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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】センサ付き軸受および同期計測システム
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20240228BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20240228BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240228BHJP
   G08C 17/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/52
G08C17/00 B
G08C17/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019099966
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193669
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】柳野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-311082(JP,A)
【文献】特開2011-061512(JP,A)
【文献】特開2018-189128(JP,A)
【文献】特開2001-272268(JP,A)
【文献】特開2011-158990(JP,A)
【文献】特開2019-046296(JP,A)
【文献】特開2019-018741(JP,A)
【文献】特開2015-114884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00
G01H 17/00
F16C 19/52
F16C 41/00-41/04
G08C 17/00
G08C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受と、
前記軸受の回転角度とは異なる前記軸受に関する物理量を計測し、第1の更新周期で計測値を更新し保持する第1のセンサと、
前記軸受の回転角度を計測し、前記第1の更新周期とは異なる第2の更新周期で計測値を更新し保持する第2のセンサと、
前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのいずれかにおける前記計測値の更新完了タイミングにおいて取得する取得部と、を備え、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのうち少なくとも更新周期の長い方のセンサは、前記計測値の更新が完了するたびに更新完了信号を出力可能であり、
前記取得部は、
前記更新周期の長い方のセンサから出力される前記更新完了信号をトリガとして、前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、DMA(Direct Memory Access)転送する制御部と、
前記制御部によりDMA転送された前記第1のセンサの計測値と前記第2のセンサの計測値とを対応付けて記録する記録部と、を備えることを特徴とするセンサ付き軸受。
【請求項2】
前記第1のセンサは、前記軸受の振動を計測する加速度センサを含み、
前記第2のセンサは、前記軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を計測する角度センサであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付き軸受。
【請求項3】
前記取得部により取得された計測値を外部装置に送信する送信部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ付き軸受。
【請求項4】
前記軸受の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、前記第1のセンサ、前記第2のセンサおよび前記取得部に電力を供給する発電部をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項5】
外部からの電源供給が無い自己発電機能を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項6】
回転機器の回転角度とは異なる前記回転機器に関する物理量を計測し、第1の更新周期で計測値を更新し保持する第1のセンサと、
前記回転機器の回転角度を計測し、前記第1の更新周期とは異なる第2の更新周期で計測値を更新し保持する第2のセンサと、
前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのいずれかにおける前記計測値の更新完了タイミングにおいて取得する取得部と、を備え、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのうち少なくとも更新周期の長い方のセンサは、前記計測値の更新が完了するたびに更新完了信号を出力可能であり、
前記取得部は、
前記更新周期の長い方のセンサから出力される前記更新完了信号をトリガとして、前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、DMA(Direct Memory Access)転送する制御部と、
前記制御部によりDMA転送された前記第1のセンサの計測値と前記第2のセンサの計測値とを対応付けて記録する記録部と、を備えることを特徴とする同期計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付き軸受および同期計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置の異常検知を目的とし、回転機器の状態が正常状態であるか異常状態であるかを示す情報を収集する場面が増えている。回転機器の異常は、主に温度や振動に表れる。
回転体を含む機器の状態を監視する状態監視装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、機器に設置された、振動、音、アコースティックエミッションのいずれかを検出するセンサの信号を分析し、機器の異常診断を行う技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-36124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、回転機器に異常が発生しているか否かを診断することはできるが、異常が発生している箇所(異常発生角度)を特定することはできない。
そこで、本発明は、回転機器に関する物理量を回転機器の回転位置と対応付けて取得することができる同期計測システム、およびそれを利用したセンサ付き軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様のセンサ付き軸受は、軸受と、前記軸受に関する物理量を計測し、第1の更新周期で計測値を更新し保持する第1のセンサと、前記軸受の回転角度を計測し、第2の更新周期で計測値を更新し保持する第2のセンサと、前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのいずれかにおける前記計測値の更新完了タイミングに同期して取得する取得部と、を備える。
これにより、軸受に関する物理量を軸受の位置(角度)と対応付けて取得することができる。したがって、軸受のどの位置(角度)でどのような物理量が生じているかを適切に把握することができる。
【0006】
また、上記のセンサ付き軸受において、前記第1のセンサは、前記軸受の振動を計測する加速度センサであり、前記第2のセンサは、前記軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を計測する角度センサであってもよい。
この場合、軸受の振動を軸受の位置(角度)と対応付けて取得することができる。
【0007】
さらに、上記のセンサ付き軸受において、前記第1の更新周期と前記第2の更新周期とは異なり、前記取得部は、前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのうち更新周期の長い方における前記更新完了タイミングに同期して取得してもよい。
この場合、第1のセンサおよび第2のセンサから、計測タイミングの近い計測値を取得することができる。また、各センサから取得される計測値は、いずれも更新後の計測値とすることができるので、取得データの精度を向上させることができる。
【0008】
また、上記のセンサ付き軸受において、前記取得部は、前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、DMA(Direct Memory Access)転送する制御部と、前記制御部によりDMA転送された前記第1のセンサの計測値と前記第2のセンサの計測値とを対応付けて記録する記録部と、を備えてもよい。
この場合、CPUを介さずに、直接、記録部にセンサの計測値を書き込むことができるので、CPUの負荷を軽減させることができる。
【0009】
さらにまた、上記のセンサ付き軸受において、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのうち少なくとも1つのセンサは、前記計測値の更新が完了するたびに更新完了信号を出力可能であり、前記制御部は、前記更新完了信号を出力可能なセンサのいずれかから出力される前記更新完了信号を、前記DMA転送のトリガとしてもよい。
このように、センサの更新完了信号を、DMA起動用の割り込み信号としてもよい。これにより、確実にいずれかのセンサの計測値が更新完了するタイミングに同期して、第1のセンサおよび第2のセンサの計測値を取得することができる。
【0010】
また、上記のセンサ付き軸受において、前記記録部は、前記計測値を無変換で記録してもよい。このように、無変換データ(センサの生データ)を記録部に記録することで、データ変換の処理を省くことができ、その分の消費電力を削減することができる。
さらに、上記のセンサ付き軸受は、前記取得部により取得された計測値を外部装置に送信する送信部をさらに備えてもよい。この場合、外部装置において計測値を解析することで、例えば軸受の異常診断が可能となる。また、このとき、軸受の異常発生箇所(角度)も特定可能である。
【0011】
また、上記のセンサ付き軸受は、前記軸受の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、前記第1のセンサ、前記第2のセンサおよび前記取得部に電力を供給する発電部をさらに備えてもよい。この場合、外部からの電源供給が不要な自己発電機能を有するセンサ付き軸受において、軸受に関する物理量と回転位置(角度)との対応データを適切に取得することができる。
さらに、本発明の一つの態様の同期計測システムは、回転機器に関する物理量を計測し、第1の更新周期で計測値を更新し保持する第1のセンサと、前記回転機器の回転角度を計測し、第2の更新周期で計測値を更新し保持する第2のセンサと、前記第1のセンサが保持する計測値と前記第2のセンサが保持する計測値とを、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサのいずれかにおける前記計測値の更新完了タイミングに同期して取得する取得部と、を備える。
これにより、回転機器に関する物理量を回転機器の位置(角度)と対応付けて取得することができる。したがって、回転機器のどの位置(角度)でどのような物理量が生じているかを適切に把握することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、回転機器(例えば軸受)に関する物理量を回転機器の回転位置と対応付けて取得することができるので、例えば、軸受の異常発生箇所(角度)の特定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態における計測システムの概要を示す図である。
図2図2は、第一の実施形態における各センサの更新周期を示す図である。
図3図3は、計測データの取得処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、計測データの一例を示す図である。
図5図5は、第一の実施形態における異常検出を行う場合を模式的に説明する図である。
図6図6は、第二の実施形態における各センサの更新周期を示す図である。
図7図7は、第二の実施形態における異常検出を行う場合を模式的に説明する図である。
図8図8は、センサ付き軸受の構成を示す分解斜視図である。
図9図9は、センサ付き軸受の構成を示す分解斜視図である。
図10図10は、カバーとコイル基板の構成例を示す平面図である。
図11図11は、回路基板の構成例である。
図12図12は、センサ付き軸受の適用例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0015】
(第一の実施形態)
本実施形態では、回転機器に関する物理量を回転機器の回転位置(回転角度)と対応付けた計測データを取得する計測システムについて説明する。
この計測システムは、例えば、センサ付きのセンサ付き軸受に適用することができる。当該センサ付き軸受は、軸受と、軸受に関する物理量を検出する第1のセンサと、軸受の回転位置(回転角度)を検出する第2のセンサと、を備える。この場合、計測システムは、軸受に関する物理量を軸受の回転角度と対応付けた計測データを取得する。ここで、上記物理量は、軸受の振動を示す加速度とすることができる。つまり、第1のセンサは、軸受の振動を検出する加速度センサとすることができる。また、第2のセンサは、軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を検出する角度センサである。
【0016】
まず、計測システムの概要について、図1を参照しながら説明する。
ここでは、計測システム200は、軸受の振動(加速度)と位置(回転角度)とを対応付けた計測データを取得する場合について説明する。この計測システム200は、制御部210と、計測部220と、記録部230と、を備える。
制御部210は、マイクロコンピュータ(マイコン)により構成することができる。制御部210は、CPU211と、DMAコントローラ(Direct Memory Access Controller:DMAC)212と、を備える。計測部220は、加速度センサ221と、角度センサ222と、を備える。記録部230は、メモリ231を備える。なお、記録部230は、制御部210が備えていてもよい。
【0017】
CPU211は、メモリ231およびセンサ221、222の初期化や、DMAC212の初期設定を行う。DMAC212は、DMAトリガを入力すると、DMA転送を開始する。具体的には、DMAC212は、DMAトリガを入力すると、CPU211を介さずに、加速度センサ221および角度センサ222がそれぞれ保持する最新の計測値(センサデータ)を、無変換データ(生データ)のままメモリ231に転送する。
加速度センサ221および角度センサ222は、センサ内部において、それぞれ定められた更新周期で計測値を更新し、保持する。加速度センサ221および角度センサ222は、外部から計測値の送信要求があった場合、その瞬間に保持している計測値を外部に送信する仕組みとなっている。
【0018】
図2は、加速度センサ221および角度センサ222の更新周期を示す図である。本実施形態では、加速度センサ221および角度センサ222は、計測値の更新完了タイミングが同期するように設定されているものとする。つまり、加速度センサ221の更新周期(第1の更新周期)と、角度センサ222の更新周期(第2の更新周期)とは等しい。なお、センサの更新周期は、センサの性能に応じて予め定められている。
【0019】
また、本実施形態では、加速度センサ222は、センサ内部で保持する計測値(加速度)が更新されるたびに、割り込み信号(INT信号)をDMAC212へ出力する設定となっている。DMAC212は、加速度センサ222から出力されるINT信号をDMAトリガとして使用し、上述したDMA転送を行う。
本実施形態では、加速度センサ221と角度センサ222との計測値の更新完了タイミングは等しい。したがって、DMAC212は、加速度センサ221と角度センサ222とでそれぞれ計測値が更新完了されたタイミングで、更新後の各センサの計測値である加速度データと角度データとを取得し、メモリ231に転送する。
【0020】
メモリ231は、例えばSRAM等により構成することができる。なお、メモリ231は、NAND型またはNOR型のフラッシュメモリ等であってもよい。このメモリ231は、DMAC212から転送される計測値(角度データ、加速度データ)を格納する。このとき、メモリ231は、角度データと加速度データとを一対一で対応付け、計測データとして格納する。
このように、計測システム200は、加速度センサ221の計測値(加速度データ)と角度センサ222の計測値(角度データ)とを、加速度センサ221における計測値の更新完了タイミングに同期して取得し、記録する、同期計測システムとして機能する。図1において、制御部210および記録部230が取得部に対応している。
【0021】
図3は、計測データの取得処理の手順を示すフローチャートである。
この図3に示す処理は、例えばユーザが電源をオン状態とするなど、制御部210および計測部220に電力が供給されたタイミングで開始される。
まずステップS1において、CPU211は、加速度センサ221および角度センサ222を初期化するとともに初期設定を行う。また、CPU211は、DMAC212の初期設定を行う。
次にステップS2において、センサ221および222は、測定開始信号が入力されたか否かを判定する。そして、センサ221および222は、測定開始信号が入力されていない場合には測定開始信号が入力するまで待機し、測定開始信号が入力されたと判定するとステップS3に移行して計測値の測定を開始する。
【0022】
ステップS4では、CPU211は、測定開始から所定の測定時間が経過したか否かを判定する。ここで、測定時間は、例えば1秒とすることができる。測定時間は、軸受の回転輪が少なくとも1回転するために要する時間以上に設定する。なお、当該測定時間は、記録部230の容量や消費電力との兼ね合いによって適宜設定することができる。
そして、CPU211は、測定開始から上記の測定時間が経過していないと判定した場合には、ステップS5に移行し、測定開始から上記の測定時間が経過したと判定した場合には、ステップS8に移行する。
なお、マイコンの選定によってはCPUの動作を止めた状態(低消費電力モード)でDMAを実施できる場合がある。その場合は、測定時間の経過をマイコン内のタイマによって監視し、監視中はCPUの動作を止めておいてもよい。CPUの動作を止めることで、より低消費電力で角度・加速度の同期計測システムを構築することができる。
【0023】
ステップS5では、DMAC212は、加速度センサ221からINT信号を受信したか否かを判定し、INT信号を受信していない場合には、DMAトリガを受信していないと判断してステップS4に戻る。一方、DMAC212は、加速度センサ221からINT信号を受信したと判定した場合には、DMAトリガを受信したと判断してステップS6に移行する。
ステップS6では、DMAC212は、加速度センサ221から加速度データ、角度センサ222から角度データをそれぞれ読み取り、ステップS7に移行する。
ステップS7では、DMAC212は、センサ221、222から読み取った計測値(加速度データ、角度データ)をメモリ231へ転送し、ステップS4に戻る。
【0024】
図4は、メモリ231に保存される計測データの一例を示す図である。
この図4に示すように、メモリ231には、測定開始から所定の測定時間が経過するまでの間に測定された複数の角度データと加速度データとの対応データが保存される。
ステップS8では、CPU211は、メモリ231に保存された計測データを外部へ送信し、図3の処理を終了する。
【0025】
計測システム200により送信された計測データは、例えば送信先の外部装置において、軸受の異常診断に用いられる。具体的には、図5の左図に模式的に示すように、3周分の計測データが取得されている場合、角度ごとに振動の加算平均を行うことで、図5の右図に示す結果が得られる。これにより、角度Dに加速度のピークが存在し、角度Dの位置で他の角度とは異なる振動が発生していることを特定することができる。なお、本実施形態では、計測データの取得周期を短くすると、ほぼ連続したデータを得ることができる。
このように、複数回計測されたデータを平均化することで、機械的にノイズを除去し、特徴量の抽出を行うことができる。したがって、ノイズ除去のための複雑な処理等が不要であり、また、機種、個体ごとのチューニングも不要であるため、処理が容易である。
【0026】
なお、本実施形態では、加速度センサ221が計測値の更新完了タイミングで出力するINT信号を、DMAトリガとして使用する場合について説明した。しかしながら、角度センサ222が計測値の更新完了タイミングで出力するINT信号を、DMAトリガとして使用してもよい。本実施形態のように、加速度センサ221と角度センサ222との更新完了タイミングが同期されている場合、どちらのINT信号をDMAトリガとして使用しても、取得される計測データは同一となる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態における計測システム200は、加速度センサ221における計測値の更新完了タイミングに同期して、加速度センサ221が保持する計測値と角度センサ222が保持する計測値とを取得することができる。したがって、加速度データと角度データとが一対一で対応した計測データを取得することができる。その結果、回転中どの角度でどのような振動が起きているのかを適切に把握することができ、異常発生箇所(角度)を適切に特定することができる。
従来、振動を監視して回転機器の異常診断を行う場合、回転数を一定と仮定し、加速度単体のデータからピーク値、実効値、クレストファクタ値などの特徴量を検出したり、周波数解析を行ったりしていた。しかしながら、実際は回転機器の回転数は一定ではなかったり、ノイズの影響を受けたりする。そのため、振動による異常診断の精度を高めるためには、回転速度の変動の影響を低減させたり、回転振動データのノイズを除去したりといった対策が講じられてきた。ところが、これらの対策には、実機などのデータをもとに閾値を決める処理は必要である。また、数値処理だけではノイズが残ってしまう場合もある。さらに、数値処理であるため、処理を重ねることで誤差が積み重なるおそれもある。
【0028】
これに対して、本実施形態では、加速度データと角度データとが一対一で対応した計測データを取得することができるので、回転数のばらつきを気にする必要がない。また、複数回計測された計測データを取得できれば、当該データを機械的に平均化することで、容易にノイズを除去することができる。そのため、上記のように信号処理のための閾値を決める必要もない。
さらに、加速度単体のデータでは特定に至らなかった異常発生箇所(角度)も容易に特定することができる。したがって、その異常診断結果を、設備の保守や設計の改善に活かしやすくなる。また、計測を続けることで、異常の進行度合いをモニタすることも可能である。
【0029】
また、計測システム200は、マイコンにセンサをつなぐことで構成全体の小型化に貢献している。そのため、小型のデバイス筐体であっても同一筐体内に計測システム200を格納することが可能である。
さらに、各センサから取得した計測値は、無変換データのままメモリ231に記録することができる。そのため、データ記録時に、例えば16進数表記から10進数表記への変換などのデータ処理が不要であり、高速なデータ格納が可能である。また、データ処理による負荷を軽減させることができるとともに、消費電力を低減させることができる。
また、計測システム200は、各センサが保持する計測値をDMA転送するDMAC212と、DMAC212によりDMA転送された計測値を記録するメモリ231と、を備えることができる。このようにDMA転送によりデータ取得およびデータ格納を行うことができるため、CPU211の負荷を軽減することができる。
つまり、本実施形態における計測システム200は、安価なMEMSセンサや低消費電力のマイコンにより構成することが可能である。
【0030】
さらに、加速度センサ221および角度センサ222の少なくとも一方が、計測値の更新が完了するたびに更新完了信号を出力可能である場合、更新完了信号を出力可能なセンサのいずれかから出力される更新完了信号をDMA転送のトリガとすることができる。例えば、加速度センサ221の更新完了信号をDMA転送のトリガとした場合、加速度センサ221における計測値の更新完了タイミングに同期して、加速度センサ221および角度センサ222の計測値のDMA転送を実行することができる。このように、確実にいずれかのセンサの計測値が更新完了するタイミングに同期して、各センサの計測値を取得することができる。
【0031】
(第二の実施形態)
次に、本発明における第二の実施形態について説明する。
上述した第一の実施形態では、加速度センサ221および角度センサ222は、計測値の更新完了タイミングが同期するように設定されている場合について説明した。本実施形態では、加速度センサ221の更新周期と角度センサ222の更新周期とが異なり、計測値の更新完了タイミングが異なるように設定されている場合について説明する。
【0032】
図6は、本実施形態における加速度センサ221および角度センサ222の更新周期を示す図である。本実施形態では、加速度センサ221の更新周期が、角度センサ222の更新周期よりも長くなるように設定されているものとする。また、加速度センサ221および角度センサ222は、いずれも計測値が更新完了されたタイミングでDMAC212に対してINT信号を出力可能であるものとする。
このように、加速度センサ221の更新周期と角度センサ222の更新周期とが異なる場合、更新周期の長い方のセンサにおいて計測値が更新完了されたタイミングで出力されるINT信号を、DMAトリガとして使用する。つまり、本実施形態では、更新周期の長い加速度センサ221から出力されるINT信号をDMAトリガとして使用する。
【0033】
このように、更新周期の長い方のセンサから出力されるINT信号をDMAトリガとして使用することで、同期計測に近い結果を得ることができる。以下、この点について詳細に説明する。
加速度センサ221のINT信号をDMAトリガとした場合、DMAC212は、図6の時刻t1と時刻t3とにおいて、加速度センサ221および角度センサ222の計測値を取得する。ここで、時刻t3においてDMAC212が取得する加速度センサ221の計測値は、加速度センサ221が時刻t3において更新した計測値である。また、時刻t3においてDMAC212が取得する角度センサ222の計測値は、角度センサ222が時刻t2において更新した計測値である。つまり、時刻t3において取得される加速度データと角度データとには、時間的幅Δt1の計測タイミング誤差が生じていることになる。
【0034】
これに対して、角度センサ222のINT信号をDMAトリガとした場合、DMAC212は、角度センサ222の計測値が更新されるたびに、加速度センサ221および角度センサ222の計測値を取得する。しかしながら、加速度センサ221の計測値は、時刻t1から時刻t3までの間、更新されない。そのため、角度センサ222のINT信号をDMAトリガとした場合、時刻t1においてDMAC212が取得する加速度データ221の計測値と、時刻t3よりも前の時刻t2においてDMAC212が取得する加速度データ221の計測値とは、同じ値となる。つまり、時刻t2において取得される加速度データと角度データとには、時間的幅Δt2といった大きな計測タイミング誤差が生じることになる。
【0035】
このように、更新周期の短い方のセンサから出力されるINT信号をDMAトリガとして使用した場合、計測値の取得タイミングによっては、更新周期の長い方のセンサから更新前の計測値を取得してしまうことになり、計測誤差が大きくなる。
本実施形態のように、更新周期の長い方のセンサから出力されるINT信号をDMAトリガとして使用することで、計測タイミング誤差の少ないデータを取得することができる。つまり、同期計測に近い結果を得ることができ、計測データ精度を向上させることができる。また、精度の低い計測データは取得しないようにすることができるので、その分の消費電力を削減し、省電力化を図ることができる。
【0036】
このようにして取得された計測データは、上述した第一の実施形態と同様に、例えば外部装置において、軸受の異常診断に用いることができる。具体的には、図7の左図に模式的に示すように、3周分の計測データが取得されている場合、角度ごとに振動の加算平均を行うことで、図7の右図に示す結果が得られる。これにより、角度Dに加速度のピークが存在し、角度Dの位置で他の角度とは異なる振動が発生していることを特定することができる。なお、本実施形態では、計測データの取得周期がやや長くなるため、第一の実施形態と比較して離散的なデータが得られることになる。
【0037】
なお、ここでは、更新周期の長い方の加速度センサ221がINT信号を出力可能である場合について説明したが、更新周期の短い方の角度センサ222のみがINT信号を出力可能である場合には、角度センサ222のINT信号をDMAトリガとして使用してもよい。この場合、加速度センサ221のINT信号をDMAトリガとして使用する場合と比較して計測タイミング誤差は大きくなるが、加速度データと角度データとの対応データを取得することは可能である。
【0038】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
図8および図9は、上述した計測システム200を備えるセンサ付き軸受1の構成を示す分解斜視図である。図8は、センサ付き軸受1をカバー10側から見た図であり、図9は、センサ付き軸受1を軸受120側から見た図である。
センサ付き軸受1は、センサ付き発電ユニット100と、軸受120と、を備える。センサ付き発電ユニット100は、軸受120の一方の側面に取り付けられる。センサ付き発電ユニット100は、カバー10と、コイル基板20と、回転部30と、回路基板40と、バックカバー60と、を備える。ここで、バックカバー60は、基板上の電子回路の保護を目的として設置されている。なお、バックカバー60は設置せず、ポッティング剤などにより基板を保護してもよい。
【0039】
カバー10は、リング状の平板部材であり、例えば、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400またはS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)またはフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)などのような磁性を有する材料により形成される。
このカバー10の軸受120と対向する側の面には、図9に示すように、回路基板40が取り付けられている。回路基板40は、電源基板41と、センサ基板42とを備える。電源基板41およびセンサ基板42は、例えばカバー10に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルトが締結することで、当該カバー10に固定される。この場合、ボルトは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有する。なお、電源基板41およびセンサ基板42は、必要に応じて任意に分割または一体化することができる。
【0040】
また、カバー10には、貫通孔が開けられており、この貫通孔は、樹脂などの非磁性材料で形成された非磁性蓋17で密閉されている。後述するように、センサ基板42には、アンテナ47(後述の図10参照)が実装される。カバー10は磁性を有するので、アンテナ47からの電磁波をシールドする作用を有する。しかしながら、アンテナ47は非磁性蓋17と対向する位置に配置され、これにより、アンテナ47の電磁波は、非磁性蓋17を介して、外部の通信部へ到達することができる。
【0041】
コイル基板20は、カバー10の軸受120と対向する側の面に取り付けられている。コイル基板20は、例えば接着剤を介してカバー10に固定されている。
図10は、カバー10とコイル基板20の構成例を示す平面図である。コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。なお、ヨーク25の設置は任意である。フレキシブル基板21の平面視による形状は、回転軸Axを中心とする正円のリング状である。コイルパターン23は、フレキシブル基板21の厚さ方向に積層された複数の平面コイルを有する。平面コイルとは、絶縁体の所定の面上にパターニングされて設けられた導電体のパターンである。本実施形態においては、導電体のパターンが絶縁体の複数の面上に形成されている。これに限られず、導電体のパターンが絶縁体の1つの面上に形成されていてもよい。コイルパターン23のターン数は平面コイルの積層数に比例する。本実施形態では、センサ付き発電ユニット100の用途によって、平面コイルの積層数を変化させ発電量を調整してもよい。
また、コイルパターン23は、平面視で、回転軸Axを中心とする円の円周方向に沿って凹凸が交互に並ぶように延設されている。この凹凸の凹部にヨーク25が1つずつ配置されている。コイルパターン23は、後述するエンコーダマグネットの磁気変化を検出できる位置に角度センサを配置するため、一部円形を欠けさせる形状となってもかまわない。
【0042】
また、電源基板41とセンサ基板42とは、平面視で、コイル基板20よりも外周側に取り付けられている。電源基板41には、電源部43が実装されている。電源部43は、発電部50(後述の図11参照)から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。
【0043】
センサ基板42には、センサ44と、制御回路部45と、アンテナ47とが実装されている。センサ44は、例えば、加速度センサ441と、温度センサ442および角度センサ443を有する。なお、センサ44、制御回路部45およびアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部または全部が1つのICチップで構成されていてもよい。
【0044】
また、図10では簡略化しているが、コイルパターン23の両端は、リード線16を介して電源基板41に接続される。なお、本実施形態において、コイルパターン23と電源基板41との接続は、リード線16ではなく、FPC(Flexible Printed Circuit)コネクタを介して行われてもよい。または、コイル基板20を延長して電源基板41と直接接続されてもよい。FPCコネクタを使用した接続では、半田が不要となるので、センサ付き発電ユニット100の生産性をさらに高めることができる。
【0045】
図8および図9に戻って、回転部30は、リング状の磁気トラック31と、リング状の基材33と、リング状の取付け治具35と、を有する。基材33および取付け治具35は、磁性を持つ金属材料であることが望ましい。磁気トラック31は、基材33の一方の面側に設けられている。取付け治具35は、基材33の他方の面側に固定されている。取付け治具35は、基材33の他方の面側から、基材33の中央に位置する貫通した開口部を通って、基材33の一方の面側に突き出ている。基材33の一方の面側はカバー10と対向する面側である。基材33の他方の面側はバックカバー60と対向する面側である。
なお、磁気トラック31は、基材33に対して着脱可能な構成であってもよい。また、上述したようにバックカバー60を設置しない場合、磁気トラック31は、軸受120に設けられていてもよい。この場合、例えば、磁気トラック31は、軸受120に形成された溝に圧入されていてもよい。
【0046】
本実施形態では、磁気トラック31と基材33とを合わせて、エンコーダマグネットという。例えば、エンコーダマグネットは、金属製の基材の一方の面にプラスチックマグネットが形成され、形成されたプラスチックマグネットの表面にN極とS極とが交互に着磁されることにより形成される。取付け治具35は、エンコーダマグネットを、センサ付き発電ユニット100と軸受120とに通される軸部に取り付けるために使用される。
【0047】
磁気トラック31は、N極31NとS極31Sとからなる磁極対311を複数有する。複数の磁極対311は、磁気トラック31の円周方向に並んでいる。N極31NおよびS極31Sは、交互に配置されている。
また、磁気トラック31における隣り合うN極31NとS極31Sとの中心間の距離は、コイル基板20における隣り合うヨーク25の中心間の距離と同じ長さになっている。
【0048】
本実施形態では、回転軸Ax(図10参照)を中心に、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、隣り合うヨーク25のうち一方のヨーク25がN極と対向するときは、他方のヨーク25はS極と対向する。また、一方のヨーク25がS極と対向するときは、他方のヨーク25はN極と対向する。つまり、コイル基板20の隣り合うヨーク25は、磁気トラック31の同一磁極と対向することはない。これにより、一方のヨーク25を通る磁束密度の変化の位相と、他方のヨーク25を通る磁束密度の変化の位相は、180°ずれた状態となる。
【0049】
このように、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、ヨーク25と対向する磁極が交互に替わる。これにより、ヨーク25を通る磁束密度が周期的に変化する。この磁束密度の周期的な変化に応じて、ヨーク25の周りに位置するコイルパターン23に電圧変化(例えば、正弦波の交流電圧)が発生する。
【0050】
図11は、センサ付き軸受1が備える回路基板40の構成例を示す図である。回路基板40は、上述したように、電源基板41と、センサ基板42と、を備える。ここで、センサ基板42は、角度センサ基板42aと、制御基板42bと、を備える。
電源基板41は、整流回路43aを備える。この整流回路431は、電源部43(図10参照)に含まれる。
【0051】
発電部50は、磁気トラック31(図8参照)とコイル基板20(図9参照)と、を備える。発電部50は、軸受120の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、センサ基板42に電力を供給する。
発電部50は、単相交流電力を発電して整流回路431に出力する。整流回路431は、発電部50で発電された単相交流電力を全波整流して直流電力へと変換する。整流回路431としてダイオードブリッジが例示されるが、本実施形態はこれに限定されない。整流回路431から出力された直流電力は、不図示の平滑回路により平滑化され安定した電源となる。その後、不図示の蓄電回路および蓄電器に蓄電される。蓄電器に蓄電された直流電力は、計測を行うタイミングで不図示の定電圧出力回路により一定電圧に調整された後、センサ基板42に出力される。
【0052】
センサ基板42の角度センサ基板42aには、角度センサ443が実装されている。また、センサ基板42の制御基板42bには、加速度センサ441と、マイコン451と、外部メモリ452と、無線モジュール(送信部)453と、が実装されている。マイコン451、外部メモリ452および無線モジュール453は、制御回路部45(図10参照)に含まれる。
加速度センサ441および角度センサ443は、電源基板41から供給される直流電力を使用して、加速度や回転角度を検出する。
例えば、角度センサ443は、磁気トラック31の側方に位置するように角度センサ基板42aに実装されている。磁気トラック31を有する回転部30は軸受120の内輪に固定されており、角度センサ443は、軸受120の内輪と共に磁気トラック31が回転することによって変化する磁束密度を検出することによって、軸受120の外輪に対する内輪の回転角度を検出する。
なお、角度センサ443の種類は、インクリメンタル型であってもよいし、アブソリュート型であってもよい。
【0053】
マイコン451は、CPU451aと、DMAC451bと、内部メモリ451cと、を備える。マイコン451は、センサ44から取得した計測値を外部メモリ452に書き込む。
ここで、マイコン451は、図1の制御部210に対応している。つまり、CPU451aが図1のCPU211に対応し、DMAC451bが図1のDMAC212に対応している。また、センサ44が図1の計測部220に対応し、外部メモリ452が図1の記録部230に対応している。
【0054】
無線モジュール453は、CPU451aの制御下で、内部メモリ451cや外部メモリ452に記憶されたデータを外部に送信する。この無線モジュール453は、図10のアンテナ47を備える。例えば、無線モジュール453は、無線通信によりデータを外部装置に送信する。送信されたデータは、外部装置の通信部で受信され、処理される。
なお、本実施形態では、センサ付き軸受1と外部装置とが無線通信を行う場合について説明したが、センサ付き軸受1と外部装置との間で通信可能な構成であれば、その通信規格は問わない。つまり、センサ付き軸受1から外部装置へのデータ送信は、有線通信により行ってもよい。
【0055】
なお、ここでは、センサ44から取得した計測値を外部メモリ452に書き込む場合について説明したが、センサ44から取得した計測値を内部メモリ451cに書き込むようにしてもよいし、内部メモリ451cと外部メモリ452とを併用してもよい。また、内部メモリ451cと外部メモリ452とは1つのメモリであってもよい。
【0056】
上述したように、本実施形態における計測システム200は、小型化かつ省電力化を実現することができ、小型のデバイス筐体内にも格納可能である。そのため、本計測システム200は、上記のような磁気エンコーダを利用したセンサ付き軸受1において、軸受の内輪と外輪との狭い空間にも格納可能で、同一筐体でセンサデバイスを構築することが可能になる。また、外部からの電源供給の無い自己発電機能を有するデータ無線送信型のデバイスにも適用可能である。
このように、自己発電機能を有するデータ無線送信型のセンサ付き軸受1に適用した計測システム200は、自己発電機能により生成された微小な電力を用いて、軸受に関する物理量を軸受の回転位置(角度)と対応付けたデータを取得し、外部装置へ無線送信することが可能である。
なお、ここでは、自己発電機能を有するセンサ付き軸受1に適用する場合について説明したが、電源は外部給電であってもよい。
【0057】
さらに、上述したセンサ付き軸受1は、例えば水車の軸受部に適用することができる。
図12は、センサ付き軸受1を備えるペルトン水車300の構成を示す図である。
ペルトン水車300は、羽根車(ランナ)311を備える。ランナ311の外周には、多数個の羽根(バケット)312が設けられている。
また、ペルトン水車300は、複数個(図12では、2個)のノズル321を備える。各ノズル321内には、ニードル弁322が進退移動可能に配置されている。ニードル弁322によってノズル321の開度を制御し、ノズル321の先端から水を噴射すると、羽根312がその水を受け、羽根車311が回転する。ペルトン水車300は、この羽根車311の回転によって発電する。
【0058】
羽根車311の回転中は、各羽根312に水が当たることで軸受に振動が発生する。このとき、ペルトン水車300が備える複数の羽根312のうちのいずれかに何らかの異常が発生している場合、その羽根312に水が当たったときの振動レベルは、他の羽根312に水が当たったときの振動レベルとは異なる。
したがって、ペルトン水車300の軸受部に上述したセンサ付き軸受1を設置して、軸受の振動と回転位置(角度)とを対応付けた計測データを取得し、取得した計測データを解析することで、どの羽根311に異常が発生しているかを特定することができる。例えば、4番目の羽根312に異常が発生していると特定された場合、異常が発生している4番目の羽根312のみを修理、交換することができ、メンテナンスのコストを低減させることができる。
【0059】
(変形例)
上記実施形態においては、回転機器が軸受である場合について説明したが、回転機器は、例えば歯車であってもよい。この場合にも、歯車の振動を計測する加速度センサと、歯車の回転角度を計測する角度センサとをマイコンにつなぐことで、歯車の振動と回転位置(角度)とを対応付けた計測データを取得する計測システムを構成することができる。この場合、取得された計測データをもとに、歯車のどの歯に異常が発生しているかといった診断が可能となる。
また、上記実施形態においては、軸受に関する物理量として、軸受の振動を示す加速度を検出する加速度センサを用いる場合について説明したが、物理量は振動(加速度)に限定されない。例えば、軸受において生じる摩擦音を検出する超音波センサを用いることもできる。この場合にも、軸受のどの位置(角度)で異常音が発生しているかを特定することが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態においては、加速度データと角度データとを対応付けた計測データを取得する場合について説明したが、加速度データおよび角度データを含む3種類以上の計測値を対応付けた計測データを取得することもできる。この場合、3種類以上のセンサの各計測値を、各センサのいずれかにおける計測値の更新完了タイミングに同期して取得する。例えば、各計測値を、3種類以上のセンサのうちの少なくとも2つのセンサにおいて更新周期が長い方の更新完了タイミングに同期して取得する。
【0061】
さらに、上記実施形態においては、計測データを軸受の異常診断に用いる場合について説明したが、計測データの使用方法は問わない。つまり、計測データは、異常診断以外にも使用可能である。
例えば、上述したセンサ付き軸受1をロボットアームの関節部に適用した場合、ロボットアームがどの角度であるときに振動が発生するかを特定することができる。したがって、この場合には、振動が発生しない軌道を描いてアーム先端が移動するようにティーチングするようにしてもよい。
【0062】
なお、上記の同期計測システムの構成は、回転機器に限って適用されるものではなく、例えば直動機構にも適用可能である。直動機構に適用した場合、水平方向の位置とその機器に関する物理量とを同期して計測することができる。
また、上記の同期計測システムは、角度(位置)と他の物理量とを同期計測するシステムに限らず、複数の異なるセンサによりそれぞれ計測された複数の物理量を同期計測するシステムに適用可能である。例えば、工場内のパイプ内の流体の圧力変化と振動とを同期計測するシステムに適用することができる。この場合、パイプの破損などの故障検知や予知を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1…センサ付き軸受、100…センサ付き発電ユニット、120…軸受、200…計測システム、210…制御部、211…CPU、212…DMAコントローラ(DMAC)、220…計測部、221…加速度センサ、222…角度センサ、230…記録部、231…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12