(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2020011682
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】深谷 守
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237831(JP,A)
【文献】特開2017-009881(JP,A)
【文献】特開2018-072502(JP,A)
【文献】特開2014-041172(JP,A)
【文献】特開2002-072736(JP,A)
【文献】特開2011-242686(JP,A)
【文献】特開2017-122853(JP,A)
【文献】特開2009-180789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着ベルトと、
前記定着ベルトの外側から圧接してニップ部を形成する加圧ローラと、
定着ベルトの内側に前記加圧ローラと対向して配置され、加圧ローラと定着ベルトの間に前記ニップ部を形成させるニップ形成部材と、
前記定着ベルトの内側に配置された加熱体と、
前記定着ベルトの内側に配置され、前記加熱体からの輻射熱を反射する反射部材と、
を備え、
前記加熱体は、内部熱源によって加熱されるとともに、前記定着ベルトの内面に接触して回転することにより、前記定着ベルトを伝熱加熱する加熱ローラであり、
前記反射部材は、該反射部材により反射された前記加熱体からの輻射熱が、加熱体を避けて前記定着ベルトに照射される態様で配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
該反射部材により反射された前記加熱体からの輻射熱は、前記ニップ部の上流側において前記定着ベルトに照射される請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップ形成部材は、固定配置されたパッド部材である請求項1
または2に記載の定着装置。
【請求項4】
画像形成手段と、
該画像形成手段により形成され用紙に転写された画像を定着する請求項1~
3のいずれかに記載の定着装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置として、定着ベルトを挟んで定着ベルトの内側にニップ形成部材を、外側に加圧ローラを、圧接状態で配置することにより、加圧ローラと定着ベルトの間に、用紙を通過させて用紙上のトナー像を定着するニップ部を形成した構成のものが、従来より知られている。また、定着ベルトを加熱するために定着ベルトの内側に加熱体を配置することが一般に行われている。
【0003】
加熱体としては、内部熱源によって加熱されるとともに、定着ベルトの内面に接触して回転することにより、定着ベルトを伝熱加熱する加熱ローラがある。あるいは、定着ベルトの内面を輻射熱により直接に加熱すること等も行われている。
【0004】
しかし、このような定着装置では、加熱体からの輻射熱が本来意図していない部位、例えばニップ形成部材等に照射されることがある。
【0005】
そこで、このような加熱体からの本来意図していない部位への輻射熱を防止するため、加熱体と意図していない部位との間に反射部材を配置し、加熱体から意図していない部位へ照射される輻射熱を反射部材によって反射させることが提案されている(例えば特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-96989号公報
【文献】特開2016-177136号公報
【文献】特開2016-90694号公報
【文献】特開2014-146063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、反射部材を設けた上記の特許文献1~4は、いずれも、反射部材で反射された加熱体からの輻射熱の少なくとも一部が加熱体に戻るため、次のような問題があった。
【0008】
即ち、加熱体が加熱ローラである場合、加熱ローラは伝熱により定着ベルトを加熱するため、反射部材により加熱ローラへと輻射熱が反射されても、この輻射熱による加熱ローラの加熱効率は悪く、このため反射された輻射熱の有効利用を行うことができず、省エネ性が悪化するという問題がある。
【0009】
また、加熱体の輻射熱により定着ベルトを直接に加熱する定着装置の場合、反射部材から反射された輻射熱がハロゲンヒータ等の加熱体に戻ると、ヒータのガラス管温度が上がり、フィラメントが劣化し易くなりフィラメントの寿命が短くなる(フィラメントの溶断)とか、シール部の温度も上がりモリブデン箔が破損し寿命低下するといった問題がある。
【0010】
この発明はこのような技術的背景に鑑みてなされたものであって、反射部材によって反射される加熱体からの輻射熱の有効利用を図ることができるとともに、反射された輻射熱による加熱体の寿命低下を防止できる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)回転する定着ベルトと、前記定着ベルトの外側から圧接してニップ部を形成する加圧ローラと、定着ベルトの内側に前記加圧ローラと対向して配置され、加圧ローラと定着ベルトの間に前記ニップ部を形成させるニップ形成部材と、前記定着ベルトの内側に配置された加熱体と、前記定着ベルトの内側に配置され、前記加熱体からの輻射熱を反射する反射部材と、を備え、前記加熱体は、内部熱源によって加熱されるとともに、前記定着ベルトの内面に接触して回転することにより、前記定着ベルトを伝熱加熱する加熱ローラであり、前記反射部材は、該反射部材により反射された前記加熱体からの輻射熱が、加熱体を避けて前記定着ベルトに照射される態様で配置されていることを特徴とする定着装置。
(2)該反射部材により反射された前記加熱体からの輻射熱は、前記ニップ部の上流側において前記定着ベルトに照射される前項1に記載の定着装置。
(3)前記ニップ形成部材は、固定配置されたパッド部材である前項1または2に記載の定着装置。
(4)画像形成手段と、該画像形成手段により形成され用紙に転写された画像を定着する前項1~3のいずれかに記載の定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、反射部材は、該反射部材により反射された加熱体である加熱ローラからの輻射熱が、加熱体を避けて定着ベルトに照射される態様で配置されているから、反射部材で反射された加熱体からの輻射熱を定着ベルトの加熱に有効に利用することができ、省エネ性の悪化を防止することができる。しかも、反射された輻射熱は加熱体へと戻らないから、加熱体がハロゲンヒータ等であっても破損等が発生せず、加熱体の寿命を長くすることができる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、反射部材により反射された加熱体からの輻射熱は、ニップ部の上流側において定着ベルトに照射されるから、ニップ部に到達して用紙上のトナーを加熱する前の段階で定着ベルトを加熱することができ、さらに効率が良くなる。
【0017】
前項(3)に記載の発明によれば、ニップ形成部材は、固定配置されたパッド部材である定着装置において、反射部材で反射された加熱体からの輻射熱を定着ベルトの加熱に有効に利用することができ、また加熱体がハロゲンヒータ等であっても破損等が発生せず、加熱体の寿命を長くすることができる。
【0018】
前項(4)に記載の発明によれば、定着装置において、反射部材で反射された加熱体からの輻射熱を定着ベルトの加熱に有効に利用することができ、しかも反射された輻射熱が加熱体へと戻ることによる加熱体の破損等を防止した画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の一実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
【
図3】(A)(B)はこの発明の他の実施形態に係る定着装置の構成図である。
【
図4】(A)(B)はこの発明のさらに他の実施形態に係る定着装置の構成図である。
【
図5】(A)(B)はこの発明のさらに他の実施形態に係る定着装置の構成図である。
【
図6】(A)(B)はこの発明のさらに他の実施形態に係る定着装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成図である。この例では、画像形成装置1としてタンデム型のカラープリンタが用いられている。
【0022】
図1において、この画像形成装置1は、装置本体1Aの下部に給紙部20が、中央部に画像形成部10が、上部に排紙部60がそれぞれ配置されて構成されている。給紙部20には複数(この例では2個)の給紙カセット21が備えられ、各給紙カセット21から排紙部60にかけては給紙部20から繰り出された用紙Sを上方へ搬送する用紙搬送路22が形成されている。
【0023】
画像形成部10は、装置本体1Aの上下方向の略中央に配置された駆動ローラ16及び従動ローラ15と、これら駆動および従動ローラ16,15間に水平に掛設されて矢印方向へ走行する中間転写ベルト14と、この走行方向に沿って配置されたイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の作像ユニットである感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kとを備えている。
【0024】
各感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kで作成されたトナー画像を重ね合わせて転写ベルト14に転写し、用紙搬送路22を搬送されてくる用紙Sに対して転写ベルト14の搬送端(図中右端)で2次転写を行い、用紙Sを定着装置30に送給してトナー画像の定着を行うようになっている。定着装置30については後述する。
【0025】
各感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kは、静電複写方式により作像するもので、それらの周囲に配設された帯電器と、現像器11Y,11M,11C,11Kと、感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kと、転写器等とを備えている。また、4個のレーザーダイオード、ポリゴンミラー、および走査レンズ等を有するプリントヘッド41ならびに4つの反射ミラー42等を備えた露光部40の各レーザーダイオードにより、帯電器により帯電された各感光体ドラム13Y,13M,13C,13Kの表面が露光され、該表面に静電潜像が形成されるようになっている。
【0026】
また、各感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kの現像器11Y,11M,11C,11Kにトナーを補給する補給機構として、トナーカートリッジ70Y,70M,70C,70Kおよびサブホッパ80Y,80M,80C,80Kが前記感光体ユニット12Y,12M,12C,12Kの上方位置に配置されている。
【0027】
なお、
図1中、符号50はハードキーや表示部を備えた操作パネル部である。
[第1の実施形態]
図2は定着装置30の構成を示す図である。
図2では便宜上、下側に加圧ローラ302が上側に定着ベルト301が配置されて、用紙が矢印Pで示すように右から左へ搬送される状態で示されているが、用紙の搬送方向は上下方向であっても良く、限定されない。
【0028】
定着装置30は、紙面厚さ方向を幅方向とする定着ベルト301と、加圧ローラ302と、定着ベルト301の内面側に配置されたパッド部材(ニップ形成部材に相当)303と、パッド部材303を境に加圧ローラ302と反対側の位置に配置され、定着ベルト301が掛け渡された加熱ローラ304を備えている。
【0029】
定着ベルト301は、可塑性及び耐熱性の無端状ベルトであり、例えば、基層と、基層の外側に接着層を介して設けられた弾性層と、さらにその外側に接着層を介して設けられた離型層により構成されている。基層は耐熱性、高強度が要求されるため、例えば厚さ30~100μm程度のポリイミド樹脂、ニッケル、SUS等が用いられる。弾性層は耐熱性、低硬度、高強度である厚さ50~500μm程度のシリコーンゴム等が用いられる。離型層は離形性の良い厚さ10~50μm程度のフッ素樹脂等が用いられる。
【0030】
パッド部材303は、
図2の紙面厚さ方向に延設されており、定着ベルト301を挟んで加圧ローラ302と対向して固定状態に配置されている。パッド部材303は、耐熱性及び形状自由度が要求されることから、PEEK、LCP等の耐熱樹脂により形成されている。
【0031】
加圧ローラ302は、
図2の紙面厚さ方向を軸方向として配置されている。加圧ローラ302は、例えば、芯金上にシリコーンスポンジゴム層が設けられ、その外側に離型層としてPFA樹脂等からなるチューブが被覆して構成されており、周面の一部を定着ベルト301に接触させパッド部材303を加圧する状態に配置されている。これによって、加圧ローラ302とパッド部材303の間に定着ベルト301を介してニップ部305が形成されている。加圧ローラ302は、図示しないモータ等の駆動源からの回転を与えられて
図2に矢印R1で示す方向に回転し、この回転によって定着ベルト301も
図2の矢印R2の方向に回転し、矢印Pで示す方向に搬送される用紙を取り込んでニップ部305を通過させる。
【0032】
定着ベルト301の回転により、定着ベルト301の内面とパッド部材303とが摺動するが、摺動抵抗を小さくして加圧ローラ302の駆動トルクを小さくするために、パッド部材303における定着ベルト301との接触面に、フッ素層を形成しても良い。
【0033】
加熱ローラ304は、
図2の紙面厚さ方向を軸方向として配置されている。加熱ローラ304は定着ベルト301を加熱する加熱体として作用するものであり、アルミニウム、SUS、鉄等の金属により形成されるとともに、加熱ローラ304の内部には、ヒーターランプ等の熱源306が配置されている。そして、熱源306により加熱された加熱ローラ304の熱は定着ベルト301に伝熱され、これにより定着ベルト301は加熱される。加熱された定着ベルト301の熱はニップ部305に運ばれ、ニップ部305を通過する用紙を加熱し、用紙上に形成されたトナー像を用紙に定着させる。
【0034】
定着ベルト301の内側において、パッド部材303と加熱ローラ304の間のパッド部材303寄りの位置には、反射部材307が配置されている。この反射部材307は、
図2の紙面厚さ方向に延びるとともに、加熱ローラ304の長さとほぼ同じ長さを有する板状の部材であり、用紙搬送方向Pの下流側(
図2の左側)の端縁307aがパッド部材303から離間し、用紙搬送方向Pの上流側(
図2の右側)の端縁307bがパッド部材303に近接した傾斜状態で配置されている。また、反射部材307の少なくとも加熱ローラ304側の面は反射面に形成されている。
【0035】
この反射部材は、加熱ローラ304からパッド部材303の方向に輻射される輻射熱を、定着ベルト301の内面に反射させる役割を果たすものであり、アルミニウム、SUS等の金属から構成されても良いし、PI、PEEK等の耐熱樹脂の表面にアルミニウム等の蒸着やメッキを施してもよい。加熱ローラ304側の反射面の反射率は0.85以上であるのが望ましい。また、反射面で反射された加熱ローラ304からの輻射熱が加熱ローラ304に戻るのを避けて、反射された輻射熱の全てがニップ部305の上流側における定着ベルト301の内面へと照射されるように、反射部材307の配置位置、傾斜角度等が設定されている。
【0036】
具体的には、
図2(A)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱ローラ304の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A1は、矢印A2で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B1に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱ローラ304の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A3は、矢印A4で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B2に至る。
【0037】
一方、
図2(B)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱ローラ304の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A5は、矢印A6で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B3に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱ローラ304の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A7は、矢印A8で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B4に至る。
【0038】
従って、加熱ローラ304の周面から反射部材307の反射面に向けて放射される全ての輻射熱は、定着ベルト301における
図2(A)の点B2から、同図(B)に示す点B3までの領域内に反射されるはずであり、従って点B2から点B3までの領域が定着ベルト301上に収まるように、反射部材307が配置されており、これにより、反射部材307により反射された加熱ローラ304からの輻射熱が、加熱ローラ304を避けて定着ベルト301に照射される状態となる。
【0039】
このため、従来では一部が反射部材307により加熱ローラ304へと戻る方向に反射されていた輻射熱は、加熱ローラ304を避けて定着ベルト301に照射されるから、反射部材307で反射された加熱ローラ304からの輻射熱を定着ベルト301の加熱に有効に利用することができ、省エネ性の悪化を防止することができる。
【0040】
しかも、反射部材307により反射された加熱ローラ304からの輻射熱は、ニップ部305の上流側において定着ベルト301に照射されるから、ニップ部305に到達して用紙上のトナーを加熱する前の段階で定着ベルト301を加熱することができ、さらに効率が良くなる。
[第2の実施形態]
図3(A)(B)はこの発明の他の実施形態に係る定着装置30の構成図である。この実施形態では、反射部材307の上流側の端部が加熱ローラ304側に屈曲されている。この実施形態においても、反射部材307の反射面で反射された加熱ローラ304からの輻射熱が加熱ローラ304に戻るのを避けて、反射された輻射熱の全てがニップ部305の上流側における定着ベルト301の内面へと照射されるように設定されている。なお、反射部材307以外の構成は
図2(A)(B)の実施形態の定着装置30と同じであるので、説明は省略する。
【0041】
具体的には、
図3(A)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱ローラ304の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307aの反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A1は、矢印A2で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B1に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の屈曲状の端縁307bから加熱ローラ304の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A3は、矢印A4で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B2に至る。
【0042】
一方、
図3(B)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱ローラ304の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A5は、矢印A6で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B3に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱ローラ304の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A7は、矢印A8で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B4に至る。
【0043】
従って、加熱ローラ304の周面から反射部材307の反射面に向けて放射される全ての輻射熱は、定着ベルト301の内面における
図3(A)の点B2から、同図(B)に示す点B3までの領域内に反射されるはずであり、従って点B2から点B3までの領域が定着ベルト301上に収まるように、反射部材307が配置されており、これにより、反射部材307により反射された加熱ローラ304からの輻射熱が、加熱ローラ304を避けて定着ベルト301に照射される状態となる。
【0044】
このため、従来では一部が反射部材307により加熱ローラ304へと戻る方向に反射されていた輻射熱は、加熱ローラ304を避けて定着ベルト301に照射されるから、反射部材307で反射された加熱ローラ304からの輻射熱を定着ベルト301の加熱に有効に利用することができ、省エネ性の悪化を防止することができる。
【0045】
しかも、反射部材307により反射された加熱ローラ304からの輻射熱は、ニップ部305の上流側において定着ベルト301に照射されるから、ニップ部305に到達して用紙上のトナーを加熱する前の段階で定着ベルト301を加熱することができ、さらに効率が良くなる。
[第3の実施形態]
図4(A)(B)は、この発明の更に他の実施形態に係る定着装置30の構成図である。この実施形態では、反射部材307の用紙搬送方向Pの下流側の端縁307aがパッド部材303に近接し、用紙搬送方向Pの上流側の端縁307bがパッド部材303から離間して、反射部材307は
図2(A)(B)に示す反射部材307とは逆方向に傾斜している。
図4(A)(B)に示す実施形態においては、反射部材307の反射面で反射された加熱ローラ304からの輻射熱が加熱ローラ304に戻るのを避けて、反射された輻射熱の全てがニップ部305の下流側における定着ベルト301の内面へと照射されるように設定されている。なお、反射部材307以外の構成は
図2(A)(B)の実施形態の定着装置30と同じであるので、説明は省略する。
【0046】
具体的には、
図4(A)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱ローラ304の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A1は、矢印A2で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B1に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱ローラ304の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A3は、矢印A4で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B2に至る。
【0047】
一方、
図4(B)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱ローラ304の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A5は、矢印A6で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B3に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱ローラ304の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱ローラ304との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A7は、矢印A8で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B4に至る。
【0048】
従って、加熱ローラ304の周面から反射部材307の反射面に向けて放射される全ての輻射熱は、定着ベルト301における
図4(A)の点B1から、同図(B)に示す点B4までの領域内に反射されるはずであり、従って点B1から点B4までの領域が定着ベルト301上に収まるように、反射部材307が配置されており、これにより、反射部材307により反射された加熱ローラ304からの輻射熱が、加熱ローラ304を避けて定着ベルト301に照射される状態となる。
【0049】
このため、従来では一部が反射部材307により加熱ローラ304へと戻る方向に反射されていた輻射熱は、加熱ローラ304を避けて定着ベルト301に照射されるから、反射部材307で反射された加熱ローラ304からの輻射熱を定着ベルト301の加熱に有効に利用することができ、省エネ性の悪化を防止することができる。
[第4の実施形態]
図5(A)(B)は、この発明の更に他の実施形態に係る定着装置30の概略構成図である。この実施形態に係る定着装置30は、定着ベルト301の内側におけるパッド部材303と反対側の位置に、
図5の紙面厚さ方向に長い棒状のハロゲンヒータ等の熱源からなる加熱体308を、その長さ方向の両端部を図示しない支持部材により支持された状態で備えており、加熱体308の輻射熱により定着ベルト301の内面を直接に加熱するようになっている。なお、加圧ローラ302及びパッド部材303の構成は
図2(A)(B)に示した実施形態の定着装置30と同じである。
【0050】
図5(A)(B)に示した実施形態においても、定着ベルト301の内側において、パッド部材303と加熱体308の間のパッド部材303寄りの位置には、加熱体308の長さとほぼ同じ長さを有する板状の反射部材307が、用紙搬送方向Pの下流側(
図5の左側)の端縁307aがパッド部材303から離間し、用紙搬送方向Pの上流側(
図5の右側)の端縁307bがパッド部材303に近接した傾斜状態で配置されている。また、反射部材307の加熱体308側の面は反射面に形成されている。
【0051】
この反射部材307は、加熱体308からパッド部材303の方向に輻射される輻射熱を、定着ベルト301の内面に反射させる役割を果たすものであるが、反射面で反射された輻射熱が加熱体308に戻るのを避けて、反射された輻射熱の全てがニップ部305の上流側における定着ベルト301の内面へと照射されるように、反射部材307の配置位置、傾斜角度等が設定されている。
【0052】
具体的には、
図5(A)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱体308の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A1は、矢印A2で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B1に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱体308の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材308の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A3は、矢印A4で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B2に至る。
【0053】
一方、
図5(B)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱体308の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A5は、矢印A6で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B3に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱体308の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A7は、矢印A8で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B4に至る。
【0054】
従って、加熱体308から反射部材307の反射面に向けて放射される全ての輻射熱は、定着ベルト301における
図5(A)の点B2から、同図(B)に示す点B3までの領域内に反射されるはずであり、従って点B2から点B3までの領域が定着ベルト301上に収まるように、反射部材307が配置されており、これにより、反射部材307により反射された加熱体308からの輻射熱が、加熱体308を避けて定着ベルト301に照射される状態となる。
【0055】
このため、従来では一部が反射部材307により加熱体308へと戻る方向に反射されていた輻射熱は、加熱体308を避けて定着ベルト301に照射されるから、反射部材307で反射された加熱体308からの輻射熱を定着ベルト301の加熱に有効に利用することができ、省エネ性の悪化を防止することができる。ただし、加熱体308の外径は加熱ローラ304に較べて小さいため、反射部材307により加熱体308を避けて定着ベルト301に反射させた場合の省エネ性の悪化防止効果は、加熱ローラ304を避けて反射させた場合の効果よりも小さい。
【0056】
また、反射された輻射熱は加熱体308へと戻らないから、加熱体308がハロゲンヒータ等であっても破損等が発生せず、加熱体308の寿命を長くすることができる。
【0057】
さらに、反射部材307により反射された加熱体308からの輻射熱は、ニップ部305の上流側において定着ベルト301に照射されるから、ニップ部305に到達して用紙上のトナーを加熱する前の段階で定着ベルト301を加熱することができ、さらに効率が良くなる。
[第5の実施形態]
図6(A)(B)は、この発明の更に他の実施形態に係る定着装置30の概略構成図である。この実施形態に係る定着装置30は、定着ベルト301の内側におけるパッド部材303に近接した位置に、
図6の紙面厚さ方向に長い棒状のハロゲンヒータ等の熱源からなる加熱体308を備えており、加熱体308の輻射熱によりパッド部材303を直接に加熱し、定着ベルト301はパッド部材303からの伝熱により加熱されるようになっている。なお、加圧ローラ302及びパッド部材303の構成は
図2(A)(B)に示した実施形態の定着装置30と同じである。
【0058】
図6(A)(B)に示した実施形態では、定着ベルト301の内側において、加熱体308を境にパッド部材303と反対側の位置に、加熱体308の長さとほぼ同じ長さを有する板状の反射部材307が、用紙搬送方向Pの下流側(
図6の左側)の端縁307aが加熱体308に近接し、用紙搬送方向Pの上流側(
図6の右側)の端縁307bが加熱体308から離間した傾斜状態で配置されている。また、反射部材307の加熱体308側の面は反射面に形成されている。
【0059】
この反射部材307は、加熱体308からパッド部材303と反対側の方向に輻射される輻射熱を、ニップ部305の上流側において定着ベルト301の内面に反射させる役割を果たすものであり、反射面で反射された輻射熱の全てがニップ部305の上流側における定着ベルト301の内面へと照射されるように、反射部材307の配置位置、傾斜角度等が設定されている。
【0060】
具体的には、
図6(A)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱体308の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A1は、矢印A2で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B1に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱体308の下流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A3は、矢印A4で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B2に至る。
【0061】
一方、
図6(B)に示すように、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aから加熱体308の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の下流側の端縁307aに向けて放射される輻射熱A5は、矢印A6で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B3に至る。また、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bから加熱体308の上流側の周面に向けて接線を引いたとき、この接線と加熱体308との接点から、反射部材307の反射面の上流側の端縁307bに向けて放射される輻射熱A7は、矢印A8で示す方向に反射して定着ベルト301の内面上の点B4に至る。
【0062】
従って、加熱体308から反射部材307の反射面に向けて放射される全ての輻射熱は、定着ベルト301における
図6(A)の点B2から、同図(B)に示す点B3までの領域内に反射されるはずであり、従って点B2から点B3までの領域が定着ベルト301上に収まるように、反射部材307が配置されており、これにより、反射部材307により反射された加熱体308からの輻射熱が、ニップ部303の上流側において定着ベルト301に照射される状態となる。
【0063】
このように、反射部材307により反射された加熱ローラ304からの輻射熱は、ニップ部305の上流側において定着ベルト301に照射されるから、反射部材307が存在しない場合に較べて、よりニップ部303に近い領域で定着ベルト301を加熱することができ、加熱効率が良くなる。しかも、反射された輻射熱は加熱体308へと戻らないから、加熱体308がハロゲンヒータ等であっても破損等が発生せず、加熱体の寿命を長くすることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、ニップ部303が、定着ベルト301を介して対向配置された加圧ローラ302とパッド部材303とにより形成される場合を示したが、パッド部材303ではなく回転可能なローラ状部材であっても良い。
【0065】
また、反射部材307の形状は上記実施形態に限定されることはなく、パッド部材303の形状や加熱ローラ304との距離等に応じて形状を変更しても良く、例えば断面湾曲形状であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
10 画像形成部
20 給紙部
30 定着装置
301 定着ベルト
302 加圧ローラ
303 パッド部材(ニップ形成部材)
304 加熱ローラ(加熱体)
305 ニップ部
306 熱源
307 反射部材
307a 反射部材の下流側の端縁
307b 反射部材の上流側の端縁
308 加熱体