(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】作業車両連携システムおよび高所作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240228BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20240228BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20240228BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20240228BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F9/06 L
B66F11/04
B66C23/00 Z
B66C23/42 A
(21)【出願番号】P 2019171834
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】元木 浩平
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240396(JP,A)
【文献】特開2018-095366(JP,A)
【文献】特開2010-228905(JP,A)
【文献】特開2012-035924(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018100133(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/00
B66C 23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられ、前記ブームの先端にバケットを備える高所作業車と、
走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた作業車両と、
前記高所作業車と前記作業車両とを操作する操作具を有する操作端末と、
を備える作業車両連携システムであって、
前記高所作業車は、制御信号を送受信する端末側通信部と、前記高所作業車の位置情報を取得する高所作業車位置取得部とを備え、
前記作業車両は、制御信号を送受信する作業車両側通信部と、前記作業車両の位置情報を取得する作業車両位置取得部とを備え、
前記バケットには、前記操作端末が設けられ、
前記操作端末は、
前記端末側通信部を介して、前記高所作業車のブームの姿勢に関する姿勢情報および前記高所作業車位置取得部が取得した前記高所作業車の位置情報と、前記作業車両のブームの姿勢に関する姿勢情報および前記作業車両位置取得部が取得した前記作業車両の位置情報とを取得し、
前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの延伸方向の方位と前記操作具の操作方向の方位との方位角の差を算出し、前記操作具の操作方向と前記作業車両のブームの先端との移動方向を一致させることにより、前記高所作業車と前記作業車両との操作座標系を一致させ、前記操作具の操作に基づいて高所作業車用の制御信号と作業車両用の制御信号との少なくとも一方を生成する制御部と、を備え
、
前記制御部は、
前記作業車両のブームの先端が前記操作具の操作方向の方位に移動するように前記作業車両用の制御信号を生成する、
作業車両連携システム。
【請求項2】
前記制御部は
、
前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの先端と前記バケットとが前記操作具の操作方向の方位に移動するように前記作業車両用の制御信号と前記高所作業車用の制御信号とを生成する請求項1に記載の作業車両連携システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの先端と前記バケットとが所定の距離以内に近接すると前記バケットの移動と前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの移動とを停止させる請求項
2に記載の作業車両連携システム。
【請求項4】
前記操作端末は、近接操作具を備え、
前記制御部は、
前記近接操作具が操作されると、前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの先端を前記バケットから所定の距離だけ離間した位置に移動させる請求項
2または請求項
3のいずれか一項に記載の作業車両連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両連携システムおよび高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車は、自走可能な下部走行体に上部旋回台が設けられ、この旋回台に伸縮するブームが起伏自在に設けられている。ブームの先端には、作業者が搭乗するバケットが設けられている。高所作業車は、バケット内の操作具によって作業者の所望する位置にバケットを移動することができる。高所作業車は、高所での作業位置まで作業者を持ち上げ、作業者の足場としての役割や、他の作業車両の高所での作業に指示を出す指示所としての役割をはたしている。このような高所作業車において、バケットが設けられたブームと作業機が設けられたブームとを備えた作業車両が知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のダブルアーム作業車(作業車両)は、走行体に設けられ伸縮自在かつ鉛直面内で旋回自在な2つのアーム(ブーム)が設けられている。ダブルアーム作業車は、所定の作業をするため、一方のアームにバケットが設けられ、他方のアームに外壁取付装置(作業機)が設けられている。ダブルアーム作業車は、1台の車体に2つのアームが設けられ、これらのアームにそれぞれバケットと外壁取付装置を備えているので、従来は2台の作業車を必要としていた作業を1台で処理することが可能になる。
【0004】
このように構成されるダブルアーム作業車は、1つの旋回台に2本のアームが設けられているので、一方のアームに設けられたバケットの操作座標系と他方のアームに設けられた作業機の操作座標系とは常に一致している。つまり、ダブルアーム作業車は、旋回台が旋回しても2本のアームの操作座標系が反転することがないので操作性を向上させることができる。しかし、ダブルアーム作業車は、2本のアームが1台の走行体に設けられているので作業範囲が狭く、作業効率が低下する場合があった。一方、高所作業車と異なる走行体に設けられた作業機の作業車による共同作業では、互いに独立して移動することができるので作業範囲が広く作業効率が向上するが、高所作業車と作業車との操作座標系が一致せずに操作性が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高所作業車と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる作業車両連携システムおよび高所作業車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられ、前記ブームの先端にバケットを備える高所作業車と、走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた作業車両と、前記高所作業車と前記作業車両とを操作する操作具を有する操作
端末と、を備える作業車両連携システムであって、前記高所作業車は、制御信号を送受信する端末側通信部と、前記高所作業車の位置情報を取得する高所作業車位置取得部とを備え、前記作業車両は、制御信号を送受信する作業車両側通信部と、前記作業車両の位置情報を取得する作業車両位置取得部とを備え、前記バケットには、前記操作端末が設けられ、前記操作端末は、前記端末側通信部を介して、前記高所作業車のブームの姿勢に関する姿勢情報および前記高所作業車位置取得部が取得した前記高所作業車の位置情報と、前記作業車両のブームの姿勢に関する姿勢情報および前記作業車両位置取得部が取得した前記作業車両の位置情報とを取得し、前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの延伸方向の方位と前記操作具の操作方向の方位との方位角の差を算出し、前記操作具の操作方向と前記作業車両のブームの先端との移動方向を一致させることにより、前記高所作業車と前記作業車両との操作座標系を一致させ、前記操作具の操作に基づいて高所作業車用の制御信号と作業車両用の制御信号との少なくとも一方を生成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記作業車両のブームの先端が前記操作具の操作方向の方位に移動するように前記作業車両用の制御信号を生成する、作業車連携システムである。
【0010】
第3の発明は、前記制御部は、前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの先端と前記バケットとが前記操作具の操作方向の方位に移動するように前記作業車両用の制御信号と前記高所作業車用の制御信号とを生成する作業車連携システムである。
【0011】
第4の発明は、前記制御部は、前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの先端と前記バケットとが所定の距離以内に近接すると前記バケットの移動と前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの移動とを停止させる作業車連携システムである。
【0012】
第5の発明は、前記操作端末は、近接操作具を備え、前記制御部は、前記近接操作具が操作されると、前記作業車両の前記旋回台における前記ブームの先端を前記バケットから所定の距離だけ離間した位置に移動させる作業車連携システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
第1の発明においては、高所作業車のバケットに作業車両と高所作業車とを操作可能な操作端末が設けられているので、バケット内の作業者によって、作業内容に適した操作対象として作業車両と高所作業車とのうち少なくとも一方が操作端末によって操作される。これにより、他の作業機を用いた高所作業車と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる。
【0016】
第2の発明においては、高所作業車のバケットに設けられた操作端末における操作具の操作方向と作業車両におけるブームの先端の移動方向とが一致しているので、バケット内の作業者は、バケットに対する作業車両の位置や向きを考慮して操作する必要がない。これにより、他の作業機を用いた高所作業車と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる。
【0017】
第4の発明においては、作業車両のブームがバケットから一定の距離を保つので、作業車両のブームがバケットに近接した際にブームとバケットとの位置関係を考慮して操作する必要がない。これにより、他の作業機を用いた高所作業車と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる。
【0018】
第5の発明においては、近接操作具の操作によって、作業車両のブームが自動的にバケットから所定の距離だけ離間した位置に配置されるので、作業車両がバケットに近接するまで作業者が作業車両の操作をする必要がない。これにより、他の作業機を用いた高所作業車と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】作業車両連携システムの制御構成を示すブロック図。
【
図6】
図6は方位角を示す。(A)は高所作業車のバケットの方位角を示し、(B)はクレーンの旋回台の方位角を示す。
【
図7】
図7は高所作業車とクレーンと相対的な位置関係を示す。(A)は高所作業車のバケットとクレーンの旋回台との方位角の関係を示し、(B)は表示装置に表示されるバケットの前方向に対するクレーンの旋回台の向きと方位を示す。
【
図8】
図8は高所作業車とクレーンとの連携の態様を示す。(A)は複合操作具の操作方向に高所作業車のバケットのみが移動している状態を示し、(B)は複合操作具の操作方向にクレーンのブームが移動している状態を示し、(C)は複合操作具の操作方向に高所作業車のバケットとクレーンのブームとが移動している状態を示す。
【
図9】高所作業車のバケットとクレーンのブームとが近接した際の位置関係を示す模式図。
【
図10】作業車両連携システムにおける連携制御の態様を表すフローチャートを示す図。
【
図11】作業車両連携システムにおける通常連携制御の態様を表すフローチャートを示す図。
【
図12】作業車両連携システムにおける近接連携制御の態様を表すフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、
図1と
図2とを用いて、作業車両連携システム1について説明する。作業車両連携システム1は、高所作業車2と作業車両とを操作端末14を介して連携させるシステムである。作業車両連携システム1は、高所作業車2、作業車両であるクレーンおよび操作端末14を有する。本実施形態において、クレーンは、移動式クレーンであるラフテレーンクレーンから構成されているものとするが、旋回台7とブーム9を備える作業車両であればよい。
【0021】
図1に示すように、作業車両連携システム1を構成する高所作業車2は、高所に作業者を配置するための作業車である。高所作業車2は、車両3、高所作業装置6を有する。
【0022】
車両3は、高所作業装置6を搬送する移動体である。車両3は、フレーム3aに運転室3bや複数の車輪4が設けられ、動力源である図示しないエンジンが搭載されている。車両3は、エンジンの駆動力を複数の車輪4に伝達して走行するように構成されている。車両3には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両3の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両3は、アウトリガ5を車両3の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、高所作業車2の作業可能範囲を広げることができる。
【0023】
高所作業装置6は、作業者が搭乗するバケット10を高所まで持ち上げる装置である。高所作業装置6は、旋回台7、ブーム9、バケット10、起伏用油圧シリンダ11、操作端末14を具備する。
【0024】
旋回台7は、高所作業装置6を旋回する装置である。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。また、旋回台7は、アクチュエータである旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0025】
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ21(
図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ21は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台7には、旋回台7の基準位置からの旋回角度を検出する旋回用センサ25(
図2参照)が設けられている。
【0026】
ブーム9は、バケット10を支持する梁部材である。ブーム9は、複数のブーム9部材から構成されている。ブーム9は、各ブーム9部材を図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで伸縮自在に構成されている。伸縮用油圧シリンダは、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ22(
図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9は、ブーム9部材の基端が旋回台7上に揺動可能に設けられている。ブーム9には、ブーム長さを検出する伸縮用センサ26(
図2参照)が設けられている。
【0027】
バケット10は、作業者の作業空間を確保する箱状部材である。バケット10は、内部に作業者が乗り込むように構成されている。バケット10は、支持機構10aを介してブーム9の先端に支持されている。支持機構10aは、アクチュエータであるバケット10用油圧モータ(
図2参照)で回転させることでバケット10を水平方向に揺動自在に構成している。バケット10用油圧モータは、電磁比例切換弁である揺動用バルブ23(
図2参照)によって回転操作される。バケット10には、バケット10の基準位置からのバケット10角度を検出する揺動用センサ27(
図2参照)が設けられている。
【0028】
起伏用油圧シリンダ11は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持する油圧アクチュエータである。起伏用油圧シリンダ11は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ24(
図2参照)によって伸縮操作される。起伏用油圧シリンダ11は、基部が旋回台7に揺動自在に連結され、ロッド先端がブーム9に揺動自在に連結されている。起伏用油圧シリンダ11には、ブーム9の起伏角度を検出する起伏用センサ28(
図2参照)が設けられている。
【0029】
図2に示すように、端末側通信部である通信装置12は、広域情報通信網等を介してクレーンからの位置情報、姿勢情報を受信し、広域情報通信網等を介してクレーン1に制御信号等を送信する装置である。通信装置12は、操作端末14に設けられている。通信装置12は、クレーンからの位置情報や姿勢情報等を受信すると操作端末14の制御装置29に転送するように構成されている。
【0030】
ここで、高所作業車2の位置情報とは、高所作業車2におけるブーム9の先端の位置座標、旋回台7の回転中心における位置座標およびバケット10における操作端末14が設けられている側面が向いている方向(以下、単に「バケット10の前方向」と記す)の方位角A1(以下、単に「バケット方位角A1」と記す)を含む情報とする。高所作業車2の姿勢情報とは、高所作業車2における旋回台7の旋回角度、ブーム9の起伏角度およびブーム9の長さおよびバケット10の揺動角度を言う。なお、方位角とは、方位の数値表現であり、基準となる方位との間の角度を言う。以下の実施形態において、方位角は、基準方位を北(N)とし、北(N)の方位角を0°、東(E)の方位角を90°南(S)の方位角を180°、西(W)の方位角を270°とする。
【0031】
高所作業車位置取得部である高所側GNSS受信機13は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成する受信機であって、衛星から測距電波を受信し、受信機の位置座標である緯度、経度、標高および方位角を算出する装置である。高所側GNSS受信機13は、バケット10に設けられている。高所側GNSS受信機13は、高所作業車2の位置情報であるブーム9の先端の位置座標を算出する。なお、高所側GNSS受信機13は、バケット10と旋回台7とに設けて高所作業車の位置情報を算出する構成でもよい。また、高所側GNSS受信機13に替えて近距離無線通信等で緯度、経度、標高および方位角を算出してもよい。
【0032】
操作端末14は、旋回台7、ブーム9、バケット10等の操作を行う装置である。操作端末14は、車両3およびバケット10に設けられている。操作端末14には、旋回台7の旋回操作、ブーム9の伸縮操作を行う旋回伸縮操作具15、ブーム9の起伏操作を行う起伏操作具16、複合操作具17、近接操作具18、切り替え操作具19、表示装置20が設けられている。
【0033】
複合操作具17は、作業車両連携システム1の操作端末14として、クレーン30における旋回台36の旋回、ブーム38の起伏、ブーム38の伸縮等の複合動作によってブーム38の先端を任意の方向に移動させる操作具である。また、複合操作具17は、高所作業車2における旋回台7の旋回、ブーム9の起伏、ブーム9の伸縮等の複合動作によってバケット10を任意の方向に移動させることができる。近接操作具18は、クレーン30における旋回台36の旋回、ブーム38の起伏、ブーム38の伸縮等の複合動作によってブーム38の先端をバケット10から所定の距離だけ離間した位置に配置する操作具である。切り替え操作具19は、複合操作具17による操作対象を高所作業車2とクレーンとの少なくとも一方に切り替える操作具である。
【0034】
表示装置20は、選択したクレーン1の情報と高所作業車2の情報とを表示させる装置である。表示装置20は、画面から入力可能なタッチパネルで構成されている。つまり、表示装置20は、入力装置としての機能を有している。表示装置20は、高所作業車2の位置情報と姿勢情報、選択したクレーン1の位置情報と姿勢情報および吊り荷カメラ9bが撮影した映像等を表示するように構成されている。
【0035】
制御装置29は、各操作弁を介して高所作業車2やクレーンにおけるアクチュエータを制御する装置である。制御装置29は、作業車両連携システムの制御部として構成されている。制御装置29は、操作端末14に設けられている。制御装置29は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置29は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。なお、制御装置29は、操作端末14と別体に構成されていてもよい。
【0036】
制御装置29は、旋回伸縮操作具15、起伏操作具16、複合操作具17、近接操作具18および切り替え操作具19に接続され、旋回伸縮操作具15、起伏操作具16、複合操作具17、近接操作具18および切り替え操作具19のそれぞれの操作信号を取得することができる。
【0037】
制御装置29は、通信装置12に接続され、所定の範囲内に存在するクレーン1からの信号を受信することができる。そして、制御装置29は、選択されたクレーン1のクレーン側制御装置からクレーン1の位置情報と姿勢情報および吊り荷カメラ9bが撮影した映像等を受信し、クレーン側制御装置に制御信号を送信することができる。
【0038】
制御装置29は、算出した高所作業車2におけるバケット方位角A1(
図4(C)参照)と取得したクレーン1における旋回台方位角A2(
図4(B)参照)との間の角度のうち小さい方の角度Aを算出することができる。
【0039】
制御装置29は、表示装置20に接続され、表示装置20に所定の範囲内に存在するクレーン1の位置情報や機種名を表示させる。また、制御装置29は、選択したクレーン1の位置情報と姿勢情報、吊り荷カメラ9bが撮影した映像を表示させることができる。
【0040】
制御装置29は、旋回用バルブ21、伸縮用バルブ22、起伏用バルブ24および揺動用バルブ23に接続され、旋回用バルブ21、伸縮用バルブ22、起伏用バルブ24および揺動用バルブ23に制御信号を伝達することができる。
【0041】
制御装置29は、旋回用センサ25、伸縮用センサ26、起伏用センサ28および揺動用センサ27に接続され、旋回台7の旋回角度、ブーム9の起伏角度、ブーム長さ、バケット10の揺動角度等の姿勢情報を取得することができる。
【0042】
制御装置29は、高所側GNSS受信機13に接続され、高所作業車2にけるブーム9の先端の位置座標を高精度で取得することができる。また、制御装置29は、旋回台7の旋回操作、ブーム9の伸縮操作および起伏操作によって複数の位置座標とそれぞれの姿勢情報を取得することで、旋回台7の回転中心における位置座標およびバケット方位角A1(
図4参照)を高精度で算出することができる。
【0043】
制御装置29は、旋回伸縮操作具15、起伏操作具16、複合操作具17、近接操作具18の操作信号に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成することができる。
【0044】
制御装置29は、切り替え操作具19の操作信号に基づいて、高所作業車2の制御信号と、作業車両の制御信号との少なくとも一方を生成することができる。
【0045】
このように構成される高所作業車2は、車両3を走行させることで任意の位置に高所作業装置6を移動させることができる。また、高所作業車2は、ブーム9を任意の起伏角度に起立させて、ブーム9を任意のブーム長さに延伸させて高所作業装置6のバケット10の移動範囲を拡大することができる。
【0046】
以下に、
図3と
図4とを用いて、作業車両連携システム1を構成する移動式クレーンの一実施形態であるクレーン30について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンついて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン等であればよい。
【0047】
図3に示すように、クレーン30は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーン30である。クレーン30は、走行体である車両31、作業装置であるクレーン装置35およびクレーン側制御装置61を有する。また、クレーン30は、本発明における作業車両連携システム1(
図2参照)と通信可能に構成されている。
【0048】
車両31は、クレーン装置35を搬送する移動体である。車両31は、複数の車輪32を有し、エンジン33を動力源として走行する。車両31には、アウトリガ34が設けられている。車両31は、アウトリガ34を車両31の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン30の作業可能範囲を広げることができる。
【0049】
クレーン装置35は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置35は、旋回台36、旋回用油圧モータ37、ブーム38、メインフックブロック39、サブフックブロック40、起伏用油圧シリンダ45、メインウインチ43、メイン用油圧モータ43a、メインワイヤロープ41、サブウインチ44、サブ用油圧モータ44a、サブワイヤロープ42およびキャビン46等を具備する。
【0050】
旋回台36は、クレーン装置35を旋回する装置である。旋回台36は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台36には、アクチュエータである旋回用油圧モータ37が設けられている。旋回台36は、旋回用油圧モータ37によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0051】
旋回用油圧モータ37は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ53(
図4参照)によって回転操作される。旋回用バルブ53は、旋回用油圧モータ37に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台36には、旋回台36の基準位置からの旋回した角度である旋回角度αを検出する旋回用センサ57(
図4参照)が設けられている。
【0052】
ブーム38は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する梁部材である。ブーム38は、ベースブーム部材の基端が旋回台36の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム38は、各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。伸縮用油圧シリンダは、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ54(
図4参照)によって伸縮操作される。また、ブーム38には、ジブ38aが設けられている。ブーム38には、ブーム長さを検出する伸縮用センサ58や荷物Wの重量を検出する重量センサ等が設けられている。
【0053】
吊り荷カメラ38b(
図4参照)は、荷物Wおよび荷物W周辺の地物を撮影する撮影装置である。吊り荷カメラ38bは、ブーム38の先端部に設けられている。吊り荷カメラ38bは、荷物Wの鉛直上方から荷物Wおよびクレーン30周辺の地物(例えば高所作業車2)や地形を撮影可能に構成されている。
【0054】
メインフックブロック39とサブフックブロック40とは、荷物Wを吊る部材である。メインフックブロック39には、メインワイヤロープ41が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック39aとが設けられている。サブフックブロック40には、荷物Wを吊るサブフック40aが設けられている。
【0055】
メインウインチ43とサブウインチ44とは、メインワイヤロープ41とサブワイヤロープ42との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う。メインウインチ43は、メインワイヤロープ41が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ43aによって回転され、サブウインチ44は、サブワイヤロープ42が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ44aによって回転されるように構成されている。メインウインチ43とサブウインチ44とは、メインワイヤロープ41とサブワイヤロープ42との繰り出し量を検出する繰り出し用センサ59が設けられている。
【0056】
起伏用油圧シリンダ45は、ブーム38を起立および倒伏させ、ブーム38の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ45は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ55(
図4参照)によって伸縮操作される。起伏用油圧シリンダ45には、ブーム38の起伏角度を検出する起伏用センサ60(
図4参照)が設けられている。
【0057】
メイン用油圧モータ43aは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ56m(
図4参照)によって回転操作される。メインウインチ43は、メイン用バルブ56mによってメイン用油圧モータ43aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ44は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ56s(
図4参照)によってサブ用油圧モータ44aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
【0058】
キャビン46は、旋回台36に搭載されている。キャビン46は、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両31を走行操作するための操作具やクレーン装置35を操作するための旋回操作具47、起伏操作具48、伸縮操作具49、メインドラム操作具50m、サブドラム操作具50s等が設けられている。
【0059】
図4に示すように、作業車両側通信部であるクレーン側通信装置51は、広域情報通信網等を介して操作端末14からの制御信号を受信し、広域情報通信網等を介してクレーン30の位置情報、姿勢情報等を送信する装置である。クレーン側通信装置51は、キャビン46に設けられている。クレーン側通信装置51は、操作端末14の制御信号等を受信するとクレーン30のクレーン側制御装置61に制御信号等を転送するように構成されている。
【0060】
作業車両位置取得部であるクレーン側GNSS受信機52は、全球測位衛星システムを構成する受信機であって、衛星から測距電波を受信し、受信機の位置座標である緯度、経度、標高および方位角を算出する装置である。クレーン側GNSS受信機52は、ブーム38の先端に設けられている。クレーン側GNSS受信機52は、クレーン30の位置情報を算出する。なお、クレーン側GNSS受信機52は、旋回台36とブーム38の先端とに設けてクレーン30の位置情報を算出する構成でもよい。また、クレーン側GNSS受信機52に替えて近距離無線通信等で緯度、経度、標高および方位角を算出してもよい。
【0061】
クレーン30の位置情報とは、クレーン30におけるブーム38の先端の位置座標、旋回台36の回転中心における位置座標およびブーム38の延伸方向の方位角A2(以下、単に「旋回台方位角A2」と記す)を含む情報とする。クレーン30の姿勢情報とは、クレーン30における旋回台36の旋回角度、ブーム38の起伏角度およびブーム38の長さを含む情報とする。
【0062】
クレーン側制御装置61は、各操作弁を介してクレーン30のアクチュエータを制御する装置である。クレーン側制御装置61は、キャビン46内に設けられている。クレーン側制御装置61は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。クレーン側制御装置61は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0063】
クレーン側制御装置61は、吊り荷カメラ38b、旋回操作具47、起伏操作具48、伸縮操作具49、メインドラム操作具50mおよびサブドラム操作具50sに接続され、吊り荷カメラ38bの映像を取得し、旋回操作具47、起伏操作具48、メインドラム操作具50mおよびサブドラム操作具50sのそれぞれの操作量を取得することができる。
【0064】
クレーン側制御装置61は、クレーン側通信装置51に接続され、作業車両連携システム1(制御装置29)からの制御信号を取得し、クレーン30の情報、吊り荷カメラ38bが撮影した映像等を作業車両連携システム1に送信することができる。
【0065】
クレーン側制御装置61は、旋回用バルブ53、伸縮用バルブ54、起伏用バルブ55、メイン用バルブ56mおよびサブ用バルブ56sに接続され、旋回用バルブ53、起伏用バルブ55、メイン用バルブ56mおよびサブ用バルブ56sに制御信号を伝達することができる。
【0066】
クレーン側制御装置61は、旋回用センサ57、伸縮用センサ58、起伏用センサ60および繰り出し用センサ59に接続され、旋回台36の旋回角度、起伏角度、ブーム長さ、メインワイヤロープ41とサブワイヤロープ42との繰り出し量等の姿勢情報および荷物Wの重量を取得することができる。
【0067】
クレーン側制御装置61は、クレーン側GNSS受信機52に接続され、ブーム38の先端の位置座標を高精度で取得することができる。また、クレーン側制御装置61は、旋回台36の旋回操作、ブーム38の伸縮操作および起伏操作によって複数の位置座標とそれぞれの姿勢情報を取得することで、旋回台36の回転中心における位置座標および旋回台方位角A2(
図6参照)を高精度で算出することができる。
【0068】
クレーン側制御装置61は、旋回操作具47、起伏操作具48、伸縮操作具49、メインドラム操作具50mおよびサブドラム操作具50sの操作量に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成することができる。
【0069】
このように構成されるクレーン30は、車両31を走行させることで任意の位置にクレーン装置35を移動させることができる。また、クレーン30は、起伏操作具48の操作によって起伏用油圧シリンダ45でブーム38を任意の起伏角度に起立させて、伸縮操作具49の操作によってブーム38を任意のブーム長さに延伸させたりすることでクレーン装置35の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン30は、サブドラム操作具50s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具47の操作によって旋回台36を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
【0070】
以上のように構成される作業車両連携システム1は、操作端末14が高所作業車2およびクレーン30の位置情報と姿勢情報とを取得することができる。また、作業車両連携システム1は、高所作業車2の操作座標系とクレーン30の操作座標系を一致させ、操作端末14によって高所作業車2とクレーン30とを操作することができる。
【0071】
図5に示すように、作業車両連携システム1は、高所作業車2に設けられている制御装置29が高所作業車2の位置情報と姿勢情報とを取得するとともに、通信装置12を介してクレーン30の位置情報と姿勢情報とを取得する。また、制御装置29は、高所作業車2の制御信号とクレーン30の制御信号とを生成し、高所作業車2とクレーン30とに送信する。つまり、作業車両連携システム1は、制御装置29を中心として、高所作業車2とクレーン30とが連携されている。
【0072】
次に、
図6を用いて、作業車両連携システム1における高所作業車2とクレーン30との連携制御について説明する。高所作業車2は、ブーム9の先端と旋回台7の位置座標およびバケット方位角A1を算出しているものとする。同様に、クレーン30は、ブーム38の先端と旋回台36の位置座標および旋回台方位角A2を算出しているものとする。
【0073】
作業車両連携システム1において、制御装置29は、高所作業車2のバケット10を中心とした所定範囲内にあるクレーン30からの信号を受信すると、表示装置20に信号を受信したクレーン30を表示させる。制御装置29は、任意のクレーン30が選択されると、選択されたクレーン30の位置情報と姿勢情報とを単位時間毎に取得するとともに、高所作業車2の位置情報と姿勢情報とを単位時間毎に取得する。
【0074】
図6(A)に示すように、本実施形態における高所作業車2のバケット10は、バケット10の前方向が西北西に向くように配置されている。この場合、基準方位である北(N)から西北西までの角度が292.5°なので、バケット方位角A1は292.5°となる。
【0075】
図6(B)に示すように、本実施形態におけるクレーン30は、ブーム38が北北東に延伸する旋回角度に旋回台36が旋回されている。この場合、基準方位である北(N)北北東までの角度が22.5°なので、旋回台方位角A2は、22.5°となる。
【0076】
図7(A)に示すように、制御装置29は、高所作業車2におけるバケット10の前方向と、クレーン30におけるブーム38の延伸方向との角度の差である角度Aを算出する。制御装置29は、バケット方位角A1と旋回台方位角A2との間の角度のうち小さい方の角度Aを算出する。角度Aは、高所作業車2におけるバケット10の前方向が西北西に向いた状態で配置されているバケット方位角A1=292.5°とクレーン30におけるブーム38の延伸方向が北北東に向いた状態で配置されている旋回台方位角A2=22.5°とから角度A=360-(292.5-22.5)=90°となる。従って、クレーン30におけるブーム38の延伸方向は、高所作業車2におけるバケット10の前方向の方位から時計回り(右方向)に90°回転している。
【0077】
図7(B)に示すように、制御装置29は、バケット10の前方向の方位を基準として実際の方位に合わせた方位図を表示装置20に表示させる。次に、制御装置29は、クレーン30における旋回台36とブーム38の模式
図36aを方位図上に表示させる。制御装置29は、方位図と模式
図36aとをバケット10の方位に連動して回転させる。さらに、制御装置29は、取得した高所作業車2とクレーン30の姿勢情報である旋回台36の旋回角度、ブーム38の起伏角度、ブーム38のブーム長さ、任意の位置またはバケット10の位置にクレーン30のブーム38の先端を配置した際のクレーン30の姿勢情報等を表示装置20に表示させる。本実施形態において、制御装置29は、表示装置20の画面に向かって上方向(バケット10の前方向)が西北西になるように方位図を表示するとともに、方位図上でブーム38の延伸方向を北北東に向けた状態でクレーン30の模式
図36aを表示させる。制御装置29は、表示装置20に表示させた方位図とクレーン30の模式
図36aとを、バケット10の前方向の方位に連動して表示させる。
【0078】
作業車両連携システムの制御装置29は、切り替え操作具19によって高所作業車2が選択されている場合、複合操作具17の操作信号を取得すると、複合操作具17の操作方向に高所作業車2のバケット10が移動するように高所作業車2用の制御信号を生成する。この際、制御装置29は、クレーン30用の制御信号を生成しない。このように、作業車両連携システム1は、高所作業車2に設けられている操作端末14によって高所作業車2のみが操作される高所作業車操作モードとして作動している。
【0079】
図8(A)に示すように、制御装置29は、高所作業車操作モードにおいて複合操作具17が高所作業車2におけるバケット10の前方向(西北西)に向かって操作された操作信号を取得すると(矢印参照)、バケット10の前方向(西北西)にバケット10を移動させる制御信号を生成し、高所作業車2に送信する。このように、制御装置29は、複合操作具17の操作方向にバケット10を移動させることができる(黒塗矢印参照)。
【0080】
制御装置29は、切り替え操作具19によってクレーン30が選択されている場合、複合操作具17の操作信号を取得すると、複合操作具17の操作方向にクレーン30におけるブーム38の先端が移動するように制御信号を生成する。この際、制御装置29は、高所作業車2用の制御信号を生成しない。このように、作業車両連携システム1は、高所作業車2に設けられている操作端末14によってクレーン30のみが操作されるクレーン操作モードとして作動している。
【0081】
図8(B)に示すように、制御装置29は、クレーン操作モードにおいて複合操作具17が高所作業車2におけるバケット10の前方向(西北西)に向かって操作された操作信号を取得すると(矢印参照)、クレーン30におけるブーム38の延伸方向(北北東)から反時計回りに90°の方向(西北西)にブーム38の先端を移動させる制御信号を生成し、クレーン30に送信する。このように、制御装置29は、バケット方位角A1と旋回台方位角A2との間の角度差である角度Aを算出することで複合操作具17の操作方向にブーム38の先端を移動させることができる(薄墨矢印参照)。
【0082】
制御装置29は、切り替え操作具19によって高所作業車2とクレーン30とが選択されている場合、複合操作具17の操作信号を取得すると、複合操作具17の操作方向に高所作業車2のバケット10とクレーン30におけるブーム38の先端とが共に移動するように制御信号を生成する。この際、制御装置29は、バケット10の移動速度とブーム38の先端の移動速度とが等しくなるように制御信号を生成する。このように、作業車両連携システム1は、高所作業車2に設けられている操作端末14によって高所作業車2とクレーン30とが連動して操作される連動操作モードとして作動している。
【0083】
図8(C)に示すように、制御装置29は、連動操作モードにおいて複合操作具17が高所作業車2におけるバケット10の前方向(西北西)に向かって操作された操作信号を取得すると(矢印参照)、バケット10の前方向(西北西)にバケット10を移動させる制御信号を生成するとともに、クレーン30におけるブーム38の延伸方向(北北東)から反時計回りに90°の方向(西北西)にブーム38の先端を移動させる制御信号を生成する。さらに、制御装置29は、生成した制御信号を高所作業車2とクレーン30とに送信する。この際、制御装置29は、バケット10とブーム38との先端とが複合操作具17の操作量に応じた速度で移動するように制御信号を生成する。このように、制御装置29は、バケット10とクレーン30におけるブーム38の先端との距離を保ちながら複合操作具17の操作方向にバケット10とブーム38の先端を移動させることができる(黒塗矢印および薄墨矢印参照)。
【0084】
図9に示すように、制御装置29は、高所作業車操作モード、クレーン操作モードおよび連動操作モードにおいて、近接操作具18(
図2参照)の操作信号を取得すると、バケット10の位置を基準としてバケット10から所定距離Rだけ離間した位置にクレーン30におけるブーム38の先端が移動してくるように制御信号を生成し、クレーン30に送信する。この際、制御装置29は、バケット10が移動していてもバケット10の動きに連動した位置にブーム38の先端を移動させる。このように、作業車両連携システム1は、高所作業車2に設けられている操作端末14によってクレーン30の先端を所定の位置まで自動で移動させたり、バケット10の動きにクレーン30の先端を追従させたりすることができる。
【0085】
また、制御装置29は、高所作業車操作モード、クレーン操作モードおよび連動操作モードにおいて、高所作業車2のバケット10とクレーン30におけるブーム38の先端との距離が所定距離R以下になるとバケット10の移動とブーム38との移動とを停止させる制御信号を生成し、高所作業車2とクレーン30とに送信する。すなわち、制御装置29は、相対的にブーム38の先端がバケット38を中心とする半径Rの円形領域内に進入した場合、バケット10の移動とブーム38との移動とを停止させる制御信号を生成する。この際、制御装置29は、バケット10とブーム38とが停止するまで複合操作具17等の操作信号を受け付けない。また、制御装置29は、バケット10とブーム38との距離が所定距離R以下で停止している場合、バケット10とブーム38との距離が増大する方向に移動させる複合操作具17の操作信号に基づく制御信号のみを生成する。このように、作業車両連携システム1は、バケット10とブーム38との接触を防止することができる。
【0086】
以下に、
図10から
図12を用いて、作業車両連携システム1による作業車両連携制御について具体的に説明する。作業車両連携制御には、高所作業車のバケットとクレーンのブームとが所定距離R以上離間している状態での連携制御である通常連携制御Aと、高所作業車のバケットとクレーンのブームとが所定距離R以内に近接している状態での連携制御である近接連携制御Bとが含まれる。なお、本実施形態において、高所作業車2における旋回台7の旋回中心およびバケット10の位置座標と、クレーン30における旋回台36の旋回中心およびブーム38の先端の位置座標は、位置情報として算出されているものとする。また、作業車両連携システム1の制御装置29は、所定範囲内に存在するクレーンの中から制御対象である任意のクレーン30が選択されているものとする。
【0087】
図10に示すように、作業車両連携システム1による作業車両連携制御のステップS110において、制御装置29は、表示画面の一部から構成される入力装置によって選択されたクレーン30の位置情報および姿勢情報と、高所作業車2の位置情報および姿勢情報とを単位時間毎に取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0088】
ステップS120において、制御装置29は、取得した高所作業車2の位置情報に含まれるバケット方位角A1とクレーン30における旋回台方位角A2との間の角度のうち小さい方の角度Aを算出し、ステップをステップS130に移行させる。
【0089】
ステップS130において、制御装置29は、算出したバケット方位角A1と旋回台方位角A2とに基づいてバケット10における方位図とクレーン30の模式
図36aとを表示装置20に表示し、ステップをステップS140に移行させる。
【0090】
ステップS140において、制御装置29は、操作対象を選択する切り替え操作具19の操作信号を取得し、ステップをステップS150に移行させる。
【0091】
ステップS150において、制御装置29は、取得した高所作業車2の位置情報および姿勢情報と、クレーン30の位置情報および姿勢情報とから、バケット10とブーム38の先端との距離が所定距離R以上か否かを判定する。
その結果、バケット10とブーム38の先端との距離が所定距離R以上の場合、制御装置29はステップをステップS160に移行させる。
一方、バケット10とブーム38の先端との距離が所定距離R以上でない場合、すなわち、ブーム38の先端がバケット38を中心とする半径Rの円形領域内に位置している場合(
図9参照)、制御装置29はステップをステップS170に移行させる。
【0092】
ステップS160において、制御装置29は、通常連携制御Aを開始し、ステップをステップS161に移行させる(
図8参照)。
【0093】
ステップS170において、制御装置29は、近接連携制御Bを開始し、ステップをステップS171に移行させる(
図9参照)。
【0094】
図11に示すように、通常連携制御AにおけるステップS161において、制御装置29は、操作端末14の複合操作具17が操作されたか否かを判定する。
その結果、複合操作具17が操作された場合、制御装置29はステップをステップS162に移行させる。
一方、複合操作具17が操作されていない場合、制御装置29はステップをステップS164に移行させる。
【0095】
ステップS162において、制御装置29は、操作端末14の複合操作具17の操作信号に基づいて、複合操作具17の操作方向にクレーン30におけるブーム38の先端を移動させる制御信号を生成し、ステップをステップS163に移行させる。
【0096】
ステップS163において、制御装置29は、生成した制御信号を送信し、通常連携制御Aを終了し、ステップをステップS110に移行させる(
図10参照)。
【0097】
ステップS164において、制御装置29は、操作端末14の近接操作具18が操作されたか否かを判定する。
その結果、近接操作具18が操作された場合、制御装置29はステップをステップS165に移行させる。
一方、近接操作具18が操作されていない場合、通常連携制御Aを終了し、ステップをステップS110に移行させる(
図10参照)。
【0098】
ステップS165において、制御装置29は、バケット10を基準としてバケット10から所定距離の位置にブーム38の先端を移動させる制御信号を生成し、ステップをステップS163に移行させる。
【0099】
図12に示すように、近接連携制御BにおけるステップS171において、制御装置29は、操作端末14の複合操作具17が操作されたか否かを判定する。
その結果、複合操作具17が操作された場合、制御装置29はステップをステップS172に移行させる。
一方、複合操作具17が操作されていない場合、制御装置29はステップをステップS175に移行させる。
【0100】
ステップS172において、制御装置29は、操作対象が複合操作具17の操作方向に移動することでバケット10とブーム38とが互いに離間する方向に移動するか否かを判定する。
その結果、バケット10とブーム38とが互いに離間する方向に移動する場合、制御装置29はステップをステップS173に移行させる。
一方、バケット10とブーム38とが互いに離間する方向に移動されない場合、制御装置29はステップをステップS175に移行させる。
【0101】
ステップS173において、制御装置29は、操作端末14の複合操作具17の操作信号に基づいて、複合操作具17の操作方向にクレーン30におけるブーム38の先端を移動させる制御信号を生成し、ステップをステップS174に移行させる。
【0102】
ステップS174において、制御装置29は、生成した制御信号を送信し、近接連携制御Bを終了し、ステップをステップS110に移行させる(
図7参照)。
【0103】
ステップS175において、制御装置29は、近接操作具18の操作の有無にかかわらず、制御信号の生成を行わず、近接連携制御Bを終了し、ステップをステップS110に移行させる(
図7参照)。
【0104】
このように構成される作業車両連携システム1と高所作業車2は、高所作業車2におけるバケット10の前方向とクレーン30における旋回台7のブーム38の延伸方向との方位角の差を算出し、複合操作具17によるバケット10の移動方向と複合操作具17によるブーム38の移動方向とを一致させる。すなわち、作業車両連携システム1と高所作業車2は、複合操作具17の操作によって複合操作具17の操作方向にバケット10とブーム38とを移動させる。この際、作業車両連携システム1と高所作業車2は、切り替え操作具19の状態に応じて制御対象を高所作業車2とクレーン30との少なくとも一方に限定する。このように、作業車両連携システム1と高所作業車2は、高所作業車2のバケット10に作業車両と高所作業車2とのうち、作業内容に適した操作対象を任意に選択して操作可能に構成されている。また、作用車両連携システムと高所作業車2は、複合操作具17の操作方向と作業車両におけるブーム38の先端の移動方向とが一致しているので、バケット10内の作業者の視点から操作可能に構成され、バケット10内の作業者がバケット10に対する作業車両の位置や向きを考慮して操作する必要がない。これにより、他の作業機を用いた高所作業車2と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる。
【0105】
さらに、作業車両連携システム1と高所作業車2は、近接操作具18の操作によってバケット10を基準とした所定の位置にブーム38を自動的に移動させる。このように、作業車両連携システム1と高所作業車2は、近接操作具18の操作によって、作業車両のブーム38が自動的にバケット10から所定の距離だけ離間した位置に配置されるので、作業者が作業車両の操作をする必要がない。一方、作業車両連携システム1と高所作業車2は、バケット10とブーム38との距離が所定距離R以下になった場合、バケット10とブーム38との移動を停止させる。このように、作業車両連携システム1と高所作業車2は、作業車両のブーム38がバケット10から一定の距離を保つので、作業車両のブーム38がバケット10に近接した際にブーム9とバケット10との位置関係を考慮して操作する必要がない。これにより、他の作業機を用いた高所作業車2と作業車両との共同作業において、作業効率を維持しつつ操作性を向上させることができる。
【0106】
なお、本実施形態において、作業車両連携システム1は、高所作業車2のバケット10に設けられた表示装置20にクレーン30の位置情報と姿勢情報とが表示されているが、クレーン30のキャビン46内に作業車両連携システム1の表示装置20としてクレーン側表示装置を更に備えてもよい。クレーン側表示装置には、作業者が保持している表示装置20に表示されている情報が表示されている。このように作業車両連携システム1を備えているクレーン30は、クレーン30の操縦者と表示装置20を保持している作業者とが常に同一の情報を共有している。これにより、作業車両連携システム1は、クレーン30の操縦者に必要な情報を高所作業車2の動きと連動して提示することができる。また、作業車両連携システム1は、切り替え操作具19を有さず、高所作業車2用の操作具とクレーン30用の操作具とを操作端末14にそれぞれ備える構成でもよい。
【0107】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0108】
1 作業車両連携システム
2 高所作業車
3 車両
6 高所作業装置
7 旋回台
9 ブーム
12 通信装置
14 操作端末
17 複合操作具
20 表示装置
29 制御装置
30 クレーン
31 高所側GNSS受信機
51 クレーン側通信装置
61 クレーン側制御装置
A1 バケット方位角
A2 旋回台方位角