(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置、炭化水素生成装置、炭素循環システム、および、二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240228BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20240228BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20240228BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240228BHJP
C07C 1/22 20060101ALI20240228BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240228BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/56 100
B01D53/81
C01B32/50
C07C1/22
C07C9/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019201584
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-07-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-164683(JP,A)
【文献】特開2013-074887(JP,A)
【文献】特開2018-118203(JP,A)
【文献】特開2009-221922(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076041(WO,A1)
【文献】特開2019-142806(JP,A)
【文献】特開2007-182780(JP,A)
【文献】特開2002-136838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73
B01D 53/74-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/02-53/12
C01B 32/00-32/991
C07B 61/00
C07C 1/00- 1/36
C07C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素回収装置であって、
二酸化炭素を吸着するCO
2吸着材を有しており、燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するCO
2回収部と、
前記燃焼器から前記CO
2回収部に供給される前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去するNOx除去部と、
前記NOx除去部の上流側に配置されており、前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検出する上流側検出部と、
前記燃焼器から供給された前記燃焼排ガスを、前記NOx除去部を経由させて前記CO
2回収部に供給するか、または、前記NOx除去部を経由させずに前記CO
2回収部に供給するか、を切り替える上流側切替弁と、
前記上流側切替弁の上流側に配置されており、前記燃焼器から前記CO
2回収部に供給される前記燃焼排ガスから水分を除去する除湿部と、
前記上流側切替弁による切り替えを制御する制御部と、を備え、
前記除湿部は、
前記燃焼排ガスを第1温度まで冷却することで前記燃焼排ガスに含まれる水分の少なくとも一部を除去する排ガス除湿器と、
前記燃焼排ガスの流れにおいて、前記排ガス除湿器の下流側に配置される乾燥器であって、前記排ガス除湿器を通過した燃焼排ガスを前記第1温度よりも低い第2温度まで冷却することで、前記燃焼排ガスに含まれる水分をさらに除去する乾燥器と、を備え、
前記制御部は、
前記上流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が第1の所定値より大きい場合、前記燃焼排ガスを、前記NOx除去部を経由させて前記CO
2回収部に供給させ、
前記上流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が前記第1の所定値以下の場合、前記燃焼排ガスを、前記NOx除去部を経由させずに前記CO
2回収部に供給させる、
二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記NOx除去部は、窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を有しており、
前記除湿部は、前記NOx除去部の上流側において、前記燃焼排ガスから水分を除去する、
二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記NOx除去部は、前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する第1除去器と、前記第1除去器とは別に前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する第2除去器と、を有しており、
前記二酸化炭素回収装置は、さらに、
前記NOx除去部の下流側に配置されており、前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検出する下流側検出部と、
前記上流側切替弁の切り替えによって前記NOx除去部に供給される前記燃焼排ガスを、前記第1除去器を経由させて前記CO
2回収部に供給するか、または、前記第2除去器を経由させて前記CO
2回収部に供給するか、を切り替える下流側切替弁と、を備え、
前記制御部は、
前記上流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が第2の所定値より大きい場合、前記第1除去器または前記第2除去器のうちの一方の除去器を経由して前記CO
2回収部に供給されている前記燃焼排ガスを、前記第1除去器または前記第2除去器のうちの他方の除去器を経由して前記CO
2回収部に供給させるように、前記下流側切替弁を制御する、
二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
炭化水素生成装置であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置と、
水素と、前記CO
2回収部で回収された二酸化炭素とを用いて、炭化水素化合物を生成する生成器と、を備える、
炭化水素生成装置。
【請求項5】
炭素循環システムであって、
請求項4に記載の炭化水素生成装置と、
前記生成器で生成された前記炭化水素化合物を燃焼し、前記燃焼排ガスを排出する前記燃焼器と、を備える、
炭素循環システム。
【請求項6】
二酸化炭素回収方法であって、
燃焼排ガスから水分を除去する除湿工程と、
前記除湿工程において水分が除去された前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去するNOx除去工程と、
CO
2吸着材を用いて、前記NOx除去工程において窒素酸化物が除去された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するCO
2回収工程と、を備え、
前記除湿工程では、前記燃焼排ガスを第1温度まで冷却することで前記燃焼排ガスに含まれる水分の少なくとも一部を除去したのち、前記燃焼排ガスを前記第1温度よりも低い第2温度まで冷却することで、前記燃焼排ガスに含まれる水分をさらに除去し、
NOx除去部の上流側に配置される上流側検出部が検出する前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度が第1の所定値より大きい場合、前記燃焼排ガスは、前記NOx除去工程において窒素酸化物が除去されたのち、前記CO
2回収工程において二酸化炭素が回収され、
前記上流側検出部が検出する前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度が前記第1の所定値以下の場合、前記燃焼排ガスは、前記NOx除去工程を行うことなく、前記CO
2回収工程において二酸化炭素が回収される、
二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収装置、炭化水素生成装置、炭素循環システム、および、二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数種のガスが混合されている混合ガスから、二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置が知られている。二酸化炭素回収装置は、一般的に、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える。例えば、特許文献1には、燃焼炉で発生する燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸着材によって吸着し、二酸化炭素を吸着した吸着材を加熱することで二酸化炭素を吸着材から脱離させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の二酸化炭素回収装置では、吸着材によって二酸化炭素を吸着するとき、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物や水分も吸着材に吸着される。このため、吸着材が吸着可能な二酸化炭素の量が少なくなる。特に、窒素酸化物は、不可逆的に吸着材に吸着されるため、吸着材において、燃焼排ガスからの二酸化炭素の吸着と、吸着した二酸化炭素の脱離を繰り返すと、吸着材に吸着された窒素酸化物の蓄積量が多くなるため、二酸化炭素を吸着可能な容量が低下する。このため、二酸化炭素の回収性能が低下する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、二酸化炭素回収装置において、二酸化炭素の回収性能の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、二酸化炭素回収装置が提供される。二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を吸着するCO2吸着材を有しており、燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するCO2回収部と、前記燃焼器から前記CO2回収部に供給される前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去するNOx除去部と、前記燃焼器から前記CO2回収部に供給される前記燃焼排ガスから水分を除去する除湿部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物と水分のそれぞれは、CO2回収部において燃焼排ガスから二酸化炭素が回収される前に、NOx除去部と除湿部とのそれぞれによって、燃焼排ガスから除去される。これにより、CO2回収部において燃焼排ガスから二酸化炭素が回収されるとき、二酸化炭素とともにCO2吸着材に吸着される窒素酸化物や水分の量が少なくなるため、CO2吸着材において、二酸化炭素の吸着性能が低下することを抑制できる。したがって、二酸化炭素回収装置における二酸化炭素の回収性能の低下を抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の二酸化炭素回収装置において、前記NOx除去部は、窒素酸化物を吸着するNOx吸着材を有しており、前記除湿部は、前記NOx除去部の上流側において、前記燃焼排ガスから水分を除去してもよい。この構成によれば、NOx除去部において燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物がNOx吸着材によって吸着される前に、除湿部において、燃焼排ガスに含まれる水分が燃焼排ガスから除去される。これにより、NOx吸着材に水分が吸着されることで、NOx吸着材において、窒素酸化物の吸着性能が低下することを抑制できる。したがって、CO2回収部において、CO2吸着材に吸着される窒素酸化物の量をさらに少なくすることができるため、二酸化炭素回収装置における二酸化炭素の回収性能の低下をさらに抑制することができる。
【0010】
(3)上記形態の二酸化炭素回収装置は、さらに、前記NOx除去部の上流側に配置されており、前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検出する上流側検出部と、前記燃焼器から供給された前記燃焼排ガスを、前記NOx除去部を経由させて前記CO2回収部に供給するか、または、前記NOx除去部を経由させずに前記CO2回収部に供給するか、を切り替える上流側切替弁と、前記上流側切替弁による切り替えを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記上流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が第1の所定値より大きい場合、前記燃焼排ガスを、前記NOx除去部を経由させて前記CO2回収部に供給させ、前記上流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が前記第1の所定値以下の場合、前記燃焼排ガスを、前記NOx除去部を経由させずに前記CO2回収部に供給させてもよい。この構成によれば、上流側切替弁は、上流側検出部が検出する燃焼排ガスの窒素酸化物の濃度に応じて、燃焼排ガスが流れるルートを切り替える。具体的には、NOx除去部の上流側における燃焼排ガスの窒素酸化物の濃度が第1の所定値より大きい場合、燃焼排ガスは、NOx除去部を経由してCO2回収部に供給される。これにより、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物は、NOx除去部において除去されるため、CO2回収部において、CO2吸着材に吸着される窒素酸化物の量を少なくすることができる。また、燃焼排ガスの窒素酸化物の濃度が第1の所定値以下の場合、燃焼排ガスは、NOx除去部を経由することなくCO2回収部に供給される。これにより、NOx除去部において窒素酸化物の除去が行われないため、NOx除去部がNOx吸着材を有している場合、NOx吸着材の使用量を低減することができる。したがって、NOx除去部において、吸着性能が低下したNOx吸着材を交換するメンテナンスの回数を低減することができる。このように、二酸化炭素回収装置における二酸化炭素の回収性能の低下を抑制しつつ、NOx除去部のメンテナンスの回数を低減することができる。
【0011】
(4)上記形態の二酸化炭素回収装置において、前記NOx除去部は、前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する第1除去器と、前記第1除去器とは別に前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する第2除去器と、を有しており、前記二酸化炭素回収装置は、さらに、前記NOx除去部の下流側に配置されており、前記燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を検出する下流側検出部と、前記上流側切替弁の切り替えによって前記NOx除去部に供給される前記燃焼排ガスを、前記第1除去器を経由させて前記CO2回収部に供給するか、または、前記第2除去器を経由させて前記CO2回収部に供給するか、を切り替える下流側切替弁と、を備え、前記制御部は、前記上流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が第2の所定値より大きい場合、前記第1除去器または前記第2除去器のうちの一方の除去器を経由して前記CO2回収部に供給されている前記燃焼排ガスを、前記第1除去器または前記第2除去器のうちの他方の除去器を経由して前記CO2回収部に供給させるように、前記下流側切替弁を制御してもよい。この構成によれば、下流側切替弁は、下流側検出部が検出する燃焼排ガスの窒素酸化物の濃度に応じて、燃焼排ガスが流れるルートを切り替える。上流側切替弁の切り替えによって燃焼排ガスがNOx除去部に供給されているとき、第1除去器または第2除去器のいずれか一方の下流側における燃焼排ガスの窒素酸化物の濃度が第2の所定値より大きい場合、燃焼排ガスを第1除去器または第2除去器のいずれか他方に流す。NOx除去部の下流側に配置されている下流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度は、2つの除去器のうちの燃焼排ガスが流れている除去器の窒素酸化物の除去性能を示しており、下流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度が第2の所定値より大きくなることは、その除去器の窒素酸化物の除去性能が低下していることを意味している。そこで、下流側検出部が検出する窒素酸化物の濃度を用いて、2つの除去器を切り替えることによって、1つの除去器を用いて窒素酸化物を除去する場合に比べて連続して燃焼排ガスの窒素酸化物を除去することができる。
【0012】
(5)本発明の別の形態によれば、炭化水素生成装置が提供される。この炭化水素生成装置は、上記の二酸化炭素回収装置と、水素と、前記CO2回収部で回収された二酸化炭素とを用いて、炭化水素化合物を生成する生成器と、を備える。この構成によれば、上記の二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素と、水素とを用いて炭化水素化合物を生成する。上記の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素の回収性能が低下しにくくなっているため、二酸化炭素の回収性能を元の状態に戻すためのメンテナンスの回数を低減することができる。したがって、安定して炭化水素化合物を生成することができる。
【0013】
(6)本発明のさらに別の形態によれば、炭素循環システムが提供される。この炭素循環システムは、上記の炭化水素生成装置と、前記生成器で生成された前記炭化水素化合物を燃焼し、前記燃焼排ガスを排出する前記燃焼器と、を備える。この構成によれば、二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素と、水素とを用いて生成された炭化水素化合物を燃焼し、熱エネルギーを回収する。炭化水素化合物の燃焼によって生成された二酸化炭素は、CO2回収器によって回収され、再び炭化水素化合物の原料となる。このように、炭素を循環して利用することができるため、系外への二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0014】
(7)本発明のさらに別の形態によれば、二酸化炭素回収方法が提供される。この二酸化炭素回収方法は、燃焼排ガスから水分を除去する除湿工程と、前記除湿工程において水分が除去された前記燃焼排ガスから窒素酸化物を除去するNOx除去工程と、CO2吸着材を用いて、前記NOx除去工程において窒素酸化物が除去された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収するCO2回収工程と、を備える。この構成によれば、燃焼排ガスは、最初に、除湿工程において、水分が除去される。水分が除去された燃焼排ガスは、NOx除去工程において、窒素酸化物が除去される。これにより、CO2回収工程において二酸化炭素を回収するとき、二酸化炭素とともにCO2吸着材に吸着される窒素酸化物や水分の量が少なくなるため、CO2吸着材において、二酸化炭素の吸着性能が低下することを抑制できる。したがって、二酸化炭素の回収性能の低下を抑制することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、二酸化炭素回収装置を含むシステム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムにおいて二酸化炭素回収方法を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の炭素循環システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の二酸化炭素回収処理を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態の炭素循環システムの概略構成を示す模式図である。
【
図4】第2実施形態の二酸化炭素回収処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の炭素循環システム1の概略構成を示す模式図である。第1実施形態の炭素循環システム1は、メタンの燃焼によって熱エネルギーを発生させるとともに、メタンを燃焼することで生成される二酸化炭素(CO
2)を回収する。また、回収された二酸化炭素からメタンを生成する。このように、炭素循環システム1では、炭素を含むメタンの燃焼、二酸化炭素の回収、および、メタンの生成を繰り返すことで、炭素を循環させて熱エネルギーを発生させる。炭素循環システム1は、燃焼器5と、メタン生成装置6と、制御部55とを備える。メタン生成装置6は、二酸化炭素回収装置10と、メタン化反応器50と、生成ガス除湿器51とを備える。なお、本実施形態の炭素循環システム1は、メタン以外の炭化水素化合物を用いた炭素循環システムにも適用可能であり、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や主に炭素と水素とから構成される炭化水素化合物を用いた炭素循環システムにも適用可能である。メタン生成装置6は、特許請求の範囲の「炭化水素生成装置」に相当する。
【0018】
燃焼器5は、後述する生成ガス除湿器51にメタンガス流路91を介して接続し、二酸化炭素回収装置10に排ガス流路92を介して接続している。燃焼器5は、外部から供給される空気を用いて、後述するメタン化反応器50から供給されるメタンを燃焼し、熱エネルギーを生成する。生成された熱エネルギーは、炭素循環システム1の外部において利用される。また、燃焼器5は、メタンの燃焼によって発生する気体を、燃焼排ガスとして排出する。燃焼排ガスには、窒素と酸素の他に、二酸化炭素と、窒素酸化物(NOx)と、水分とが含まれている。燃焼排ガスは、排ガス流路92を通って二酸化炭素回収装置10に供給される。
【0019】
二酸化炭素回収装置10は、除湿部20と、NOx吸着器30と、CO2回収器40を備える。二酸化炭素回収装置10は、排ガス流路92を介して燃焼器5に接続しており、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を回収し、メタン化反応器50に供給する。
【0020】
除湿部20は、燃焼器5が排出する燃焼排ガスの流れにおいて、NOx吸着器30およびCO2回収器40の上流側に配置されている。除湿部20は、排ガス除湿器21と、乾燥器22を有する。排ガス除湿器21は、燃焼排ガスの流れにおいて、乾燥器22の上流側に配置されている。排ガス除湿器21は、燃焼排ガスを、例えば、室温程度まで冷却することで、燃焼排ガスに含まれる水分を除去する。なお、ここでは、「除去」とは、取り除く対象物を、全てを取り除くだけではなく、一部を取り除くことを含む。
【0021】
燃焼器5と排ガス除湿器21との間の排ガス流路92には、NOx濃度センサ11が配置されている。NOx濃度センサ11は、後述する制御部55と電気的に接続している。NOx濃度センサ11は、燃焼器5と排ガス除湿器21との間の排ガス流路92を流れる燃焼排ガスの窒素酸化物の濃度(以下、「NOx濃度」という)を検出し、制御部55に出力する。NOx濃度センサ11は、特許請求の範囲の「上流側検出部」に相当する。
【0022】
乾燥器22は、燃焼排ガスの流れにおいて、排ガス除湿器21の下流側に配置されており、本実施形態では、排ガス流路92の下流側の端部に接続されている。乾燥器22は、燃焼排ガスを、例えば、マイナス20℃程度まで冷却する。これにより、除湿部20で除去されなかった水分を、燃焼排ガスからさらに除去する。
【0023】
乾燥器22とCO
2回収器40との間には、排ガス流路93と、迂回流路94とが配置されている。排ガス流路93は、一端が乾燥器22に接続し、乾燥器22とCO
2回収器40とを直接接続する。排ガス流路93には、制御部55と電気的に接続する切替弁12が配置されている。切替弁12には、排ガス流路93を介して乾燥器22に接続する接続口12aと、排ガス流路93を介してCO
2回収器40に接続する接続口12bと、迂回流路94の一端が接続する接続口12cが形成されている。迂回流路94の他端は、排ガス流路93において切替弁12の下流側に位置する合流点(
図1に示す符号P1)で排ガス流路93に接続する。迂回流路94には、NOx吸着器30が配置されている。切替弁12は、制御部55の指令に応じて、排ガス流路93を流れる乾燥器22からの燃焼排ガスを、CO
2回収器40に供給するか、または、迂回流路94に供給するか、を切り替える。切替弁12の作用の詳細は、後述する。切替弁12は、特許請求の範囲の「上流側切替弁」に相当する。
【0024】
NOx吸着器30は、窒素酸化物を吸着する図示しないNOx吸着材を有している。NOx吸着器30は、迂回流路94のうちの切替弁12とNOx吸着器30を接続する迂回流路94aを流れる燃焼排ガス、すなわち、除湿部20によって水分が除去された燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物を吸着する。これにより、燃焼排ガスから、窒素酸化物が除去される。NOx吸着器30が有するNOx吸着材は、例えば、Si/Al比が2.7以上であり、二酸化炭素の分圧が10kPaにおける二酸化炭素吸着量が0.5mmol/g以下のゼオライトである。なお、NOx吸着材は、これに限定されない。活性炭や、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、塩基性有機物、金属酸化物を炭素多孔体もしくは金属酸化物多孔体に担持したものであってもよい。NOx吸着器30は、特許請求の範囲の「NOx吸着部」に相当する。
【0025】
迂回流路94のうちのNOx吸着器30と排ガス流路93の合流点P1とを接続する迂回流路94bには、NOx濃度センサ13が配置されている。NOx濃度センサ13は、制御部55と電気的に接続しており、NOx吸着器30が排出する燃焼排ガスのNOx濃度を検出し、制御部55に出力する。
【0026】
迂回流路94bにおいて、NOx濃度センサ13の下流側には、切替弁14が配置されている。切替弁14は、制御部55と電気的に接続している。切替弁14には、迂回流路94bを介してNOx吸着器30に接続する接続口14aと、迂回流路94bを介して排ガス流路93に接続する接続口14bと、排出ポート95が接続する接続口14cが形成されている。切替弁14は、制御部55の指令に応じて、NOx吸着器30から排出される燃焼排ガスを、CO2回収器40に供給するか、または、排出ポート95を介して系外に排出するか、を切り替える。切替弁14の作用の詳細は、後述する。
【0027】
CO2回収器40は、排ガス流路93の他端に接続しており、二酸化炭素を吸着するCO2吸着材を有する。CO2回収器40が有するCO2吸着材は、例えば、ゼオライトや活性炭である。CO2回収器40は、CO2吸着材を用いて、排ガス流路93を介して乾燥器22を流れる燃焼排ガス、または、迂回流路94を介してNOx吸着器30から流れる燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸着することで、これらの燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する。CO2吸着材に吸着された二酸化炭素は、圧力スイングや温度スイングによってCO2吸着材から脱離し、回収される。回収された二酸化炭素は、CO2供給流路96を介してメタン化反応器50に送られる。CO2回収器40は、特許請求の範囲の「CO2回収部」に相当する。
【0028】
メタン化反応器50は、CO2供給流路96に接続している。メタン化反応器50には、メタン化触媒性能を有する金属から形成される触媒が収容されている。メタン化触媒性能を有する金属としては、例えば、ルテニウムやニッケルなどである。メタン化反応器50は、CO2供給流路96を介してCO2回収器40から供給される二酸化炭素と、外部から供給される水素とのメタン化反応によって、メタンを生成する。メタン化反応器50で生成された生成ガスは、燃焼器5に接続するメタンガス流路91を介して、生成ガス除湿器51に送られる。メタン化反応器50は、特許請求の範囲の「生成器」に相当する。
【0029】
生成ガス除湿器51は、メタンガス流路91において、メタン化反応器50と燃焼器5との間に配置される。生成ガス除湿器51は、メタン化反応器50において生成された生成ガスに含まれる水分を、例えば、生成ガスの冷却などによって、生成ガスから除去する。生成ガス除湿器51で水分が除去された生成ガスは、燃焼器5に送られる。
【0030】
制御部55は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータである。制御部55は、後述する二酸化炭素回収処理における切替弁12、14での流路の切り替えや、CO2回収器40での二酸化炭素の脱離操作など、炭素循環システム1の全体の制御をおこなう。制御部55の制御内容の詳細は、後述する。
【0031】
図2は、本実施形態の二酸化炭素回収処理のフローチャートである。次に、炭素循環システム1における二酸化炭素回収処理について説明する。
図2に示す二酸化炭素回収方法は、炭素循環システム1において、燃焼器5でメタンガスが燃焼している間、常時繰り返して実施される。
【0032】
図2に示すフローチャートが開始される前では、切替弁12は、接続口12aと接続口12bとが接続している状態となっている。また、切替弁14は、接続口14aと接続口14bとが接続している状態となっている。このとき、燃焼器5においてメタンガスが燃焼すると、燃焼器5の内部で、二酸化炭素の他に、窒素酸化物や水分が生成される。生成された二酸化炭素や窒素酸化物、水分は、窒素などとともに、燃焼排ガスとして燃焼器5から排出される。燃焼排ガスは、排ガス流路92、93を通ってCO
2回収器40に送られる。燃焼排ガスは、排ガス流路92を流れるとき、排ガス除湿器21と乾燥器22によって水分が除去される。本実施形態では燃焼排ガスに含まれる水分量は、排ガス除湿器21において、室温での飽和水蒸気量まで低減され、乾燥器22において、1ppm以下となる。水分が除去された燃焼排ガスは、排ガス流路93を流れる。
【0033】
本実施形態の二酸化炭素回収処理では、最初に、二酸化炭素回収装置10の上流でのNOx濃度が200ppm以下であるか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、NOx濃度センサ11は、排ガス除湿器21より上流側での排ガス流路92を流れる燃焼排ガスのNOx濃度を検出する。NOx濃度センサ11は、NOx濃度の検出結果を制御部55に出力する。NOx濃度センサ11で検出されたNOx濃度が200ppm以下であると判定されるとき(ステップS11:YES)、制御部55は、処理をステップS12に遷移させる。NOx濃度センサ11で検出されたNOx濃度が200ppmより大きいと判定されるとき(ステップS11:NO)、制御部55は、処理をステップS13に遷移させる。なお、ステップS11での判定基準であるNOx濃度は、200ppmに限定されない。例えば、後段のCO2回収器40での窒素酸化物の吸着量を抑制するために、200ppmより低く設定されていてもよい。ステップS11での200ppmは、特許請求の範囲の「第1の所定値」に相当する。
【0034】
ステップS12では、制御部55は、切替弁12を切り替えない決定をおこなう。これにより、排ガス流路93を流れる燃焼排ガスは、乾燥器22からCO2回収器40に直接供給される。CO2回収器40では、乾燥器22から供給された燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸着し、燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する。二酸化炭素が分離された燃焼排ガスの主な成分は、窒素と酸素となる。CO2回収器40から排出される燃焼排ガスは、炭素循環システム1の系外に排出される。CO2回収器40では、燃焼排ガスから分離した二酸化炭素をCO2吸着材から脱離させ、メタン化反応器50に供給する。
【0035】
ステップS13では、制御部55は、切替弁12を切り替える制御を行う。具体的には、制御部55は、切替弁12の接続口12aと接続口12cとが接続されるように、切替弁12を制御する。これにより、排ガス流路93を流れる燃焼排ガスは、迂回流路94aに流入する。迂回流路94aを流れる燃焼排ガスは、NOx吸着器30に供給される。NOx吸着器30では、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物をNOx吸着材によって吸着する。NOx吸着器30によって窒素酸化物が吸着された燃焼排ガスは、NOx吸着器30の迂回流路94bを流れる。
【0036】
次に、NOx吸着器30の下流でのNOx濃度が200ppm以下であるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、NOx濃度センサ13は、迂回流路94bを流れる燃焼排ガスのNOx濃度を検出する。NOx濃度センサ13は、NOx濃度の検出結果を制御部55に出力する。NOx濃度センサ13で検出されたNOx濃度が200ppm以下であると判定されるとき(ステップS14:YES)、制御部55は、今回の二酸化炭素回収処理を終了する。このとき、迂回流路94bを流れる燃焼排ガスは、CO2回収器40に供給される。NOx濃度センサ13で検出されたNOx濃度が200ppmより大きいと判定されるとき(ステップS14:NO)、制御部55は、処理をステップS15に遷移させる。なお、ステップS14での判定基準であるNOx濃度は、200ppmに限定されない。例えば、後段のCO2回収器40での窒素酸化物の吸着量を抑制するために、200ppmより低く設定されていてもよい。
【0037】
ステップS15では、制御部55は、切替弁14を切り替える制御を行う。具体的には、制御部55は、切替弁14の接続口14aと接続口14cとが接続されるように、切替弁14を制御する。これにより、NOx吸着器30が排出した燃焼排ガスは、排出ポート95に流入し、炭素循環システム1の系外に排出される。これにより、今回の二酸化炭素回収処理を終了する。
【0038】
本実施形態では、ステップS14においてNOx濃度センサ13によって検出されたNOx濃度が200ppmより大きいと判定される場合、NOx吸着器30が有するNOx吸着材の吸着性能が低下していることが予想される。そこで、ステップS14においてNOx濃度センサ13が検出したNOx濃度が200ppmより大きいと判定される場合、NOx吸着器30が有するNOx吸着材を交換する。
【0039】
以上説明した、本実施形態の二酸化炭素回収装置10によれば、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物と水分のそれぞれは、CO2回収器40において燃焼排ガスから二酸化炭素が回収される前に、NOx吸着器30と除湿部20とのそれぞれによって、燃焼排ガスから除去される。これにより、CO2回収器40において燃焼排ガスから二酸化炭素が回収されるとき、二酸化炭素とともにCO2吸着材に吸着される窒素酸化物や水分の量が少なくなる。特に、燃焼器5からCO2回収器40に供給される燃焼排ガスから、CO2吸着材に不可逆的に吸着される窒素酸化物を除去することによって、CO2吸着材に吸着された窒素酸化物の蓄積量を少なくすることができる。これにより、CO2吸着材において、二酸化炭素の吸着性能が低下することを抑制できるため、二酸化炭素回収装置10における二酸化炭素の回収性能の低下を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の二酸化炭素回収装置10によれば、CO2回収器40における二酸化炭素の回収性能の低下を抑制することができるため、CO2回収器40の性能寿命を延ばすことができる。これにより、CO2回収器40において、二酸化炭素の吸着性能が低下したCO2吸着材の交換や再生などのメンテナンスの回数を低減することができる。
【0041】
また、本実施形態の二酸化炭素回収装置10によれば、NOx吸着器30において燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物がNOx吸着材によって吸着される前に、除湿部20において、燃焼排ガスに含まれる水分が燃焼排ガスから除去される。これにより、NOx吸着材に水分が吸着されることで、NOx吸着材において、窒素酸化物の吸着性能が低下することを抑制できる。したがって、CO2回収器40において、CO2吸着材に吸着される窒素酸化物の量をさらに少なくすることができるため、二酸化炭素回収装置10における二酸化炭素の回収性能の低下をさらに抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の二酸化炭素回収装置10によれば、切替弁12は、NOx濃度センサ11が検出する燃焼排ガスのNOx濃度に応じて、燃焼排ガスが流れるルートを切り替える。具体的には、NOx吸着器30の上流側における燃焼排ガスのNOx濃度が200ppmより大きい場合、燃焼排ガスは、NOx吸着器30を経由してCO2回収器40に供給される。これにより、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物は、NOx吸着器30において除去されるため、CO2回収器40において、CO2吸着材に吸着される窒素酸化物の量を少なくすることができる。また、燃焼排ガスのNOx濃度が200ppm以下の場合、燃焼排ガスは、NOx吸着器30を経由することなくCO2回収器40に供給される。これにより、NOx吸着器30において窒素酸化物の除去が行われないため、NOx吸着材の使用量を低減することができる。したがって、NOx吸着器30において、吸着性能が低下したNOx吸着材を交換するメンテナンスの回数を低減することができる。このように、二酸化炭素回収装置10における二酸化炭素の回収性能の低下を抑制しつつ、NOx吸着器30のメンテナンスの回数を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態の二酸化炭素回収装置10によれば、例えば、燃焼器5での異常燃焼によって高濃度の窒素酸化物が生成されるとき、切替弁12によって燃焼排ガスが流れるルートを切り替え、燃焼排ガスから窒素酸化物を除去できる。これにより、CO2吸着材に吸着される窒素酸化物の量を突発的に増加することを抑制できるため、二酸化炭素回収装置10における二酸化炭素の回収性能の低下をさらに抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態のメタン生成装置6によれば、二酸化炭素回収装置10で回収された二酸化炭素と、水素とを用いてメタンを生成する。二酸化炭素回収装置10は、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物と水分のそれぞれがNOx吸着器30と除湿部20とのそれぞれによって除去されており、二酸化炭素の回収性能が低下しにくくなっている。これにより、二酸化炭素の回収性能を元の状態に戻すためのメンテナンスの回数を低減することができる。したがって、炭素循環システム1では、安定して炭化水素化合物を生成することができる。
【0045】
また、本実施形態の炭素循環システム1によれば、二酸化炭素回収装置10で回収された二酸化炭素と、水素とを用いて生成されたメタンを燃焼し、熱エネルギーを回収する。メタンの燃焼によって生成された二酸化炭素は、CO2回収器40によって回収され、再びメタンの原料となる。このように、炭素を循環して利用することができるため、系外への二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0046】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の炭素循環システム2の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の炭素循環システム2は、第1実施形態の炭素循環システム1(
図1)と比較すると、NOx吸着器が並列に2台設けられる点が異なる。
【0047】
本実施形態の炭素循環システム2は、燃焼器5と、メタン生成装置7と、制御部55とを備える。メタン生成装置7は、二酸化炭素回収装置60と、メタン化反応器50と、生成ガス除湿器51とを備える。二酸化炭素回収装置60は、除湿部20と、第1NOx吸着器61と、第2NOx吸着器62と、CO2回収器40を備える。二酸化炭素回収装置60は、排ガス流路92を介して燃焼器5に接続しており、燃焼器5が排出する燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を回収し、メタン化反応器50に供給する。メタン生成装置7は、特許請求の範囲の「炭化水素生成装置」に相当する。
【0048】
本実施形態では、乾燥器22とCO
2回収器40との間には、
図3に示すように、排ガス流路93と、迂回流路97とが配置されている。迂回流路97は、切替弁12の接続口12cに接続する接続流路97aと、2つの分岐流路97b、97cと、排ガス流路93において切替弁12の下流側に位置する合流点(
図3に示す符号P2)で排ガス流路93に接続する接続流路97dが形成されている。接続流路97aと2つの分岐流路97b、97cとは、切替弁15によって接続されている。切替弁15には、接続流路97aに接続する接続口15aと、分岐流路97bに接続する接続口15bと、分岐流路97cに接続する接続口15cが形成されている。切替弁15は、電気的に接続している制御部55の指令に応じて、接続流路97aを流れる燃焼排ガスを、第1NOx吸着器61を経由してCO
2回収器40に供給するか、または、第2NOx吸着器62を経由してCO
2回収器40に供給するかを、切り替える。切替弁15の作用の詳細は、後述する。切替弁15は、特許請求の範囲に記載の「下流側切替弁」に相当する。
【0049】
第1NOx吸着器61は、分岐流路97bに配置されており、NOxを吸着する図示しないNOx吸着材を有している。第1NOx吸着器61は、分岐流路97bを流れる燃焼排ガスに含まれるNOxを吸着する。第2NOx吸着器62は、分岐流路97cに配置されており、NOxを吸着する図示しないNOx吸着材を有している。第2NOx吸着器62は、分岐流路97cを流れる燃焼排ガスに含まれるNOxを吸着する。第1NOx吸着器61および第2NOx吸着器62が有するNOx吸着材は、Si/Al比が2.7以上であり、二酸化炭素の分圧が10kPaにおける二酸化炭素吸着量が0.5mmol/g以下のゼオライトである。第1NOx吸着器61は、特許請求の範囲の「第1除去器」に相当する。第2NOx吸着器62は、特許請求の範囲の「第2除去器」に相当する。
【0050】
接続流路97dには、接続流路97dを流れる燃焼排ガスのNOx濃度を検出するNOx濃度センサ16が配置されている。NOx濃度センサ16は、制御部55と電気的に接続している。NOx濃度センサ16は、第1NOx吸着器61または第2NOx吸着器62が排出する燃焼排ガスのNOx濃度を検出し、制御部55に出力する。NOx濃度センサ16は、特許請求の範囲の「下流側検出部」に相当する。
【0051】
図4は、本実施形態の二酸化炭素回収処理のフローチャートである。次に、炭素循環システム2における二酸化炭素回収処理について説明する。
図4に示す二酸化炭素回収処理は、炭素循環システム1において、燃焼器5でメタンガスが燃焼している間、常時実施される。
図4に示すフローチャートが開始される前では、切替弁12は、接続口12aと接続口12bとが接続している状態となっている。また、切替弁15は、接続口15aと接続口15bとが接続している状態となっている。
【0052】
本実施形態の二酸化炭素回収処理では、最初に、第1実施形態のステップS11と同様に、二酸化炭素回収装置60の上流でのNOx濃度が200ppm以下であるか否かを判定する(ステップS21)。NOx濃度センサ11で検出されたNOx濃度が200ppm以下であると判定されるとき(ステップS21:YES)、制御部55は、処理をステップS22に遷移させる。NOx濃度センサ11で検出されたNOx濃度が200ppmより大きいと判定されるとき(ステップS21:NO)、制御部55は、処理をステップS23に遷移させる。
【0053】
ステップS22では、第1実施形態のステップS12と同様に、制御部55は、切替弁12を切り替えない決定をおこなう。これにより、排ガス流路93を流れる燃焼排ガスは、乾燥器22からCO2回収器40に直接供給される。
【0054】
ステップS23では、第1実施形態のステップS13と同様に、制御部55は、切替弁12を切り替える制御を行う。具体的には、制御部55は、切替弁12の接続口12aと接続口12cとが接続されるように、切替弁12を制御する。これにより、排ガス流路93を流れる燃焼排ガスは、迂回流路97の接続流路97aに流入する。接続流路97aを流れる燃焼排ガスは、接続口15aと接続口15bとが接続している状態となっている切替弁15および分岐流路97bを介して、第1NOx吸着器61に供給される。第1NOx吸着器61では、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物をNOx吸着材によって吸着する。第1NOx吸着器61によって窒素酸化物が吸着された燃焼排ガスは、接続流路97dを流れる。
【0055】
次に、第1NOx吸着器61の下流を流れる燃焼排ガスのNOx濃度が200ppm以下であるか否かを判定する(ステップS24)。具体的には、NOx濃度センサ16は、迂回流路94bを流れる燃焼排ガスのNOx濃度を検出する。このときの燃焼排ガスは、第1NOx吸着器61を通った燃焼排ガスである。NOx濃度センサ16は、NOx濃度の検出結果を制御部55に出力する。NOx濃度センサ16で検出されたNOx濃度が200ppm以下であると判定されるとき(ステップS24:YES)、制御部55は、今回の二酸化炭素回収処理を終了する。NOx濃度センサ16で検出されたNOx濃度が200ppmより大きいと判定されるとき(ステップS24:NO)、制御部55は、処理をステップS25に遷移させる。なお、ステップS24での判定基準であるNOx濃度は、200ppmに限定されない。後段のCO2回収器40での窒素酸化物の吸着量を抑制するため、200ppmより低く設定されていてもよい。ステップS24での200ppmは、特許請求の範囲の「第2の所定値」に相当する。
【0056】
ステップS25では、制御部55は、切替弁15を切り替える制御を行う。具体的には、制御部55は、切替弁15の接続口15aと接続口15cとが接続されるように、切替弁15を制御する。これにより、接続流路97aを流れる燃焼排ガスを、分岐流路97bとは別の分岐流路、すなわち、分岐流路97cに流入させる。分岐流路97cを流れる燃焼排ガスは、第2NOx吸着器62に供給される。第2NOx吸着器62では、燃焼排ガスに含まれる窒素酸化物をNOx吸着材によって吸着する。第2NOx吸着器62によって窒素酸化物が吸着された燃焼排ガスは、接続流路97dを流れる。本実施形態では、ステップS25において、切替弁15を接続口15aと接続口15cとが接続されるように切り替えたのち、第1NOx吸着器61のNOx吸着材を交換する。
【0057】
次に、第2NOx吸着器62の下流を流れる燃焼排ガスのNOx濃度が200ppm以下であるか否かを判定する(ステップS26)。具体的には、ステップS24と同様に、NOx濃度センサ16によって接続流路97dを流れる燃焼排ガスのNOx濃度を検出する。このときの燃焼排ガスは、第2NOx吸着器62を通った燃焼排ガスである。NOx濃度センサ16は、NOx濃度の検出結果を制御部55に出力する。NOx濃度センサ16で検出されたNOx濃度が200ppm以下であると判定されるとき(ステップS26:YES)、制御部55は、今回の二酸化炭素回収処理を終了する。NOx濃度センサ16で検出されたNOx濃度が200ppmより大きいと判定されるとき(ステップS26:NO)、制御部55は、処理をステップS27に遷移させる。
【0058】
ステップS27では、ステップS25と同様に、制御部55は、切替弁15を切り替える制御を行う。具体的には、制御部55は、切替弁15の接続口15aと接続口15bとが接続されるように、切替弁15を制御する。これにより、接続流路97aを流れる燃焼排ガスを、分岐流路97bに流入させる。分岐流路97bを流れる燃焼排ガスは、第1NOx吸着器61に供給され、窒素酸化物がNOx吸着材によって吸着される。第1NOx吸着器61によって窒素酸化物が吸着された燃焼排ガスは、接続流路97dを流れる。本実施形態では、ステップS27において、切替弁15を接続口15aと接続口15bとが接続されるように切り替えたのち、第2NOx吸着器62のNOx吸着材を交換する。その後、今回の二酸化炭素回収処理を終了する。
【0059】
本実施形態の二酸化炭素回収処理では、このように、接続流路97dを流れる燃焼排ガスに含まれるNOx濃度に応じて、切替弁15は、接続流路97aを流れる燃焼排ガスを、第1NOx吸着器61を経由してCO2回収器40に供給するか、または、第2NOx吸着器62を経由してCO2回収器40に供給するかを、切り替える。また、切替弁15を切り替えたとき、燃焼排ガスが流れなくなったNOx吸着器のNOx吸着材を交換する。
【0060】
以上説明した、本実施形態の二酸化炭素回収装置60によれば、切替弁15は、NOx濃度センサ16が検出する燃焼排ガスのNOx濃度に応じて、燃焼排ガスが流れるルートを切り替える。切替弁12の切り替えによって燃焼排ガスが接続流路97aを流れているとき、例えば、第1NOx吸着器61の下流側における燃焼排ガスのNOx濃度が200ppmより大きい場合、燃焼排ガスを第2NOx吸着器62に流す。また、第2NOx吸着器62の下流側における燃焼排ガスのNOx濃度が200ppmより大きい場合、燃焼排ガスを第1NOx吸着器61に流す。NOx濃度センサ16が検出するNOx濃度は、2つの吸着器のうちの燃焼排ガスが流れている吸着器の窒素酸化物の除去性能を示しており、NOx濃度センサ16が検出するNOx濃度が200ppmより大きくなることは、窒素酸化物の除去性能が低下していることを意味している。そこで、NOx濃度センサ16が検出するNOx濃度を用いて2つの除去器を切り替えることによって、1つの除去器を用いて窒素酸化物を除去する場合に比べて、連続して燃焼排ガスの窒素酸化物を除去することができる。
【0061】
また、本実施形態の二酸化炭素回収装置60によれば、燃焼器5から排出される燃焼排ガスは、NOx濃度が200ppmより大きくなるとき、第1NOx吸着器61または第2NOx吸着器62によって、窒素酸化物が除去される。これにより、2つのNOx吸着器のうちの一方の窒素酸化物の吸着性能が低下しても、他方で窒素酸化物を除去しつつ、一方のNOx吸着材を交換するメンテナンスを行うことができる。したがって、2つのNOx吸着器を切り替えて窒素酸化物を除去することで、第1実施形態のように、窒素酸化物を除去できなかった燃焼排ガスを炭素循環システム2の系外に排出することがなくなるため、炭素による熱エネルギーの生成を効率的に行うことができる。
【0062】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
[変形例1]
上述の実施形態では、「炭化水素製造装置」としてのメタン製造装置は、「炭化水素化合物」としてのCH4を製造するとした。しかしながら、炭化水素製造装置が製造する炭化水素化合物は、CH4だけでなく、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、主に炭素と水素とから構成される化合物を含んでもよい。
【0064】
[変形例2]
上述の実施形態では、「NOx除去部」としてのNOx吸着器は、NOxを吸着するNOx吸着材を有しており、燃焼排ガスから窒素酸化物を除去するとした。しかしながら、NOx除去部が燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する方法は、これに限定されない。尿素などの還元剤を使った還元方法や、触媒を使った還元方法などによっても、燃焼排ガスから窒素酸化物を除去してもよい。また、前段にNO酸化触媒を配置することでNOをNO2に酸化し、後段に配置されるNOx吸着材で吸着してもよい。
【0065】
[変形例3]
上述の実施形態では、除湿部20は、燃焼排ガスを冷却することで燃焼排ガスに含まれる水分を除去するとした。しかしながら、除湿部20による水分を除去する方法は、これに限定されない。
【0066】
[変形例4]
上述の実施形態では、燃焼排ガスに対して、除湿部20で水分を除去したのち、NOx吸着器によって窒素酸化物を除去するとした。しかしながら、燃焼排ガスから水分を除去するタイミングと、窒素酸化物を除去するタイミングとの関係は、これに限定されない。燃焼排ガスから窒素酸化物を除去してから、水分を除去してもよい。例えば、尿素などの還元剤を用いて窒素酸化物を除去する場合、燃焼排ガスに含まれる水分が増える場合があるため、窒素酸化物を除去してから水分を除去することが望ましい。
【0067】
[変形例5]
上述の実施形態では、二酸化炭素回収装置の上流側で検出されたNOx濃度を用いて、切替弁12によって、燃焼排ガスを、NOx吸着器を経由してCO2回収器40に供給するか、または、NOx吸着器を経由させずにCO2回収器40に供給するか、を切り替えるとした。しかしながら、切替弁12はなくてもよい。除湿部20から排出された燃焼排ガスの全量を、NOx吸着器を経由してCO2回収器40に供給してもよい。
【0068】
[変形例6]
上述の実施形態では、切替弁の制御、制御部、制御部はなくてもよく、一定の濃度を検出したときに切替弁での切り替えを行うことができる方法であればよい。
【0069】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,2…炭素循環システム
5…燃焼器
6,7…メタン生成装置
10,60…二酸化炭素回収装置
11,13,16…NOx濃度センサ
12,14,15…切替弁
12a,12b,12c,14a,14b,14c,15a,15b,15c,…接続口
20…除湿部
21…排ガス除湿器
22…乾燥器
30…NOx吸着器
40…CO2回収器
50…メタン化反応器
51…生成ガス除湿器
55…制御部
61…第1NOx吸着器
62…第2NOx吸着器
91…メタンガス流路
92,93…排ガス流路
94,94a,94b,97…迂回流路
95…排出ポート
96…CO2供給流路
97a,97d…接続流路
97b,97c…分岐流路