(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】フリッカ抑制装置およびフリッカ抑制制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/24 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
H02J3/24
(21)【出願番号】P 2023569919
(86)(22)【出願日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2023015063
【審査請求日】2023-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野里 航平
(72)【発明者】
【氏名】森島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】谷 直樹
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/163697(WO,A1)
【文献】特開2007-028735(JP,A)
【文献】特開2021-182833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源を系統連系するためのパワーコンディショナが接続された電力系統のフリッカ抑制装置であって、
蓄電要素と前記電力系統との間で電力変換を行う電力変換器と、
前記電力系統上の交流電圧を検出する電圧検出器と、
検出された前記交流電圧に基づいて前記電力変換器の出力を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記交流電圧の実効値の上昇に対応して前記蓄電要素から出力される直流電力を交流電力に変換して前記電力系統に出力する一方で、前記交流電圧の実効値の低下に対応して前記電力系統からの交流電力を直流電力に変換して前記蓄電要素に出力するように前記電力変換器を制御する、フリッカ抑制装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記交流電圧の実効値の変動量を検出する電圧変動検出器と、
前記変動量を入力する、予め定められた制御演算に従って前記電力変換器から前記電力系統に出力する有効電力指令値を生成する有効電力制御器と、
前記有効電力指令値に従った有効電力を出力するように前記電力変換器の制御指令を生成する電力変換制御器とを含み、
前記有効電力制御器は、前記交流電圧の実効値の上昇に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の低下を補償するように前記有効電力指令値を生成する一方で、前記交流電圧の実効値の低下に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の上昇を補償するように前記有効電力指令値を生成する、請求項1に記載のフリッカ抑制装置。
【請求項3】
前記有効電力制御器は、前記制御演算により、予め定められた比例ゲインと前記変動量との積に従って、前記有効電力の大きさと前記変動量の絶対値とが比例するように前記有効電力指令値を生成する、請求項2に記載のフリッカ抑制装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記交流電圧の実効値の変動量を検出する電圧変動検出器と、
前記変動量を入力する、予め定められた制御演算に従って前記電力変換器から前記電力系統に出力する有効電流指令値を生成する有効電力制御器と、
前記有効電流指令値に従った有効電流を出力するように前記電力変換器の制御指令を生成する電力変換制御器とを含み、
前記有効電力制御器は、前記交流電圧の実効値の上昇に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の低下を補償するように前記有効電流指令値を生成する一方で、前記交流電圧の実効値の低下に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の上昇を補償するように前記有効電流指令値を生成する、請求項1に記載のフリッカ抑制装置。
【請求項5】
前記有効電力制御器は、前記制御演算により、予め定められた比例ゲインと前記変動量との積に従って、前記有効電流の大きさと前記変動量の絶対値とが比例するように前記有効電流指令値を生成する、請求項4に記載のフリッカ抑制装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
検出された前記交流電圧に基づいて、前記交流電圧の周波数である系統周波数の変化量である周波数偏差を検出する周波数偏差検出器と、
前記周波数偏差を入力とする、予め定められた制御演算に従って前記電力変換器から前記電力系統に出力する無効電力指令値を生成する無効電力制御器とをさらに含み、
前記無効電力制御器は、前記系統周波数の上昇に対応して前記周波数偏差を補償するための進み無効電力を出力するように前記無効電力指令値を生成する一方で、前記系統周波数の低下に対応して前記周波数偏差を補償するための遅れ無効電力を出力するように前記無効電力指令値を生成し、
前記電力変換制御器は、前記有効電力指令値に従った有効電力および前記無効電力指令値に従った無効電力を出力するように前記制御指令を生成する、請求項
2に記載のフリッカ抑制装置。
【請求項7】
分散型電源を連系するためのパワーコンディショナが接続された電力系統のフリッカ抑制制御方法であって、
前記電力系統上の交流電圧を検出するするステップと、
検出された前記交流電圧に基づいて、蓄電要素と前記電力系統との間で電力変換を行う電力変換器の出力を制御するステップとを備え、
前記制御するステップにおいて、前記交流電圧の実効値の上昇に対応して前記蓄電要素から出力される直流電力を交流電力に変換して前記電力系統に出力する一方で、前記交流電圧の実効値の低下に対応して前記電力系統からの交流電力を直流電力に変換して前記蓄電要素に出力するように、前記電力変換器は制御される、フリッカ抑制制御方法。
【請求項8】
前記制御するステップは、
前記交流電圧の実効値の変動量を検出するステップと、
前記変動量を入力する、予め定められた制御演算に従って前記電力変換器から前記電力系統に出力する有効電力指令値を生成するステップと、
前記有効電力指令値に従った有効電力を出力するように前記電力変換器の制御指令を生成するステップとを含み、
前記有効電力指令値を生成するステップは、
前記交流電圧の実効値の上昇に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の低下を補償するように前記有効電力指令値を生成するステップと、
前記交流電圧の実効値の低下に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の上昇を補償するように前記有効電力指令値を生成するステップとを含む、請求項7に記載のフリッカ抑制制御方法。
【請求項9】
前記制御するステップは、
前記交流電圧の実効値の変動量を検出するステップと、
前記変動量を入力する、予め定められた制御演算に従って前記電力変換器から前記電力系統に出力する有効電流指令値を生成するステップと、
前記有効電
流指令値に従った有効電流を出力するように前記電力変換器の制御指令を生成するステップとを含み、
前記有効電流指令値を生成するステップは、
前記交流電圧の実効値の上昇に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の低下を補償するように前記有効電流指令値を生成するステップと、
前記交流電圧の実効値の低下に対応して前記パワーコンディショナが出力する有効電流の上昇を補償するように前記有効電流指令値を生成するステップとを含む、請求項7に記載のフリッカ抑制制御方法。
【請求項10】
前記制御するステップは、
検出された前記交流電圧に基づいて、前記交流電圧の周波数である系統周波数の変化量である周波数偏差を検出するステップと、
前記周波数偏差を入力とする、予め定められた制御演算に従って前記電力変換器から前記電力系統に出力する無効電力指令値を生成するステップとをさらに含み、
前記無効電力指令値を生成するステップは、
前記系統周波数の上昇に対応して前記周波数偏差を補償するための進み無効電力を出力するように前記無効電力指令値を生成するステップと、
前記系統周波数の低下に対応して前記周波数偏差を補償するための遅れ無効電力を出力するように前記無効電力指令値を生成するステップとを含み、
前記制御指令を生成するステップは、前記有効電力指令値に従った有効電力および前記無効電力指令値に従った無効電力を出力するように前記制御指令を生成するステップを含む、請求項
8に記載のフリッカ抑制制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フリッカ抑制装置およびフリッカ抑制制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生エネルギの導入が進む下で、電力系統に対して太陽光発電装置に代表される分散型電源が多数接続されるようになっている。また、分散型電源を系統連系するためのパワーコンディショナ(PCS)には、単独運転状態の検出機能として、JEM1498規定に定められた、新型能動的方式(ステップ注入付周波数フィードバック方式)の適用が拡大されている。上記新型能動的方式では、PCSから電力系統に無効電力を注入した際の系統周波数の変化を監視することで、単独運転状態であるか否かが判断される。
【0003】
このような新型能動的方式が適用されたPCSが電力系統に多数接続されることに起因して、電力系統の電圧変動(フリッカ)が6~7Hz程度の周波数で発生する現象が生じることが知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、PCSから注入される無効電力を相殺することを意図して、系統周波数の変化を補償するような無効電力を注入することにより、上記要因のフリッカの抑制を試みることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力系統においては、日照量が少ないときにも分散型電源の発電量を確保するために、分散型電源の定格容量をPCSの定格容量よりも大きくする構成が採用される場合がある。この構成では、PCSから出力される有効電力がPCSの定格容量に基づく範囲内に収まるように、PCSから出力される有効電流は、交流電圧の実効値が大きくなるほど小さくなり、交流電圧の実効値が小さくなるほど大きくなるように制御される。
【0006】
交流電圧の実効値の大きさに応じて有効電流の大きさが変動するため、PCSから電力系統に有効電力を送るためには、交流電圧の位相差を変動させることが必要となる。この交流電圧の位相変動は、系統周波数を変化させることに値する。系統周波数の変化に対応して上述した単独運転状態の検出機能により、PCSは、当該周波数変化(上昇または低下)を助長する方向の無効電力を注入する。この単独運転検出のための無効電力の注入は、結果的にフリッカを拡大させてしまうことになる。
【0007】
特許文献1に記載されるフリッカ抑制装置は、系統周波数の変化を補償するような無効電力を電力系統に注入する。しかしながら、PCSの有効電力制御に起因する交流電圧の位相変動の大きさ(すなわち、周波数の変化量の大きさ)によっては、フリッカの不安定度が増大してしまい、フリッカ抑制装置による無効電力の注入によっても、十分な抑制効果を得ることが難しいことが懸念される。
【0008】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、分散型電源を系統連系するためのパワーコンディショナが接続された電力系統において、パワーコンディショナの有効電力制御に起因するフリッカを抑止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面によれば、分散型電源を系統連系するためのパワーコンディショナが接続された電力系統のフリッカ抑制装置が提供される。フリッカ抑制装置は、蓄電要素と電力系統との間で電力変換を行う電力変換器と、電力系統上の交流電圧を検出する電圧検出器と、検出された交流電圧に基づいて前記電力変換器の出力を制御する制御装置とを備える。制御装置は、交流電圧の実効値の上昇に対応して蓄電要素から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する一方で、交流電圧の実効値の低下に対応して電力系統からの交流電力を直流電力に変換して蓄電要素に出力するように電力変換器を制御する。
【0010】
本開示の別の局面によれば、分散型電源を連系するためのパワーコンディショナが接続された電力系統のフリッカ抑制制御方法が提供される。フリッカ抑制制御方法は、電力系統上の交流電圧を検出するするステップと、検出された交流電圧に基づいて、蓄電要素と電力系統との間で電力変換を行う電力変換器の出力を制御するステップとを備える。制御するステップにおいて、交流電圧の実効値の上昇に対応して蓄電要素から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する一方で、交流電圧の実効値の低下に対応して電力系統からの交流電力を直流電力に変換して蓄電要素に出力するように、電力変換器は制御される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、分散型電源を系統連系するためのパワーコンディショナが接続された電力系統において、パワーコンディショナの有効電力制御に起因するフリッカを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るフリッカ抑制装置が接続される電力系統の構成を説明する概略ブロック図である。
【
図2】PCSの制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】PCSが出力する無効電力の特性を説明する概念図である。
【
図4】フリッカ抑制装置の制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】有効電力逆注入制御部における制御演算の第1の例を説明する概念図である。
【
図7】有効電力逆注入制御部における制御演算の第2の例を説明する概念図である。
【
図8】実施の形態1に係るフリッカ抑制装置によるフリッカ抑制処理を説明するフローチャートである。
【
図9】実施の形態2に係るフリッカ抑制装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】有効電力逆注入制御部における制御演算の第1の例を説明する概念図である。
【
図11】有効電力逆注入制御部における制御演算の第2の例を説明する概念図である。
【
図12】実施の形態3に係るフリッカ抑制装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】無効電力逆注入制御部における制御演算の第1の例を説明する概念図である。
【
図14】無効電力逆注入制御部における制御演算の第2の例を説明する概念図である。
【
図15】実施の形態3に係るフリッカ抑制装置によるフリッカ抑制処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
実施の形態1.
<電力系統の構成>
図1は、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置が接続される電力系統の構成を説明する概略ブロック図である。
【0015】
図1に示すように、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100は、電圧源10、母線20,母線22を含む電力系統に接続される。母線22には、太陽光発電装置に代表される分散型電源40を系統連系するためのPCS30が接続される。母線22は、送電線21を介して母線20に接続される。母線20には電圧源10が接続される。電圧源10は、例えば、三相の交流電源である。
【0016】
(PCS30の構成)
PCS30は、分散型電源40から取り込んだ有効電力Pxを母線22に出力する。また、PCS30は、単独運転状態の検出機能を有しており、当該検出機能のための無効電力Qxを母線22に出力する。
【0017】
電流検出器52は、母線22およびPCS30間に流れる三相の交流電流Ixを検出し、検出値を示す信号を制御装置50へ出力する。電圧検出器54は、母線22における三相の交流電圧Vxを検出し、検出値を示す信号を制御装置50へ出力する。
【0018】
制御装置50は、電流検出器52および電圧検出器54から入力される信号に基づいて、PCS30から母線22に出力される有効電力Pxをおよび無効電力Qxを制御する。
【0019】
なお、本実施の形態において、PCS30が出力する無効電力Qx(無効電流)の位相の進みおよび遅れは、JEM1498規定に準じている。具体的には、母線22からPCS30に電力(電流)が流入する方向を「正」と定義して、当該電流方向にて、電圧に対して位相が90度遅れる電流による無効電力を「遅れ(遅相)無効電力」と定義し、反対に、当該電圧に対して位相が90度進んだ電流による無効電力を「進み(進相)無効電力」と定義する。また、本実施の形態において、系統側(母線20,22)からPCS30またはフリッカ抑制装置100(電力変換器110)に電力(電流)が流入する方向を「正」と定義する。
【0020】
図2は、PCS30の制御装置50の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置50は、PCS30から出力される有効電力Pxを制御する有効電力制御器60と、PCS30から出力される無効電力Qxを制御する無効電力制御器70と、PCS制御器80とを含んで構成される。
【0021】
有効電力制御器60、無効電力制御器70およびPCS制御器80の各機能は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、制御装置50の内部メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはこれらを組み合わせたものなどで構成される。
【0022】
有効電力制御器60は、有効電力リミット値生成部61と、有効電力制御部63と、電圧フィードフォワード(FF)部65と、加算器67と、有効電流制御部69とを含む。
【0023】
有効電力リミット値生成部61は、PCS30が出力可能な有効電力Pxの上限値である有効電力リミット値PLimを生成する。有効電力リミット値PLimは、PCS30が出力可能な有効電力の上限値に相当する。有効電力リミット値PLimは、PCS30の定格容量または外部からの指令に基づいて設定される。
【0024】
なお、日照量が少ないときにも分散型電源40の発電量を確保するために、分散型電源40の定格容量をPCS30の定格容量よりも大きくする構成が採用される場合がある。これは過積載と呼ばれている。この場合、分散型電源40の発電量がPCS30の定格容量を超えたことに応じて、PCS30が出力する有効電力Pxは、有効電力リミット値PLimに制限される。
【0025】
有効電力制御部63は、PCS30が出力する有効電力Pxを有効電力リミット値PLimに従う範囲内に制限するための有効電流指令値Ipx*を生成する。具体的には、有効電力制御部63は、電流検出器52により検出される交流電流Ixおよび電圧検出器54により検出される交流電圧Vxから、PCS30が出力する有効電力Pxを算出する。有効電力PxはVIcosφで与えられる。ただし、Vは交流電圧Vxの線間電圧であり、Iは交流電流Ixの線電流であり、φは交流電圧Vxと交流電流Ixとの位相差であり、cosφは力率である。
【0026】
有効電力制御部63は、有効電力リミット値PLimと有効電力Pxとの偏差ΔPx(=PLim-Px)を算出する。有効電力制御部63は、偏差ΔPxを0にするためのフィードバック制御により、有効電流指令値Ipx*を生成する。すなわち、有効電力制御部63は、有効電力Pxを有効電力リミット値PLimに追従させるための有効電流指令値Ipx*を生成する。有効電力制御部63は、PI(比例積分)制御器、PID(比例積分微分)制御器などで構成される。有効電流指令値Ipx*は、有効電力(有効電流)制御を実現するためのフィードバック制御量に相当する。
【0027】
電圧FF部65は、有効電力リミット値PLimおよび電圧検出器54により検出される交流電圧Vxに基づいて、有効電力(有効電流)制御におけるフィードフォワード制御量Ipxffを生成する。具体的には、電圧FF部65は、有効電力リミット値PLimを、交流電圧Vxの線間電圧で除算することにより、フィードフォワード制御量Ipxffを算出する(Ipxff=PLim/V)。
【0028】
フィードフォワード制御量Ipxffは、有効電力Pxを有効電力リミット値PLimに従う範囲内に制限するために必要とされる有効電流Ipxに相当する。言い換えれば、フィードフォワード制御量Ipxffは、有効電力Pxが有効電力リミット値PLimを超えないための有効電流Ipxの上限値に相当する。したがって、交流電圧Vxの実効値が大きくなるに従って、フィードフォワード制御量Ipxffは小さくなる。反対に、交流電圧Vxの実効値が小さくなるに従って、フィードフォワード制御量Ipxffは大きくなる。
【0029】
加算器67は、有効電流指令値Ipx*(フィードバック制御量)と、フィードフォワード制御量Ipxffとを加算することにより、PCS30から出力される有効電流Ipxの指令値である有効電流指令値Ipxrefを生成する。これによると、フィードバック制御による制御安定性を確保した上で、フィードフォワード制御の適用により、交流電圧Vxの変動に対する制御応答性を高めることができる。
【0030】
有効電流制御部69は、有効電流Ipxを有効電流指令値Ipxrefに追従させるための有効電圧指令値Vpxrefを生成する。具体的には、有効電流制御部69は、電流検出器52により検出される交流電流Ixを正相座標系で3相/2相変換することにより、有効電流Ipxを算出する。そして、有効電流制御部69は、有効電流指令値Ipxrefと有効電流Ipxとの偏差ΔIpx(=Ipxref-Ipx)を算出する。有効電流制御部69は、偏差ΔIpxを0にするためのフィードバック制御により、有効電圧指令値Vpxrefを生成する。有効電流制御部69は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0031】
無効電力制御器70は、周波数偏差検出器72と、無効電力注入制御部74と、無効電力制御部76と、無効電流制御部78とを含む。
【0032】
周波数偏差検出器72は、電圧検出器54によって検出された交流電圧Vxから当該電圧の周波数である系統周波数fを検出する。そして、周波数偏差検出器72は、検出された系統周波数fを用いて、系統周波数fの変化(上昇または低下)を示す周波数変化量(以下、「周波数偏差」とも称する)Δfを算出する。
【0033】
本実施の形態では、系統周波数fの上昇時には、周波数偏差Δfは正(Δf>0)の極性を有し、系統周波数fの低下時には、周波数偏差Δfは負(Δf<0)の極性を有するように、周波数偏差Δfが算出される。なお、周波数偏差Δfの算出手法は、特許文献1に記載される各種手法を適用することができる。すなわち、系統周波数の上昇および低下を表すことができるのであれば、極性(正/負)の定義を含め、任意の手法によって周波数偏差Δfを算出することが可能である。
【0034】
上述したようにPCS30は、単独運転状態の検出機能を実現するための無効電力Qxを母線22に出力する。例えば、無効電力Qxは、JEM1498規定に定められた新型能動方式(ステップ注入付周波数フィードバック方式)に従って、
図3に示された特性で出力される。
【0035】
図3の横軸には、系統周波数fの変化量である周波数偏差Δfが、本実施の形態と同様の極性に従って、周波数上昇方向を正方向として示され、
図3の縦軸には、無効電力Qxが、進み無効電力を正値、遅れ無効電力を負値として示される。
【0036】
無効電力注入制御部74は、
図3に示された特性に従って、入力された周波数偏差Δfを助長するように無効電力指令値Qxrefを設定する。具体的には、無効電力注入制御部74は、周波数偏差Δfおよび比例ゲインKpの積に従って、無効電力指令値Qxrefを設定する構成において、周波数偏差Δfの大小に応じて、比例ゲインKpを切り替える。周波数偏差Δfの絶対値が小さい領域(基準値fp以下)では、比例ゲインKpは第1ゲインに設定される。一方で、周波数偏差Δfが基準値fpを超えて周波数上昇側に変化すると、系統周波数をさらに上昇するために遅れ無効電力(Qxref<0)を出力するように、比例ゲインKpは、第1ゲインよりも大きい第2ゲインに設定される。同様に、周波数偏差Δfが基準値-fpを超えて周波数低下側に変化すると、系統周波数をさらに低下するために進み無効電力(Qxref>0)を出力するように、比例ゲインKpは、第2ゲインに設定される。なお、
図3において、第1ゲインを0とすることで、周波数偏差Δfの絶対値が小さい領域に、無効電力指令値Qxref=0とする不感帯を設けることも可能である。
【0037】
これにより、PCS30は、周波数偏差Δfの絶対値が基準値fpを超える系統周波数fの変化を検出したときには、当該周波数変化(上昇または低下)を助長する方向の無効電力Qxを注入する。そして、このような助長方向の無効電力Qxを注入した際に、当該助長が妨げられることなく周波数が一定量変化(上昇または低下)すると、PCS30が接続された母線22に対する送電が停止されており、PCS30が単独運転状態であることを検出することができる。PCS30は、単独運転状態が検出されると、母線22と分散型電源40との間を電気的に切り離すように動作する。これにより、単独運転の防止機能が実現される。
【0038】
図2に戻って、無効電力制御部76は、PCS30が出力する無効電力Qxを無効電力指令値Qxrefに追従させるための無効電流指令値Iqrefを生成する。具体的には、無効電力制御部76は、電流検出器52により検出される交流電流Ixおよび電圧検出器54により検出される交流電圧Vxから、PCS30が出力する無効電力Qxを算出する。無効電力Qxは-VIsinφで与えられる。
【0039】
無効電力制御部76は、無効電力指令値Qxrefと無効電力Qxとの偏差ΔQx(=Qxref-Qx)を算出する。無効電力制御部76は、偏差ΔQxを0にするためのフィードバック制御により、PCS30から出力される無効電流Iqxの指令値である無効電流指令値Iqxrefを生成する。無効電力制御部76は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0040】
無効電流制御部78は、無効電流Iqxを無効電流指令値Iqxrefに追従させるための無効電圧指令値Vqxrefを生成する。具体的には、無効電流制御部78は、電流検出器52により検出される交流電流Ixを正相座標系で3相/2相変換することにより、無効電流Iqxを算出する。そして、無効電流制御部78は、無効電流指令値Iqxrefと無効電流Iqxとの偏差ΔIqx(=Iqxref-Iqx)を算出する。無効電流制御部78は、偏差ΔIqxを0にするためのフィードバック制御により、無効電圧指令値Vqxrefを生成する。無効電流制御部78は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0041】
PCS制御器80は、有効電力制御器60からの有効電圧指令値Vpxrefおよび無効電力制御器70からの無効電圧指令値Vqxrefに基づいて、PCS30の制御指令Sxを生成する。具体的には、PCS制御器80は、有効電圧指令値Vpxrefおよび無効電圧指令値Vqxrefを正相座標系で2相/3相変換することにより、三相の電圧指令値を生成する。そして、PCS制御器80は、三相の電圧指令値に対してパルス幅変調を行うことにより、PWM信号としての制御指令Sxを生成する。制御指令Sxは、典型的には、PCS30に含まれる各スイッチング素子のオンおよびオフを制御するためのゲート信号である。制御指令SxはPCS30へ入力される。
【0042】
<PCS30の有効電力制御による問題点>
以上説明したように、PCS30は、有効電力リミット値PLimに従う範囲内で、分散型電源40から取り込んだ有効電力Px(有効電流Ipx)を母線22に出力する。このとき、制御装置50における有効電力制御器60の処理によって、有効電流Ipxは、交流電圧Vxの実効値が大きくなるほど小さくなり、交流電圧Vxの実効値が小さくなるほど大きくなるように制御される。
【0043】
有効電力Pxは、母線22から送電線21を経由して母線20に送られる。
図1に示すように、送電線21は抵抗成分RLおよびリアクタンス成分XLを有する。なお、抵抗成分RLはリアクタンス成分XLに比べて小さく、無視することができる。母線22の交流電圧Vxの位相を、母線20の交流電圧Vcの位相より進めることで、母線22から送電線21を経由して母線20に有効電力Pxを送ることができる。
【0044】
ただし、上述したように交流電圧Vxの大きさに応じて有効電流Ipxの大きさが変動するため、PCS30から母線20に有効電力Pxを送るためには、交流電圧Vcに対する交流電圧Vxの位相差を変動させることが必要となる。具体的には、有効電流Ipxが大きくなるに従って交流電圧Vcに対する位相差が大きくなるように、交流電圧Vxの位相を変化させる。反対に、有効電流Ipxが小さくなるに従って当該位相差が小さくなるように、交流電圧Vxの位相を変化させる。すなわち、有効電流Ipxの変動に応じて交流電圧Vxの位相を変動させる。
【0045】
この交流電圧Vxの位相変動は、交流電圧Vxの周波数である系統周波数fを変化させることに値する。すなわち、交流電圧Vxの位相変動は、周波数偏差Δfを増大させることになる。そして、基準値fp(
図3参照)を超えた系統周波数の変化が検出された場合には、上述した単独運転状態の検出機能により、PCS30は、当該周波数変化(上昇または低下)を助長する方向の無効電力Qxを注入する。この単独運転検出のための無効電力Qxの注入は、結果的に電力系統の電圧変動(フリッカ)を拡大させてしまうことになる。
【0046】
特許文献1に記載されるフリッカ抑制装置は、系統周波数の変化に対応してPCSから注入される無効電力Qxを相殺することを意図して、系統周波数の変化を補償するような無効電力を電力系統に注入するように構成されている。これにより、特許文献1では、PCSの単独運転検出機能に起因するフリッカの抑制を図る。
【0047】
しかしながら、PCS30の有効電力制御に起因する交流電圧Vxの位相変動の大きさ(すなわち、周波数偏差Δfの大きさ)によっては、フリッカの不安定度が増大してしまい、フリッカ抑制装置による無効電力の注入によっても、十分な抑制効果を得ることが難しいことが懸念される。
【0048】
そこで、本実施の形態に係るフリッカ抑制装置100は、電力系統の電圧変動に対応してPCS30から注入される有効電力Px(有効電流Ipx)の変動を補償するような有効電力Pc(有効電流Ipc)を電力系統に注入することにより、PCS30の有効電力制御に起因するフリッカの抑制を図る。
【0049】
<フリッカ抑制装置100の動作原理>
最初に、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100の動作原理について説明する。
【0050】
図1に示すように、母線20は、送電線を介して電圧源10に接続される。当該送電線は抵抗成分Rsおよびリアクタンス成分Xsを有する。PCS30から電圧源10に有効電流Ipxが流れると、抵抗成分Rsによって電圧が発生する。そのため、図中に実線矢印で示すように、PCS30からの有効電流Ipxが変動すると、電力系統の交流電圧Vcも変動する。
【0051】
フリッカ抑制装置100は、PCS30からの有効電流Ipxの変動を補償するように、電力変換器110から出力される有効電流Ipcを変動させる。具体的には、フリッカ抑制装置100は、交流電圧Vcの実効値の低下に対応して有効電流Ipxが上昇した場合には、その上昇分を電力変換器110が吸収するように、電力変換器110を動作させる。このとき、電力変換器110は、母線20から吸収した有効電力Pcを直流電力に変換して蓄電要素120に出力する。すなわち、有効電流Ipxの上昇に対応して電力変換器110が母線20から吸収した有効電力Pcによって、蓄電要素120が充電される。
【0052】
反対に、フリッカ抑制装置100は、交流電圧Vcの実効値の上昇に対応して有効電流Ipxが低下した場合には、その低下分を電力変換器110が出力するように、電力変換器110を動作させる。このとき、電力変換器110は、蓄電要素120の直流電力から有効電力Pcを生成して母線20に出力する。すなわち、有効電流Ipxの低下に対応して電力変換器110が母線20に出力する有効電力Pcによって、蓄電要素120が放電される。
【0053】
このようにフリッカ抑制装置100は、図中破線矢印で示すように、PCS30からの有効電流Ipxの変動を打ち消すように、電力変換器110から母線20に出力される有効電流Ipcを制御する。すなわち、電力変換器110は、系統電圧の変動によって生じたPCS30から注入される有効電流Ipxの変動を補償するように制御された有効電力Pcを、母線20に注入する。
【0054】
これによると、PCS30からの有効電流Ipxの変動が打ち消されるため、有効電流Ipxの変動に起因する交流電圧の位相変動を抑制することが可能となる。そして、交流電圧の位相変動が抑制されたことで、PCS30の単独運転状態の検出機能による無効電力Qxの注入が抑制されるため、フリッカの拡大を抑制することが可能となる。
【0055】
<フリッカ抑制装置100の構成>
次に、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100の具体的構成について説明する。
【0056】
図1に示すように、フリッカ抑制装置100は、電力変換器110と、蓄電要素120と、電流検出器132と、電圧検出器134と、制御装置130とを備える。
【0057】
電力変換器110は、母線20に接続される。電力変換器110は、例えば、2レベル変換器、3レベル変換器、またはマルチレベル変換器などの自励式変換器である。電力変換器110は、蓄電要素120に接続されている。蓄電要素120は、例えば、二次電池、電気二重層キャパシタなどのエネルギ蓄積要素である。
【0058】
電力変換器110は、蓄電要素120と母線20との間で電力変換を行う。具体的には、電力変換器110は、蓄電要素120から出力される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を母線20に出力する。また、電力変換器110は、母線20からの交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を蓄電要素120に出力する。これにより、電力変換器110は、蓄電要素120の電力を充放電する。
【0059】
電流検出器132は、母線20および電力変換器110間に流れる三相の交流電流Icを検出し、検出値を示す信号を制御装置130へ出力する。電圧検出器134は、母線20における三相の交流電圧Vcを検出し、検出値を示す信号を制御装置130へ出力する。
【0060】
制御装置130は、電力変換器110における電力変換を制御する。具体的には、制御装置130は、電流検出器132および電圧検出器134から入力される信号に基づいて、電力変換器110および母線20の間で遣り取りされる有効電力Pcを制御する。
【0061】
(制御装置130のハードウェア構成)
図4は、制御装置130のハードウェア構成例を示す図である。制御装置130は、代表的には、所定のプログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0062】
例えば、
図4に示すように、制御装置130は、CPU200と、メモリ202と、入出力(I/O)回路204とを含んで構成される。CPU200、メモリ202およびI/O回路204は、バス206を経由して、相互にデータの授受が可能である。メモリ202の一部領域にはプログラムが予め格納されており、CPU200が当該プログラムを実行することで、
図5に示される各部の機能を実現することができる。I/O回路204は、制御装置130の外部(例えば、電力変換器110、電流検出器132および電圧検出器134)との間で、信号およびデータを入出力する。
【0063】
あるいは、
図4の例とは異なり、制御装置130の少なくとも一部については、FPGAまたはASICなどの回路を用いて構成することが可能である。また、制御装置130の少なくとも一部について、アナログ回路によって構成することも可能である。
【0064】
(制御装置130の機能構成)
図5は、制御装置130の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、制御装置130は、電力変換器110から出力される有効電力Pxを制御する有効電力制御器140と、電力変換制御器150とを含んで構成される。
【0065】
有効電力制御器140は、電圧変動検出器142と、有効電力逆注入制御部144と、有効電力制御部146と、有効電流制御部148とを含む。
【0066】
電圧変動検出器142は、電圧検出器134によって検出された交流電圧Vcを用いて、交流電圧Vcの実効値の変動(上昇または低下)を示す電圧変動量ΔVを算出する。具体的には、電圧変動検出器142は、現在の交流電圧Vcの実効値を求める。そして、電圧変動検出器142は、現在の交流電圧Vcの実効値から、潮流計算などにより決定される交流電圧Vcの実効値の基準値(参照電圧値)を減算することにより、電圧変動量ΔVを算出する。
【0067】
本実施の形態では、交流電圧Vcの実効値の上昇時には、電圧変動量ΔVは正(ΔV>0)の極性を有し、交流電圧Vcの実効値の低下時には、電圧変動量ΔVは負(ΔV<0)の極性を有するように、電圧変動量ΔVが算出される。なお、電圧変動量ΔVの算出方法は、上述の例に限定されるものではない。交流電圧Vcの実効値の上昇および低下を表すことができるのであれば、極性(正/負)の定義の変更を含め、任意の手法によって電圧変動量ΔVを算出することが可能である。
【0068】
有効電力逆注入制御部144は、電圧変動量ΔVを入力パラメータとする、予め定められた制御演算に従って、電力変換器110が出力すべき有効電力Pcの目標値を示す有効電力指令値Prefを算出する。具体的には、交流電圧Vcの実効値の上昇に対応して、電力変換器110から母線20に出力される有効電流Ipcを増やすように有効電力指令値Prefが設定される。一方で、交流電圧Vcの実効値の低下に対応して、電力変換器110から母線22に出力される有効電流Ipcを減らすように有効電力指令値Prefが設定される。
【0069】
図6および
図7には、有効電力逆注入制御部144による制御演算の例が示される。
図6の横軸には、電圧変動量ΔVが、電圧上昇方向を正方向とし、電圧低下方向を負方向として示される。
図6の縦軸には、有効電力指令値Prefが、母線20から電力変換器110に電力(電流)が流入する方向(すなわち、蓄電要素120の充電方向)を正として示される。すなわち、有効電力指令値Prefは、蓄電要素120の充電電力を正値、放電電力を負値として示される。
【0070】
図7に示すように、有効電力逆注入制御部144は、電圧変動量ΔVおよび比例ゲインKp1の積に従って、P(比例)制御によって有効電力指令値Prefを設定することができる(Pref=Kp1・ΔV)。
【0071】
例えば、
図6に示されるように、有効電力逆注入制御部144は、電圧変動量ΔV>0のときには、蓄電要素120を放電する方向の有効電力指令値Prefを設定する(Pref<0)。有効電力指令値Prefは、交流電圧Vcの実効値の上昇に従って、蓄電要素120の放電電力が増えるように設定される。一方で、電圧変動量ΔV<0のときには、蓄電要素120を充電する方向の有効電力指令値Prefを設定する(Pref>0)。有効電力指令値Prefは、交流電圧Vcの実効値の低下に従って、蓄電要素120の充電電力が増えるように設定される。
【0072】
これによると、交流電圧Vcの実効値が上昇したときには(ΔV>0)、PCS30から出力される有効電流Ipxの低下に対応して、電力変換器110から母線20に注入される有効電流Ipcを増やすように、すなわち、蓄電要素120の放電電流を増やすように、有効電力指令値Prefを設定することができる。
【0073】
反対に、交流電圧Vcが低下したときには(ΔV<0)、PCS30から出力される有効電流Ipxの上昇に対応して、電力変換器110から母線20に注入される有効電流Ipcを減らすように、すなわち、蓄電要素120の充電電流を増やすように、有効電力指令値Prefを設定することができる。
【0074】
すなわち、有効電力逆注入制御部144は、PCS30から出力される有効電流Ipxの変化を打ち消すような有効電流Ipcを出力するように、有効電力指令値Prefを設定することができる。なお、有効電流Ipxの変化の大小に対応して、注入される有効電流Ipcの大小が調整されるため、制御安定性を高めることができる。
【0075】
なお、有効電力逆注入制御部144は、電圧変動量ΔVの大小に応じて、比例ゲインKp1の大きさを切り替えることも可能である。例えば、電圧変動量ΔVの絶対値が予め定めた基準値よりも大きい領域では、比例ゲインKp1をk1に設定する一方で、電圧変動量ΔVの絶対値が基準値よりも小さい領域では、比例ゲインKp1をk1よりも小さいk2に設定することができる。このようにすると、電圧変動量ΔVの絶対値が大きい領域では制御の応答速度を高めるとともに、電圧変動量ΔVの絶対値が小さい領域では、制御安定度を高めることができる。
【0076】
図5に戻って、有効電力制御部146は、電力変換器110が出力する有効電力Pcを有効電力指令値Prefに追従させるための有効電流指令値Iprefを生成する。具体的には、有効電力制御部146は、電流検出器132により検出される交流電流Icおよび電圧検出器134により検出される交流電圧Vcから、電力変換器110が出力する有効電力Pcを算出する。有効電力PcはVIcosφで与えられる。ただし、Vは交流電圧Vcの線間電圧であり、Iは交流電流Icの線電流であり、φは交流電圧Vcと交流電流Icとの位相差であり、cosφは力率である。
【0077】
次に、有効電力制御部146は、有効電力指令値Prefと有効電力Pcとの偏差ΔPc(=Pref-Pc)を算出する。有効電力制御部146は、偏差ΔPcを0にするためのフィードバック制御により、有効電流指令値Iprefを生成する。有効電力制御部146は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0078】
有効電流制御部148は、有効電流Ipcを有効電流指令値Iprefに追従させるための有効電圧指令値Vprefを生成する。具体的には、有効電流制御部69は、電流検出器132により検出される交流電流Icを正相座標系で3相/2相変換することにより、有効電流Ipcを算出する。そして、有効電流制御部148は、有効電流指令値Iprefと有効電流Ipcとの偏差ΔIpc(=Ipref-Ipc)を算出する。有効電流制御部148は、偏差ΔIpcを0にするためのフィードバック制御により、有効電圧指令値Vprefを生成する。有効電流制御部148は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0079】
電力変換制御器150は、有効電力制御器140からの有効電圧指令値Vprefに基づいて電力変換器110の制御指令Scを生成する。具体的には、電力変換制御器150は、有効電圧指令値Vprefを正相座標系で2相/3相変換することにより、三相の電圧指令値を生成する。そして、電力変換制御器150は、三相の電圧指令値に対してパルス幅変調を行うことにより、PWM信号としての制御指令Scを生成する。制御指令Scは、典型的には、電力変換器110に含まれる各スイッチング素子のオンおよびオフを制御するためのゲート信号である。制御指令Scは電力変換器110へ入力される。
【0080】
(フリッカ抑制装置100の動作)
次に、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100の動作について説明する。
【0081】
図8は、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100によるフリッカ抑制処理を説明するフローチャートである。
図8のフローチャートは、フリッカ抑制装置100の動作時に、制御装置130によって予め定められた制御周期で繰り返し実行される。
【0082】
図8に示すように、制御装置130は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、交流電圧Vcを検出すると、S120により、交流電圧Vcを用いて電圧変動量ΔVを算出する。S120の処理は、
図5の電圧検出器134の出力を受けることによって実現することができる。
【0083】
さらに、制御装置130は、S130により、S120で算出された電圧変動量ΔVに基づいて、交流電圧Vcの大きさ(実効値)に変化があるかどうかを判断する。そして、交流電圧Vcに変化がない場合には(S130のNO判定時)には、S140により、有効電力指令値Pref=0に設定される。すなわち、電力変換器110から有効電力が注入されないように(Pc=0)、有効電力指令値Prefが設定される。
【0084】
制御装置130は、交流電圧Vcに変化がある場合には(S130のYES判定時)、S150により、交流電圧Vcの変化が上昇および低下の何れであるかを判定する。例えば、電圧変動量ΔVの極性に基づいて、S150の判定を実行することができる。
【0085】
制御装置130は、交流電圧Vcの上昇に対応する場合には(S150のYES判定時)、S160により、電圧変動量ΔVを入力とする予め定められた制御演算に従って、PCS30から出力される有効電流Ipxの低下を補償するための有効電流Ipcが出力されるように、有効電力指令値Prefを設定する(Pref<0)。これに対して、制御装置130は、交流電圧Vcの低下に対応する場合には(S150のNO判定時)、S170により、電圧変動量ΔVを入力とする予め定められた制御演算に従って、PCS30から出力される有効電流Ipxの上昇を補償するための有効電流Ipcが注入されるように、有効電力指令値Prefを算出する(Pref>0)。
【0086】
さらに、制御装置130は、S180により、S140、S160、またはS170で算出された有効電力指令値Prefに従って電力変換器110の制御指令Scを生成する。S180で生成された制御指令Scに従って電力変換器110が動作することにより、有効電力指令値Prefに従った有効電力Pcが母線20へ注入される。Pref<0の場合には、電力変換器110は、蓄電要素120から出力される直流電力を交流電力に変換して母線20に出力することで、有効電流Ipxの低下を補償する。一方、Pref<0の場合には、電力変換器110は、母線20からの交流電力を直流電力に変換して蓄電要素120に出力することで、直流電流Ipxの上昇を補償する。
【0087】
以上説明したように、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100によれば、電力系統の電圧変動に対応してPCS30から出力される有効電流Ipxの変動を補償するように、電力変換器110から電力系統に注入される有効電流Ipcが制御される。これにより、PCS30からの有効電流Ipxの変動が打ち消されるため、有効電流Ipxの変動に起因する交流電圧の位相変動(周波数変動)を抑制することができる。そして、交流電圧の位相変動が抑制されたことで、PCS30の単独運転状態の検出機能による無効電力Qxの注入が抑制されるため、フリッカの拡大を抑制することが可能となる。このように、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100によれば、PCS30の有効電力制御に起因するフリッカを抑制することができる。
【0088】
実施の形態2.
実施の形態1では、制御装置130において、電圧変動量ΔVから有効電力指令値Prefを生成し、有効電力指令値Prefと有効電力Pcとの偏差ΔPcを0にするためのフィードバック制御によって、有効電流指令値Iprefを生成する構成について説明した。実施の形態2では、電圧変動量ΔVから直接的に有効電流指令値Iprefを生成する構成について説明する。
【0089】
図9は、実施の形態2に係るフリッカ抑制装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係るフリッカ抑制装置100は、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100とは、制御装置130の構成が異なる。
【0090】
図9に示すように、制御装置130は、有効電力制御器140と、電力変換制御器150とを含んで構成される。有効電力制御器140は、
図5に示した有効電力制御器140とは、有効電力逆注入制御部144および有効電力制御部146に代えて、有効電力逆注入制御部145を含む点が異なる。
【0091】
有効電力逆注入制御部145は、電圧変動量ΔVを入力パラメータとする、予め定められた制御演算に従って有効電流指令値Iprefを算出する。具体的には、交流電圧Vcの実効値の上昇に対応して、電力変換器110から母線20に出力される有効電流Ipcを増やすように有効電流指令値Iprefが設定される。一方で、交流電圧Vcの実効値の低下に対応して、電力変換器110から母線22に出力される有効電流Ipcを減らすように有効電流指令値Iprefが設定される。
【0092】
図10および
図11には、有効電力逆注入制御部145による制御演算の例が示される。
図10の横軸には、電圧変動量ΔVが、電圧上昇方向を正方向とし、電圧低下方向を負方向として示される。
図10の縦軸には、有効電流指令値Iprefが、母線20から電力変換器110に電流が流入する方向(すなわち、蓄電要素120の充電方向)を正として示される。すなわち、有効電流指令値Iprefは、蓄電要素120の充電電流を正値、放電電流を負値として示される。
【0093】
図11に示すように、有効電力逆注入制御部145は、電圧変動量ΔVおよび比例ゲインKp2の積に従って、P制御によって有効電流指令値Prefを設定することができる(Ipref=Kp2・ΔV)。
【0094】
例えば、
図10に示されるように、有効電力逆注入制御部145は、電圧変動量ΔV>0のときには、蓄電要素120を放電する方向の有効電流指令値Iprefを設定する(Ipref<0)。有効電流指令値Iprefは、交流電圧Vcの実効値の上昇に従って、蓄電要素120の放電電流が増えるように設定される。一方で、電圧変動量ΔV<0のときには、蓄電要素120を充電する方向の有効電流指令値Iprefを設定する(Ipref>0)。有効電流指令値Iprefは、交流電圧Vcの実効値の低下に従って、蓄電要素120の充電電流が増えるように設定される。
【0095】
これによると、交流電圧Vcの実効値が上昇したときには(ΔV>0)、PCS30から出力される有効電流Ipxの低下に対応して、電力変換器110から母線20に注入される有効電流Ipcを増やすように(蓄電要素120の放電電流を増やすように)、有効電流指令値Iprefを設定することができる。反対に、交流電圧Vcが低下したときには(ΔV<0)、PCS30から出力される有効電流Ipxの上昇に対応して、電力変換器110から母線20に注入される有効電流Ipcを減らすように(蓄電要素120の充電電流を増やすように)、有効電流指令値Iprefを設定することができる。
【0096】
なお、有効電力逆注入制御部145は、有効電力逆注入制御部144と同様の手法により、電圧変動量ΔVの大小に応じて、比例ゲインKp2の大きさを切り替えることも可能である。すなわち、電圧変動量ΔVの絶対値が予め定めた閾値よりも大きい領域では、比例ゲインKp2をk3に設定する一方で、電圧変動量ΔVの絶対値が閾値よりも小さい領域では、比例ゲインKp2をk3よりも小さいk4に設定することができる。
【0097】
有効電流制御部148は、有効電流Ipcを有効電流指令値Iprefに追従させるための有効電圧指令値Vprefを生成する。電力変換制御器150は、有効電力制御器140からの有効電圧指令値Vprefに基づいて電力変換器110の制御指令Scを生成する。
【0098】
このように、実施の形態2に係るフリッカ抑制装置100によれば、電圧変動量ΔVから直接的に有効電流指令値Iprefを生成する構成としたことにより、電力変換器110から出力される有効電力Pcを有効電力指令値Prefに追従させるためのフィードバック制御を省略することができる。これにより、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100に比べて、制御の応答速度をさらに高めることができる。したがって、PCS30の有効電力制御に起因するフリッカを、より高速に抑制することが可能となる。
【0099】
実施の形態3.
実施の形態1では、電力系統の電圧変動に対応して電力変換器110から出力される有効電力Pcを制御する構成について説明した。実施の形態3では、有効電力Pcの制御に並行して、系統周波数の変動に対応して電力変換器110から出力される無効電力Qcを制御する構成について説明する。
【0100】
図12は、実施の形態3に係るフリッカ抑制装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態3に係るフリッカ抑制装置100は、実施の形態1に係るフリッカ抑制装置100とは、制御装置130の構成が異なる。
【0101】
図12に示すように、制御装置130は、有効電力制御器140と、無効電力制御器160と、電力変換制御器150とを含んで構成される。制御装置130は、
図5に示した制御装置130とは、PCS30から出力される無効電力Qxを制御する無効電力制御器160を含む点が異なる。
【0102】
無効電力制御器160は、周波数偏差検出器162と、無効電力逆注入制御部164と、無効電力制御部166と、無効電流制御部168とを含む。
【0103】
周波数偏差検出器162は、
図2に示したPCS30から出力される無効電力Qxを制御する無効電力制御器70における周波数偏差検出器72と同じである。すなわち、周波数偏差検出器162は、電圧検出器134によって検出された交流電圧Vcから当該電圧の周波数である系統周波数fを検出する。そして、周波数偏差検出器162は、検出された系統周波数fを用いて、周波数偏差Δfを算出する。
【0104】
無効電力逆注入制御部164は、入力された周波数偏差Δfを補償するように無効電力指令値Qrefを設定する。すなわち、無効電力逆注入制御部164は、系統周波数fの上昇に対応して、周波数を低下させるための進み無効電力を出力するように無効電力指令値Qrefを設定する(Qref>0)。一方で、無効電力逆注入制御部164は、系統周波数fの低下に対応して、周波数を上昇させるための遅れ無効電力を出力するように無効電力指令値Qrefを設定する(Qref<0)。
【0105】
図13および
図14には、無効電力逆注入制御部164による制御演算の例が示される。例えば、
図13に示されるように、無効電力逆注入制御部164は、Δf>0のときにQref=Qa(Qref>0)と設定し、Δf<0のときにQref=-Qa(Qref<0)と設定することができる。
【0106】
これにより、系統周波数fが上昇すると(Δf>0)、系統周波数fが低下に転ずるまで、一定量の進み無効電力Qaを母線20へ注入するように、電力変換器110の無効電力指令値Qrefを設定することができる。反対に、無効電力指令値Qrefは、系統周波数fが低下すると(Δf<0)、系統周波数fが上昇に転ずるまで、一定量の遅れ無効電力-Qaを母線20へ注入するように設定される。
【0107】
なお、周波数偏差Δfの絶対値が基準値よりも小さい領域に不感帯を設けるように、
図13を変形することも可能である。あるいは、無効電力逆注入制御部164は、
図14に示すように、周波数偏差Δfおよび比例ゲインKp3の積に従って、P制御によって無効電力指令値Qrefを設定することができる(Qref=Kp3・Δf)。P制御によっても、周波数偏差Δfおよび無効電力指令値Qrefの極性の関係は、
図13と同様である。系統周波数fの上昇(Δf>0)に対応して、進み無効電力が母線20へ注入されるように無効電力指令値Qrefが設定される(Qref>0)とともに、系統周波数fの低下(Δf<0)に対応して、遅れ無効電力が母線20へ注入されるように無効電力指令値Qrefが設定される(Qref<0)ことが理解される。さらに、周波数変化の大小に対応して、注入される無効電力の大小が調整されるので、制御安定度を高めることができる。
【0108】
図12に戻って、無効電力制御部166は、電力変換器110が出力する無効電力Qcを無効電力指令値Qrefに追従させるための無効電流指令値Iqrefを生成する。具体的には、無効電力制御部76は、電流検出器132により検出される交流電流Icおよび電圧検出器134により検出される交流電圧Vcから、電力変換器110が出力する無効電力Qcを算出する。無効電力Qcは-VIsinφで与えられる。ただし、Vは交流電圧Vcの線間電圧であり、Iは交流電流Icの線電流であり、φは交流電圧Vcと交流電流Icとの位相差である。
【0109】
無効電力制御部166は、無効電力指令値Qrefと無効電力Qcとの偏差ΔQc(=Qref-Qc)を算出する。無効電力制御部166は、偏差ΔQcを0にするためのフィードバック制御により、電力変換器110から出力される無効電流Iqcの指令値である無効電流指令値Iqrefを生成する。無効電力制御部166は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0110】
無効電流制御部168は、無効電流Iqcを無効電流指令値Iqrefに追従させるための無効電圧指令値Vqrefを生成する。具体的には、無効電流制御部168は、電流検出器132により検出される交流電流Icを正相座標系で3相/2相変換することにより、無効電流Iqcを算出する。そして、無効電流制御部168は、無効電流指令値Iqrefと無効電流Iqcとの偏差ΔIqc(=Iqref-Iqc)を算出し、偏差ΔIqcを0にするためのフィードバック制御により、無効電圧指令値Vqrefを生成する。無効電流制御部168は、PI制御器、PID制御器などで構成される。
【0111】
電力変換制御器150は、有効電力制御器140からの有効電圧指令値Vprefおよび無効電力制御器160からの無効電圧指令値Vqrefに基づいて電力変換器110の制御指令Scを生成する。具体的には、電力変換制御器150は、有効電圧指令値Vprefおよび無効電圧指令値Vqrefを正相座標系で2相/3相変換することにより、三相の電圧指令値を生成する。そして、電力変換制御器150は、三相の電圧指令値に対してパルス幅変調を行うことにより、PWM信号としての制御指令Scを生成する。制御指令Scは電力変換器110へ入力される。
【0112】
図15は、実施の形態3に係るフリッカ抑制装置100によるフリッカ抑制処理を説明するフローチャートである。
図15のフローチャートは、フリッカ抑制装置100の動作時に、
図8のフローチャートと並行して、制御装置130によって予め定められた制御周期で繰り返し実行される。
【0113】
図15に示すように、制御装置130は、S210により、系統周波数fを検出すると、S220により、系統周波数fを用いて周波数偏差Δfを算出する。S220の処理は、
図12の電圧検出器134の出力を受けることによって実現することができる。
【0114】
さらに、制御装置130は、S230により、S220で算出された周波数偏差Δfに基づいて、系統周波数fに変化があるかどうかを判断する。そして、系統周波数fに変化がない場合には(S230のNO判定時)には、S240により、無効電力指令値Qref=0に設定される。すなわち、電力変換器110から無効電力が注入されないように(Qc=0)、無効電力指令値Qrefが設定される。
【0115】
制御装置130は、系統周波数fに変化がある場合には(S230のYES判定時)、S250により、系統周波数fの変化が上昇および低下の何れであるかを判定する。例えば、周波数偏差Δfの極性に基づいて、S250の判定を実行することができる。
【0116】
制御装置130は、系統周波数fの上昇に対応する場合には(S250のYES判定時)、S260により、周波数偏差Δfを入力とする予め定められた制御演算に従って、周波数上昇を補償するための進み無効電力が注入されるように、無効電力指令値Qrefを設定する(Qref>0)。これに対して、制御装置130は、系統周波数fの低下に対応する場合には(S250のNO判定時)、S270により、周波数偏差Δfを入力とする予め定められた制御演算に従って、周波数の低下を補償するための遅れ無効電力が注入されるように、無効電力指令値Qrefを算出する(Qref<0)。
【0117】
さらに、制御装置130は、S280により、S240、S260、またはS270で算出された無効電力指令値Qref、および
図5のフローチャートのS180で算出された有効電力指令値Prefに従って電力変換器110の制御指令Scを生成する。S280で生成された制御指令Scに従って電力変換器110が動作することにより、有効電力指令値Prefに従った有効電力Pcおよび無効電力指令値Qrefに従った無効電力Qcが母線20へ注入される。
【0118】
以上説明したように、実施の形態3に係るフリッカ抑制装置100によれば、電力系統の電圧変動に対応してPCS30から出力される有効電流Ipxの変動を補償するように、電力変換器110から電力系統に注入される有効電力Pcが制御されるとともに、有効電流Ipxの変動の影響を受けてPCS30から出力される無効電力Qxに起因する系統周波数の変化を補償するように、電力変換器110から電力系統に注入される無効電力Qcが制御される。これにより、PCS30の有効電力制御に起因するフリッカを、より高速に抑制することが可能となる。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
10 電圧源、20,22 母線、21 送電線、30 PCS、40 分散型電源、50,130 制御装置、52,132 電流検出器、54,134 電圧検出器、60,140 有効電力制御器、61 有効電力リミット値生成部、63,146 有効電力制御部、65 電圧FF部、67 加算器、69,148 有効電流制御部、70,160 無効電力制御器、72,162 周波数偏差検出器、74 無効電力注入制御部、76,166 無効電力制御部、78,168 無効電流制御部、80 PCS制御器、100 フリッカ抑制装置、110 電力変換器、120 蓄電要素、142 電圧変動検出器、144,145 有効電力逆注入制御部、150 電力変換制御器、164 無効電力逆注入制御部、200 CPU、201 メモリ、202 I/O回路、206 バス。
【要約】
フリッカ抑制装置(100)は、分散型電源(40)を系統連系するためのパワーコンディショナ(30)が接続された電力系統に接続される。フリッカ抑制装置(100)は、蓄電要素(120)と電力系統との間で電力変換を行う電力変換器(110)と、電力系統上の交流電圧を検出する電圧検出器(134)と、検出された交流電圧に基づいて電力変換器(110)の出力を制御する制御装置(130)とを備える。制御装置(130)は、交流電圧の実効値の上昇に対応して蓄電要素(120)から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する一方で、交流電圧の実効値の低下に対応して電力系統からの交流電力を直流電力に変換して蓄電要素(120)に出力するように電力変換器(110)を制御する。