(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】スライダーボード
(51)【国際特許分類】
B65G 7/02 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B65G7/02 Z
(21)【出願番号】P 2019143700
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131656(JP,A)
【文献】実開昭57-138811(JP,U)
【文献】特開2003-103648(JP,A)
【文献】特開平10-231006(JP,A)
【文献】実開昭59-015480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の搬送方向に沿って延び、かつ、互いに平行に隙間を空けて複数設けられ、前記搬送方向に直交する幅方向に沿った側面視にて
複数のアーチ形状とされ
て前記搬送方向に連続して設けられ、
複数の前記アーチ形状の境界部分が凹部とされた複数の樹脂製の第1突状リブと、
隣接する前記第1突状リブの間に配置された板状部材であり、前記第1突状リブの長さ方向に延出され前記第1突状リブの下側を互いに連結する連結部と、
を有
し、
前記連結部には、前記第1突状リブと交差するように互いに平行に隙間を空けて第2突状リブが複数設けられる
、
スライダーボード。
【請求項2】
前記第2突状リブの最上部の高さは、前記第1突状リブの最上部の高さと同じである、
請求項
1に記載のスライダーボード。
【請求項3】
前記第2突状リブは、前記第1突状リブを下側から支持する、
請求項
1又は
2に記載のスライダーボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、荷物の搬送の際、上側に荷物を載置して摺動させるスライダーボードが知られている。特許文献1のスライダーボードの全体は、板状であり、スライダーボードの上部には、上側に突出する複数の突状リブが、平面視で、荷物の搬送方向に沿って延びるように設けられている。また、突状リブは、互いに隙間を空けて平行に並列配置されている。
【0003】
特許文献1の場合、突状リブの上に荷物が載置された状態では、突状リブ構造を設けていない単純な平面板に比べて荷物とスライダーボードとの間の摩擦抵抗が小さくなるため、比較的小さい力であっても容易に荷物を摺動させることができる。このため、搬送作業の負担を低減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、例えばインターネットを介した注文取引の拡大等によって、顧客に配送される荷物の個数が増加し、配送業者等の人力による荷積み、荷卸し、移動等の搬送作業量も増大する傾向がある。このため、搬送作業に従事する作業者の負担を更に低減できる新規な技術が求められていた。
【0006】
本発明は上記した問題に着目して為されたものであって、搬送作業に係る作業員の人力負担を更に低減できるスライダーボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のスライダーボードは、荷物の搬送方向に沿って延び、かつ、互いに平行に隙間を空けて複数設けられた樹脂製の第1突状リブと、第1突状リブの長さ方向に間隔をおいて形成され第1突状リブの高さを下げる凹部と、隣接する第1突状リブ同士を互いに連結する連結部と、を有するスライダーボードである。
【0008】
上記構成によれば、第1突状リブには、長さ方向に間隔をおいて凹部が設けられているため、凹部の位置では、荷物が第1突状リブに接触しない。このため、第1突状リブに凹部が設けられておらず荷物が第1突状リブの上面全体に接触するスライダーボードに比べ、荷物とスライダーボードとの間の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0009】
請求項2に記載のスライダーボードでは、連結部は、第1突状リブと交差するように互いに平行に隙間を空けて複数設けられた第2突状リブである。上記構成によれば、スライダーボードが第2突状リブを有することによって、樹脂成形によってスライダーボードを製造する際、溶融樹脂が冷却する際に成形品に生じる樹脂の反りを抑制できる。また、第2突状リブを第1突状リブと一体成形すれば、その第2突状リブが連結部を兼ねることにより、連結部を別途用意した上で第1突状リブと共に組み立てる場合に比べ、作製の負担を低減できる。
【0010】
請求項3に記載のスライダーボードでは、第2突状リブの高さは、第1突状リブの高さと同じである。上記構成によれば、荷物の下面が第2突状リブの上面にも同時に接触するため、第1突状リブしか有さないスライダーボードの場合に比べ、スライダーボードの上で荷物を回転する作業が容易になる。
【0011】
請求項4に記載のスライダーボードでは、第2突状リブは、第1突状リブを下側から支持する。上記構成によれば、第1突状リブの下側全体に充填部材を配置しなくても、第2突状リブが第1突状リブを下側から支持するため、スライダーユニットの作製の負担を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスライダーボードによれば、搬送作業に係る作業員の人力負担を更に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスライダーボードの構成を説明する斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライダーボードの構成を説明する平面図である。
【
図3】
図3(A)は、第1実施形態に係るスライダーボードの正面図であり、
図3(B)は、
図4中の3B-3B線断面図であり、
図3(C)は、
図4中の3C-3C線断面図である。
【
図4】
図4(A)は、第1実施形態に係るスライダーボードの側面図であり、
図4(B)は、
図2中の4B-4B線断面図であり、
図4(C)は、
図2中の4C-4C線断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るスライダーボードの上に荷物が載置された状態を部分的に拡大して説明する断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るスライダーボードの構成を説明する平面図である。
【
図7】
図7(A)は、
図6中の7A-7A線断面図であり、
図7(C)は、第2実施形態の変形例(第1変形例)に係るスライダーボードにおける
図6中の7A-7A線の位置に対応する断面図である。
【
図8】第2実施形態に係るスライダーボードの側面図である。
【
図9】第2実施形態の変形例(第2変形例)に係るスライダーボードの構成を説明する平面図である。
【
図10】
図10(A)は、第3変形例に係るスライダーボードにおける
図2中の4C-4C線の位置に対応する断面図であり、
図10(B)は、第4変形例に係るスライダーボードにおける
図2中の4C-4C線の位置に対応する断面図である。
【
図11】
図11(A)は、第5変形例に係るスライダーボードにおける
図2中の4C-4C線の位置に対応する断面図であり、
図11(B)は、第6変形例に係るスライダーボードにおける
図2中の4C-4C線の位置に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に第1及び第2実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0015】
-第1実施形態-
<スライダーボードの構成>
まず、第1実施形態に係るスライダーボード10について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態のスライダーボード10は、例えば物流倉庫等を有する施設内の地面Gの上に敷かれ、上側に載置された荷物20を、搬送方向Dに沿って摺動(スライド)させる際に使用される搬送補助装置である。
【0016】
スライダーボード10は、複数の第1突状リブ12と連結部16とを有する。スライダーボード10は、樹脂製であり、例えば、ポリアセタール(POM)等の樹脂材料を用いた一体成形によって製造できる。なお、本発明では、スライダーボードは、一体成形に限定されず、別個に成形した第1突状リブ12と連結部16とを接着剤等によって接合して構成してもよい。また、連結部は、樹脂製に限定されず、例えば、ガラス素材や金属素材が連結部として採用されてもよい。
【0017】
図2に示すように、第1突状リブ12は、荷物20の搬送方向Dに沿って延び、かつ、互いに平行に隙間を空けて設けられている。第1実施形態では、12本の隣り合う第1突状リブ12間のそれぞれの隙間の幅(
図2中の左右方向の長さ)は、ほぼ等しいが、本発明では、隙間の幅は、互いに異なってもよい。また、第1突状リブ12の本数も、適宜変更できる。
【0018】
第1突状リブ12には、第1突状リブ12の長さ方向(搬送方向D)の途中に間隔をおいて複数の凹部14が、それぞれ形成されている。第1実施形態では、1本の第1突状リブ12について3個の凹部14がほぼ等間隔で設けられた場合が例示されているが、本発明では、1本の第1突状リブについての凹部14の個数及び間隔は、適宜変更できる。また、
図2中では、12本の第1突状リブ12のそれぞれの凹部14の位置は、平面視で、水平な直線状に揃えられているが、本発明では、これに限定されず、任意の位置に配置できる。
【0019】
連結部16は、平面視で、矩形状の板状部材であり、
図3(A)に示すように、12本の第1突状リブ12の下側に設けられ、12本の第1突状リブ12を支持すると共に、隣接する第1突状リブ12同士を互いに一体的に連結している。
【0020】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、第1突状リブ12は、連結部16の上面から上側に突出しており、断面で見た場合、少なくとも先端部において上側に向かうに従って厚さが薄くなって尖っている。また、
図3(C)に示すように、スライダーボード10の凹部14の位置では、第1突状リブ12は、存在せず、連結部16の上面が露出している。なお、第1突状リブの先端部は、載置される荷物の底面に食い込むことを防ぐため、また、先端部が鋭くなりすぎて破損しやすくなることを防ぐため、適宜にアールを有する形状にしてもよい。
【0021】
図4(A)に示すように、側面視で、第1突状リブ12の上端には、第1突状リブ12の長さ方向に沿って、上端の輪郭によって、4個のアーチが形成されている。
図4(B)に示すように、4個のアーチにおいては、搬送方向Dにおける中央の部分の高さが最も高く、第1突状リブ12の最上部をなす。また、4個のアーチのそれぞれの最上部の高さは、いずれもほぼ等しい。4個のアーチの最上部には、載置された荷物20の下面が接触する。
【0022】
一方、隣り合うアーチの境界に位置する凹部14においては、第1突状リブ12の高さは最も低い。すなわち、第1実施形態では、凹部14によって、第1突状リブ12の高さが下げられている。なお、
図2及び
図4(C)に示すように、搬送方向Dに直交する方向で隣り合う第1突状リブ12間の隙間の位置においては、第1突状リブ12は存在せず、連結部16の上面が露出している。換言すると、隣り合う第1突状リブ12間の隙間の位置の上面の高さと、第1突状リブ12の隣り合うアーチの凹部14の位置の上面の高さとは、ほぼ等しい。
【0023】
なお、第1突状リブ12の高さを下げる凹部としては、端部の高さを中央より下げる方法だけに限定されない。また、第1突状リブの上面が平坦であり、端部の高さと中央の高さとがほぼ同じであっても、搬送方向Dに沿って第1突状リブの間に隙間を空け、連結部16の上部に窪んだ凹所を設けることで凹部を実現することもできる。すなわち、凹部の定義方法としては、リブ自体の高さが下げられて低くなっている場合も、リブの下に更に連結部16のように基台として働く部材があり、その部材にリブの高さを下げるための凹所が設けられている場合も含まれる。
【0024】
第1実施形態では、例えば、
図4中の上下方向において、連結部16の厚みは、0.2mm程度、第1突状リブ12の最上部の位置の厚みは、1.4mm程度、また、凹部14の深さは、1.4mm程度に設定できる。なお、本発明では、スライダーボード10の各部の厚み、高さ及び深さは、一定の値に限定されず、対象とする荷物20の重量や、スライダーボード10が配置される場所の広さ等に応じて、適宜設定可能である。
【0025】
スライダーボード10を使用して荷物20を搬送する際には、例えば、作業員によって搬送方向Dに沿って人力で荷物20を押し出したり引っ張ったりできる。或いは、牽引装置等を用いて機械的に荷物20を搬送してもよい。
【0026】
(作用効果)
スライダーボード10を使用する際、
図1及び
図5に示すように、上側に荷物20が載置されると、荷物20の下面は、第1突状リブ12のアーチの最上部の位置に接触する一方、凹部14の位置では、荷物20は、第1突状リブ12に接触しない。このため、第1実施形態によれば、第1突状リブ12に凹部14が設けられておらず荷物20が第1突状リブ12の上面全体に接触するスライダーボードに比べ、荷物20とスライダーボード10との間の摩擦抵抗を小さくすることができる。よって、搬送作業に係る作業員の人力負担を、従来に比べ、更に低減できる。
【0027】
また、第1実施形態では、第1突状リブ12のアーチが、側面視で弧状である。このため、実際に製造する際、隣接するアーチの高さが多少不均一となる場合や、荷物20の荷重でスライダーボード10に多少撓みが生じて荷物20が前後に傾く場合でも、荷物20との接触が弧上の1点に概ね集中するので、接触面積を小さく維持できる。また、1点接触を確実にする三角錐形状などに比べて、荷物20への食い込みを少なくすることができる。
【0028】
-第2実施形態-
<スライダーボードの構成>
次に、第2実施形態に係るスライダーボード10Aについて、
図6及び
図7(A)を参照して説明する。
図6に示すように、第2実施形態に係るスライダーボード10Aは、第2突状リブ18を更に備える点が、第1実施形態と異なるため、以下、第2突状リブ18について主に説明する。また、第2突状リブ18以外の第2実施形態に係るスライダーボード10Aの他の部材については、第1実施形態に係るスライダーボード10における同名の部材とそれぞれ等価であるため、重複説明を省略する。
【0029】
第2突状リブ18は、平面視で、第1突状リブ12と直交するように、互いに平行に隙間を空けて複数設けられている。第2実施形態では、12本の隣り合う第2突状リブ18間のそれぞれの隙間の幅(
図6中の上下方向の長さ)は、ほぼ等しいが、本発明では、隙間の幅は、互いに異なってもよい。また、第2突状リブ18の本数も、適宜変更できる。
【0030】
また、図示を省略するが、上側に第1突状リブ12が存在しない位置では、第2突状リブ18も、第1突状リブ12と同様に、連結部16の上面から上側に向かうに従って厚さが薄くなって尖っている。一方、第2突状リブ18が延びる方向に対して横から(直角方向から)見た側面視で、第2突状リブ18の上縁は、第1突状リブ12のようなアーチ状ではなく水平に延びている。すなわち、第2突状リブ18の最上部の高さは一定である。
【0031】
図7(A)は、搬送方向Dに沿って隣り合う凹部14の間における、第1突状リブ12の最上部の位置における断面図である。
図7(A)に示すように、第2突状リブ18の最上部の高さは、第1突状リブ12の最上部の高さとほぼ同じである。このため、荷物を摺動させる際、第2突状リブ18の最上部にも、荷物の下面が接触する。
【0032】
第2突状リブ18は、幅方向(
図7中の左右方向)で隣り合う第1突状リブ12間の間隔の位置だけでなく、
図8に示すように、第1突状リブ12の底部と連結部16との間の位置にも存在するように設けられている。すなわち、第2突状リブ18は、第1突状リブ12のアーチに対する橋脚のように、第1突状リブ12を下側から支持する部分を有している。
【0033】
(作用効果)
第2実施形態に係るスライダーボード10Aにおいても、荷物とスライダーボード10との間の摩擦抵抗を小さくすることができるため、搬送作業に係る作業員の人力負担を、従来に比べ、更に低減できる。また、第2実施形態では、スライダーボード10Aが第2突状リブ18を有することによって、樹脂成形を用いてスライダーボード10Aを製造する際、溶融樹脂が冷却する際に成形品に生じる樹脂の反りを抑制できる。例えば、全体の厚みが2mm程度のように薄い場合、樹脂を用いた一体成形では、樹脂の反りが顕著に大きくなるため、第2実施形態は、特に有効である。
【0034】
また、第2実施形態では、第2突状リブ18が第1突状リブ12と交差するように設けられているため、スライダーボード10Aの剛性を向上することができる。
【0035】
また、第2実施形態では、荷物20の下面が第2突状リブ18の上面に接触するため、荷物20をスライダーボード10の上で回転させ易くなる。ここで、
図6の平面図において、荷物20を搬送方向Dに沿って上側に摺動させている途中で、荷物20の摺動を一端中止し、反対方向である下側に向かって摺動させたい場合を考える。例えば、荷物20側には牽引用のフック等の部材が設けられており、フック等の部材が
図6中で荷物20の上側の領域にしか設けられていない場合、荷物20を約180度回転させて、フック等の部材を下側に向ける必要が生じる。
【0036】
しかし、第2実施形態では、荷物20の下面には、第1突状リブ12の最上部だけでなく、第2突状リブ18の最上部も接触している。また、第1突状リブ12は、搬送方向Dに沿って延びている一方、第2突状リブ18は、第1突状リブ12に直交して延びている。このため、第1突状リブ12の延びる方向以外の方向への荷物20の回転が、第2突状リブ18によって円滑に促進される。結果、第2実施形態では、第1実施形態のように第1突状リブ12しか有さないスライダーボード10の場合に比べ、スライダーボード10Aの上で荷物20を回転する作業が容易になる。
【0037】
また、第2実施形態で説明した第2突状リブ18の場合、最上部の高さはほぼ同じであったが、位置によって第2突状リブの高さが異なるように、第2突状リブの形状を適宜変更できる。例えば、第2突状リブが荷物20に点状に接触するように、第2突状リブの形状は、第1突状リブ12と同様に側面視でアーチ状であってもよい。ここで、第2突状リブは第1突状リブと交差している。このため、第2突状リブが荷物20に線状に接触すると、荷物20に点状に接触する第1突状リブの延びる方向(搬送方向D)より、第2突状リブの延びる方向への摺動性の方が高くなり、搬送方向Dに沿った荷物20の摺動性が減殺される場合がある。この点、第2突状リブの最上部の形状を適宜変更することによって、第2突状リブが荷物20に接触する領域を調整すれば、荷物20の回転自在性の効果と、搬送方向Dに沿った荷物20の滑動性減殺の影響とのバランスをとることができる。
【0038】
また、スライダーボード10Aが敷かれる地面Gが、例えば、表面に微小な凹凸や溝が形成されているコンクリート等の場合、凹凸や溝の影響によって荷物20の搬送中、スライダーボード10Aの搬送面が部分的に撓み、円滑な搬送が阻害される場合がある。しかし、第2実施形態では、第1突状リブ12及び第2突状リブ18の両方が地面Gに接触するように、第1突状リブ12の下端と第2突状リブ18の下端とが揃えられている。このため、地面Gに微小な凹凸や溝が形成されていても、スライダーボード10Aと地面Gとの接触領域が確保されているので、撓みの影響が抑えられ、円滑な搬送を実現できる。
【0039】
また、第2実施形態では、第1突状リブ12の下側全体に樹脂等の充填部材を配置しなくても、第2突状リブ18が橋脚のように第1突状リブ12を下側から支持する。このため、スライダーボード10Aを製造する際に必要な材料の低減等、作製の負担を低減できる。第2実施形態に係るスライダーボード10Aの他の効果については、第1実施形態の場合と同様である。
【0040】
<第1変形例>
図6に示した第2実施形態に係るスライダーボード10Aの場合、第1突状リブ12の最上部の位置における第2突状リブ18の高さは、第1突状リブ12の高さとほぼ同じであった。しかし、本発明では、第1突状リブ12の最上部の位置における第2突状リブ18Aの高さは、
図7(B)中に例示したスライダーボード10Bのように、第1突状リブ12の高さより低くすることもできる。
【0041】
第1変形例では、荷物20の下面が第2突状リブ18Aの上面に接触しないため、接触面積が小さくなる。このため、荷物20を搬送方向Dに沿って摺動させる際、第2突状リブ18Aが、摺動に影響を与えないので、荷物20を第1突状リブ12の上で円滑に摺動できる。第1変形例に係るスライダーボード10Bの他の効果については、
図1~
図7に示したスライダーボード10,10Aの場合と同様である。
【0042】
<第2変形例>
図6に示した第2実施形態に係るスライダーボード10Aの場合、第2突状リブ18は、第1突状リブ12に直交して延びていたが、本発明では、第2突状リブ18の延びる方向は、直交方向に限定されない。
図9中に例示したスライダーボード10Cのように、第2突状リブ18Bは、平面視で、第1突状リブと約45度の角度で交差するように設けられてもよい。すなわち、本発明では、第2突状リブが第1突状リブと交差する限り、第1突状リブと第2突状リブとの間の交差角度は、任意に設定できる。また、第2変形例では、複数の第1突状リブ12同士を連結する連結部は設けられておらず、第2突状リブ18Bが、連結部として機能している。
【0043】
第2変形例においても、荷物20の下面が第2突状リブ18Bの最上部と接触することによって、スライダーボード10Cの上で荷物20を回転する作業が容易になる。また、第2変形例では、第2突状リブ18Bが連結部を兼ねることにより、連結部を別途用意する必要がないため、スライダーボード10Cを製造する際に必要な材料の低減等、作製の負担を低減できる。第2変形例に係るスライダーボード10Cの他の効果については、
図1~
図7に示したスライダーボード10,10A,10Bの場合と同様である。
【0044】
<第3変形例>
また、
図1~
図9中で説明した第1突状リブ12は、いずれも、側面視で、アーチが形成されるように湾曲していたが、本発明では、これに限定されない。例えば、
図10(A)に示すように、第1突状リブ12Aの形状は、搬送方向Dにおける中央の領域の上縁が平坦であると共に、両端が湾曲してもよい。
【0045】
第3変形例に係るスライダーボード10Dにおいても、凹部14の位置では、荷物が第1突状リブ12Aに接触しないため、荷物とスライダーボード10Dとの間の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、荷物20の重量が比較的大きく、かつ、荷物20の底面が比較的ソフトな場合であっても、第1突状リブ12Aのアーチ上端部に平旦部が存在するため、第1突状リブ12Aの荷物20への食い込みを防止できる。第3変形例に係るスライダーボード10Dの他の効果については、
図1~
図9に示したスライダーボード10,10A~10Cの場合と同様である。
【0046】
<第4変形例>
また、
図10(B)に示すように、第1突状リブ12Bの形状は、搬送方向Dにおける中央の領域の上縁が平坦であると共に、両端が搬送方向Dに対して傾斜してもよい。すなわち、第1突状リブ12Bの形状は、側面視で、上底が下底より短い台形状である。
【0047】
第4変形例に係るスライダーボード10Eにおいても、凹部14の位置では、荷物が第1突状リブ12Bに接触しないため、荷物とスライダーボード10Eとの間の摩擦抵抗を小さくすることができる。第3変形例に係るスライダーボード10Eの他の効果については、
図1~
図10に示したスライダーボード10,10A~10Cの場合と同様である。
【0048】
<第5変形例>
図1~
図9中で説明したスライダーボード10,10A~10Cでは、いずれも、第1突状リブ12が、側面視で、搬送方向Dに沿って連続して設けられた4個のアーチによって形成されていたが、第1突状リブの構成は、これに限定されない。例えば、
図11(A)に示すように、搬送方向Dに沿った同一直線上に、複数の第1突状リブユニット22が、間隔をおいて配置されてもよい。
【0049】
第5変形例の場合、4個の第1突状リブユニット22が、一体となって1本の第1突状リブとして機能する。なお、本発明では、第1突状リブユニット22の個数は、4個に限定されず、適宜変更できる。また、図示を省略するが、第1突状リブユニット22は、
図11(A)の紙面を貫く方向(搬送方向Dに直交する方向)に、互いに平行に隙間を空けて配置されている。また、配置された第1突状リブユニット22は、連結部16Aによって連結され、スライダーユニット24が構成されている。
【0050】
第5変形例では、搬送方向Dに沿って、4個のスライダーユニット24が、ほぼ等間隔で配置され、下地部材26によって一体的に支持されている。下地部材26は、板状又はシート状であり、例えば、プラスチック板やゴム製のテントシート等を下地部材26として採用できる。4個のスライダーユニット24と下地部材26とは、例えば接着剤や両面テープ等によって接合できる。
【0051】
第5変形例の場合、
図11(A)中で、左右方向で隣り合う第1突状リブユニット22の間に、凹部14が形成される。第5変形例に係るスライダーボード10Fの他の構成については、
図1~
図10に示したスライダーボード10,10A~10Eにおけるそれぞれ同名の部材と等価であるため、重複説明を省略する。
【0052】
第5変形例に係るスライダーボード10Fにおいても、荷物20とスライダーボード10Fとの間の摩擦抵抗を小さくすることができるため、搬送作業に係る負担を、従来に比べ、更に低減できる。第5変形例に係るスライダーボード10Fの他の効果については、
図1~
図10に示したスライダーボード10,10A~10Eの場合と同様である。
【0053】
<第6変形例>
また、第5変形例で説明した
図11(A)中の連結部16Aを用いることなく、下地部材26によって、第1突状リブユニット22を直接連結することもできる。
図11(B)に示すように、第6変形例に係るスライダーボード10Gでは、下地部材26の上に、複数の第1突状リブユニット22が、搬送方向Dにおいて、互いに平行に隙間を空けて配置された場合が例示されている。また、複数の第1突状リブユニット22は、
図11(B)の紙面を貫く方向(搬送方向Dに直交する方向)においても、互いに平行に隙間を空けて配置されている。すなわち、第6変形例では、連結部を用いることなく、4個のスライダーユニット24Aが、構成されている。
【0054】
第6変形例によれば、第1突状リブユニット22同士を連結するための連結部が不要になるため、スライダーボード10Gを製造する際に必要な材料の低減等、作製の負担を低減できる。第6変形例に係るスライダーボード10Gの他の効果については、
図1~
図7に示したスライダーボード10,10A,10Bの場合と同様である。
【0055】
<その他の実施形態>
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、一本の第1突状リブの中に、
図4(B)で示したアーチ状の領域と
図10(B)で示した台形状の領域とが混在するように、第1突状リブを構成することもできる。
【0056】
また、搬送方向Dに沿って隣り合う凹部の間における第1突状リブの形状についても、アーチ状及び台形状に限定されず、第1突状リブの高さを下げる凹部が設けられる限り、適宜変更できる。例えば、側面視で、矩形状、三角形状等、任意の幾何学形状を、第1突状リブの形状として採用できる。
【0057】
また、例えば、
図9中に示したスライダーボード10Cの場合、平面視で、上下方向に延びる第1突状リブ12と、第1突状リブ12に対して約45度で交差して左上側から右下側に延びる第2突状リブ18Bが設けられていた。しかし、
図9中で第2突状リブ18Bと左右対称的に、第1突状リブ12に対して約45度で交差して右上側から左下側に延びる別の第2突状リブが、更に設けられてもよい。別の第2突状リブが追加され、3本の突状リブが交差することによって、スライダーボードの反りの抑制及び剛性の向上を、より促進できる。なお、本発明では、平面視で、突状リブの交差状態は、左右対称に限定されなくてもよい。
【0058】
また、例えば、
図9中に示したスライダーボード10Cには連結部が設けられておらず第2突状リブ18Bが連結部として機能したが、スライダーボード10Cの下側に、
図3(C)中で説明した連結部16を設けることもできる。
【0059】
また、例えば、第1及び第2実施形態では、1枚のスライダーボードの上に荷物が直接載置されて摺動される場合が例示的に説明されたが、本発明におけるスライダーボードの使用方法としては、これに限定されない。例えば、地面の上に載置されたスライダーボード(第1のスライダーボード)の上に、更に追加のスライダーボード(第2のスライダーボード)を、それぞれの突状リブが向かい合うように重ね合わせ、上側の第2のスライダーボードの上に荷物が載置されてもよい。そして、荷物を第2のスライダーボードと共に搬送方向に沿って摺動させればよい。2枚のスライダーボード同士を摺動させることによって、より円滑に荷物を搬送することができる。
【0060】
また、
図1~
図11中に示したそれぞれのスライダーボードの構成を部分的に組み合わせて本発明を構成してもよい。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0061】
10,10A~10G スライダーボード
12,12A,12B 第1突状リブ
14 凹部
16,16A 連結部
18,18A,18B 第2突状リブ
20 荷物
D 搬送方向