(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】トイレシステム
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20240228BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20240228BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20240228BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D9/00 D
E03D11/02 Z
A47K17/00
(21)【出願番号】P 2019229759
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】執行 佳史
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303624(JP,A)
【文献】特開2021-031916(JP,A)
【文献】特開2020-016131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 5/10
E03D 9/00
E03D 11/02
A47K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の洗浄を行うトイレシステムであって、
手洗い用の吐水部と、
前記便器の洗浄動作の制御、および前記吐水部からの吐止水の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記便器の洗浄動作に基づいて前記吐水部の吐止水を制御するものであり、
前記制御部による制御によって前記吐水部からの吐水を開始させるタイミングは、変更可能となって
おり、
前記制御部は、前記吐水部からの吐水を、前記便器の洗浄動作の終了タイミングと同時、あるいは前記終了タイミングより後に開始する
ことを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記吐水部からの吐水を開始させるタイミングを、切替え可能な複数のパターンとして設定できるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトイレシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記便器の洗浄動作の制御モードとして複数の洗浄モードを有し、前記洗浄モードにより、前記吐水部からの吐水を開始させるタイミングを変更する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトイレシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記洗浄モードとして、大洗浄モードと、前記大洗浄モードよりも少量の洗浄水により前記便器の洗浄動作を行う小洗浄モードと、を有し、
前記大洗浄モードによる前記便器の洗浄動作を行う場合、前記小洗浄モードによる前記便器の洗浄動作を行う場合よりも、前記吐水部からの吐水を開始させるタイミングを遅くする
ことを特徴とする請求項3に記載のトイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置が有する制御部からの制御信号に基づいて手洗い用の吐水部からの吐水を行うトイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレシステムに関し、便器装置と手洗い用の吐水部とを備えた構成において、便器装置が有する制御部からの制御信号に基づいて、手洗い用の吐水部からの吐水と止水を切り替える電磁弁を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、手洗い用の吐水部に対する給水路に設けられた電磁弁等の電気的駆動弁を、便器装置が有する電源部からの電力の供給により動作させるように構成したトイレシステムが開示されている。
【0003】
また、便器装置の動作に基づいて手洗い用の吐水部からの吐水を行うトイレシステムとして、例えば、特許文献2に開示されているように、便器装置の便座に設けられた着座センサからの信号に基づき、手洗い用の吐水部の吐水動作を制御する技術が知られている。特許文献2には、便器装置において便器洗浄用の洗浄水の制御を行う制御部により、手洗い用の吐水部の吐水動作を制御する構成において、制御部が着座センサからの信号を受けた後、手洗い用の吐水部からの吐水を一定時間流すように制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-84069号公報
【文献】特開2008-303624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
便器装置の動作に基づいて手洗い用の吐水部の吐水動作を行う制御構成においては、次のような問題がある。便座に座った状態の使用者が排便後に立ち上がって着衣をし、手洗い用の吐水部まで移動する一連の動作にかかる時間は、使用者によって異なる。このため、便器装置の動作に基づいた手洗い用の吐水のタイミングが、使用者が手洗いを行いたい所望のタイミングに対してずれる場合がある。
【0006】
具体的には、例えば、便座から離座した後の着衣に通常よりも時間がかかる使用者の場合、着衣に時間がかかる分、手洗い動作を行うまでの時間が長くなる。このため、便器装置の動作に基づいた手洗い用の吐水のタイミングが、使用者の所望するタイミングよりも早くなってしまい、場合によっては、手洗い用の吐水が終了するタイミングに間に合わず、使用者は手洗いを行うことができないこともあり得る。逆に、便座から離座した後の動作が素早く、手洗い動作を行うまでの時間が通常よりも短い使用者の場合、便器装置の動作に基づいた手洗い用の吐水のタイミングが、使用者の所望するタイミングよりも遅くなってしまうことも考えられる。
【0007】
そこで、着衣等によって手洗い動作を行うまでに比較的長い時間を要する使用者や、手洗い動作を行うまでの時間が比較的短い使用者であっても、手洗い用の吐水部からの吐水を十分に受けることができるように、例えば、手洗い用の吐水部からの吐水時間を長くすること考えられる。しかしながら、手洗い用の吐水部からの吐水時間を長くすることは、その分、吐水部からの吐水について無駄水が増えることになるため、節水の観点から好ましくない。
【0008】
また、手洗い用の吐水部において、赤外線センサやドップラセンサ等のセンサにより使用者の手を検知して自動的な吐水を行う自動水栓を採用することで、便器装置の動作に基づく制御とは無関係に、手洗い用の吐水を行うことが可能となる。しかしながら、手検知用のセンサを備えた自動水栓を採用することは、手洗い用の吐水部について部品点数やコストの増大が懸念されるため好ましくない。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、便器装置の動作に基づいて手洗い用の吐水部からの吐水を行う構成において、使用者等によって異なる手洗いのタイミングに対応することができ、手洗い用の吐水部について部品点数やコストの増大を招くことなく、無駄水を低減することができるとともに、良好な手洗い動作を行うことができるトイレシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るトイレシステムは、便器の洗浄を行うトイレシステムであって、手洗い用の吐水部と、便器の洗浄動作の制御、および吐水部からの吐止水の制御を行う制御部と、を備え、制御部は、便器の洗浄動作に基づいて吐水部の吐止水を制御するものであり、制御部による制御によって吐水部からの吐水を開始させるタイミングは、変更可能となっているものである。
【0011】
このような構成のトイレシステムによれば、便器装置の動作に基づいて手洗い用の吐水部からの吐水を行う構成において、使用者等によって異なる手洗いのタイミングに対応することができ、手洗い用の吐水部について部品点数やコストの増大を招くことなく、無駄水を低減することができるとともに、良好な手洗い動作を行うことができる。
【0012】
本発明に係るトイレシステムの他の態様は、上記のトイレシステムにおいて、制御部は、吐水部からの吐水を開始させるタイミングを、切替え可能な複数のパターンとして設定できるように構成されているものである。
【0013】
このような構成のトイレシステムによれば、複数の使用者が個人で手洗吐水タイミングを設定することができるため、複数の使用者が自分の好みに合った手洗吐水開始のタイミングで手洗部を利用することができる。これにより、手洗部の使い勝手を良くすることができるとともに、手洗い用の吐水部からの吐水を効率的に使用することができる。
【0014】
本発明に係るトイレシステムの他の態様は、上記のトイレシステムにおいて、制御部は、便器の洗浄動作の制御モードとして複数の洗浄モードを有し、洗浄モードにより、手洗い用の吐水部からの吐水を開始させるタイミングを変更するものである。
【0015】
このような構成のトイレシステムによれば、便器の洗浄モードに応じて手洗吐水開始のタイミングを変えることができるため、使用者による便器装置の使用状況に応じて、適切なタイミングで手洗い用の吐水部からの吐水を行うことができる。これにより、手洗い用の吐水を効率的に使用することができるとともに、手洗部によるスムーズな手洗動作が可能となる。
【0016】
本発明に係るトイレシステムの他の態様は、上記のトイレシステムにおいて、制御部は、洗浄モードとして、大洗浄モードと、大洗浄モードよりも少量の洗浄水により便器の洗浄動作を行う小洗浄モードと、を有し、大洗浄モードによる便器の洗浄動作を行う場合、小洗浄モードによる便器の洗浄動作を行う場合よりも、手洗い用の吐水部からの吐水を開始させるタイミングを遅くするものである。
【0017】
このような構成のトイレシステムによれば、大洗浄・小洗浄の洗浄モードに応じて手洗吐水開始のタイミングを変えることができるため、例えば、用便後の着衣にかかる時間や、便座に対する着座の有無等、使用者による便器装置の細かい使用状況に応じて、適切なタイミングで手洗い用の吐水部からの吐水を行うことができる。これにより、手洗い用の吐水の効率的な使用、および手洗部によるスムーズな手洗動作を効果的に達成することができる。
【0018】
本発明に係るトイレシステムの他の態様は、上記のトイレシステムにおいて、制御部は、便器の洗浄動作を、手洗い用の吐水部からの吐水を開始させるタイミングよりも先に開始するものである。
【0019】
このような構成のトイレシステムによれば、便器内の排泄物の洗浄が開始された後、延いては便器内から排泄物が流された後の状況で、手洗部による手洗いを行うことが可能となる。つまり、便器内に排泄物が残った状態のままで使用者が手洗部により手洗いを行う状況を避けることができる。これにより、使用者は心情的にすっきりとした状態で手洗いを行うことができ、トイレの使用感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、便器装置の動作に基づいて手洗い用の吐水部からの吐水を行う構成において、使用者等によって異なる手洗いのタイミングに対応することができ、手洗い用の吐水部について部品点数やコストの増大を招くことなく、無駄水を低減することができるとともに、良好な手洗い動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトイレシステムの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る便器装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るトイレシステムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るリモコンの構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る手洗吐水の制御態様の一例についての説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る便器の洗浄モードによる手洗吐水の制御態様の一例についての説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る手洗吐水の制御態様の一例についての説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るトイレシステムの使用態様の一例を説明するためのフロー図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るトイレシステムの使用態様の一例を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、便器装置が有する制御部からの制御信号に基づいて手洗い用の吐水部からの吐水を行うトイレ用手洗水栓の吐水システムにおいて、手洗い用の吐水部からの吐水のタイミングを変更可能とすることで、使用者による便器装置の使用態様等に応じて、適切なタイミングによる手洗い吐水の動作を可能にしようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るトイレシステム1は、トイレ(トイレットルーム)2に設置されるものであり、トイレ装置である便器装置3と、手洗いを行うための手洗部4とを備える。
【0024】
トイレ2は、水平状の床面5aをなす床5と、床5上においてトイレ空間を形成する側壁6および後壁7を有する。側壁6および後壁7は、それぞれ鉛直状の壁面6a,7aをなす。床5上に、便器装置3が設置されている。便器装置3は、トイレ2内において、後壁7の近傍の(直前方の)位置に、前後方向をトイレ空間の前後方向に沿わせるように設置されている。手洗部4は、トイレ2内において、便器装置3の前方の離れた位置にて、側壁6に沿うように設けられている。
【0025】
図1に示すように、トイレシステム1は、水道管に接続されるとともに後壁7に取り付けられた分岐水栓8から、便器装置3および手洗部4それぞれに対して給水を受ける。分岐水栓8は、床面5a、壁面6aおよび壁面7aによる隅部分の近傍に設けられており、後壁7の壁面7aから突出した基部管部8aと、基部管部8aから延出して給水経路を分岐させる分岐管部8bとを有する。
【0026】
分岐管部8bにおいて分岐した一方の管部には、便器装置3への給水を行うための便器装置用給水管9が接続されている。また、分岐管部8bにおいて分岐した他方の管部には、手洗部4への給水を行うための手洗部用給水管10が接続されている。
【0027】
便器装置3について説明する。
図2に示すように、便器装置3は、洋式腰掛便器である便器14と、人体(使用者)の局部を洗浄するための洗浄水を吐出する衛生洗浄装置15とを備える。衛生洗浄装置15は、便器装置3において、便器14の上に設置された状態で設けられている。衛生洗浄装置15は、便器14に対して着脱可能に取り付けられた構成であってもよく、便器14と一体的に設けられた構成であってもよい。なお、便器装置3は、例えば、便器14を後壁7やライニングに支持させた、いわゆる壁掛け式の大便器を構成するものであってもよい。
【0028】
便器14は、上側を開放側とした凹状のボウル部14aを有する。便器14は、ボウル部14aにおいて便器装置3の使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
【0029】
衛生洗浄装置15は、筐体をなすケーシング17内に複数の機能部としての各種の装置・機器を有する装置本体部16と、ケーシング17に対して回動可能に支持された便座18および便蓋19とを備える。衛生洗浄装置15は、便器14に対して、装置本体部16をボウル部14aの後方の上側に位置させ、便座18および便蓋19の回動動作によってボウル部14aの上側の開放部を開閉するように設けられている。
【0030】
衛生洗浄装置15の構成ついて、
図3を参照して説明する。なお、
図3は、洗浄水の供給経路の構成と制御構成を併せて示しており、
図3では、水の流れを実線で、信号または電気の流れを破線でそれぞれ示している。
【0031】
図3に示すように、衛生洗浄装置15は、制御部20と、人体検知センサ22と、着座検知センサ23と、洗浄水供給部24と、ノズルユニット25と、便器洗浄バルブユニット26とを有する。これらの構成は、ケーシング17に内蔵されている。また、衛生洗浄装置15は、使用者による操作を受ける操作部としてのリモコン(リモートコントローラ)21を有する(
図2参照)。
【0032】
制御部20は、各種演算処理や制御を実行する演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、RAM(random access memory)やROM(read only memory)等の記憶装置、データ入出力用の入出力インターフェイス等の入出力装置(入出力回路)、クロック回路等の周辺回路等をバス等により接続した構成を備える。制御部20は、洗浄水供給部24やノズルユニット25や便器洗浄バルブユニット26等の各部の動作を制御する。制御部20は、例えば使用者によるリモコン21の操作に基づくリモコン21からの入力信号に応じて、各部の動作を制御する。
【0033】
衛生洗浄装置15は、ケーシング17内に、リモコン21から送信された信号を受信するリモコン受信部を有する。リモコン21から送信された操作信号は、リモコン受信部により受信され、リモコン受信部から制御部20へと送られる。リモコン21の信号の送信方式は、例えば、赤外線を利用した赤外線方式、電波を利用した電波方式、超音波を利用した超音波方式等である。赤外線方式の場合、リモコン受信部は、リモコン21から発信された赤外線(赤外線信号)を受光し、受光した赤外線を電気信号に変換し、制御部20に送信する。
【0034】
リモコン21は、例えば、トイレ2において便器装置3の側方の壁面6aに対して設置される。リモコン21には、各種の操作ボタンが設けられている。具体的には、リモコン21には、例えば、
図4に示すように、局部洗浄用の操作ボタン27として、おしり洗浄ボタン27a、ビデ洗浄ボタン27b、および停止ボタン27cが設けられている。また、リモコン21には、便器装置3が有する複数の便器洗浄態様に応じた便器洗浄ボタン28として、主に使用者による大便時に使用される大洗浄を実行するための大洗浄ボタン28aと、主に使用者による小便時に使用される小洗浄を実行するための小洗浄ボタン28bとが設けられている。また、リモコン21には、便座18を開閉させるための便座開閉ボタン29aと、便蓋19を開閉させるための便蓋開閉ボタン29bとが設けられている。その他、リモコン21には、例えば、局部洗浄用の洗浄水の吐出位置や勢いを調整するための調整ボタン等の各種の操作ボタンが設けられている。リモコン21のボタンが操作されることで、リモコン21は操作信号を送信する。リモコン21の操作信号は、使用者によるリモコン21の操作に応じて、衛生洗浄装置15の各部の動作を制御するための情報を含む。
【0035】
人体検知センサ22は、装置本体部16に近付いた人体を検知するものであり、トイレ2内に入室した使用者を検知するセンサである。人体検知センサ22は、例えば、赤外線信号を利用した焦電センサや、マイクロ波を用いたマイクロ波ドップラセンサ等の電波センサである。人体検知センサ22は、制御部20に接続されており、検知信号を制御部20に対して出力する。
【0036】
着座検知センサ23は、使用者の着座として、便座18に着座する直前の使用者や便座18に着座した状態の使用者を検知するセンサである。着座検知センサ23は、例えば、赤外線投受光式の測距センサや、便座18に着座した使用者の荷重を検知してON/OFF動作を行うスイッチ(着座スイッチ)である。また、着座検知センサ23は、検出方式として静電容量式を用いたものであってもよい。着座検知センサ23は、制御部20に接続されており、検知信号を制御部20に対して出力する。
【0037】
洗浄水供給部24は、給水源30としての水道からの給水を行う水道管に接続された分岐水栓8からの給水を受け、供給された洗浄水(水)を、ノズルユニット25へと供給する。洗浄水供給部24は、分岐水栓8から延出した給水流路(局部洗浄用流路9a)により給水を受ける。洗浄水供給部24は、給水管が接続された給水管接続部(図示略)と、バルブユニット31と、熱交換器ユニット32と、電解槽33と、バキュームブレーカ34とを有する。
【0038】
バルブユニット31は、給水管接続部の下流側に設けられており、例えば電磁弁により構成された流路開閉弁や調圧弁やストレーナ等を含み、流路開閉弁の開閉動作によって、分岐水栓8から供給される洗浄水の給水と止水とを切り替える。バルブユニット31は、制御部20に接続されており、制御部20からの制御信号に基づいて開閉動作する。
【0039】
熱交換器ユニット32は、バルブユニット31の下流側に設けられており、供給された水を加熱して温水に変換する。熱交換器ユニット32は、加熱源として例えばセラミックヒータを用いた瞬間加熱式(瞬間式)のものであってもよく、貯湯タンク内に例えばシーズヒータ等の発熱体を加熱源として有する貯湯加熱式のものであってもよい。熱交換器ユニット32の加熱源は、制御部20に接続されており、制御部20からの制御信号に基づいて通電により発熱する。
【0040】
電解槽33は、熱交換器ユニット32の下流側に設けられており、一対の電極を有し、熱交換器ユニット32側から供給された水を電極間にて電気分解することにより、機能水として、次亜塩素酸(HClO)を含む水を生成する。電解槽33は、所定の配線により制御部20に接続されており、電解槽33における通電動作は、制御部20からの制御信号に基づいて制御される。
【0041】
バキュームブレーカ34は、大気開放された開放部を有する大気解放式のものであり、電解槽33から供給される水の逆流を防止する。バキュームブレーカ34を通過した水は、ノズルユニット25へと供給される。
【0042】
ノズルユニット25は、ノズル本体をなす局部洗浄ノズルであるノズル36と、流路切替弁37と、ノズル駆動部38とを有する。
【0043】
ノズル36は、洗浄水供給部24から供給された水を、人体の局部を洗浄するための水(洗浄水)として吐出するものであり、ノズル駆動部38により、ケーシング17内から便器14のボウル部14a内に対して進退可能(出没可能)に設けられている。ノズル36は、その長手方向の一側(前端側)に、洗浄水を吐出する複数の吐水孔を有する。ノズル36には、流路切替弁37から各吐水孔に連通する給水流路が形成されている。
【0044】
流路切替弁37は、バキュームブレーカ34の下流側において、例えばノズル36と一体的に移動するように設けられており、バキュームブレーカ34から供給される水(機能水を含む)の供給を受ける。流路切替弁37は、ノズル36の各吐水孔に対する給水流路等の複数の洗浄水の供給先に対する流路の切替えを行う。
【0045】
流路切替弁37は、流路を切り替えるためのディスクバルブ機構を有し、そのディスクバルブ機構の駆動源としてのモータを有する。このモータは、例えば、パルス電力に同期して回動するステッピングモータ(パルスモータ)である。モータは、所定の配線により制御部20に接続されており、モータの動作、つまり流路切替弁37の動作は、制御部20により制御される。
【0046】
ノズル駆動部38は、駆動源として電動モータ等のノズルモータと、ノズルモータの動力をノズル36の進退動作用の動力として伝達する伝動機構とを含み、ノズル36を便器14のボウル部14a内に対して進退動作させる。ノズルモータは、所定の配線により制御部20に接続されており、ノズルモータの動作は、制御部20により制御される。ノズル36は、便器装置3の使用者によるリモコン21の操作等に応じて、ボウル部14a内に伸び出て、吐水孔から洗浄水を噴射する。
【0047】
便器装置3における便器洗浄用の洗浄水の流路構成について説明する。分岐水栓8から便器装置3に対する便器装置用給水管9は、衛生洗浄装置15の洗浄水供給部24に対する給水経路である局部洗浄用流路9aと、便器14に対する給水経路である便器洗浄用流路9bとに分岐している。
【0048】
分岐水栓8から便器装置用給水管9に給水される水は、便器洗浄用流路9bから便器洗浄バルブユニット26を介して便器14のボウル部14aに供給される。便器洗浄バルブユニット26は、その動作によって、便器14に対する給水を制御する。
【0049】
すなわち、本実施形態に係る便器装置3は、便器14に対する給水方式として、いわゆる水道直結給水式を採用したものであり、水道から供給される水を分岐水栓8から便器洗浄バルブユニット26を介して便器14に供給し、便器14の洗浄を行う。便器14に供給された水は、例えば、便器14においてボウル部14aの上縁部に沿って形成されたリム通水路に供給され、リム通水路に形成された複数の吐水孔から吐水され、ボウル部14aの内壁面を洗浄する。便器洗浄バルブユニット26は、制御部20に接続されており、便器洗浄バルブユニット26の開閉動作等は、制御部20からの制御信号に基づいて制御される。なお、便器14に対する給水方式は、水道直結給水式に限らず、便器装置3に設けられる洗浄水タンクを用いた方式であってもよい。
【0050】
便器装置3は、便器14の洗浄を行う便器洗浄態様として、上記のとおり大洗浄と小洗浄を含む。ここで、大洗浄は、小洗浄よりも、便器14への洗浄水の供給量が比較的多い洗浄態様である。あくまでも一例であるが、便器14に供給される洗浄水量は、大洗浄の場合は6~10リットル程度、小洗浄の場合は5~8リットル程度である。
【0051】
便器装置3における便器洗浄動作は、リモコン21における大洗浄ボタン28aまたは小洗浄ボタン28bの操作によって実行される。すなわち、使用者によって便器洗浄ボタン28が押されると、制御部20は、リモコン受信部を介してリモコン21からの操作信号を受け、操作信号の内容(大洗浄操作または小洗浄操作)に応じて便器洗浄バルブユニット26を動作させ、便器14に洗浄水を供給させる。
【0052】
便器洗浄用の洗浄水量は、便器洗浄バルブユニット26を開状態(通水状態)とする時間の調整によって調整される。大洗浄の場合、小洗浄の場合と比べて、便器洗浄バルブユニット26を通水状態とする時間が長くなる。
【0053】
また、便器装置3における便器洗浄動作は、着座検知センサ23や人体検知センサ22の検知信号等に基づいて使用者の動作を検知することで自動的に(リモコン21の操作を要することなく)行われる場合もある。この場合、例えば、便座18に座った状態の使用者が排便後に立ち上がったこと、つまり使用者の離座が着座検知センサ23により検知されると、制御部20は、着座検知センサ23からの入力信号に基づき、便器洗浄バルブユニット26を開状態とする信号を出力し、便器14への洗浄水の供給を行うことになる。こうしたセンサ出力に基づく自動的な便器洗浄動作を行うか否かは、使用者の好み等に応じてリモコン21の操作により設定可能な項目に含まれる。
【0054】
このように、制御部20は、便器14の洗浄動作の制御モードとして複数の洗浄モードを有する。便器14の洗浄動作の制御モードは、便器洗浄バルブユニット26の動作制御に関する制御モードを含む。本実施形態では、制御部20は、洗浄モードとして、大洗浄を実行するための大洗浄モードと、大洗浄モードよりも少量の洗浄水により便器14の洗浄動作を行う小洗浄を実行するための小洗浄モードとを有する。
【0055】
なお、衛生洗浄装置15は、便器洗浄態様として、大洗浄および小洗浄に加え、便器14への洗浄水の供給量が小洗浄よりも少ないエコ小洗浄と称される洗浄態様を行うように構成されたものであってもよい。この場合、制御部20は、洗浄モードとしてエコ小洗浄モードを有することになり、リモコン21においては、便器洗浄ボタン28として、エコ小洗浄を実行するためのエコ小洗浄ボタンが設けられることになる。
【0056】
手洗部4について説明する。
図1および
図3に示すように、手洗部4は、手洗い用の吐水部としての手洗水栓41と、手洗水栓41から吐出される水を受ける手洗鉢としてボウル部42aを有する手洗器42とを備える。手洗部4により、トイレ2内での手洗いが可能となる。
【0057】
手洗水栓41は、水を吐出する吐水口41aを有する。手洗器42において、ボウル部42aの底部には、排水口42bが開口している。ボウル部42aの後側には、矩形板状の背面板部42cが、壁面6aに沿うように上方に向けて延出されている。背面板部42cの上部の左右中央部に、手洗水栓41が突設されている。手洗水栓41には、手洗水栓41からの吐水・止水を操作するための操作部として吐止水ボタン41bが設けられている。
【0058】
手洗器42は、床面5a上に設置されたキャビネット43の上側に設けられている。キャビネット43は、左右の側面部、前面部および上面部を有し、これらの面部により、収納空間43aをなす縦長の中空箱状の収納部として構成されている。キャビネット43は、幅方向(左右方向)について手洗器42と略同じ寸法を有する。
【0059】
キャビネット43の右側(トイレ2の後側)には、水平状のカウンタ面45aなすカウンタ45が設けられている。カウンタ45は、矩形板状の部材により構成されており、キャビネット43と後壁7との間の全体にわたって水平状にかつ壁面6aに沿うように設けられている。カウンタ45は、カウンタ面45aの高さを、キャビネット43の上面と略同じ高さに位置させるように設けられている。また、カウンタ面45aの幅方向(短手方向)の寸法は、キャビネット43の前後方向の寸法と略同じとなっている。
【0060】
カウンタ45の下側には、横並びに2つのロール状のトイレットペーパ47を保持する紙巻器46が設けられている。紙巻器46は、カウンタ45に対して下面に固定された状態で設けられている。紙巻器46は、カウンタ45の長手方向についてキャビネット43寄りの位置に設けられている。
【0061】
手洗水栓41は、分岐水栓8から延設された手洗部用給水管10による給水を受ける。手洗部用給水管10は、手洗水栓41に接続される手洗給水管50とともに手洗い用の給水路を構成している。手洗部用給水管10は、分岐水栓8から上方に伸延するとともに、カウンタ45の下方の位置において、壁面6aに沿うように水平状にキャビネット43側に向けて延伸し、キャビネット43の右側の側壁を貫通して収納空間43a内まで延設されている。
【0062】
手洗い用の給水路には、手洗い用の給水弁ユニット52が設けられている。給水弁ユニット52は、キャビネット43の収納空間43a内に設けられており、洗浄水の流入口において、ストレーナ52aを介して手洗部用給水管10の下流側の端部の接続を受けるとともに、洗浄水の流出口において、手洗給水管50の上流側の端部の接続を受けている。手洗給水管50は、キャビネット43内の給水弁ユニット52から上方に延出され、手洗器42の背面板部42cの裏側に配され、背面板部42cの裏側から、背面板部42cの表側に突設された手洗水栓41に接続されている。
【0063】
給水弁ユニット52は、手洗い用の給水路を流通する水の通水と止水とを切り替えるように動作し、この切替え動作により、手洗水栓41の吐水口41aからの吐水と止水とを切り替える。給水弁ユニット52は、電気により駆動するものであり、手洗い用の給水路を開閉して通水と止水とを切り替える電磁弁等の電動弁を含んで構成されている。
【0064】
給水弁ユニット52は、電気や信号を送るためのワイヤハーネス53によって制御部20に接続されており、制御部20から制御信号および電力の供給を受ける。つまり、制御部20により、給水弁ユニット52の動作が制御され、手洗水栓41の吐水口41aからの吐水と止水とが切り替えられる。給水弁ユニット52への電力の供給は、衛生洗浄装置15に設けられた電源部から行われる。この電源部は、差込みプラグを介して商用の交流電源あるいはバッテリ等の電源に接続されるとともに制御部20に接続されており、衛生洗浄装置15が有する各種の装置・機器等に電力を供給する。
【0065】
手洗水栓41から吐出された水を受けるボウル部42aの排水口42bには、手洗排水管55の上流側が接続されている。手洗排水管55は、排水口42bから下方に延伸してキャビネット43の収納空間43a内に配され、収納空間43a内から、手洗部用給水管10と同様にキャビネット43の右側の側壁を貫通して後壁7側に向けて壁面6aに沿うように水平状に延設されている。手洗排水管55のキャビネット43から後側への延設部分は、手洗部用給水管10の配管部分の下方においてこれと平行状に延伸している。
【0066】
手洗排水管55は、キャビネット43の収納空間43a内において、排水口42bから下方へ延伸した配管部分に対する折返し部分を有し、略「U」字状に湾曲したトラップ管部55aを有する。手洗排水管55は、トラップ管部55aよりも下流側の部分を、トラップ管部55aをなす折返しの配管部分に対して直角状に湾曲させ、水平状の延伸部分を形成している。トラップ管部55aにおいては、排水によって封水が形成され、汚臭や害虫等が排水口42bから侵入することが防止される。
【0067】
手洗排水管55の下流側は、便器14の排水トラップに接続されている。これにより、手洗水栓41から吐出された水は、ボウル部42aの排水口42bから手洗排水管55を介して便器14の排水トラップ内に排出される。なお、手洗排水管55の下流側は、例えば側壁6側あるいは床5側から、建築物側に設けられた所定の排水設備に接続されてもよい。
【0068】
手洗部用給水管10および手洗排水管55のうち、互いに平行に配された水平状の配管部分を含む部分は、キャビネット43の右側(後壁7側)に設けられた配管カバー58により被覆されている。配管カバー58は、カウンタ45の下方において、キャビネット43と後壁7との間の全体にわたるように、矩形状に沿う横断面形状を有するとともに水平状に延伸するように設けられ、側壁6に対して設置されている。配管カバー58は、キャビネット43の外部に配された手洗部用給水管10および手洗排水管55の大部分を被覆している。なお、配管カバー58内には、便器装置3の制御部20と給水弁ユニット52とを繋ぐワイヤハーネス53等も収容されている。
【0069】
以上のように、本実施形態に係るトイレシステム1は、便器14の洗浄を行うトイレシステムであって、手洗い用の吐水部としての手洗水栓41と、便器14の洗浄動作の制御、および手洗水栓41からの吐止水の制御を行う制御部20とを備える。このような構成において、制御部20は、便器14の洗浄動作に基づいて手洗水栓41の吐止水を制御するものであり、制御部20による制御によって手洗水栓41からの吐水を開始させるタイミングは、変更可能となっている。
【0070】
制御部20は、便器14の洗浄動作として、リモコン21の大洗浄ボタン28aの操作に基づいて大洗浄モードによって便器洗浄バルブユニット26を動作させる大洗浄と、リモコン21の小洗浄ボタン28bの操作に基づいて小洗浄モードによって便器洗浄バルブユニット26を動作させる小洗浄とを実行させる。このような便器14の洗浄動作に基づいて、制御部20は、手洗水栓41の吐止水を制御する。
【0071】
具体的には、制御部20は、便器洗浄ボタン28の操作に基づくリモコン21からの操作信号を受けると、その操作信号の入力に基づき、便器洗浄バルブユニット26に対して制御信号を送信し、便器14の洗浄動作を行う。制御部20は、リモコン21からの操作信号の入力のタイミング、または便器14の洗浄動作を行う際の便器洗浄バルブユニット26に対する制御信号の出力のタイミングのいずれかのタイミングを、便器14の洗浄動作を開始させるタイミング(以下「便器洗浄タイミング」という。)とする。
【0072】
制御部20は、便器洗浄タイミングを特定する制御動作をトリガーとし、便器洗浄タイミングに基づく所定のタイミングで、給水弁ユニット52に対する制御信号を送信し、手洗い用の給水路を通水状態として手洗水栓41からの吐水を開始させる。吐水を開始させた制御部20は、吐水を所定の時間継続させた後、給水弁ユニット52を制御して吐水を停止させる。このような便器洗浄動作に基づく手洗部4の自動的な吐水動作は、手洗部4の吐止水ボタン41bを操作する必要がなく、手洗水栓41等の清潔性が保たれるため、衛生上好ましい。
【0073】
そして、制御部20は、上記のように便器14の洗浄動作に基づいて手洗水栓41からの吐水を開始させるタイミング(以下「手洗吐水タイミング」という。)を可変とするように構成されている。ここで、手洗吐水タイミングは、例えば、制御部20が手洗水栓41からの吐水を開始させる際の給水弁ユニット52に対する制御信号の出力のタイミングである。
【0074】
図5に示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、グラフG0は、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間(吐水継続時間)を示し、グラフG1,G2,G3は、手洗吐水動作の吐水時間(吐水継続時間)を示している。ここで、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間は、便器洗浄バルブユニット26を通水状態とする時間に対応し、手洗吐水動作の吐水時間は、給水弁ユニット52を通水状態とする時間に対応する。
【0075】
図5に示すように、便器洗浄タイミングを時刻t0(0秒)、手洗吐水タイミングを時刻taとした場合、制御部20は、時刻t0から時刻taまでの時間である手洗吐水開始時間Δtが変更可能に構成されている。例えば、手洗吐水開始時間Δtが0秒の場合、時刻t0=時刻taとなり、グラフG0およびグラフG1に示すように、手洗吐水タイミング(時刻ta1)は、便器洗浄タイミング(時刻t0)と同時となる。また、手洗吐水開始時間Δtが時間t2の場合、グラフG0およびグラフG2に示すように、手洗吐水タイミング(時刻ta2)は、便器洗浄タイミング(時刻t0)から時間t2経過後となる。また、手洗吐水開始時間Δtが時間t2よりも長い時間t3の場合、グラフG0およびグラフG3に示すように、手洗吐水タイミング(時刻ta3)は、便器洗浄タイミング(時刻t0)から時間t3経過後となる。
【0076】
このように、制御部20は、手洗吐水開始時間Δtを変更することができるように構成されている。なお、手洗吐水動作の吐水時間、つまり手洗吐水タイミングから手洗水栓41からの吐水を停止させるまでの時間Δsは、例えば数秒から数十秒程度であり、使用者により変更可能に構成することができる。制御部20は、手洗吐水タイミングから所定時間経過後に、手洗水栓41を止水状態とするように給水弁ユニット52を制御する。
【0077】
以上のように、制御部20により便器洗浄タイミングに基づく手洗吐水タイミングが可変となっている構成において、制御部20は、手洗水栓41からの吐水を開始させるタイミング(手洗吐水タイミング)を、切替え可能な複数のパターンとして設定できるように構成されている。つまり、制御部20は、手洗吐水開始時間Δtを使用者等に応じて複数設定・登録できるように構成されている。
【0078】
便器装置3は、衛生洗浄装置15の各種機能についての設定内容(調整内容)が使用者ごとに登録できるように構成されており、その設定内容に、手洗吐水開始時間Δtが含まれている。
図4に示すように、リモコン21において、衛生洗浄装置15が有する各種機能についての設定内容の登録・呼出しを行うための操作部として複数のユーザボタン60が設けられている。
【0079】
本実施形態では、リモコン21において、ユーザボタン60として第1~4ユーザボタン60a,60b,60c,60dの4つのボタンが横並びに設けられている。4つのユーザボタン60については、例えば、4人家族の場合、一人に1つのユーザボタン60が割り当てられて使用される。なお、1人の使用者が複数のユーザボタン60を使用する場合もある。
【0080】
手洗吐水開始時間Δtは、例えば、0秒、15秒、30秒、45秒、60秒等の時間で設定される。手洗吐水開始時間Δtが0秒の場合、手洗吐水タイミングが便器洗浄タイミングと同時となる。つまりこの場合、便器洗浄ボタン28の操作と同時に手洗水栓41からの吐水が開始されることになる。衛生洗浄装置15の各種機能についての設定内容は、制御部20においてRAM等の記憶装置に記憶される。登録・呼出しの対象となる衛生洗浄装置15の各種機能には、手洗吐水タイミングのほか、例えば、ノズル36からの洗浄水の吐出強さ、ノズル36による洗浄水の吐水位置、便座18の温度等が含まれる。
【0081】
衛生洗浄装置15の各種機能についての登録・呼出しを行うための操作方法および構成の一例について説明する。登録に際しては、まず、複数のユーザボタン60のうち、登録するボタンを選択してそのボタンを押す。ここでは、第1ユーザボタン60aを押すことにする。第1ユーザボタン60aを押した後、リモコン21に設けられた図示せぬ手洗吐水開始時間Δt調節用の操作ボタンを操作し、手洗吐水開始時間Δtを好みの時間に設定する。その後、リモコン21に設けられた図示せぬユーザ設定用のボタンを押すことで、登録が完了する。
【0082】
そして、衛生洗浄装置15の各種機能についての登録内容を呼び出す際は、複数のユーザボタン60のうち、第1ユーザボタン60aを押す。第1ユーザボタン60a以外のユーザボタン60を押すと、押したボタンに関連付けて登録された内容が呼び出される。このように、ユーザボタン60は、予め登録された使用者の設定の読み出しを衛生洗浄装置15の制御部20に指示するための操作部となる。
【0083】
なお、本実施形態では、衛生洗浄装置15の各種機能についての設定内容の登録・呼出しを行うための操作部として、登録可能な数に応じた複数のユーザボタン60が設けられているが、このような構成に限定されるものではない。設定内容の登録・呼出しを行うための操作部としては、例えば、単一のユーザボタンと、そのユーザボタンの操作ごとに表示が切り替わる複数の番号表示部との組合せ等であってもよい。また、衛生洗浄装置15の各種機能についての登録可能な登録数は、4つに限られるものではなく、例えば3つや5つ等であってもよい。
【0084】
上述したように、制御部20は、便器装置3が有する複数の便器洗浄態様に応じて、便器14の洗浄動作の制御モードとして複数の洗浄モードを有する。このような構成において、制御部20は、洗浄モードにより、手洗吐水タイミングを変更するように構成されている。すなわち、制御部20は、便器洗浄態様に応じて、手洗吐水開始時間Δtを変更するように構成されている。
【0085】
本実施形態では、制御部20は、便器14の洗浄モードとして、大洗浄モードおよび小洗浄モードを有する。このような構成において、制御部20は、大洗浄モードによる便器14の洗浄動作を行う場合、小洗浄モードによる便器14の洗浄動作を行う場合よりも、手洗吐水タイミングを遅くする。つまり、制御部20は、大洗浄を行う場合、小洗浄を行う場合よりも、手洗吐水開始時間Δtを長くするように構成されている。このような制御部20による制御動作の一例について、
図6を用いて説明する。
【0086】
図6Aは、制御部20が大洗浄を行う場合を示している。
図6Aに示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、グラフG11は、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間を示し、グラフG12は、手洗吐水動作の吐水時間を示している。
図6Aに示すように、大洗浄の場合、便器洗浄タイミング(時刻t0)に対し、手洗吐水開始時間Δtである所定の時間t11経過後に、手洗吐水タイミング(時刻ta11)が訪れている。
【0087】
図6Bは、制御部20が小洗浄を行う場合を示している。
図6Bに示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、グラフG21は、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間を示し、グラフG22は、手洗吐水動作の吐水時間を示している。
図6Bに示すように、小洗浄の場合、手洗吐水タイミング(時刻ta12)は、便器洗浄タイミング(時刻t0)と同時となっており(時刻t0=時刻ta)、手洗吐水開始時間Δtが0秒となっている。なお、小洗浄においては、便器14に対する洗浄水の供給量が大洗浄の場合と比べて少なく、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間(時間Δu)が、大洗浄の場合と比べて短くなる。
【0088】
以上のように、大洗浄の場合は、便器洗浄タイミングから所定の時間t11経過後に手洗水栓41からの吐水が開始され、小洗浄の場合は、便器洗浄タイミングと同時に手洗水栓41からの吐水が開始される。このような洗浄モードによる手洗吐水タイミングの調整は、次のような使用者によるトイレ2の使用状況に基づくものである。
【0089】
大洗浄の場合、用を足した後に使用者が着衣等を行う時間が比較的長くなるため、手洗吐水タイミングが、便器洗浄タイミングよりも後にずらされる。すなわち、使用者の着衣等を行う時間が比較的長くなると、その分、便器装置3の使用が終了してから手洗動作に入るまでの時間が長くなるため、便器洗浄タイミングから手洗吐水タイミングまでに相当程度の時間が必要となる。このため、例えば、使用者の便座18に対する離座(立上がり動作)から、使用者が手洗部4による手洗動作に入るまでの時間として、手洗吐水開始時間Δtである時間t11が確保される。あくまでも一例であるが、時間t11の長さは、例えば30秒程度である。
【0090】
これに対し、小洗浄の場合、用を足した後に使用者が着衣等を行う時間が比較的短くなるため、手洗水栓41による吐水が便器洗浄タイミングと同時に開始される。すなわち、小洗浄の場合、使用者の着衣等を行う時間が比較的短く、便器装置3の使用が終了してから手洗動作に入るまでの時間が短くなるため、手洗吐水開始時間Δtを設けることなく、手洗吐水タイミングが便器洗浄タイミングと同時となっている。このような小洗浄の場合の使用状況は、使用者が便座18に着座することなく用を足した後に小洗浄が行われる場合を想定したものである。
【0091】
なお、
図6Bに示す例では、手洗吐水タイミングが便器洗浄タイミングと同時(手洗吐水開始時間Δt=0秒)であるが、これらのタイミング同士が同時である場合に限られるものではない。小洗浄の場合、例えば、便器洗浄タイミングの直後に、手洗水栓41からの吐水が開始されてもよい。つまり、小洗浄の場合、例えば、手洗吐水開始時間Δtとして、大洗浄の場合における時間t11よりも短い時間が確保されてもよい。また、衛生洗浄装置15がエコ小洗浄を行うように構成されたものである場合、手洗吐水タイミングの制御に関し、例えば、エコ小洗浄のときにおける制御として、小洗浄のときと同じ制御を行うようにしてもよい。
【0092】
便器洗浄タイミングと手洗吐水タイミングの関係に関しては、制御部20の構成として、制御部20は、便器14の洗浄動作を、手洗吐水タイミングよりも先に開始するという構成が適宜採用される。つまり、手洗吐水タイミングよりも所定の時間前の時刻を便器洗浄タイミングとする構成である。
【0093】
具体的には、例えば、
図6Aに示すように、大洗浄の場合において、例えば着座検知センサ23からの信号に基づく便器洗浄タイミング(時刻t0)に対し、手洗吐水開始時間Δtである所定の時間t11経過後に、手洗吐水タイミング(時刻ta11)が訪れる構成である。なお、
図6Aに示す例は大洗浄の場合であるが、小洗浄の場合も同様に、例えばリモコン21の操作に基づく便器洗浄タイミングから所定の時間経過後に手洗吐水タイミングが訪れる構成、つまり手洗吐水開始時間Δtを確保した構成が採用されてもよい。
【0094】
また、便器洗浄タイミングから所定の時間経過後に手洗吐水タイミングが訪れる構成としては、例えば
図7Aに示すように、便器14の洗浄動作が終了したタイミングを、手洗吐水タイミングとした構成であってもよい。すなわち、この構成においては、
図7Aに示すように、便器洗浄動作の終了タイミングである時刻tbが、手洗吐水タイミングである時刻ta31となっている。言い換えると、手洗吐水開始時間Δtである時間t31が、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間、つまり便器洗浄タイミングから便器14への洗浄水の供給を停止させるまでの時間Δuと同じとなっている。なお、便器14への洗浄水の供給を停止させるタイミング、つまり便器洗浄動作の終了タイミングは、例えば、制御部20から便器洗浄バルブユニット26に対して便器洗浄バルブユニット26を閉状態とするための信号を送信したタイミングに対応する。
【0095】
さらに別パターンとして、便器洗浄タイミングから所定の時間経過後に手洗吐水タイミングが訪れる構成としては、例えば
図7Bに示すように、便器14の洗浄動作が終了したタイミングから所定の時間経過後に、手洗吐水タイミングが訪れる構成であってもよい。すなわち、この構成においては、
図7Bに示すように、便器洗浄動作の終了タイミングである時刻tbから所定のインターバル時間Δv経過後の時刻が、手洗吐水タイミングである時刻ta32となっている。言い換えると、この構成において、手洗吐水開始時間Δtである時間t32は、便器洗浄タイミングから便器14への洗浄水の供給を停止させるまでの時間Δuとインターバル時間Δvとを合わせた時間となっている。なお、
図7A、
図7Bに示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、グラフG31は、便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間を示し、グラフG32は、手洗吐水動作の吐水時間を示している。
【0096】
以上のように、本実施形態のトイレシステム1においては、大洗浄および小洗浄の洗浄モードに関わらず、便器洗浄タイミングを手洗吐水タイミングよりも先とする構成が適宜採用される。このような構成において、手洗吐水開始時間Δtの長さは特に限定されるものではない。
【0097】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るトイレシステム1の使用態様に関し、使用者の動作に基づくトイレシステム1の一連の動作について、
図8および
図9に示すフロー図を用いて説明する。
【0098】
まず、
図8を用いて、第1の使用態様の場合について説明する。第1の使用態様は、使用者は便座18に着座して用を足し、便器14の洗浄動作として大洗浄が行われ、その便器洗浄動作が着座検知センサ23のセンサ出力に基づく自動的な便器洗浄動作である場合の例である。
【0099】
図8に示すように、使用者は、トイレ2に入室し(S10)、便蓋19が開いた状態で、便座18に着座する(S20)。ここで、便蓋19は、人体検知センサ22のセンサ出力に基づいて自動的に開いたり、使用者によって手動で開かれたりする。ステップS20において、使用者が着座したことは、着座検知センサ23により検出され、制御部20により検知される。
【0100】
便座18に着座した使用者は、用を足し(S30)、用を足し終わった後、便座18から離座して立ち上がる(S40)。ここで、使用者が離座したことは、着座検知センサ23により検出され、制御部20により検知される。
【0101】
制御部20により使用者の離座が検知された後、所定の時間経過後に、自動的に便器14の洗浄が開始される(S50)。すなわち、制御部20は、大洗浄モードにより便器洗浄バルブユニット26を動作させ、便器14に洗浄水を供給させる。便器洗浄タイミングから大洗浄の場合の便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間(例えば、
図6A、時間Δu参照)が経過後、制御部20による便器洗浄バルブユニット26の動作制御により、便器14への洗浄水の供給が停止させられ、便器14の洗浄が完了する(S60)。
【0102】
一方、ステップS40において離座した使用者は、着衣をし(S70)、その後、手洗部4において手洗いを行う。ここで、制御部20は、大洗浄モードによる便器洗浄動作の便器洗浄タイミングから、大洗浄の場合の手洗吐水開始時間Δt(例えば、
図6Aに示す時間t11)経過後、給水弁ユニット52を通水状態とし、手洗水栓41による手洗吐水を開始させる(S80)。つまり、便器洗浄タイミングに基づく手洗吐水タイミングが訪れる。その後、制御部20は、手洗吐水タイミングから手洗吐水動作の吐水時間(例えば、
図5、時間Δs参照)経過後、給水弁ユニット52を止水状態とし、手洗水栓41による手洗吐水を停止させる(S90)。手洗部4による手洗いを終えた使用者は、トイレ2から退室する(S100)。
【0103】
次に、
図9を用いて、第2の使用態様の場合について説明する。第2の使用態様は、使用者は便座18に着座せずに用を足し(小便をし)、便器14の洗浄動作として小洗浄が行われ、その便器洗浄動作が使用者によるリモコン21の小洗浄ボタン28bの操作に基づく便器洗浄動作である場合の例である。
【0104】
図9に示すように、使用者は、トイレ2に入室し(S110)、便蓋19が開いた状態で、用を足す(S120)。ここで、便蓋19は、人体検知センサ22のセンサ出力に基づいて自動的に開いたり、使用者によって手動で開かれたりする。
【0105】
用を足し終わった使用者は、着衣をし(S130)、その後、洗浄スイッチとしてのリモコン21の小洗浄ボタン28bを押す(S140)。小洗浄ボタン28bが押されると、便器14の洗浄が開始される(S150)。すなわち、制御部20は、小洗浄モードにより便器洗浄バルブユニット26を動作させ、便器14に洗浄水を供給させる。便器洗浄タイミングから小洗浄の場合の便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間(例えば、
図6B、時間Δu参照)が経過後、制御部20による便器洗浄バルブユニット26の動作制御により、便器14への洗浄水の供給が停止させられ、便器14の洗浄が完了する(S160)。
【0106】
一方、ステップS140において小洗浄ボタン28bを押した使用者は、手洗部4において手洗いを行う。ここで、制御部20は、小洗浄モードによる便器洗浄動作の便器洗浄タイミングと同時に、あるいは大洗浄の場合よりも短い所定の手洗吐水開始時間Δt経過後、給水弁ユニット52を通水状態とし、手洗水栓41による手洗吐水を開始させる(S170)。その後、制御部20は、手洗吐水タイミングから手洗吐水動作の吐水時間(例えば、
図5、時間Δs参照)経過後、給水弁ユニット52を止水状態とし、手洗水栓41による手洗吐水を停止させる(S180)。手洗部4による手洗いを終えた使用者は、トイレ2から退室する(S190)。
【0107】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るトイレシステム1によれば、便器装置3の動作に基づいて手洗水栓41からの吐水を行う構成において、使用者等によって異なる手洗いのタイミングに対応することができ、手洗水栓41について部品点数やコストの増大を招くことなく、無駄水を低減することができるとともに、良好な手洗い動作を行うことができる。
【0108】
本実施形態に係るトイレシステム1においては、便器14の洗浄動作に基づいて手洗水栓41からの吐水を開始させるタイミングが変更可能となっている。つまり、トイレシステム1は、便器洗浄タイミングから手洗吐水タイミングまでの時間である手洗吐水開始時間Δtを変更することができるように構成されている。
【0109】
このような構成により、便器14の洗浄動作に基づいた手洗吐水タイミングを、使用者が手洗いを行いたい所望のタイミングに合わせることが可能となる。これにより、手洗水栓41からの吐水に間に合わずに手洗いを行えない状況が発生したり、逆に手洗水栓41からの吐水を待つ時間が長くなったり、手洗い用の吐水が無駄に流れたりすることを抑制することができる。
【0110】
すなわち、着衣等に時間がかかる使用者は、手洗吐水タイミングを比較的遅く設定することで、また、着衣等にあまり時間を要しない使用者は、手洗吐水タイミングを比較的早く設定することで、それぞれ手洗水栓41からの吐水に合わせて確実に手洗いを行うことができる。したがって、例えば複数の使用者の使用状況や好み等に応じるために手洗水栓41からの吐水時間を必要以上に長くすることが不要となり、無駄水を抑制することができ、節水を図ることが可能となる。
【0111】
また、手洗水栓41において、赤外線センサ等のセンサにより使用者の手を検知して自動的な吐水を行う自動水栓を用いることなく、トイレ2における使用者の動作等に応じた吐水動作を行うことが可能となる。このため、手洗水栓41をなす装置構成について、部品点数やコストの増大、構造の複雑化を防止ないし抑制することができる。
【0112】
また、本実施形態に係るトイレシステム1において、制御部20は、手洗吐水タイミングを、切替え可能な複数のパターンとして設定できるように構成されている。
【0113】
このような構成によれば、複数の使用者が個人で手洗吐水タイミングを設定することができるため、複数の使用者が自分の好みに合った手洗吐水タイミングで手洗部4を利用することができる。これにより、手洗部4の使い勝手を良くすることができるとともに、手洗水栓41からの吐水を効率的に使用することができる。
【0114】
また、本実施形態に係るトイレシステム1において、制御部20は、便器14の洗浄動作の制御モードとして複数の洗浄モードを有し、洗浄モードによって手洗吐水タイミングを変更するように構成されている。
【0115】
このような構成によれば、便器14の洗浄モードに応じて手洗吐水タイミングを変えることができるため、使用者による便器装置3の使用状況に応じて、適切なタイミングで手洗水栓41からの吐水を行うことができる。これにより、手洗い用の吐水を効率的に使用することができるとともに、手洗部4によるスムーズな手洗動作が可能となる。
【0116】
さらに、本実施形態では、制御部20は、洗浄モードとして大洗浄モードと小洗浄モードとを有し、大洗浄モードによる大洗浄を行う場合、小洗浄モードによる小洗浄を行う場合よりも、手洗吐水タイミングを遅くするという構成を備える。
【0117】
このような構成によれば、大洗浄・小洗浄の洗浄モードに応じて手洗吐水タイミングを変えることができるため、例えば、用便後の着衣にかかる時間や、便座18に対する着座の有無等、使用者による便器装置3の細かい使用状況に応じて、適切なタイミングで手洗水栓41からの吐水を行うことができる。これにより、手洗い用の吐水の効率的な使用、および手洗部4によるスムーズな手洗動作を効果的に達成することができる。
【0118】
また、本実施形態に係るトイレシステム1において、制御部20は、便器14の洗浄動作を手洗吐水タイミングよりも先に開始するという構成を備える。
【0119】
このような構成によれば、便器14内の排泄物の洗浄が開始された後、延いては便器14内から排泄物が流された後の状況で、手洗部4による手洗いを行うことが可能となる。つまり、便器14内に排泄物が残った状態のままで使用者が手洗部4により手洗いを行う状況を避けることができる。これにより、使用者は心情的にすっきりとした状態で手洗いを行うことができ、トイレ2の使用感を向上させることができる。
【0120】
特に、手洗吐水タイミングよりも先に便器洗浄タイミングが訪れる構成においては、便器洗浄用の洗浄水および手洗い用の吐水それぞれについての水圧を確保する観点から、手洗吐水タイミングは、便器洗浄動作の終了タイミングと同時、あるいは終了タイミングより後であることが好ましい。つまり、手洗吐水タイミングは、便器洗浄タイミングから便器洗浄動作の洗浄水の吐水時間(例えば、
図6A、時間Δu参照)経過時以降であることが好ましい。なお、
図7Aは、手洗吐水タイミングが便器洗浄動作の終了タイミングと同時である場合を示しており、
図7Bは、手洗吐水タイミングが便器洗浄動作の終了タイミングより後である場合を示している。
【0121】
このような構成により、便器14への洗浄水の供給と手洗水栓41からの吐水とを時間的に切り分けることができ、これらが同時に行われる状況を回避することができる。これにより、分岐水栓8から分岐した給水管、つまり便器装置用給水管9および手洗部用給水管10によって便器装置3および手洗部4それぞれに対する給水が行われる構成において、便器14に供給される洗浄水および手洗水栓41からの吐水の水圧が低下して水の勢いが弱まることを抑制することができる。
【0122】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るトイレシステムは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、この開示から当業者によって明らかとなる種々の態様を採用することができる。
【0123】
上述した実施形態では、衛生洗浄装置15においてケーシング17内に設けられた制御部20により、手洗部4の給水弁ユニット52が制御されているが、本発明に係る制御部はこのような構成に限定されるものではない。本発明に係る制御部の構成としては、例えば、給水弁ユニット52を制御するための制御装置を、衛生洗浄装置15が有する制御装置とは別体の装置として設けた構成であってもよい。
【0124】
具体的には、本発明に係る制御部の構成は、例えば、衛生洗浄装置15が有する制御装置をメインの制御装置とし、給水弁ユニット52を制御するサブの制御装置を、メインの制御装置とは別に手洗部4に設けた構成であってもよい。このような構成においては、サブの制御装置は、メインの制御装置に接続されるとともに給水弁ユニット52に接続され、手洗部4において例えばキャビネット43内に設けられる。
【符号の説明】
【0125】
1 トイレシステム
3 便器装置
4 手洗部
8 分岐水栓
9 便器装置用給水管
10 手洗部用給水管
14 便器
15 衛生洗浄装置
20 制御部
21 リモコン
23 着座検知センサ
26 便器洗浄バルブユニット
28 便器洗浄ボタン
41 手洗水栓(吐水部)
52 給水弁ユニット
60 ユーザボタン