(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】パルス化アセンブリ及び電力供給装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2023505889
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021071165
(87)【国際公開番号】W WO2022023422
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508142413
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー スプウカ ズ オグラニショナ オドポヴィヂャルノスツィア
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger Sp. z o. o.
【住所又は居所原語表記】Ul. Marecka 47, 05-220 Zielonka, Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ ギエラウトフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ミハル バルセラク
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ クリムチャク
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-332401(JP,A)
【文献】特開平05-311433(JP,A)
【文献】特開2004-080891(JP,A)
【文献】特開2004-103423(JP,A)
【文献】特開2004-343899(JP,A)
【文献】特開2005-168275(JP,A)
【文献】特開2009-226627(JP,A)
【文献】特開2015-136197(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03396700(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H02M 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマリアクタ(2)に電力を伝達するためのパルス化アセンブリ(3)であって、
前記プラズマリアクタ(2)は、第1のプラズマリアクタ入力ポート(20)とプラズマリアクタ共通ポート(10)との間の第1の負荷(8)を有し、かつ、第2のプラズマリアクタ入力ポート(19)と前記プラズマリアクタ共通ポート(10)との間の第2の負荷(9)を有し、
1.1前記パルス化アセンブリ(3)は、第1のパルス化ユニット(17)を備えており、前記第1のパルス化ユニット(17)は、
1.1.1電源(4)に接続可能な第1の入力ポート(13)と、
1.1.2グラウンド及び/又は前記プラズマリアクタ共通ポート(10)に接続可能なパルス化アセンブリ共通ポート(11)と、
1.1.3前記プラズマリアクタ(2)の前記第1の負荷(8)に接続可能な第1の出力ポート(15)であって、前記プラズマリアクタ(2)の前記第1の負荷(8)に伝達可能な、当該第1の出力ポート(15)と前記パルス化アセンブリ共通ポート(11)との間のパルス、特に電圧パルスを供給するための第1の出力ポート(15)と、
を備えており、
1.2前記パルス化アセンブリ(3)は、第2のパルス化ユニット(18)を備えており、前記第2のパルス化ユニット(18)は、
1.2.1電源(4,5)に接続可能な第2の入力ポート(12)と、
1.2.2前記プラズマリアクタ(2)の前記第2の負荷(9)に接続可能な第2の出力ポート(16)であって、前記プラズマリアクタ(2)の前記第2の負荷(9)に伝達可能な、当該第2の出力ポート(16)と前記パルス化アセンブリ共通ポート(11)との間のパルス、特に電圧パルスを供給するための第2の出力ポート(16)と、
を備えており、
1.3前記パルス化アセンブリ(3)は、前記第1のパルス化ユニット(17)と前記第2のパルス化ユニット(18)との間に接続されたエネルギ蓄積素子(C11)、好ましくはコンデンサを備えている、
パルス化アセンブリ。
【請求項2】
前記パルス化アセンブリは、第1のパルス化期間の間、前記第1の入力ポート(13)から前記第1の出力ポート(15)にエネルギ、特にパルスエネルギを伝達するように構成されている、
請求項1に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項3】
前記エネルギ蓄積素子(C11)は、前記第1のパルス化ユニット(17)の出力部と前記第2のパルス化ユニット(18)との間に接続されている、
請求項1又は2に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項4】
前記パルス化アセンブリ(3)は、第2のパルス化期間の間、好ましくは前記第2の入力ポート(12)に接続された電源(4,5)からのエネルギを、前記エネルギ蓄積素子(C11)に充電するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項5】
前記パルス化アセンブリ(3)は、第3のパルス化期間の間、前記エネルギ蓄積素子(C11)から前記第2の出力ポート(16)にエネルギを伝達するように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項6】
前記第1のパルス化ユニット(17)は、前記第1の入力ポート(13)と前記第1の出力ポート(15)とに接続された、好ましくは前記第1の入力ポート(13)と前記第1の出力ポート(15)との間に接続されたハイサイドスイッチ(S11)を備えている、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項7】
前記第2のパルス化ユニット(18)は、前記エネルギ蓄積素子(C11)と前記第2の出力ポート(16)とに接続された、好ましくは前記エネルギ蓄積素子(C11)と前記第2の出力ポート(16)との間に接続されたハイサイドスイッチ(S13)を備えている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項8】
前記第1のパルス化ユニット(17)は、前記第1の出力ポート(15)と前記パルス化アセンブリ共通ポート(11)とに接続されたローサイドスイッチ(S12)を備えており、
前記パルス化アセンブリ共通ポート(11)は、好ましくはグラウンドに接続可能である、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項9】
前記第2のパルス化ユニット(18)は、前記第2の出力ポート(16)と前記第1の出力ポート(15)とに接続されたローサイドスイッチ(S14)を備えている、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項10】
前記第1のパルス化ユニット(17)の前記ハイサイドスイッチ(S11)と、前記第2のパルス化ユニット(18)の前記ハイサイドスイッチ(S13)とは、同期されて、特に同時に、スイッチオン及び/又はスイッチオフされるように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項11】
前記エネルギ蓄積素子(C11)と前記第2の入力ポート(12)との間に整流素子、好ましくはダイオード(D11)が設けられている、
請求項1から10までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項12】
前記パルス化アセンブリ(3)は、前記出力ポート(15,16)のうちの少なくとも一方において、それぞれ前記パルス化ユニット(17,18)の各々の出力電圧よりも高い、前記パルス化アセンブリ共通ポート及び/又はグラウンドに対して測定された電圧パルスを提供するように構成されている、
請求項1から11までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項13】
前記第2のパルス化ユニット(18)は、第2のパルス化ユニット共通ポート(21)を有し、
前記第2のパルス化ユニット共通ポート(21)は、前記第1のパルス化ユニット(17)の前記第1の出力ポートと、特に前記エネルギ蓄積素子(C11)の一方の端部とに接続されている、
請求項1から12までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ。
【請求項14】
プラズマリアクタに電力を供給するための電力供給装置であって、
前記電力供給装置は、
・i. 第1の電源(4)
ii.第1の電源及び第2の電源(5)
のうちの一方と、
・請求項1から13までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリと、
を備えており、
・特に、前記第1の電源(4)及び/又は前記第2の電源(5)は、直流電源である、
電力供給装置。
【請求項15】
パルス化アセンブリ(3)、特に請求項1から13までのいずれか1項に記載のパルス化アセンブリ(3)を使用して、プラズマリアクタ(2)に電力を供給する方法であって、
前記プラズマリアクタ(2)は、第1のプラズマリアクタ入力ポート(20)とプラズマリアクタ共通ポート(10)との間の第1の負荷(8)を有し、かつ、第2のプラズマリアクタ入力ポート(19)と前記プラズマリアクタ共通ポート(10)との間の第2の負荷(9)を有し、
当該方法は、
・第1のパルス化期間の間、前記パルス化アセンブリ(3)の第1のパルス化ユニット(17)の第1の出力ポート(15)を介して第1の入力ポート(13)から前記第1の負荷(8)にエネルギを伝達する方法ステップと、
・第2のパルス化期間の間、好ましくは前記第2のパルス化ユニット(18)の第2の入力ポート(12)に接続された電源(4,5)からのエネルギを、前記パルス化アセンブリ(3)の前記第1のパルス化ユニット(17)と第2のパルス化ユニット(18)との間に接続されたエネルギ蓄積素子(C11)に充電する方法ステップと、
・第3のパルス化期間の間、前記第2のパルス化ユニット(18)の第2の出力ポート(16)を介して前記エネルギ蓄積素子(C11)から前記第2の負荷(9)にエネルギを伝達する方法ステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、プラズマリアクタに電力を伝達するためのパルス化アセンブリであって、パルス化アセンブリは、第1のパルス化ユニットを備えており、
第1のパルス化ユニットは、
電源に接続可能な第1の入力ポートと、
プラズマリアクタの第1の負荷に電圧パルスを供給するための、プラズマリアクタの第1の負荷に接続可能な第1の出力ポートと、
を備えている、パルス化アセンブリに関する。
【0002】
本発明のさらなる態様は、パルス化アセンブリを有する電力供給装置に関する。
【0003】
本発明のさらなる態様は、パルス化アセンブリを使用してプラズマリアクタに電力を供給する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
例えば、国際公開第2019/212592号を参照すると、プラズマリアクタの種々異なる部分にそれぞれ専用の電力供給部によって電力を供給することが知られている。これは、最も直感的な解決策であるが、最も高価な解決策でもある。プラズマリアクタの種々異なる部分は、プラズマリアクタの負荷である。
【0005】
1kV以上の範囲内、特に3kV以上の範囲内の高電圧が必要とされる場合には、このような電圧を伝達することができる電力供給部と、使用されなければならない電気素子とがますます高価になる。電力供給部とプラズマリアクタとの間の電力伝達ケーブルについても同じことが当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の課題
本発明の課題は、プラズマリアクタの種々異なる部分に高電圧、特に高電圧パルスを伝達することができる安価なアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本発明は、プラズマリアクタに電力を伝達するためのパルス化アセンブリであって、プラズマリアクタは、第1のプラズマリアクタ入力ポートとプラズマリアクタ共通ポートとの間の第1の負荷を有し、かつ、第2のプラズマリアクタ入力ポートとプラズマリアクタ共通ポートとの間の第2の負荷を有し、
○パルス化アセンブリは、第1のパルス化ユニットを備えており、第1のパルス化ユニットは、
・電源に接続可能な、特に接続されるように構成された第1の入力ポートと、
・グラウンド及び/又はプラズマリアクタ共通ポートに接続可能なパルス化アセンブリ共通ポートと、
・プラズマリアクタの第1の負荷に接続可能な、特に接続されるように構成された第1の出力ポートであって、プラズマリアクタの第1の負荷に伝達可能な、当該第1の出力ポートとパルス化アセンブリ共通ポートとの間のパルス、特に電圧パルスを供給するための第1の出力ポートと、
を備えており、
○パルス化アセンブリは、第2のパルス化ユニットを備えており、第2のパルス化ユニットは、
・電源に接続可能な、特に接続されるように構成された第2の入力ポートと、
・プラズマリアクタの第2の負荷に接続可能な、特に接続されるように構成された第2の出力ポートであって、プラズマリアクタの第2の負荷に伝達可能な、当該第2の出力ポートとパルス化アセンブリ共通ポートとの間のパルス、特に電圧パルスを供給するための第2の出力ポートと、
を備えており、
○パルス化アセンブリは、第1のパルス化ユニットと第2のパルス化ユニットとの間に接続されたエネルギ蓄積素子、好ましくはコンデンサを備えている、
パルス化アセンブリに関する。
【0009】
本開示の意味におけるパルス化ユニットは、電圧パルス、電流パルス又は電力パルスのようなパルスの形態で電気エネルギを伝達することが可能であって、かつ、特にそのように構成されている任意の種類のユニットであるものとしてよい。このことは、スイッチをスイッチオン及びスイッチオフするように構成された制御装置に接続されたトランジスタのような電気的なスイッチによって又は他の電気回路によって実施可能である。
【0010】
この構成により、電源として高電圧の電力供給部及び低電圧の電力供給部を使用することが可能となる。この構成により、電源として高電圧の電力供給部及び低電圧の電力供給部を使用して、両方の出力部において高電圧パルスを得ることがさらに可能となる。エネルギ蓄積素子を使用して、低電圧の電力供給部の電圧をシフトさせることができる。特に、低電圧の電力供給部の電圧をシフトさせるために、ブートストラップ・トポロジを使用することができる。第1のパルス化ユニットは、プラズマリアクタ内の第1の負荷のための高電圧パルスを生成するために使用可能である。第2のパルス化ユニットは、低電圧素子を使用してプラズマリアクタの第2の負荷にも高電圧パルスを供給するために使用可能である。
【0011】
本開示の意味における高電圧(HV)は、1kV以上の範囲内、特に3kV以上の範囲内であるものとしてよい。
【0012】
本開示の意味における低電圧は、1kV未満、特に500V以下の範囲内であるものとしてよい。
【0013】
本開示の意味におけるポートは、プラグ、コネクタ、端子、ピン、分岐、フックアップ等のような任意の種類の電気的な接続アセンブリであるものとしてよい。
【0014】
第1の負荷は、作業領域であるものとしてよく、第2の負荷は、プラズマリアクタの追加的な部分であるものとしてよい。作業領域は、プラズマ処理のターゲット又は基板が配置される領域であるものとしてよい。追加的な部分は、プラズマの点火又は生成を支援する部分であるものとしてもよく、又は、追加的なアノード若しくはカソード、シールド、バイアス等のような方向性をプラズマ処理に提供する部分であるものとしてもよい。
【0015】
第1の負荷のインピーダンスは、容量部を有し得る。
【0016】
第2の負荷のインピーダンスは、容量部を有し得る。
【0017】
第1の負荷のインピーダンスは、抵抗部を有し得る。
【0018】
第2の負荷のインピーダンスは、抵抗部を有し得る。
【0019】
エネルギ蓄積素子は、第1のパルス化ユニットの出力部と第2のパルス化ユニットとの間に接続可能である。これにより、第2のパルス化ユニットの電位を効果的にシフトさせることができる。
【0020】
第2のパルス化ユニットは、第2のパルス化ユニット共通ポートを有し得る。この第2のパルス化ユニット共通ポートは、第1のパルス化ユニットの第1の出力ポートに接続可能である。このようにして、第2のパルス化ユニットは、第1のパルス化ユニットのパルスに加えてパルスを生成することが可能であるものとしてよい。
【0021】
第2のパルス化ユニットの第2のパルス化ユニット共通ポートは、エネルギ蓄積素子の一方の端部に接続されているものとしてよい。
【0022】
第2のパルス化ユニットは、その両方の端部がエネルギ蓄積素子に接続されているものとしてよい。
【0023】
パルス化アセンブリは、第1のパルス化期間の間、第1の入力ポートから第1の出力ポートにエネルギ、特にパルスエネルギを伝達するように構成可能である。第1のパルス化期間の間、第1の負荷に高電圧パルスを供給することができる。
【0024】
パルス化アセンブリは、第2のパルス化期間の間、好ましくは第2の入力ポートに接続された電源からのエネルギを、エネルギ蓄積素子に充電するように構成可能である。第2のパルス化期間は、第1の負荷にパルスエネルギが供給されていない期間であるものとしてよい。第1のパルス化期間と第2のパルス化期間とは、交互であるものとしてよい。
【0025】
パルス化アセンブリは、第3のパルス化期間の間、エネルギ蓄積素子から第2の出力ポートにエネルギを伝達するように構成可能である。これにより、第2の出力ポートにおいて、入力電圧よりも高い電圧パルスを提供することが可能となる。エネルギ蓄積素子を、第2の電源の電圧に充電することができ、エネルギ蓄積素子の電位を、第1の電圧源の電圧にシフトさせることができる。これにより、第2の負荷に高電圧を供給することができる。特に、それぞれの電源の電圧の絶対値よりも大きい絶対値を有する電圧を、第2の負荷に供給することができる。
【0026】
特に、パルス化アセンブリは、出力ポートのうちの少なくとも一方において、パルス化アセンブリ共通ポート及び/又はグラウンドに対して測定された、パルス化ユニットの各々の出力電圧よりも高い電圧パルスを提供するように構成可能である。
【0027】
第3のパルス化期間を、第1のパルス化期間と同期させることができ、好ましくは第1のパルス化期間の開始と共に又は開始後に開始させることができ、好ましくは第1のパルス化期間の終了と共に又は終了前に終了させることができる。第3のパルス化期間は、第1の負荷にパルスエネルギが供給されている期間であるものとしてよい。第2のパルス化期間の間、エネルギ蓄積素子を充電することができる。第1のパルス化期間の間、第1の出力部における電圧が上昇させられ、次いで、第3のパルス化期間を開始させることができ、エネルギ蓄積素子からのエネルギを、第2の負荷に伝送することができる。第3のパルス化期間は、第1のパルス化期間の間に実施されるべきである。しかしながら、第3のパルス化期間を、第1のパルス化期間及び第2のパルス化期間から完全に独立させることも可能である。したがって、第1のパルス化期間と第3のパルス化期間とを、同期させてもよく又は非同期としてもよい。
【0028】
エネルギ蓄積素子を充電するために、充電回路を設けることができる。これにより、充電がより効率的になる。
【0029】
第1のパルス化ユニットは、第1の入力ポートと第1の出力ポートとに接続された、好ましくは第1の入力ポートと第1の出力ポートとの間に接続されたハイサイドスイッチを備え得る。第2のパルス化ユニットも、エネルギ蓄積素子及び/又は第2の入力ポートと第2の出力ポートとに接続された、好ましくはエネルギ蓄積素子及び/又は第2の入力ポートと第2の出力ポートとの間に接続されたハイサイドスイッチを備え得る。
【0030】
第1のパルス化ユニットは、第1の出力ポートと第1のパルス化ユニットの共通ポートとに接続されたローサイドスイッチも備え得るものであり、第1のパルス化ユニットの共通ポートは、好ましくはグラウンドに接続可能である。グラウンドは、アース及び/又はシールドに接続可能である。
【0031】
第2のパルス化ユニットは、第2の出力ポートと第1の出力ポートとに接続されたローサイドスイッチを備え得る。
【0032】
エネルギ蓄積素子と第2の入力ポートとの間に整流素子、好ましくはダイオードを設けることができる。これにより、パルス生成中に第2の電源をエネルギ蓄積素子から切り離すことができる。
【0033】
第2の入力ポートと第2のパルス化ユニットのハイサイドスイッチとの間に整流素子を設けることができる。これにより、パルス生成中に第2の電源を第2のパルス化ユニットから切り離すことができる。第1のパルス化ユニット内のスイッチ及び整流素子は、パルス化アセンブリの唯一の高電圧素子であるものとしてよい。他の全ての素子は、低電圧素子であるものとしてよい。
【0034】
両方のパルス化ユニットは、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの直列接続を含み得る。第2の出力ポートと第1のパルス化ユニットの第1の出力部との間に、第2のパルス化ユニットのローサイドスイッチを接続することができる。この構成により、両方のパルス化ユニットは、各自の出力部において電圧パルスを提供することが可能となる。
【0035】
第1のパルス化ユニットのハイサイドスイッチと、第2のパルス化ユニットのハイサイドスイッチとは、同期されて、特に同時に、スイッチオン及び/又はスイッチオフされるように構成されている。同期したスイッチングにより、高効率及び低電力損失が可能となる。
【0036】
スイッチのスイッチングを制御するため、ひいてはエネルギ蓄積素子の充電及び放電も制御するために、スイッチのための制御装置を設けることができる。
【0037】
パルス化アセンブリは、第2の出力ポートにおいて、それぞれのパルス化ユニットの電圧よりも大きな振幅をそれぞれ有する、パルス化アセンブリ共通ポート及び/又はグラウンドに対して測定された電圧パルスを提供するように構成可能である。
【0038】
本発明は、プラズマリアクタに電力を供給するための電力供給装置であって、
電力供給装置は、
・i. 第1の電源
ii.第1の電源及び第2の電源
のうちの一方と、
・本発明に係るパルス化アセンブリと、
を備え得る、電力供給装置にも関する。
【0039】
電源同士は、結合可能であり、すなわち独立していないものとしてよい。電源同士の出力電力を合成することができる。電源同士は、それぞれ異なるものとしてよく、特に高電圧及び低電圧の電源であるものとしてよい。このような構成においては、必要とされる高電圧(HV)素子がより少なくなる。プラズマリアクタは、エッチング又は堆積のために構成可能である。
【0040】
本開示の意味におけるHV素子は、1kV以上の範囲内、特に3kV以上の範囲内で使用されるように構成された素子であるものとしてよい。
【0041】
第1の電源及び/又は第2の電源は、直流電源であるものとしてよい。第2の電源の電圧は、第1の電源の電圧よりも低いものとしてよい。
【0042】
本発明は、パルス化アセンブリ、特に本発明に係るパルス化アセンブリを使用して、プラズマリアクタに電力を供給する方法であって、プラズマリアクタは、第1のプラズマリアクタ入力ポートとプラズマリアクタ共通ポートとの間の第1の負荷を有し、かつ、第2のプラズマリアクタ入力ポートとプラズマリアクタ共通ポートとの間の第2の負荷を有し、
当該方法は、
・第1のパルス化期間の間、パルス化アセンブリの第1のパルス化ユニットの第1の出力ポートを介して第1の入力ポートから第1の負荷にエネルギを伝達する方法ステップと、
・第2のパルス化期間の間、好ましくは第2のパルス化ユニットの第2の入力ポートに接続された電源からのエネルギを、パルス化アセンブリの第1のパルス化ユニットと第2のパルス化ユニットとの間に接続されたエネルギ蓄積素子に充電する方法ステップと、
・第3のパルス化期間の間、第2のパルス化ユニットの第2の出力ポートを介してエネルギ蓄積素子から第2の負荷にエネルギを伝達する方法ステップと、
を含む、方法にも関する。
【0043】
第3のパルス化期間の間、グラウンドに対する第2の出力ポートにおける電圧の絶対値を、入力ポートの各々における電圧よりも高くすることができる。それぞれの入力ポートにおける電圧は、それぞれ等しいものとしてもよく、又は、それぞれ異なるものとしてもよい。これらの電圧が等しい場合には、単一の電圧源を設けることができる。第1の入力ポートにおける電圧は、第2の入力ポートにおける電圧よりも高いものとしてよい。さらに、第2の出力ポートにおける電圧を、第1の出力ポートにおける電圧よりも蓄積素子の電圧の分だけ高くすることができる。
【0044】
第1の電源に接続された第1のパルス化ユニットは、エネルギ蓄積素子の電位をシフトさせるために使用可能である。
【0045】
第2のパルス化ユニット及びエネルギ蓄積素子は、第2のプラズマリアクタ負荷に電圧を提供するために使用可能である。
【0046】
第1のパルス化ユニットの共通ポート及び/又はパルス化アセンブリ共通ポートに対する第1の出力ポートにおけるパルスの電圧の絶対値を、第1の出力ポートに対する第2の出力ポートにおけるパルスの電圧の絶対値よりも高くすることができる。
【0047】
第3のパルス化期間は、第1のパルス化期間に相当するものとしてよく、又は、第1のパルス化期間の一部であるものとしてよい。換言すれば、第3のパルス化期間を、第1のパルス化期間と同期させることができ、好ましくは、第1のパルス化期間の開始と共に又は開始後に開始させることができ、好ましくは、第1のパルス化期間の終了と共に又は終了前に終了させることができる。
【0048】
第4のパルス化期間の間、第1の出力ポートと第2の出力ポートとに同じ電圧を伝達することができ、特に、第1の入力ポートから第1のポート及び第2の出力ポートの両方にエネルギを伝達することができる。
【0049】
第5のパルス化期間の間、第1の出力ポートにエネルギが伝達されないようにすることができ、第2の入力ポートから第2の出力ポートにエネルギを伝達することができる。
【0050】
第6のパルス化期間の間、いずれの出力ポートにもエネルギが伝達されないようにすることができる。
【0051】
第2、第5又は第6のパルス化期間の間、第2の入力ポートからのエネルギをエネルギ蓄積素子に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】プラズマリアクタに電力を供給する電力供給装置の概略図である。
【
図2】パルス化アセンブリの第1の実施形態を示す図である。
【
図3】パルス化アセンブリの第2の実施形態を示す図である。
【
図4】いずれの出力ポートにもエネルギが供給されていない間のエネルギ蓄積素子の充電を示す回路図である。
【
図5】2つの出力ポートにおける高電圧パルスの生成を示す回路図である。
【
図6】充電回路を有するパルス化アセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明及び図面
図1は、プラズマリアクタ2に接続された電力供給装置1を示す。プラズマリアクタ2は、プラズマチャンバであるものとしてよい。プラズマリアクタ2の内部においては、基板を処理することができる。基板の層をエッチングするものとしてよく、又は、基板上に層を堆積させるものとしてよい。
【0054】
電力供給装置1は、2つの電源4,5に接続されたパルス化アセンブリ3を備えており、2つの電力出力部6,7を有し、これらの電力出力部6,7は、プラズマリアクタ2の第1の負荷8及び第2の負荷9に接続されている。第1の負荷8は、第1のプラズマリアクタ入力ポート20と、プラズマリアクタ共通ポート10との間に接続されている。第2の負荷9は、第2のプラズマリアクタ入力ポート19と、プラズマリアクタ共通ポート10との間に接続されている。プラズマリアクタ2は、プラズマリアクタ共通ポート10を介してグラウンドに接続されている。第1の負荷8及び第2の負荷9のインピーダンスは、容量部を有し得る。したがって、第1の負荷8及び第2の負荷9のインピーダンスは、コンデンサの形態で図示されている。インピーダンスは、抵抗部も有し得る。なぜならば、抵抗部は、エネルギを散逸させるからである。
【0055】
図2は、パルス化アセンブリ3の第1の実施形態を示す。パルス化アセンブリ3は、ハイサイドスイッチS11とローサイドスイッチS12とを備えている第1のパルス化ユニット17を有する。スイッチS11,S12は、直列に接続されている。第1のパルス化ユニット17は、パルス化アセンブリ共通ポート11及び第1の入力ポート13に接続されている。第1の入力ポート13及びパルス化アセンブリ共通ポート11は、第1の電源4に接続されるように構成されている。パルス化アセンブリ共通ポート11は、グラウンドに接続されている。
【0056】
パルス化アセンブリ3は、ハイサイドスイッチS13とローサイドスイッチS14とを備えている第2のパルス化ユニット18をさらに有する。スイッチS13,S14は、直列に接続されている。第2のパルス化ユニット18は、第1のパルス化ユニット17の出力ポート15に接続されており、かつ、ダイオードとして実現されている整流素子D11を介して第2の入力ポート12に接続されている。第2の入力ポート12は、第2の電源5に接続されるように構成されている。パルス化アセンブリ共通ポート11も、第2の電源5に接続されるように構成されている。
【0057】
第2のパルス化ユニット18は、第2のパルス化ユニット共通ポート21を有する。この第2のパルス化ユニット共通ポート21は、第1のパルス化ユニット17の第1の出力ポート15に接続されている。このようにして、第2のパルス化ユニット18は、第1のパルス化ユニット17のパルスに加えてパルスを生成することが可能であるものとしてよい。
【0058】
第1のパルス化ユニット17の出力ポート15は、スイッチS11,S12の接続点に接続されている。出力ポート15は、特に電力供給装置1の出力ポート7を介してプラズマリアクタ2の第1の負荷8に接続されるように構成されている(第1のパルス化ユニット17の出力ポート15は、電力供給装置1の出力部7に接続されている)。
【0059】
第2のパルス化ユニット18は、出力ポート16も備えており、この出力ポート16は、スイッチS13,S14の接続点に接続されている。出力ポート16は、特に電力供給装置1の出力ポート6を介してプラズマリアクタ2の第2の負荷9に接続されるように構成されている(第2のパルス化ユニット18の出力ポート16は、電力供給装置1の出力部6に接続されている)。
【0060】
この事例においてはコンデンサとして実現されているエネルギ蓄積素子C11は、一方の端部が第2のパルス化ユニット共通ポート21及び出力ポート15に接続されており、他方の端部がハイサイドスイッチS13に接続されており、及び/又は、整流素子D11、特にダイオードのカソードを介して第2のパルス化ユニット18の入力ポート12に接続されている。
【0061】
スイッチS12がスイッチオンされると、容量性負荷8が放電される。それと同時に、エネルギ蓄積素子C11は、整流素子D11及びスイッチS12によってポート12と11との間の電圧に充電される。これは、第2のパルス化期間に相当する。通常、出力ポート16における電圧は、容量性負荷9における電圧と同じように変化すべきであり、したがって、第2のパルス化ユニット18におけるスイッチS14を、スイッチS12と共に動作させることができる。容量性負荷9は、スイッチS14,S12によって放電される。負荷8に第1の入力ポート13の電圧を供給するためには、スイッチS11がスイッチオンされ(て、スイッチS12がスイッチオフされ)る。その場合、負荷8は、スイッチS11によって入力ポート13における電圧に充電される。それと同時に、エネルギ蓄積素子C11の下側電位は、出力ポート15、ひいては負荷8における電圧と同じ電圧までシフトアップされる。負荷9は、スイッチS13によって(ポート12における電圧に等しい)C11における電圧と、(ポート13における電圧に等しい)ポート15における電圧との合計に充電される。したがって、負荷9は、電源4の出力電圧よりも高い電圧に充電される。
【0062】
図3は、
図2のパルス化アセンブリに対応するパルス化アセンブリ3の第2の実施形態を示す。したがって、同じ参照符号が使用されている。唯一の違いは、電源4,5の極性が逆になっていることである。したがって、ここでは、この事例でもコンデンサとして実現されているエネルギ蓄積素子C11が、整流素子D11、特にダイオードのアノードに接続されている。
【0063】
図4は、プラズマリアクタ2の容量性負荷8,9を放電する状態のための電流経路を太線で示す。このために、スイッチS12及びS14が閉成されており、スイッチS11及びS13が開成されている。それと同時に、エネルギ蓄積素子C11が、整流素子D11及びスイッチS12を介して入力ポート12における電圧に充電される。この状態は、第2のパルス化期間に相当する。
【0064】
図5は、パルスを生成する状態のための電流経路を太線で示す。容量性負荷8は、スイッチS11を介して入力ポート13における電圧に充電される。負荷9は、スイッチS13によって出力ポート16における電圧に充電される。この充電のためのエネルギは、電源4及びエネルギ蓄積素子C11に由来し、このエネルギ蓄積素子C11の上側電極は、出力ポート15に接続されている。整流素子D11は、遮断状態であるので、この整流素子によって電圧源5が回路から切り離されている。
図5に示されている状況は、第1及び第3のパルス化期間に相当する。
【0065】
図6は、第2の入力ポート12と第2のパルス化ユニット18との間に接続された充電回路50を有するパルス化アセンブリの実施形態を示す。スイッチS12及びS55が閉成されて、スイッチS11が開成されると、L51によって充電電流が制限されている間、エネルギ蓄積素子C11がC54の電圧に充電され、出力ポート15には電圧が存在していない。
【0066】
C11がC54の電圧に充電されると、C11は、D52及びD53に起因してL51によって過充電されなくなる。第1の時点で、D52がL51を短絡させ、これによってL51の電流ループが閉成される。次いで、(S12の有無にかかわらず)S55が開成されると、L51の電流ループがD53,C54,及びD52によって閉成されることとなり、これにより、L51に蓄積されているエネルギが、ダイオードD52及びD53を介してC54に戻されることとなる。
【0067】
スイッチS13及びS14は、独立して動作可能であり、出力16における電圧は、0V以外であるものとしてよい。
【0068】
本発明の主な利点は、出力ポート16に供給するための高電圧源及び高電圧パルス化ユニットの必要性を排除することである。唯一追加される高電圧素子は、エネルギ蓄積素子C11を充電するために使用される整流素子D11のみである。負荷9に供給するための他の全てのものは、低電圧素子であり、すなわち電源5、パルス化ユニット18及びエネルギ蓄積素子C11である。