミニブタにおける単回投与薬物動態学的研究からの投与及び血液サンプリング。自動
制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenからの標
準実験室食餌(Altrominペレット)がミニブタに与えられた。ミニブタは、食餌
に自由にアクセスできた。化合物(Id-ia)、(Id-ib)、(Id-iia)及
び(Id-iib)がそれぞれ経管栄養法によりミニブタに経口投与された。化合物(I
d-ia)及び(Id-ib)をそれぞれ160μg/kg又は化合物(Id-iia)
及び(Id-iib)をそれぞれ80μg/kgミニブタに投与し、メスの動物3匹から
の血液試料を1日目の以下の時点:投与後1、2、4、6、8、12及び24で採取した
。
【0188】
【0189】
実施例6:ラットの機能亢進アッセイにおける化合物(Id-ia)/化合物(I)のP
K/PD
動物
合計で体重200~250グラム(到着時165~190グラム)の雄のCDラット(
Charles River,Germany)206匹を研究に使用した。動物を標準
温度(22±1℃)において、且つ食餌及び水に自由にアクセスできる光制御環境(午前
7時から午後8時まで点灯)において動物を収容した。Charles River D
iscovery Research Services Finland Ltd.の
標準作業手順に従い、且つ動物試験に関するThe National Animal
Experiment Board of Finland(Elainkoelaut
akunta,ELLA)authorityに従って以下に記載の実験を実施した。
【0190】
歩行活動試験、オープンフィールド
試験デバイスは、正方形のプレキシグラス領域(測定値40×40×40cm)であり
、その中でのラットの移動経路が活動モニター(Med.Associates Inc
.)によって記録される。試験期間が開始される前にラットをその試験ケージに60分間
慣らす。慣らしが完了したら、動物を化合物又は賦形剤のいずれかで処置し、オープンフ
ィールド装置内に戻す。測定される主要な試験パラメーターは移動距離である(5分区間
で記録される)。最初の処置を受けた後の全体の測定時間は、360分であった。研究に
おける総経過観察時間は、慣らしの60分を含む420分であった。
【0191】
結果
化合物(Id-ia)の経口投与がラットの歩行活動アッセイにおいて評価され、次い
で、この機能的読み取り値は、化合物(I)の血漿中濃度と相関した。アポモルヒネ及び
プラミペキソールも、比較としてこのアッセイにおいて同時に試験され(すなわちパーキ
ンソン病分野で公知の標準治療(SoC))、アポモルヒネについて血漿中濃度を分析し
た。
図3に示すように、化合物(Id-ia)(10~300μg/kg、経口)により
、歩行活動が増加し、投与後約2時間で効果が始まり(およそ180分の時点)、記録の
最後(415分時点)まで続いた。対照的に、アポモルヒネ(3mg/kg、皮下)によ
り誘発される機能亢進は、即時であるが、投与後1.5時間で効果が消えたために(15
0分の時点で)短時間のみ続く。プラミペキソール(0.3mg/kg、皮下)も活動の
増加を誘発するが、その効果は、投与後約1時間で現れ、2.5時間後に消失する(27
0分の時点)。
図4に見られる総移動距離から、試験された化合物(Id-ia)と2つ
の比較物との両方に関して活動の有意な増加が実証され、この効果は、ドーパミンアゴニ
ストから予想される効果である。
【0192】
歩行活動アセスメントと並行して、異なる6時点(化合物(Id-ia)で処理された
動物に関して投与後0.5、1、2、3、4及び6時間)でサテライト動物から血漿試料
が採取された。薬物動態学的分析から、化合物(Id-ia)(100μg/kg、経口
)の行動上の効果は、化合物(I)の血漿中濃度と相関することが実証され(
図5を参照
されたい)、化合物(Id-ia)自体ではなく化合物(I)により、化合物(Id-i
a)の行動上の効果が誘導されることが実証されている。アポモルヒネ(投与後0.25
、0.5、1、2、4及び6時間で)の対応する曝露分析により、アポモルヒネの血漿中
濃度と機能亢進挙動との相関性が生じた(
図6を参照されたい)。