(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】光半導体素子及び光伝送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20240228BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L31/08 F
(21)【出願番号】P 2019072893
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】下山 峰史
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07340709(US,B1)
【文献】特開2018-129483(JP,A)
【文献】特開2016-066682(JP,A)
【文献】国際公開第2006/129428(WO,A1)
【文献】特開2017-147352(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105576072(CN,A)
【文献】特表2017-508295(JP,A)
【文献】特開2016-111363(JP,A)
【文献】特開2018-041957(JP,A)
【文献】特開2019-008163(JP,A)
【文献】特開2015-046429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバンドギャップを備えた第1の半導体層と、
前記第1のバンドギャップより小さい第2のバンドギャップを備え、前記第1の半導体層上に形成された第1の極性の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上面及び側面に接する
Si酸化膜と、
を有し、
前記第1の半導体層は、
前記第1の極性を有する第1の導電性領域と、
前記第1の極性とは異なる第2の極性を有する第2の導電性領域と、
前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間の非導電性領域と、
を有し、
前記非導電性領域は、前記第2の導電性領域に接し、
前記第2の半導体層は、前記第1の導電性領域及び前記非導電性領域に接することを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記第1の導電性領域にオーミック接触する第1の金属膜と、
前記第2の導電性領域にオーミック接触する第2の金属膜と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記第1の導電性領域は、
前記第1の金属膜と接する第3の導電性領域と、
前記非導電性領域と接する第4の導電性領域と、
を有し、
前記第3の導電性領域は前記第4の導電性領域よりも高濃度でp型不純物を含有することを特徴とする請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1の半導体層の前記第2の半導体層と接する領域にリセスが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項5】
平面視で前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とが重なり合う光電変換部と、
前記光電変換部に繋がるモード変換部と、
を有し、
前記モード変換部内で、前記第1の半導体層は、前記光電変換部に近づくほど幅が広くなる平面形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第1の極性はp型であり、
前記第2の極性はn型であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の光半導体素子を有することを特徴とする光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体素子及び光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの処理能力への要求が高まるにつれ、データ送受信帯域の拡大が望まれている。電気信号でのデータ伝送には限界が迫りつつあり、光信号の適用が求められている。光信号を電気信号に高効率で変換するためには、損失の低減のために、電気信号を処理する装置に光部品を集積化することが有効である。そこで、近年では、シリコン(Si)基板上に種々の光部品を構成するSiフォトニクスとよばれる分野の研究及び開発が注目を集めつつある。
【0003】
これまで、Siフォトニクスに関し、種々の光半導体素子が提案されている。例えば、高速応答特性の向上を目的として単一走行キャリア型フォトダイオードが提案されている。しかしながら、十分な受光感度を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/190346号
【文献】特開平9-275224号公報
【文献】特開2003-332612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、受光感度を向上することができる光半導体素子及び光伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、第1のバンドギャップを備えた第1の半導体層と、前記第1のバンドギャップより小さい第2のバンドギャップを備え、前記第1の半導体層上に形成された第1の極性の第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上面及び側面に接するSi酸化膜と、を有し、前記第1の半導体層は、前記第1の極性を有する第1の導電性領域と、前記第1の極性とは異なる第2の極性を有する第2の導電性領域と、前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間の非導電性領域と、を有し、前記非導電性領域は、前記第2の導電性領域に接し、前記第2の半導体層は、前記第1の導電性領域及び前記非導電性領域に接する光半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、受光感度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】参考例に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図2A】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図2B】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図2C】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図2D】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図2E】参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図3A】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す上面図である。
【
図3B】第1の実施形態に係る光半導体素子における半導体領域のレイアウトを示す図である。
【
図3C】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示すバンド図である。
【
図5A】第2の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す上面図である。
【
図5B】第2の実施形態に係る光半導体素子における半導体領域のレイアウトを示す図である。
【
図5C】第2の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図6A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その1)である。
【
図6B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図7A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その2)である。
【
図7B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図8A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その3)である。
【
図8B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図9A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その4)である。
【
図9B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図10A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その5)である。
【
図10B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図11A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その6)である。
【
図11B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図12A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その7)である。
【
図12B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図13A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その8)である。
【
図13B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図14A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その9)である。
【
図14B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図15A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その10)である。
【
図15B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図16A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その11)である。
【
図16B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図17A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その12)である。
【
図17B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図18A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その13)である。
【
図18B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図19A】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す上面図(その14)である。
【
図19B】第2の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その14)である。
【
図20】第3の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【
図21】第3の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図22】第3の実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図23】第4の実施形態に係る光伝送装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
光部品のうち、光の合分波や変調等の処理を行う部分については、過剰損失を避けるため光を吸収しない特性が求められる。一方で、光信号を電気信号に変換(O/E変換)するための受光部には、光を吸収する特性が求められる。これらの要求を満たす材料の候補として、波長が1.2μm~1.6μmの近赤外光に対し、受光部にGeを、それ以外の部分にSiを用いる組み合わせが挙げられる。この波長の近赤外光はSiに対して透明であり、かつGeに吸収されやすい。
【0010】
O/E変換の効率は受光部の性能を表す重要な指標であり、受光感度とよばれることがある。PIN型フォトダイオード(photo diode:PD)のようにキャリアの増倍作用を有さないPDにおいては、受光素子に入射する光子数に対して光電流を生み出すキャリアの生成数の比である量子効率によってO/E変換効率、すなわち受光感度が決定される。
【0011】
ここで、PIN型PDの受光感度に影響を及ぼす二つの要因について説明する。
【0012】
要因の一つとして、光吸収部の光吸収係数と光の伝播長との積が理論的な感度の最大値を規定することが挙げられる。以下の説明では、光強度が大きな場合の吸収飽和については無視することとする。光吸収係数をα[m-1]としたとき、光吸収部に強度I0の光を入射し、吸収領域を距離Lだけ伝播させた後の光強度Iは、I0×exp(-αL)となる。吸収された光が全てキャリアに変換されたとすれば、このときの量子効率は、1-I0/I=1-exp(-αL)となる。例えば、α=4×105[m-1]のときの理想的な量子効率は、伝播長が1μmであれば33%となり、伝播長が10μmであれば98%となる。従って、同じ吸収材料を使うのであれば、光の伝播長が受光感度に影響を及ぼす。例えば、光吸収領域が導波路となった導波路型PDでは、光吸収部の体積を大きくせずに、すなわち受光器の寸法を大きくせずに、光伝播長を大きくして高い受光感度を得ることができる。
【0013】
要因の他の一つとして、キャリアの生成を伴わない光吸収や光散乱による損失が挙げられる。光吸収層の周囲に不純物ドーピングされた半導体や金属などが存在する場合、自由キャリアにエネルギを与える光吸収が起こることがある。このような光吸収が生じてもキャリアは発生しないため、受光感度が低下する。
【0014】
次に、PDの高速動作性能に影響を及ぼす二つの要因について説明する。
【0015】
要因の一つとして、等価電気回路の時定数によって決まる応答帯域が挙げられる。逆方向バイアスされたダイオードは直列RC回路とみなせるので、素子抵抗と容量との積RCが時定数となる。すなわち、素子抵抗及び素子容量が小さければ小さいほど高速に応答することが可能となる。
【0016】
要因の他の一つとして、光吸収によって発生したキャリアが電極に到達するまでに掛かる時間が挙げられる。この時間は、キャリア走行時間ともよばれる。当然ながらキャリア走行時間が短いほど高速な応答が可能となる。キャリア走行時間は、キャリアが走行する距離と速度(移動度と電界強度との積)とによって決まる。
【0017】
一般的なPIN型PDでは、空乏層(i型層)の厚さが走行距離に相当し、この厚さが薄いほどキャリア走行時間は短くなる。その一方で、PIN型PDの容量は空乏層が薄いほど大きくなるため、RC時定数は大きくなる。つまり、キャリア走行時間の短縮とRC時定数の低減とはトレードオフの関係にある。
【0018】
また、キャリアの移動速度は、PIN型PDの材料や、キャリアの種類(正孔又は電子)によっても異なるが、一般に電界強度に従って増加する傾向にある。従って、高速動作のためには、空乏層に印加される電圧が大きいことが望ましい。ところが、光吸収層に入射する光の単位面積当たりの強度(光強度密度)が高くなると、キャリアの発生密度が過度に高まり、電界遮蔽によって電界強度が低下することがある。このため、PIN型PDでは、入射光の強度の増加に伴って応答速度が低下することがある。特に、Si導波路上に形成されたGe層が光吸収層として機能するPIN型PDでは、Si導波路とGe層との界面にエネルギバンドの不連続が生じるため、キャリア、特に正孔の溜まり込みが起こり、空乏層に印加される電界が著しく劣化することがある。PDの用途の一つにコヒーレント伝送用レシーバがあり、コヒーレント伝送用レシーバにおいては、信号光と共に局発光がPDに導入され、ヘテロダイン検波又はホモダイン検波が行われる。局発光の強度が高いほど受信感度が向上するが、正孔の溜まり込みに伴う帯域劣化が生じてしまう。
【0019】
(参考例)
ここで、PIN型PDに代わる、Siフォトニクスにおける単一走行キャリア型フォトダイオード(uni-traveling-carrier photo diode:UTC-PD)の参考例について説明する。
図1は、参考例に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
【0020】
参考例に係る光半導体素子900は、シリコン(Si)基板911、Si酸化膜912及びSi層913を含むSOI(silicon on insulator)基板910を有する。Si層913は、n型Si領域926と、平面視でn型Si領域926を間に挟む2つのn+Si領域922とを含む。n+Si領域922はn型Si領域926よりも高濃度でn型不純物を含有する。n型Si領域926上にi型Si層925が形成されている。i型Si層925上にp型ゲルマニウム(Ge)層933が形成されている。Si層913、i型Si層925及びp型Ge層933の積層体を覆うようにSi酸化膜931が形成されている。Si酸化膜931には、n+Si領域922に達する2個の開口部931Nと、p型Ge層933に達する開口部931Pとが形成されている。開口部931Nを通じてn+Si領域922に接する2個の金属膜934Nと、開口部931Pを通じてp型Ge層933に接する金属膜934PとがSi酸化膜931上に形成されている。
【0021】
このように構成された光半導体素子900では、p型Ge層933が光を吸収し、キャリアを発生する。p型Ge層933にて発生したキャリアのうち多数キャリア、ここでは正孔は誘電拡散により拡散し、少数キャリア、ここでは電子のみがi型Si層925に移動する。従って、i型Si層925を走行するキャリアは単一であり、光半導体素子900におけるキャリア走行時間は単一のキャリア、ここでは電子の移動度のみで決定される。このため、正孔の移動度が電子の移動度より低い場合でも、移動度の高い電子のみを選択して信号として取り出すことができる。また、上記のように、PIN型PDでは、Si層とGe層との界面で正孔の溜まり込みが生じることがあるが、光半導体素子900では、正孔がi型Si層925とp型Ge層933との界面を横切らない。このため、高強度の光が入射してきても、静電遮蔽による動作速度の低下は生じにくい。
【0022】
なお、p型Ge層933への光の入射はSi層913を介して行われる。すなわち、光半導体素子900はSi層913を光導波路としており、Si層913を伝播してきた光がエバネッセント光結合によってp型Ge層933へと入射する。このとき、p型Ge層933とSi層913とは、i型Si層925の厚さの分だけ離れており、この距離の分だけ損失が生じやすく、光の進行方向の単位長さ当たりの受光感度が低くなってしまう。光の進行方向の素子長を大きくすることで、光吸収量を増加させることは可能であるが、素子長を大きくすると素子容量が増加する。素子容量の増加は、RC時定数による帯域制限につながる。更に、素子長を大きくするとn型Si領域926中でのフリーキャリア吸収が増加し、受光感度が劣化し得る。
【0023】
また、Si層913からみてp型Ge層933の後方に金属膜934Pがあるため、p型Ge層933で吸収しきれなかった光の一部が金属膜934Pに吸収されることがある。金属膜934Pによる光吸収は、光電変換に対して有効なフォトキャリアを生み出さない無効吸収であるため、受光感度が低くなってしまう。
【0024】
これらの理由から、この参考例では十分な受光感度を得ることができない。
【0025】
更に、光半導体素子900には製造が困難という課題もある。ここで、光半導体素子900の製造方法について説明する。
図2A~
図2Eは、参考例に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0026】
先ず、
図2Aに示すように、SOI基板910を準備し、Si層913を所定のサイズに加工する。次いで、n型不純物のドーピングを行うことでn型Si領域926及びn
+Si領域922を形成する。
【0027】
次いで、
図2Bに示すように、酸化膜マスク(図示せず)を用いて、n型Si領域926上にSi結晶をホモエピタキシャル選択成長させることでi型Si層925を形成する。i型Si層925の厚さは700nm程度である。
【0028】
その後、別の酸化膜マスク(図示せず)を用いて、i型Si層925上にGe結晶をヘテロエピタキシャル選択成長させることでi型Ge層(図示せず)を形成する。続いて、
図2Cに示すように、i型Ge層(図示せず)にp型不純物のドーピングを行うことでp型Ge層933を形成する。p型Ge層933の厚さは1μm程度である。
【0029】
次いで、
図2Dに示すように、Si層913、i型Si層925及びp型Ge層933の積層体を覆うようにSi酸化膜931を形成する。その後、n
+Si領域922に達する開口部931NをSi酸化膜931に形成し、開口部931Nを通じてn
+Si領域922に接する金属膜934NをSi酸化膜931上に形成する。
【0030】
続いて、
図2Eに示すように、p型Ge層933に達する開口部931PをSi酸化膜931に形成し、開口部931Pを通じてp型Ge層933に接する金属膜934PをSi酸化膜931上に形成する。
【0031】
理論的には、このようにして光半導体素子900を製造することができる。
【0032】
ところが、Siフォトニクスには、Si系CMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)トランジスタ等の製造と同様の高精細のプロセス技術を採用できるという利点があるが、上記の製造方法には、このような高精細なプロセス技術をそのまま採用することができない。これは、i型Si層925及びp型Ge層933に伴う段差が大きいためである。一般に、高精細プロセス技術では、焦点深度の小さなステッパ等を用いた露光が行われるため、基板上に存在する段差が大きいほど、焦点がぼやけやすい。上記のように、i型Si層925の厚さは700nm程度であり、p型Ge層933の厚さは1μm程度であり、これらに伴う段差は極めて大きい。従って、i型Si層925やp型Ge層933に伴う大きな段差が基板上に存在する状態で露光が行われるため、焦点がぼやけてしまう。また、高精細プロセスに用いられるフォトレジストは粘性が低いために高段差を覆い切れないという問題も発生する。このため、光半導体素子900を高精細に製造することは極めて困難である。
【0033】
このように、参考例に係る光半導体素子900には、特性及び製造プロセスに関して改良の余地がある。本発明者は、これらの知見に基づいて鋭意検討を行い、以下のような実施形態に想到した。以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は省略することがある。
【0034】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、UTC-PDを含む光半導体素子に関する。
図3Aは、第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す上面図である。
図3Bは、第1の実施形態に係る光半導体素子における半導体領域のレイアウトを示す図である。
図3Cは、第1の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図3Cは、
図3A及び
図3B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0035】
図3A~
図3Cに示すように、第1の実施形態に係る光半導体素子100は、Si基板111、Si酸化膜112及びSi層113を含むSOI基板110を有する。光半導体素子100は、導波路領域141、モード変換部142及び光電変換部143を含む。導波路領域141では、Si層113が光導波路の形状に加工されている。モード変換部142では、Si層113が光モード変換器の形状に加工されている。
【0036】
光電変換部143において、例えば、Si層113は矩形の平面形状に加工されている。Si層113は、p+Si領域121と、i型Si領域122と、n+Si領域123とを含む。p+Si領域121と、i型Si領域122と、n+Si領域123とは、光電変換部143への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ。i型Si領域122はp+Si領域121とn+Si領域123との間にある。例えば、p+Si領域121はボロン(B)を0.5×1019cm-3~2.5×1019cm-3の濃度で含有する。例えば、n+Si領域123はリン(P)を0.5×1019cm-3~1.5×1019cm-3の濃度で含有する。p+Si領域121は第1の導電性領域の一例である。n+Si領域123は第2の導電性領域の一例である。
【0037】
なお、i型の半導体には意図的な不純物のドーピングが行われていないが、i型の半導体が僅かな不純物、例えば1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。すなわち、i型Si領域122が1×1015cm-3以下の濃度の不純物を含んでいてもよい。i型Si領域122は非導電性領域の一例である。
【0038】
p+Si領域121の一部とi型Si領域122の一部との上にp型Ge層133が形成され、p型Ge層133の下面がp+Si領域121の上面の一部とi型Si領域122の上面の一部と電気的かつ機械的に接している。例えば、p型Ge層133はBを0.5×1019cm-3~2.5×1019cm-3の濃度で含有する。p型Ge層133のバンドギャップは、Si層113のバンドギャップよりも小さい。また、p型Ge層133の屈折率及び光吸収係数は、Si層113の屈折率及び光吸収係数よりも大きい。
【0039】
Si層113及びp型Ge層133の積層体を覆うようにSi酸化膜131が形成されている。Si酸化膜131には、p+Si領域121に達する開口部131Pと、n+Si領域123に達する開口部131Nとが形成されている。開口部131Pを通じてp+Si領域121にオーミック接触する金属膜134Pと、開口部131Nを通じてn+Si領域123にオーミック接触する金属膜134NとがSi酸化膜131上に形成されている。金属膜134P及び金属膜134Nは、例えばアルミニウム(Al)を含む。金属膜134Pはp側電極として機能し、金属膜134Nはn側電極として機能する。
【0040】
ここで、第1の実施形態に係る光半導体素子100の動作について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る光半導体素子100の構成を示すバンド図である。
【0041】
光半導体素子100では、p型Ge層133が光を吸収し、キャリアを発生する。p型Ge層133にて発生したキャリアのうち、電子はp型Ge層133中を拡散した後にSi層113に到達する。このとき、p型Ge層133とp+Si領域121との界面は電子に対して拡散ブロック層として作用する。このため、電子はi型Si領域122へと優先的に導かれ、i型Si領域122に印加された電界に従ってi型Si領域122内をドリフト走行する。一方、多数キャリアである正孔は誘電拡散によって拡散し、p+Si領域121を介して金属膜134Pから取り出される。参考例の光半導体素子900と同様に、正孔の誘電緩和時間は光半導体素子100の応答速度に影響せず、光半導体素子100の応答時間は電子の走行時間に依存する。
【0042】
このとき、p型Ge層133がSi層113と接しているため、Si層113からp型Ge層133に光が伝播するに際して損失は小さく、モード結合性に優れ、入射光は速やかにp型Ge層133に移行する。このため、光の進行方向の単位長さ当たりの受光感度を向上することができ、素子長を大きくせずとも十分に光を吸収することができる。従って、素子容量が小さく、RC時定数の観点からも優れた高速性を得ることができる。p+Si領域121を伝播する距離を長くせずとも十分に光を吸収できるため、p+Si領域121での無効光吸収を抑制することができる。更に、p型Ge層133に金属膜を接触させる必要がないため、光半導体素子900のような金属膜による入射光の無効吸収を避け、無効吸収に伴う受光感度の低下を抑制することができる。
【0043】
更に、本実施形態では、モード変換部142により導波路領域141の光導波路内に強く閉じ込められていた導波光モードが広げられ、p型Ge層133への結合性が向上する。従って、受光感度を向上させることが可能である。また、導波光モードが広げられることで、光吸収層であるp型Ge層133に入射する光の単位面積当たりの強度(光強度密度)が低くなるため、高強度の光が入射してきても、電界遮蔽による電界強度の低下を抑制し、帯域劣化を生じにくくすることができる。
【0044】
更に、詳細は第2の実施形態にて説明するが、製造プロセスの点でも光半導体素子900より優れている。例えば、Si系CMOSトランジスタ等の製造と同様の高精細のプロセス技術を採用できる。また、参考例の光半導体素子900の製造方法と比較して、i型Si層925の形成に相当する工程やGe層へのメタルコンタクト形成が不要となり、工数を削減することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、UTC-PDを含む光半導体素子に関する。
図5Aは、第2の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す上面図である。
図5Bは、第2の実施形態に係る光半導体素子における半導体領域のレイアウトを示す図である。
図5Cは、第2の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図5Cは、
図5A及び
図5B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0046】
図5A~
図5Cに示すように、第2の実施形態に係る光半導体素子200は、Si基板111、Si酸化膜112及びSi層113を含むSOI基板110を有する。光半導体素子100は、導波路領域141、モード変換部142及び光電変換部143を含む。導波路領域141では、Si層113が光導波路の形状に加工されている。モード変換部142では、Si層113が光モード変換器の形状に加工されている。
【0047】
光電変換部143において、例えば、Si層113は矩形の平面形状に加工されている。Si層113は、p+Si領域121Aと、p型Si領域121Bと、i型Si領域122と、n+Si領域123とを含む。p+Si領域121Aと、p型Si領域121Bと、i型Si領域122と、n+Si領域123とは、光電変換部143への光の入射方向に垂直な方向に順に並ぶ。p型Si領域121Bはp+Si領域121Aとi型Si領域122との間にあり、i型Si領域122はp型Si領域121Bとn+Si領域123との間にある。例えば、p+Si領域121AはBを0.5×1019cm-3~2.5×1019cm-3の濃度で含有する。例えば、p型Si領域121BはBを1.5×1018cm-3~2.5×1018cm-3の濃度で含有する。p+Si領域121Aは第3の導電性領域の一例であり、p型Si領域121Bは第4の導電性領域の一例であり、p+Si領域121A及びp型Si領域121Bは第1の導電性領域の一例に含まれる。
【0048】
p型Ge層133はp型Si領域121Bの一部とi型Si領域122の一部との上に形成され、p型Ge層133の下面がp型Si領域121Bの上面の一部とi型Si領域122の上面の一部と接している。Si層113及びp型Ge層133の積層体を覆うようにSi酸化膜131が形成されている。開口部131Pはp+Si領域121Aに達し、金属膜134Pは開口部131Pを通じてp+Si領域121Aにオーミック接触する。
【0049】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0050】
第2の実施形態に係る光半導体素子200によっても、第1の実施形態に係る光半導体素子100と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、p型Ge層133の下面が、p型不純物の濃度がp+Si領域121Aのp型不純物の濃度よりも低いp型Si領域121Bの上面の一部と接しているため、第1の実施形態と比較して、p型Si領域における自由キャリア吸収による感度劣化を更に抑制することができる。
【0052】
更に、以下に説明するように、製造プロセスに関しても光半導体素子900に比べて優れている。
図6A~
図19Aは、第2の実施形態に係る光半導体素子200の製造方法を示す上面図である。
図6B~
図19Bは、第2の実施形態に係る光半導体素子200の製造方法を示す断面図である。
図6B~
図19Bは、それぞれ
図6A~
図19A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0053】
先ず、
図6A及び
図6Bに示すように、SOI基板110を準備し、Si層113を加工する。例えば、Si基板111の厚さは700μm~800μm、Si酸化膜112の厚さは1.5μm~2.5μm、Si層113の厚さは200nm~300nmである。Si層113は、電子線(electron beam:EB)リソグラフィ及び誘導結合型プラズマ(inductively coupled plasma:ICP)ドライエッチングにより加工することができる。例えば、Si層113は、導波路領域141では一方向に延びる直線状に加工し、モード変換部142では導波路領域141から光電変換部143に向かって広がる平面形状に加工し、光電変換部143では矩形の平面形状に加工する。
【0054】
次いで、
図7A及び
図7Bに示すように、p型Si領域121Bを形成する予定の領域を開口する開口部152を備えたフォトレジストマスク151をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク151はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。その後、p型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にp型Si領域121Bを形成する。
【0055】
続いて、
図8A及び
図8Bに示すように、フォトレジストマスク151を除去し、p
+Si領域121Aを形成する予定の領域を開口する開口部154を備えたフォトレジストマスク153をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク153はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。次いで、p型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にp
+Si領域121Aを形成する。
【0056】
その後、
図9A及び
図9Bに示すように、フォトレジストマスク153を除去し、n
+Si領域123を形成する予定の領域を開口する開口部156を備えたフォトレジストマスク155をSOI基板110上に形成する。フォトレジストマスク155はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。次いで、n型不純物のイオン注入を行うことにより、Si層113にn
+Si領域123を形成する。Si層113のうち、p型Si領域121Bとn
+Si領域123との間がi型Si領域122である。
【0057】
その後、
図10A及び
図10Bに示すように、フォトレジストマスク155を除去する。
【0058】
次いで、
図11A及び
図11Bに示すように、SOI基板110上にSi酸化膜131Aを形成する。Si酸化膜131Aは、例えば化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成することができ、Si酸化膜131Aの厚さは10nm~30nmとする。その後、アニールを行うことにより、Si層113に注入したp型不純物及びn型不純物を活性化させる。アニールは、例えば900℃~1100℃の温度、0.5分間~2分間の時間で行う。
【0059】
その後、同じく
図11A及び
図11Bに示すように、p型Ge層133を形成する予定の領域を開口する開口部158を備えたフォトレジストマスク157をSi酸化膜131A上に形成する。フォトレジストマスク157はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。例えば、開口部158の全長は25μm~35μm、全幅は1.5μm~2.5μmとする。
【0060】
続いて、
図12A及び
図12Bに示すように、Si酸化膜131Aのドライエッチングにより、Si酸化膜131Aに開口部132を形成する。次いで、フォトレジストマスク157を除去する。
【0061】
その後、
図13A及び
図13Bに示すように、開口部132の内側でSi層113上にp型Ge層133を形成する。p型Ge層133は、例えば減圧(low pressure:LP)CVD法により形成することができ、その厚さは150nm~250nmとする。例えばp型Ge層133はメサ状にヘテロエピタキシャル成長する。p型Ge層133の成長の際に、p型不純物のインサイチュ(in-situ)ドーピングを行う。
【0062】
次いで、
図14A及び
図14Bに示すように、Si酸化膜131A上にp型Ge層133を覆うようにSi酸化膜を、例えばCVD法により形成し、Si酸化膜131Aを含むSi酸化膜131を形成する。
【0063】
その後、
図15A及び
図15Bに示すように、開口部131Pを形成する予定の領域を開口する開口部160Pと、及び開口部131Nを形成する予定の領域を開口する開口部160Nとを備えたフォトレジストマスク159をSi酸化膜131上に形成する。フォトレジストマスク159はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。p型Ge層133の厚さが150nm~250nmであるため、高精度で露光を行うことができる。
【0064】
続いて、
図16A及び
図16Bに示すように、p
+Si領域121Aに達する開口部131Pと、n
+Si領域123に達する開口部131NとをSi酸化膜131に形成する。開口部131P及び開口部131Nは、例えばドライエッチングにより形成することができる。次いで、フォトレジストマスク159を除去する。
【0065】
その後、
図17A及び
図17Bに示すように、開口部131P及び開口部131Nが埋まるようにしてSi酸化膜131上に金属膜134を形成する。金属膜134としては、例えばAl膜をスパッタリング法により形成する。
【0066】
続いて、
図18A及び
図18Bに示すように、金属膜134Pを形成する予定の領域と、金属膜134Nを形成する予定の領域とを覆うフォトレジストマスク161を形成する。フォトレジストマスク161はフォトレジスト剤の塗布、露光及び現像により形成することができる。
【0067】
次いで、
図19A及び
図19Bに示すように、金属膜134のドライエッチングを行うことにより、金属膜134P及び金属膜134Nを形成する。その後、フォトレジストマスク161を除去する。
【0068】
このようにして第2の実施形態に係る光半導体素子200を製造することができる。
【0069】
この方法では、段差が小さいために、低粘度で薄いフォトレジスト剤を用いて全面を覆うことが可能であり、高精細の加工が可能となる。フォトレジスト剤の露光を行う際に焦点をぼやけさせる程の大きさの段差が生じないため、終始、高精細で露光を行うことができる。また、金属膜134Pがオーミック接触する対象がSi層であるため、厚さ方向で適切な不純物プロファイルを得やすい。更に、仮に、金属膜134Pがオーミック接触するp+Si領域121Aを形成するためのイオン注入が過剰になったとしても、その下方に光吸収層が存在しないため、光吸収への影響は極めて小さい。
【0070】
また、参考例の光半導体素子900の製造方法と比較して、i型Si層925の形成に相当する工程やGe層へのメタルコンタクト形成が不要となり、工数を削減することができる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、UTC-PDを含む光半導体素子に関する。
図20は、第3の実施形態に係る光半導体素子の構成を示す断面図である。
図20は、第1の実施形態に関する
図3A及び
図3B中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0072】
図20に示すように、第3の実施形態に係る光半導体素子300では、Si層113のp
+Si領域121及びi型Si領域122にリセス313が形成され、p型Ge層133に代えて、リセス313を埋めるようにしてp型Ge層333が形成されている。つまり、光半導体素子300はバットジョイント型構造を採用している。例えば、リセス313の深さは80nm~120nmである。Si層113の厚さは、リセス313が形成された部分で、その周囲の部分よりも薄くなっている。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0073】
光半導体素子300では、p型Ge層333が光を吸収し、キャリアを発生する。p型Ge層333にて発生したキャリアのうち、電子はp型Ge層333中を拡散した後にSi層113に到達する。このとき、p型Ge層333とp+Si領域121との界面は電子に対して拡散ブロック層として作用する。このため、電子はi型Si領域122へと優先的に導かれ、i型Si領域122に印加された電界に従ってi型Si領域122内をドリフト走行する。一方、第1の実施形態と同様に、多数キャリアである正孔は誘電拡散によって電子とは逆方向に拡散し、p+Si領域121を介して金属膜134Pから取り出される。
【0074】
そして、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、p型Ge層333がリセス313を埋めるようにして形成されているため、より高効率でp型Ge層333に光を導入することができる。更に、Si層113の上面を基準としたp型Ge層333の上面の高さが、p型Ge層133の上面の高さよりも低いため、露光の精度をより高めることができる。
【0075】
ここで、第3の実施形態に係る光半導体素子300の製造方法について説明する。
図21~
図22は、第3の実施形態に係る光半導体素子300の製造方法を示す断面図である。
【0076】
先ず、第1の実施形態と同様にして、Si酸化膜131Aへの開口部132の形成までの処理を行う。次いで、フォトレジストマスク157を除去する(
図12A及び
図12B参照)。その後、
図21に示すように、Si酸化膜131Aをマスクとして、Si層113をエッチングすることでリセス313を形成する。リセス313は、例えばICPドライエッチングにより形成することができる。
【0077】
続いて、
図22に示すように、リセス313を埋めるようにSi層113上にp型Ge層333を形成する。p型Ge層333は、例えばLPCVD法により形成することができ、その厚さは150nm~250nmとする。例えばp型Ge層333はリセス313からメサ状にヘテロエピタキシャル成長する。
【0078】
その後、第1の実施形態と同様にして、Si酸化膜131の形成以降の処理を行う。このようにして、第3の実施形態に係る光半導体素子300を製造することができる。
【0079】
第3の実施形態の製造方法では、第1の実施形態と比較するとリセス313の形成に伴う処理の分だけ工数が増加する。ただし、光半導体素子300の外部に、光ファイバへの光入出力に使われるグレイティングカプラ等のSi層113へのリセスの形成が必要な光部品が搭載される場合には、マスクレイアウトの変更等によりグレイティングカプラ等の形成と同時にリセス313を形成できるので、工数の増加を回避することができる。
【0080】
なお、第2の実施形態と同様に、Si層113にp+Si領域121A及びp型Si領域121Bが含まれていてもよい。この場合、例えば、リセス313はp型Si領域121B及びi型Si領域122に形成される。
【0081】
第1~第3の実施形態に係る光半導体素子は、例えば、電気信号の処理を行う半導体装置と光半導体素子とをSi基板上に集積した集積回路に好適であり、高速光通信を実現することができる。例えば、コンピュータの中央処理装置(central processing unit:CPU)とメモリとの間の高速光通信や、CPU同士の間の高速光通信に好適である。特に、次世代の大容量光インターコネクト用途に有望である。
【0082】
なお、第1、第2の半導体層の材料はSi及びGeに限定されず、例えば、第1の半導体層としてSi層を用い、第2の半導体層としてSixGe1-x層(0≦x<1)又はGe1-xSnx層(0≦x<1)を用いることができる。
【0083】
また、各半導体層及び各半導体領域の導電型(極性)は上記実施形態のものに限定されない。例えば、上記実施形態とは逆の導電型(極性)となっていてもよい。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、光半導体素子を含む光伝送装置に関する。
図23は、第4の実施形態に係る光伝送装置の構成を示すブロック図である。
【0085】
第4の実施形態に係る光伝送装置は、
図23に示すように、Siフォトニクスコヒーレント集積素子400を含む。Siフォトニクスコヒーレント集積素子400は、局発光LOが入力される入力部410と、受信する信号光SIが入力される入力部420と、送信する信号光SOが出力される出力部430とを有する。
【0086】
Siフォトニクスコヒーレント集積素子400は、入力部420に接続された偏波分離多重素子421と、偏波分離多重素子421に接続された二つのミキサ423A及び423Bと、偏波分離多重素子421とミキサとの間に接続された偏波回転素子422とを有する。Siフォトニクスコヒーレント集積素子400は、更に、ミキサ423Aが出力した光信号を電気信号に変換する受光器424Aと、ミキサ423Bが出力した光信号を電気信号に変換する受光器424Bとを有する。受光器424A及び424Bは、いずれも第1~第3の実施形態のいずれかに係る光半導体素子と同様の構成のUTC-PDを複数含む。ミキサ423A及び423Bには、入力部410に入力された局発光LOが入力される。
【0087】
Siフォトニクスコヒーレント集積素子400は、出力部430に接続された偏波分離多重素子431と、偏波分離多重素子431に接続されたシリコンIQ変調器433と、シリコンIQ変調器433から出力されたQ信号の導波路に設けられた偏波回転素子432とを有する。シリコンIQ変調器433には、入力部410に入力された局発光LOが入力される。
【0088】
第4の実施形態に係る光伝送装置では、受光器424A及び424Bに、第1~第3の実施形態のいずれかに係る光半導体素子と同様の構成のUTC-PDが含まれるため、優れた受光感度を得ることができる。
【0089】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0090】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0091】
(付記1)
第1のバンドギャップを備えた第1の半導体層と、
前記第1のバンドギャップより小さい第2のバンドギャップを備え、前記第1の半導体層上に形成された第1の極性の第2の半導体層と、
を有し、
前記第1の半導体層は、
第1の極性の第1の導電性領域と、
第2の極性の第2の導電性領域と、
前記第1の導電性領域と前記第2の導電性領域との間の非導電性領域と、
を有し、
前記第2の半導体層は、前記第1の導電性領域及び前記非導電性領域に接することを特徴とする光半導体素子。
(付記2)
前記第1の導電性領域にオーミック接触する第1の金属膜と、
前記第2の導電性領域にオーミック接触する第2の金属膜と、
を有することを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
(付記3)
前記第1の導電性領域は、
前記第1の金属膜と接する第3の導電性領域と、
前記非導電性領域と接する第4の導電性領域と、
を有し、
前記第3の導電性領域は前記第4の導電性領域よりも高濃度でp型不純物を含有することを特徴とする付記2に記載の光半導体素子。
(付記4)
前記第1の半導体層の前記第2の半導体層と接する領域にリセスが形成されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記5)
平面視で前記第1の半導体層と前記第2の半導体層とが重なり合う光電変換部と、
前記光電変換部に繋がるモード変換部と、
を有し、
前記モード変換部内で、前記第1の半導体層は、前記光電変換部に近づくほど幅が広くなる平面形状を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記6)
第1の極性はp型であり、
第2の極性はn型であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記7)
前記第1の半導体層がSi層であり、
前記第2の半導体層がSixGe1-x層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記8)
前記第1の半導体層がSi層であり、
前記第2の半導体層がGe1-xSnx層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
(付記9)
付記1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子を有することを特徴とする光伝送装置。
【符号の説明】
【0092】
100、200、300:光半導体素子
113:Si層
121、121A:p+Si領域
121B:p型Si領域
122:i型Si領域
123:n+Si領域
133、333:p型Ge層
134P、134N:金属膜
141:導波路領域
142:モード変換部
143:光電変換部
313:リセス
400:Siフォトニクスコヒーレント集積素子
424A、424B:受光器