(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240228BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 101
B41J2/165 301
B41J2/165 307
B41J2/01 307
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2019205808
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 史
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁俊
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205384(JP,A)
【文献】特開2009-285898(JP,A)
【文献】特開2016-155250(JP,A)
【文献】特開2019-142145(JP,A)
【文献】特開2005-028758(JP,A)
【文献】特開2003-311989(JP,A)
【文献】特開2014-108595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0081047(US,A1)
【文献】特開2012-161764(JP,A)
【文献】特開平5-330081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、
前記ノズルから排出される前記液体を受ける液体受け部と、
前記ノズル面を払拭可能な払拭部を有する払拭機構と、
前記ノズル面に付着する前記液体に該ノズル面に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構と、
前記外力付与機構を駆動して前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させた後に、前記払拭部で前記ノズル面を払拭する払拭動作を行わせる制御部と、
を備え、
前記外力付与機構は、
気体を噴射可能な流体噴射機構を有し、
前記制御部は、前記ノズルから前記液体を排出させる排出動作を実行させた後、前記流体噴射機構を駆動して前記ノズル面に沿う方向に前記
気体を噴射させる流体噴射動作を実行させることで前記排出動作によって前記ノズル面に付着した前記液体に前記外力を作用させ、前記流体噴射動作
によって前記ノズル面に付着した前記液体を減らした後に前記払拭動作を実行させ
、
前記流体噴射動作において前記流体噴射機構が前記気体を噴射する方向は、前記払拭部の前記払拭動作における払拭始め側から払拭終わり側であって、前記流体噴射機構が噴射した前記気体は、前記ノズル面に付着した前記液体を前記払拭終わり側に向けて移動させることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記外力付与機構は、前記液体噴射部の姿勢を変化可能な液体噴射部移動機構を有し、
前記制御部は、前記液体噴射部移動機構を駆動し、水平面に対する前記ノズル面の傾斜を液体噴射時より大きくした後に、前記払拭部に前記払拭動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射部移動機構は、前記ノズル面を、前記払拭部の前記払拭動作において払拭始め側が払拭終わり側より高くなるように傾斜させることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記ノズル面には、列方向に並ぶ複数の前記ノズルによって形成されるノズル列が前記列方向とは異なる方向に並ぶように複数設けられており、
前記液体噴射部移動機構は、前記ノズル面を、前記ノズル列内で高低差が発生する方向に傾斜させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記ノズル面には、複数の前記ノズルによってノズル列が形成されており、
前記液体噴射部移動機構は、前記ノズル列を形成する前記ノズル間での高低差によって前記ノズルにかかる圧力が、該ノズルに形成されるメニスカスが壊れるメニスカス耐圧未満となるように前記ノズル面を傾斜させることを特徴とする請求項2~請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記払拭機構は、前記液体を吸収可能な帯状部材を備
えることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、
前記ノズルから排出される前記液体を受ける液体受け部と、
前記ノズル面を払拭可能な払拭部を有する払拭機構と、
前記ノズル面に付着する前記液体に該ノズル面に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構と、
を備え、
前記外力付与機構は、
気体を噴射可能な流体噴射機構を有
し、
前記流体噴射機構が前記気体を噴射する方向は、前記払拭部が前記ノズル面を払拭する払拭始め側から払拭終わり側である液体噴射装置のメンテナンス方法であって、
前記ノズルから前記液体を排出させることと、
前記流体噴射機構を駆動して前記ノズル面に沿う方向に前記
気体を噴射させることで、前記ノズルから排出されて前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させ
て前記払拭終わり側に向けて移動させ、前記ノズル面に付着した前記液体を減らすことと、
前記流体噴射機構に前記
気体を噴射させた後に、前記払拭部で前記ノズル面を払拭することと、
を含むことを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
前記外力付与機構は、水平面に対する前記ノズル面の傾斜を液体噴射時より大きくして前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させることを特徴とする請求項
7に記載の液体噴射装置のメンテナンス方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどの液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、インクジェットヘッドから液体の一例であるインクを吐出して印刷する液体噴射装置の一例であるインクジェットプリンターがある。インクジェットプリンターは、インクジェットヘッドへ供給するインクの圧力の設定を変更する圧力設定部を備える。圧力設定部は、インクジェットヘッドをクリーニングする時に、圧力可変室の圧力をインクジェットプリンターにおいて印刷が実行されるときよりも高くし、インクジェットヘッドのノズルからインクを排出させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルから液体を排出させるクリーニングを行うと、ノズル面には液体が付着した状態で滞留することがある。ノズル面に付着する液体の量が多い場合、ノズル面の払拭を良好に行うことができない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する液体噴射装置は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記ノズルから排出される前記液体を受ける液体受け部と、前記ノズル面を払拭可能な払拭部を有する払拭機構と、前記ノズル面に付着する前記液体に該ノズル面に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構と、前記外力付与機構を駆動して前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させた後に、前記払拭部で前記ノズル面を払拭する払拭動作を行わせる制御部と、を備える。
【0006】
上記課題を解決する液体噴射装置のメンテナンス方法は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記ノズルから排出される前記液体を受ける液体受け部と、前記ノズル面を払拭可能な払拭部を有する払拭機構と、前記ノズル面に付着する前記液体に該ノズル面に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構と、を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、前記外力付与機構により前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させた後に、前記払拭部で前記ノズル面を払拭する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】開閉弁が閉弁した状態の圧力調整機構と供給機構の模式図。
【
図8】クリーニングを行うために制御部が実行する処理内容を示すフローチャート。
【
図9】開閉弁が開弁した状態の圧力調整機構と供給機構の模式図。
【
図10】第2実施形態の圧力調整機構の分解斜視図。
【
図18】第1の変形例に係る液体噴射装置の模式図。
【
図19】第2の変形例に係る液体噴射装置の模式図。
【
図20】第3の変形例に係る払拭機構の模式正面図。
【
図21】第4の変更例に係る払拭機構の模式側面図。
【
図22】第5の変更例に係る払拭機構の模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法の第1実施形態を図面に従って説明する。なお、本実施形態の液体噴射装置は、用紙などの媒体に液体の一例としてのインクを噴射することで、文字や画像を印刷するインクジェットプリンターである。
【0009】
図面では、液体噴射装置11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいう。
【0010】
図1に示すように、液体噴射装置11は、液体を噴射する液体噴射部12と、液体供給源13から液体噴射部12に液体を供給する供給機構14とを備えている。さらに、液体噴射装置11は、液体噴射部12と対向する位置に配置された支持台112と、媒体113を搬送方向Yfに搬送する搬送部114と、液体噴射部12を走査方向Xs及び走査方向Xsとは反対の方向に往復移動可能な液体噴射部移動機構115と、を備える。液体噴射部12は、ノズル面18に配置される複数のノズル19から液体を噴射する。液体噴射部12は、液体噴射部移動機構115によって移動されながら媒体113に液体を噴射することで印刷を行う。
【0011】
本実施形態の走査方向Xsは、X軸に平行な方向である。支持台112は、印刷位置に位置する媒体113を支持する。搬送方向Yfは、媒体113の搬送経路に沿う方向であり、支持台112において媒体113が接触する面に沿う方向である。本実施形態の搬送方向Yfは、印刷位置においてY軸と平行である。
【0012】
支持台112は、媒体113の幅方向でもある走査方向Xsに延在している。支持台112、搬送部114、及び液体噴射部移動機構115は、ハウジングやフレームなどによって構成される本体116に組み付けられている。そして、本体116には、カバー117が開閉可能に設けられている。
【0013】
搬送部114は、搬送方向Yfにおける支持台112の上流及び下流にそれぞれ配置された第1搬送ローラー対118及び第2搬送ローラー対119と、第2搬送ローラー対119の下流に配置されて媒体113を案内する案内板120とを備えている。そして、第1搬送ローラー対118及び第2搬送ローラー対119が図示しない搬送モーターに駆動されて媒体113を挟持しながら回転すると、媒体113は、支持台112及び案内板120に支持されつつ、支持台112の表面及び案内板120の表面に沿って搬送される。
【0014】
液体噴射部移動機構115は、走査方向Xsに沿って延設されたガイド軸122と、そのガイド軸122に案内されて走査方向Xsに往復移動可能なキャリッジ124とを備えている。キャリッジ124は、図示しないキャリッジモーターの駆動に伴って移動する。キャリッジ124の下端部には、液体噴射部12が取り付けられている。液体噴射部12は、例えば、複数種類のカラーインク、及びインクの定着を促進させる処理液を噴射する。
【0015】
図2に示すように、ノズル面18には、列方向Yrに並ぶ複数のノズル19によって形成されるノズル列Lが列方向Yrとは異なる走査方向Xsに一定の間隔で並ぶように複数設けられていてもよい。本実施形態の列方向Yrは、Y軸に平行なノズル面18に沿う方向であり、印刷位置における搬送方向Yfと一致する。
【0016】
本実施形態の液体噴射部12は、6つのノズル列Lを有する。1つのノズル列Lを構成する複数のノズル19は、同じ種類の液体を噴射する。1つのノズル列Lを構成する複数のノズル19のうち、搬送方向Yfにおける上流に位置するノズル19と、搬送方向Yfにおける下流に位置するノズル19は、走査方向Xsに位置をずらして形成されている。
【0017】
液体噴射装置11は、液体噴射部12のメンテナンスを行うメンテナンスユニット130を備える。メンテナンスユニット130は、走査方向Xsにおいて液体噴射部12が搬送中の媒体113と対峙しない領域である非印刷領域に設けられる。メンテナンスユニット130は、ノズル19から排出される液体を受ける液体受け部131、払拭機構133、吸引機構134、及びキャッピング機構136を有する。メンテナンスユニット130は、液体噴射部12が移動する領域である移動領域の鉛直下方に設けられる廃液パン138と、液体噴射部12から排出された廃液を貯留する廃液貯留部139と、備えてもよい。
【0018】
キャッピング機構136の上方の位置は、液体噴射部12のホームポジションHPとなる。ホームポジションHPは、液体噴射部12の移動の始点となる。払拭機構133の上方の領域は、払拭領域WAとなる。
【0019】
本実施形態では、液体受け部131の上方の位置が液体噴射部12の加圧クリーニング位置CPになる。液体噴射部12が加圧クリーニング位置CPに位置するとき、ノズル面18が液体受け部131に対向する。液体受け部131は、走査方向Xs及び搬送方向Yfにおいてノズル面18より大きい。
【0020】
液体噴射装置11は、液体噴射部12を加圧クリーニング位置CPに位置させると共に、液体噴射部12内の液体を加圧してノズル19から液体を排出させる排出動作の一例である加圧クリーニングを行ってもよい。すなわち、液体受け部131は、加圧クリーニングにより排出される液体を受容してもよい。
【0021】
液体受け部131は、液体噴射部12のノズル19からフラッシングによって噴射された液体を受容してもよい。フラッシングとは、ノズル19の目詰まりなどを予防及び解消する目的で、後述する液体噴射部12が備えるアクチュエーター24を駆動することによりノズル19から印刷とは無関係に液体を強制的に排出する動作のことである。
【0022】
払拭機構133は、液体を吸収可能な帯状部材141を備える。払拭機構133は、帯状部材141を保持する保持部142と、保持部142を第1払拭方向W1及び第1払拭方向W1とは反対の第2払拭方向W2に移動可能に保持するベース部143と、Y軸に沿って延びる一対のレール144と、を備える。払拭機構133は、払拭用モーター145と、巻取用モーター146と、巻取用モーター146の動力を伝達する動力伝達機構147と、を備えてもよい。保持部142は、帯状部材141を露出させる開口148を有する。帯状部材141は、走査方向Xsにおいてノズル面18以上の幅を有すると、液体噴射部12を効率よくメンテナンスできる。
【0023】
保持部142は、払拭用モーター145の動力によりレール144上をY軸に沿って往復移動する。具体的には、保持部142は、
図2に二点鎖線で示す待機位置と、
図2に実線で示す受容位置と、の間を移動する。保持部142は、払拭用モーター145が正転駆動すると、Y軸に平行な第1払拭方向W1に移動し、待機位置から受容位置に向かう。保持部142は、払拭用モーター145が逆転駆動すると、第1払拭方向W1とは反対の第2払拭方向W2に移動し、受容位置から待機位置に向かう。本実施形態における第1払拭方向W1は、印刷位置における搬送方向Yfと一致する。
【0024】
払拭機構133は、保持部142が第1払拭方向W1に移動する過程と、保持部142が第2払拭方向W2に移動する過程と、のうち少なくとも一方の過程で液体噴射部12をワイピングしてもよい。ワイピングとは、帯状部材141によってノズル面18を払拭するメンテナンスである。
【0025】
図2,
図3に示すように、払拭機構133は、巻出軸151を有する巻出部152と、巻取軸153を有する巻取部154と、を備える。巻出部152は、帯状部材141をロール状に巻いた状態で保持する。巻出部152から巻き解かれて繰り出された帯状部材141は、搬送経路に沿って巻取部154まで搬送される。払拭機構133は、帯状部材141の搬送経路に沿って上流から順に設けられる上流ローラー155、テンションローラー156、押圧部157、規制ローラー158、第1水平ローラー159、及び第2水平ローラー160を備えてもよい。保持部142は、巻出軸151、上流ローラー155、テンションローラー156、押圧部157、規制ローラー158、第1水平ローラー159、第2水平ローラー160、及び巻取軸153をX軸を軸線方向として回転可能に支持する。
【0026】
巻取軸153は、巻取用モーター146の駆動により回転する。巻取部154は、巻取軸153に帯状部材141をロール状に巻き取る。巻取用モーター146は、巻出軸151、上流ローラー155、テンションローラー156、押圧部157、規制ローラー158、第1水平ローラー159、及び第2水平ローラー160のうち少なくとも1つを巻取軸153と共に回転駆動してもよい。
【0027】
本実施形態の押圧部157は、帯状部材141が巻き付けられるローラーである。押圧部157は、巻出部152から巻き出された帯状部材141を下方から上方に向かって押し、開口148から帯状部材141を突出させる。帯状部材141のうち、押圧部157に押される部分がノズル面18を払拭可能な払拭部161となる。すなわち、払拭機構133は、払拭部161を有し、払拭部161は、保持部142に保持される。
【0028】
払拭機構133は、帯状部材141をノズル面18とは非接触で対向するように引き出して形成される引き出し部162を有する。本実施形態の引き出し部162は、第1水平ローラー159と、第2水平ローラー160と、の間の部分である。引き出し部162は、走査方向Xs及び搬送方向Yfにおいてノズル面18より大きい。
図2に実線で示す保持部142の受容位置は、液体受け部131と引き出し部162とが走査方向Xsに並ぶ位置である。
【0029】
押圧部157は、保持部142が第1払拭方向W1もしくは第2払拭方向W2に移動する際に、ノズル面18を払拭可能に、帯状部材141をノズル面18に接触させる。払拭機構133は、払拭領域WAに位置する液体噴射部12のノズル面18を払拭可能である。本実施形態の払拭機構133は、保持部142が第2払拭方向W2に移動する際にノズル面18を払拭する。すなわち、払拭領域WAに位置するノズル面18は、受容位置に位置する払拭部161に近い側が払拭始め側になり、離れた方が払拭終わり側になる。換言すると、搬送方向Yfの下流側が払拭始め側になり、上流側が払拭終わり側になる。
【0030】
図2に示すように、吸引機構134は、吸引キャップ164と、吸引用保持体165と、吸引用保持体165をZ軸に沿って往復移動させる吸引用モーター166と、吸引キャップ164内を減圧する減圧機構167と、を備える。吸引用モーター166は、吸引キャップ164を接触位置と退避位置との間で移動させる。接触位置は、吸引キャップ164が液体噴射部12に接触してノズル19を囲む位置である。退避位置は、吸引キャップ164が液体噴射部12から離れる位置である。吸引キャップ164は、全てのノズル19をまとめて囲む構成としてもよいし、一部のノズル19を囲む構成としてもよい。
【0031】
液体噴射装置11は、液体噴射部12を吸引機構134の上方に位置させると共に、吸引キャップ164を接触位置に位置させて1つのノズル列Lを囲み、吸引キャップ164内を減圧してノズル19から液体を排出させる吸引クリーニングを行ってもよい。すなわち、吸引機構134は、吸引クリーニングにより排出される液体を受容してもよい。
【0032】
キャッピング機構136は、放置キャップ169と、放置用保持体170と、放置用保持体170をZ軸に沿って往復移動させる放置用モーター171と、を有する。放置用モーター171の駆動により放置用保持体170及び放置キャップ169が上方もしくは下方に移動する。放置キャップ169は、下方の位置である離隔位置から上方の位置であるキャッピング位置に移動し、ホームポジションHPで停止している液体噴射部12に接触する。
【0033】
キャッピング位置に位置する放置キャップ169は、ノズル19の開口を囲う。このように、放置キャップ169がノズル19の開口を囲うメンテナンスを放置キャッピングという。放置キャッピングは、キャッピングの一種である。放置キャッピングにより、ノズル19の乾燥が抑制される。放置キャップ169は、全てのノズル19をまとめて囲む構成としてもよいし、一部のノズル19を囲む構成としてもよい。
【0034】
図2,
図4に示すように、液体噴射装置11は、ノズル面18に付着する液体にノズル面18に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構173を備える。外力付与機構173は、液体噴射部12の姿勢を変化可能な液体噴射部移動機構115と、流体を噴射可能な流体噴射機構174と、を有してもよい。液体噴射部移動機構115と流体噴射機構174は、それぞれ独立してノズル面18に付着する液体に外力を作用させてもよいし、共同して外力を作用させてもよい。
【0035】
液体噴射部移動機構115は、ガイド軸122に沿って液体噴射部12を往復移動させると共に、ガイド軸122を中心として回転するように液体噴射部12を往復移動させる。液体噴射部移動機構115は、軸方向が水平面に沿うガイド軸122を中心として液体噴射部12を回転させることにより、水平面に対するノズル面18の傾斜を変更する。具体的には、液体噴射部12は、
図4に示す水平姿勢と、
図5に示す傾斜姿勢と、をとる。
【0036】
図4に示すように、水平姿勢は、傾斜姿勢よりも水平面に対するノズル面18の傾斜が小さい姿勢である。水平姿勢のノズル面18が略水平になる場合、ノズル面18に形成されるノズル19の開口の鉛直方向Zにおける位置が、複数のノズル19同士でほぼ同じ位置になり、ノズル面18に対して垂直な方向が鉛直方向Zとなる。したがって、水平姿勢のノズル面18に付着する液体には、ノズル面18に対して略垂直な方向に重力が作用し、重力をノズル面18に沿う方向に分解した力は略ゼロである。本実施形態の液体噴射部12は、媒体113に印刷するための液体の噴射と、メンテナンスのための液体の排出を水平姿勢で行う。
【0037】
図5に示すように、傾斜姿勢は、水平姿勢よりも水平面に対するノズル面18の傾斜が大きい姿勢である。水平面に対してノズル面18が傾斜した状態では、ノズル面18が水平な状態に比べ、重力をノズル面18に沿う方向に分解した力が大きくなる。したがって、液体噴射部移動機構115は、液体噴射部12を回転移動させて水平面に対するノズル面18の傾斜を大きくすることにより、ノズル面18に沿う方向に働く重力の成分を大きくし、ノズル面18に付着する液体にノズル面18に沿う方向の外力を作用させる。
【0038】
液体噴射部移動機構115は、ノズル面18を、払拭部161の払拭動作において払拭始め側である搬送方向Yfの下流側が、払拭終わり側である搬送方向Yfの上流側より高くなるように傾斜させてもよい。ノズル列Lの列方向Yrは、搬送方向Yfと一致する。そのため、1つのノズル列Lを構成する複数のノズル19は、互いに鉛直方向Zにおける位置がずれる。換言すると、液体噴射部移動機構115は、ノズル面18を、ノズル列L内で高低差が発生する方向に傾斜させる。液体噴射部移動機構115は、ノズル列Lを形成するノズル19間での高低差によってノズル19にかかる圧力が、ノズル19に形成されるメニスカスが壊れるメニスカス耐圧未満となるようにノズル面18を傾斜させてもよい。
【0039】
液体噴射部移動機構115は、液体噴射部12をガイド軸122に沿って移動させることにより、ノズル面18に付着する液体にノズル面18に沿う方向の外力を非接触で作用させてもよい。すなわち、液体噴射部移動機構115は、液体噴射部12の移動を開始する場合の加速、及び液体噴射部12を停止させる場合の減速に伴う慣性力をノズル面18に付着する液体に作用させてもよい。
【0040】
流体噴射機構174は、加圧クリーニング位置CPに位置する液体噴射部12に向かって流体を噴射し、ノズル面18に付着した液体に流体を当てることでノズル面18に付着する液体にノズル面18に沿う方向の外力を作用させる。すなわち、流体噴射機構174は、装置自体は液体に非接触のまま、流体噴射機構174から噴射した流体によりノズル面18に付着した液体を押す。流体噴射機構174が流体を噴射する方向は、流体噴射機構174が流体を噴射するときの液体噴射部12の姿勢におけるノズル面18に沿う方向である。流体噴射機構174は、流体を、払拭部161の払拭動作における払拭始め側から払拭終わり側に向けて噴射してもよい。流体噴射機構174は、走査方向Xsに並んで形成される複数の噴射口175から流体を噴射してもよい。流体は、例えば、水などの液体、空気などの気体、もしくは液体と気体の混合物としてもよい。
【0041】
次に、液体噴射部12について詳しく説明する。
図6に示すように、液体噴射部12は、液体中の気泡や異物を捕捉する噴射部フィルター16と、噴射部フィルター16を通過した液体を貯留する共通液室17とを備えている。さらに、液体噴射部12は、ノズル面18に形成された複数のノズル19と共通液室17とを連通させる複数の圧力室20を備えている。この圧力室20の壁面の一部は振動板21によって形成され、共通液室17と圧力室20とは第1連通孔22を通じて連通している。さらに、振動板21における圧力室20と面する部分の反対側の面であって共通液室17と異なる位置には、収容室23に収容されたアクチュエーター24が配設されている。
【0042】
本実施形態のアクチュエーター24は、駆動電圧が印加された場合に収縮する圧電素子によって構成されている。そして、液体噴射部12は、駆動電圧の印加によるアクチュエーター24の収縮に伴って振動板21を変形させた後、アクチュエーター24への駆動電圧の印加を解除すると、容積が変化した圧力室20内の液体がノズル19から液滴として噴射される。すなわち、液体噴射部12は、アクチュエーター24を駆動してノズル19から液体を噴射する。
【0043】
液体供給源13は、例えば液体を収容可能な収容容器であり、収容容器を交換することで液体を補給するカートリッジであってもよいし、装着部26に装着された状態で液体を補充可能な注入口を設けた収容タンクであってもよい。液体供給源13がカートリッジである場合、装着部26は液体供給源13を着脱可能に保持する。なお、液体供給源13及び供給機構14は、液体噴射部12から噴射する液体の種類ごとに少なくとも1組設けられている。
【0044】
また、供給機構14は、液体の供給方向Aにおいて上流側となる液体供給源13から下流側となる液体噴射部12に液体を供給可能な液体供給流路27を備えている。液体供給流路27の一部は、循環経路形成部28と協働して循環経路としても機能する。すなわち、循環経路形成部28は、共通液室17と液体供給流路27とを接続する。そして、循環経路形成部28には、循環経路において液体を循環方向Bに循環させる循環ポンプ29が設けられている。
【0045】
液体供給流路27における循環経路形成部28が接続された位置よりも液体供給源13側には、液体供給源13から供給方向Aに液体を流動させることにより、液体を液体噴射部12に向けて加圧供給する加圧機構31が設けられている。さらに、液体供給流路27における循環経路形成部28が接続された位置よりも下流側の循環経路としても機能する部分には、上流側から順にフィルターユニット32、スタティックミキサー33、液体貯留部34、及び圧力調整装置47が設けられている。
【0046】
加圧機構31は、可撓性を有する可撓性部材37を往復運動させることにより所定量の液体を加圧可能な容積ポンプ38と、液体供給流路27における容積ポンプ38より上流に設けられた第1一方向弁39と、容積ポンプ38より下流に設けられた第2一方向弁40とを備えている。容積ポンプ38は、可撓性部材37によって区切られたポンプ室41と負圧室42とを有している。さらに、容積ポンプ38は、負圧室42を減圧するための減圧部43と、負圧室42内に設けられて可撓性部材37をポンプ室41側に向けて付勢する付勢部材44とを備えている。
【0047】
第1一方向弁39及び第2一方向弁40は、液体供給流路27において上流から下流へ向かう液体の流動を許容し、且つ下流から上流へ向かう液体の流動を阻害する。すなわち、加圧機構31は、付勢部材44が可撓性部材37を介してポンプ室41内の液体を付勢することにより、圧力調整装置47に供給される液体を加圧可能である。このため、加圧機構31が液体を加圧する加圧力は、付勢部材44の付勢力により設定される。また、こうした点で、本実施形態では、加圧機構31は、液体供給流路27の液体を加圧可能と言える。
【0048】
フィルターユニット32は、液体中の気泡や異物を捕捉し、交換可能に設けられている。スタティックミキサー33は、液体の流れに方向転換や分割などの変化を起こし、液体中の濃度の偏りを低減させる。液体貯留部34は、ばね45により付勢された容積可変の空間に液体を貯留し、液体の圧力の変動を緩和する。
【0049】
次に、圧力調整装置47について詳しく説明する。
図6に示すように、圧力調整装置47は、液体供給流路27に設けられてこの液体供給流路27の一部を構成する圧力調整機構35と、圧力調整機構35を押圧する押圧機構48とを備えている。圧力調整機構35は、液体供給源13から液体供給流路27を介して供給される液体が流入する液体流入部50と、液体を内部に収容可能な液体流出部51とが形成された本体部52を備えている。
【0050】
液体供給流路27と液体流入部50とは、壁部53により仕切られており、壁部53に形成された第2連通孔54により連通している。第2連通孔54は、フィルター部材55により覆われている。したがって、液体供給流路27の液体は、フィルター部材55に濾過されて液体流入部50に流入する。
【0051】
液体流出部51は、壁部の少なくとも一部がダイヤフラム56により構成されている。このダイヤフラム56は、液体流出部51の内面となる第1の面56aで液体流出部51内の液体の圧力を受ける一方、液体流出部51の外面となる第2の面56bで大気圧を受ける。このため、ダイヤフラム56は、液体流出部51内の圧力に応じて変位する。そして、液体流出部51は、ダイヤフラム56が変位することで容積が変化する。なお、液体流入部50と液体流出部51とは、連通経路57により連通されている。
【0052】
圧力調整機構35は、連通経路57において液体流入部50と液体流出部51とを非連通とする
図6に示す閉弁状態と、液体流入部50と液体流出部51とを連通させる開弁状態とを切り替え可能な開閉弁59を備えている。開閉弁59は、連通経路57を遮断可能な弁部60と、ダイヤフラム56から圧力を受ける受圧部61とを有し、受圧部61がダイヤフラム56に押圧されることで移動する。すなわち、受圧部61は、液体流出部51の容積を小さくする方向へ変位するダイヤフラム56に接触した状態で移動可能な移動部材としても機能している。
【0053】
液体流入部50内には上流側付勢部材62が設けられ、液体流出部51内には下流側付勢部材63が設けられている。上流側付勢部材62と下流側付勢部材63とは、いずれも開閉弁59を閉弁させる方向に付勢する。そして、開閉弁59は、第1の面56aにかかる圧力が第2の面56bにかかる圧力より低く且つ第1の面56aにかかる圧力と第2の面56bにかかる圧力との差が所定値以上になると、閉弁状態から開弁状態になる。所定値は、例えば、1kPaである。
【0054】
この所定値は、上流側付勢部材62の付勢力、下流側付勢部材63の付勢力、ダイヤフラム56を変位させるために必要な力、弁部60によって連通経路57を遮断するために必要な押圧力であるシール荷重、弁部60の表面に作用する液体流入部50内の圧力、及び液体流出部51内の圧力に応じて決まる値である。すなわち、上流側付勢部材62と下流側付勢部材63の付勢力が大きいほど所定値も大きくなる。
【0055】
上流側付勢部材62と下流側付勢部材63の付勢力は、液体流出部51内の圧力がノズル19における気液界面にメニスカスを形成可能な範囲の負圧状態となるように設定される。第2の面56bにかかる圧力が大気圧の場合、液体流出部51内の圧力は、例えば-1kPaになるように設定されている。この場合、気液界面とは液体と気体とが接する境界であり、メニスカスとは液体がノズル19と接してできる湾曲した液体表面である。そして、ノズル19には、液体の噴射に適した凹状のメニスカスが形成されることが好ましい。
【0056】
こうして、本実施形態では、圧力調整機構35において開閉弁59が閉弁状態にある場合、圧力調整機構35より上流、詳しくは、液体流入部50及び液体流入部50よりも上流における液体の圧力は、加圧機構31によって通常正圧とされる。一方、圧力調整機構35より下流、詳しくは、液体流出部51及び液体流出部51よりも下流における液体の圧力は、ダイヤフラム56によって通常負圧とされる。よって、液体流出部51よりも下流側の液体噴射部12内の圧力は通常負圧とされる。
【0057】
そして、
図6に示す状態において、液体噴射部12が液体を噴射すると、液体流出部51に収容された液体が液体供給流路27を介して液体噴射部12に供給される。すると、液体流出部51内の圧力が低下し、ダイヤフラム56における第1の面56aにかかる圧力と第2の面56bにかかる圧力との差が所定値以上になると、ダイヤフラム56が液体流出部51の容積を小さくする方向へ撓み変形する。このダイヤフラム56の変形に伴って受圧部61が押圧されて移動すると、開閉弁59が開弁状態となる。
【0058】
すると、液体流入部50内の液体は加圧機構31により加圧されているため、液体流入部50から液体流出部51に液体が供給されて液体流出部51内の圧力が上昇する。これにより、ダイヤフラム56は、液体流出部51の容積を増大させるように変形する。そして、ダイヤフラム56における第1の面56aにかかる圧力と第2の面56bにかかる圧力との差が所定値よりも小さくなると、開閉弁59は開弁状態から閉弁状態になって液体の流動を阻害する。
【0059】
このようにして、圧力調整機構35は、ダイヤフラム56を変位させて液体噴射部12に供給される液体の圧力を調整することで、ノズル19の背圧となる液体噴射部12内の圧力を調整する。
【0060】
図6に示すように、押圧機構48は、ダイヤフラム56の第2の面56b側に圧力調整室66を形成する膨張収縮部67と、膨張収縮部67を押さえる押さえ部材68と、圧力調整室66内の圧力を調整可能な圧力調整部69とを備えている。膨張収縮部67は、例えばゴムや樹脂により風船状に形成され、圧力調整部69による圧力調整室66の圧力の調整に伴って膨張したり収縮したりする。押さえ部材68は、有底円筒形状をなしており、底部に形成された挿通孔70に膨張収縮部67の一部が挿通されている。
【0061】
押さえ部材68における内側面の開口部71側の端縁部は、R面取りされて丸みが付けられている。押さえ部材68は、開口部71が圧力調整機構35に塞がれるようにして圧力調整機構35に取り付けられることにより、ダイヤフラム56の第2の面56bを覆う空気室72を形成する。空気室72内の圧力は大気圧にされ、ダイヤフラム56の第2の面56bには大気圧が作用する。
【0062】
すなわち、圧力調整部69は、圧力調整室66内の圧力を空気室72の圧力である大気圧よりも高い圧力に調整することで膨張収縮部67を膨張させる。そして、押圧機構48は、圧力調整部69が膨張収縮部67を膨張させることで、ダイヤフラム56を液体流出部51の容積が小さくなる方向に押圧する。このとき、押圧機構48の膨張収縮部67は、ダイヤフラム56における受圧部61が接触する領域を押圧する。なお、ダイヤフラム56における受圧部61が接触する領域の面積は、連通経路57の断面積よりも大きくなっている。
【0063】
図7に示すように、圧力調整部69は、例えば空気や水などの流体を加圧する加圧ポンプ74と、加圧ポンプ74と膨張収縮部67とを接続する接続経路75と、接続経路75に設けられた検出部76及び流体圧調整部77とを備えている。接続経路75の下流側は、複数に分岐し、複数設けられた圧力調整装置47の膨張収縮部67にそれぞれ接続されていてもよい。なお、接続経路75の複数に分岐した流路に該流路の連通状態と非連通状態とを切替える切替弁をそれぞれ設けることにより、加圧された流体を複数の膨張収縮部67に選択的に供給することも可能である。
【0064】
すなわち、加圧ポンプ74により加圧された流体は、接続経路75を介してそれぞれの膨張収縮部67に供給される。検出部76は接続経路75内の流体の圧力を検出し、流体圧調整部77は例えば安全弁によって構成される。そして、流体圧調整部77は、接続経路75内の流体の圧力が所定の圧力よりも高くなった場合に自動的に開弁して接続経路75内の流体を外部へ放出することにより接続経路75内の流体の圧力を低下させる。
【0065】
また、
図7に示すように、液体噴射装置11は、液体噴射装置11の各種の構成部材の駆動を制御する制御部180を備えている。制御部180は、CPU、ROM及びRAMなどを有するマイクロコンピューターである。制御部180は、ROMに記憶されたプログラムに従って、液体噴射装置11で実行される各種動作を制御する。
【0066】
制御部180は、搬送部114を駆動して媒体113を単位搬送量だけ搬送する搬送動作と、キャリッジ124を走査方向Xsに移動させつつ液体噴射部12から媒体113に向けて液体を噴射する噴射動作とを交互に行わせることで、媒体113に文字や画像を形成する印刷動作を行わせる。
【0067】
また、制御部180は、押圧機構48において、加圧ポンプ74を駆動することで、膨張収縮部67に加圧された流体を供給させる。こうして、膨張収縮部67が膨張する結果、ダイヤフラム56が液体流出部51の容積を減少させる方向に変位し、開閉弁59が開弁状態となる。このように、制御部180は、押圧機構48の駆動に基づいて、開閉弁59の開閉制御を行う。
【0068】
また、制御部180は、液体噴射部12内の液体の圧力を液体噴射部12の外部の圧力である例えば大気圧よりも大きくすることで、ノズル19から加圧機構31により加圧した液体を液体受け部131に排出させる排出動作を行わせる。この動作は、加圧クリーニングとも言われる。制御部180は、排出動作を行わせる際に、押圧機構48によりダイヤフラム56を押圧させることにより開閉弁59を開弁させ、加圧機構31により加圧された液体を圧力調整機構35及び液体噴射部12に供給させる。
【0069】
また、排出動作を長期間に亘って行う場合には、液体噴射部12のノズル19から排出される液体の消費量が、加圧機構31が液体噴射部12に向けて供給する液体の供給量に対して過多となることで、液体供給流路27を流れる液体の流速が次第に低下することがある。この場合には、液体噴射部12及び液体供給流路27内に存在する気泡などの異物を効率よく排出できないおそれがある。
【0070】
そこで、本実施形態において、制御部180は、排出動作と、該排出動作を停止する排出停止動作とを短い周期で繰り返し行わせる。これにより、液体供給流路27を流れる液体の流速が次第に低下することが抑制され、液体供給流路27内に存在する気泡などの異物を排出する作用が弱まることが抑制される。
【0071】
次に、
図8に示すフローチャートを参照して、本実施形態の制御部180が排出動作を含むクリーニングを行うときに実行する処理の流れについて説明する。この一連の処理は、予め設定された制御サイクル毎に実行させてもよいし、ノズル19において液体の噴射不良が発生していると予想される場合に限って実行させてもよいし、液体噴射装置11のユーザーもしくはオペレーターが手動で実行させてもよい。
【0072】
図8に示すように、制御部180は、計数用の変数であるカウンターCntを「0(零)」にリセットし(ステップS11)、排出動作を行わせる(ステップS12)。詳しくは、制御部180は、押圧機構48の駆動を制御し、液体流出部51の容積が減少する方向にダイヤフラム56を変位させることで、開閉弁59を開弁状態とする。こうして、液体流出部51、液体供給流路27、共通液室17、圧力室20及びノズル19の内部に、加圧された液体が流れることで、ノズル19から液体が排出される。
【0073】
続いて、制御部180は、排出動作を停止すべく排出停止動作を行う(ステップS13)。詳しくは、制御部180は、押圧機構48の駆動を制御し、液体流出部51の容積が増大する方向にダイヤフラム56を変位させることで、開閉弁59を閉弁状態とする。こうして、圧力調整機構35よりも下流側に加圧された液体が供給されなくなる。なお、排出動作を終了してから排出停止動作を開始するまでの期間は、例えば、0.1秒~1秒程度の期間とすればよい。
【0074】
そして、制御部180は、カウンターCntを「1」だけインクリメントし(ステップS14)、カウンターCntが判定回数CntTh以上となったか否かを判定する(ステップS15)。ここで、判定回数CntThとは、排出動作及び排出停止動作を何度繰り返して行うかを定める判定値である。このため、判定回数CntThは、液体噴射装置11の仕様やユーザーの設定に基づいて決定すればよい。なお、液体噴射部12の全てのノズル19において液体の噴射不良が発生しているか否かの検出を行っている場合には、液体の噴射不良が発生している不良ノズルの数に応じて、判定回数CntThを決定してもよい。
【0075】
カウンターCntが判定回数CntTh未満である場合(ステップS15:NO)、制御部180は、その処理を先のステップS12に移行する一方、カウンターCntが判定回数CntTh以上である場合(ステップS15:YES)、傾斜動作を行わせる(ステップS16)。傾斜動作によって液体噴射部12は、水平姿勢から傾斜姿勢になる。続いて制御部180は、流体噴射動作を行わせ(ステップS17)、傾斜姿勢のノズル面18に向かって流体噴射機構174に流体を噴射させる。
【0076】
制御部180は、水平動作を行わせ(ステップS18)、傾斜動作により変更された液体噴射部12の姿勢を傾斜姿勢から水平姿勢に戻す。制御部180は、移動動作を行わせ(ステップS19)、加圧クリーニング位置CPに位置する液体噴射部12を払拭領域WAに移動させる。
【0077】
そして、制御部180は、払拭機構133によりノズル面18を払拭する払拭動作を行わせる(ステップS20)。この払拭動作によって、ノズル面18に付着した液体や異物が除去されるとともに、液体を噴射するのに適したメニスカスがノズル19内に形成される。その後、制御部180は、一連の処理を一旦終了する。こうして、本実施形態のメンテナンスは、排出動作、傾斜動作、流体噴射動作、及び払拭動作を含む動作であって、液体噴射部12の液体噴射性能を回復させるための動作である。
【0078】
本実施形態の作用について説明する。
さて、液体噴射装置11が印刷動作を行っていると、液体噴射部12に設けられる複数のノズル19の一部のノズル19が、液体の噴射不良が発生した不良ノズルとなることがある。この場合には、該不良ノズルの液体の噴射不良を回復するために、クリーニングが行われる。
【0079】
図9に示すように、クリーニングを行う場合には、加圧ポンプ74が駆動され、膨張収縮部67に加圧された流体が供給される。すると、流体が供給された膨張収縮部67は、膨張してダイヤフラム56における受圧部61が接触する領域を押圧することで、開閉弁59を開弁状態にする。
【0080】
すなわち、押圧機構48は、上流側付勢部材62及び下流側付勢部材63の付勢力に抗して受圧部61を移動させることにより、開閉弁59を開弁状態にする。この場合、圧力調整部69は、複数の圧力調整装置47の膨張収縮部67に接続されているため、全ての圧力調整装置47の開閉弁59を開弁状態にする。
【0081】
このとき、ダイヤフラム56は液体流出部51の容積を小さくする方向に変形するため、液体流出部51に収容されていた液体は液体噴射部12に向かって押し出される。すなわち、ダイヤフラム56が液体流出部51を押圧した圧力が液体噴射部12に伝わることにより、メニスカスが壊れてノズル19から液体が溢れる。つまり、押圧機構48は、液体流出部51内の圧力が、少なくとも1つのメニスカスが壊れる圧力よりも高くなるように、ダイヤフラム56を押圧する。例えば、メニスカスが壊れる圧力は、気液界面における液体側の圧力が気体側の圧力よりも1kPa高くなる圧力である。
【0082】
また、押圧機構48は、ダイヤフラム56を押圧することによって、液体流入部50内の圧力に関わらず開閉弁59を開弁状態とする。この場合、押圧機構48は、加圧機構31が液体を加圧する圧力に前述の所定値を加えた圧力がダイヤフラム56に加わった場合に発生する押圧力よりも大きな押圧力でダイヤフラム56を押圧する。
【0083】
そして、開閉弁59が開弁状態とされる状態において、減圧部43を定期的に駆動することにより、加圧機構31により加圧された液体が液体噴射部12に供給される。すなわち、減圧部43の駆動に伴って負圧室42が減圧されると、可撓性部材37はポンプ室41の容積を増大させる方向に移動する。
【0084】
すると、液体供給源13からポンプ室41に液体が流入する。そして、減圧部43による減圧が解除されると、可撓性部材37は付勢部材44の付勢力によりポンプ室41の容積を減少させる方向に付勢される。すなわち、ポンプ室41内の液体は、可撓性部材37を介して付勢部材44の付勢力により加圧され、第2一方向弁40を通過して液体供給流路27の下流に向かって供給される。
【0085】
押圧機構48がダイヤフラム56を押圧している間は開閉弁59の開弁状態が維持されるため、この状態で加圧機構31が液体を加圧すると、その加圧力が液体流入部50、連通経路57、液体流出部51を介して液体噴射部12に伝わり、ノズル19から液体が排出される排出動作である加圧クリーニングが行われる。なお、
図9に示すように、排出動作が行われる場合には、制御部180は、予め液体噴射部12が液体受け部131と対向するようにキャリッジ124を移動させる。すなわち、制御部180は、液体噴射部12を加圧クリーニング位置CPにおいて停止させた状態で排出動作を行わせる。これにより、液体受け部131は、液体噴射部12のノズル19から排出される液体を受ける。
【0086】
続いて、排出動作を停止する排出停止動作が行われる。排出停止動作では、押圧機構48によるダイヤフラム56の押圧を解除して開閉弁59を閉弁状態にする。これにより、圧力調整機構35の上流側と下流側とが連通しなくなり、液体供給源13から加圧された液体が液体噴射部12に向かって供給されなくなる。また、本実施形態では、排出動作と排出停止動作とが短い周期で繰り返し行われる。これにより、排出動作において、液体供給流路27及び液体噴射部12内を流れる液体の流速が低下することが抑制され、液体供給流路27及び液体噴射部12内から気泡などの異物を除去しやすくなる。
【0087】
加圧クリーニングによりノズル19から排出された液体は、ノズル面18に沿って濡れ拡がる。ノズル面18に付着する液体の量が、ノズル面18が保持可能な液体の量より多くなると、液体はノズル面18から滴下する。そのため、排出動作を行った後のノズル面18には、多量の液体が付着している。例えば、排出動作を行わせた後に、そのまま払拭動作を行わせる場合には、ノズル面18に付着した液体を払拭部161で拭き取ることができず、ノズル面18に液体が残ってしまうおそれがある。
【0088】
図4,
図5に示すように、制御部180は、排出動作を行わせた場合、外力付与機構173を駆動して傾斜動作、流体噴射動作、及び移動動作のうち少なくとも1つを行わせ、ノズル面18に付着する液体に外力を作用させる。その後、制御部180は、払拭部161でノズル面18を払拭する払拭動作を行わせる。すなわち、制御部180は、液体噴射部移動機構115を駆動し、水平面に対するノズル面18の傾斜を液体噴射時より大きくし、流体噴射機構174を駆動してノズル面18に沿う方向に流体を噴射させた後に、払拭部161に払拭動作を行わせる。
【0089】
具体的には、傾斜動作において、液体噴射部移動機構115は、水平面に対するノズル面18の傾斜を液体噴射時より大きくしてノズル面18に付着する液体に外力を作用させることで、ノズル面18に付着した液体を移動させる。すなわち、ノズル面18に付着した液体は、傾斜動作に伴ってノズル面18を移動して集まることでノズル面18から滴下しやすくなり、ノズル面18に付着する液体の量が減少する。ノズル面18から滴下した液体は、液体受け部131により受容される。このとき、液体噴射部移動機構115は、ノズル面18における払拭始め側が払拭終わり側より高くなるように液体噴射部12を傾斜させる。そのため、ノズル面18に付着する液体は、払拭終わり側に集まりやすい。
【0090】
図5に示すように、流体噴射機構174は、流体を払拭始め側から払拭終わり側に向けて噴射する。流体噴射機構174は、傾斜姿勢の液体噴射部12に向けて流体を噴射してもよい。これにより、ノズル面18に付着する液体は、払拭終わり側により集まりやすくなる。ノズル面18から滴下した液体は液体受け部131に受容される。
【0091】
移動動作は、加圧クリーニング位置CPにて停止する液体噴射部12を、走査方向Xsに移動させることで、液体噴射部12を払拭領域WAに移動せる動作である。移動動作に伴う加速度、及び負の加速度である減速度は、印刷動作時の加速度及び減速度より大きくしてもよい。
【0092】
保持部142が受容位置に位置するとき、引き出し部162は、液体噴射部12の移動領域の鉛直下方の位置に位置する。そのため、液体噴射部12が払拭領域WAにて停止すると、液体噴射部12のノズル面18は、引き出し部162に対向する。液体噴射部12が停止する際にノズル面18から滴下した液体は、引き出し部162により受容される。
【0093】
図3に示すように、払拭動作では、受容位置に位置する保持部142を第2払拭方向W2に移動させる。払拭部161は、液体噴射部12のノズル面18に接触した状態で移動することにより液体噴射部12をワイピングする。こうして、液体噴射部12のノズル面18に付着した液体が除去され、液体噴射部12のノズル19の内部に正常なメニスカスが形成される。
【0094】
次に、本実施形態の圧力調整装置47を製造する方法について説明する。
はじめに、本実施形態の本体部52は、レーザー光を吸収して発熱する光吸収性樹脂や、光を吸収する色素で着色された樹脂により形成されている。光吸収性樹脂は、例えばポリプロピレンやポリブチレンテレフタレートがある。また、ダイヤフラム56は、例えばポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートなどの異なる材料を積層して形成され、レーザー光を透過させる透過性及び可撓性を有する。そして、押さえ部材68は、レーザー光を透過する光透過性樹脂により形成されている。光透過性樹脂は、例えばポリスチレンやポリカーボネートがある。すなわち、ダイヤフラム56の透明度は、本体部52の透明度よりも高く、押さえ部材68の透明度よりも低い。
【0095】
さて、
図6に示すように、まず製造方法は、挿通孔70に膨張収縮部67の一部を挿通させた押さえ部材68と本体部52とによりダイヤフラム56を挟持させる挟持工程を含む。そして、製造方法は、押さえ部材68を介してレーザー光を照射する照射工程を含む。すると、押さえ部材68を透過したレーザー光を本体部52が吸収して発熱する。このとき生じた熱により、本体部52、ダイヤフラム56、押さえ部材68が溶着される。したがって、押さえ部材68は、圧力調整装置47を製造する際にダイヤフラム56を押さえる治具としても機能する。
【0096】
本実施形態の効果について説明する。
(1)制御部180は、払拭部161でノズル面18を払拭する払拭動作の前に、外力付与機構173により液体噴射部12に付着する液体に対して外力を付与する。外力が付与された液体は、ノズル面18を移動したり、液滴同士が係合したりしてノズル面18から滴下しやすくなり、ノズル面18に付着する液体を減らすことができる。したがって、ノズル面18に付着する液体に外力を作用させた後に払拭動作を行うことで、払拭動作を良好に行うことができる。
【0097】
(2)液体噴射部移動機構115は、水平面に対するノズル面18の傾斜を液体噴射時より大きくする。これにより、ノズル面18に沿う方向における重力の成分が大きくなるため、ノズル面18に付着した液体は、滴下しやすくなる。したがって、ノズル面18に付着する液体を減らした後に行う払拭動作を良好に行うことができる。
【0098】
(3)ノズル面18を傾斜させると、ノズル面18に付着する液体は、重力の作用により下方に集まりやすい。その点、液体噴射部移動機構115は、払拭始め側が払拭終わり側より高くなるようにノズル面18を傾斜させる。すなわち、液体は、ノズル面18において払拭終わり側に集まりやすいため、払拭部161が収集する液体が払拭動作の途中で増加しにくく、払拭動作を良好に行うことができる。
【0099】
(4)液体噴射部移動機構115は、1つのノズル列Lを形成するノズル19同士で高低差が生じるようにノズル面18を傾斜させる。そのため、ノズル面18に付着する液体は、ノズル列Lの列方向Yrに移動しやすい。したがって、例えばノズル列Lごとに異なる種類の液体を噴射させる場合でも液体同士が混ざる虞を低減できる。
【0100】
(5)液体噴射部移動機構115は、ノズル列Lを形成するノズル19同士の高低差によってノズル19にかかる圧力がメニスカス耐圧未満となるようにノズル面18を傾斜させる。したがって、ノズル19に形成されるメニスカスは、ノズル面18を傾斜させた場合に壊れる虞が低減されノズル19内に空気が侵入する虞を低減できる。
【0101】
(6)流体噴射機構174は、ノズル面18に沿う方向に流体を噴射する。これにより、ノズル面18に付着した液体は、滴下しやすくなる。したがって、ノズル面18に付着する液体を減らした後に行う払拭動作を良好に行うことができる。
【0102】
(7)流体噴射機構174は、払拭始め側から払拭終わり側に向けて流体を噴射する。すなわち、液体は、ノズル面18において払拭終わり側に集まりやすいため、払拭部161が収集する液体が払拭動作の途中で増加しにくく、払拭動作を良好に行うことができる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、液体噴射装置11の第2実施形態を図面にしたがって説明する。
この第2実施形態は、上記第1実施形態における圧力調整装置47を
図10及び
図11に示す圧力調整装置200に変更したものであり、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の部材については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0104】
図10及び
図11に示すように、圧力調整装置200は、空気室形成ユニット201と、圧力調整機構形成ユニット202と、底板部材203と、接続部形成ユニット204と、2つのレバーユニット205とを組み付けることによって形成される。
【0105】
接続部形成ユニット204は、本体部206と、本体部206の外側面を覆うように取着された接続フィルム207とを備えている。本体部206の上面には、複数の液体供給流路27のうちの2つがそれぞれ接続される第1液体接続部208及び第2液体接続部209と、圧力調整部210が接続される圧力接続部211とが突設されている。本体部206の内側面には、第1液体接続部208、第2液体接続部209、及び圧力接続部211とそれぞれ連通する第1液体導出部212、第2液体導出部213、及び圧力供給部214が突設されている。
【0106】
接続部形成ユニット204の本体部206の外側面には図示しない3つの溝が形成されており、3つの溝と接続フィルム207とで3つの図示しない流路が形成されている。これら3つの図示しない流路は、第1液体接続部208、第2液体接続部209、及び圧力接続部211と、第1液体導出部212、第2液体導出部213、及び圧力供給部214とをそれぞれ接続している。
【0107】
空気室形成ユニット201は、本体部215と、本体部215の両側面の全体を覆うように該両側面にそれぞれ取着される可撓性の空気室フィルム216とを備えている。本体部215における接続部形成ユニット204側の側面には、圧力供給部214が接続される空気導入部217が設けられている。本体部215の両側面における圧力調整機構形成ユニット202との境界近傍には、レバーユニット205が取り付けられる略T字状の取付部218がそれぞれ突設されている。
【0108】
図10及び
図12に示すように、空気室形成ユニット201の本体部215の両側面には、円形の凹部219がそれぞれ形成されている。そして、各凹部219と各空気室フィルム216とで囲まれた空間は、空気室である圧力調整室220とされている。各空気室フィルム216における凹部219と対応する円形の部分は、圧力調整室220の一部を形成する可撓壁221とされている。本実施形態では、可撓壁221によって「回動力付与部」が構成されている。
【0109】
図13及び
図14に示すように、空気室形成ユニット201の本体部215の両側面には溝222がそれぞれ形成され、これらの溝222同士は第3連通孔223によって連通している。2つの溝222はそれぞれ反対側に位置する凹部219の中央部に第4連通孔224を介して連通している。そして、これら2つの溝222と2つの空気室フィルム216とで囲まれた空間により空気流路225が形成されている。したがって、空気流路225は、本体部215の両側面にわたって延びている。なお、空気流路225は、空気導入部217と連通している。
【0110】
図10に示すように、圧力調整機構形成ユニット202は、本体部226と、本体部226の両側面の全体を覆うように該両側面にそれぞれ取着される可撓性の圧力フィルム227とを備えている。本体部226における接続部形成ユニット204側の側面には、第1液体導出部212及び第2液体導出部213がそれぞれ接続される第1液体導入部228及び第2液体導入部229が設けられている。
【0111】
図10及び
図12に示すように、圧力調整機構形成ユニット202の本体部226の両側面には、円形の凹部230がそれぞれ形成されている。そして、各凹部230と各圧力フィルム227とで囲まれた空間は、液体流出部231とされている。各圧力フィルム227における凹部230と対応する円形の部分は、液体流出部231の一部を形成するダイヤフラム232とされている。
【0112】
図10及び
図14に示すように、レバーユニット205は、矩形板状のレバー233と、レバー233の係止部234に係止されたねじりばね235とを備えている。レバー233における長手方向の中央部よりもやや一端側寄りの位置には、レバーユニット205を取付部218に取り付けるための取付孔236が貫通するように形成されている。レバー233は、その一方側の面における長手方向の一端部に略円板状の押付部237を有し、他端部に略半球状の被押圧部238を有している。
【0113】
そして、レバーユニット205は、レバー233の取付孔236において取付部218に取り付けた場合に、レバー233における取付部218との接触部分である支点を回動中心として回動可能になっている。このとき、押付部237はダイヤフラム232の中央部と対向するとともに、被押圧部238は可撓壁221の中央部に接触している。
【0114】
さらにこのとき、ねじりばね235の付勢力は、押付部237がダイヤフラム232に近づく方向にレバー233を回動させる際の抵抗力として作用するようになっている。したがって、押付部237は、通常、ダイヤフラム232から離れている。
【0115】
図15に示すように、圧力調整部210は、環状の環状管240と、環状管240の途中に設けられたポンプ241と、環状管240におけるポンプ241と反対側の位置に設けられて環状管240と圧力接続部211とを接続する接続管242とを備えている。環状管240における接続管242との接続位置とポンプ241との間には第2バルブV2が設けられ、環状管240における第2バルブV2と反対側の位置には第3バルブV3が設けられている。
【0116】
環状管240における第2バルブV2とポンプ241との間には先端側が大気開放された第1分岐管243の基端側が接続され、第1分岐管243の途中位置には第1バルブV1が設けられている。環状管240における第3バルブV3とポンプ241との間には先端側が大気開放された第2分岐管244の基端側が接続され、第2分岐管244の途中位置には第4バルブV4が設けられている。
【0117】
ポンプ241は、その駆動により環状管240内の空気を
図15の矢印で示す一方向に流動させる。そして、圧力調整部210は、第1バルブV1及び第3バルブV3を閉弁するとともに第2バルブV2及び第4バルブV4を開弁した状態でポンプ241を駆動することで、
図11及び
図12に示すように、圧力接続部211から空気を加圧供給して圧力調整室220を加圧する。
【0118】
一方、圧力調整部210は、第1バルブV1及び第3バルブV3を開弁するとともに第2バルブV2及び第4バルブV4を閉弁した状態でポンプ241を駆動することで、
図11及び
図12に示すように、圧力接続部211から空気を吸引して圧力調整室220を減圧する。
【0119】
したがって、圧力調整部210は、圧力調整装置200の2つの圧力調整室220を同時に加圧したり減圧したりすることが可能な加圧減圧装置として機能する。なお、第1バルブV1~第4バルブV4は電磁バルブによって構成され、それらの開閉動作は制御部180によってそれぞれ制御される。
【0120】
次に、圧力調整装置200について詳述する。
ここでは、主に
図6と
図16とに基づいて説明するが、
図6においては圧力調整装置47を
図16に示す圧力調整装置200に置き換えたものとして説明する。
【0121】
図6及び
図16に示すように、圧力調整装置200は、液体供給流路27に設けられてこの液体供給流路27の一部を構成する圧力調整機構250と、圧力調整機構250を押圧する押圧機構251とを2つずつ備えている。したがって、圧力調整装置200は、1つで2種類の液体の圧力を調整することが可能になっている。
【0122】
圧力調整機構形成ユニット202が備える圧力調整機構250は、液体供給源13から液体供給流路27を介して供給される液体が流入する液体流入部252と、液体を内部に収容可能な液体流出部231とが形成された本体部226を備えている。液体供給流路27と液体流入部252とは、壁部247により仕切られており、壁部247に形成された第5連通孔248により連通している。液体供給流路27における第5連通孔248の直ぐ上流側には、フィルター部材249が配置されている。したがって、液体供給流路27の液体は、フィルター部材249に濾過されて液体流入部252に流入する。
【0123】
液体流出部231は、壁面の一部がダイヤフラム232により構成されている。このダイヤフラム232は、液体流出部231の内面となる第1の面232aで液体流出部231内の液体の圧力を受ける一方、液体流出部231の外面となる第2の面232bで大気圧を受ける。
【0124】
このため、ダイヤフラム232は、液体流出部231内の圧力に応じて変位する。したがって、液体流出部231は、ダイヤフラム232が変位することで容積が変化する。なお、液体流入部252と液体流出部231とは、連通経路254によって連通されている。
【0125】
圧力調整機構250は、連通経路254において液体流入部252と液体流出部231とを非連通とする
図16に示す閉弁状態と、液体流入部252と液体流出部231とを連通させる
図17に示す開弁状態とを切り替え可能な開閉弁255を備えている。
【0126】
開閉弁255は、連通経路254を遮断可能な弁部256と、連通経路254に挿通されるロッド部257とを備えている。ロッド部257は、その先端がダイヤフラム232の第1の面232aの中央部に接触するように配置された略円板状の受圧部258に接触している。この場合、受圧部258は、ロッド部257の先端に固定されていてもよいし、ダイヤフラム232の第1の面232aの中央部に固定されていてもよい。
【0127】
開閉弁255は、ダイヤフラム232により受圧部258を介して押圧されることで移動する。すなわち、受圧部258は、液体流出部231の容積を小さくする方向へ変位するダイヤフラム56に接触した状態で移動可能な移動部材としても機能している。
【0128】
液体流入部252内には上流側付勢部材259が設けられ、液体流出部231内には下流側付勢部材260が設けられている。上流側付勢部材259は開閉弁255を閉弁させる方向に付勢し、下流側付勢部材260は、受圧部258をダイヤフラム232に押し付ける方向に付勢する。そして、開閉弁255は、第1の面232aにかかる圧力が第2の面232bにかかる圧力より低く且つ第1の面232aにかかる圧力と第2の面232bにかかる圧力との差が所定値以上になると、閉弁状態から開弁状態になる。所定値は、例えば、1kPaである。
【0129】
この所定値は、上流側付勢部材259の付勢力、下流側付勢部材260の付勢力、ダイヤフラム232を変位させるために必要な力、弁部256によって連通経路254を遮断するために必要な押圧力であるシール荷重、弁部256の表面に作用する液体流入部252内の圧力、及び液体流出部231内の圧力に応じて決まる値である。すなわち、上流側付勢部材259と下流側付勢部材260の付勢力が大きいほど所定値も大きくなる。
【0130】
上流側付勢部材259と下流側付勢部材260の付勢力は、液体流出部231内の圧力がノズル19における気液界面にメニスカスを形成可能な範囲の負圧状態となるように設定される。第2の面232bにかかる圧力が大気圧の場合、液体流出部231内の圧力は、例えば-1kPaになるように設定されている。この場合、気液界面とは液体と気体とが接する境界であり、メニスカスとは液体がノズル19と接してできる湾曲した液体表面である。そして、ノズル19には、液体の噴射に適した凹状のメニスカスが形成されることが好ましい。
【0131】
押圧機構251は、ダイヤフラム232の第2の面232b側を押圧可能な押付部237を有する回動可能なレバー233と、レバー233に回動力を付与する可撓壁221を有した圧力調整室220と、圧力調整室220内の圧力を調整可能な
図11に示す圧力調整部210とを備えている。可撓壁221は、圧力調整部210による圧力調整室220内の圧力の調整に伴って膨らんだり凹んだりする。
【0132】
そして、押圧機構251は、圧力調整部210が圧力調整室220内の圧力を大気圧よりも高い圧力に調整することによって可撓壁221を膨らませることで、ダイヤフラム232を液体流出部231の容積が小さくなる方向にレバー233の押付部237によって押圧することによって開閉弁255を開弁状態とする。
【0133】
すなわち、可撓壁221がレバー233の被押圧部238に接触した状態で膨らむと、可撓壁221によって被押圧部238が押圧されてレバー233に回動力が付与され、この回動力によりレバー233が取付部218との接触部分である支点を回動中心として回動する。
【0134】
このレバー233の回動に伴って押付部237がダイヤフラム232の第2の面232b側を液体流出部231の容積が小さくなる方向に押圧することで、開閉弁255が閉弁状態から開弁状態にされる。このとき、押圧機構251の押付部237は、ダイヤフラム232における受圧部258が接触する領域を押圧する。この場合、ダイヤフラム232における受圧部258が接触する領域の面積は、連通経路254の断面積よりも大きくなっている。
【0135】
また、押圧機構251は、圧力調整部210が圧力調整室220内の圧力をレバー233の押付部237によるダイヤフラム232の押圧時の圧力調整室220内の圧力よりも低い圧力に調整することで、レバー233の押付部237によるダイヤフラム232の押圧を解除する。なお、レバー233に可撓壁221による回動力が付与されない状態では、押付部237がダイヤフラム232から離れている。
【0136】
本実施形態の作用について説明する。
さて、液体噴射部12が液体を噴射すると、液体流出部231に収容された液体が液体供給流路27を介して液体噴射部12に供給される。液体流出部231内の圧力が低下し、ダイヤフラム232における第1の面232aにかかる圧力と第2の面232bにかかる圧力との差が所定値以上になると、ダイヤフラム232が液体流出部231の容積を小さくする方向へ撓み変形する。このダイヤフラム232の変形に伴って受圧部258を介して開閉弁255が押圧されて移動し、開閉弁255が開弁状態となる。
【0137】
すると、液体流入部252内の液体は加圧機構31により加圧されているため、液体流入部252から液体流出部231に液体が供給されて液体流出部231内の圧力が上昇する。これにより、ダイヤフラム232は、液体流出部231の容積を増大させるように変形する。そして、ダイヤフラム232における第1の面232aにかかる圧力と第2の面232bにかかる圧力との差が所定値よりも小さくなると、開閉弁255が上流側付勢部材259の付勢力により移動して開弁状態から閉弁状態になって液体の流動を阻害する。
【0138】
このようにして、圧力調整機構250は、ダイヤフラム232を変位させて液体噴射部12に供給される液体の圧力を調整することで、ノズル19の背圧となる液体噴射部12内の圧力を調整する。
【0139】
次に、第2実施形態において、液体噴射装置11がクリーニングを行う場合の作用について説明する。なお、第2実施形態におけるクリーニングでは、排出動作と排出停止動作とを繰り返し行わないものとする。
【0140】
図15に示すように、制御部180は、圧力調整部210の第1バルブV1及び第3バルブV3を閉弁するとともに第2バルブV2及び第4バルブV4を開弁した状態でポンプ241を駆動する。
【0141】
図17に示すように、圧力接続部211から空気が加圧供給される圧力調整室220は、内部の圧力が大気圧よりも高い圧力に調整される。これにより、可撓壁221が膨らんでレバー233の被押圧部238を押圧し、レバー233がねじりばね235の付勢力に抗して取付部218との接触部分である支点を回動中心として回動する。
【0142】
すると、レバー233の押付部237がダイヤフラム232における受圧部258が接触する領域を下流側付勢部材260の付勢力に抗して押圧する。すると、開閉弁255もダイヤフラム232及び受圧部258越しに押付部237による押圧力を受けて上流側付勢部材259の付勢力に抗して移動し、開閉弁255が開弁状態になる。
【0143】
すなわち、押圧機構251は、上流側付勢部材259及び下流側付勢部材260の付勢力に抗して受圧部258及び開閉弁255を移動させることにより、開閉弁255を開弁状態にする。この場合、圧力調整部210は、複数の圧力調整装置200の圧力接続部211に接続されているため、全ての圧力調整装置200の開閉弁255を開弁状態にする。
【0144】
このとき、ダイヤフラム232は液体流出部231の容積を小さくする方向に変形するため、液体流出部231に収容されていた液体は液体噴射部12側に押し出される。すなわち、ダイヤフラム232が液体流出部231を押圧した圧力が液体噴射部12に伝わることにより、メニスカスが壊れてノズル19から液体が溢れる。
【0145】
つまり、押圧機構251は、液体流出部231内の圧力が、少なくとも1つのメニスカスが壊れる圧力よりも高くなるように、ダイヤフラム232を押圧する。例えば、メニスカスが壊れる圧力は、気液界面における液体側の圧力が気体側の圧力よりも1kPa高くなる圧力である。
【0146】
また、押圧機構251は、ダイヤフラム232を押圧することによって、液体流入部252内の圧力に関わらず開閉弁255を開弁状態にする。この場合、押圧機構251は、加圧機構31が液体を加圧する圧力に前述の所定値を加えた圧力がダイヤフラム232に加わった場合に発生する押圧力よりも大きな押圧力でダイヤフラム232を押圧する。
【0147】
そして、押圧機構251がダイヤフラム232を押圧することによる開閉弁255の開弁状態において、制御部180は、減圧部43を定期的に駆動することにより、加圧機構31により加圧された所定量の液体を液体噴射部12に供給する。すなわち、減圧部43の駆動に伴って負圧室42が減圧されると、可撓性部材37はポンプ室41の容積を増大させる方向に移動する。
【0148】
すると、液体供給源13からポンプ室41に液体が流入する。そして、減圧部43による減圧が解除されると、可撓性部材37は付勢部材44の付勢力によりポンプ室41の容積を減少させる方向に付勢される。すなわち、ポンプ室41内の所定量の液体は、可撓性部材37を介して付勢部材44の付勢力により加圧され、第2一方向弁40を通過して液体供給流路27の下流に向かって送られて液体噴射部12に供給される。
【0149】
押圧機構251がダイヤフラム232を押圧している間は開閉弁255の開弁状態が維持されるため、この状態で加圧機構31が所定量の液体を加圧すると、その加圧力が液体流入部252、連通経路254、液体流出部231を介して液体噴射部12に伝わり、ノズル19から液体が排出される排出動作である加圧クリーニングが行われる。すなわち、加圧機構31が液体を加圧することにより、加圧状態の所定量の液体を液体噴射部12に供給してノズル19から液体受け部131に排出させる。
【0150】
そして、ノズル19から所定量の液体が排出されると、ノズル19からの液体の排出が停止される。すなわち、加圧機構31は、所定量の加圧された液体をノズル19から排出させると、この液体の排出に伴って供給する液体の加圧のレベルが低下し、やがてノズル19から液体が排出されない程度の加圧レベルになる。
【0151】
その後、圧力調整部210の第1バルブV1及び第3バルブV3が開弁されるとともに第2バルブV2及び第4バルブV4が閉弁されることで、圧力接続部211から空気が吸引されて圧力調整室220が減圧される。
【0152】
これにより、膨らんでいた可撓壁221が萎んで凹んだ状態になる。すると、レバー233がねじりばね235の付勢力によって取付部218との接触部分である支点を回動中心として回動して元の位置に戻る。すなわち、レバー233の押付部237がダイヤフラム232から離れた状態になる。
【0153】
すると、受圧部258とともにダイヤフラム232が下流側付勢部材260の付勢力によって元の位置に戻るとともに、開閉弁255が上流側付勢部材259の付勢力によって移動して閉弁状態になる。こうして、加圧機構31が設けられる上流と液体噴射部12が設けられる下流とが開閉弁255によって連通しなくなり、加圧された液体が液体噴射部12に供給できなくなることで、排出停止動作が行われる。
【0154】
排出停止動作を行った後は、液体噴射部12のノズル面18には多量の液体が付着している。そのため、制御部180は、第1実施形態と同様に、加速動作及び停止動作が行わせる。その後、制御部180が払拭動作を行わせることで、液体噴射部12のノズル19において、正常なメニスカスが形成される。
【0155】
本実施形態の効果について説明する。
(8)液体噴射装置11において、押圧機構251は、圧力調整部210が圧力調整室220内の圧力を調整して可撓壁221によりレバー233に回動力を付与することで、レバー233を回動させて、押付部237によるダイヤフラム232の第2の面232b側の押圧を行う。このため、レバー比や形状等のレバー233の仕様を変更するだけで、加圧力や大きさ等の圧力調整室220の仕様を変更することなく押付部237による押圧力を変更することができる。すなわち、押付部237による必要な押圧力が変化しても、レバー233の仕様を変更するだけで、圧力調整室220の仕様を変更することなく対応することができるので、汎用性を高めることができる。
【0156】
(9)液体噴射装置11において、レバー233に可撓壁221による回動力が付与されない状態では、押付部237がダイヤフラム232から離れている。このため、レバー233の押付部237がダイヤフラム232に接触することに起因する圧力調整機構250の動作不良の発生を抑制できる。
【0157】
(10)液体噴射装置11において、押圧機構251は、ダイヤフラム232における受圧部258が接触する領域をレバー233の押付部237によって押圧する。このため、ダイヤフラム232における受圧部258の周囲の領域である外側領域を液体流出部231内に変形させないように、押付部237によってダイヤフラム232を押圧することができる。そして、押付部237によるダイヤフラム232の押圧を解除した後には、ダイヤフラム232における受圧部258の外側領域が液体流出部231の容積が大きくなる方向に移動して押圧前の状態に復帰するので、ノズル19から気泡や液体が引き込まれることを抑制できる。
【0158】
(11)液体噴射装置11において、押圧機構251は、圧力調整部210が圧力調整室220内の圧力を大気圧よりも高い圧力に調整することで、レバー233の押付部237によってダイヤフラム232を押圧する。このため、圧力調整室220内の圧力を大気圧よりも高い圧力に調整するだけで、レバー233の押付部237によってダイヤフラム232を押圧することができる。
【0159】
(12)液体噴射装置11において、押圧機構251は、圧力調整部210が圧力調整室220内の圧力を押付部237によるダイヤフラム232の押圧時の圧力調整室220内の圧力よりも低い圧力に調整することで、レバー233の押付部237によるダイヤフラム232の押圧を解除する。このため、レバー233の押付部237によるダイヤフラム232の押圧状態を容易に解除することができる。
【0160】
(13)液体噴射装置11において、回動力付与部は、圧力調整室220の一部を形成する可撓壁221であり、レバー233に接触することによりレバー233に回動力を付与する。このため、圧力調整室220の一部を形成する可撓壁221を、レバー233に回動力を付与する回動力付与部として好適に機能させることができる。
【0161】
(14)液体噴射装置11において、加圧機構31は、押圧機構251がダイヤフラム232を押圧することによる開閉弁255の開弁状態において液体を加圧することで、加圧状態の液体を液体噴射部12に対して供給する。このため、開閉弁255を強制的に開弁した状態で加圧機構31によって液体を加圧することで加圧状態の液体を液体噴射部12に供給してノズル19から排出させる排出動作を行うことができる。
【0162】
(15)液体噴射装置11は、加圧機構31によって液体が加圧された状態で、押圧機構251によるダイヤフラム232の押圧を解除して開閉弁255を閉弁状態にする。このため、加圧クリーニング後にノズル19から気泡や液体が引き込まれることを抑制できる。
【0163】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図18に示すように、液体噴射装置11は、圧力調整機構35を備えない液体噴射装置11Aであってもよい。この液体噴射装置11Aは、液体を貯留する液体供給源の一例であるメインタンク301と、メインタンク301から供給された液体を貯留するサブタンク302と、液体を噴射する液体噴射部12とを備えている。また、液体噴射装置11Aは、メインタンク301とサブタンク302とを接続する第1流路311と、サブタンク302と液体噴射部12とを個別に接続する第2流路312及び第3流路313とを備えている。また、この液体噴射装置11Aは、第1流路311に配置され、メインタンク301からサブタンク302に向けて液体を流動させる第1供給ポンプ321と、第2流路312に配置され、サブタンク302から液体噴射部12に向けて液体を流動させる第2供給ポンプ322とを備えている。さらに、この液体噴射装置11Aは、サブタンク302に接続され、サブタンク302の内部と外部の大気との連通状態を切り替える大気開放弁331と、第3流路313に配置され、液体の流動を許容したり規制したりする切換弁332とを備えている。
【0164】
また、液体噴射装置11Aでは、サブタンク302と液体噴射部12との鉛直方向Zにおける位置関係は、サブタンク302の液面と液体噴射部12のノズル19の液面との水頭差によって、液体噴射部12内の圧力、より詳しくはノズル19内の圧力が負圧に維持できる位置関係とされている。
【0165】
そして、この液体噴射装置11Aにおいて、印刷動作を行う場合には、アクチュエーター24の駆動に基づいて、液体噴射部12のノズル19から液体が噴射される。また、印刷動作時には、切換弁332が開弁状態とされることで、液体噴射部12から噴射された液体量に相当する量の液体がサブタンク302から供給される。印刷動作を継続することで、サブタンク302に貯留される液体量が減少すると、第1供給ポンプ321が駆動され、メインタンク301からサブタンク302に液体が供給される。なお、印刷動作時には、大気開放弁331が大気開放状態とされ、第2供給ポンプ322が停止される。
【0166】
一方、この液体噴射装置11Aにおいて、排出動作を行う場合には、切換弁332が閉弁された状態で、第2供給ポンプ322が駆動される。このため、第2流路312を介して、液体噴射部12内に加圧された液体が供給されることにより、液体噴射部12のノズル19から液体が排出される。
【0167】
・また、
図19に示すように、液体噴射装置11は、圧力調整機構35を備えない液体噴射装置11Bであってもよい。この液体噴射装置11Bは、液体を貯留する液体供給源の一例であるメインタンク401と、メインタンク401から供給された液体を貯留するサブタンク402と、液体を噴射する液体噴射部12とを備えている。液体噴射装置11Bは、メインタンク401とサブタンク402とを接続する第1流路411と、サブタンク402と液体噴射部12とを接続する第2流路412と、サブタンク402の液面よりも高い位置に接続される第3流路413とを備えている。また、この液体噴射装置11Bは、第1流路411に配置され、メインタンク401からサブタンク402に向けて液体を流動させる供給ポンプ421と、第3流路413に配置され、サブタンク402内の圧力を調整する圧力調整ポンプ422と、サブタンク402内の圧力を検出する圧力検出部423とを備えている。さらに、この液体噴射装置11Bは、メインタンク401とサブタンク402との連通状態を切り替える第1切換弁431と、サブタンク402と液体噴射部12との連通状態を切り替える第2切換弁432と、サブタンク402と圧力調整ポンプ422と大気との接続状態を切り替える三方弁433とを備えている。なお、第1切換弁431は第1流路411に配置され、第2切換弁432は第2流路412に配置され、三方弁433は第3流路413に配置されている。
【0168】
そして、この液体噴射装置11Bにおいて、印刷動作を行う場合には、アクチュエーター24の駆動に基づいて、液体噴射部12のノズル19から液体が噴射される。また、印刷動作時には、サブタンク402と圧力調整ポンプ422とが連通するように三方弁433が切り替えられる。また、第1切換弁431が閉弁されることで、メインタンク401とサブタンク402とが非接続状態とされる。そして、圧力検出部423の検出結果に基づいて、サブタンク402が所定の圧力となるように圧力調整ポンプ422が駆動される。こうして、印刷動作時には、液体噴射部12のノズル19内の圧力を所定の負圧に維持しつつ、液体噴射部12に液体が供給される。印刷動作を継続することで、サブタンク402に貯留される液体量が減少すると、供給ポンプ421が駆動され、メインタンク401からサブタンク402に液体が供給される。なお、サブタンク402への液体の供給時には、第1切換弁431が開弁され、第2切換弁432が閉弁され、サブタンク402内が大気に連通するように三方弁433が切り替えられる。
【0169】
一方、この液体噴射装置11Bにおいて、排出動作を行う場合には、サブタンク402を大気及び圧力調整ポンプ422に連通しないように三方弁433が切り替えられる。また、第2切換弁432が開弁されることで、サブタンク402と液体噴射部12とが接続状態とされる。そして、第1切換弁431が開弁された状態で、供給ポンプ421を駆動し、サブタンク402を介して液体噴射部12に加圧された液体を供給することで、液体噴射部12から液体が排出される。
【0170】
なお、この液体噴射装置11Bでは、次のように排出動作を行うこともできる。すなわち、排出動作を行う場合には、サブタンク402と圧力調整ポンプ422とが連通するように三方弁433が切り替えられる。また、第1切換弁431が閉弁されることで、メインタンク401とサブタンク402とが非接続状態とされる。そして、圧力調整ポンプ422を駆動することで、サブタンク402の内部に気体を送出し、サブタンク402の内部を加圧する。こうして、液体噴射部12に加圧された液体が供給され、液体噴射部12から液体が排出される。
【0171】
・
図20に示すように、払拭機構133は、引き出し部162と払拭部161とが走査方向Xsに並んで配置されてもよい。走査方向Xsにおいて、引き出し部162は、液体受け部131と払拭部161との間に設けられてもよい。流体噴射機構174は、走査方向Xsにおいて引き出し部162と払拭部161との間に設けられてもよい。例えば、制御部180は、液体噴射部12を加圧クリーニング位置CPにおいて停止させた状態で排出動作として加圧クリーニングを行わせる。その後、制御部180は、液体噴射部12を加圧クリーニング位置CPに位置させたまま傾斜動作及び水平動作を行わせてもよい。制御部180は、移動動作を行わせながら流体噴射動作及び払拭動作を行わせてもよい。すなわち、制御部180は、加圧クリーニング位置CPに位置する液体噴射部12を走査方向Xsに移動させ、払拭領域WAを通過させてもよい。制御部180は、引き出し部162の上方を通過する液体噴射部12のノズル面18に向かって流体噴射機構174から流体を噴射させ、流体噴射動作を行わせてもよい。払拭領域WAは、走査方向Xsに移動する液体噴射部12のノズル面18が払拭部161に接触する領域である。液体噴射部12は、払拭領域WAを通過することでノズル面18が払拭される。この時、払拭部161は、複数のノズル列Lが並ぶ方向にノズル面18を払拭する。
【0172】
・液体噴射部12を移動させて払拭動作を行わせる場合、払拭機構133は、ベース部143及びレール144を備えない構成としてもよい。すなわち、保持部142は、移動不能に配置されてもよい。
【0173】
・流体噴射機構174は、噴射口175から空気などの気体と、水などの液体と、を別々に噴射可能としてもよい。流体噴射機構174は、噴射口175の向きを変更可能に設けてもよい。例えば、流体噴射機構174は、ノズル面18に向かって気体を噴射し、払拭部161に向かって液体を噴射してもよい。すなわち、流体噴射機構174は、払拭部161にワイピング液を供給してもよい。払拭機構133は、湿潤した払拭部161によりノズル面18を払拭してもよい。
【0174】
・
図21に示すように、制御部180は、ノズル面18が引き出し部162と対向する位置で傾斜動作を行わせてもよい。傾斜動作に伴ってノズル面18から滴下した液体は、引き出し部162で受容してもよい。液体噴射部移動機構115が、払拭部161に近い方の端を持ち上げるように液体噴射部12を傾斜させると、ノズル面18に付着した液体は、払拭部161から遠い方の端に向かって払拭部161から離れるように移動する。したがって、引き出し部162は、払拭部161に近い領域より、離れた領域においてノズル面18から滴下した液体を受容しやすい。これにより、引き出し部162で受容した液体が、帯状部材141内を拡散して払拭部161まで到達する虞を低減できる。引き出し部162は、鉛直方向Zに移動可能に設けてもよい。例えば、払拭機構133は、保持部142を鉛直方向Zに移動可能に設けてもよいし、第1水平ローラー159及び第2水平ローラー160を鉛直方向Zに移動可能に設けてもよい。液体噴射部移動機構115は、液体噴射部12を鉛直方向Zに移動させてもよい。制御部180は、傾斜状態のノズル面18と引き出し部162とを相対移動させて近づけ、ノズル面18に付着した液体と、引き出し部162と、を接触させてもよい。液体に吸収性を有する帯状部材141を接触させた場合には、液体を帯状部材141に引き込むことができる。帯状部材141が吸収性を有しない場合でも、液体の表面張力のバランスを崩して液体を滴下しやすくできる。
【0175】
・
図22に示すように、液体噴射部移動機構115は、ノズル面18においてガイド軸122から離れた方の端を鉛直方向Zに下げるように回転させ、液体噴射部12に
図22に示す傾斜姿勢をとらせてもよい。液体噴射部移動機構115は、ノズル面18が引き出し部162と対向する状態で、ノズル面18において搬送方向Yfの下流の端を引き出し部162に近づけ、ノズル面18を移動して集まった液体を引き出し部162に接触させてもよい。払拭機構133は、払拭部161を引き出し部162より搬送方向Yfの上流に設けてもよい。払拭機構133は、第1払拭方向W1に移動してノズル面18を払拭してもよい。この場合、搬送方向Yfの上流が払拭始め側になり、搬送方向Yfの下流が払拭終わり側になる。
【0176】
・制御部180は、液体噴射部12を受容位置に位置する引き出し部162の上方に位置させた状態で排出動作を行わせてもよい。すなわち、引き出し部162を液体受け部として機能させてもよい。この場合、メンテナンスユニット130は、液体受け部131を備えない構成としてもよい。引き出し部162は、フラッシングにより噴射される液体を受容してもよい。
【0177】
・払拭機構133は、引き出し部162を有していない構成としてもよい。
・払拭部161は、液体を吸収しないゴムなどの弾性部材によって形成してもよい。
・払拭機構133は、レール144に付着した液体を清掃する清掃部材を備えてもよい。清掃部材は、保持部142に設けられ、保持部142の移動に伴ってレール144を清掃してもよい。
【0178】
・
図8に示すフローチャートにおいて、制御部180は、払拭動作を行った後にフラッシングを行わせてもよい。これによれば、液体噴射部12のノズル19内に正常なメニスカスを形成しやすくできる。
【0179】
・
図8に示すフローチャートにおいて、制御部180は、排出停止動作を行った後であって払拭動作を行う前に、アクチュエーター24を駆動してもよい。これによれば、液体噴射部12内の圧力が高く、ノズル19内の気液界面が不安定な状態において、アクチュエーター24を駆動して気液界面を壊すことにより、ノズル19から液体を排出させることで液体噴射部12内の圧力を低下させることができる。
【0180】
・
図8に示すフローチャートにおいて、制御部180は、排出停止動作を行った後であって払拭動作を行う前に、アクチュエーター24を駆動してフラッシングを行ってもよい。これによれば、液体噴射部12内の圧力が高い状態において、フラッシングを行うことにより、ノズル19から液体を排出させることで液体噴射部12内の圧力を低下させることができる。この場合、払拭動作を行う前に行う払拭前フラッシングは、ノズル19内の気液界面が不安定な状態において行うことを考慮して、アクチュエーター24の駆動を払拭動作の後に行う通常のフラッシングと異ならせてもよい。その結果、例えば、払拭前フラッシングにより吐出される液滴の大きさが通常のフラッシングと比較して小さくてもよい。また、例えば、払拭前フラッシングにより吐出される液滴の吐出速度が通常のフラッシングと比較して速くてもよい。なお、払拭前フラッシングにより排出される液体は、移動動作を行う前に行う場合は液体受け部131に受容させてもよく、移動動作の後に行う場合は引き出し部162に受容させてもよい。
【0181】
・液体噴射部移動機構115は、キャリッジ124の姿勢を変更することにより、液体噴射部12の姿勢を変更してもよいし、キャリッジ124に対して液体噴射部12の姿勢を変更してもよい。
【0182】
・外力付与機構173は、液体噴射部12もしくはキャリッジ124に側方から別部材を接触させて衝撃を加えることにより、ノズル面18に付着する液体にノズル面18に沿う方向の外力を非接触で作用させてもよい。例えば、払拭機構133をキャリッジ124に接触させて衝撃を加えてもよい。
【0183】
・液体噴射部12は、傾斜姿勢で液体を噴射して媒体113に印刷してもよい。制御部180は、水平姿勢で排出動作を行わせた後、媒体113に印刷する姿勢である傾斜姿勢をとらせてもよい。その後、制御部180は、液体噴射部12を水平姿勢に戻し、払拭動作及びフラッシングなどのメンテナンス動作を行わせてもよい。
【0184】
・制御部180は、傾斜姿勢の液体噴射部12に排出動作を行わせてもよい。制御部180は、傾斜動作、排出動作、水平動作、及び払拭動作を順に行わせてもよい。
・押圧機構48は、膨張収縮部67を備えることなく、空気室72の圧力を調整することで、ダイヤフラム56を押圧してもよい。詳しくは、押圧機構48は、空気室72の圧力を高くすることでダイヤフラム56を液体流出部51の容積が小さくなる方向に変位させる一方、空気室72の圧力を低くすることでダイヤフラム56を液体流出部51の容積が大きくなる方向に変位させてもよい。なお、この構成を採用する場合には、圧力低下動作として、空気室72の圧力を大気圧未満の負圧とすることで、液体噴射部12内の圧力を低下させてもよい。
【0185】
・制御部180は、排出動作として、吸引機構134に吸引クリーニングを行わせてもよい。この場合、吸引キャップ164がノズル19から排出される液体を受ける液体受け部として機能する。吸引クリーニングは、吸引キャップ164が液体噴射部12との間に形成される空間内を減圧し、ノズル19から液体を排出させると共に、排出された液体を吸引キャップ164により受ける。そのため、吸引キャップ164に囲まれる空間内に位置するノズル面18には、吸引クリーニングに伴って液体が付着することがある。制御部180は、液体噴射部12を吸引機構134の鉛直上方の位置に停止させた状態で吸引クリーニングを行わせた後、液体噴射部12を払拭領域WAに移動させて傾斜動作、流体噴射動作、水平動作、及び払拭動作を行わせてもよい。
【0186】
・流体噴射機構174は、ノズル面18に対して平行に流体を噴射してもよいし、ノズル面18に対して斜めに流体を噴射してもよいし、ノズル面18に対して垂直に流体を噴射してもよい。流体噴射機構174から噴射された流体は、ノズル面18に当たって進行方向が変更され、ノズル面18に付着した液体をノズル面18に沿って押す。
【0187】
・外力付与機構173は、液体噴射部移動機構115と、流体噴射機構174と、のうち、何れか一方を備える構成としてもよい。
・液体噴射部移動機構115は、ノズル列L同士に高低差が発生する方向にノズル面18を傾斜させてもよい。
【0188】
・流体噴射機構174は、払拭終わり側から払拭始め側に向けて流体を噴射してもよい。
・液体噴射部移動機構115は、払拭終わり側が払拭始め側より高くなるように傾斜させてもよい。
【0189】
・液体噴射部移動機構115がノズル面18を傾斜させる度合は、任意に変更してもよい。例えば、傾斜姿勢のノズル面18に流体を噴射する場合には、流体を噴射しない場合に比べ、傾斜姿勢における水平面に対する傾斜を小さくしてもよい。
【0190】
・液体噴射装置11は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する装置がある。液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体噴射装置は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ、光学レンズ、などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置であってもよい。液体噴射装置は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置であってもよい。
【0191】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)液体噴射装置は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記ノズルから排出される前記液体を受ける液体受け部と、前記ノズル面を払拭可能な払拭部を有する払拭機構と、前記ノズル面に付着する前記液体に該ノズル面に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構と、前記外力付与機構を駆動して前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させた後に、前記払拭部で前記ノズル面を払拭する払拭動作を行わせる制御部と、を備える。
【0192】
この構成によれば、制御部は、払拭部でノズル面を払拭する払拭動作の前に、外力付与機構により液体噴射部に付着する液体に対して外力を付与する。外力が付与された液体は、ノズル面を移動したり、液滴同士が係合したりしてノズル面から滴下しやすくなり、ノズル面に付着する液体を減らすことができる。したがって、ノズル面に付着する液体に外力を作用させた後に払拭動作を行うことで、払拭動作を良好に行うことができる。
【0193】
(B)液体噴射装置において、前記外力付与機構は、前記液体噴射部の姿勢を変化可能な液体噴射部移動機構を有し、前記制御部は、前記液体噴射部移動機構を駆動し、水平面に対する前記ノズル面の傾斜を液体噴射時より大きくした後に、前記払拭部に前記払拭動作を行わせてもよい。
【0194】
この構成によれば、液体噴射部移動機構は、水平面に対するノズル面の傾斜を液体噴射時より大きくする。これにより、ノズル面に沿う方向における重力の成分が大きくなるため、ノズル面に付着した液体は、滴下しやすくなる。したがって、ノズル面に付着する液体を減らした後に行う払拭動作を良好に行うことができる。
【0195】
(C)液体噴射装置において、前記液体噴射部移動機構は、前記ノズル面を、前記払拭部の前記払拭動作において払拭始め側が払拭終わり側より高くなるように傾斜させてもよい。
【0196】
ノズル面を傾斜させると、ノズル面に付着する液体は、重力の作用により下方に集まりやすい。その点、この構成によれば、液体噴射部移動機構は、払拭始め側が払拭終わり側より高くなるようにノズル面を傾斜させる。すなわち、液体は、ノズル面において払拭終わり側に集まりやすいため、払拭部が収集する液体が払拭動作の途中で増加しにくく、払拭動作を良好に行うことができる。
【0197】
(D)液体噴射装置において、前記ノズル面には、列方向に並ぶ複数の前記ノズルによって形成されるノズル列が前記列方向とは異なる方向に並ぶように複数設けられており、前記液体噴射部移動機構は、前記ノズル面を、前記ノズル列内で高低差が発生する方向に傾斜させてもよい。
【0198】
この構成によれば、液体噴射部移動機構は、1つのノズル列を形成するノズル同士で高低差が生じるようにノズル面を傾斜させる。そのため、ノズル面に付着する液体は、ノズル列の列方向に移動しやすい。したがって、例えばノズル列ごとに異なる種類の液体を噴射させる場合でも液体同士が混ざる虞を低減できる。
【0199】
(E)液体噴射装置において、前記ノズル面には、複数の前記ノズルによってノズル列が形成されており、前記液体噴射部移動機構は、前記ノズル列を形成する前記ノズル間での高低差によって前記ノズルにかかる圧力が、該ノズルに形成されるメニスカスが壊れるメニスカス耐圧未満となるように前記ノズル面を傾斜させてもよい。
【0200】
この構成によれば、液体噴射部移動機構は、ノズル列を形成するノズル同士の高低差によってノズルにかかる圧力がメニスカス耐圧未満となるようにノズル面を傾斜させる。したがって、ノズルに形成されるメニスカスは、ノズル面を傾斜させた場合に壊れる虞が低減されノズル内に空気が侵入する虞を低減できる。
【0201】
(F)液体噴射装置において、前記外力付与機構は、流体を噴射可能な流体噴射機構を有し、前記制御部は、前記流体噴射機構を駆動して前記ノズル面に沿う方向に前記流体を噴射させた後に、前記払拭部に前記払拭動作を行わせてもよい。
【0202】
この構成によれば、流体噴射機構は、ノズル面に沿う方向に流体を噴射する。これにより、ノズル面に付着した液体は、滴下しやすくなる。したがって、ノズル面に付着する液体を減らした後に行う払拭動作を良好に行うことができる。
【0203】
(G)液体噴射装置において、前記流体噴射機構は、前記流体を、前記払拭部の前記払拭動作における払拭始め側から払拭終わり側に向けて噴射してもよい。
この構成によれば、流体噴射機構は、払拭始め側から払拭終わり側に向けて流体を噴射する。すなわち、液体は、ノズル面において払拭終わり側に集まりやすいため、払拭部が収集する液体が払拭動作の途中で増加しにくく、払拭動作を良好に行うことができる。
【0204】
(H)液体噴射装置のメンテナンス方法は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記ノズルから排出される前記液体を受ける液体受け部と、前記ノズル面を払拭可能な払拭部を有する払拭機構と、前記ノズル面に付着する前記液体に該ノズル面に沿う方向の外力を非接触で作用させるように構成される外力付与機構と、を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、前記外力付与機構により前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させた後に、前記払拭部で前記ノズル面を払拭する。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【0205】
(I)液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記外力付与機構は、水平面に対する前記ノズル面の傾斜を液体噴射時より大きくして前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させてもよい。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【0206】
(J)液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記外力付与機構は、前記ノズル面に沿う方向に流体を噴射させて前記ノズル面に付着する前記液体に前記外力を作用させてもよい。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0207】
11…液体噴射装置、11A…液体噴射装置、11B…液体噴射装置、12…液体噴射部、13…液体供給源、14…供給機構、16…噴射部フィルター、17…共通液室、18…ノズル面、19…ノズル、20…圧力室、21…振動板、22…第1連通孔、23…収容室、24…アクチュエーター、26…装着部、27…液体供給流路、28…循環経路形成部、29…循環ポンプ、31…加圧機構、32…フィルターユニット、33…スタティックミキサー、34…液体貯留部、35…圧力調整機構、37…可撓性部材、38…容積ポンプ、39…第1一方向弁、40…第2一方向弁、41…ポンプ室、42…負圧室、43…減圧部、44…付勢部材、45…ばね、47…圧力調整装置、48…押圧機構、50…液体流入部、51…液体流出部、52…本体部、53…壁部、54…第2連通孔、55…フィルター部材、56…ダイヤフラム、56a…第1の面、56b…第2の面、57…連通経路、59…開閉弁、60…弁部、61…受圧部、62…上流側付勢部材、63…下流側付勢部材、66…圧力調整室、67…膨張収縮部、68…押さえ部材、69…圧力調整部、70…挿通孔、71…開口部、72…空気室、74…加圧ポンプ、75…接続経路、76…検出部、77…流体圧調整部、112…支持台、113…媒体、114…搬送部、115…液体噴射部移動機構、116…本体、117…カバー、118…第1搬送ローラー対、119…第2搬送ローラー対、120…案内板、122…ガイド軸、124…キャリッジ、130…メンテナンスユニット、131…液体受け部、133…払拭機構、134…吸引機構、136…キャッピング機構、138…廃液パン、139…廃液貯留部、141…帯状部材、142…保持部、143…ベース部、144…レール、145…払拭用モーター、146…巻取用モーター、147…動力伝達機構、148…開口、149…貫通孔、151…巻出軸、152…巻出部、153…巻取軸、154…巻取部、155…上流ローラー、156…テンションローラー、157…押圧部、158…規制ローラー、159…第1水平ローラー、160…第2水平ローラー、161…払拭部、162…引き出し部、164…吸引キャップ、165…吸引用保持体、166…吸引用モーター、167…減圧機構、169…放置キャップ、170…放置用保持体、171…放置用モーター、173…外力付与機構、174…流体噴射機構、175…噴射口、180…制御部、200…圧力調整装置、201…空気室形成ユニット、202…圧力調整機構形成ユニット、203…底板部材、204…接続部形成ユニット、205…レバーユニット、206…本体部、207…接続フィルム、208…第1液体接続部、209…第2液体接続部、210…圧力調整部、211…圧力接続部、212…第1液体導出部、213…第2液体導出部、214…圧力供給部、215…本体部、216…空気室フィルム、217…空気導入部、218…取付部、219…凹部、220…圧力調整室、221…可撓壁、222…溝、223…第3連通孔、224…第4連通孔、225…空気流路、226…本体部、227…圧力フィルム、228…第1液体導入部、229…第2液体導入部、230…凹部、231…液体流出部、232…ダイヤフラム、232a…第1の面、232b…第2の面、233…レバー、234…係止部、235…ねじりばね、236…取付孔、237…押付部、238…被押圧部、240…環状管、241…ポンプ、242…接続管、243…第1分岐管、244…第2分岐管、247…壁部、248…第5連通孔、249…フィルター部材、250…圧力調整機構、251…押圧機構、252…液体流入部、254…連通経路、255…開閉弁、256…弁部、257…ロッド部、258…受圧部、259…上流側付勢部材、260…下流側付勢部材、301…メインタンク、302…サブタンク、311…第1流路、312…第2流路、313…第3流路、321…第1供給ポンプ、322…第2供給ポンプ、331…大気開放弁、332…切換弁、401…メインタンク、402…サブタンク、411…第1流路、412…第2流路、413…第3流路、421…供給ポンプ、422…圧力調整ポンプ、423…圧力検出部、431…第1切換弁、432…第2切換弁、433…三方弁、A…供給方向、B…循環方向、Cnt…カウンター、CntTh…判定回数、CP…加圧クリーニング位置、HP…ホームポジション、L…ノズル列、V1…第1バルブ、V2…第2バルブ、V3…第3バルブ、V4…第4バルブ、W1…第1払拭方向、W2…第2払拭方向、WA…払拭領域、Xs…走査方向、Yf…搬送方向、Yr…列方向、Z…鉛直方向。