(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】画像検査装置及び画像検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240228BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240228BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240228BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G06T7/00 610C
H04N1/00 002A
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2019196050
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-09-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 信
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173000(JP,A)
【文献】特開平06-066731(JP,A)
【文献】特開平11-048457(JP,A)
【文献】特開平01-011465(JP,A)
【文献】特開2015-189216(JP,A)
【文献】米国特許第4685139(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 5/50
G06T 7/00
G06T 7/60
G03G 15/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置が記録材に形成する画像の元となる出力対象画像と、前記画像が形成された前記記録材から読み取られた読取画像との位置を合わせる位置合わせ部と、
前記読取画像を水平又は垂直方向に所定画素数だけシフトして得たシフト画像と、シフト前の前記読取画像との差分をとって生成した差分画像を分類するための分類閾値に基づいて、前記読取画像から選択した注目画素の画素値に対する、前記注目画素を基準として第1の方向に第1画素数だけ離れた比較画素の画素値の変化量を分類する変化量算出部と、
前記第1の方向に対して交差する第2の方向にある複数の画素に基づいて分類された前記変化量に基づいて、前記記録材に形成された前記画像に発生するスジ状欠陥の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記第1の方向に沿って、前記特徴量と、予め設定された欠陥検出閾値とを比較して前記スジ状欠陥を検出し、前記記録材に形成された前記画像の品質を判断する品質判断部と、を備える
画像検査装置。
【請求項2】
前記変化量算出部は、前記出力対象画像から生成した、前記画像が形成されない紙白領域に合わせた前記分類閾値を算出する
請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記変化量算出部は、前記出力対象画像から前記スジ状欠陥を検出しない検出除外領域を生成し、
前記品質判断部は、前記検出除外領域では、前記スジ状欠陥を検出する処理を行わない
請求項1又は2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記変化量算出部は、前記出力対象画像から生成した、エッジ領域を前記検出除外領域とする
請求項3に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記変化量算出部は、前記出力対象画像から生成した、前記画像が形成されない紙白領域を前記検出除外領域とする
請求項3に記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記記録材から前記画像を読み取って前記読取画像を生成する読取部を備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像検査装置。
【請求項7】
記録材に画像を形成する画像形成装置と、前記記録材に形成された前記画像を検査する画像検査装置と、を備え、
前記画像検査装置は、
前記画像形成装置が前記記録材に形成する前記画像の元となる出力対象画像と、前記画像が形成された前記記録材から読み取られた読取画像との位置を合わせる位置合わせ部と、
前記読取画像を水平又は垂直方向に所定画素数だけシフトして得たシフト画像と、シフト前の前記読取画像との差分をとって生成した差分画像を分類するための分類閾値に基づいて、前記読取画像から選択した注目画素の画素値に対する、前記注目画素を基準として第1の方向に第1画素数だけ離れた比較画素の画素値の変化量を分類する変化量算出部と、
前記第1の方向に対して交差する第2の方向にある複数の画素に基づいて分類された前記変化量に基づいて、前記記録材に形成された前記画像に発生するスジ状欠陥の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記第1の方向に沿って、前記特徴量と、予め設定された欠陥検出閾値とを比較して前記スジ状欠陥を検出し、前記記録材に形成された前記画像の品質を判断する品質判断部と、を備える
画像検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置及び画像検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量の印刷を行う場合、通常、オペレーターが何度か試し印刷を行って各種の調整を行い、印刷内容に問題のないことを見本により確認できたら本印刷を開始する。しかし、本印刷された用紙の画像において、何らかの要因で、見本に対する色ズレが生じたり、歪みが生じたりすることがある。そこで、近年は、画像形成装置の後段の搬送路上にスキャナ等の読取装置を設け、印刷出力される各用紙の画像を読み取って得た読取画像を画像検査装置が検査する検査システムが提供されるようになった。この検査では、用紙に形成される画像の元となる画像を出力対象画像として保存しておく。そして、画像検査装置は、本印刷で印刷した用紙をスキャナで読み取って得た画像(読取画像)と、保存してある出力対象画像とを比較する。
【0003】
読取画像と出力対象画像とを比較すると、読取画像から画像欠陥が検出されることがある。画像欠陥の種類としては、例えば、所定方向に連続し、又は所定方向に途切れながら現れる幅の細いスジや帯等がある。このような画像欠陥は、スジ状欠陥と総称される。ただし、以下の説明では、スジ状欠陥を、「スジ」とも略記する。スジは、画像形成装置やスキャナなどの読取装置が備えるドラムやローラなどのキズや汚れが原因で生じる欠陥であり、オペレーターが意図していない画素値(輝度値ともいう)の階調差(「スジ強度」ともいう)や濃度ムラとして現れる。スジとしては、例えば、元の画像より薄い白スジ、元の画像より濃い黒スジ等がある。スジは繰り返し生じやすく、オペレーターや顧客が認識しやすい欠陥であるため、本印刷の途中であってもスジを確実に検出することが求められる。
【0004】
スジを検出するために、特許文献1に開示された技術が知られている。この特許文献1には、出力対象画像と読み取り画像との第1の差分画像に対して、所定の画素数離れた画素と差分を取った第2の差分画像を生成し、第2の差分画像に対して、画素値が第1の閾値よりも大きい画素の第1の画素数と、画素値が第1の閾値よりも小さい画素の第2の画素数を算出して、画素列毎の第1の画素数と第2の画素数との比率に基づいてスジを判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スジは様々な要因により、用紙に形成された画像の副走査方向又は主走査方向に現れる。例えば、画像形成装置が備える帯電極がトナーなどによって汚れている場合、汚れた箇所の帯電がうまくいかず、結果として、画像の副走査方向にスジとして現れることがある。また、感光体ドラムなどの回転体に不良が生じた場合には、回転体が回転する周期に同期して主走査方向にスジが現れる。ここで、読取画像に現れるスジについて、
図1を参照して説明する。
【0007】
図1は、副走査方向(FD:Feed direction)に画素値を平均化したデータの一例を示すグラフである。このグラフの横軸は、主走査方向(CD:Cross direction)における読取画像の主走査位置を表し、縦軸は、G-ch(緑チャンネル)で読み取られた読取画像の画素毎の画素値を表す。このグラフは、スキャナ等の読取装置が平坦な画像を読み取った結果に基づき、主走査方向に同じ位置にある副走査方向の画素の画素値を平均化したものである。以下の例では、用紙に画像や字が形成される印字方向が主走査方向に一致するものとして説明するが、印字方向が副走査方向に一致する場合も同様である。ここで、
図1に示す読取画像には、副走査方向へ2本のスジが生じていたとする。
【0008】
従来、読取画像のスジを検出するために、読取画像と出力対象画像との差分を求める方法が用いられていた。読取画像と出力対象画像とが一致していれば差分はないが、読取画像にスジが生じると、スジが生じた箇所の付近で差分が生じるので、スジを検出することができる。しかし、用紙がわずかに傾いた状態で画像が形成されると、この用紙から読み取られた読取画像と、出力対象画像とで位置ズレが生じてしまう。このため、実際には読取画像にスジが生じていないにも関わらずスジを誤検出する恐れがあった。
【0009】
また、特許文献1に開示された技術を用いても、出力対象画像と読取画像には色変換等の誤差があるため、直接差分を求めると誤差の影響が大きくなり、スジを誤検出する恐れがあった。また、特許文献1に開示された技術では、出力対象画像と読取画像を比較して差分画像を生成する際、位置合わせによるズレが考慮されていなかった。このため、出力対象画像と読取画像の位置合わせによるズレが生じた場合に、実際にはスジがない領域からスジを誤検出する恐れがあった。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、出力対象画像と読取画像とで位置合わせのズレが生じても、読取画像からスジ状欠陥を検出して、画像の品質を判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した画像検査装置は、画像形成装置が記録材に形成する画像の元となる出力対象画像と、画像が形成された記録材から読み取られた読取画像との位置を合わせる位置合わせ部と、読取画像を水平又は垂直方向に所定画素数だけシフトして得たシフト画像と、シフト前の読取画像との差分をとって生成した差分画像を分類するための分類閾値に基づいて、読取画像から選択した注目画素の画素値に対する、注目画素を基準として第1の方向に第1画素数だけ離れた比較画素の画素値の変化量を分類する変化量算出部と、第1の方向に対して交差する第2の方向にある複数の画素に基づいて分類された変化量に基づいて、記録材に形成された画像に発生するスジ状欠陥の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、第1の方向に沿って、特徴量と、予め設定された欠陥検出閾値とを比較してスジ状欠陥を検出し、記録材に形成された画像の品質を判断する品質判断部と、を備える。
なお、上記の画像検査装置は本発明の一態様であり、本発明の一側面を反映した画像検査システムについても、上記の画像検査装置と同様に構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出力対象画像と読取画像とで位置合わせのズレが生じても、読取画像からスジ状欠陥を検出して、画像の品質を判断できるため、記録材に形成される画像の品質が向上する。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】副走査方向に画素値を平均化したデータの一例を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る画像検査システムの概要構成図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る画像検査装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る検出対象とするスジが含まれる読取画像及び分類結果の例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る分類結果からスジ特徴量を抽出する様子を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係る読取画像の平坦領域と非平坦領域における画素の画素値と差分値、及び分類閾値の例を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施の形態に係る位置合わせにズレが生じたときの差分値を表すグラフの変化の例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施の形態に係る分類閾値を変動させた例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施の形態に係る検査処理装置で行われる処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施の形態の変形例に係る分類閾値の範囲を二次元的に拡大する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0015】
[一実施の形態]
<画像検査システムの構成>
本発明者は、読取画像に含まれる注目画素と、注目画素の近くにある比較画素との差分を取ることで、
図1に示したようなノイズと分離不能であって、オペレーターが視認可能なスジについて、濃度ムラの影響を小さくしつつ、検出する画像検査装置を発明した。以下に、本実施の形態に係る、読取画像からスジを検出可能な画像検査装置を含む画像検査システムの構成例及び動作例について、
図2~
図10を参照して説明する。
【0016】
始めに、
図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る画像検査システムの構成例について説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る画像検査システム1の概要構成図である。なお、
図2には、本発明の説明に必要と考える要素又はその関連要素を記載しており、本発明の画像検査システムは
図2に示す例に限定されない。
【0017】
画像検査システム1は、画像形成装置2及び画像検査装置3を備える。画像形成装置2は、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式によって用紙に画像を形成する画像形成装置の一例である。画像形成装置2は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を重ね合わせるタンデム形式によって、用紙上にカラー画像を形成する。画像形成装置2には、不図示のLAN(Local Area Network)を介して、オペレーターによって操作されるPC(Personal Computer)6(後述する
図3を参照)等が接続されている。そして、PC6からLANを介して画像形成装置2にジョブが投入される。画像形成装置2は、投入されたジョブに従って、画像形成処理等の各種の処理を行う。
【0018】
始めに、画像形成装置2の構成例について説明する。
画像形成装置2は、自動原稿給送装置(ADF:Auto Document Feeder)12を有する画像入力部11、操作表示部13を備える。また、画像形成装置2は、給紙トレイ20及び画像形成部30を有するプリンター部10を備える。
【0019】
画像入力部11は、ADF12の原稿台上の原稿から画像を光学的に読み取り、読み取った画像をA/D変換して画像データを生成する。なお、画像入力部11は、プラテンガラス上で原稿から画像を読み込むこともできる。
【0020】
操作表示部13は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部13は、操作部に入力されたオペレーターからの操作内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を制御部50(後述する
図3を参照)に供給する。また、操作表示部13は、制御部50から供給される表示信号に基づいて、表示部に、オペレーターによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
【0021】
給紙トレイ20は、画像形成部30で画像形成が行われる用紙Shを収容する容器である。給紙トレイ20には、それぞれ、紙種や坪量等が異なる用紙が収容される。用紙Shは、記録材の一例である。画像形成装置2は、記録材の一例である樹脂製のシートにも画像を形成することが可能である。なお、本実施形態では、2つの給紙トレイ20を設けた例を挙げたが、給紙トレイ20の個数は1つであってもよく、3個以上であってもよい。
【0022】
画像形成装置2には、給紙トレイ20から給紙された用紙Shを画像検査装置3まで搬送する搬送路21が設けられる。搬送路21には、用紙Shを搬送するための複数の搬送ローラが設けられる。
【0023】
定着部36の下流側では、搬送路21が伸長して画像検査装置3の搬送路41に接続されている。また、搬送路21は、定着部36の下流側で分岐する。分岐した搬送路21の一端には、プリンター部10の上流側の搬送路21に合流する反転搬送路22が接続されている。反転搬送路22には、用紙Shを反転させる反転部23が設けられている。反転部23で反転された用紙Shは、反転搬送路22を通して搬送路21の上流側に返される。また、経路の切り替えによって反転した用紙Shが、定着部36の下流側の搬送路21に戻された後、画像検査装置3に搬送されることもある。
【0024】
画像形成部30は、Y、M、C及びKの各色のトナー画像を形成するための、4つの画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを備え、用紙Shに画像を形成する。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kはそれぞれ、帯電部、露光部(いずれも不図示)、像担持体としての感光体ドラム32Y,32M,32C,32K、及び、現像部33Y,33M,33C,33Kを備える。
【0025】
現像部33Y,33M,33C,33Kは、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kの各表面(外周部)に、画像に応じた光を照射することにより、各感光ドラムの周上に静電潜像を形成させる。そして、現像部33Y,33M,33C,33Kは、該静電潜像にトナーを付着させることにより、感光体ドラム32Y,32M,32C,32K上にトナー画像を形成する。
【0026】
また、画像形成部30は、中間転写ベルト34、2次転写部35及び定着部36を備える。中間転写ベルト34は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kに形成された画像が1次転写されるベルトである。2次転写部35は、中間転写ベルト34上に1次転写された各色のトナー画像を、搬送路21を搬送された用紙Shに2次転写するローラである。
【0027】
定着部36は、2次転写部35の用紙搬送方向の下流側に配置されて、画像形成部30から供給されるカラーのトナー画像が形成された用紙Shに対して、定着処理を施す。定着部36は、搬送された用紙Shを加熱及び加圧することにより用紙Shの表面側に、画像形成部30により転写された画像を定着する。定着部36により画像が定着した用紙Shは、搬送路21によって画像検査装置3に搬送されるか、反転搬送路22を通して反転部23により表裏が反転された後、プリンター部10の上流側で搬送路21に返される。表裏反転された用紙Shは、プリンター部10によって裏面への画像形成が行われる。その後、定着部36によって定着処理が施された用紙Shは、画像検査装置3に搬送される。
【0028】
次に、画像検査装置3の構成例について説明する。
画像検査装置3は、画像形成装置2から搬送された用紙Shに形成(印刷)された画像に発生したスジを検出する画像検査を行う。用紙Shに形成された画像に対する処理、すなわち画像検査装置3による画像の検査は、主に画像検査装置3に取付けられた検査処理装置5によって行われる。
【0029】
画像検査装置3は、画像形成装置2から搬送されてきた用紙Shを搬送する搬送路41,42,43、切替え部44、読取部45a,45b、測色計46、搬送路41上を搬送された用紙Shが排紙される排紙トレイ47,48を有する。
【0030】
読取部45a,45bは、それぞれイメージセンサー等の画像入力装置の一例である。読取部45a,45bは、例えば、用紙Shの表面に光を投射し、用紙Shからの反射光を画像データとして取り込む。このように読取部45a,45bが用紙Shの画像データを取り込むことを「読取る」と呼ぶ。読取部45aは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の下方から読取り、読取部45bは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の上方から読取る。以降の説明では、読取部45a,45bを区別しないため、「読取部45」と総称する。そして、読取部45は、取り込んだ画像データを検査処理装置5に出力する。
【0031】
測色計46は、搬送路41を搬送される用紙Shの上面に形成された画像を読み取り、読み取って得た画像情報に基づいて、該画像の色濃度(反射濃度)を測定する色濃度測定装置の一例である。測色計46は、例えば、光の波長ごとの反射光の強度(スペクトル)を計測可能な測色器であり、測定した色の濃度(反射濃度)や、L*a*b*値などを出力する。測色計46には、例えば、不図示の複数のセンサ(光電変換素子)を用紙幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)の全域にわたる1次元上に配列したスキャナ(ラインセンサ)が使用される。測色計46をスキャナで構成した場合、画像の読み取りは、スキャナをその配置方向と直交する方向(用紙搬送方向)に移動させながら行われる。そして、測色計46は、画像の読み取りが行われる領域をメッシュ状に分割して得られる各領域を対象として、用紙Sh上に形成された画像の色濃度を測定する。測色計46は、測定した色濃度の情報を、検査処理装置5に出力する。
【0032】
なお、測色計46を単一のセンサで構成し、該センサを2次元的に移動させることにより、用紙Shに形成された画像の色の濃度を測定してもよい。または、測色計46を2次元上(マトリクス状)に配置した複数のセンサで構成し、該複数のセンサで1回の測定により用紙上の全画素の色の濃度を読み取ってもよい。
【0033】
画像検査装置3は、搬送路41に接続される搬送路42,43を備える。
搬送路42は、搬送路41の途中から分岐する経路であり、検査処理装置5により検査された用紙Shを、排紙トレイ47(排紙部の一例)に排紙する。排紙トレイ47には、検査処理装置5によって画像が正常と判断された用紙Sh(「正常用紙」とも呼ぶ)が排紙される。
【0034】
搬送路43も搬送路41の途中から分岐する経路であり、検査処理装置5により検査された用紙Shを、排紙トレイ48(排紙部の一例)に排紙する。排紙トレイ48には、検査処理装置5によって画像が異常と判断された用紙Sh(「異常用紙」とも呼ぶ)が排紙される。
【0035】
切替え部44は、搬送路42,43のいずれかに用紙Shが搬送されるよう、用紙Shの搬送方向を切替える。なお、画像検査装置3に一つの排紙トレイ47しかない場合、正常用紙と異常用紙が混在して排紙される。この場合、正常用紙と異常用紙は、例えば、それぞれ排紙される方向に直交する方向に少しずらして排紙される。
【0036】
画像検査装置3に搬送される用紙Shは、両面又は片面に画像が形成された印刷物である。画像検査装置3は、画像形成装置2が用紙Shの両面又は片面に形成した画像を読取り、検査処理装置5が所定の検査を行う。
【0037】
なお、本実施の形態では、画像形成装置2が用紙Shの両面に画像を形成可能であるため、検査処理装置5が用紙Shの両面を検査する例を挙げた。しかし、検査処理装置5は、用紙Shの片面だけに画像を形成可能な画像形成装置から搬送された用紙Shの片面だけを検査するように構成してもよい。
【0038】
[画像形成装置の制御系の構成]
次に、
図3を参照して、画像形成装置2の制御系の構成例について説明する。
図3は、画像形成装置2の制御系の構成例を示すブロック図である。
画像形成装置2は、主要な構成として、通信I/F部51、用紙搬送部24、画像入力部11、画像形成部30、制御部50、記憶部52、定着部36及び操作表示部13を備える。
【0039】
通信I/F部51は、ネットワーク又は専用線を介して、オペレーターが操作する端末であるPC6との間でデータを送受信するインターフェースである。通信I/F部51として、例えばNIC(Network Interface Card)が用いられる。
【0040】
用紙搬送部24は、制御部50による制御に基づいて、
図2に示した搬送路21、反転搬送路22上に設けられた搬送ローラ(図示略)、及び反転部23を駆動する。
【0041】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503及び入力画像処理部504を備える。
ROM502には、制御部50のCPU501が実行するプログラム、又はプログラムの実行時に使用するデータ等が保存される。CPU501は、ROM502に保存されたプログラムを読み出すことにより、画像形成装置2を構成する各部の制御を行う。
RAM503には、CPU501の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。
【0042】
入力画像処理部504は、PC6から通信I/F部51を介して入力したジョブに含まれる入力画像に所定の画像処理(例えば、ラスタライズ処理)を施し、印刷用画像データを作成する。また、入力画像処理部504は、画像入力部11がADF12で読み取った原稿から取得した画像データ、又は、外部から取得した画像データについても画像処理を施し、印刷用画像データを作成する。この印刷用画像データは、画像形成部30及び画像検査装置3に送られる。画像検査装置3では、印刷用画像データが、出力対象画像603b(後述する
図4を参照)として保存される。
【0043】
制御部50は、用紙搬送部24を制御して搬送ローラを駆動させ、用紙Shを搬送路21上で搬送させる。また、制御部50は、入力画像処理部504が作成した印刷用画像データを画像形成部30に出力する。また、制御部50は、画像形成部30を制御して、用紙Shに画像を形成させる。また、制御部50は、定着部36を制御して、画像を用紙Shに定着させる。
【0044】
また、制御部50は、操作表示部13から操作信号を受信し、該操作信号に応じた制御を行う。さらに、制御部50は、操作表示部13に表示信号を出力し、操作表示部13が、各種操作指示や設定情報を入力するための各種設定画面や各種処理結果等を表示する操作画面を表示パネルに表示する。操作表示部13に表示される情報としては、画像検査装置3から出力される、スジ検出結果631(後述する
図4を参照)も含まれる。
【0045】
記憶部52には、制御部50のCPU501がプログラムを実行する際に使用するパラメータや、プログラムを実行して得られたデータなどが保存される。例えば、記憶部52には、各濃度レベルの画像形成条件等の情報が保存される。なお、記憶部52に、CPU501が実行するプログラムを記憶させてもよい。
【0046】
[画像検査装置の制御系の構成]
次に、
図4を参照して、画像検査装置3の制御系の構成例について説明する。
図4は、画像検査装置3の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0047】
画像検査装置3は、主要な構成として、通信I/F部61、用紙搬送部62、読取部45、測色計46を備える。また、画像検査装置3に取り付けられた検査処理装置5は、制御部60及び記憶部63を備える。また、検査処理装置5には、記憶装置4が取り付けられる。
【0048】
通信I/F部61は、ネットワークを介して、画像形成装置2との間でデータを送受信するインターフェースである。通信I/F部61として、例えばNICが用いられる。
用紙搬送部62は、制御部60による制御に基づいて、
図2に示した搬送路41上に設けられた搬送ローラ(不図示)を駆動する。
【0049】
上述したように読取部45は、搬送路41を搬送される用紙Shの上面及び下面に形成された画像を読取る。本実施の形態では、読取部45a,45bで読取られた用紙Shの画像データを「読取画像」と呼ぶ。読取部45が、画像が形成された用紙Shから読み取った画像は、読取画像603aとして、制御部60のRAM603に保存される。また、検査処理装置5が、画像形成装置2から受け取ったRIP処理済みの印刷用画像データが、出力対象画像603bとしてRAM603に保存される。
【0050】
本実施の形態では、読取画像603aと比較される基準となる画像を「出力対象画像」と呼ぶ。出力対象画像603bは、事前に画像形成装置2の制御部50でラスタライズ処理(RIP処理)が施されたビットマップ形式の画像である。この出力対象画像603bは、画像形成装置2が用紙Shに形成する画像の元となる。出力対象画像603bは、画像形成装置2で用紙Shに画像形成するために用いられるのでCMYKのカラーモードが設定されている。なお、オペレーターにより事前に正しいと判断された画像であって、読取部45によって予め読取られた画像が出力対象画像603bとして用いられてもよい。また、読取画像603a及び出力対象画像603bは、大容量のHDD等で構成される記憶部63に保存されてもよい。また、測色計46から画像検査装置3に出力される色濃度の情報が、読取画像603a及び出力対象画像603bに含まれてもよい。
【0051】
制御部60は、CPU601、ROM602、RAM603、画像変換部611、位置合わせ部612、変化量算出部613、欠陥特徴量抽出部614及び品質判断部615を備える。
【0052】
CPU601は、ROM602に保存されたプログラムを読み出すことにより、画像検査装置3を構成する各部の制御を行う。CPU601がROM602から読み出したプログラムを実行することで、画像変換部611、位置合わせ部612、変化量算出部613、欠陥特徴量抽出部614及び品質判断部615の各機能が実現される。
【0053】
ROM602には、制御部60のCPU601が実行するプログラム、又はプログラムの実行時に使用するデータ等が保存される。ROM602は、CPU601によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0054】
RAM603には、CPU601の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。上述したようにRAM603には、読取画像603a及び出力対象画像603b、差分画像603c1,603c2、分類結果603d、閾値画像603e及びパラメータ603fも保存される。
【0055】
パラメータ603fは、制御部60又はオペレーターによって設定された各種の値を含む。パラメータ603fは、例えば、後述するスジ特徴量からスジを検出するための欠陥検出閾値等を含む。画像変換部611、位置合わせ部612、変化量算出部613、欠陥特徴量抽出部614及び品質判断部615は、パラメータ603fから読み出した各種の値に基づいて各種の処理を行う。
【0056】
画像変換部611は、出力対象画像603bのカラーモードを、読取画像603aのカラーモードに合わせる画像変換を行う。ここで、読取画像603aのカラーモードは、RGBである。このため、画像変換部611は、出力対象画像603bのカラーモードをCMYKからRGBに変換する。以下の説明では、出力対象画像603bを、カラーモードがRGBに変換済みであるものとして説明する。
【0057】
なお、画像変換部611は、読取画像603aのカラーモードを、出力対象画像603bのカラーモードに合わせる画像変換を行ってもよい。また、読取画像603aのカラーモードを、出力対象画像603bのカラーモードが同じであれば、画像変換部611による画像変換の処理を省略してもよい。
【0058】
位置合わせ部612は、出力対象画像603bと、画像が形成された用紙Shから読み取られた読取画像603aとの印字位置を合わせる(「位置合わせ」と呼ぶ)。例えば、位置合わせ部612は、用紙Shに形成された画像の良品検査の基準となる出力対象画像603bの印字位置と、読取画像603aの印字位置とを合わせる。この時、位置合わせ部612は、RAM603から読み出した読取画像603aを、RAM603に予め保存されている出力対象画像603bの位置に合わせる。
【0059】
変化量算出部613は、位置合わせ部612が読取画像603aに対して位置合わせした出力対象画像603bと、第1画素数だけシフトした出力対象画像603bとの差分をとって差分画像603c2を生成し、差分画像603c2をRAM603に保存する。例えば、変化量算出部613は、読取画像603aに含まれる複数の画素から選択した注目画素71の画素値と、比較画素72の画素値との差分値を変化量として、注目画素71の位置に格納する。そして、変化量算出部613は、読取画像603aの他の画素に対しても同様の差分処理を行って差分画像603c1を生成する。このとき、変化量算出部613は、読取画像603aを水平又は垂直方向に所定画素数だけシフトして得たシフト画像(不図示)と、シフト前の読取画像603aとの差分をとって差分画像603c1を生成することが可能である。シフトとは、注目画素71に対して比較画素72を決定するための画素間の距離を表す。
【0060】
また、変化量算出部613は、差分画像603c1に含まれる各画素の差分値の大きさ及び符号に基づいて、画素毎に複数に分類した分類結果603dを変化量として生成する。ここで、分類結果603dは、変化量算出部613が、差分画像603c1に含まれる複数の画素ごとに、差分値を分類閾値で分類(3値化)した結果として表される(後述する
図5の下段)。分類閾値は、パラメータ603fに設定される値である。
【0061】
本実施の形態に係る、変化量算出部613は、分類閾値を、出力対象画像603bと読取画像603aとの位置合わせに応じて変動させる(後述する
図9を参照)。変動された分類閾値は、パラメータ603fに設定される。ただし、分類閾値は、位置合わせされた出力対象画像603bと読取画像603aとに合わせて予め設定されてもよい。
【0062】
そして、変化量算出部613は、読取画像603aに含まれる複数の画素から選択した注目画素71の画素値に対する、注目画素71を基準として第1の方向に第1画素数だけ離れた比較画素72の画素値の変化量を分類(3値化)する。画素値の変化量は、注目画素71の画素値に対する比較画素72の差分値として表される。注目画素71、比較画素72の例は、後述する
図5に示す。
【0063】
また、変化量算出部613は、多値化の処理前に、読取画像603aに対する出力対象画像603bの位置ズレを表す位置ズレ量に合わせて変動させた分類閾値を算出する。この時、変化量算出部613は、主走査方向に発生する位置ズレ量に合わせて、分類閾値の最小値及び最大値の範囲を拡張する。
【0064】
以下、第1の方向を主走査方向、第2の方向を副走査方向として説明する。ただし、検出対象とするスジの方向が主走査方向であれば、第1の方向を副走査方向、第2の方向を主走査方向としてもよい。つまり、第1の方向は、印字方向に平行な水平方向、又は印字方向に垂直な垂直方向のいずれかである。また、本実施の形態では、第1画素数を“3”とする。
【0065】
本実施の形態では、変化量算出部613が分類閾値を参照して、差分画像603c1に含まれる各画素の差分値を、画素ごとに3値化する処理を「多値化」という。分類閾値によっては、変化量算出部613が差分画像603c1の差分値を2値化、4値化等に多値化してもよい。また、分類閾値は、画像検査の開始前に、予め設定される値であり、読取画像603aの解像度、用紙Shに形成された画像の種類等によって異なる値が設定されることがある。
【0066】
上述した分類閾値は、変化量算出部613が、差分画像603c2に基づいて、分類結果603dを作るために参照する閾値画像603eとして生成される。変化量算出部613は、位置合わせ部612により位置合わせされた読取画像603aの画素値の変動に合わせて、分類閾値を変動させる。閾値画像603eは、後述する
図7~
図9に示す第1分類閾値A、第2分類閾値Bで規定される2種類の画像であり、閾値画像603eの画素毎に分類閾値を格納したものである。
【0067】
また、変化量算出部613は、読取画像603aにおける注目画素71の画素値と、比較画素72の画素値との差分をとって算出した差分値を、注目画素71の位置に格納した差分画像603c1を生成する。このとき、変化量算出部613は、読取画像603aを水平又は垂直方向に所定画素数だけシフトして得たシフト画像(不図示)と、シフト前の読取画像603aとの差分をとって差分画像603c1を生成し、差分画像603c1をRAM603に保存する。
【0068】
また、変化量算出部613は、生成した閾値画像603e、すなわち第1分類閾値A及び第2分類閾値B(後述する
図7~
図9を参照)に基づいて、差分画像603c1を3値化して分類した分類結果603dを得る。
【0069】
また、変化量算出部613は、差分画像603c1に含まれる各画素の差分値の大きさ及び符号に基づいて、画素毎に複数に分類した分類結果603dを変化量として生成する。ここで、分類結果603dは、変化量算出部613が、差分画像603c1に含まれる複数の画素ごとに、差分値を分類閾値で分類(3値化)した結果として表される(後述する
図5の下段)。分類閾値は、パラメータ603fに設定される値である。
【0070】
欠陥特徴量抽出部614は、副走査方向にある複数の画素に基づいて
分類された変化量に基づいて、用紙Shに形成された画像に発生するスジ状欠陥の特徴量(「スジ特徴量」と呼ぶ)を抽出する。例えば、欠陥特徴量抽出部614は、スジが発生する方向が副走査方向である場合に、主走査方向の所定位置ごとに分類結果603dを副走査方向に参照して、平均化結果(3値化平均化結果)からスジ特徴量を抽出する。3値化平均化結果は、変化量算出部613が分類閾値で分類して多値化した差分値を、欠陥特徴量抽出部614が平均化して得る結果であり、後述する
図6の上段及び中段に示す3値化平均値で表すグラフで示される。スジ特徴量の詳細については、後述する
図6にて説明する。
【0071】
品質判断部615は、主走査方向に沿って、スジ特徴量と、予め設定された欠陥検出閾値とを比較して検出可能なスジ状欠陥の有無に基づいて、用紙Shに形成された画像の品質を判断する。この際、品質判断部615は、スジ特徴量からスジを検出しなければ読取画像603aを正常と判断する。一方、品質判断部615は、スジ特徴量からスジを検出すれば読取画像603aを異常と判断する。そして、品質判断部615は、読取画像603aの元となったページのページ番号等を含むスジ検出結果631を記憶部63に保存する。
【0072】
スジ検出結果631は、記憶部63に保存されるだけでなく、画像検査装置3に接続された外部の記憶装置4に送られる。記憶装置4は、例えば、画像検査装置3に接続されたUSB(Universal Serial Bus)メモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等としてよい。スジ検出結果631が記憶装置4に送られることにより、オペレーターは、記憶装置4に保存されたスジ検出結果631を表示し、内容を確認することができる。なお、通信I/F部61を経由して接続するクラウドのサーバー(図示略)又はPC6にスジ検出結果631を転送し、保存してもよい。
【0073】
また、制御部60は、必要に応じて記憶部63から読出したスジ検出結果631を、通信I/F部61を介して画像形成装置2又はPC6に送信する。画像形成装置2は、操作表示部13にスジ検出結果631を表示することができる。このため、画像形成装置2及び画像検査装置3のオペレーターは、操作表示部13からスジ検出結果631の内容を確認することができる。また、オペレーターは、PC6からスジ検出結果631の内容を確認することもできる。
【0074】
制御部60は、スジ検出結果631に従って、搬送路41を搬送される用紙Shの排紙トレイ(排紙先の一例)を選択する。例えば、制御部60は、切替え部44を動作して、搬送路42に搬送させた正常用紙を排紙トレイ47に排紙させ、搬送路43に搬送させた異常用紙を排紙トレイ48に排紙させる。
【0075】
また、制御部60は、スジ検出結果631にスジありと書き込まれた読取画像603aに対応するページの再印刷処理(「リカバリ処理」と呼ぶ)を、通信I/F部61を通じて画像形成装置2に指示することができる。なお、リカバリ処理は、オペレーターにより、スジの要因となった回転体のクリーニング、交換等が行われた後に、画像検査システム1にて自動的に、又はオペレーターの手動により実施される。
【0076】
次に、読取画像からスジ特徴量を抽出する手順について、
図5と
図6を参照して説明する。
図5は、検出対象とするスジ70が含まれる読取画像603a、及び分類結果603dの例を示す図である。
【0077】
図5の上段にある読取画像603aの拡大図(1)には、読取画像603aの真ん中、かつ、副走査方向に検出対象とするスジ70が発生していることが示される。副走査方向に画素値を平均化したデータを
図1に示したように、濃度ムラの変動周期は大きいので、スジ70を確実に検出できないことがある。
【0078】
そこで、変化量算出部613は、注目画素71を選び、注目画素71の近くにある画素を比較画素72として選んで、注目画素71と比較画素72の差分をとる。この際、変化量算出部613は、読取画像603aに対して、検出対象とするスジ70と直交する方向にある比較画素72と画素値の差分を取る。この例では、注目画素71に対して主走査方向にある比較画素72と画素値の差分が取られている。比較する画素が近いほど、濃度ムラの影響を受けないが、比較する画素が近過ぎるとスジによる影響を検出できない。このため、変化量算出部613は、検出対象とするスジ70の幅の半分以上離れた画素と比較する。そして、変化量算出部613は、注目画素71の位置に差分値を格納した差分画像603c1を生成する。
【0079】
次に、欠陥特徴量抽出部614は、変化量算出部613が生成した差分画像603c1に含まれる各画素の差分値に基づいて、スジの特徴量を抽出する。ここで、欠陥特徴量抽出部614は、スジに対して直交する方向(例えば、主走査方向)に差分値を取ると比較画素72がスジの位置に来たときと、注目画素71がスジの位置に来たときとで、符号が逆の大きな値を得ることができる(後述する
図6のグラフ(3)を参照)。
【0080】
ただし、差分値から求めた欠陥特徴量の値は、スジがない箇所と比較すれば値が大きいものの、値自体は小さい。このため、変化量算出部613は、差分値を第1分類閾値Aより大きいか、または第2分類閾値Bよりも小さいかによって、値を3つの値に分類して分類結果603dを得る。なお、第1分類閾値Aは、第2分類閾値Bよりも大きい値である。以下の説明で、第1分類閾値A及び第2分類閾値Bを区別しない場合は、「分類閾値」と総称する。
【0081】
図5の下段にある分類結果603dの拡大図(2)は、
図5の上段にある読取画像603aの拡大図(1)を3値化した例を示す。分類結果603dは、変化量算出部613が、読取画像603aから求めた各画素の差分値を3値化して得たものである。分類結果603dは、各画素を“0”、“128”、“255”のいずれかの値に置き換えたものとして表される。ここでは、説明しやすくするために、画素毎に着色した分類結果603dの例を示す。このような分類結果603dを得るためには、適切な多値化が必要とされる。そこで、本実施の形態では、多値化処理で参照される分類閾値が、読取画像603aの領域に合わせて変動される。
【0082】
図6は、分類結果603dからスジ特徴量を抽出する様子を示す図である。
図6の上段にあるグラフ(1)は、3値化平均値の例を示す。欠陥特徴量抽出部614は、分類結果603dを検出対象とするスジ方向に平均化した3値化平均値を算出する。この例では、オペレーターが検出対象とするスジ方向は、副走査方向であるとする。そして、3値化平均値は、主走査位置が“15”で山を作り、“18”で谷を作るグラフとして表される。
【0083】
図6の中段にあるグラフ(2)についても、3値化平均値の例を示す。ただし、グラフ(2)に示す3値化平均値は、グラフ(1)に比べて3画素分(注目画素71から比較画素72までの画素数分)だけ右側にシフトした位置、すなわち
図5に示した注目画素71が比較画素72の位置にシフトした状態における3値化平均値を表す。
【0084】
図6の下段にあるグラフ(3)は、グラフ(1)からグラフ(2)を減じた値の絶対値をスジ特徴量として示す。グラフ(3)より、逆符号同士の値(例えば、主走査位置が“18”)では、他の箇所の値よりも大きい値が算出されたことが示される。そして、品質判断部615は、逆符号同士の値の差分を取って算出されたスジ特徴量が、欠陥検出閾値C(例えば、“150”)よりも大きければ、この位置にスジが生じたと判断する。
【0085】
ところで、印刷物には、平坦な画像の領域(「平坦領域」と呼ぶ)だけでなく、平坦でない画像の領域(「非平坦領域」と呼ぶ)が現れる。平坦領域であれば、分類閾値は検出対象とするスジの濃さ(画素値の階調差)に応じて変動させればよい。そこで、変化量算出部613は、出力対象画像603bから平坦領域のみを抽出した後、品質判断部615が、抽出された領域だけを対象としてスジを検出すればよい。しかし、例えば、画素値の変動量が小さいグラデーションがあるような非平坦領域に乗ったスジは目立ってしまう。
【0086】
そして、変化量算出部613は、画素値の変動量が小さい非平坦領域に対して、平坦領域に基づいて算出された分類閾値を使用して多値化処理を行うと、品質判断部615は、出力対象画像603bにあるスジと同じ形状の変動をスジと誤検出する可能性がある。そこで、変化量算出部613は、出力対象画像603bを用いて、分類閾値を動的に変動させる処理を行う。
【0087】
<分類閾値の変動処理>
ここで、分類閾値を動的に変動させる処理(「閾値変動処理」と呼ぶ)の手順について、
図7~
図9を参照して説明する。
【0088】
本手順の前提として、画像変換部611により、カラーモードが、CMYKからRGBに変換された出力対象画像603bは、位置合わせ部612により、読取画像603aと位置が合わせられる。そして、変化量算出部613は、位置合わせされた出力対象画像603bに対して、読取画像603aから検出対象とするスジと直交する方向にある画素の画素値で差分をとる。
【0089】
ここで、平坦領域と非平坦領域における差分と分類閾値との関係について説明する。
図7は、
RIP処理が施された出力対象画像603bの平坦領域と非平坦領域における画素の画素値と差分値、及び分類閾値の例を示すグラフである。このグラフの横軸は主走査位置を表し、縦軸は、3種類の値(画素値、差分値及び分類閾値)を表す。また、平坦領域及び非平坦領域は、
図7の上側にある差分値のグラフで規定される。図中では、第1分類閾値Aを「閾値A」と記載し、第2分類閾値Bを「閾値B」と記載する。
【0090】
図7の下側にあるグラフは、RIP処理が施された出力対象画像603bの画素値の変動を表す。また、
図7の上側にあるグラフは、
図7の下側にあるグラフにおいて、
出力対象画像603bの画素値から、出力対象画像603bを水平方向に3画素分だけシフトした画素値を引いた差分値の変動を表す。
【0091】
出力対象画像603bの画素値は、折れ線L1のグラフで表される。折れ線L1のグラフより、主走査位置の“1”から“7”までの間は平坦領域であるので、画素値と差分値は共に変化していないことが示される。一方で、主走査位置の“7”から“33”までの間は非平坦領域であるので、画素値と差分値が変化する。例えば、非平坦領域における画素値は、主走査位置の“11”から“21”にかけて緩やかに高くなって一定値を保った後、“23”から“33”にかけて緩やかに低くなって元の値“128”に戻る。
【0092】
例えば、出力対象画像603bの画素値から、出力対象画像603bを水平方向に3画素分だけシフトした画素値を引いた差分値は、折れ線L10のグラフで表される。折れ線L10のグラフに示すように、非平坦領域における差分値は、主走査位置の“7”から“9”にかけて緩やかに低くなり、“9”から“17”にかけて一定のマイナス値をとり、“17”から“23”にかけて緩やかに高くなる。そして、主走査位置の“23”から“30”にかけて一定のプラス値をとり、“30”から“33”にかけて緩やかに低くなって元の値“0”に戻る。
【0093】
ここで、差分値に対して所定値(例えば、“8”)をプラスした値を、第1分類閾値Aと呼び、差分値に対して所定値(例えば、“8”)をマイナスした値を、第2分類閾値Bと呼ぶ。第1分類閾値Aは、折れ線L11のグラフで表され、第2分類閾値Bは、折れ線L12のグラフで表される。分類閾値は、パラメータ603fに記憶されている。分類閾値は、変化量算出部613が、読取画像603aの主走査位置で特定される画素を3値化するために参照される。
【0094】
上述したように、変化量算出部613は、折れ線L10のグラフに示す差分値に対して、第1分類閾値Aを足した値よりも大きいか、差分値に対して第2分類閾値Bを減じた値よりも小さいか、又は差分値が、第2分類閾値B以上、かつ第1分類閾値A以下であるかによって、差分値を3つに分類(3値化)した分類結果603dを得る。このため、本発明者は、平坦領域以外の領域(非平坦領域)に対しても誤検出なくスジを検出できると考えた。
【0095】
しかし、位置合わせにズレが生じていると、非平坦領域において動的に変動する閾値A,Bの位置と、本来適用したい画素の位置とにズレが生じる。それによって、非平坦領域の分類閾値に対して差分値が上回ったり、下回ったりすることでスジの誤検出が発生することが判明した。
【0096】
図8は、位置合わせにズレが生じたときの差分値を表すグラフの変化の例を示す図である。
出力対象画像603bに対する読取画像603aの位置合わせにズレが生じたことにより、差分値の変化を表す折れ線L20が、折れ線L10に対して左側にずれている。この結果、折れ線L20の一部が、主走査位置の“17”で第1分類閾値Aの変化を表す折れ線L11に接触し、差分値が第1分類閾値Aより大きくなる。このため、主走査位置の“17”にて、誤った3値化が行われてしまう。この結果として、スジがない箇所にも関わらず、スジが存在すると検出するおそれがある。
【0097】
ところで、位置合わせの処理にかかる演算コストを考慮すると、ある程度大局的にズレを補正する方法(拡大、縮小、傾き補正等)を選択するのが現実的であるので、局所的なズレをある程度許容してよい。そこで、位置ズレ分を考慮して分類閾値を設定する必要がある。具体的な方法として、位置ズレが起こりうる画素数分だけ、分類閾値がカバーする画素数を増やす方法が考えられる。
【0098】
図9は、分類閾値を変動させた例を示す図である。
変化量算出部613は、位置合わせにズレが生じることを考慮して、分類閾値の範囲を拡大する。例えば、変化量算出部613は、折れ線L20に示す差分値の最大値又は最小値が、本来の折れ線L10に対して位置ずれしたズレ量分だけ、分類閾値の範囲を拡大する。図中には、第1分類閾値Aの最大値の範囲が拡大され、第2分類閾値Bの最小値の範囲が拡大される様子が示される。
【0099】
分類閾値の範囲が拡大されたことで、斜線領域80の境界が、新たな分類閾値として扱われる。このように分類閾値の範囲が拡大されたので、読取画像603aが本来の位置からズレても、読取画像603aから算出された折れ線L20に示す差分値は、分類閾値に対して上回ったり、下回ったりせず、正しく3値化が行われる。
【0100】
次に、検査処理装置5で行われる処理の例について、
図10を参照して説明する。
図10は、一実施の形態に係る検査処理装置5で行われる処理の例を示すフローチャートである。
【0101】
始めに、画像変換部611は、RAM603から読み出した出力対象画像603bのカラーモードを、CMYKからRGBに変換する(S1)。この処理により、画像変換部611は、画像検査装置3が画像形成装置2から受信した出力対象画像603b(RIP画像)のカラーモードを、読取画像603aのカラーモードに合わせる。
【0102】
次に、位置合わせ部612は、RGBに変換された出力対象画像603bを、読取画像603aに対して位置が合うように位置合わせ処理を行う(S2)。次に、変化量算出部613は、出力対象画像603bを第1画素数だけ画像シフトする(S3)。本実施の形態では、水平方向に3画素分だけ出力対象画像603bの画像シフトが行われる。
【0103】
次に、変化量算出部613は、ステップS3より得たシフト画像と、ステップS3の処理を行っていない出力対象画像603bとに基づいて差分画像603c2(例えば、
図6と同様の画像)を生成する(S4)。
【0104】
次に、変化量算出部613は、差分画像603c2に含まれる各画素の画素値ごとに所定値をプラスした値を第1分類閾値Aとし、所定値をマイナスした値を第2分類閾値Bとした閾値画像603eを生成する(S5)。この時、変化量算出部613は、
図8と
図9に示したように出力対象画像603bに対する読取画像603aの位置合わせズレを考慮した分類閾値の最大値及び最小値の範囲を拡大する処理も行う。そして、生成された閾値画像603eは、RAM603に一時保存される。
【0105】
ステップS2~S5の処理と並行して、変化量算出部613は、ステップS11、S12の処理を行う。変化量算出部613は、RAM603から読み出して入力する読取画像603a(例えば、
図5)を第1画素数(例えば、3画素)だけ画像シフトする(S11)。そして、変化量算出部613は、ステップS11より得たシフト画像と、ステップS11の処理を行っていない読取画像603aとに基づいて差分画像603c1を生成する(S12)。
【0106】
ステップS5、S12の処理の後、変化量算出部613は、パラメータ603fから読み出した第1分類閾値A及び第2分類閾値Bに基づいて、差分画像603c1の3値化処理を行い、各画素に3値化した値を含む分類結果603d(例えば、
図5)を生成する(S13)。
【0107】
ステップS5、S13の後、欠陥特徴量抽出部614は、分類結果603dに基づいて、スジ特徴量(例えば、
図6のグラフ(3))を抽出する(S14)。そして、品質判断部615は、スジ特徴量を、パラメータ603fから読み出した欠陥検出閾値と比較して、スジを検出し(S15)、読取画像603aの品質を判断する。品質判断部615は、スジ検出結果631を記憶部63に書き込む。その後、検査処理装置5は、本処理を終了する。
【0108】
以上説明した一実施の形態に係る検査処理装置5では、読取画像603aと出力対象画像603bとの差分画像603c2に含まれる差分値に対して分類閾値で規定される閾値画像603eを生成する。この際、変化量算出部613は、読取画像603aと出力対象画像603bとの位置合わせにズレが生じることを考慮して、分類閾値の範囲を拡大する。また、検査処理装置5は、読取画像603aを数画素分シフトして得たシフト画像と、読取画像603aとの差分をとって差分画像603c1を得る。このため、変化量算出部613が差分画像603c1の差分値を3値化する処理において、非平坦領域の差分値が誤って3値化されることを防げる。その後、欠陥特徴量抽出部614が抽出した特徴量に基づいて、オペレーターが印刷物を目視した際に気になるような細いスジを、品質判断部615が、非平坦領域から精度よくスジを検出できるようになる。
【0109】
また、読取画像603aの非平坦領域に発生したスジについても、3値化処理により画素値が3値化されてスジ特徴量が抽出されるので、スジの検出精度を向上することができる。
【0110】
なお、幅の広いスジは、スジによる影響(画素値の変化)がなだらかである。このため、注目画素に対して比較画素として抽出する画素の位置が近過ぎると、比較画素との差分が小さくなってスジを検出できない。一方で、注目画素に対して比較画素が遠すぎると、狭い平坦領域に生じたスジを検出できない。
【0111】
そこで、変化量算出部613が差分画像603c1を得るために算出する第1画素数は、異なる複数の値(例えば、3画素、5画素、7画素、15画素)としてよい。そして、変化量算出部613は、異なる複数の値ごとに算出した差分値を注目画素の位置に格納した複数の差分画像603c1を生成してもよい。変化量算出部613が注目画素に対してシフトする比較画素のシフト数をパラメータ603fに、複数設定し、1つの注目画素に対して、異なるシフト数でシフトした比較画素との差分を求めることにより、スジの有無を並列で解析してもよい。このような処理により、欠陥特徴量抽出部614は、複数の差分画像603c1からそれぞれスジ特徴量を抽出し、品質判断部615は、抽出されたスジ特徴量からスジを検出してもよい。これにより、スジの太さによらず、読取画像603aに現れたスジを検出することができる。
【0112】
[一実施の形態の変形例]
上述した実施の形態に示した読取画像603aと出力対象画像603bとの位置ズレは、主走査方向に限らず、どの方向にも起こりうる。このため、検出対象とするスジと直交する方向だけでなく平行な方向または斜め方向へも分類閾値の範囲を拡大する必要がある。したがって、本変形例に係る変化量算出部613は、品質判断部615がスジを検出する処理を行わない検出除外領域を、位置合わせ部612で許容される位置ズレ量だけ拡張する。具体的には、変化量算出部613が、分類閾値の範囲を二次元的に拡大する。
図11は、分類閾値の範囲を二次元的に拡大する様子を示す図である。
【0113】
図11の左側には、読取画像603aに文字が1字(「あ」)だけ含まれることが示される。そして
図11の右側には、文字の一部を拡大した様子が示される。従来であれば、分類閾値の範囲が拡大されないので、拡張前の分類閾値の範囲91は、文字の縁と一致する。しかし、本変形例に係る変化量算出部613は、分類閾値の範囲を二次元的に拡大する。そこで、変化量算出部613は、主走査方向及び副走査方向に発生する位置ズレ量に合わせて、分類閾値の最小値及び最大値の範囲を拡張する。
【0114】
図中には、星印で注目画素92が表されている。注目画素92は、文字の縁よりも外側に2画素だけ離れた位置にある。そして、変化量算出部613は、それぞれの注目画素92を中心として上下左右に2画素分を加えた範囲をマスク93(領域の一例)とする。マスク93の大きさは、読取画像603aに位置ずれが起こりうる量(例えば、画像形成装置2のスペック、特性等)によって決まり、読取画像603aに対する出力対象画像603bの位置ズレ量に合わせて主走査方向及び副走査方向に所定の長さで設定される。
図11では、マスク93の大きさが、主走査方向及び副走査方向のそれぞれに5画素分の長さで設定される。ただし、マスク93の主走査方向及び副走査方向の長さが異なってもよい。
【0115】
そして、変化量算出部613は、マスク93内で画素値の最大値を取るフィルタ処理を行う。そして、マスク93内で取られた最大値に基づいて多値化が行われる。つまり、破線で示す閾値範囲94の内側に沿って注目画素92が移動可能な範囲で、注目画素92と共に移動するマスク93まで、分類閾値の範囲が拡張される。このように変化量算出部613は、マスク93に含まれる変化量の最大値を、マスク93の内部で用いられる分類閾値の最大値とする。ただし、マスク93に含まれる変化量の最小値を、マスク93の内部で用いられる分類閾値の最小値とするフィルタ処理を組み合わせてもよい。
【0116】
このように、変化量算出部613が分類閾値の範囲を二次元的に拡大した。この拡大処理により、読取画像603aと出力対象画像603bとの位置ズレが、検出対象とするスジと直交する方向だけでなく、スジと平行な方向または斜め方向に生じても、変化量算出部613が差分画像603c1の差分値を3値化できる。このため、品質判断部615が確実にスジを検出できるようになる。
【0117】
[他の変形例]
また、変化量算出部613は、出力対象画像603bからスジ状欠陥を検出しない検出除外領域を生成することができる。この場合、品質判断部615は、検出除外領域では、スジ状欠陥を検出する処理を行わない。
【0118】
これまで、変動量の小さい領域(例えば、グラデーション領域)について分類閾値を動的に変化させる例について説明したが、画像には階調変動量の大きい明確なエッジ(例えば、薄い背景に書かれた黒い文字等のエッジ)も存在する。この様な領域付近では、変化量算出部613が、差分計算を行うと大きな差分値を算出するため、品質判断部615がスジを検出できなくなる。そこで、スジの誤検出のリスクを考慮して、変化量算出部613は、出力対象画像603bから生成した、階調変動量の大きい明確なエッジが存在するエッジ領域を、検出除外領域とすることができる。
【0119】
また、検出対象とするスジの発生原因が帯電極の汚れや感光体ドラムの滑剤塗布ムラである場合、トナーが付着する画像領域のみにスジが発生し、紙白領域にはスジが発生しない。また、紙白領域は読取画像603aに於いてノイズが発生しやすく、裏面に形成された画像の一部が透ける裏写りが生じる可能性もある。そこで、変化量算出部613は、出力対象画像603bから生成した、画像が形成されない紙白領域に合わせた分類閾値を算出する。変化量算出部613は、算出した分類閾値を用いることで、正確に多値化することが可能となる。
【0120】
ただし、紙白領域にノイズが発生しやすく、裏写りが生じやすいのであれば、変化量算出部613は、出力対象画像603bから生成した、画像が形成されない紙白領域を検出除外領域としてもよい。具体的には、変化量算出部613は、出力対象画像603bから色材の乗らない紙白領域を検出しておき、その領域をスジ検出の除外領域として扱う。このように紙白領域を検出除外領域とすることで、品質判断部615によるスジの誤検出を回避することが可能となる。
【0121】
なお、紙白領域には、二次転写時のクリーニング不良によるスジが発生しうる。品質判断部615がこのようなスジを検出するためには、紙白領域のノイズを検出しないことが必要となる。紙白領域にスジが発生するのは、紙白領域に対してスジ状にトナーが乗ってしまう場合であり、この時、大きな差分値が算出される。そこで、変化量算出部613は、読取画像603aから検出した紙白領域の分類閾値を、差分値が大きい場合にのみ検出する設定とすれば良い。また、エッジ領域と紙白領域も位置合わせのときに生じるズレの影響を受ける。そのため、エッジ領域と紙白領域についても位置ズレ分を考慮して、検出除外領域の範囲を拡大することが望ましい。
【0122】
上述した実施の形態では、画像検査装置3に検査処理装置5を組み合わせた構成としたが、検査処理装置5の機能を、例えば、PC6に組み込み、検査処理装置5を画像検査装置3から分離してもよい。また、画像形成装置2が、検査処理装置5の機能を有し、画像形成装置2が単体で画像検査を行ってもよい。また、検査処理装置5の機能を有するサーバーを設けて画像形成システムを構成することにより、画像検査装置3が用紙Shから読取った読取画像603a及び出力対象画像603bをサーバーが蓄積してもよい。そして、サーバーが画像検査装置3と通信することで、画像検査装置3から受信した読取画像603aのスジ検出を行い、スジ検出結果を画像検査装置3やPC6に送信してもよい。
【0123】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…画像検査システム、2…画像形成装置、3…画像検査装置、5…検査処理装置、30…画像形成部、45…読取部、60…制御部、603a…読取画像、603b…出力対象画像、603c1,603c2…差分画像、603d…分類結果、603e…閾値画像、603f…パラメータ、611…画像変換部、612…位置合わせ部、613…変化量算出部、614…欠陥特徴量抽出部、615…品質判断部、631…スジ検出結果