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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】色変換装置、色変換方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/62 20060101AFI20240228BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H04N1/62
G06T1/00 510
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019227034
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021097315
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大庸
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-309731(JP,A)
【文献】特開2013-164796(JP,A)
【文献】特開2006-133873(JP,A)
【文献】特開2017-098920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/62
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に実行された色調整における色調整対象画像について、当該色調整対象画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する前記色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が記憶された記憶部にアクセス可能な色変換装置であって、
色変換対象画像を取得し、
取得した前記色変換対象画像に含まれる物体の種類を認識し、
前記認識した物体の色情報を取得し、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から取得し、
取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う制御部、
を備える色変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記色変換に用いる色変換テーブルの色変換データを変更した上で、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う請求項1に記載の色変換装置。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された調整内容には、調整を行わないことを含み、
前記制御部は、取得した前記調整履歴に含まれる調整内容が調整を行わないものであった場合は、調整を行わずに前記取得した色変換対象画像の色変換を行う請求項1又は2に記載の色変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、ユーザー操作により前記色調整対象画像に対する色調整が実行された場合、前記色調整対象画像に含まれる物体の種類を認識し、前記認識した物体の種類と、前記認識した物体の色情報と、前記実行された色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴を前記記憶部に記憶させる請求項1~3のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記色調整を行ったユーザーが所定のユーザーであった場合に、前記調整履歴を前記記憶部に記憶させる請求項4に記載の色変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記色調整を行うユーザーが所定のユーザーであった場合に、前記色調整を許可する請求項4又は5に記載の色変換装置。
【請求項7】
前記調整内容は、色調整後の色情報と色調整前の色情報との差分を示す色調整ベクトルである請求項1~6のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から複数取得した場合、前記取得した複数の調整履歴に含まれる調整内容に基づいて、新たな調整内容を算出し、算出した当該新たな調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う請求項1~7のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記認識した複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉する場合、前記複数の物体の種類のうち一の物体の種類を選択し、前記選択した物体の種類に対応する調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う請求項1~8のいずれか一項に記載の色変換装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記認識した複数の物体の種類、大きさ、位置、調整履歴の数、レイヤーの少なくとも一つに基づいて、前記複数の物体の種類の優先度を算出し、算出した前記優先度に基づいて、前記一の物体を選択する請求項9に記載の色変換装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記複数の物体の種類に対応する色についての色変換データが前記色変換テーブルに存在せず、前記複数の物体の種類のそれぞれに対応する色についての色変換データを補間により算出する際に共通して用いられる色変換データの数が所定数以上又は前記補間に用いられる色変換データの数に対して所定の割合以上である場合に、前記複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉すると判断する請求項2を引用する請求項9又は請求項2を引用した請求項9を引用する請求項10に記載の色変換装置。
【請求項12】
過去に実行された色調整における色調整対象画像について、当該色調整対象画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する前記色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が記憶された記憶部にアクセス可能な色変換装置における色変換方法であって、
色変換対象画像を取得する工程と、
取得した前記色変換対象画像に含まれる物体の種類を認識する工程と、
前記認識した物体の色情報を取得し、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から取得する工程と、
取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う工程と、
を含む色変換方法。
【請求項13】
過去に実行された色調整における色調整対象画像について、当該色調整対象画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する前記色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が記憶された記憶部にアクセス可能な色変換装置のコンピューターに、
色変換対象画像を取得する工程と、
取得した前記色変換対象画像に含まれる物体の種類を認識する工程と、
前記認識した物体の色情報を取得し、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から取得する工程と、
取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換装置、色変換方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された画像に色変換処理を施し、色変換処理後の画像を印刷する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、撮影画像から人物画像を切り抜き、この人物画像が証明写真に適した明るさとなるように色変換処理を施した後に背景画像と合成し、合成画像をプリントすることが記載されている。
また、特許文献2には、原画像の指定された位置の画質が予め定め定められた目標値に近づくように画像処理を施して印刷することが記載されている。
【0003】
また、プロフェッショナルプリントの世界では、カラーマネジメントという技術を用いて、プリンターで印刷する際の原稿となる画像の色を、目標となる色見本(刷り物)や色規格に合わせて再現するための色変換が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-219587号公報
【文献】特開2003-111007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印刷業者では、目標となる色規格や色見本等がなく、クライアントに受け入れられる「好ましい色」に調整して印刷物を印刷しなければならない場合がある。しかし、カラーマネジメントは、目標となる色規格や色見本がない場合の色調整に対応しきれていない。そのため、熟練者が目視により感覚で色調整を行っている。一方で、非熟練者(経験の少ないオペレーター)は、色の合格基準、着眼色を判断できないため、適切な色調整を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、非熟練者であっても、目標となる色規格や色見本のない場合の色調整を適切に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
過去に実行された色調整における色調整対象画像について、当該色調整対象画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する前記色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が記憶された記憶部にアクセス可能な色変換装置であって、
色変換対象画像を取得し、
取得した前記色変換対象画像に含まれる物体の種類を認識し、
前記認識した物体の色情報を取得し、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から取得し、
取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う制御部、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記制御部は、取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記色変換に用いる色変換テーブルの色変換データを変更した上で、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記記憶部に記憶された調整内容には、調整を行わないことを含み、
前記制御部は、取得した前記調整履歴に含まれる調整内容が調整を行わないものであった場合は、調整を行わずに前記取得した色変換対象画像の色変換を行う。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、ユーザー操作により前記色調整対象画像に対する色調整が実行された場合、前記色調整対象画像に含まれる物体の種類を認識し、前記認識した物体の種類と、前記認識した物体の色情報と、前記実行された色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴を前記記憶部に記憶させる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記制御部は、前記色調整を行ったユーザーが所定のユーザーであった場合に、前記調整履歴を前記記憶部に記憶させる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、
前記制御部は、前記色調整を行うユーザーが所定のユーザーであった場合に、前記色調整を許可する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の発明において、
前記調整内容は、色調整後の色情報と色調整前の色情報との差分を示す色調整ベクトルである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から複数取得した場合、前記取得した複数の調整履歴に含まれる調整内容に基づいて、新たな調整内容を算出し、算出した当該新たな調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記認識した複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉する場合、前記複数の物体の種類のうち一の物体の種類を選択し、前記選択した物体の種類に対応する調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、
前記制御部は、前記認識した複数の物体の種類、大きさ、位置、調整履歴の数、レイヤーの少なくとも一つに基づいて、前記複数の物体の種類の優先度を算出し、算出した前記優先度に基づいて、前記一の物体を選択する。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項2を引用する請求項9又は請求項2を引用した請求項9を引用する請求項10に記載の発明において、
前記制御部は、前記複数の物体の種類に対応する色についての色変換データが前記色変換テーブルに存在せず、前記複数の物体の種類のそれぞれに対応する色についての色変換データを補間により算出する際に共通して用いられる色変換データの数が所定数以上又は前記補間に用いられる色変換データの数に対して所定の割合以上である場合に、前記複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉すると判断する。
【0018】
請求項12に記載の発明は、
過去に実行された色調整における色調整対象画像について、当該色調整対象画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する前記色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が記憶された記憶部にアクセス可能な色変換装置における色変換方法であって、
色変換対象画像を取得する工程と、
取得した前記色変換対象画像に含まれる物体の種類を認識する工程と、
前記認識した物体の色情報を取得し、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から取得する工程と、
取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う工程と、
を含む。
【0019】
請求項12に記載の発明のプログラムは、
過去に実行された色調整における色調整対象画像について、当該色調整対象画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する前記色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が記憶された記憶部にアクセス可能な色変換装置のコンピューターに、
色変換対象画像を取得する工程と、
取得した前記色変換対象画像に含まれる物体の種類を認識する工程と、
前記認識した物体の色情報を取得し、前記認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を前記記憶部から取得する工程と、
取得した前記調整履歴に含まれる調整内容を用いて、前記取得した色変換対象画像の色変換を行う工程と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、非熟練者であっても、目標となる色規格や色見本のない場合の色調整を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】印刷システムのシステム構成図である。
図2】コントローラーの機能的構成を示すブロック図である。
図3】履歴データベースのデータ構造を示す図である。
図4図2のCPUにより実行される色調整処理の流れを示すフローチャートである。
図5】印刷用画像データと、印刷用画像データから画像認識により認識される物体の例を示す図である。
図6】色調整前後の色変換の流れを示す図である。
図7】色変換データを補間により算出する際に用いられる色変換テーブルの格子点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0023】
<印刷システム100の構成>
まず、本発明の実施形態における印刷システム100の構成について説明する。
図1に、印刷システム100のシステム構成を示す。図1に示すように、印刷システム100は、印刷指示端末10、コントローラー20、プリンター30を備え、各装置は、通信ネットワークNを介してデータ通信可能に接続されている。なお、各装置の台数は、特に限定されない。
【0024】
印刷指示端末10は、プリンタードライバープログラムや専用のソフトウェアを用いて、コントローラー20に対して印刷指示を行う。具体的には、印刷指示端末10は、ユーザー操作に応じて、ジョブの情報としてコントローラー20が解釈可能なページ記述言語(PDL:Page Description Language)等で記述された印刷データを生成し、生成した印刷データをコントローラー20に送信する。
【0025】
コントローラー20は、印刷指示端末10から送信された印刷データに対してラスタライズ(RIP処理)を行って印刷用画像データを作成し、印刷用画像データに色変換、スクリーニング等の画像処理を行ってプリンター30に送信する。すなわち、コントローラー20は、本発明の色変換装置として機能する。
なお、コントローラー20は、プリンター30に内蔵されていてもよい。また、コントローラー20とプリンター30とは、PCI接続等、専用線を介して接続されていてもよい。
【0026】
プリンター30は、コントローラー20から受信したビットマップ形式の画像データ(CMYKデータ)に基づいて印刷を行う画像形成装置である。プリンター30における印刷方式としては、電子写真方式やインクジェット方式等の各種の印刷方式を採用することができる。
【0027】
図2に、コントローラー20の機能的構成を示す。図2に示すように、コントローラー20は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、記憶部23、操作部24、表示部25、通信部26等を備え、各部はバス27により接続されている。
【0028】
CPU21は、コントローラー20の各部の処理動作を統括的に制御する制御部である。CPU21は、操作部24から入力される操作信号又は通信部26により受信される指示信号に応じて、記憶部23に格納されている各種処理プログラムを読み出してRAM22に展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0029】
例えば、CPU21は、印刷指示端末10から受信した印刷データ(PDLデータ)を解析し、RIP処理プログラム230との協働によりビットマップ形式の印刷用画像データ(CMYK値)に展開する(RIP(Raster Image Processer)処理)。
【0030】
また、CPU21は、色調整処理プログラム231との協働により後述する色調整処理(図4参照)を実行する。
【0031】
RAM22は、CPU21により実行される各種処理プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0032】
記憶部23は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等の記憶装置からなり、各種処理プログラムや各種処理に関するデータ等を記憶する。
例えば、記憶部23は、RIP処理プログラム230、色調整処理プログラム231、ターゲットプロファイル232、プリンタープロファイル233、履歴データベース234等を記憶する。
【0033】
ターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233は、色変換処理に用いられる色変換パラメータ(色変換テーブル)の一例であり、一又は複数記憶されている。
ターゲットプロファイル232は、モニターやプリンター等のデバイスに依存するデバイス値(CMYK値、RGB値等)を、例えば、JapanColor等のデバイスに依存しない色彩値(XYZ値、L値等)に変換するための、デバイス値と色彩値との対応関係を示す色変換データが格納された色変換テーブルである。
プリンタープロファイル233は、色彩値をプリンター30のデバイス値に変換するための、色彩値とデバイス値との対応関係を示す色変換データが格納された色変換テーブルである。
なお、本実施形態では、色彩値がL値である場合を例にとり説明する。
【0034】
履歴データベース234は、過去に実行された色調整の調整履歴群を記憶するためのデータベースである。図3に、履歴データベース234のデータ構造を示す。図3において行がレコード、列がフィールドを示す。色調整が行われると、少なくとも一つのレコード(行)が生成されて、色調整に対応するフィールドの値が記憶される。図3に示すように、履歴データベース234は、レコードごとに、物体の種類、色情報(CMYK、色調整前L)、調整内容(色調整ベクトル)を対応付けた調整履歴群を記憶する。
【0035】
また、記憶部23には、印刷指示端末10から受信した印刷データ、RIP済みの印刷用画像データ等が記憶されている。
また、記憶部23には、ユーザー情報(コントローラー20を使用可能なユーザーの認証情報、及び各ユーザーが所定の基準を満たす熟練者か否かを示す情報)が記憶されている。
【0036】
操作部24は、カーソルキー、文字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、ユーザーによる操作入力を受け付ける。操作部24は、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号をCPU21に出力する。
【0037】
表示部25は、LCD(Liquid Crystal Display)を備え、CPU21からの指示に従って、各種操作画面や各種処理結果を表示する。
【0038】
通信部26は、通信ネットワークNを介して外部装置との間でデータの送受信を行う。
【0039】
<コントローラー20の動作>
次に、本実施形態におけるコントローラー20の動作について説明する。
図4は、本発明における熟練者による色調整に応じて履歴データベース234に履歴を登録する処理と、履歴データベース234に登録された履歴に基づいて色変換を行う処理を示すフローチャートである。前者が図4の左側、後者が図4の右側のフローに対応する。図4に示す処理は、CPU21と色調整処理プログラム231との協働により実行される。
なお、コントローラー20においては、ユーザー認証が行われ、使用を許可されたユーザーがログインして操作を行っているものとする。
【0040】
まず、CPU21は、記憶部23のユーザー情報を参照し、ログイン中のユーザーが熟練者であるか否かを判断する(ステップS1)。
【0041】
ログイン中のユーザーが熟練者であると判断した場合(ステップS1;YES)、熟練者による色調整に応じて履歴データベース234に履歴を登録する処理に関するフローに進む。具体的には、CPU21は、選択されたジョブの印刷用画像データを記憶部23から取得し、取得した印刷用画像データに基づいて、テスト印刷を行う(ステップS2)。
ステップS2において、CPU21は、記憶部23に記憶されているターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233に基づいて、印刷用画像データに色変換を行い、色変換済みの画像データを通信部26によりプリンター30に送信し、テスト印刷を行わせる。なお、テスト印刷では、ジョブで指定された全ての印刷を行う必要はなく、例えば、1部のみを印刷する。
【0042】
次いで、CPU21は、ユーザー(熟練者)がテスト印刷の印刷物に満足したか否かを判断する(ステップS3)。
例えば、CPU21は、表示部25に「本印刷を実行」ボタンと「色調整を行う」ボタンの2つのボタンを表示する。操作部24により「本印刷実行」ボタンが押下された場合、CPU21は、ユーザーがテスト印刷の印刷物に満足したと判断する。操作部24により「色調整を行う」ボタンが押下された場合、CPU21は、ユーザーがテスト印刷の印刷物に満足していないと判断する。
【0043】
ユーザーがテスト印刷の印刷物に満足していないと判断した場合(ステップS3;NO)、CPU21は、表示部25に色調整画面(図示せず)を表示して、ユーザー操作による色調整を受け付ける(ステップS4)。
例えば、ユーザーは、テスト印刷の印刷物を見て、調整すべきと判断した物体の色が好ましくなるように、色調整画面を介してターゲットプロファイル232を調整する。
ステップS4の処理が終了すると、CPU21は、ステップS2に戻り、調整したターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233に基づいて、印刷用画像データに色変換を行い、色変換済みの画像データを通信部26によりプリンター30に送信し、テスト印刷を行わせる。
CPU21は、ステップS3においてユーザーがテスト印刷の印刷物に満足したと判断するまで、ステップS2~ステップS4の処理を繰り返し実行する。
【0044】
ステップS3において、ユーザーがテスト印刷の印刷物に満足したと判断した場合(ステップS3;YES)、CPU21は、本印刷を行う(ステップS5)。
ステップS5においては、色調整を行うことなくユーザーがテスト印刷の印刷物に満足した場合、(調整していないオリジナルの)ターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233に基づいて、印刷用画像データに色変換を行い、色変換済みの画像データを通信部26によりプリンター30に送信し、本印刷を行わせる。色調整の結果、ユーザーがテスト印刷の印刷物に満足した場合、調整したターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233に基づいて、印刷用画像データに色変換を行い、色変換済みの画像データを通信部26によりプリンター30に送信し、本印刷を行わせる。ここで、本印刷では、ジョブにより指示された全ての印刷を行う。
【0045】
次いで、CPU21は、印刷用画像データに画像認識を行い、印刷用画像データに含まれる物体の種類を認識する(ステップS6)。
画像認識は、例えば、大量の物体画像データと物体の種類とのデータセットを学習した機械学習モデルを使用して行うことができる。CPU21は、印刷用画像データから画像認識により認識された各物体の種類を取得する。また、何も認識できなかった領域は物体の種類をUnknownとする。結果として、画像内の全てのピクセルに物体の種類の情報が割り当てられる。図5に、印刷用画像データと、当該印刷用画像データから画像認識により認識される物体の例を示す。
【0046】
次いで、CPU21は、認識した各物体について、色調整前のL値の中央値を色調整前Lとして取得する(ステップS7)。
【0047】
ここで、図6に、色変換の流れを示す。図6の上段は熟練者の調整前の色変換の流れ、図6の下段は熟練者の調整後の色変換の流れを示す。
印刷用画像データのCMYK値は、まず、色調整前のターゲットプロファイル232によりCMYK値からL値に変換される。
【0048】
次いで、プリンタープロファイル233を用いて、L値がCMYK値に変換され、変換後のCMYK値に基づいて印刷物が印刷される。
【0049】
ステップS7において、CPU21は、まず、認識した各物体の座標から印刷用画像データにおける各物体の領域を求め、領域内の各画素のCMYK値を取得する。次いで、各物体の領域から取得したCMYK値を色調整前のターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233を用いてプリンター30での印刷用のCMYK値に色変換する。次いで、プリンター30での印刷用のCMYK値をプリンタープロファイル233を用いてL値に変換する。そして、各物体の領域において得られたL値の色分布から中央値を求め、各物体の色調整前Lとして取得する。なお、中央値の代わりに、平均値を用いてもよい。
【0050】
ここで、各プロファイルは離散した値の色変換データを格納しているため、各プロファイルに格納されていない値の色変換データについては、格納されている色変換データを用いた補間計算により算出する。そのため、印刷用画像データをターゲットプロファイル232により変換して得られるL値と、プリンター30での印刷用のCMYK値に対応するL値とは一致しない場合がある。ユーザーは、プリンター30から出力された印刷物の画像を見て色調整の要否を判断して調整を行う。そこで、ステップS7では、プリンタープロファイル233を用いて、プリンター30での印刷用のCMYK値に対応するL値を算出して、色調整前Lを取得する。なお、プリンター30での印刷用のCMYK値に対応するL値は、プリンター30から出力された印刷物をプラテンスキャナーもしくはインラインスキャナーにより読み取って得られたRGB値をスキャナープロファイルを用いてL値に変換することにより取得してもよい。また、スキャナーと分光光度計を組み合わせて印刷物のL値を取得する測色装置を用いてプリンター30での印刷用のCMYK値に対応するL値を取得してもよい。
【0051】
次いで、CPU21は、色調整内容を示す色調整ベクトルを取得する(ステップS8)。
ステップS8において、CPU21は、ステップS7で取得した色調整前Lのそれぞれに対応する座標の画素のCMYK値を取得し、図6に示すように、色調整後のターゲットプロファイル232とプリンタープロファイル233を用いて、取得したCMYK値をプリンター30での印刷用のCMYK値に色変換する。次いで、得られたCMYK値をプリンタープロファイル233を用いてL値に変換する(色調整後L)。そして、取得した色変換後Lから色調整前L*a*b*を減算したものを色調整ベクトルとして取得する。すなわち、色調整ベクトルは、色調整前の物体の色情報と色調整後の物体の色情報の差分を示すものであり、熟練者により、画像に含まれる物体のそれぞれについて、どのように色調整が行われたかを示す情報である。
【0052】
そして、CPU21は、画像認識された各物体の種類、当該物体の色情報(CMYK(色調整前Lに対応する座標の画素のCMYK値)、色調整前L)、色調整ベクトルを調整履歴として記憶部23の履歴データベース234に登録する(記憶する)(ステップS9)。つまり、画像から複数の物体が認識された場合は、履歴データベース234に、認識された物体に対応する複数のレコードが登録される。そして、色調整処理を終了する(END)。
なお、ステップS9においては、色調整が行われなかった物体についても、色調整ベクトルをゼロベクトルとして、調整履歴を履歴データベース234に登録する。
また、物体の種類、CMYK、及び色調整前Lが同じで色調整ベクトルが異なる調整履歴が複数になった場合、全てを履歴データベース234に登録しておいてもよい。
また、履歴データベース234に蓄積した調整履歴のデータをSVM(Support Vector Machine)などの機械学習モデルで学習し、物体の種類とCMYK値を入力すると色調整ベクトルが出力される調整分類器を作成してもよい。
【0053】
一方、ステップS1において、ログイン中のユーザーが熟練者ではないと判断した場合(ステップS1;NO)、履歴データベース234に登録された履歴に基づいて色変換を行う処理に関するフローに進む。具体的には、CPU21は、印刷用画像データに画像認識を行い、印刷用画像データに含まれる物体の種類を認識し(ステップS10)、認識した各物体について、色調整前のL値の中央値及び対応する座標のCMYK値を取得する(ステップS11)。
ステップS10、S11の処理は、上述のステップS6、S7の処理と同様であるので説明を援用する。
【0054】
次いで、CPU21は、認識した各物体の種類、CMYK値及び色調整前Lを用いて、履歴データベース234から各物体の調整履歴(レコード)を取得し(ステップS12)、画像中に色調整が必要な物体が存在するか否かを判断する(ステップS13)。つまり、認識した各物体の種類、CMYK値及び色調整前L*a*b*に対応するレコードが履歴データベース234に存在することは、過去に熟練者によって同様の物体について調整の要否が判断されたことを示すため、それに基づいて色調整が必要な物体が存在するか否かを判断することができる。ステップS13では取得した調整履歴の色調整ベクトルがゼロベクトルであるか否かを判断する。色調整ベクトルがゼロベクトル以外の物体が1つでも存在した場合は、色調整が必要な物体が存在すると判断する。対応する調整履歴が存在しなかった場合、物体の色調整ベクトルがゼロベクトルのみであった場合は、色調整が必要な物体が存在しないと判断する。
【0055】
画像中に色調整が必要な物体が存在しないと判断した場合(ステップS13;NO)、CPU21は、オリジナルのターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233に基づいて、印刷用画像データに色変換を行い、色変換済みの画像データを通信部26によりプリンター30に送信して印刷を行わせ(ステップS19)、色調整処理を終了する。
【0056】
画像中に色調整が必要な物体が存在すると判断した場合(ステップS13;YES)、CPU21は、認識したうちの複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉しているか否かを判断する(ステップS14)。
【0057】
ここで、上述のように、ターゲットプロファイル232には、所定間隔ごとに離散的にCMYK値とL値とが対応づけられている。そのため、所定間隔のあいだに存する色については、ターゲットプロファイルに直接的には記述されておらず、ターゲットプロファイル232に存在するデータを用いて補間により求める。ここで、ターゲットプロファイル232に存在するデータを格子点と呼ぶ。ある物体の色を調整する場合、その物体の色を囲む複数の格子点の色変換データを変更する。
補間に用いる格子点が複数種類の物体間で共通すると、色調整により、その共通した格子点の色が重複して調整されてしまったり、調整対象ではない物体の色が意図しない内容で調整されてしまったりする。そこで、ステップS14において、CPU21は、複数の物体の種類に対応する色についての色変換データがターゲットプロファイル232に存在せず、複数の物体の種類のそれぞれに対応する色についての色変換データを補間により算出する際に共通して用いられる色変換データの数が所定数以上又は補間に用いられる色変換データの数に対して所定の割合以上である場合に、複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉すると判断する。
【0058】
例えば、上述の色変換データの格子点を単純化して2次元で図示した場合、図7に示すように、点Aの色変換データはP6、P7、P10、P11の格子点の色変換データを用いて補間され、点Bは、P2、P3、P6、P7の格子点の色変換データを用いて補間される。点Aと点Bの色変換データを補間により算出する際に共通して用いられる色変換データは、P6、P7の2つである。よって、所定数が2の場合、点Aの色の物体と点Bの色の物体の調整内容は干渉していると判断される。または、補間に用いられる4つの格子点の色変換データのうち、点Aと点Bでは2つが共通している、すなわち、1/2(50%)が共通しているため、所定の割合(%)が1/2(50%)の場合、点Aの色の物体と点Bの色の物体の調整内容が干渉していると判断される。
【0059】
なお、印刷用画像データにおける複数の物体の種類のCMYK値同士のユークリッド距離が所定の閾値以下(例えば、各色を0~255で表したとき、30以下)である場合に、複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉している(複数の物体の種類に対応する調整色域が干渉している)と判断してもよい。
【0060】
複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉していると判断した場合(ステップS14;YES)、CPU21は、複数の物体の種類の間の優先度を算出する(ステップS15)。
例えば、物体の種類、大きさ(面積)、位置、調整実績の数、レイヤーの少なくとも一つに基づいて、複数の物体の種類の間の優先度を算出する。
例えば、予め物体の種類に0~1の値を割り当てて記憶部23に記憶しておき、各物体の種類に応じた値を物体の種類の優先度として取得する。また、各物体の領域の面積の画像全体の面積に対する面積比(0~1)を大きさの優先度として取得する。また、画像中心を1、四隅(角)を0として、物体の位置の画像中心からの距離に応じて0~1の数値で表したものを位置の優先度として取得する。また、履歴データベース234に蓄積されている、各物体の種類についての色の調整実績の数に応じて0~1の値を割り当て、調整実績の数の優先度とする。また、最上層のレイヤーを1、最下層のレイヤーを0として0~1の値をレイヤーに割り当て、レイヤーの優先度として取得する。そして、各項目の優先度を加算して項目数で割った数を、その物体の種類の優先度として算出する。
なお、各項目の優先度に重みづけをしてもよい。また、全ての項目の優先度を考慮するのではなく、そのうちの一つ又は複数の項目の優先度を用いて、物体の優先度を算出することとしてもよい。また、色調整ベクトルがゼロベクトルのものについても優先度を算出し、ステップS16で選択する物体の種類の候補とする。
【0061】
次いで、CPU21は、調整内容が干渉している複数の物体の種類のうち、算出した優先度に基づいて、色調整を行う物体の種類を選択し(ステップS16)、ステップS17に移行する。
例えば、調整内容が干渉している複数の物体の種類のうち、最も優先度の高い物体の種類を、色調整を行う物体の種類として選択する。
【0062】
一方、ステップS14において、複数の物体の種類に対する調整内容が干渉していないと判断した場合(ステップS14;NO)、CPU21は、ステップS17に移行する。
【0063】
ステップS17において、CPU21は、印刷用画像データから認識された各物体の種類(調整内容が干渉している場合は、選択された物体の種類)、これに対応するCMYK及び色調整前Lに対応する色調整ベクトルを調整履歴から取得し(ステップS17)、取得した色調整ベクトルに従って、ターゲットプロファイル232を変更することで、色調整を行う(ステップS18)。
ここで、同一の物体の種類、そのCMYK値及び色調整前L値の組み合わせに対応する色調整ベクトルが複数存在した場合は、複数の色調整ベクトルから回帰分析による推定により新たに色調整に用いる色調整ベクトルを算出してもよいし、物体の種類、CMYK値及び色調整前L値の組み合わせと、色調整ベクトルとの対応関係を学習させた機械学習モデルに、その物体の種類のCMYK値及び色調整前L値を入力して、色調整に用いる新たな色調整ベクトルを算出してもよい。そして、算出した色調整ベクトルに従って、ターゲットプロファイル232を変更する。
なお、もとのターゲットプロファイル232は変更により上書きせず、そのまま残す。
【0064】
そして、CPU21は、色調整後のターゲットプロファイル232及びプリンタープロファイル233に基づいて、印刷用画像データに色変換を行い、色変換済みの画像データを通信部26によりプリンター30に送信して印刷を行わせ(ステップS19)、色調整処理を終了する。
【0065】
以上説明したように、コントローラー20は、過去に実行された画像の色調整についての、当該画像に含まれる物体の種類と、当該物体の色情報と、当該物体に対する色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴群が格納された履歴データベース234を有し、CPU21は、色変換対象となる画像である印刷用画像データを取得し、取得した印刷用画像データに含まれる物体の種類を認識し、認識した物体の色情報を取得し、認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を履歴データベース234から取得し、取得した調整履歴に含まれる調整内容を用いて、取得した印刷用画像データの色変換を行う。
例えば、CPU21は、取得した調整履歴に含まれる調整内容を用いて、色変換に用いる色変換テーブルの色変換データを変更した上で、取得した画像の色変換を行う。
したがって、過去に実行された色調整の調整内容を用いて、自動的に印刷用画像データに色調整を行って色変換を行うので、非熟練者であっても、目標となる色規格や色見本のない色調整を適切に行うことが可能となる。
【0066】
色変換を行うユーザーが非熟練者である場合、色変換対象となる物体について、色調整をどのように行えばよいかだけでなく、色調整自体が必要かどうかすら判断することが難しい場合がある。本発明は、履歴データベース234に格納された調整内容には、調整を行わないこと(0の色調整ベクトル)を含み、CPU21は、取得した調整履歴に含まれる調整内容が調整を行わないものであった場合は、調整を行わずに印刷用画像データの色変換を行う。
したがって、色調整が必要かどうかすらわからない非熟練者であっても、適正に色変換を行うことができる。
【0067】
また、CPU21は、ユーザー操作により印刷用画像データに対する色調整が実行された場合、取得された印刷用画像データに含まれる物体の種類を認識し、認識した物体の種類と、認識した物体の色情報と、実行された色調整の調整内容と、を対応付けた調整履歴を履歴データベース234に記憶させ、実行された色調整の調整内容を用いて、取得した印刷用画像データの色変換を行う。
したがって、履歴データベース234に新たに実行された色調整の調整履歴を蓄積することができる。
【0068】
また、CPU21は、色調整を行ったユーザーが熟練者であった場合に、色調整を許可するよう制御することで、熟練者の調整履歴のみを履歴データベース234に記憶することができ、色調整の精度を上げることができる。
【0069】
また、CPU21は、印刷用画像データから認識した物体の種類と当該認識した物体の色情報とに対応する調整履歴を履歴データベース234から複数取得した場合、取得した複数の調整履歴に含まれる調整内容に基づいて、新たな調整内容を算出し、算出した当該新たな調整内容を用いて、印刷用画像データの色変換を行う。
したがって、同じ物体について複数の色調整が行われた場合、複数の色調整の調整内容に基づいた色調整を行うことが可能となる。
【0070】
また、CPU21は、認識した複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉する場合、複数の物体の種類のうち一の物体の種類を選択し、選択した物体の種類に対応する調整内容を用いて、印刷用画像データの色変換を行う。
したがって、或る色が重複して調整されてしまったり、調整対象ではない物体の色が意図せず調整されてしまったりすることを防止することができる。
【0071】
また、CPU21は、認識した複数の物体の種類、大きさ、位置、調整履歴の数、レイヤーの少なくとも一つに基づいて、複数の物体の種類の優先度を算出し、算出した優先度に基づいて、一の物体を選択する。
したがって、優先度の高い物体の色を優先して調整することができる。
【0072】
また、CPU21は、複数の物体の種類に対応する色についての色変換データが色変換テーブルに存在せず、複数の物体の種類のそれぞれに対応する色についての色変換データを補間により算出する際に共通して用いられる色変換データの数が所定数以上又は補間に用いられる色変換データの数に対して所定の割合以上である場合に、複数の物体の種類に対応する調整内容が干渉すると判断する。したがって、調整内容が干渉するか否かを適切に判断することができる。
【0073】
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る色変換テーブル修正装置の好適な例であり、これに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施形態においては、熟練者がターゲットプロファイル232を調整(変更)することにより色調整を行い、色調整された物体の種類、色情報、調整内容等を調整履歴として履歴データベース234に記憶し、履歴データベース234の調整履歴に基づいて、非熟練者が色変換を行う際に自動的に色調整を行う場合を例にとり説明したが、熟練者は、トーンカーブを変更することで色調整を行うこととしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、CPU21は、ユーザーが熟練者である場合に、ユーザー操作による色調整を許可することとして説明したが、熟練者であっても非熟練者であってもユーザー操作による色調整を許可し、ユーザーが熟練者であった場合にのみ、調整履歴を履歴データベース234に記憶させることとしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、履歴データベース234がコントローラー20の記憶部23に設けられていることとして説明したが、履歴データベース234は、コントローラー20がアクセス可能な外部のサーバーやクラウド上に設けられていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、本発明の色変換装置がコントローラー20に適用された場合を例にとり説明したが、コントローラー20とは別体のPC内に本発明の色変換装置が設けられていることとしてもよい。また、印刷指示端末10に本発明の色変換装置が設けられていることとしてもよい。
また、本発明の色変換装置の機能は、複数の装置が連携して実施することとしてもよい。
【0078】
また、例えば、上記実施形態では、色彩値としてL色空間を用いることとして説明したが、XYZ色空間、CIECAM02色空間、CIELUV色空間等を用いることもできる。
【0079】
また、上記の説明では、各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピューター読み取り可能な媒体として不揮発性の半導体メモリーやハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用することとしてもよい。
【0080】
その他、色変換装置や印刷システムを構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 印刷指示端末
20 コントローラー
30 プリンター
21 CPU
22 RAM
23 記憶部
24 操作部
25 表示部
26 通信部
100 印刷システム
230 RIP処理プログラム
231 色調整処理プログラム
232 ターゲットプロファイル
233 プリンタープロファイル
234 履歴データベース
N 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7