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▶ 有限会社伊藤ソフトデザインの特許一覧

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  • 特許-基準面調整機能付き水位計 図1
  • 特許-基準面調整機能付き水位計 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】基準面調整機能付き水位計
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/56 20060101AFI20240228BHJP
   G01F 23/2962 20220101ALI20240228BHJP
【FI】
G01F23/56 Z
G01F23/2962
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020067067
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148760
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504258000
【氏名又は名称】有限会社伊藤ソフトデザイン
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝良
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-109521(JP,A)
【文献】特開2017-067554(JP,A)
【文献】特開平09-327242(JP,A)
【文献】特開平09-068426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00-23/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かぶフロート4と、
前記フロート4が中に入れられる筐体3と、
前記筐体3に被せられる蓋1と、
前記蓋1に取り付けられて、前記フロート4の上面までの距離を測る超音波センサー2と、
前記超音波センサー2の信号を処理する制御部7と、
を備えた水位計であって、
前記フロート4には、取手5が取り付けられ、
前記筐体3には、前記取手5が上下に動くことができる切り込み6が入れられ、
前記制御部7は、前記取手5が押し下げられて前記フロート4の底面が基準面と接する状態で前記基準面までの距離測定を行う状態と、前記フロート4が前記水面に浮いた状態で前記水面までの距離測定を行う状態と、を切り替える機能を持ち、測定された前記基準面までの距離と前記水面までの距離に基づいて水位を求めることを特徴とする、
水位計。
【請求項2】
前記筐体3が通る切り込み12と、前記フロート4を受けるくぼみと、を付けた受け皿11をさらに備え、
前記受け皿11の前記くぼみの上面が前記基準面であることを特徴とする、
請求項1に記載の水位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水田の水位を測定する水位計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて水田の水位を測定する装置では、超音波センサーが取り付けられている上空から水面までの距離を測り、基準面となる水田表土までの距離との差分をもって水位としている。
そのため予め基準面までの距離を知っている必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は基準面までの距離を知るために測定具を使用して測っていた。
そのため測定具が必要であった。センサーが装置内にある場合はその位置を見当付けて測るなど正確性に欠ける場合もあった。
また、測った距離をキー入力などの手作業により装置に設定する必要があった。
【0004】
他には基準面までの距離を装置固有の距離として決められていたり、装置に水位の目盛りが付けられていたりする場合がある。この場合決められた位置に合わせる様に設置する必要があり、設置が難しかったりそのための時間がかかったりしていた。
【0005】
また、一度設置したらその後場所を移動しない前提で作られていた。
水田に水を入れる場合水量はもとより、水田表土の凹凸や稲株、草などの影響で下手に水が届くまで相当時間がかかる。下手に水位計を取り付けてしまうと水が来るまで何時間もかかり、入水状況がしばらく把握できない。そのため入水口付近に設置すると状況が分かりやすい。
逆に排水の場合は入水口付近の水が変化するまで時間がかかってしまうので排水口付近に設置すると状況が分かりやすい。
しかし、水位計は一般的に高価であるため2つ設置することは少なく、設置も容易でないため入排水口の間に1つだけ設置している。
【0006】
本発明はこの欠点を除くもので、測定具を用いずとも基準面までの距離を測定、記録できるものである。設置後の超音波センサーと水田表土までの距離に関わらず基準面が調整できるため設置もその分容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を図1図2を用いて説明すると、以下の様に構成されている。
イ)蓋1に超音波センサー2を取り付け筐体3に被せる。
ロ)フロート4に取手5を取り付ける。
ハ)筐体3に取手5が上下できる様に切り込み6を入れる。
ニ)取手5を付けたフロート4を筐体3の中に入れる。
ホ)超音波センサー2の信号を処理する制御部7を持ち、基準面までの距離測定と水面までの距離測定の2つの状態を切り替えられる機能を持つ。
【0008】
超音波を用いて距離を測る場合は、超音波が跳ね返ってくるまでの時間から求めることができる。跳ね返ってくる時間は往復にかかる時間のため、その半分の時間と音速をかける事で求まる。
水田の水位を測る場合は基準面となる水田表土9までの距離から水面10までの距離の差で求まる。本発明ではフロートを用いて水田表土9と水面10の代わりにそれぞれにフロート底面が接している状態でのフロート上面までの距離で代用する物である。フロート上面までの距離はフロートの高さ分差し引いた距離であるので差分を以て計算する水位は代用した値を用いても変わらない。
【0009】
この装置を水田の土8に挿し固定する。必要があれば転倒防止のため補助支持具を用いて本装置を支える。
制御部7を基準面までの距離を測定する状態に切り替える。
図4の様にフロート底面が水田表土9と接する様にフロートの取手を持って押し下げる。
フロート上面までの距離d0を超音波センサーで測り制御部に記憶させる。
この距離が基準面9までの代用となり、設置時に1回だけ行えばよい。
これが調整作業となる。
【0010】
制御部7を水面までの距離を測定する状態に切り替える。
図5の様にフロートが水面に浮いた状態にする。
この時の超音波センサーから水面までの距離d1を超音波センサーで測り水面までの距離の代用とする。
しかし、この時フロートが水面から沈む分があり、フロート底面が水面と接した状態と等価になるよう補正する必要がある。
フロートが水面から沈む分をd2とすると水位d3は
d3=d0-d1+d2
として求まる。
d2は浮力によって決まる固有の距離で定数として持つ事ができる。
d0は0009にて記録された距離で既知であるからd1を測定することで水位が求まる。
【0011】
水が水位0から徐々に増えていく場合、フロートが沈む分d2に達するまでフロートが浮き上がらない。そのため図6、L1の様に水位が変化しない不感帯ができてしまう。
この不感帯が無視できない場合は図7にある様に縁を持ちd2分くぼみを付けた受け皿11を用いる。
受け皿には筐体が通る様に切り込み12が付けられていて、筐体の切り込み6と組み合わさり上下に動かせる様になっている。
この装置を設置する時に受け皿を一度高めに上げて水田に差し込んだ後に、図8の様に皿の縁が水田表土9と同じ高さになる様に押し下げる。
0009の調整作業でフロートが水田表土と接する様にしていた代わりに受け皿11と接する様にした状態で調整作業を行うとd2分下がった位置を基準として持てる様になる。
くぼみに入った水により水位0を越えるとフロートが浮き上がる様になり図6、L2の様に不感帯がなくなる。この時の水位d3は図8図9を用いて
d3=d0′-d1
として求められる。
【発明の効果】
【0012】
0009の調整作業でフロートの取手を押し下げ、フロート底面が水田表土または受け皿と接する様にし、制御部を基準面までの距離を測定する状態に切り替えるだけで基準面までの距離を測定し記録できる。
このため、測定具が不要となり測った距離をキー入力などの手作業で設定する操作も不要となる。
設置した時の超音波センサーと水田表土までの距離に関わらず簡単に調整ができるため設置もその分容易になる。
【0013】
基準測定と水位測定では同じ超音波センサーを用いるため、測定方法や測定具が異なる事で起こる誤差がなくなる。測定具を用いた基準位置の測定でセンサー位置を見当付けて測定する曖昧さもなくなる。
【0014】
受け皿11の縁が転倒防止になる。縁の面積をより大きく取ることで転倒防止の効果が高まり補助支持具が簡易的な物でよくなる。水田の土質によっては補助支持具が必要ないこともある。
この様に設置が容易になるため、入水時は入水口付近に設置し、排水時は排水口付近に移動して設置するという事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の断面図である。
図2】本発明の側面図である。
図3】本発明の斜視図である。
図4】基準面までの距離を測定する時の断面図である。
図5】水面までの距離を測定する時の断面図である。
図6】測定した距離と水位の関係を表したグラフである。
図7】受け皿の斜視図である。
図8】受け皿を使用し基準面までの距離測定をする時の断面図である。
図9】受け皿を使用し水面までの距離測定する時の断面図である。
図10】フロートをフロート部と反射部に分離する例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
筐体や蓋、フロート、取手、受け皿は水に接することから素材としてプラスチックやビニール、樹脂、木材、ガラスや水に強い紙を用いるのが良い。金属を用いる場合は腐食しにくいステンレスやアルミなどを用いるのが良い。
【0017】
フロートは軽い方が水面から沈む部分が少なくなるため中は空洞の方が有利である。また、発泡スチロールも利用できる。発泡スチロールは元々軽いため空洞でなくても良い。
【0018】
取手をフロートに取り付けるにはネジ止めするか接着剤で接着する、あるいは溶着または溶接で取り付ける。
フロートにバンドを締め付けそのバンドに取手を取り付けても良い。
棒をフロートに貫通させ空洞に水が入らない様に防水を施した方法でも良い。
【0019】
フロートの上面を反射面とする代わりに図10の例にある様にフロート部13と反射部14を分離し支持部15でつないだ構成にしても良い。分離した場合反射部や支持部に取手5を付けても良い。反射部、フロート部、支持部の一部が筐体から出る様にして取手の代わりとしても良い。フロート部を筐体の外に出し取手と兼用させることも可能である。
【0020】
原理としてセンサー位置からフロートの上面までの距離を測定している。超音波センサーの代わりに、同様に測定ができるレーザー、光、電磁波による距離測定センサーを用いても良い。
【0021】
制御部はマイコンを使用し電源や表示器、スイッチを持ち、プラスチックか樹脂の防水ケースに入れる。ケースの取り付けはバンドで筐体に締め付けたり、ネジ止めしたり溶着や溶接で取り付ける。
あるいは蓋と一体化させて上に載せても良い。筐体を蓋とケースが一体となった形にしてその中に納めても良い。
【0022】
制御部の状態を切り替えるにはスイッチを用いるのが簡単である。
これに加え、制御部に通信機能を持たせ無線通信で携帯端末の画面から切り替えを指示する様にもつくることができる。この際にインターネットを介しサーバーを経由して携帯端末と接続させても良い。
通信機能を持たせることで、制御機能の一部を通信先のサーバーや携帯端末に分散することができ、装置本体の制御処理を簡素化でき、表示器やスイッチを少なくできたりなくしたりできる。
【符号の説明】
【0023】
1 蓋
2 超音波センサー
3 筐体
4 フロート
5 取手
6 筐体の切り込み
7 制御部
8 水田の土
9 水田表土
10 水面
11 受け皿
12 受け皿の切り込み
13 フロート部
14 反射部
15 支持部
d0 フロート底面が水田表土に接した状態での超音波センサーからフロート上面までの距離
d1 フロートが水面に浮かんでいる状態での超音波センサーからフロート上面までの距離
d2 フロートが水面から沈む距離
d0’フロート底面が受け皿に接した状態での超音波センサーからフロート上面までの距離
d3 水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10