(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 35/04 20060101AFI20240227BHJP
B27G 13/12 20060101ALI20240227BHJP
B27C 5/04 20060101ALI20240227BHJP
B23B 49/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B23Q35/04 Z
B27G13/12
B27C5/04
B23B49/02 A
(21)【出願番号】P 2023185775
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-10-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523411570
【氏名又は名称】真砂 直弘
(74)【代理人】
【識別番号】100228348
【氏名又は名称】中村 宏
(72)【発明者】
【氏名】真砂 直弘
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02317616(US,A)
【文献】特開昭51-038198(JP,A)
【文献】登録実用新案第3098500(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0105700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 35/04、10
B27G 13/12
B27C 5/04
B23B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の加工材から所望の形状の工作物を切り抜くNC機能を持たない加工機であって、
主軸、及び刃部としての一端を持つ円柱状の加工具の他端を、前記加工具の一端が下方向を向く状態で保持可能な保持部と、
前記保持部に保持された前記加工具を、前記主軸を中心に回転可能な第1駆動部と、
前記加工具の一端に対向するように、上方向を向く状態で加工材を搭載可能なテーブルと、
前記テーブルの上面に取り付けられ、前記主軸に一致する軸を持ち、前記主軸に対し垂直方向における径が前記垂直方向における前記加工具の刃部の径と同じである円柱状又は円筒状の突出部と、
前記加工具の一端と前記テーブルとの上下方向の位置関係を調整可能な第2駆動部と、
板状の本体、前記本体の上面に取り付けられる前記刃部の突き抜けを防止するバッファ層、及び前記本体の下面に取り付けられる型部を有する加工補助具と、
を具備し、
前記バッファ層の上面に前記加工材が固定され、
前記型部は、
前記加工材から切り抜く前記工作物の所望の形状を決めるひな型用途として用いられ、
前記突出部は、
前記加工材の加工時に、前記加工具を、前記加工材に対し、前記型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる、
ことを特徴とする加工機。
【請求項2】
前記突出部の突出量は、前記型部の厚さと同じ、又はその厚さよりも小さく設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の加工機。
【請求項3】
前記突出部及び前記テーブルは、前記加工具が交換された場合に、前記突出部もこれに合わせて交換可能なように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の加工機。
【請求項4】
前記本体及び前記バッファ層は、透明材料から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の加工機。
【請求項5】
板状の加工材から所望の形状の工作物を切り抜くNC機能を持たない加工機であって、
主軸、及び刃部としての一端を持つ円柱状の加工具の他端を、前記加工具の一端が上方向を向く状態で保持可能な保持部と、
前記保持部に保持された前記加工具を、前記主軸を中心に回転可能な第1駆動部と、
下面、上面、及び前記加工具の一端を下面側から上面側に突出させる穴部を有し、加工材を搭載可能なテーブルと、
前記テーブルの上方から下方に向かって配置され、前記主軸に一致する軸を持ち、前記主軸に対し垂直方向における径が前記垂直方向における前記加工具の刃部の径と同じである円柱状又は円筒状の突出部と、
前記加工具の一端と前記テーブルとの上下方向の位置関係を調整可能な第2駆動部と、
板状の本体、前記本体の下面に取り付けられる前記刃部の突き抜けを防止するバッファ層、及び前記本体の上面に取り付けられる型部を有する加工補助具と、
を具備し、
前記バッファ層の下面に前記加工材が固定され、
前記型部は、
前記加工材から切り抜く前記工作物の所望の形状を決めるひな型用途として用いられ、
前記突出部は、
前記加工材の加工時に、前記加工具を、前記加工材に対し、前記型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる、
ことを特徴とする加工機。
【請求項6】
前記突出部は、前記加工具が交換された場合に、前記突出部もこれに合わせて交換可能なように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機、加工機スタンド、及び加工補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転する刃(ビット)によって、様々な材料(金属、プラスチック、木材、その他硬いもの、柔らかいものなど)を切削加工する加工機(ハンディタイプの電動工具を含む。以下、同じ。)としては、特許文献1に開示されるようなボール盤(フライス盤を含む。以下、同じ。)や、特許文献2に開示されるようなルータ(トリマを含む。以下、同じ。)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭55-129714号公報
【文献】特許第5575713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、高精度化や量産性を重視し、コンピュータにより数値制御されたNC(Numerical Control)機能が付加された加工機(以下、NC加工機と称する。)が主流になっている。即ち、同一のものを高精度で大量に生産するのには、このようなNC機能付きが有効である。一方で、ユーザニーズの多様化により、少量多品種の生産に対応しなければならないのも事実である。また、DIY(Do-it-yourself)の普及により、個人が加工機を使用する場合には、同一のものを数点のみ簡易に得たい、というのが実情である。
【0005】
しかしながら、このような少量多品種や同一のものを数点といった加工を行う場合に、NC加工機を用いると、必然的にコストが増大するので、現実的でない。また、特許文献1に開示されるようなボール盤や、特許文献2に開示されるようなルータを用いると、加工精度が十分に得られない、といった課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、NC機能を持たなくても、手動で高精度を確保できる加工機、加工機スタンド、及び加工補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、主軸、及び刃部としての一端を持つ円柱状の加工具の他端を、加工具の一端が下方向を向く状態で保持可能な保持部と、保持部に保持された加工具を、主軸を中心に回転可能な第1駆動部と、加工具の一端に対向するように、上方向を向く状態で加工材を搭載可能なテーブルと、テーブルの上面に取り付けられ、主軸に一致する軸を持ち、主軸に対し垂直方向における径がその垂直方向における加工具の刃部の径と同じである円柱状又は円筒状の突出部と、を備え、突出部は、加工材の加工時に、加工具を、加工材に対し、加工材の下面に取り付けられる型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる、ことを特徴とする加工機、を要旨とする。このような加工機を用いれば、加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動くことになる。従って、加工具を型部の形状と同じに動かすことが可能となり、結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0008】
また、第1態様の加工機において、加工具の一端とテーブルとの上下方向の位置関係を調整可能な第2駆動部をさらに備えれば、テーブル上に加工材を配置する、テーブル上から加工材や工作物を取り出す、などの操作が行い易くなる。第2駆動部としては、ハンドルを用いて手動で加工具又はテーブルの主軸方向(上下方向)の送り量を操作するもの、ボタン操作や遠隔操作(例えば、スマホアプリ操作)などにより自動で加工具又はテーブルの主軸方向の送り速度を操作するもの、などを用いることができる。
【0009】
また、第1態様の加工機において、突出部及びテーブルが、加工具が交換された場合に、突出部もこれに合わせて交換可能なように構成されていれば、加工具の種類(例えば、切り抜き用ビット、エッジ加工用ビット、溝切用ビット、表面削り用ビットなど)や、そのサイズに応じて、突出部を変更し、様々な加工具に対して、高精度の切削加工が可能となる。
【0010】
本発明の第2態様は、上記の第1態様に係る加工機に用いられる加工補助具であって、上面に加工材が固定される板状の本体と、本体の下面に取り付けられる型部と、を備え、型部は、加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、加工具を型部の形状に沿って動かすためのひな型用途として用いられる、ことを特徴とする加工補助具、を要旨とする。このような加工補助具を用いれば、加工材の加工時に、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動くため、加工具を型部の形状と同じに動かすことが可能となる。結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0011】
本発明の第3態様は、主軸、及び刃部としての一端を持つ円柱状の加工具の他端を、加工具の一端が上方向を向く状態で保持可能な保持部と、保持部に保持された加工具を、主軸を中心に回転可能な第1駆動部と、下面、上面、及び加工具の一端を下面側から上面側に突出させる穴部を有し、加工材を搭載可能なテーブルと、テーブルの上方から下方に向かって配置され、主軸に一致する軸を持ち、主軸に対し垂直方向における径がその垂直方向における加工具の刃部の径と同じである円柱状又は円筒状の突出部と、を備え、突出部は、加工材の加工時に、加工具を、加工材に対し、加工材の上面に取り付けられる型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる、ことを特徴とする加工機、を要旨とする。このような加工機を用いれば、加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動くことになる。従って、加工具を型部の形状と同じに動かすことが可能となり、結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0012】
また、第3態様の加工機において、加工具の一端とテーブルとの上下方向の位置関係を調整可能な第2駆動部をさらに備えれば、テーブル上に加工材を配置する、テーブル上から加工材や工作物を取り出す、などの操作が行い易くなる。第2駆動部としては、ハンドルを用いて手動で加工具又はテーブルの主軸方向(上下方向)の送り量を操作するもの、ボタン操作や遠隔操作(例えば、スマホアプリ操作)などにより自動で加工具又はテーブルの主軸方向の送り速度を操作するもの、などを用いることができる。
【0013】
また、第3態様の加工機において、突出部及びテーブルが、加工具が交換された場合に、突出部もこれに合わせて交換可能なように構成されていれば、加工具の種類(例えば、切り抜き用ビット、エッジ加工用ビット、溝切用ビット、表面削り用ビットなど)や、そのサイズに応じて、突出部を変更し、様々な加工具に対して、高精度の切削加工が可能となる。
【0014】
本発明の第4態様は、上記の第3態様に係る加工機に用いられる加工補助具であって、下面に加工材が固定される板状の本体と、本体の上面に取り付けられる型部と、を備え、型部は、加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、加工具を型部の形状に沿って動かすためのひな型用途として用いられる、ことを特徴とする加工補助具、を要旨とする。このような加工補助具を用いれば、加工材の加工時に、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動くため、加工具を型部の形状と同じに動かすことが可能となる。結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0015】
本発明の第5態様は、主軸、及び刃部としての一端を持つ円柱状の加工具の他端を、加工具の一端が上方向を向く状態で保持可能な保持部と、保持部に保持された加工具を、主軸を中心に回転可能な第1駆動部と、を備える加工機を取付可能な加工機スタンドであって、下面、上面、及び加工具の一端を下面側から上面側に突出させる穴部を有し、下面に加工機を取付可能で、上面に加工材を搭載可能なテーブルと、テーブルの上方から下方に向かって配置され、主軸に一致する軸を持ち、主軸に対し垂直方向における径がその垂直方向における加工具の刃部の径と同じである円柱状又は円筒状の突出部と、を備え、突出部は、加工材の加工時に、加工具を、加工材に対し、加工材の上面に取り付けられる型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる、ことを特徴とする加工機スタンド、を要旨とする。このような加工機スタンドを用いれば、加工機による加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動かすことが可能になる。従って、加工具は、型部の形状と同じに動き、結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことができる。
【0016】
また、第5態様の加工機において、突出部の一端とテーブルとの上下方向の位置関係を調整可能な第2駆動部をさらに備えれば、テーブル上に加工材を配置する、テーブル上から加工材や工作物を取り出す、などの操作が行い易くなる。第2駆動部としては、ハンドルを用いて手動で加工具又はテーブルの主軸方向(上下方向)の送り量を操作するもの、ボタン操作や遠隔操作(例えば、スマホアプリ操作)などにより自動で加工具又はテーブルの主軸方向の送り速度を操作するもの、などを用いることができる。
【0017】
また、第5態様の加工機において、突出部が、加工具が交換された場合にそれに合わせて交換可能なように構成されていれば、加工具の種類(例えば、切り抜き用ビット、エッジ加工用ビット、溝切用ビット、表面削り用ビットなど)や、そのサイズに応じて、突出部を変更し、様々な加工具に対して、高精度の切削加工が可能となる。
【0018】
本発明の第6態様は、上記の第5態様に係る加工機スタンドに用いられる加工補助具であって、下面に加工材が固定される板状の本体と、本体の上面に取り付けられる型部と、を備え、型部は、加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、加工具を型部の形状に沿って動かすためのひな型用途として用いられる、ことを特徴とする加工補助具、を要旨とする。このような加工補助具を用いれば、加工機による加工材の加工時に、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動くため、加工具を型部の形状と同じに動かすことが可能となる。結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の各態様によれば、NC機能を持たなくても、手動で高精度を確保できる加工機、加工機用スタンド、及び加工補助具を実現することができる。これにより、コストの増大なく、少量多品種や同一のものを数点といった加工にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る加工機を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の加工機に用いられ、型部が外形のみを持つ楕円形状である加工補助具の第1例を示す平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のII-II線に沿う断面図である。
図2(c)は、
図2(b)の加工補助具に加工材が搭載された状態を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1の加工機及び
図2(a)~
図2(c)の加工補助具を用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図3(b)は、
図3(a)のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1の加工機及び
図2(a)~
図2(c)の加工補助具を用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図4(b)は、
図4(a)のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図1の加工機及び
図2(a)~
図2(c)の加工補助具を用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図5(b)は、
図5(a)のV-V線に沿う断面図である。
【
図6】
図6は、
図3~
図5の加工材の加工方法により製造された工作物を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、
図1の加工機に用いられ、型部が外形と内形を持つ枠形の楕円形状である加工補助具の第2例を示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のVII-VII線に沿う断面図である。
図7(c)は、
図7(b)の加工補助具に加工材が搭載された状態を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図1の加工機及び
図7(a)~
図7(c)の加工補助具を用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図8(b)は、
図8(a)のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9(a)は、
図1の加工機及び
図7(a)~
図7(c)の加工補助具を用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図9(b)は、
図9(a)のIX-IX線に沿う断面図である。
【
図10】
図10(a)は、
図1の加工機及び
図7(a)~
図7(c)の加工補助具を用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図10(b)は、
図10(a)のX-X線に沿う断面図である。
【
図12】
図12(a)は、
図2の加工補助具の型部が十字形状に変更された第1変形例を示す平面図である。
図12(b)は、
図2の加工補助具の型部が三日月形状に変更された第2変形例を示す平面図である。
図12(c)は、
図2の加工補助具の型部がハート形状に変更された第3変形例を示す平面図である。
【
図13】
図13(a)は、
図2の加工補助具の型部が四角形状(大)に変更された第4変形例を示す平面図である。
図13(b)は、
図2の加工補助具の型部が四角形状(小)に変更された第5変形例を示す平面図である。
図13(c)は、
図13(a)及び
図13(b)の加工補助具により枠形状を有する工作物が製造されることを示す平面図である。
【
図14】
図14(a)は、
図2の加工補助具の型部が矩形状に変更された第6変形例を示す平面図である。
図14(b)は、
図14(a)の加工補助具により矩形状の端部を有する工作物が製造されることを示す平面図である。
【
図15】
図15(a)は、
図2の加工補助具の型部が円形状に変更された第7変形例を示す平面図である。
図15(b)は、
図15(a)の加工補助具の型部の位置をずらした第8変形例を示す平面図である。
図15(c)は、
図15(b)の加工補助具の型部の位置を更にずらした第9変形例を示す平面図である。
【
図16】
図16(a)は、
図15(c)の加工補助具の型部の位置をずらした第10変形例を示す平面図である。
図16(b)は、
図16(a)の加工補助具の型部の位置を更にずらした第11変形例を示す平面図である。
図16(c)は、
図15(a)~
図15(c)及び
図16(a)~
図16(b)の型部のそれぞれの位置関係について本体を基準に示すものである。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る加工機を示す図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態に係る加工機スタンドを示す図である。
【
図20】
図20(a)は、
図18の加工機及び
図19の加工機スタンドに用いられ、、型部が外形のみを持つ楕円形状である加工補助具の例を示す平面図である。
図20(b)は、
図20(a)のXX-XX線に沿う断面図である。
図20(c)は、
図20(b)の加工補助具に加工材が搭載された状態を示す断面図である。
【
図23】
図23(a)は、
図18の加工機又は
図19の加工機スタンドと、
図20(a)~
図20(b)の加工補助具とを用いた加工材の加工方法における一工程を示す平面図である。
図23(b)は、
図23(a)のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0022】
以下の説明において、加工具(例えば、ビット)は、主軸、及び刃部としての一端を持つ全体として円柱状を有するものとする。そして、上方向、上方、上側とは、それぞれ加工具の主軸に平行な方向であって、地球の重力が向かう方向とは概ね逆の方向をいうものとする。また、下方向、下方、下側とは、それぞれ加工具の主軸に平行な方向であって、概ね地球の重力が向かう方向をいうものとする。更に、左右方向とは、加工具の主軸に垂直な方向であって、加工機、加工機スタンド、及び加工補助具の使用者から見たときの左右方向を言うものとする。また、前後方向とは、加工具の主軸に垂直な方向であって、加工機、加工機スタンド、及び加工補助具の使用者から見たときの前後方向を言うものとする。
【0023】
(第1実施形態)
・加工機
図1は、本発明の第1実施形態に係る加工機を示している。
第1実施形態に係る加工機は、加工具11を保持可能な保持部12と、保持部12に保持された加工具11を、主軸AXを中心に回転可能な第1駆動部13と、加工面(加工具11に対向する面)が上方向を向く状態で加工材を搭載可能なテーブル14と、テーブル14の上面かつその中央部に取り付けられる突出部16と、を備えている。保持部12、第1駆動部13、及びテーブル14は、例えば、これらを支えるコラムと呼ばれる柱状部材10Bに取り付けられる。また、柱状部材10Bは、本加工機を、地面、床、机などの下地上に安定して配置するために、ベースと呼ばれる土台10Aに取り付けられる。
【0024】
加工具11は、その一端が刃部SPであり、その他端が柄部である。保持部12は、加工具11の他端の柄部を、加工具11の一端の刃部SPが下方向を向く状態で保持可能となっている。加工具11は、刃部SPの形によってその機能、例えば、切り抜き、溝掘り、穴開け、彫刻、研磨などを変化させることができる。保持部12は、加工具11の他端の柄部を掴んで保持し、主軸AXを中心とした回転運動を加工具11に伝える。第1駆動部13は、電動モータを備えており、加工具11に伝える回転運動を発生させる。これにより、保持部12に保持された加工具11は、主軸AXを中心に回転可能となっている。
【0025】
第2駆動部15は、加工具11の一端とテーブル14との主軸方向(上下方向)の位置関係を調整する機能を有する。第2駆動部15は、手動で、加工具11の上下方向の送り量を操作するもの、例えば、手動で回転力を発生させるハンドルと、その回転力を加工具11及び保持部12の直線の動き(上下方向の動き)に変換するラックアンドピニオンと、を備えたものであってもよいし、又はボタン操作や遠隔操作(例えば、スマホアプリ操作)などにより、自動で、加工具11及び保持部12の上下方向の送り速度を操作するものであってもよい。
【0026】
更に、これらに代えて、第2駆動部15は、加工具11及び保持部12ではなく、テーブル14の上下方向の位置を変えるものであってもよい。また、第2駆動部15は、加工具11及び保持部12の上下方向の位置とテーブル14の上下方向の位置との双方を変えるものであってもよい。
【0027】
第2駆動部15は、省略することもできるが、これを備えることで、テーブル14上に加工材を配置する、テーブル14上から加工材や工作物を取り出す、などの操作が行い易くなる、といった効果が得られる。
【0028】
テーブル14は、加工材の加工面が加工具11の一端の刃部SPに対向するように、その加工面が上方向を向く状態で加工材を搭載し、使用者が本加工機を用いて加工材を加工し易くするためのものである。テーブル14の上面は、主軸AXに垂直、かつ平坦であるのが望ましい。また、テーブル14の上面には、同心円状や放射状の切り溝や模様など、加工材の加工の補助となるような工夫が施されていてもよい。本例では、テーブル14は、円盤型を有しているが、テーブルの形状は、これに限られず、方形板など、その他の形状に代えることもできる。
【0029】
テーブル14の中央部には、テーブル14の上面から上方に突出する突出部16が設けられる。突出部16は、保持部12に保持された加工具11の主軸(回転軸)AXに一致する軸を持ち、加工具11と同様の外形を持つように、円柱状又は円筒状の形状を有する。また、突出部16は、主軸AXに対し垂直方向における径φ1がその垂直方向における加工具11の刃部SPの径φ2と同じである。ここで、加工具11の刃部SPの径φ2とは、刃部SPの径が一定の場合にはその径を意味し、刃部SPの径が変化する場合にはその最大径を意味する。
【0030】
そして、この突出部16は、テーブル14上の加工材を加工するときに、加工具11を、その加工材に対し、加工材の下面に取り付けられる型部(詳細については、後述する)の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる。
【0031】
この位置合わせ用途に関し、突出部16の突出量(高さ)hは、加工材の下面に取り付けられる型部の厚さと同じ、又はその厚さよりも小さく設定されていることが望ましい。これは、本加工機を用いて加工材を加工する際に、使用者が加工補助具(詳細については、後述する)を操作し易いようにし、位置合わせ精度を向上させるための工夫である。具体的には、加工材の加工時に、加工補助具(加工材)が、上下方向にガタガタ、ブレないようにするためである。即ち、突出部16の突出量hが加工材の下面に取り付けられる型部の厚さよりも大きくなると、型部とテーブル14の上面との間にスペースが発生し、加工材の加工時に加工補助具が安定しないので、上記の突出量hの規定は、これを防ぐためのものである。
【0032】
また、この位置合わせ用途を更に進化させると、突出部16及びテーブル14は、加工具11が交換された場合に、突出部16もこれに合わせて交換可能なように構成されているのが望ましい。なぜなら、加工の種類が変われば、加工具の種類(例えば、切り抜き用ビット、エッジ加工用ビット、溝切用ビット、表面削り用ビットなど)も変わるからである。即ち、加工具11の刃部SPの径φ2は、加工具11の種類に応じて変化するので、本加工機を用いて様々な加工を施行するに当たっては、これら様々な加工に対しても高精度を確保すべく、突出部16は、交換可能なように構成されるのが望ましい。
【0033】
このような第1実施形態に係る加工機を用いれば、加工材の加工時に、突出部16を型部の形状に沿って動かすことで、突出部16と主軸AXを同じにする加工具11も、型部の形状に沿って動くことになる。従って、加工具11を型部の形状と同じに動かすことが可能となり、結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0034】
・加工補助具の第1例
図2(a)は、
図1の加工機に用いられ、型部が外形のみを持つ楕円形状である加工補助具の第1例を示している。
図2(b)は、
図2(a)のII-II線に沿う断面図である。
図2(c)は、
図2(b)の加工補助具に加工材が搭載された状態を示している。
【0035】
この加工補助具は、上面側に加工材26が固定される板状の本体20と、本体20の下面に取り付けられる型部21と、を備える。加工材26は、特に限定されることはないが、主に、樹脂(プラスチック材)や木材などである。本体20は、例えば、アクリル、FRP(Fiber Reinforced Plastics)などの樹脂、アルミ合金、鉄などの金属、ソーダガラスなどのガラス、ラワン材などの木材から構成することができる。本体20は、十分な強度を持っていることが望ましいので、その観点から、材料や厚さが適宜選択される。また、本体20は、加工材26の加工時に、使用者の型部21の視認性を向上させるため、透明材料、例えば、透明アクリル板、ガラス板など、とするのが望ましい。
【0036】
型部21は、加工材26の加工時に、
図1の突出部16を、型部21の形状に沿って動かすことで、
図1の加工具11を、型部21の形状(外形)に沿って動かすためのひな型用途として用いられる。型部21は、本体20と同様に、例えば、アクリル、FRPなどの樹脂、アルミ合金、鉄などの金属、ソーダガラスなどのガラス、ラワン材などの木材から構成することができる。本体20と型部21とが同じ材料から構成される場合、これらは、一体化(一体成型)されていてもよい。また、本体20と型部21とが異なる材料から構成される場合には、本体20を透明材料から構成し、型部21を不透明材料から構成する、といったことも可能である。
【0037】
更に、この加工補助具に必須の構成要素ではないが、加工材26の加工時に、加工補助具の破損を防止する、使用者の操作性を向上させるなど、といった目的のため、以下の構成要素を備えていてもよい。
【0038】
例えば、本体20の上面には、板状のバッファ層22が設けられていてもよい。バッファ層22は、加工材26の加工時に、
図1の加工具11の刃部SPの先端が本体20又はその先まで突き抜けて、加工補助具が破損する、といった事態を防止するためのものである。このような観点から、バッファ層22は、加工具11よりも柔らかい材料、例えば、樹脂、木材などから構成するのが望ましい。また、上記の型部21の視認性を向上させるためには、バッファ層22も、透明材料、例えば、透明アクリル板などから構成するのが望ましい。バッファ層22は、加工具11の刃部SPの突き抜け防止、という観点から、材料や厚さが適宜選択される。また、本体20がバッファ層22の機能を兼ね備えているときは、バッファ層22を省略することもできる。
【0039】
また、本体20の左右方向の端部には、加工材26を固定するための固定部、及び使用者の操作性を良くするための取っ手25がそれぞれ設けられていてもよい。本例では、固定部は、加工材26を嵌め込む枠部23と、加工材26を固定するネジ部24とを備える。但し、固定部は、加工材26を固定できれば、これに限られず、様々な構成を採用することができる。取っ手25は、本体20の左側にひとつ、本体の右側にひとつ、合計2つ設けられている。左側の取っ手25は、使用者の左手が握る部分であり、右側の取っ手25は、使用者の右手が握る部分である。このような取っ手25を設けておくことで、使用者は、本加工補助具を、上下方向、左右方向、及び前後方向に、それぞれ違和感なく、操作性よく、自由に、動かすことが可能となる。
【0040】
このような加工補助具を用いれば、加工材26の加工時に、
図1の突出部16と主軸AXを同じにする加工具11も、型部21の形状に沿って動くため、加工具11を型部26の形状(外形)と同じに動かすことが可能となる。結果として、加工材26から型部21の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材26の端部を型部21の形状と同じに切削加工する、又は加工材26の表面に型部21の形状(外形)と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0041】
・第1例の加工補助具を用いた加工方法
次に、上記の加工機及び加工補助具を用いて加工材の加工を行う加工方法の例を、
図3~
図6を参照しつつ説明する。ここでは、一例として、加工材から、加工補助具の型部の形状と同じ形状の工作物を製造するときの加工方法について説明する。
なお、以下の説明においては、説明を分かり易くするため、図面上、加工機側に関しては、加工具11、テーブル14,及び突出部16のみを示し、加工補助具側に関しては、本体20、型部21、バッファ層22、及び加工材26のみを示すことにする。
【0042】
まず、
図3に示すように、加工補助具に加工材26を搭載かつ固定する。その後、使用者は、加工補助具の取っ手を持ち、加工補助具を加工機のテーブル14上に移動させる。この時、加工補助具の型部21がテーブル14の上面に接触し、かつ型部21の外形の一部(切削開始地点)が突出部16に接触するようにする。この状態で、加工機を駆動し、加工具11を回転させる(切削可能状態にする)。引き続き、加工機を操作し、加工具11の先端(刃部)を下方に移動させ、加工材26の切削を開始する。また、加工具11の先端を、更に下方に移動させて加工材26を貫通させる(切り抜き)。ここで、加工材26の下地としては、バッファ層22が存在するので、加工具11の先端が加工材26を突き抜けても、加工補助具を損傷させることはない。
【0043】
次に、
図4及び
図5に示すように、使用者は、加工補助具を左右方向及び前後方法に操作することで、加工機の突出部16を、切削開始地点から、加工補助具の型部21の形状(外形)に沿って、再び、切削開始地点に戻るまで(切削終了地点まで)動かす。この時、加工機の突出部16は、加工補助具の型部21の形状に沿って動くことになる。同様に、突出部16の軸と同じ主軸AXを持つ加工具11も、型部21の形状に沿って動くことになる。従って、
図4(切削中間地点)及び
図5(切削終了地点)に示すように、加工機の加工具11を加工補助具の型部21の形状と同じに動かすことが可能となる。
【0044】
結果として、
図6に示すように、加工材26から、加工補助具の型部21の形状(外形)と同じ形状の工作物26gを製造することができる。
【0045】
・加工補助具の第2例
図7(a)は、
図1の加工機に用いられ、型部が外形と内形を持つ枠形の楕円形状である加工補助具の第2例を示している。
図7(b)は、
図7(a)のVII-VII線に沿う断面図である。
図7(c)は、
図7(b)の加工補助具に加工材が搭載された状態を示している。
【0046】
この加工補助具は、第1例(
図2(a)~
図2(c))と比べると、型部21の形状に特徴を有する。それ以外の点は、第1例と同じである。従って、以下の説明においては、第1例と同じ要素については同じ符号を付すことで、その詳細な説明を省略する。
【0047】
第2例の加工補助具は、上面側に加工材26が固定される板状の本体20と、本体20の下面に取り付けられる枠形の楕円形状の型部21と、を主要な構成要件とする。また、型部21は、加工材26の加工時に、
図1の突出部16を、型部21の形状に沿って動かすことで、
図1の加工具11を、型部21の形状(枠形の外形又は内形)に沿って動かすためのひな型用途として用いられる。
【0048】
型部21は、第1例と同様に、例えば、アクリル、FRPなどの樹脂、アルミ合金、鉄などの金属、ソーダガラスなどのガラス、ラワン材などの木材から構成することができる。本体20と型部21とが同じ材料から構成される場合、これらは、一体化(一体成型)されていてもよい。また、本体20と型部21とが異なる材料から構成される場合には、本体20を透明材料から構成し、型部21を不透明材料から構成する、といったことも可能である。
【0049】
このような加工補助具によっても、加工材26の加工時に、
図1の突出部16と主軸AXを同じにする加工具11は、型部21の形状(外形又は内形)に沿って動くため、加工具11を型部26の形状と同じに動かすことが可能となる。結果として、加工材26から型部21の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材26の端部を型部21の形状と同じに切削加工する、又は加工材26の表面に型部21の形状(外形)と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0050】
・第2例の加工補助具を用いた加工方法
次に、
図1の加工機及び上記の第2例の加工補助具を用いて加工材の加工を行う加工方法の例を、
図8~
図11を参照しつつ説明する。ここでは、一例として、加工材から、加工補助具の型部の形状(内形)と同じ形状の工作物を製造するときの加工方法について説明する。
なお、以下の説明においては、説明を分かり易くするため、図面上、加工機側に関しては、加工具11、テーブル14,及び突出部16のみを示し、加工補助具側に関しては、本体20、型部21、バッファ層22、及び加工材26のみを示すことにする。
【0051】
まず、
図8に示すように、加工補助具に加工材26を搭載かつ固定する。その後、使用者は、加工補助具の取っ手を持ち、加工補助具を加工機のテーブル14上に移動させる。この時、加工補助具の型部21がテーブル14の上面に接触し、かつ型部21の内形の一部(切削開始地点)が突出部16に接触するようにする。この状態で、加工機を駆動し、加工具11を回転させる(切削可能状態にする)。引き続き、加工機を操作し、加工具11の先端(刃部)を下方に移動させ、加工材26の切削を開始する。また、加工具11の先端を、更に下方に移動させて加工材26を貫通させる(切り抜き)。ここで、加工材26の下地としては、バッファ層22が存在するので、加工具11の先端が加工材26を突き抜けても、加工補助具を損傷させることはない。
【0052】
次に、
図9及び
図10に示すように、使用者は、加工補助具を左右方向及び前後方法に操作することで、加工機の突出部16を、切削開始地点から、加工補助具の型部21の形状(内形)に沿って、再び、切削開始地点に戻るまで(切削終了地点まで)動かす。この時、加工機の突出部16は、加工補助具の型部21の形状に沿って動くことになる。同様に、突出部16の軸と同じ主軸AXを持つ加工具11も、型部21の形状に沿って動くことになる。従って、
図9(切削中間地点)及び
図10(切削終了地点)に示すように、加工機の加工具11を加工補助具の型部21の形状と同じに動かすことが可能となる。
【0053】
結果として、
図11に示すように、加工材26から、加工補助具の型部21の形状(内形)と同じ形状の工作物26gを製造することができる。
【0054】
・加工補助具の変形例
次に、
図2の加工補助具の型部21を変更することで、加工材について様々な切削ができることについて、
図12~
図17を参照しつつ説明する。これらの説明においては、その説明を簡単にするため、
図2の構成要素のうち、本体20と型部21のみを図示して説明することにする。
【0055】
まず、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する場合について、例えば、
図12(a)に示すように、加工補助具の型部21を十字形状に変更することで、加工材から型部21の形状と同じ形状の十字形状の工作物を得ることができる。同様に、
図12(b)及び(c)に示すように、加工補助具の型部21を三日月形状及びハート形状にそれぞれ変更することで、加工材から型部21の形状と同じ形状の三日月形状及びハート形状の工作物をそれぞれ得ることができる。
【0056】
また、
図13(a)に示すような、加工補助具の型部21が四角形状(大)に変更された加工補助具と、
図13(b)に示すような、加工補助具の型部21が四角形状(小)に変更された加工補助具と、を用いれば、
図13(c)に示すような、両者のサイズ差に相当する幅を持つ枠形状の工作物26gを製造することができる。
【0057】
次に、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する場合について、例えば、
図14(a)に示すように、加工補助具の型部21を矩形状に変更することで、
図14(b)に示すように、加工材から、端部の形状が型部21の形状と同じ矩形状である工作物26edgを製造することができる。
【0058】
次に、加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く場合について、例えば、
図15(a)~(c)及び
図16(a)~(b)に示すように、それぞれの相対的位置がずれた同じ大きさの5つの円形状の型部21a,21b,21c,21d,21eを用いて、加工材の表面を削る加工を行えば、
図17に示すように、加工材の表面に五輪形状(模様)26desを描くことができる。なお、本体20を基準にして、各型部21a,21b,21c,21d,21eの相対的位置を図示すると、
図16(c)に示すようになる。
【0059】
以上、説明したように、第1実施形態によれば、加工材の加工時に、突出部を型部の形状に沿って動かすことで、突出部と主軸を同じにする加工具も、型部の形状に沿って動かすことが可能になる。従って、NC機能を持たなくても、手動で高精度を確保できる加工機及び加工補助具を実現することができる。これにより、コストの増大なく、少量多品種や同一のものを数点といった加工にも対応することができる。
【0060】
(第2実施形態)
・加工機
図18は、本発明の第2実施形態に係る加工機を示している。
第2実施形態に係る加工機は、加工具11を保持可能な保持部12と、保持部12に保持された加工具11を、主軸AXを中心に回転可能な第1駆動部13と、下面、上面、及び加工具11の一端を下面側から上面側に突出させる穴部OPを有し、加工面が下方向を向く状態で加工材を搭載可能なテーブル14と、テーブル14の穴部OPの上方から下方に向かって配置される突出部16と、を備えている。保持部12、第1駆動部13、テーブル14、及び突出部16は、例えば、これらを支えるコラムと呼ばれる柱状部材10Bに取り付けられる。また、柱状部材10Bは、本加工機を、地面、床、机などの下地上に安定して配置するために、ベースと呼ばれる土台10Aに取り付けられる。
【0061】
加工具11は、その一端が刃部SPであり、その他端が柄部である。保持部12は、加工具11の他端の柄部を、加工具11の一端の刃部SPが上方向を向く状態で保持可能となっている。加工具11は、刃部SPの形によってその機能、例えば、切り抜き、溝掘り、穴開け、彫刻、研磨などを変化させることができる。保持部12は、加工具11の他端の柄部を掴んで保持し、主軸AXを中心とした回転運動を加工具11に伝える。第1駆動部13は、電動モータを備えており、加工具11に伝える回転運動を発生させる。これにより、保持部12に保持された加工具11は、主軸AXを中心に回転可能となっている。
【0062】
第2駆動部15は、加工具11の一端とテーブル14との主軸方向(上下方向)の位置関係を調整する機能を有する。第2駆動部15は、手動で、加工具11の上下方向の送り量を操作するもの、例えば、手動で回転力を発生させるハンドルと、その回転力を加工具11及び保持部12の直線の動き(上下方向の動き)に変換するラックアンドピニオンと、を備えたものであってもよいし、又はボタン操作や遠隔操作(例えば、スマホアプリ操作)などにより、自動で、加工具11及び保持部12の上下方向の送り速度を操作するものであってもよい。
【0063】
更に、これらに代えて、第2駆動部15は、加工具11及び保持部12ではなく、テーブル14の上下方向の位置を変えるものであってもよい。また、第2駆動部15は、加工具11及び保持部12の上下方向の位置とテーブル14の上下方向の位置との双方を変えるものであってもよい。
【0064】
テーブル14は、加工材の加工面が加工具11の一端の刃部SPに対向するように、その加工面が下方向を向く状態で加工材を搭載し、使用者が本加工機を用いて加工材を加工し易くするためのものである。テーブル14の上面は、主軸AXに垂直、かつ平坦であるのが望ましい。また、テーブル14の上面には、同心円状や放射状の切り溝や模様など、加工材の加工の補助となるような工夫が施されていてもよい。本例では、テーブル14は、円盤型を有しているが、テーブルの形状は、これに限られず、方形板など、その他の形状に代えることもできる。
【0065】
テーブル14の中央部の穴部OPの上方には、テーブル14の上方から下方に向かって延びる突出部16が設けられる。突出部16は、保持部12に保持された加工具11の主軸(回転軸)AXに一致する軸を持ち、加工具11と同様の外形を持つように、円柱状又は円筒状の形状を有する。また、突出部16は、主軸AXに対し垂直方向における径φ1がその垂直方向における加工具11の刃部SPの径φ2と同じである。ここで、加工具11の刃部SPの径φ2とは、刃部SPの径が一定の場合にはその径を意味し、刃部SPの径が変化する場合にはその最大径を意味する。
【0066】
そして、この突出部16は、テーブル14上の加工材を加工するときに、加工具11を、その加工材に対し、加工材の下面に取り付けられる型部(詳細については、後述する)の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる。
【0067】
この位置合わせ用途に関し、第2実施形態では、テーブル14に突出部16が存在しない。即ち、テーブル14の上面は、平坦であり、かつ、この平坦な上面上には、加工材の加工面が接触するのみである(詳細については、後述する)。従って、使用者は、上記の第1実施形態の加工機及び加工補助具を用いる場合に比べて、加工補助具(詳細については、後述する)を操作し易く、結果として、位置合わせ精度を更に向上させることができる。
【0068】
また、突出部16は、加工具11が交換された場合にそれに合わせて交換可能なように構成されているのが望ましい。なぜなら、加工の種類が変われば、加工具の種類(例えば、切り抜き用ビット、エッジ加工用ビット、溝切用ビット、表面削り用ビットなど)も変わるからである。即ち、加工具11の刃部SPの径φ2は、加工具11の種類に応じて変化するので、本加工機を用いて様々な加工を施行するに当たっては、これら様々な加工に対しても高精度を確保すべく、突出部16は、交換可能なように構成されるのが望ましい。
【0069】
このような第2実施形態に係る加工機を用いれば、加工材の加工時に、突出部16を型部の形状に沿って動かすことで、突出部16と主軸AXを同じにする加工具11も、型部の形状に沿って動くことになる。従って、加工具11を型部の形状と同じに動かすことが可能となり、結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0070】
(第3実施形態)
・加工機
近年、より手軽かつ簡単に、をコンセプトに、例えば、
図1及び
図18のような加工機から、ベース10A、コラム10B、テーブル14、第2駆動部15などを取り除き、コンパクト化、及び軽量化したルータ(ミニルータを含む)などの加工機(ハンディタイプのものを含む)が市場に出回っている。このような加工機は、どこでも手軽に加工機を使用できるというメリットがある反面、十分な加工精度を得るには、熟練した技が必要になるなど、少し使い勝手が悪いものとなっている。
【0071】
そこで、このような市販されている加工機に対しても、本発明を手軽に適用し、どのような加工機を用いても、必ず一定の加工精度を得ることができないか、本発明者は、検討かつ検証した。その結果、そのような加工機に使用される加工機スタンド(
図1及び
図18のテーブル14に相当)を、加工機とは独立に工夫することで、第1及び第2実施形態に係る加工機と同じ効果を得ることができる、という結論に至った。以下では、その結論に至った加工機スタンドの例について説明する。
【0072】
図19は、本発明の第3実施形態に係る加工機スタンドを示している。
第3実施形態に係る加工機スタンドは、下面、上面、及び加工機R/Tの加工具11の一端を下面側から上面側に突出させる穴部OPを有し、加工面が下方向を向く状態で加工材を搭載可能なテーブル14と、テーブル14の穴部OPの上方から下方に向かって配置される突出部16と、を備える。テーブル16は、ネジやフックなどの取付部材17によって、その下面に、加工機R/Tを取付可能なように構成されている。即ち、加工機R/Tは、テーブル14の下面において、テーブル14にぶら下がった状態となっている。また、加工機R/Tの上下方向の位置を調整するため、取付部材17は、その長さ(加工機R/Tとテーブル14との上下方向の距離)を調整可能となっている。
【0073】
加工機R/Tは、市販の加工機であり、特にその種類に限定されることはないが、例えば、主な構成要素として、主軸AX、及び刃部SPとしての一端を持つ円柱状の加工具11の他端を、加工具11の一端が上方向を向く状態で保持可能な保持部12と、保持部12に保持された加工具11を、主軸AXを中心に回転可能な第1駆動部13と、を備えている。
【0074】
テーブル14及び突出部16は、例えば、これらを支えるコラムと呼ばれる柱状部材10Bに取り付けられる。また、柱状部材10Bは、本加工機スタンドを、地面、床、机などの下地上に安定して配置するために、ベースと呼ばれる土台10Aに取り付けられる。
【0075】
第2駆動部15は、突出部16の一端とテーブル14との主軸方向(上下方向)の位置関係を調整する機能を有する。第2駆動部15は、手動で、突出部16の上下方向の送り量を操作するもの、例えば、手動で回転力を発生させるハンドルと、その回転力を加工具11及び保持部12の直線の動き(上下方向の動き)に変換するラックアンドピニオンと、を備えたものであってもよいし、又はボタン操作や遠隔操作(例えば、スマホアプリ操作)などにより、自動で、突出部16の上下方向の送り速度を操作するものであってもよい。
【0076】
更に、これらに代えて、第2駆動部15は、突出部16ではなく、テーブル14及び加工機R/Tの上下方向の位置を変えるものであってもよい。また、第2駆動部15は、突出部16の上下方向の位置と、テーブル14及び加工機R/Tの上下方向の位置との双方を変えるものであってもよい。
【0077】
テーブル14は、加工材の加工面が加工具11の一端の刃部SPに対向するように、その加工面が下方向を向く状態で加工材を搭載し、使用者が本加工機を用いて加工材を加工し易くするためのものである。テーブル14の上面は、主軸AXに垂直、かつ平坦であるのが望ましい。また、テーブル14の上面には、同心円状や放射状の切り溝や模様など、加工材の加工の補助となるような工夫が施されていてもよい。本例では、テーブル14は、円盤型を有しているが、テーブルの形状は、これに限られず、方形板など、その他の形状に代えることもできる。
【0078】
テーブル14の中央部の穴部OPの上方には、テーブル14の上方から下方に向かって延びる突出部16が設けられる。突出部16は、保持部12に保持された加工具11の主軸(回転軸)AXに一致する軸を持ち、加工具11と同様の外形を持つように、円柱状又は円筒状の形状を有する。また、突出部16は、主軸AXに対し垂直方向における径φ1がその垂直方向における加工具11の刃部SPの径φ2と同じである。ここで、加工具11の刃部SPの径φ2とは、刃部SPの径が一定の場合にはその径を意味し、刃部SPの径が変化する場合にはその最大径を意味する。
【0079】
そして、この突出部16は、テーブル14上の加工材を加工するときに、加工具11を、その加工材に対し、加工材の下面に取り付けられる型部(詳細については、後述する)の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる。
【0080】
この位置合わせ用途に関し、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、テーブル14に突出部16が存在しない。即ち、テーブル14の上面は、平坦であり、かつ、この平坦な上面上には、加工材の加工面が接触するのみである(詳細については、後述する)。従って、使用者は、上記の第1実施形態の加工機及び加工補助具を用いる場合に比べて、加工補助具(詳細については、後述する)を操作し易く、結果として、位置合わせ精度を更に向上させることができる。
【0081】
また、突出部16は、加工具11が交換された場合にそれに合わせて交換可能なように構成されているのが望ましい。なぜなら、加工の種類が変われば、加工具の種類(例えば、切り抜き用ビット、エッジ加工用ビット、溝切用ビット、表面削り用ビットなど)も変わるからである。即ち、加工具11の刃部SPの径φ2は、加工具11の種類に応じて変化するので、本加工機を用いて様々な加工を施行するに当たっては、これら様々な加工に対しても高精度を確保すべく、突出部16は、交換可能なように構成されるのが望ましい。
【0082】
このような第3実施形態に係る加工機スタンドを用いれば、その加工機スタンドに加工機R/Tを取り付けたときに、第2実施形態の加工機と同じような構成になる。即ち、加工材の加工時に、突出部16を型部の形状に沿って動かすことで、突出部16と主軸AXを同じにする加工具11も、型部の形状に沿って動くことになる。従って、加工具11を型部の形状と同じに動かすことが可能となり、結果として、加工材から型部の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材の端部を型部の形状と同じに切削加工する、又は加工材の表面に型部の形状と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0083】
(加工補助具の例)
次に、第2実施形態に係る加工機及び第3実施形態に係る加工機スタンドに用いる加工補助具の例について説明する。
第2及び第3実施形態においても、加工補助具としては、第1実施形態で説明したように、型部21として、例えば、外形のみを有するもの(
図2)、外形と内形を持つ枠形を有するもの(
図7)、の双方を用いることができる。
以下、型部21として、外形のみを有するものを使用した場合における、第2及び第3実施形態に用いる加工補助具の例を説明する。
【0084】
図20(a)は、
図18の加工機又は
図19の加工機スタンドに用いられ、型部が外形のみを持つ楕円形状である加工補助具の例を示している。
図20(b)は、
図20(a)のXX-XX線に沿う断面図である。
図20(c)は、
図20(b)の加工補助具に加工材が搭載された状態を示している。
【0085】
この加工補助具は、下面側に加工材26が固定される板状の本体20と、本体20の上面に取り付けられる型部21と、を備える。加工材26は、特に限定されることはないが、主に、樹脂(プラスチック材)や木材などである。本体20は、例えば、アクリル、FRPなどの樹脂、アルミ合金、鉄などの金属、ソーダガラスなどのガラス、ラワン材などの木材から構成することができる。本体20は、十分な強度を持っていることが望ましいので、その観点から、材料や厚さが適宜選択される。
【0086】
型部21は、加工材26の加工時に、
図18又は
図19の突出部16を、型部21の形状に沿って動かすことで、
図18又は
図19の加工具11を、型部21の形状(外形)に沿って動かすためのひな型用途として用いられる。型部21は、本体20と同様に、例えば、アクリル、FRPなどの樹脂、アルミ合金、鉄などの金属、ソーダガラスなどのガラス、ラワン材などの木材から構成することができる。本体20と型部21とが同じ材料から構成される場合、これらは、一体化(一体成型)されていてもよい。また、本体20と型部21とは、異なる材料から構成されていてもよい。本例では、型部21は、加工補助具の最上部に配置されるので、第1実施形態とは異なり、本体20などを透明材料から構成しなくても、使用者が容易に型部21を視認することができる。
【0087】
更に、この加工補助具に必須の構成要素ではないが、第1実施形態と同様に、加工材26の加工時に、加工補助具の破損を防止する、使用者の操作性を向上させるなど、といった目的のため、以下の構成要素を備えていてもよい。
【0088】
例えば、本体20の下面には、板状のバッファ層22が設けられていてもよい。バッファ層22は、加工材26の加工時に、
図18又は
図19に示す加工具11の刃部SPの先端が本体20又はその先まで突き抜けて、加工補助具が破損する、といった事態を防止するためのものである。このような観点から、バッファ層22は、加工具11よりも柔らかい材料、例えば、樹脂、木材などから構成するのが望ましい。バッファ層22は、加工具11の刃部SPの突き抜け防止、という観点から、材料や厚さが適宜選択される。また、本体20がバッファ層22の機能を兼ね備えているときは、バッファ層22を省略することもできる。
【0089】
また、本体20の左右方向の端部には、加工材26を固定するための固定部、及び使用者の操作性を良くするための取っ手25がそれぞれ設けられていてもよい。本例では、固定部は、加工材26を嵌め込む枠部23と、加工材26を固定するネジ部24とを備える。但し、固定部は、加工材26を固定できれば、これに限られず、様々な構成を採用することができる。取っ手25は、本体20の左側にひとつ、本体の右側にひとつ、合計2つ設けられている。左側の取っ手25は、使用者の左手が握る部分であり、右側の取っ手25は、使用者の右手が握る部分である。このような取っ手25を設けておくことで、使用者は、本加工補助具を、上下方向、左右方向、及び前後方向に、それぞれ違和感なく、操作性よく、自由に、動かすことが可能となる。
【0090】
このような加工補助具を用いれば、加工材26の加工時に、突出部16と主軸AXを同じにする加工具11も、型部21の形状に沿って動くため、加工具11を型部26の形状(外形)と同じに動かすことが可能となる。結果として、加工材26から型部21の形状と同じ形状の工作物を製造する、加工材26の端部を型部21の形状と同じに切削加工する、又は加工材26の表面に型部21の形状(外形)と同じ形状(模様)を描く、などの操作を、高精度に行うことが可能となる。
【0091】
(
図20の加工補助具を用いた加工方法)
次に、
図18の加工機又は
図19の加工機スタンドと、
図20の加工補助具とを用いて、加工材の加工を行う加工方法の例を、
図21~
図24を参照しつつ説明する。ここでは、一例として、加工材から、加工補助具の型部の形状と同じ形状の工作物を製造するときの加工方法について説明する。
なお、以下の説明においては、説明を分かり易くするため、図面上、加工機側に関しては、加工具11、テーブル14,及び突出部16のみを示し、加工補助具側に関しては、本体20、型部21、バッファ層22、及び加工材26のみを示すことにする。
【0092】
まず、
図21に示すように、加工補助具に加工材26を搭載かつ固定する。その後、使用者は、加工補助具の取っ手を持ち、加工補助具を加工機又は加工機スタンドのテーブル14上に移動させる。この時、加工補助具に搭載された加工材26の加工面がテーブル14の上面に接触し、かつ最上部の型部21の外形の一部(切削開始地点)が突出部16に接触するようにする。この状態で、加工機を駆動し、加工具11を回転させる(切削可能状態にする)。引き続き、加工機を操作し、加工具11の先端(刃部)を上方に移動させ、加工材26の切削を開始する。また、加工具11の先端を、更に上方に移動させて加工材26を貫通させる(切り抜き)。ここで、加工材26の上地としては、バッファ層22が存在するので、加工具11の先端が加工材26を突き抜けても、加工補助具を損傷させることはない。
【0093】
次に、
図22及び
図23に示すように、使用者は、加工補助具を左右方向及び前後方法に操作することで、加工機の突出部16を、切削開始地点から、加工補助具の型部21の形状(外形)に沿って、再び、切削開始地点に戻るまで(切削終了地点まで)動かす。この時、加工機の突出部16は、加工補助具の型部21の形状に沿って動くことになる。同様に、突出部16の軸と同じ主軸AXを持つ加工具11も、型部21の形状に沿って動くことになる。従って、
図22(切削中間地点)及び
図23(切削終了地点)に示すように、加工機の加工具11を加工補助具の型部21の形状と同じに動かすことが可能となる。
【0094】
結果として、
図24に示すように、加工材26から、加工補助具の型部21の形状(外形)と同じ形状の工作物26gを製造することができる。
【0095】
(その他の実施形態)
以上、本発明は、第1乃至第3実施形態によって、それぞれ記載及び説明したが、これらの開示は、本発明を限定するものではない。即ち、本発明は、これらの開示から、均等と認められる範囲、更には、当業者が容易に想到し得る範囲まで及ぶものである。
【0096】
例えば、加工機としては、ボール盤、フライス盤などの他、ルータ、トリマなどといったハンディタイプのものについても、本発明を容易に応用することができる。近年においては、DIYの普及により、特に、ミニ・ルータといったペンのように持って使える小型の電動工具も存在する。このような電動工具を本発明に係る加工機スタンドに備え付ければ、素人でも、加工材を高精度に切削加工(研磨、切断、彫刻などを含む)することができる。例えば、プラモデルの組み立てやパーツ製作、ハンドメイドアクセサリのパーツ製作、ミニチュア雑貨の複製、ガラスに文字やイラストを彫刻する、釣り用ルアーの製作、金型の複製など、といったことも容易に行うことが可能になる。
【0097】
(本発明の特許性)
本発明に係る加工機は、加工具を、加工材に対し、加工補助具の型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用の突出部を備えている点に特徴を有する。本発明に係る加工機スタンドも、同じような突出部を備えている点に特徴を有する。このような加工機又は加工機スタンドに備え付けられた突出部は、新規であり、かつ少量多品種の生産、同一のものを数点のみ生産、といったニーズに対し、だれでも、手動で高精度の工作物を生産できる、という顕著な効果を考慮すれば、進歩性も十分に備えたものである。
【0098】
また、本発明に係る加工補助具は、上記の加工機又は加工機スタンドを用いて加工材を加工する際に、加工具を、加工材に対し、所定の方向に動かすためのひな型用の型部を備えている点に特徴を有する。このような加工補助具に備え付けられた型部は、新規であり、かつ上記と同様、少量多品種の生産、同一のものを数点のみ生産、といったニーズに対し、だれでも、手動で高精度の工作物を生産できる、という顕著な効果を考慮すれば、進歩性も十分に備えたものである。
【0099】
従って、本発明に係る加工機、加工機スタンド、及び加工補助具は、いずれも十分に特許性を有するものである。
【0100】
(むすび)
以上、説明したように、本発明の各実施形態によれば、NC機能を持たなくても、手動で高精度を確保できる加工機、加工機用スタンド、及び加工補助具を実現することができる。これにより、コストの増大なく、少量多品種や同一のものを数点といった加工にも対応することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は、一例として提示したものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であるから、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。従って、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明特定事項によって定められる発明及びその均等の範囲にまで及ぶものである。
【符号の説明】
【0101】
10A…土台、
10B…柱状部材、
11 …加工具、
12 …保持部、
13 …第1駆動部、
14 …テーブル、
15 …第2駆動部、
16 …突出部、
17 …取付部材、
20 …本体、
21 …型部、
22 …バッファ層
23 …枠部、
24 …ネジ部、
25 …取っ手、
26 …加工材、
SP …刃部、
R/T…加工機。
【要約】
【課題】NC機能を持たなくても、手動で高精度を確保できる加工機を実現する。
【解決手段】加工機は、主軸AX、及び刃部SPとしての一端を持つ円柱状の加工具11の他端を、加工具11の一端が下方向を向く状態で保持可能な保持部12と、保持部12に保持された加工具11を、主軸AXを中心に回転可能な第1駆動部13と、加工具11の一端に対向するように、上方向を向く状態で加工材を搭載可能なテーブル14と、テーブル14の上面に取り付けられ、主軸AXに一致する軸を持ち、主軸AXに対し垂直方向における径がその垂直方向における加工具11の刃部の径と同じである円柱状又は円筒状の突出部16と、を備える。突出部16は、加工材の加工時に、加工具11を、加工材に対し、加工材の下面の型部の形状と同じに動かすための位置合わせ用途として用いられる。
【選択図】
図1