(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20240228BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240228BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240228BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/687 A
H02M1/00 E
H02M1/00 H
H02M1/00 R
(21)【出願番号】P 2019112866
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 翔
(72)【発明者】
【氏名】岩水 守生
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-061948(JP,A)
【文献】特開2016-001822(JP,A)
【文献】特開2017-126953(JP,A)
【文献】特開2017-229131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子と出力端子との間に接続されたパワー半導体スイッチと、
入力端子に入力された信号に応じて前記パワー半導体スイッチをオン・オフさせる論理出力信号を生成する論理回路と、
前記パワー半導体スイッチの温度が過熱検出閾値を超えたときに前記論理回路へ過熱検出信号を送出する過熱検出回路と、
前記パワー半導体スイッチの電流が所定の値を検出したときに前記論理回路へ過電流検出信号を送出する過電流検出回路と、
前記電源端子に印加される電源電圧が所定の電圧を超えたときに前記過熱検出回路へ高電圧検出信号を送出する高電圧検出回路と、
を備え、
前記過熱検出回路は、前記過電流検出信号または前記高電圧検出信号の少なくとも一方を受けて前記過熱検出閾値を正常動作時の第1の閾値から前記第1の閾値より低い第2の閾値に変更
し、
前記過熱検出回路は、複数のダイオードを直列に接続した温度検出センサと、前記過電流検出信号および前記高電圧検出信号を入力する論理和回路と、前記論理和回路の出力を受けて前記複数のダイオードの一部を短絡するスイッチ素子とを有している、
半導体装置。
【請求項2】
前記論理回路は、前記過電流検出信号が入力されると、前記論理出力信号として前記パワー半導体スイッチをチョッピング動作させる信号を生成して出力する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記過電流検出回路は、前記出力端子の電圧を入力し、前記パワー半導体スイッチのオン抵抗による電圧降下が出力反転閾値よりも低いとき前記過電流検出信号を出力するインバータ回路を有している、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
電源端子と出力端子との間に接続されたパワー半導体スイッチと、
入力端子に入力された信号に応じて前記パワー半導体スイッチをオン・オフさせる論理出力信号を生成する論理回路と、
前記パワー半導体スイッチの温度が過熱検出閾値を超えたときに前記論理回路へ過熱検出信号を送出する過熱検出回路と、
前記電源端子に印加される電源電圧が所定の電圧を超えたときに前記過熱検出回路へ高電圧検出信号を送出する高電圧検出回路と、
を備え、
前記過熱検出回路は、前記高電圧検出信号を受けて前記過熱検出閾値を正常動作時の第1の閾値から前記第1の閾値より低い第2の閾値に変更し、
前記高電圧検出回路は、前記電源端子とグランド端子との間に直列に接続された第1の定電流回路、第2の定電流回路および複数のツェナーダイオードと、前記第1の定電流回路に並列に接続されて前記電源端子の電圧を基準とした論理信号を生成する論理信号生成用ツェナーダイオードと、前記第1の定電流回路および前記第2の定電流回路の接続部の電圧を入力し、前記電源端子に印加される電圧が前記論理信号生成用ツェナーダイオードおよび前記複数のツェナーダイオードの降伏電圧の和より高いとき前記高電圧検出信号を出力するインバータ回路とを有している、
半導体装置。
【請求項5】
前記過熱検出回路は、複数のダイオードを直列に接続した温度検出センサと、前記高電圧検出信号を受けて前記複数のダイオードの一部を短絡するスイッチ素子とを有している、
請求項4記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に電源のグランド側に配置された負荷を電源の高電位側にてスイッチング制御を行う半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、モータなどの負荷をスイッチング制御する半導体装置が多く搭載されている。このような車載用の半導体装置としては、負荷の高電位側に配置されて負荷に給電するパワー半導体スイッチとその制御回路とを同一のチップ上に集積化したハイサイド型IPS(Intelligent Power Switch)が用いられている。通常、ハイサイド型IPSでは、パワー半導体スイッチとして、単位面積当りのオン抵抗の値が小さいNチャネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられている。
【0003】
図6は従来のハイサイド型IPSの構成例を示す図、
図7は従来のハイサイド型IPSの論理回路の論理表を示す図である。なお、
図6の説明において、端子名とその端子における電圧、信号などは、同じ符号を用いることがある。
【0004】
従来のハイサイド型IPS100は、
図6に示したように、メインMOSFET110と、論理回路120と、ドライバ回路130とを備え、保護回路として、過電流検出回路140と、過熱検出回路150と、過電圧検出回路160とを備えている。ハイサイド型IPS100は、また、IN端子と、VCC端子と、OUT端子と、GND端子とを有している。
【0005】
ハイサイド型IPS100のIN端子は、論理回路120の入力端子に接続され、論理回路120の出力端子は、ドライバ回路130の入力端子に接続され、ドライバ回路130の出力端子は、メインMOSFET110のゲート端子に接続されている。メインMOSFET110のドレイン端子は、VCC端子に接続され、VCC端子は、電圧VCCを供給する車載用のバッテリに接続される。メインMOSFET110のソース端子は、OUT端子に接続され、OUT端子は、負荷200に接続される。
【0006】
OUT端子は、また、過電流検出回路140に接続され、過電流検出回路140の出力端子は、論理回路120の過電流検出信号OCを入力する端子に接続されている。過熱検出回路150の出力端子は、論理回路120の過熱検出信号OHを入力する端子に接続されている。過電圧検出回路160は、VCC端子とGND端子とに接続され、過電圧検出回路160の出力端子は、論理回路120の過電圧検出信号OVを入力する端子に接続されている。
【0007】
このハイサイド型IPS100が正常動作をしているときには、
図7に示したように、IN端子にロー(L)レベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Lレベルの論理出力信号を生成して出力する。この論理出力信号は、ドライバ回路130を介してメインMOSFET110のゲート端子に供給され、メインMOSFET110は、オフ制御され、負荷200に電圧VCCが給電されることはない。
【0008】
IN端子にハイ(H)レベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Hレベルの論理出力信号を生成して出力する。この論理出力信号は、ドライバ回路130を介してメインMOSFET110のゲート端子に供給され、メインMOSFET110は、オン制御され、負荷200に電圧VCCが給電される。
【0009】
次に、過電流検出回路140は、メインMOSFET110の過電流を検出しているときに、IN端子にLレベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Lレベルの論理出力信号を生成して出力し、メインMOSFET110は、オフ制御される。
【0010】
過電流検出回路140は、メインMOSFET110の過電流を検出しているときに、IN端子にHレベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、チョッピング動作信号を出力する。このチョッピング動作信号は、周期的に所定のデューティサイクルの期間だけHレベルが出力される信号である。これにより、メインMOSFET110は、完全にオフ制御されるのではなく、間欠的にオン制御される。このため、チョッピング動作の間に過電流状態から正常な状態に回復すれば、論理回路120は、正常動作のモードに復帰される。
【0011】
次に、過熱検出回路150は、メインMOSFET110の過熱を検出しているときに、IN端子にLレベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Lレベルの論理出力信号を生成して出力し、メインMOSFET110は、オフ制御される。
【0012】
過熱検出回路150は、メインMOSFET110の過熱を検出しているときに、IN端子にHレベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Lレベルの論理出力信号を生成して出力し、メインMOSFET110は、オフ制御される。
【0013】
次に、過電圧検出回路160が電圧VCCの異常高電圧を検出しているときに、IN端子にLレベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Lレベルの論理出力信号を生成して出力し、メインMOSFET110は、オフ制御される。
【0014】
過電圧検出回路160が電圧VCCの異常高電圧を検出しているときに、IN端子にHレベルの論理入力信号が入力されると、論理回路120は、Lレベルの論理出力信号を生成して出力し、メインMOSFET110は、オフ制御される。
【0015】
ここで、過電流検出回路140については、負荷短絡などにより過電流を検出しているときに、IN端子にHレベルの論理入力信号が入力されると、チョッピング動作により負荷200に電流を間欠的に供給し、メインMOSFET110にかかるストレスを軽減している。しかし、このような過電流状態は、短期間のうちに解消されて自己復帰するとは限らないので、チョッピング動作であってもそれが長期間継続すれば、過熱検出回路150が動作するまでメインMOSFET110が昇温をし続けることになる。過電流が流れることによる昇温の場合、メインMOSFET110は、周囲温度の上昇による昇温の場合よりもストレスが大きいため、より大きなダメージを受けることがある。
【0016】
そこで、従来では、過電流と判断する閾値を、過電流状態が継続する期間に応じて変更することが行われている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術では、過電流状態の期間が長くなるにつれて、過電流の閾値を順次下げていくことにより、メインのパワー半導体スイッチを過電流から保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、従来の半導体装置では、過電流、過熱および高電圧(過電圧(異常)までは高くない電圧)の状態がそれぞれ短期間であれば、パワー半導体スイッチに与えられるストレスは小さいが、特に、過電流または高電圧のときに過熱状態になるとパワー半導体スイッチが受けるストレスが大きくなる。
【0019】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、過電流または高電圧による過熱ではパワー半導体スイッチが焼損などの重大なダメージを受けないようにした半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では、上記の課題を解決するために、1つの案では、電源端子と出力端子との間に接続されたパワー半導体スイッチと、入力端子に入力された信号に応じてパワー半導体スイッチをオン・オフさせる論理出力信号を生成する論理回路と、パワー半導体スイッチの温度が過熱検出閾値を超えたときに論理回路へ過熱検出信号を送出する過熱検出回路と、パワー半導体スイッチの電流が所定の値を検出したときに論理回路へ過電流検出信号を送出する過電流検出回路と、電源端子に印加される電源電圧が所定の電圧を超えたときに過熱検出回路へ高電圧検出信号を送出する高電圧検出回路と、を備えた半導体装置が提供される。この半導体装置では、過熱検出回路は、過電流検出信号または高電圧検出信号の少なくとも一方を受けて過熱検出閾値を正常動作時の第1の閾値から第1の閾値より低い第2の閾値に変更するようにした。また、過熱検出回路は、複数のダイオードを直列に接続した温度検出センサと、過電流検出信号および高電圧検出信号を入力する論理和回路と、論理和回路の出力を受けて複数のダイオードの一部を短絡するスイッチ素子とを有している。
【0021】
また、別の案では、電源端子と出力端子との間に接続されたパワー半導体スイッチと、入力端子に入力された信号に応じてパワー半導体スイッチをオン・オフさせる論理出力信号を生成する論理回路と、パワー半導体スイッチの温度が過熱検出閾値を超えたときに論理回路へ過熱検出信号を送出する過熱検出回路と、電源端子に印加される電源電圧が所定の電圧を超えたときに過熱検出回路へ高電圧検出信号を送出する高電圧検出回路とを備えた半導体装置が提供される。この半導体装置では、過熱検出回路は、高電圧検出信号を受けて過熱検出閾値を正常動作時の第1の閾値から第1の閾値より低い第2の閾値に変更するようにした。さらに、高電圧検出回路は、電源端子とグランド端子との間に直列に接続された第1の定電流回路、第2の定電流回路および複数のツェナーダイオードと、第1の定電流回路に並列に接続されて電源端子の電圧を基準とした論理信号を生成する論理信号生成用ツェナーダイオードと、第1の定電流回路および第2の定電流回路の接続部の電圧を入力し、電源端子に印加される電圧が論理信号生成用ツェナーダイオードおよび複数のツェナーダイオードの降伏電圧の和より高いとき高電圧検出信号を出力するインバータ回路とを有している。
【発明の効果】
【0022】
上記構成の半導体装置では、過熱検出回路は、過電流または電源の高電圧に起因した発熱の場合、正常動作時の過熱検出閾値よりも低い温度で過熱を検出するので、パワー半導体スイッチが受けるダメージを少なくできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置を適用したハイサイド型IPSの構成例を示す図である。
【
図4】高電圧検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】従来のハイサイド型IPSの構成例を示す図である。
【
図7】従来のハイサイド型IPSの論理回路の論理表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、ハイサイド型IPSに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。なお、添付図面を通じて、同一の符号で示される構成要素については、同一の構成要素を示している。また、以下の説明において、端子名とその端子における電圧、信号などは、同じ符号を用いることがある。
【0025】
図1は本発明の実施の形態に係る半導体装置を適用したハイサイド型IPSの構成例を示す図、
図2は過熱検出回路の構成例を示す回路図、
図3は過電流検出の説明図、
図4は高電圧検出回路の構成例を示す回路図、
図5は発明の効果を説明する図である。
【0026】
ハイサイド型IPS10は、
図1に示したように、パワー半導体スイッチであるメインMOSFET11と、論理回路12と、ドライバ回路13とを備え、保護回路として、過電流検出回路14と、過熱検出回路15と、高電圧検出回路16とを備えている。ハイサイド型IPS10は、また、IN端子と、VCC端子と、OUT端子と、GND端子とを有している。
【0027】
ハイサイド型IPS10のIN端子は、たとえば、自動車に搭載されたコンピュータである電子制御ユニットの出力端子に接続されている。VCC端子は、車載のバッテリに接続され、OUT端子は、電装品である負荷20に接続され、GND端子は、自動車のシャシに接続される。
【0028】
ハイサイド型IPS10では、IN端子は、論理回路12の入力端子に接続され、論理回路12の出力端子は、ドライバ回路13の入力端子に接続され、ドライバ回路13の出力端子は、メインMOSFET11のゲート端子に接続されている。メインMOSFET11のドレイン端子は、VCC端子に接続され、メインMOSFET11のソース端子は、OUT端子に接続されている。
【0029】
OUT端子は、また、過電流検出回路14に接続され、過電流検出回路14の出力端子は、論理回路12の過電流検出信号OCを入力する端子および過熱検出回路15の過電流検出信号OCを入力する端子にそれぞれ接続されている。過熱検出回路15の出力端子は、論理回路12の過熱検出信号OHを入力する端子に接続されている。高電圧検出回路16は、VCC端子とGND端子とに接続され、高電圧検出回路16の出力端子は、過熱検出回路15の高電圧検出信号HVを入力する端子に接続されている。
【0030】
過熱検出回路15は、
図2に示したように、定電流回路31と、ダイオード32,33,34,35と、シュミットトリガインバータ回路36と、NチャネルのMOSFET(スイッチ素子)37と、論理和回路38とを有している。定電流回路31は、一方の端子が電圧VCCのラインに接続され、他方の端子がダイオード32のアノード端子およびシュミットトリガインバータ回路36の入力端子に接続されている。シュミットトリガインバータ回路36の出力端子は、この過熱検出回路15の出力端子を構成し、論理回路12に過熱検出信号OHを送出する。
【0031】
ダイオード32,33,34,35は、直列接続されて温度センサを構成し、ダイオード35のカソード端子は、この過熱検出回路15が電圧VCCを基準として動作するときの低電位側基準電位である内部グランドGND1に接続されている。内部グランドGND1は、過熱検出回路15の動作電圧が、たとえば、5Vとしたとき、VCC-5Vとなる。直列接続されたダイオード32,33,34,35の中で最も低電位側に配置されたダイオード35は、アノード端子がMOSFET37のドレイン端子に接続され、カソード端子がMOSFET37のソース端子に接続されている。MOSFET37のゲート端子は、論理和回路38の出力端子に接続され、論理和回路38の一方の入力端子は、過電流検出回路14の出力端子に接続され、論理和回路38の他方の入力端子は、高電圧検出回路16の出力端子に接続されている。
【0032】
この過熱検出回路15は、定電流回路31がダイオード32,33,34,35に定電流Itを流すことにより、定電流回路31とダイオード32との接続部には、ダイオード32,33,34,35の順方向電圧の和である電圧Vtpが現れる。この電圧Vtpは、ダイオード32,33,34,35の順方向電圧が、たとえば、2mV/℃程度の負の温度係数を有しているので、検出対象の温度が高くなるほど低く変化する。その電圧Vtpの変化は、シュミットトリガインバータ回路36によって検出される。
【0033】
すなわち、検出対象の温度が25℃であるとき、電圧Vtpは、シュミットトリガインバータ回路36の入力増加時の第1の閾値より高く、したがって、シュミットトリガインバータ回路36は、L(=VCC-5V)レベルの過熱検出信号OHを出力している。検出対象の温度が上昇して、電圧Vtpが第1の閾値より低い入力減少時の第2の閾値を下回ると、シュミットトリガインバータ回路36は、H(=VCC)レベルの過熱検出信号OHを出力する。ここで、シュミットトリガインバータ回路36がHレベルの過熱検出信号OHを出力するときの検出対象の温度は、たとえば、190℃の温度に相当する。
【0034】
次に、論理和回路38にHレベルの過電流検出信号OCまたは高電圧検出信号HVが入力されると、論理和回路38は、Hレベルの信号を生成して出力し、MOSFET37をオン制御する。これにより、ダイオード35がMOSFET37により短絡されるので、温度センサは、ダイオード32,33,34だけで構成される。この場合、シュミットトリガインバータ回路36が入力する電圧Vtpは、ダイオード35の順方向電圧の分だけ低くなる。これにより、検出対象の温度が上昇して、電圧Vtpが入力減少時の第2の閾値を下回るタイミングは、温度センサがダイオード32,33,34,35で構成されているときよりも早くなる。ここで、シュミットトリガインバータ回路36がHレベルの過熱検出信号OHを出力するときの検出対象の温度は、たとえば、130℃の温度に相当する。
【0035】
過電流検出回路14は、
図3に示したように、インバータ回路41を有している。インバータ回路41の入力端子は、メインMOSFET11のソース端子とOUT端子との接続部に接続され、インバータ回路41の出力端子は、論理回路12および過熱検出回路15の過電流検出信号OCが入力される端子に接続される。なお、インバータ回路41は、VCC端子の電圧VCCと内部グランドGND1の電位(VCC-5V)との電位差で動作している。
【0036】
この過電流検出回路14は、メインMOSFET11がオン制御されているときのOUT端子の電圧の変化をインバータ回路41が監視して、メインMOSFET11が過電流状態になっているかどうかを判断している。
【0037】
すなわち、負荷20が正常状態のとき、メインMOSFET11がオン制御されているとき、メインMOSFET11には、負荷20のインピーダンスに応じた電流が流れる。このとき、たとえば、メインMOSFET11のオン抵抗が、50mΩ、負荷電流が1Aだとすると、OUT端子の電圧Voutは、電圧VCCからメインMOSFET11のオン抵抗による電圧降下を差し引いた値、すなわち、
Vout=VCC-1A×50mΩ=VCC-50mV
となる。
【0038】
一方、負荷20が短絡状態のとき、メインMOSFET11がオン制御されていると、メインMOSFET11には、短絡電流が流れる。この短絡電流が、たとえば、3Aだとすると、OUT端子の電圧Voutは、
Vout=VCC-3A×50mΩ=VCC-150mV
となる。
【0039】
インバータ回路41の出力反転閾値が「VCC-50mV」と「VCC-150mV」との間にあれば、インバータ回路41は、正常状態のとき、Lレベルの過電流検出信号OCを出力し、負荷20が短絡状態のとき、Hレベルの過電流検出信号OCを出力する。すなわち、インバータ回路41は、OUT端子の電圧Voutが「VCC-50mV」から「VCC-150mV」へ低下すると、過電流を検出したと判断し、Hレベルの過電流検出信号OCを出力する。
【0040】
高電圧検出回路16は、
図4に示したように、定電流回路51,52と、ツェナーダイオード53,54_1-54_nと、インバータ回路55とを有している。定電流回路51,52およびn個のツェナーダイオード54_1-54_nは、VCC端子とGND端子との間で直列に接続され、定電流回路51には、並列にツェナーダイオード53が接続されている。すなわち、定電流回路51の一方の端子およびツェナーダイオード53のカソード端子は、電圧VCCのラインに接続され、定電流回路51の他方の端子およびツェナーダイオード53のアノード端子は、定電流回路52の一方の端子に接続されている。定電流回路52の他方の端子は、直列接続されたツェナーダイオード54_1-54_nの高電位側に配置のツェナーダイオード54_1のカソード端子に接続されている。ツェナーダイオード54_1-54_nの低電位側に配置されたツェナーダイオード54_nのアノード端子は、GND端子に接続されている。
【0041】
定電流回路51の他方の端子と定電流回路52の一方の端子およびツェナーダイオード53のアノード端子との接続部は、インバータ回路55の入力端子に接続されている。インバータ回路55の出力端子は、この高電圧検出回路16の出力端子を構成し、過熱検出回路15に高電圧検出信号HVを送出する。
【0042】
この高電圧検出回路16では、ツェナーダイオード53は、降伏電圧が、たとえば、5Vとし、直列接続されたツェナーダイオード54_1-54_nは、合計の降伏電圧が、たとえば、20Vとしてある。また、定電流回路51の定電流値は、定電流回路52の定電流値よりも小さくしてある。
【0043】
この高電圧検出回路16によれば、VCC端子の電圧VCCが通常状態の13Vであれば、ツェナーダイオード54_1-54_nには、ほとんど電流が流れないので、インバータ回路55の入力端子は、H(=VCC)レベルとなる。したがって、インバータ回路55は、その出力端子に、L(=VCC-5V)レベルの高電圧検出信号HVを出力する。
【0044】
VCC端子の電圧VCCが25Vを超えると、ツェナーダイオード53,54_1-54_nに電流が流れるようになり、インバータ回路55の入力端子は、L(=VCC-5V)レベルとなる。したがって、インバータ回路55は、その出力端子に、H(=VCC)レベルの高電圧検出信号HVを出力する。VCC端子の電圧VCCが25Vを超えるときは、たとえば、自動車をジャンプスタートさせたときなどである。よって、高電圧検出回路16は、VCC端子の電圧VCCの電圧が正常な範囲であるが、通常状態(たとえば13V)の場合よりも高い電圧を検出するものである。
【0045】
以上の構成のハイサイド型IPS10によれば、過電流検出回路14および過熱検出回路15が異常を検出していないとき、メインMOSFET11は、IN端子に入力された信号に従ってオン・オフ制御される。また、過電流検出回路14または過熱検出回路15が単独で異常を検出しているときには、論理回路12は、それぞれの異常検出に対する保護動作を行う。すなわち、過電流検出回路14が過電流を検出したときには、論理回路12は、チョッピング動作信号を生成して出力し、メインMOSFET11をチョッピング動作させる。ハイサイド型IPS10が190℃まで温度が上昇したことを過熱検出回路15が検出すると、論理回路12は、メインMOSFET11をオフする信号を出力してメインMOSFET11のオン・オフ制御を停止する。
【0046】
ここで、過電流検出回路14が過電流を検出したとき、過電流検出信号OCが過熱検出回路15に送出され、または、高電圧検出回路16が高電圧を検出したとき、高電圧検出信号HVが過熱検出回路15に送出される。過熱検出回路15は、過電流検出信号OCまたは高電圧検出信号HVを受けると、過熱検出閾値を190℃から130℃に引き下げる。
【0047】
これにより、論理回路12は、
図5に示したように、過電流検出回路14が過電流を検出して過電流検出信号OCを出力したときにチョッピング動作信号を出力し、メインMOSFET11をチョッピング動作させる。メインMOSFET11は、チョッピング動作を継続することで温度が上昇していくが、過電流が流れることに由来する温度上昇の場合、過熱検出回路15は、130℃で過熱検出を行う。過熱が検出されると、論理回路12は、メインMOSFET11のチョッピング動作を停止させるので、メインMOSFET11が焼損するといった深刻なダメージを確実に防止することができる。
【0048】
また、高電圧検出回路16が高電圧を検出したときも同様に、高電圧が印加されることに由来する温度上昇の場合、過熱検出回路15は、130℃で過熱検出を行う。過熱が検出されると、論理回路12は、メインMOSFET11の動作を停止させる。
【0049】
このように、このハイサイド型IPS10では、過電流検出回路14が過電流を検出するか、または、高電圧検出回路16が高電圧を検出した段階で、過熱検出回路15は、過熱検出閾値を130℃に設定している。したがって、過電流および高電圧に起因するメインMOSFET11の昇温の場合は、130℃までということになり、190℃まで昇温可能にした場合に比べ、メインMOSFET11にかかるストレスを大幅に低減することができる。
【0050】
なお、この実施の形態では、過熱検出回路15は、過電流検出信号OCおよび高電圧検出信号HVを受けて過熱検出閾値を変化させているが、過電流検出信号OCおよび高電圧検出信号HVのいずれか一方の検出信号だけを受けて過熱検出閾値を変化させるように構成されてもよい。また、過熱検出回路15は、高温側の過熱検出閾値を190℃、低温側の過熱検出閾値を130℃にしたが、これらの値は、一例であって、他の値を採用することができる。
【0051】
以上、好適な実施の形態について説明したが、本発明は、この特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲において、各種変化変形をなし得ることが可能であることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0052】
10 ハイサイド型IPS
11 メインMOSFET(パワー半導体スイッチ)
12 論理回路
13 ドライバ回路
14 過電流検出回路
15 過熱検出回路
16 高電圧検出回路
20 負荷
31 定電流回路
32,33,34,35 ダイオード
36 シュミットトリガインバータ回路
37 MOSFET(スイッチ素子)
38 論理和回路
41 インバータ回路
51,52 定電流回路
53,54_1-54_n ツェナーダイオード
55 インバータ回路