(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240228BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240228BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L29/80 H
(21)【出願番号】P 2020010323
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-08-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】牧山 剛三
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 史朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】小谷 淳二
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0115326(US,A1)
【文献】特開2017-228571(JP,A)
【文献】特開2011-114269(JP,A)
【文献】特開2015-103780(JP,A)
【文献】特開2018-010936(JP,A)
【文献】特開2014-138110(JP,A)
【文献】特開2003-297852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された電子走行層及び電子供給層と、
前記電子供給層の上方に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、
前記電子供給層上で、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に設けられた第1キャップ層と、
前記第1キャップ層上に設けられ、負の電荷を生成する負電荷生成層と、
を有し、
前記負電荷生成層は、アルミニウム及び酸素から構成され、
前記負電荷生成層の組成をAl
XO
Yと表したとき、X/Yの値が2/3より小さいことを特徴とす
る半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、
基部と、
前記基部上に設けられ、少なくとも前記基部よりも前記ドレイン電極側に広がる部分を備えた傘部と、
を有し、
前記負電荷生成層は、前記傘部の前記ドレイン電極側の端部と前記電子供給層との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
互いに積層された電子走行層及び電子供給層と、
前記電子供給層の上方に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、
前記電子供給層上で、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に設けられた第1キャップ層と、
前記第1キャップ層上に設けられ、負の電荷を生成する負電荷生成層と、
を有し、
前記ゲート電極は、
基部と、
前記基部上に設けられ、少なくとも前記基部よりも前記ドレイン電極側に広がる部分を備えた傘部と、
を有し、
前記負電荷生成層は、前記傘部の前記ドレイン電極側の端部と前記電子供給層との間に設けられ、
前記ゲート電極は、前記基部と前記ドレイン電極との間で前記第1キャップ層の上面に接する下面を有することを特徴とす
る半導体装置。
【請求項4】
前記負電荷生成層は、シリコン及び窒素から構成され、
前記負電荷生成層の組成をSi
XN
Yと表したとき、X/Yの値が3/4より小さいことを特徴とする請求項
3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記負電荷生成層は、アルミニウム及び酸素から構成され、
前記負電荷生成層の組成をAl
XO
Yと表したとき、X/Yの値が2/3より小さいことを特徴とする請求項
3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1キャップ層の前記傘部の前記ドレイン電極側の端部と前記電子供給層との間の部分の厚さは6nm以上であることを特徴とする請求項2
乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記電子供給層上で、前記ゲート電極と前記ソース電極との間に設けられ、前記第1キャップ層より厚さが薄い第2キャップ層をさらに有することを特徴とする請求項2乃至
6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記負電荷生成層は正孔よりも電子を多く含み、負に帯電していることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記負電荷生成層は、ストイキオメトリよりも、陰イオン又は電気陰性度の高い元素が過剰な組成を有することを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記負電荷生成層は、m種類(mは自然数)の陽イオンとなる元素と、n種類(nは自然数)の陰イオンとなる元素とから構成され、
前記負電荷生成層の組成をAm
Xm・・・Bn
Yn・・・と表し、元素Amの陽イオンの価数をamとし、元素Bnの陰イオンの価数をbnとしたとき、
Σam×Xm-Σbn×Ynが負であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を有している。このため、これらの特性を利用して窒化物半導体を高耐圧及び高出力の半導体装置に適用することについて種々の検討が行われている。窒化物半導体を用いた半導体装置の例として、高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)等の電界効果トランジスタが挙げられる。GaN系HEMTでは、電子走行層(チャネル層)にGaNが、電子供給層(障壁層)にAlN又はAlGaNが用いられる。
【0003】
従来のHEMTでは、ゲート電極がドレイン電極よりもソース電極に近く配置されることがある。ゲート電極とソース電極との間の距離が短いほどソース抵抗が低く、大きな出力密度を得やすい。ゲート電極とドレイン電極との間の距離が長いほどドレイン抵抗が高く、高いドレイン耐圧を得やすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-230407号公報
【文献】特開2013-229486号公報
【文献】特開2014-229767号公報
【文献】特開2016-127089号公報
【文献】特開2018-010936号公報
【文献】特開2013-225621号公報
【文献】特開2014-241379号公報
【文献】特開2002-100642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のHEMTの構造では、ドレイン耐圧をより高めることが困難である。
【0006】
本開示の目的は、ドレイン耐圧を向上することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、互いに積層された電子走行層及び電子供給層と、前記電子供給層の上方に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、前記電子供給層上で、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に設けられた第1キャップ層と、前記第1キャップ層上に設けられ、負の電荷を生成する負電荷生成層と、を有し、前記負電荷生成層は、アルミニウム及び酸素から構成され、前記負電荷生成層の組成をAl
X
O
Y
と表したとき、X/Yの値が2/3より小さい半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ドレイン耐圧を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例に係る半導体装置における電子濃度の分布を示す図である。
【
図2】参考例に係る半導体装置における電界強度の分布を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図(その1)である。
【
図5】第1実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図(その2)である。
【
図6】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図8】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図10】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図11】負電荷生成層の材料とシートキャリア濃度との関係を示す図である。
【
図12】第2実施形態に倣って製造した半導体装置のレイン電圧とドレイン電流との関係を示す図である。
【
図13】第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図16】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図17】第5実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図18】第6実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図19】第6実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図(その1)である。
【
図20】第6実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図(その2)である。
【
図21】第6実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図(その3)である。
【
図22】第7実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図23】第7実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図24】第7実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図25】第7実施形態に倣って製造した半導体装置のドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す図である。
【
図26】第8実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図27】第9実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図28】第10実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図29】第11実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【
図30】第12実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【
図31】第13実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【
図32】第14実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0011】
(参考例)
本願発明者らは、従来のHEMTにおいてドレイン耐圧の向上が困難である原因を究明すべく、参考例を用いながら鋭意検討を行った。
図1は、参考例に係る半導体装置における電子濃度の分布を示す図である。
図2は、参考例に係る半導体装置における電界強度の分布を示す図である。
図1中の電子濃度の単位はcm
-3である。
図2中の電界強度の単位はV/cmである。
図2中の電界強度の符号は電界の方向を示す。
図2中の電界強度は、ソース-ドレイン間電圧が100V、ソース-ゲート間電圧が-8Vのときの電界強度である。
【0012】
参考例に係る半導体装置では、GaNの電子走行層92c上にAlGaNの電子供給層92eが設けられ、電子供給層92e上にゲート電極96が設けられている。ゲート電極96は、基部96aと、基部96a上の傘部96bとを有し、ゲート電極96の断面形状は略T字型となっている。ゲート電極96の周囲にSi3N4の絶縁層93が設けられている。つまり、絶縁層93は、ストイキオメトリの窒化シリコン層である。絶縁層93は傘部96bと電子供給層92eとの間にも存在する。
【0013】
このような構成の参考例では、
図1に示すように、熱平衡状態では、ソース電極からドレイン電極までの範囲内で、ゲート電極96の直下の空乏層の変調領域を除き、電子走行層92cと電子供給層92eとの間のヘテロ界面の近傍に均一な濃度で電子が分布する。つまり、濃度がほぼ均一の2次元電子ガス(2DEG)が存在する。
【0014】
ヘテロ界面の近傍に高濃度の2DEGが存在するため、
図2に示すように、ゲート電極96の近傍において高濃度の電子が誘起され、ドレイン電極の高い電位が伝播する。このため、ゲート電極96のドレイン端でのトンネル電流が大きく、ゲート電極とドレイン電極との間の距離を長くしても、ドレイン耐圧を向上させることが困難である。このことから、ゲート電極96の近傍における電子濃度を低減すれば、電界集中を抑制してドレイン耐圧が向上すると考えられる。
【0015】
本願発明者らは、これらの新たな知見に基づき、ドレイン耐圧をより向上すべく鋭意検討を行った。この結果、下記の実施形態に想到した。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む半導体装置に関する。
図3は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0017】
第1実施形態に係る半導体装置100は、
図3に示すように、互いに積層された電子走行層(チャネル層)102c及び電子供給層(障壁層)102eと、キャップ層102fと、負電荷生成層131と、ソース電極104と、ドレイン電極105と、ゲート電極106とを有する。
【0018】
ソース電極104、ドレイン電極105及びゲート電極106は、電子供給層102eの上方に設けられている。ゲート電極106はソース電極104とドレイン電極105との間に設けられている。例えば、ゲート電極106は、基部106aと、基部106a上の傘部106bとを有する。キャップ層102fは、電子供給層102e上で、少なくともゲート電極106とドレイン電極105との間に設けられている。キャップ層102f上に、負の電荷を生成する負電荷生成層131が設けられている。
【0019】
負電荷生成層131は、正孔よりも電子を多く含み、負に帯電している。例えば、負電荷生成層131は、陰イオンになりやすい元素又は電子親和力が大きい元素がストイキオメトリよりも過剰な組成を有する。例えば、負電荷生成層131は、ストイキオメトリよりも、陰イオン又は電気陰性度の高い元素が過剰な組成を有してもよい。
【0020】
例えば、負電荷生成層131は、窒素が過多の窒化シリコン層又は酸素が過多の酸化アルミニウム層である。負電荷生成層131が、窒素が過多の窒化シリコン層である場合、負電荷生成層131の組成をSiXNYと表すと、X/Yの値が3/4より小さい。負電荷生成層131が、酸素が過多の酸化アルミニウム層である場合、負電荷生成層131の組成をAlXOYと表すと、X/Yの値が2/3より小さい。
【0021】
例えば、負電荷生成層131が、フッ素が過多のフッ化アルミニウム層又はフッ化シリコン層であってもよい。負電荷生成層131が、フッ素が過多のフッ化アルミニウム層である場合、負電荷生成層131の組成をAlXFYと表すと、X/Yの値が1/3より小さい。負電荷生成層131が、フッ素が過多のフッ化シリコン層である場合、負電荷生成層131の組成をSiXFYと表すと、X/Yの値が1/4より小さい。
【0022】
負電荷生成層131は、3種類以上の元素から構成されてもよい。例えば、負電荷生成層131は、AlON、SiON、AlOF又はSiOFの層であってもよい。
【0023】
負電荷生成層131がAlON層である場合、Alが陽イオンとなる元素であり、O及びNが陰イオンとなる元素であり、アルミニウムイオンの価数a1は3、酸化物イオンの価数b1は2、窒化物イオンの価数b2は3である。負電荷生成層131の組成をAlX1OY1NY2と表すと、a1×X1-(b1×Y1+b2×Y2)=3×X1-(2×Y1+3×Y2)が負である。
【0024】
負電荷生成層131がSiON層である場合、Siが陽イオンとなる元素であり、O及びNが陰イオンとなる元素であり、シリコンイオンの価数a1は4、酸化物イオンの価数b1は2、窒化物イオンの価数b2は3である。負電荷生成層131の組成をSiX1OY1NY2と表すと、a1×X1-(b1×Y1+b2×Y2)=4×X1-(2×Y1+3×Y2)が負である。
【0025】
負電荷生成層131がAlOF層である場合、Alが陽イオンとなる元素であり、O及びFが陰イオンとなる元素であり、アルミニウムイオンの価数a1は3、酸化物イオンの価数b1は2、フッ化物イオンの価数b2は1である。負電荷生成層131の組成をAlX1OY1FY2と表すと、a1×X1-(b1×Y1+b2×Y2)=3×X1-(2×Y1+1×Y2)が負である。
【0026】
負電荷生成層131がSiOF層である場合、Siが陽イオンとなる元素であり、O及びFが陰イオンとなる元素であり、シリコンイオンの価数a1は4、酸化物イオンの価数b1は2、フッ化物イオンの価数b2は1である。負電荷生成層131の組成をSiX1OY1FY2と表すと、a1×X1-(b1×Y1+b2×Y2)=4×X1-(2×Y1+1×Y2)が負である。
【0027】
一般化すると、負電荷生成層131は、m種類(mは自然数)の陽イオンとなる元素と、n種類(nは自然数)の陰イオンとなる元素とから構成されてもよく、負電荷生成層131の組成をAmXm・・・BnYn・・・と表し、元素Amの陽イオンの価数をamとし、元素Bnの陰イオンの価数をbnとしたとき、Σam×Xm-Σbn×Ynが負である。
【0028】
ここで、負電荷生成層131の作用について説明する。
図4及び
図5は、第1実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。このシミュレーションでは、キャップ層102fが、厚さが10nmのGaN層であり、負電荷生成層131に代えて、キャップ層102fの上面に種々の電荷が付与されたものとして、電界強度の分布(
図4)及びゲート電圧とゲート電流との関係(
図5)を調査した。
図4(a)には、正の電荷(正孔)が7.0×10
12cm
-2の濃度で付与されたときの電界強度の分布を示す。
図4(b)には、正の電荷(正孔)が3.5×10
12cm
-2の濃度で付与されたときの電界強度の分布を示す。
図4(c)には、電荷が付与されていないときの電界強度の分布を示す。
図4(d)には、負の電荷(電子)が3.5×10
12cm
-2の濃度で付与されたときの電界強度の分布を示す。
図4(e)には、負の電荷(電子)が7.0×10
12cm
-2の濃度で付与されたときの電界強度の分布を示す。また、
図5には、
図4(a)~
図4(e)に対応する各条件の下でのゲート電圧とゲート電流との関係を示す。
図5では、ドレインを接地している。
【0029】
図4に示すように、正の電荷の量が多いほど、ゲート電極106の傘部106bのドレイン電極側の端部とキャップ層102fとの間に強い負方向の電界が集中しやすく、負の電荷の量が多いほど、電界集中が緩和されている。このことは、負の電荷の量が多いほど、優れたドレイン耐圧が得られることを意味する。
【0030】
図5に示すように、正の電荷が付与されたときには、負のバイアス(ゲート電圧)がゲート電極106に印加されると、ゲート電流が大きくなりやすい。これに対し、負の電荷が付与されたときには、負のバイアスがゲート電極106に印加されても、ゲート電流はほとんど流れない。このことは、負の電荷の量が多いほど、優れたドレイン耐圧が得られることを意味する。
図5に示すゲート電流は2端子逆方向リーク電流に相当する。
【0031】
これらシミュレーションの結果より、キャップ層102fの上面に負の電荷が付与されることで、ドレイン耐圧が向上することが明らかである。これは、負の電荷が付与されることで、電子走行層102cの上面近傍の電子濃度が、負の電荷が付与された領域の下方で低下し、電界強度が低下し、ゲート電極106のドレイン側端からのトンネル電流が低下するためである。
【0032】
第1実施形態では、キャップ層102f上に負電荷生成層131が設けられているため、電子走行層102cの上面近傍の電子濃度が、負電荷生成層131の下方で低下し、ドレイン耐圧を向上することができる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、HEMTを含む半導体装置に関する。
図6は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0034】
第2実施形態に係る半導体装置200では、
図6に示すように、例えば半絶縁性のSiC基板等の基板201上に半導体積層構造202が形成されている。半導体積層構造202は、核形成層202a、バッファ層202b、電子走行層(チャネル層)202c、中間層202d、電子供給層(障壁層)202e及びキャップ層202fをエピタキシャル成長させる。核形成層202a、バッファ層202b、電子走行層202c、中間層202d、電子供給層202e及びキャップ層202fを含む。核形成層202aは、例えばAlN層を含む。バッファ層202bは、例えばAlGaN層を含む。電子走行層202cは、例えば不純物の意図的なドーピングが行われていないGaN層(i-GaN層)を含む。中間層202dは、例えばAlN層を含む。電子供給層202eは、例えばAlGaN層又はAlN層を含む。キャップ層202fは、例えばGaN層を含む。
【0035】
半導体積層構造202に素子領域を画定する素子分離領域203が形成されている。素子領域内でキャップ層202f及び電子供給層202eに、ソース電極用のリセス222と、ドレイン電極用のリセス223が形成されている。リセス222及び223は厚さ方向で電子供給層202eの途中まで形成されており、リセス222及び223の底面は電子供給層202e内に位置する。リセス222内にソース電極204が形成され、リセス223内にドレイン電極205が形成されている。
【0036】
リセス222とリセス223との間でキャップ層202fに、ゲート電極用のリセス221が形成されている。キャップ層202fは、リセス221よりもソース電極204側に位置する第1部241と、リセス221よりもドレイン電極205側に位置する第2部242とを有する。第2部242は第1部241よりも厚い。例えば、第1部241の厚さは2nm~3nmであり、第2部242の厚さは5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。第2部242上に負電荷生成層231が形成されている。半導体積層構造202上に、ソース電極204、ドレイン電極205及び負電荷生成層231を覆う絶縁層232が形成されている。絶縁層232には、厚さ方向からの平面視でリセス221に倣う開口部224が形成されている。開口部224を通じて半導体積層構造202と接するゲート電極206が形成されている。
【0037】
ゲート電極206は、基部206aと、基部206a上の傘部206bとを有し、ゲート電極206の断面形状は、例えば略T字型となっている。基部206aのゲート長方向の寸法は、リセス221のゲート長方向の寸法と略一致する。傘部206bはゲート長方向で基部206aからソース電極204側及びドレイン電極205側の両側に広がる形状を有する。従って、傘部206bのゲート長方向の寸法は基部206aのゲート長方向の寸法よりも大きい。
【0038】
負電荷生成層231は、平面視で、傘部206bの基部206aからドレイン電極205側に広がる部分と重なり、かつ、傘部206bのドレイン電極205側の端部よりもドレイン電極205側に広がるようにして、キャップ層202fの第2部242上に設けられている。例えば、負電荷生成層231のソース電極204側の端部はゲート電極206に接し、負電荷生成層231のドレイン電極205側の端部はドレイン電極205から離間している。
【0039】
負電荷生成層231の組成はストイキオメトリからずれた組成となっている。例えば、負電荷生成層231は、陰イオンになりやすい元素又は電子親和力が大きい元素がストイキオメトリよりも過剰な組成を有する。例えば、負電荷生成層231は、ストイキオメトリよりも、陰イオン又は電気陰性度の高い元素が過剰な組成を有してもよい。負電荷生成層231は、正孔よりも電子を多く含み、負に帯電している。負電荷生成層231としては、例えば、シリコン及び窒素から構成され、負電荷生成層231の組成をSiXNYと表したとき、X/Yの値が3/4より小さい窒化シリコン層を用いることができる。例えば、この窒化シリコン層の633nmレーザ光に対する屈折率は1.85である。
【0040】
一方、絶縁層232は、ストイキオメトリの層であり、正又は負のいずれにも帯電していない。絶縁層232としては、例えば、組成がSi3N4で表される窒化シリコン層を用いることができる。絶縁層232の厚さは、例えば80nm~120nmである。
【0041】
半導体装置200では、負電荷生成層231が平面視で、傘部206bの基部206aからドレイン電極205側に広がる部分と重なり、かつ、傘部206bのドレイン電極205側の端部よりもドレイン電極205側に広がるようにして設けられている。このため、傘部206bのドレイン電極205側の端部の下方において、電子走行層202cの上面近傍の2DEGの密度が低く抑えられる。従って、第2実施形態によれば、ドレイン耐圧を向上することができる。
【0042】
負電荷生成層231の厚さは20nm以上であることが好ましい。負電荷生成層231の厚さが20nm未満であると、電子走行層202cの上面近傍の2DEGの密度を低減する効果が低くなるおそれがある。
【0043】
次に、第2実施形態に係る半導体装置200の製造方法について説明する。
図7~
図10は、第2実施形態に係る半導体装置200の製造方法を示す断面図である。
【0044】
まず、
図7(a)に示すように、例えば半絶縁性のSiC基板等の基板201上に、例えば有機金属気相成長(metal organic vapor phase epitaxy:MOVPE)法により、核形成層202a、バッファ層202b、電子走行層(チャネル層)202c、中間層202d、電子供給層(障壁層)202e及びキャップ層202fをエピタキシャル成長させる。核形成層202a、バッファ層202b、電子走行層202c、中間層202d、電子供給層202e及びキャップ層202fが半導体積層構造202に含まれる。
【0045】
核形成層202aとしては、例えばAlN層を形成する。バッファ層202bとしては、例えばAlGaN層を形成する。電子走行層202cとしては、例えば不純物の意図的なドーピングが行われていないGaN層(i-GaN層)を形成する。中間層202dとしては、例えばAlN層を形成する。電子供給層202eとしては、例えばAlGaN層又はAlN層を形成する。キャップ層202fとしては、例えば厚さが10nmのGaN層を形成する。
【0046】
半導体積層構造202の形成に際しては、例えば、Al源であるトリメチルアルミニウム(TMA)ガス、Ga源であるトリメチルガリウム(TMG)ガス、及びN源であるアンモニア(NH3)ガスの混合ガスを用いる。このとき、成長させる化合物半導体層の組成に応じて、トリメチルアルミニウムガス及びトリメチルガリウムガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。なお、電子走行層202cと電子供給層202eとの間の中間層202dは必要に応じて形成することができる。
【0047】
次いで、
図7(b)に示すように、半導体積層構造202に素子領域を画定する素子分離領域203を形成する。素子分離領域203の形成では、例えば、素子分離領域203を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを半導体積層構造202上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行ってもよい。素子分離領域203は、基板201に入り込むように形成してもよい。
【0048】
その後、
図7(c)に示すように、リセス221を形成する予定の領域と、リセス221を形成する予定の領域とリセス222を形成する予定の領域との間の領域とに対応する開口部251xを有するレジストパターン251を半導体積層構造202上に形成する。続いて、レジストパターン251をマスクとして用い、キャップ層202fのドライエッチングを行うことにより、開口部251xに倣う凹部202xをキャップ層202fに形成する。キャップ層202fのドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。キャップ層202fの残し厚は、例えば2nm~3nmとする。
【0049】
次いで、
図8(a)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン251を除去する。その後、リセス221を形成する予定の領域に対応する開口部252gを有するレジストパターン252を半導体積層構造202上に形成する。開口部252gのゲート長方向の寸法は、例えば0.23μm~0.27μmとする。続いて、レジストパターン252をマスクとして用い、キャップ層202fのドライエッチングを行うことにより、開口部252gに倣うリセス221をキャップ層202fに形成する。リセス221は凹部202xに繋がる。キャップ層202fのドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。
【0050】
次いで、
図8(b)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン252を除去する。その後、リセス222を形成する予定の領域に対応する開口部253sと、リセス223を形成する予定の領域に対応する開口部253dとを有するレジストパターン253を半導体積層構造202上に形成する。続いて、レジストパターン253をマスクとして用い、キャップ層202f及び電子供給層202eのドライエッチングを行うことにより、開口部253sに倣うリセス222と、開口部253dに倣うリセス223とをキャップ層202f及び電子供給層202eに形成する。リセス222及び223の形成では、厚さ方向で電子供給層202eの一部を残す。つまり、リセス222及び223の底面が電子供給層202e内に位置するようにドライエッチングを行う。リセス222は凹部202xに繋がる。キャップ層202f及び電子供給層202eのドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。キャップ層202fのリセス221とリセス222との間の部分が第1部241となり、キャップ層202fのリセス221とリセス223との間の部分が第2部242となる。
【0051】
次いで、
図8(c)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン253を除去する。その後、レジストパターン254と、その上のレジストパターン255とを含む2層レジストパターンを半導体積層構造202上に形成する。レジストパターン254は、ソース電極204を形成する予定の領域に対応する開口部254sと、ドレイン電極205を形成する予定の領域に対応する開口部254dとを有する。レジストパターン255は、ソース電極204を形成する予定の領域に対応する開口部255sと、ドレイン電極205を形成する予定の領域に対応する開口部255dとを有する。庇構造(セットバック構造)続いて、レジストパターン254及び255をマスクとして用い、リセス222の内側と、リセス223の内側とに金属膜211を形成する。金属膜211の形成に当たっては、例えば、高真空蒸着法によりTi層を形成し、その上に高真空蒸着法によりAl層を形成する。例えば、Ti層の厚さは10nm~30nmとし、Al層の厚さは100nm~300nmとする。図示を省略するが、金属膜111はレジストパターン255上にも形成される。
【0052】
次いで、
図9(a)に示すように、レジストパターン254及び255を、レジストパターン255上の金属膜211と共に除去する。この結果、リセス222の内側にソース電極204が形成され、リセス223の内側にドレイン電極205が形成される。このように、ソース電極204及びドレイン電極205の形成では、例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いることができる。その後、550℃~650℃での熱処理(合金化処理)を行うことにより、ソース電極204及びドレイン電極205と半導体積層構造202の表面との間をオーミックコンタクトさせる。続いて、負に帯電し、ソース電極204及びドレイン電極205を覆う層230を半導体積層構造202上に形成する。層230としては、例えば、633nmレーザ光に対する屈折率が1.85の窒化シリコン層を形成する。層230は、例えば、原料ガスとしてSiH
4ガス及びNH
3ガスを用い、キャリアガスとしてN
2ガスを用い、プラズマ化学気相成長(chemical vapor deposition)法により形成することができる。
【0053】
次いで、
図9(b)に示すように、負電荷生成層231を形成する予定の領域を覆うレジストパターン256を層230上に形成する。その後、レジストパターン256をマスクとして用い、層230のドライエッチングを行うことにより、層230のレジストパターン256から露出している部分を除去する。この結果、キャップ層202f上に選択的に負電荷生成層231が形成される。
【0054】
続いて、
図9(c)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン256を除去する。次いで、600℃、1分の熱処理を行って、負電荷生成層231の下方において、電子走行層202cの上面近傍の電子濃度を低減させる。その後、ソース電極204、ドレイン電極205及び負電荷生成層231を覆う絶縁層232を半導体積層構造202上に形成する。絶縁層232としては、例えば、組成がSi
3N
4で表される窒化シリコン層を形成する。絶縁層232は、例えば、原料ガスとしてSiH
4ガス及びNH
3ガスを用い、キャリアガスとしてN
2ガスを用い、プラズマCVD法により形成することができる。
【0055】
次いで、
図10(a)に示すように、開口部224を形成する予定の領域に対応する開口部257gを有するレジストパターン257を絶縁層232上に形成する。開口部257gのゲート長方向の寸法は、例えば0.23μm~0.27μmとする。その後、レジストパターン257をマスクとして用い、絶縁層232のドライエッチングを行うことにより、開口部257gに倣う開口部224を絶縁層232に形成する。例えば、開口部224は、平面視でリセス221と重なり合うように形成する。絶縁層232のドライエッチングでは、例えばSF
6をエッチングガスとして用いる。
【0056】
続いて、
図10(b)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン257を除去する。次いで、レジストパターン258と、その上のレジストパターン259と、その上のレジストパターン260とを含む3層レジストパターンを絶縁層232上に形成する。レジストパターン258は、ゲート電極206を形成する予定の領域に対応する開口部258gを有する。レジストパターン259は、ゲート電極206を形成する予定の領域に対応する開口部259gを有する。レジストパターン260は、ゲート電極206を形成する予定の領域に対応する開口部260gを有する。
【0057】
レジストパターン258~260の形成では、まず、スピンコート法による塗布及びプリベークを3回繰り返すことにより、3層のレジスト層を形成し、最も上方に位置するレジスト層に開口部260gを形成してレジストパターン260を形成する。開口部260gのゲート長方向の寸法は、例えば0.8μm~1.2μmとする。次いで、レジストパターン260をマスクとして中間のレジスト層に開口部259gを形成することにより、レジストパターン260に対してゲート長方向の寸法が0.3μm~0.7μmの庇構造(セットバック構造)を備えたレジストパターン259を形成する。その後、最も下方に位置するレジスト層に開口部258gを形成してレジストパターン258を形成する。開口部258gのゲート長方向の寸法は、例えば0.2μm~0.3μmとする。レジストパターン258の材料としては、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)(例えば、米国マイクロケム社製)を用いることができる。レジストパターン259の材料としては、例えばポリメチルグルタルイミド(PMGI)(例えば、米国マイクロケム社製)を用いることができる。レジストパターン260の材料としては、例えば日本ゼオン社製のZEP520を用いることができる。これらのレジスト材料はスピンコート法により塗布することができ、塗布後にプリベークを行う。開口部260gを形成する際の露光では、例えばゲート長方向に1.0μm~1.5μmの長さで電子線描画を行い、現像液としては、例えば日本ゼオン社製のZEP-SDを用いることができる。開口部259gの形成では、現像液として、例えば東京応化工業株式会社製のNMD-Wを用いることができる。開口部258gを形成する際の露光では、例えばゲート長方向に0.2μm~0.3μmの長さで電子線描画を行い、現像液としては、例えば日本ゼオン社製のZMD-Bを用いることができる。
【0058】
その後、同じく
図10(b)に示すように、開口部259g及び260gの内側にて、レジストパターン258上に、開口部258g及び開口部224を通じて半導体積層構造202に接触する金属膜212を形成する。金属膜212の形成に当たっては、例えば、高真空蒸着法によりNi層を形成し、その上に高真空蒸着法によりAu層を形成する。例えば、Ni層の厚さは10nm~30nmとし、Au層の厚さは200nm~400nmとする。図示を省略するが、金属膜212はレジストパターン260上にも形成される。
【0059】
続いて、
図10(c)に示すように、レジストパターン258~260を、レジストパターン260上の金属膜212と共に除去する。この結果、開口部224を通じて半導体積層構造202に接するゲート電極206が形成される。このように、ゲート電極206の形成では、例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いることができる。
【0060】
そして、必要に応じて保護膜及び配線等を形成して、半導体装置200を完成させる。
【0061】
図11は、負電荷生成層の材料とシートキャリア濃度との関係を示す図である。条件Aでは、負電荷生成層に代えて組成がSi
3N
4で表されるストイキオメトリの窒化シリコン層が用いられる。条件Bでは、負電荷生成層としてN過多の窒化シリコン層が用いられる。条件Cでは、負電荷生成層としてO過多の酸化アルミニウム層が用いられる。条件B及び条件Cによれば、条件Aに比べてシートキャリア濃度を1/2以下に低減することができる。このように、負に帯電した負電界生成層が用いられることで、シートキャリア濃度を著しく低減し、優れたドレイン耐圧を得ることができる。
【0062】
図12に、第2実施形態に倣った製造した半導体装置の3端子特性を示す。
図12(a)には、ドレイン電圧が0V~20Vの場合に、ゲート電圧Vgを-2V、-1V、0V、+1V、+2Vとしたときのドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。
図12(b)には、ドレイン電圧が0V~200Vの場合に、ゲート電圧Vgを-5Vとしたときのドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。
図12には、第2実施形態から負電荷生成層231が除かれた構造を備えた参考例の3端子特性も示す。
【0063】
図12に示すように、第2実施形態に倣った製造した半導体装置によれば、オン抵抗を低減することができ、ドレイン電流を増大させ、ドレイン耐圧を向上することができる。このことは、この半導体装置を適用した増幅器の高出力化及び高効率化を実現できることを示している。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、キャップ層102fの第2部242の構造の点で第2実施形態と相違する。
図13は、第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0065】
第3実施形態に係る半導体装置300では、
図13に示すように、第2部242が、平面視で負電荷生成層231と重なる第3部242aと、第3部242aとドレイン電極205との間の第4部242bとを有する。第3部242aは第1部241より厚い。第4部242bの厚さは第1部241の厚さと同等である。例えば、第1部241及び第4部242bの厚さは2nm~3nmであり、第3部242aの厚さは5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。
【0066】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0067】
第3実施形態によっても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
第2実施形態と第3実施形態とを比較すると、例えば、ドレイン耐圧の観点からは第2実施形態が好ましく、電子の移動度の観点からは第3実施形態が好ましい。
【0069】
次に、第3実施形態に係る半導体装置300の製造方法について説明する。
図14は、第3実施形態に係る半導体装置300の製造方法を示す断面図である。
【0070】
まず、第2実施形態と同様にして、素子分離領域203の形成までの処理を行う(
図7(b)参照)。次いで、
図14(a)に示すように、開口部351x及び351yを有するレジストパターン351を半導体積層構造202上に形成する。開口部351xは、リセス221を形成する予定の領域と、リセス222を形成する予定の領域と、これらの間の領域とに対応する。開口部351yは、リセス223を形成する領域と、リセス221を形成する予定の領域とリセス223を形成する予定の領域との間の領域に対応する。その後、レジストパターン351をマスクとして用い、キャップ層202fのドライエッチングを行うことにより、開口部351xに倣う凹部302xと、開口部351yに倣う凹部302yとをキャップ層202fに形成する。キャップ層202fのドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。キャップ層202fの残し厚は、例えば2nm~3nmとする。
【0071】
続いて、
図14(b)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン351を除去する。その後、開口部252gを有するレジストパターン252を半導体積層構造202上に形成する。次いで、第2実施形態と同様に、レジストパターン252をマスクとして用い、キャップ層202fのドライエッチングを行うことにより、開口部252gに倣うリセス221をキャップ層202fに形成する。リセス221は凹部302xに繋がる。
【0072】
その後、
図14(c)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン252を除去する。続いて、開口部253sと、開口部253dとを有するレジストパターン253を半導体積層構造202上に形成する。次いで、レジストパターン253をマスクとして用い、キャップ層202f及び電子供給層202eのドライエッチングを行うことにより、開口部253sに倣うリセス222と、開口部253dに倣うリセス223とをキャップ層202f及び電子供給層202eに形成する。第2実施形態と同様に、リセス222及び223の形成では、厚さ方向で電子供給層202eの一部を残す。リセス222は凹部302xに繋がり、リセス222は凹部302yに繋がる。キャップ層202fのリセス221とリセス222との間の部分が第1部241となり、キャップ層202fのリセス221とリセス223との間の部分が第2部242となる。また、第2部242の凹部302yの下方が第4部242bとなり、第4部242bよりもリセス221側の部分が第3部242aとなる。
【0073】
その後、第2実施形態と同様にして、レジストパターン253の除去及びそれ以降の処理を行って、半導体装置300を完成させる。
【0074】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、ゲート電極の構造の点で第2実施形態と相違する。
図15は、第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0075】
第4実施形態に係る半導体装置400では、
図15に示すように、ゲート電極206に代えてゲート電極406が設けられている。ゲート電極406は、基部406aと、基部406a上の傘部406bとを有する。傘部406bの下面は絶縁層232の上面に接している。基部406aのゲート長方向の寸法は、リセス221のゲート長方向の寸法と略一致する。傘部406bはゲート長方向で基部406aからソース電極204側及びドレイン電極205側の両側に広がる形状を有する。従って、傘部406bのゲート長方向の寸法は基部406aのゲート長方向の寸法よりも大きい。
【0076】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0077】
第4実施形態によっても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
次に、第4実施形態に係る半導体装置400の製造方法について説明する。
図16は、第4実施形態に係る半導体装置400の製造方法を示す断面図である。
【0079】
まず、第2実施形態と同様にして、レジストパターン257を用いた開口部224の形成の除去までの処理を行う(
図10(a)参照)。次いで、第2実施形態と同様に、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン257を除去する。その後、
図16(a)に示すように、レジストパターン458と、その上のレジストパターン459とを含む2層レジストパターンを絶縁層232上に形成する。レジストパターン458は、ゲート電極406を形成する予定の領域に対応する開口部458gを有する。レジストパターン459は、ゲート電極406を形成する予定の領域に対応する開口部459gを有する。
【0080】
レジストパターン458及び459の形成では、まず、スピンコート法による塗布及びプリベークを3回繰り返すことにより、2層のレジスト層を形成し、上方に位置するレジスト層に開口部459gを形成してレジストパターン459を形成する。次いで、レジストパターン459をマスクとして下方に位置するレジスト層に開口部458gを形成することにより、レジストパターン459に対してゲート長方向の寸法が0.3μm~0.7μmのセットバック構造を備えたレジストパターン458を形成する。レジストパターン458の材料としては、例えばポリメチルグルタルイミド(PMGI)(例えば、米国マイクロケム社製)を用いることができ、レジストパターン459の材料としては、例えば日本ゼオン社製のZEP520を用いることができる。これらのレジスト材料はスピンコート法により塗布することができ、各層塗布後に各々プリベークを行う。開口部459gを形成する際の露光では、例えばゲート長方向に1.0μm~1.5μmの長さで電子線描画を行い、現像液としては、例えば日本ゼオン社製のZEP-SDを用いることができる。開口部458gの形成では、現像液として、例えば東京応化工業株式会社製のNMD-Wを用いることができる。
【0081】
その後、同じく
図16(a)に示すように、開口部458g及び459gの内側にて、絶縁層232上に、開口部224を通じて半導体積層構造202に接触する金属膜412を形成する。金属膜412の形成に当たっては、例えば、高真空蒸着法によりNi層を形成し、その上に高真空蒸着法によりAu層を形成する。例えば、Ni層の厚さは10nm~30nmとし、Au層の厚さは200nm~400nmとする。図示を省略するが、金属膜412はレジストパターン459上にも形成される。
【0082】
続いて、
図16(b)に示すように、レジストパターン458及び459を、レジストパターン459上の金属膜412と共に除去する。この結果、開口部224を通じて半導体積層構造202に接するゲート電極406が形成される。このように、ゲート電極406の形成では、例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いることができる。
【0083】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、キャップ層202fの第2部242の構造の点で第4実施形態と相違する。
図17は、第5実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0084】
第5実施形態に係る半導体装置500では、
図17に示すように、第2部242が、第3実施形態と同様に、平面視で負電荷生成層231と重なる第3部242aと、第3部242aとドレイン電極205との間の第4部242bとを有する。第3部242aは第1部241より厚い。第4部242bの厚さは第1部241の厚さと同等である。例えば、第1部241及び第4部242bの厚さは2nm~3nmであり、第3部242aの厚さは5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。
【0085】
他の構成は第4実施形態と同様である。
【0086】
第5実施形態によっても第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
第5実施形態に係る半導体装置500は、例えば、半導体装置400の製造方法に、半導体装置300の製造方法におけるキャップ層202fの加工方法を組み合わせることで製造することができる。
【0088】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態は、キャップ層及びゲート電極の構造の点で第1実施形態と相違する。
図18は、第6実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0089】
第6実施形態に係る半導体装置600は、
図18に示すように、互いに積層された電子走行層(チャネル層)102c及び電子供給層(障壁層)102eと、キャップ層102fと、負電荷生成層131と、ソース電極104と、ドレイン電極105と、ゲート電極606とを有する。
【0090】
ソース電極104、ドレイン電極105及びゲート電極606は、電子供給層102eの上方に設けられている。ゲート電極606はソース電極104とドレイン電極105との間に設けられている。例えば、ゲート電極606は、基部606aと、基部606a上の傘部606bとを有する。キャップ層102fは、電子供給層102e上で、少なくともゲート電極606とドレイン電極105との間に設けられている。キャップ層102f上に負電荷生成層131が設けられている。
【0091】
ゲート電極606の下面はソース電極104側の縁からドレイン電極105側の縁にかけて段差を有し、ソース電極104側の下面661よりも、ドレイン電極105側の下面662の方が電子走行層102cから離れている。キャップ層102fは、電子供給層102eの上面とゲート電極606の下面662との間にも設けられている。下面662はキャップ層102fの上面に接している。つまり、ゲート電極606はキャップ層102f上に乗り上がるようにして形成されている。従って、平面視で、キャップ層102fのソース電極104側の縁は、負電荷生成層131のソース電極104側の縁よりもソース電極104に近い。
【0092】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0093】
第6実施形態によっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、第6実施形態では、ゲート電極606がキャップ層102f上に乗り上がるようにして形成されているため、ゲート電極606と電子走行層102cとの間でのトンネル確率を大幅に低減し、ドレイン耐圧を更に抑制することができる。
【0094】
ここで、第6実施形態に関するシミュレーションについて説明する。
図19~
図21は、第6実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0095】
図19(a)に、第1実施形態における電界強度の分布を示し、
図19(b)に、第6実施形態における電界強度の分布を示す。このシミュレーションでは、電子供給層102e上に厚さが2nmのキャップ層102gが設けられ、キャップ層102g上に厚さが10nmのGaN層がキャップ層102fとして設けられているものとして、電界強度の分布を調査した。また、第6実施形態(
図19(b))では、キャップ層102fのゲート長方向の50nmの部分にゲート電極606が乗り上がるようにして設けられているものとした。
【0096】
図19(a)に示すように、第1実施形態において電界が集中しやすい領域はゲート電極106のキャップ層102gと接する下面のドレイン電極側の端部近傍の領域である。これに対し、
図19(b)に示すように、第6実施形態において電界が集中しやすい領域はゲート電極606のキャップ層102gと接する下面のドレイン電極側の端部からドレイン電極側に離れた領域である。従って、第6実施形態によれば、更に優れたドレイン耐圧を得ることができる。
【0097】
図20に結果を示すシミュレーションでは、キャップ層102fが、厚さが10nmのGaN層であり、キャップ層102fのゲート長方向の50nmの部分にゲート電極606が乗り上がるようにして設けられ、負電荷生成層131に代えて、キャップ層102fの上面に種々の電荷が付与されたものとして、ゲート電圧とゲート電流との関係を調査した。キャップ層102fの上面に付与された電荷は、第1実施形態についてのシミュレーションと同様である(
図4及び
図5参照)。
【0098】
図5と
図20とを比較するとわかるように、第6実施形態によれば、ゲート電流を大幅に低減することができる。このことは、更に優れたドレイン耐圧が得られることを意味する。
【0099】
図21に結果を示すシミュレーションでは、第1実施形態及び第6実施形態において、キャップ層102fの厚さを変化させながら、負電荷生成層131に代えて、キャップ層102fの上面に正の電荷(正孔)が7.0×10
12cm
-2の濃度で付与されたときのゲート電圧とゲート電流との関係を調査した。キャップ層102fはGaN層であるものとし、第6実施形態では、キャップ層102fのゲート長方向の50nmの部分にゲート電極606が乗り上がるようにして設けられているものとした。
図21(a)に、第1実施形態に関するシミュレーションの結果を示し、
図21(b)に、第6実施形態に関するシミュレーションの結果を示す。
【0100】
図21に示すように、正の電荷が付与された場合ではあるが、キャップ層102fの一部にゲート電極606が乗り上がるようにして設けられることで、ゲート電流を大幅に低減することができる。
【0101】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。第7実施形態は、キャップ層及びゲート電極の構造の点で第2実施形態と相違する。
図22は、第7実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0102】
第7実施形態に係る半導体装置700では、
図22に示すように、ゲート電極206に代えてゲート電極706が設けられている。また、リセス221に代えて、リセス221よりもゲート長方向の寸法が小さいリセス721が形成されている。ゲート電極706は、基部706aと、基部706a上の傘部706bとを有し、ゲート電極706の断面形状は、例えば略T字型となっている。基部706aの下面はソース電極204側の縁からドレイン電極205側の縁にかけて段差を有し、ソース電極204側の下面761よりも、ドレイン電極205側の下面762の方が電子走行層202cから離れている。キャップ層202fは、電子供給層202eの上面と基部706aの下面762との間にも設けられている。下面761はリセス721内で電子供給層202eの上面に接し、下面762はキャップ層202fの上面に接している。つまり、ゲート電極706はキャップ層202f上に乗り上がるようにして形成されている。従って、平面視で、キャップ層202fの第2部242のソース電極204側の縁は、負電荷生成層231のソース電極204側の縁よりもソース電極204に近い。基部706aの下面762よりも上方の部分のゲート長方向の寸法は、リセス721のゲート長方向の寸法より大きい。基部706aの下面762よりも上方の部分のゲート長方向の寸法は、第2実施形態における基部206aのゲート長方向の寸法と同等であってもよい。傘部706bはゲート長方向で基部706aからソース電極204側及びドレイン電極205側の両側に広がる形状を有する。従って、傘部706bのゲート長方向の寸法は基部706aのゲート長方向の寸法よりも大きい。ゲート電極706の下面762とキャップ層202fの上面とは、ゲート長方向で50nm以上、かつゲート長の50%以下の範囲で互いに接していることが好ましい。
【0103】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0104】
第7実施形態によっても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
次に、第7実施形態に係る半導体装置700の製造方法について説明する。
図23~
図24は、第7実施形態に係る半導体装置700の製造方法を示す断面図である。
【0106】
まず、第2実施形態と同様にして、素子分離領域203の形成までの処理を行う(
図7(b)参照)。次いで、
図23(a)に示すように、リセス721を形成する予定の領域と、リセス721を形成する予定の領域とリセス222を形成する予定の領域との間の領域とに対応する開口部751xを有するレジストパターン751を半導体積層構造202上に形成する。その後、レジストパターン751をマスクとして用い、キャップ層202fのドライエッチングを行うことにより、開口部751xに倣う凹部702xをキャップ層202fに形成する。キャップ層202fのドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。キャップ層202fの残し厚は、例えば2nm~3nmとする。
【0107】
続いて、
図23(b)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン751を除去する。その後、リセス721を形成する予定の領域に対応する開口部752gを有するレジストパターン752を半導体積層構造202上に形成する。開口部752gのゲート長方向の寸法は、第2実施形態における開口部252gのゲート長方向の寸法よりも小さくする。続いて、レジストパターン752をマスクとして用い、キャップ層202fのドライエッチングを行うことにより、開口部752gに倣うリセス721をキャップ層202fに形成する。リセス721は凹部702xに繋がる。キャップ層202fのドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。
【0108】
次いで、
図23(c)に示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン752を除去する。その後、第2実施形態と同様にして、レジストパターン253の形成から層230の形成までの処理を行う。
【0109】
続いて、
図24(a)に示すように、負電荷生成層231を形成する予定の領域を覆うレジストパターン256を層230上に形成する。次いで、レジストパターン256をマスクとして用い、層230のドライエッチングを行うことにより、層230のレジストパターン256から露出している部分を除去する。この結果、キャップ層202f上に選択的に負電荷生成層231が形成される。負電荷生成層231は、第2部242のソース電極204側の縁が負電荷生成層231のソース電極204側の縁よりもソース電極204に近くなるように形成される。
【0110】
その後、
図24(b)に示すように、第2実施形態と同様にして、レジストパターン256の除去及びそれ以降の処理を行って、半導体装置700を完成させる。
【0111】
図25に、第7実施形態に倣った製造した半導体装置の3端子特性を示す。
図25(a)には、ドレイン電圧が0V~20Vの場合に、ゲート電圧Vgを-2V、-1V、0V、+1V、+2Vとしたときのドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。
図25(b)には、ドレイン電圧が0V~200Vの場合に、ゲート電圧Vgを-5Vとしたときのドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。
図25には、第7実施形態から負電荷生成層231が除かれた構造を備えた参考例の3端子特性も示す。
【0112】
図25に示すように、第7実施形態に倣った製造した半導体装置によれば、オン抵抗を低減することができ、ドレイン電流を増大させ、ドレイン耐圧を向上することができる。このことは、この半導体装置を適用した増幅器の高出力化及び高効率化を実現できることを示している。
【0113】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。第8実施形態は、キャップ層102fの第2部242の構造の点で第7実施形態と相違する。
図26は、第8実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0114】
第8実施形態に係る半導体装置800では、
図26に示すように、第2部242が、平面視で負電荷生成層231と重なる第3部242aと、第3部242aとドレイン電極205との間の第4部242bとを有する。基部706aの下面762は第3部242aの上面に接する。第3部242aは第1部241より厚い。第4部242bの厚さは第1部241の厚さと同等である。例えば、第1部241及び第4部242bの厚さは2nm~3nmであり、第3部242aの厚さは5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。
【0115】
他の構成は第7実施形態と同様である。
【0116】
第8実施形態によっても第7実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
第7実施形態と第8実施形態とを比較すると、例えば、ドレイン耐圧の観点からは第7実施形態が好ましい。
【0118】
第8実施形態に係る半導体装置800は、例えば、半導体装置700の製造方法に、半導体装置300の製造方法におけるキャップ層202fの加工方法を組み合わせることで製造することができる。
【0119】
(第9実施形態)
第9実施形態について説明する。第9実施形態は、ゲート電極の構造の点で第7実施形態と相違する。
図27は、第9実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0120】
第9実施形態に係る半導体装置900では、
図27に示すように、ゲート電極706に代えてゲート電極906が設けられている。ゲート電極906は、基部906aと、基部906a上の傘部906bとを有する。傘部906bの下面は絶縁層232の上面に接している。基部906aの下面はソース電極204側の縁からドレイン電極205側の縁にかけて段差を有し、ソース電極204側の下面961よりも、ドレイン電極205側の下面962の方が電子走行層202cから離れている。基部906aの下面の段差が傘部906bの下面に含まれていてもよい。キャップ層202fは、電子供給層202eの上面と基部906aの下面962との間にも設けられている。下面961はリセス721内で電子供給層202eの上面に接し、下面962はキャップ層202fの上面に接している。つまり、ゲート電極906はキャップ層202f上に乗り上がるようにして形成されている。従って、平面視で、キャップ層202fの第2部242のソース電極204側の縁は、負電荷生成層231のソース電極204側の縁よりもソース電極204に近い。傘部906bはゲート長方向で基部906aからソース電極204側及びドレイン電極205側の両側に広がる形状を有する。従って、傘部906bのゲート長方向の寸法は基部906aのゲート長方向の寸法よりも大きい。ゲート電極906の下面962とキャップ層202fの上面とは、ゲート長方向で50nm以上、かつゲート長の50%以下の範囲で互いに接していることが好ましい。
【0121】
他の構成は第7実施形態と同様である。
【0122】
第9実施形態に係る半導体装置900は、例えば、半導体装置700の製造方法に、半導体装置400の製造方法におけるゲート電極406の形成方法を組み合わせることで製造することができる。
【0123】
(第10実施形態)
第10実施形態について説明する。第10実施形態は、キャップ層202fの第2部242の構造の点で第9実施形態と相違する。
図28は、第10実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0124】
第10実施形態に係る半導体装置1000では、
図28に示すように、第2部242が、第8実施形態と同様に、平面視で負電荷生成層231と重なる第3部242aと、第3部242aとドレイン電極205との間の第4部242bとを有する。第3部242aは第1部241より厚い。第4部242bの厚さは第1部241の厚さと同等である。例えば、第1部241及び第4部242bの厚さは2nm~3nmであり、第3部242aの厚さは5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。
【0125】
他の構成は第9実施形態と同様である。
【0126】
第10実施形態によっても第9実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
なお、ゲート電極の基部とドレイン電極との間、かつゲート電極の傘部の下方において、キャップ層の厚さは6nm以上であることが好ましい。キャップ層が厚いほど、2DEGの濃度を低く抑えることができ、キャップ層のこの部分の厚さが6nm以上のときに特に優れたドレイン耐圧を得ることができる。キャップ層のこの部分の厚さは10nm以上であることがより好ましい。
【0128】
ゲート電極とソース電極との間において、キャップ層の厚さは2nm以上であることが好ましい。本願発明者らがゲート電極とソース電極との間のGaNのキャップ層の厚さを変化させて移動度を測定したところ、下記表1の結果が得られた。表1中の相対移動度は、キャップ層の厚さが10nmのときの移動度を1.00として規格化した相対移動度である。
【0129】
【0130】
表1に示すように、0nm~3nmの間で、ゲート電極とソース電極との間のキャップ層が厚いほど、高い相対移動度が得られた。なお、ゲート電極とソース電極との間のキャップ層が厚いほど、シート抵抗が高くなる。従って、所望のシート抵抗が得られる範囲内で、ゲート電極とソース電極との間において、キャップ層の厚さは2nm以上であることが好ましい。
【0131】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態について説明する。第11実施形態は、HEMTのディスクリートパッケージに関する。
図29は、第11実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【0132】
第11実施形態では、
図29に示すように、第1~第10実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置1210の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてランド(ダイパッド)1233に固定されている。また、ドレイン電極105又は205が接続されたドレインパッド1226dに、Alワイヤ等のワイヤ1235dが接続され、ワイヤ1235dの他端が、ランド1233と一体化しているドレインリード1232dに接続されている。ソース電極104又は204に接続されたソースパッド1226sにAlワイヤ等のワイヤ1235sが接続され、ワイヤ1235sの他端がランド1233から独立したソースリード1232sに接続されている。ゲート電極106、206、406、606、706又は906に接続されたゲートパッド1226gにAlワイヤ等のワイヤ1235gが接続され、ワイヤ1235gの他端がランド1233から独立したゲートリード1232gに接続されている。そして、ゲートリード1232gの一部、ドレインリード1232dの一部及びソースリード1232sの一部が突出するようにして、ランド1233及び半導体装置1210等がモールド樹脂1231によりパッケージングされている。
【0133】
このようなディスクリートパッケージは、例えば、次のようにして製造することができる。先ず、半導体装置1210をはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてリードフレームのランド1233に固定する。次いで、ワイヤ1235g、1235d及び1235sを用いたボンディングにより、ゲートパッド1226gをリードフレームのゲートリード1232gに接続し、ドレインパッド1226dをリードフレームのドレインリード1232dに接続し、ソースパッド1226sをリードフレームのソースリード1232sに接続する。その後、トランスファーモールド法にてモールド樹脂1231を用いた封止を行う。続いて、リードフレームを切り離す。
【0134】
(第12実施形態)
次に、第12実施形態について説明する。第12実施形態は、HEMTを備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。
図30は、第12実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0135】
PFC回路1250には、スイッチ素子(トランジスタ)1251、ダイオード1252、チョークコイル1253、コンデンサ1254及び1255、ダイオードブリッジ1256、並びに交流電源(AC)1257が設けられている。そして、スイッチ素子1251のドレイン電極と、ダイオード1252のアノード端子及びチョークコイル1253の一端子とが接続されている。スイッチ素子1251のソース電極と、コンデンサ1254の一端子及びコンデンサ1255の一端子とが接続されている。コンデンサ1254の他端子とチョークコイル1253の他端子とが接続されている。コンデンサ1255の他端子とダイオード1252のカソード端子とが接続されている。また、スイッチ素子1251のゲート電極にはゲートドライバが接続されている。コンデンサ1254の両端子間には、ダイオードブリッジ1256を介してAC1257が接続される。コンデンサ1255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子1251に、第1~第10実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置が用いられている。
【0136】
PFC回路1250の製造に際しては、例えば、はんだ等を用いて、スイッチ素子1251をダイオード1252及びチョークコイル1253等に接続する。
【0137】
(第13実施形態)
次に、第13実施形態について説明する。第13実施形態は、サーバ電源に好適な、HEMTを備えた電源装置に関する。
図31は、第13実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0138】
電源装置には、高圧の一次側回路1261及び低圧の二次側回路1262、並びに一次側回路1261と二次側回路1262との間に配設されるトランス1263が設けられている。
【0139】
一次側回路1261には、第12実施形態に係るPFC回路1250、及びPFC回路1250のコンデンサ1255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路1260が設けられている。フルブリッジインバータ回路1260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dが設けられている。
【0140】
二次側回路1262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cが設けられている。
【0141】
本実施形態では、一次側回路1261を構成するPFC回路1250のスイッチ素子1251、並びにフルブリッジインバータ回路1260のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dに、第1~第10実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置が用いられている。一方、二次側回路1262のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0142】
(第14実施形態)
次に、第14実施形態について説明する。第14実施形態は、HEMTを備えた増幅器に関する。
図32は、第14実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【0143】
増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路1271、ミキサー1272a及び1272b、並びにパワーアンプ1273が設けられている。
【0144】
ディジタル・プレディストーション回路1271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー1272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ1273は、第1~第10実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置を備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー1272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路1271に送出できる。この増幅器は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。高周波増幅器は、例えば、携帯電話基地局用送受信装置、レーダー装置及びマイクロ波発生装置に用いることができる。
【0145】
本開示において、半導体層の組成は、上記の実施形態に記載されたものに限定されない。例えば、InAlN、InGaAlN等の窒化物半導体層が用いられてもよい。
【0146】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0147】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0148】
(付記1)
互いに積層された電子走行層及び電子供給層と、
前記電子供給層の上方に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、
前記電子供給層上で、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に設けられた第1キャップ層と、
前記第1キャップ層上に設けられ、負の電荷を生成する負電荷生成層と、
を有することを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記ゲート電極は、
基部と、
前記基部上に設けられ、少なくとも前記基部よりも前記ドレイン電極側に広がる部分を備えた傘部と、
を有し、
前記負電荷生成層は、前記傘部の前記ドレイン電極側の端部と前記電子供給層との間に設けられていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記ゲート電極は、前記基部と前記ドレイン電極との間で前記第1キャップ層の上面に接する下面を有することを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記ゲート電極の前記下面と前記第1キャップ層の前記上面とは、ゲート長方向で50nm以上、かつゲート長の50%以下の範囲で互いに接していることを特徴とする付記3に記載の半導体装置。
(付記5)
前記第1キャップ層の前記傘部の前記ドレイン電極側の端部と前記電子供給層との間の部分の厚さは6nm以上であることを特徴とする付記2乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記電子供給層上で、前記ゲート電極と前記ソース電極との間に設けられ、前記第1キャップ層より厚さが薄い第2キャップ層をさらに有することを特徴とする付記2乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記第2キャップ層の厚さは2nm以上であることを特徴とする付記6に記載の半導体装置。
(付記8)
前記負電荷生成層は正孔よりも電子を多く含み、負に帯電していることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記負電荷生成層は、ストイキオメトリよりも、陰イオン又は電気陰性度の高い元素が過剰な組成を有することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記10)
前記負電荷生成層は、m種類(mは自然数)の陽イオンとなる元素と、n種類(nは自然数)の陰イオンとなる元素とから構成され、
前記負電荷生成層の組成をAmXm・・・BnYn・・・と表し、元素Amの陽イオンの価数をamとし、元素Bnの陰イオンの価数をbnとしたとき、
Σam×Xm-Σbn×Ynが負であることを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記11)
前記負電荷生成層は、シリコン及び窒素から構成され、
前記負電荷生成層の組成をSiXNYと表したとき、X/Yの値が3/4より小さいことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記12)
前記負電荷生成層は、アルミニウム及び酸素から構成され、
前記負電荷生成層の組成をAlXOYと表したとき、X/Yの値が2/3より小さいことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記13)
付記1乃至12のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする増幅器。
(付記14)
付記1乃至12のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【符号の説明】
【0149】
100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000:半導体装置
102c、202c:電子走行層
102e、202e:電子供給層
102f、202f:キャップ層
104、204:ソース電極
105、205:ドレイン電極
106、206、406、606、706、906:ゲート電極
106a、206a、406a、606a、706a、906a:基部
106b、206b、406b、606b、706b、906b:傘部
131、231:負電荷生成層
661、662、761、762、961、962:下面