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特許7443790金属銀含有構成物及び金属銀含有構成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】金属銀含有構成物及び金属銀含有構成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/09 20060101AFI20240228BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240228BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20240228BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B32B15/09 Z
C09D11/00 ZNM
C23C28/00 A
C23C26/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020013253
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021119037
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】洪 達超
(72)【発明者】
【氏名】今 喜裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228694(JP,A)
【文献】特開2013-058389(JP,A)
【文献】特開2014-056205(JP,A)
【文献】特開2013-080222(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/09
C09D 11/00
C23C 28/00
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属銀を含有する金属銀含有構成物であって、
前記金属銀が、有機層で覆われており、
当該有機層が、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記有機層が、連続相を形成していることを特徴とする金属銀含有構成物。
【請求項2】
金属銀を含有する金属銀含有構成物であって、
前記金属銀が、有機層で覆われており、
当該有機層が、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記金属銀が、銀蒸着膜であることを特徴とする金属銀含有構成物。
【請求項3】
前記有機層の厚さが、50~5000nmの範囲内であることを特徴とする請求項に記載の金属銀含有構成物。
【請求項4】
前記金属銀が、銀ナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の金属銀含有構成物。
【請求項5】
互いに隣接する前記銀ナノ粒子間に存在する前記有機層の厚さが、5~100nmの範囲内であることを特徴とする請求項に記載の金属銀含有構成物。
【請求項6】
請求項又は請求項に記載の金属銀含有構成物を製造する製造方法であって、
前記銀蒸着膜を形成する工程と、
前記銀蒸着膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属銀含有構成物の製造方法。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載の金属銀含有構成物を製造する製造方法であって、
前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含有する塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属銀含有構成物の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の金属銀含有構成物を製造する製造方法であって、
前記銀ナノ粒子を含有する塗布膜を形成する工程と、
前記銀ナノ粒子を含有する塗布膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を形成する工程と、
前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属銀含有構成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属銀含有構成物及び金属銀含有構成物の製造方法に関し、特に、経時での変色を抑制することができる金属銀含有構成物及び金属銀含有構成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ラベル、パッケージ、広告印刷物や写真等の記録物において、金属光沢調の印刷物の需要が高まっている。
具体的には、金属銀を含有する構成物で加飾性を表現することが知られている。この場合、経時での銀の腐食劣化による変色が問題となる。その結果、このような金属銀による加飾性を表現した印刷物において、反射率が大きく変わり、また、外観光沢の変化も大きく、十分な光輝性を実現することができなかった。
そこで、銀の変色を防止する技術として、大気中の硫黄成分との反応を防止する技術が望まれている。
例えば、特許文献1に開示されている技術では、銀の変色防止剤組成物として、ナフタレンチオール系化合物が用いられている。
しかしながら、特許文献1に記載の銀の変色防止剤組成物では、その変色抑制効果が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-100433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、経時での変色を抑制することができる金属銀含有構成物及び金属銀含有構成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する有機層で金属銀を覆うことによって、経時での変色を抑制することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0006】
1.金属銀を含有する金属銀含有構成物であって、
前記金属銀が、有機層で覆われており、
当該有機層が、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記有機層が、連続相を形成していることを特徴とする金属銀含有構成物。
【0008】
金属銀を含有する金属銀含有構成物であって、
前記金属銀が、有機層で覆われており、
当該有機層が、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記金属銀が、銀蒸着膜であることを特徴とする金属銀含有構成物。
【0009】
.前記有機層の厚さが、50~5000nmの範囲内であることを特徴とする第項に記載の金属銀含有構成物。
【0010】
.前記金属銀が、銀ナノ粒子であることを特徴とする第1項に記載の金属銀含有構成物。
【0011】
.互いに隣接する前記銀ナノ粒子間に存在する前記有機層の厚さが、5~100nmの範囲内であることを特徴とする第項に記載の金属銀含有構成物。
【0013】
6.第項又は第項に記載の金属銀含有構成物を製造する製造方法であって、
前記銀蒸着膜を形成する工程と、
前記銀蒸着膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属銀含有構成物の製造方法。
【0014】
7.第又は5項に記載の金属銀含有構成物を製造する製造方法であって、
前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含有する塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属銀含有構成物の製造方法。
【0015】
8.第項に記載の金属銀含有構成物を製造する製造方法であって、
前記銀ナノ粒子を含有する塗布膜を形成する工程と、
前記銀ナノ粒子を含有する塗布膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を形成する工程と、
前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする金属銀含有構成物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、経時での変色を抑制することができる金属銀含有構成物及び金属銀含有構成物の製造方法を提供することできる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を加熱することによって、ナフタレン骨格同士がパッキングし緻密化及びバリア性が向上する。したがって、このようなナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する有機層で、金属銀を覆うことにより、有機層によるバリア性が向上し、金属銀の経時における腐食劣化(硫化)による変色を抑制できると推察される。その結果、反射率の変化や外観光沢の変化を小さくすることができ、印刷物として求められる光輝性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の金属銀含有構成物は、金属銀を含有する金属銀含有構成物であって、前記金属銀が、有機層で覆われており、当該有機層が、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有することを特徴とする。また、反射率は下がるが前記金属銀が、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とは別の有機物を若干、含んでもよい。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0018】
本発明の実施態様としては、前記有機層が、連続相を形成していることが、金属銀を確実に被覆し、変色防止の観点で好ましい。
【0019】
前記金属銀が、銀蒸着膜であることが、不純物をほとんど含まないため、金属光沢感が高い点で好ましい。この場合、前記有機層の厚さが、50~5000nmの範囲内であることが、銀蒸着膜の経時での変色を抑制することができる点で好ましい。
【0020】
また、前記金属銀は、銀ナノ粒子であることが、金属光沢感が高い点で好ましく、この場合、互いに隣接する前記銀ナノ粒子間に存在する前記有機層の厚さが、5~100nmの範囲内であることが、銀ナノ粒子の経時での変色を抑制することができる点で好ましい。
さらに、前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液の塗布膜からなることが、金属光沢感と経時での変色抑制を両立する点で好ましい。
【0021】
本発明の金属銀含有構成物を製造する製造方法は、前記銀蒸着膜を形成する工程と、前記銀蒸着膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の他の金属銀含有構成物を製造する製造方法は、前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含有する塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の他の金属銀含有構成物を製造する製造方法は、前記銀ナノ粒子を含有する塗布膜を形成する工程と、前記銀ナノ粒子を含有する塗布膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を形成する工程と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
これらの製造方法により、経時での変色を抑制することができる金属銀含有構成物を得ることができる。
【0022】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0023】
[本発明の金属銀含有構成物の概要]
本発明の金属銀含有構成物は、金属銀を含有する金属銀含有構成物であって、前記金属銀が、有機層で覆われており、当該有機層が、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有することを特徴とする。
【0024】
<金属銀>
前記金属銀の形態は、銀蒸着膜であってもよいし、銀ナノ粒子であってもよい。
金属銀が銀ナノ粒子である場合は、銀ナノ粒子及びナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜(「銀・樹脂塗布膜」ともいう。)中における銀ナノ粒子である場合と、銀ナノ粒子を含有する塗布膜(「銀塗布膜」ともいう。)中における銀ナノ粒子である場合の2つのパターンがある。
【0025】
<有機層>
本発明に係る有機層は、金属銀の上述した形態によって異なる。すなわち、金属銀が、銀蒸着膜、又は、銀塗布膜中における銀ナノ粒子である場合には、前記有機層は、銀蒸着膜又は銀塗布膜上に設けられて、銀蒸着膜又は銀塗布膜を覆う層である。
一方、金属銀が、銀・樹脂塗布膜中における銀ナノ粒子である場合には、前記有機層は、銀ナノ粒子の周囲を覆うナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂の層である。
これらの有機層は、いずれも連続相を形成していることが、金属銀を被覆し、変色防止の観点で好ましい。
【0026】
ここで、「有機層が連続相を形成している」とは、金属銀を被覆する有機層を構成する化合物が、金属銀の表面上(金属銀のうち少なくとも外気と接触する部分)の全体に亘って連続的な固相(化学組成及び物理的状態が全体的かつ実質的に一様な固相)として存在することをいう。
【0027】
(ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂)
前記有機層に含有されるナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0028】
【化1】
【0029】
一般式(1)中、Rはグリコール残基を表す。Aはナフタレン環を表し、スルホン酸基以外に置換基を有していても良い。
また、Aが有する置換基としては炭素数1~4のアルキル基等を例示できる。スルホン基が塩を構成する場合としては、アルカリ金属が良く。特にナトリウムが好ましい。
nは1又は2を表す。
前記グリコール残基とは、グリコール成分のヒドロキシ基を除いた部分を意味する。Rとして好ましいのは、炭素数1~6のアルキレン基又は全炭素数2~12で間にエーテル結合をもつアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数1~4のアルキル基又は全炭素数2~8で間にエーテル結合をもつアルキレン基である。
【0030】
前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10000~50000の範囲内であることが好ましく、20000~40000の範囲内であることがより好ましい。
【0031】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する共重合体の例示化合物としては、以下に示すものが挙げられる。
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
また、市販品としては、プラスコートZ-687(重量平均分子量:26000、互応化学社製)、プラスコートZ-690(重量平均分子量:28000、互応化学社製)等が挙げられる。
【0035】
以下、金属銀の上述した形態に応じた第1~第3の実施形態の金属銀含有構成物及びその製造方法についてそれぞれ説明する。
【0036】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態における金属銀含有構成物は、金属銀が銀蒸着膜であり、当該銀蒸着膜上にナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する有機層が設けられている。
【0037】
<銀蒸着膜>
本発明に係る銀蒸着膜は、減圧雰囲気下で行われる気相成膜方法により形成されることが好ましい。気相成膜方法としては、(真空)蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。これらの中でも、簡便な装置で製造することが可能な真空蒸着法が好ましく用いられる。
【0038】
銀蒸着膜の厚さとしては、50~500nmの範囲内であることが好ましく、100~250nmの範囲内であることがより好ましい。
前記銀蒸着膜の厚さは、集束イオンビーム(FIB)(2050SMI、SII社製)でエッチングを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)(S4800、Hitachi High-Technologies製、加速電圧:5kV)で、断面SEM観察(後方散乱電子像)を行い、厚さを求めることができる。
【0039】
<有機層>
前記有機層は、前記銀蒸着膜上に設けられた、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する相である。当該有機層は、後述するが、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液を前記銀蒸着膜上に塗布し加熱することにより形成される。
【0040】
前記有機層は、厚さ50~5000nmの範囲内であることが好ましく、150~1000nmの範囲内であることがより好ましい。
当該有機層の厚さは、集束イオンビーム(FIB)(2050SMI、SII社製)でエッチングを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)(S4800、Hitachi High-Technologies製、加速電圧:5kV)で、断面SEM観察(後方散乱電子像)を行い、厚さを求めることができる。
【0041】
また、有機層の膜密度は、1.30g/cm以上の範囲であることが好ましく、1.34g/cm以上の範囲であることがより好ましい。
前記膜密度は、X線反射率測定(XRR)(ATX-G、理学電機社製、X線:Cu(1.2kW)、ビーム圧縮モノクロメータ使用)により測定することができる。
【0042】
<金属銀含有構成物の製造方法>
本発明の第1の実施形態における金属銀含有構成物の製造方法は、前記銀蒸着膜を形成する工程(銀蒸着膜形成工程)と、前記銀蒸着膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜(樹脂塗布膜)を形成する工程(樹脂塗布膜形成工程)と、前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程(加熱工程)と、を備えることを特徴とする。
【0043】
(銀蒸着膜形成工程)
銀蒸着膜形成工程は、例えば、後述する基材上に、前記したとおり減圧雰囲気下で気相成膜方法により形成する工程である。気相成膜方法としては、(真空)蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。これらの中でも、簡便な装置で製造することが可能な真空蒸着法が好ましく用いられる。
【0044】
(樹脂塗布膜形成工程)
樹脂塗布膜形成工程は、前記銀蒸着膜上に前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する樹脂塗布膜を形成する工程である。
具体的には、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液を、銀蒸着膜上に塗布して樹脂塗布膜を形成する。
【0045】
前記水系分散液は、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を水及び有機溶媒で希釈した溶液である。また、その他として、架橋剤などの添加物を含んでも良い。
水系分散液の希釈溶媒として用いられる水としては、純水、蒸留水、イオン交換水、RO水、超純水等が挙げられる。特に制限は無いが、濾過等により余計な浮遊微粒子成分を取り除いたり、電極膜として電気特性に影響を与える余計な残存有機物やイオン成分を取り除いた水を用いることが好ましく、例えば、残存イオン成分量の目安として、25℃での比抵抗値が0.01~25MΩ・cmの範囲内であることが好ましい。
また、水系分散液のpHは必要に応じて調整してもよい。強酸性又は強塩基性が過ぎると、塗布後に銀蒸着膜を劣化させたりするので、好ましくはpH2~13、より好ましくは4~12の範囲内である。
【0046】
前記有機溶媒を添加する場合は、水と有機溶媒の混合比率は、水:有機溶媒が質量比で1:1~1:5の範囲であることが好ましく、1:1~1:2の範囲であることがより好ましい。
有機溶媒としては、沸点が50~250℃の範囲の有機溶媒を用いることが好ましい。
中でもアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-n-ブトキシエタノール、メチルプロピレンジグリコール、2-(2-n-ブトキシエトキシ)エタノールなどを用いることができる。
【0047】
前記水系分散液を調製するときの方法としては、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂、水、及び有機溶媒を混合して、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の方法により撹拌、混合することが好ましい。
【0048】
前記水系分散液の塗布方法には制限はないが、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法又はインクジェット印刷法のいずれかであることが膜厚を適切にコントロールできるため好ましい。中でも、インクジェット印刷法であることが塗布における容易性と精度の観点から、好ましい。
【0049】
(加熱工程)
加熱工程は、前記水系分散液の塗布後の樹脂塗布膜を加熱し、前記有機層を形成する工程である。
加熱方法としては、特に制限はないが、恒温槽、ホットプレートなどで焼成することが好ましい。
加熱温度としては、80~200℃の範囲内であることが好ましく、100~150℃の範囲内であることがより好ましい。また、加熱時間としては、5~30分間が好ましく、10~20分間がより好ましい。
なお、加熱工程前に、水系分散液の樹脂塗布膜を赤外線乾燥や送風乾燥、温風乾燥で初期乾燥を行うことが好ましい。
【0050】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態における金属銀含有構成物は、含有する金属銀が銀ナノ粒子であり、当該銀ナノ粒子と、前記銀ナノ粒子の表面を被覆する前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含む複合体を含有する水系分散液の塗布液(銀・樹脂塗布膜)からなる。すなわち、前記銀ナノ粒子とナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含む複合体を含有する水系分散液を塗布した後、加熱して形成される。
前記水系分散液は、銀ナノ粒子と、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含む複合体を水及び有機溶媒で希釈した溶液である。また、その他として、架橋剤などの添加物を含んでも良い。
【0051】
<銀ナノ粒子>
本発明において、銀ナノ粒子とは、形状が球状、ロッド状、又はプレート状であり、径がナノメートルサイズの銀物質をいう。
前記銀ナノ粒子の場合、その平均アスペクト比は、1.0~10.0の範囲内であることが好ましく、1.0~5.0の範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは1.0~2.0の範囲内であることが好ましい。
【0052】
前記銀ナノ粒子の平均アスペクト比の測定方法としては、まず、前記水系分散液を乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-7401F」(日本電子株式会社製)を用いて電子顕微鏡写真において銀ナノ粒子を測定し、長径(球状に近い場合は最大径)、短径(球状に近い場合は最小径)をそれぞれ測定し、n=20の平均値を求めて個数平均長径及び個数平均短径とする。そして、上記方法で求めた個数平均長径及び個数平均短径を用いて、下記式により平均アスペクト比を算出することができる。
式:平均アスペクト比=(個数平均長径)/(個数平均短径)
【0053】
また、前記水系分散液中における前記銀ナノ粒子の平均粒径が3~100nmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、前記平均粒径が8~50nmの範囲内である。
【0054】
銀ナノ粒子(A)の平均粒子径は、小角X線散乱法で体積基準の粒度分布を求め、そのD50(メジアン径)を体積換算の平均粒子径とした体積平均粒子径である。小角X線散乱法による銀ナノ粒子(A)の体積平均粒子径の測定は、例えば、小角X線散乱装置としてNANOPIX mini(リガク製)を用いて行うことができる。なお、銀ナノ粒子(A)の平均粒子径は、以下の銀ナノ粒子(A)が水溶性高分子分散剤(P)で被覆された複合体を用いて上記同様に測定した場合においても、銀ナノ粒子(A)の平均粒子径として測定可能である。
【0055】
前記銀・樹脂塗布膜の総量に対する前記銀ナノ粒子の含有量は、65~90質量%の範囲内であることが好ましい。
【0056】
(銀ナノ粒子の作製方法)
銀ナノ粒子の作製方法としては、下記方法が挙げられる。
水系溶媒に、硝酸銀とナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を溶解させた後、還元剤を加えて合成を行う。次に、遠心分離で沈降させて、上澄み液を除き、水を加えて再分散させる操作を数回実施し、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂で被膜された銀ナノ粒子複合体を作製する。
【0057】
<有機層>
有機層は、前記水系分散液を塗布した銀・樹脂塗布膜中の、銀ナノ粒子の周囲に存在するナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する相である。当該有機層は、後述するが、銀ナノ粒子とナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液を塗布し加熱することによって形成される。
【0058】
前記有機層の厚さは、5~100nmの範囲内であることが好ましく、10~30nmの範囲内であることがより好ましい。ここで、有機層の厚さは、互いに隣接する銀ナノ粒子間に存在する有機層の最短距離をいう。
当該有機層の厚さは、集束イオンビーム(FIB)(2050SMI、SII社製)でエッチングを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)(S4800、Hitachi High-Technologies製、加速電圧:5kV)で、断面SEM観察(後方散乱電子像)を行い、厚さを求めることができる。
【0059】
<金属含有構成物の製造方法>
本発明の第2の実施形態における金属含有構成物の製造方法は、前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含有する塗布膜(銀・樹脂塗布膜)を形成する工程(銀・樹脂塗布膜形成工程)と、前記塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程(加熱工程)と、を備えることを特徴とする。
【0060】
(銀・樹脂塗布膜形成工程)
銀・樹脂塗布膜形成工程は、例えば、後述する基材上に、前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂とを含有する銀・樹脂塗布膜を形成する工程である。
具体的には、前記銀ナノ粒子と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液を、基材上に塗布して銀・樹脂塗布膜を形成する。
【0061】
前記水系分散液は、前記銀ナノ粒子と前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を水及び有機溶媒で希釈した溶液である。
水系分散液の希釈溶媒として用いられる水及び有機溶媒としては、前記第1の実施形態で説明した水及び有機溶媒と同様のものを用いることができる。
【0062】
前記水系分散液を調製するときの方法としては、前記銀ナノ粒子、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂、水、及び有機溶媒を混合して、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の方法により撹拌、混合することが好ましい。
【0063】
前記水系分散液の塗布方法も、前記第1の実施形態で説明した塗布方法と同様の方法を採用することができる。
【0064】
(加熱工程)
加熱工程は、前記水系分散液の塗布後の銀・樹脂塗布膜を加熱する工程である。
加熱方法及び加熱温度としては、特に制限はなく、前記第1の実施形態で説明した加熱方法及び加熱温度を採用することができる。
【0065】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態における金属銀含有構成物は、金属銀が銀塗布膜であり、当該銀塗布膜上にナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する有機層が設けられている。
【0066】
<銀塗布膜>
前記銀塗布膜は、銀ナノ粒子を含有する分散液を塗布することによって得られる膜や、銀錯体物を含有する液を塗布後、加熱することで得られる膜である。
前記銀塗布膜は、厚さ100nm以上であることが好ましい。100nm以上であると、ドットの表面形状が正反射光の割合に対して与える影響をより小さくして、正反射光の割合をより多くすることができると考えられる。また、銀塗布膜の厚さの上限は特に限定されないものの、400nm以下であることが好ましく、特に150~250nmの範囲内であることが好ましい。
【0067】
<有機層>
前記有機層は、前記銀塗布膜上に設けられた、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する層である。当該有機層は、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液を前記銀塗布膜上に塗布し加熱することにより形成される。
【0068】
前記有機層は、厚さ50~5000nmの範囲内であることが好ましく、150~1000nmの範囲内であることがより好ましい。
当該有機層の厚さは、集束イオンビーム(FIB)(2050SMI、SII社製)でエッチングを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)(S4800、Hitachi High-Technologies製、加速電圧:5kV)で、断面SEM観察(後方散乱電子像)を行い、厚さを求めることができる。
【0069】
また、有機層の膜密度は、1.30g/cm以上の範囲であることが好ましく、1.34g/cm以上の囲範囲であることがより好ましい。
前記膜密度は、X線反射率測定(XRR)(ATX-G、理学電機社製、X線:Cu(1.2kW)、ビーム圧縮モノクロメータ使用)により測定することができる。
【0070】
<金属含有構成物の製造方法>
本発明の第3の実施形態における金属含有構成物の製造方法は、前記銀ナノ粒子や、銀錯体物を含有する塗布膜(銀塗布膜)を形成する工程(銀塗布膜形成工程)と、前記銀ナノ粒子や、銀錯体物を加熱後形成される銀構成物を含有する塗布膜上に、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜(樹脂塗布膜)を形成する工程(樹脂塗布膜形成工程)と、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する塗布膜を80~200℃の範囲内で加熱して前記有機層を形成する工程(加熱工程)と、を備えることを特徴とする。
【0071】
(銀塗布膜形成工程)
銀塗布膜形成工程は、例えば、後述する基材上に、前記銀ナノ粒子や、銀錯体物を加熱後形成される銀構成物を含有する銀塗布膜を形成する工程である。
具体的には、前記銀ナノ粒子を含有する分散液や、銀錯体物を含有する液を、基材上に塗布して銀塗布膜を形成する。また、銀塗布膜に加熱や乾燥等を行ってもよい。
【0072】
前記分散液又は液は、前記銀ナノ粒子や、銀錯体物を水及び有機溶媒で希釈した溶液である。
水系分散液の希釈溶媒として用いられる水及び有機溶媒としては、前記第1の実施形態で説明した水及び有機溶媒と同様のものを用いることができる。また、その他として、架橋剤などの添加物を含んでも良い。
【0073】
前記水系分散液を調製するときの方法としては、前記銀ナノ粒子、水、及び有機溶媒を混合して、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の方法により撹拌、混合することが好ましい。
【0074】
前記水系分散液の塗布方法も、前記第1の実施形態で説明した塗布方法と同様の方法を採用することができる。
【0075】
(樹脂塗布膜形成工程)
樹脂塗布膜形成工程は、前記銀塗布膜上に前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する樹脂塗布膜を形成する工程である。
具体的には、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する水系分散液を、銀塗布膜上に塗布して樹脂塗布膜を形成する。
【0076】
前記水系分散液は、前記ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を水及び有機溶媒で希釈した溶液であり、第1の実施の形態で説明した水系分散液と同様のものを採用できる。
【0077】
(加熱工程)
加熱工程は、前記水系分散液の塗布後の樹脂塗布膜を加熱し、前記有機層を形成する工程である。
加熱方法及び加熱温度としては、特に制限はなく、前記第1の実施形態で説明した加熱方法及び加熱温度を採用することができる。
【0078】
<基材>
本発明の金属銀含有構成物は、基材上に形成されることが好ましい。
本発明の金属銀含有構成物に用いられる基材は特に制限されず、その用途に応じて適宜選択される。
基材の例には、塗工紙(例えばアート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙、キャスト紙等)や非塗工紙等の吸収性の媒体;ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体(プラスチック基材);金属類やガラス等の非吸収性の無機記録媒体;が含まれる。
【0079】
基材の厚みや形状等は、光輝性画像形成物の用途に応じて適宜選択される。基材は、平板状に限定されず、例えば立体的な構造を有していてもよい。
【0080】
<プレコート層>
前記基材と、前記金属含有構成物との間にはプレコート層を設けることが好ましい。
プライマー層は、金属含有構成物の定着性を高めるための層であってもよく、基材の表面粗さを調整し、金属含有構成物の金属光沢性を調整するための層であってもよい。また、基材側から侵入する腐食性ガスを抑制するための層であってもよい。
【0081】
プレコート層は、各種樹脂を含む層とすることができ、その樹脂の種類は、基材との密着性が良好であり、かつ金属含有構成物を定着可能であれば特に制限されない。その例には(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びアルキド樹脂等が含まれる。プレコート層は、これらの樹脂を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0082】
プレコート層の厚さは、特に制限されず、光沢層の基材への密着性を十分に高める観点からは、0.05~100μmの範囲内であることが好ましく、0.1~50μmの範囲内であることがより好ましく、0.5~10μmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、プレコート層の厚みは、均一であってもよいが、目的に合わせて、厚みが連続的もしくは段階的に変化していてもよい。
【0083】
<色材層>
前記金属銀含有構成物上には、当該金属銀含有構成物の色調を変化させて特定のメタリッカラーを発現させるための色材層を設けてもよい。
【0084】
色材層は、色材と、色材を定着させるための樹脂とを含む層とすることができる。上記色材を定着させるための樹脂は、プライマー層が含む樹脂と同様の樹脂とすることができる。色材層は、これらの樹脂を、一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0085】
色材層が含む色材は、顔料又は染料とすることができるが、耐候性の良好な画像を得る観点から、顔料であることが好ましい。顔料は、形成すべき画像の色彩等に応じて、公知の黄(イエロー)顔料、赤又はマゼンタ顔料、青またはシアン顔料及び黒顔料等から選択することができる。
【0086】
色材の含有量は、色材の種類等に応じて適宜選択されるが、色材層の総量に対して0.5~10質量%の範囲内であることが好ましく、1~5質量%の範囲内であることがより好ましく、1~3質量%の範囲内であることがさらに好ましい。色材の量が過剰になると、色材層の光透過性が低くなり、光沢層由来の金属光沢性が得られ難くなるが、上記範囲であれば、影響を及ぼし難い。
【0087】
色材層は、上記顔料とともに分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、顔料の分散性を高めて発色を十分にするために用いることができる。分散剤の例には、公知の水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びステアリルアミンアセテート等が含まれる。
【0088】
分散剤の含有量は、顔料の総量に対して20~70質量%の範囲内とすることができる。
色材層の厚さは特に制限されないが、通常1~20μmの範囲内であることが好ましく、3~10μmの範囲内であることがより好ましい。色材層の厚さが当該範囲であると、光透過性が良好になり、金属含有構成物由来の金属光沢性が発現しやすい。
【実施例1】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0090】
<金属銀含有構成物1の製造>
固形分25質量%のナフタレンスルホン酸ナトリウム骨格を含むポリエステル樹脂であるZ-687(互応化学社製)を水:エタノール=1:2で4倍に希釈し、6.25質量%の水系分散液1を用意した。
一方、スライドガラス上に、真空蒸着装置(BES-1300、SHINCRON社製)を用いて、水晶振動子による制御により、厚さ150nm、25mm×25mmの大きさの銀蒸着膜を形成した。
その後、スピンコート(3000rpm、30秒)で、前記水系分散液1を前記銀蒸着膜上に塗布した後、130℃で10分間加熱して有機層を形成し、金属銀含有構成物1を得た。
得られた金属銀含有構成物1についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが340nmであった。また、有機層が連続相であることを確認した。
【0091】
<金属銀含有構成物2の製造>
固形分25質量%のナフタレンスルホン酸ナトリウム骨格を含むポリエステル樹脂であるZ-690(互応化学製)を水:エタノール=1:2で4倍に希釈し、6.25質量%の水系分散液2を用意した以外は、前記金属銀含有構成物1と同様にして金属銀含有構成物2を得た。
得られた金属銀含有構成物2についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが150nmであった。また、有機層が連続相であることを確認した。
【0092】
<金属銀含有構成物3の製造>
前記金属銀含有構成物1と同様の水系分散液1を用意した。
その後、スピンコート(1000rpm、30秒)で、前記水系分散液1を前記銀蒸着膜上に塗布した後、130℃で10分間加熱して有機層を形成し、金属銀含有構成物3を得た。
得られた金属銀含有構成物3についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが720nmであった。また、有機層が連続相であることを確認した。
【0093】
<金属銀含有構成物4の製造>
前記金属銀含有構成物2と同様の水系分散液2を用意した。
その後、スピンコート(3000rpm、30秒)で、前記水系分散液2を前記銀蒸着膜上に塗布した後、180℃で10分間加熱して有機層を形成し、金属銀含有構成物4を得た。
得られた金属銀含有構成物4についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが170nmであった。また、有機層が連続相であることを確認した。
【0094】
<金属銀含有構成物5の製造>
30mLのサンプル瓶に、水9mL、1.0MのAgNO 1mL、固形分25質量%のナフタレンスルホン酸ナトリウム骨格を含むポリエステル樹脂であるZ-687(互応化学社製)0.39mL、グルコース90mgを加えて、35℃で5分撹拌した後に、ジエチルアミン92μLを加えた後、35℃で2時間撹拌して、銀ナノ粒子を作製した。
次に、遠心分離(9000rpm、10分間)で沈降させて、上澄み液を除き、水10mLを加えて分散させ、再度、遠心分離(9000rpm、10分間)で沈降させた。これを2回繰り返し、最後に水2.0mLに分散させ、Z-687を分散剤にした銀ナノ粒子を作製した。
この水系分散液を、スライドガラス状にドロップキャストした後、130℃で10分間加熱し、銀ナノ粒子及びスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂を含有する銀・樹脂塗布膜からなる金属銀含有構成物5を得た。
得られた金属銀含有構成物5についてSEMにより10万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さ(互いに隣接する銀ナノ粒子間に存在する有機層の厚さ)が、10~30nmであった。また、有機層が連続相であることを確認した。
【0095】
<金属銀含有構成物6の製造>
2Lのコルベンに、12gのDISPERBYK-190(ビックケミー社製、カルボキシ基を有する水溶性高分子分散剤(P)に相当する、カルボキシ基とともに側鎖にポリアルキレンオキサイド基を有する高分子量くし型ブロック共重合体(酸価;10mgKOH/g、以下、「化合物(P1)」という。)の水溶液。固形分40質量%)、及び420gのイオン交換水を投入した。上記コルベンをウォーターバスに入れ、DISPERBYK-190が溶解するまで50℃で撹拌した。その後、上記コルベンに、420gのイオン交換水に溶解させた100gの硝酸銀を撹拌しながら投入した。次に、銀に対して2.8当量となるようにアンモニア水100gを入れた後、70℃に昇温して10分間撹拌した。その後、上記コルベンに、262gのジメチルアミノエタノールを加え、70℃を保ちながら2時間撹拌を続け、銀ナノ粒子の表面が化合物(P1)で被覆された銀ナノ粒子複合体1を含む反応液を得た。
【0096】
得られた反応液を1Lのポリ瓶に移し換え、60℃の恒温室で18時間静置した。その後、上記反応液をステンレスカップに入れて、更に2Lのイオン交換水を投入してから、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。その後、濃縮して銀ナノ粒子の平均粒子径が30nmで、固形分30質量%の銀ナノ粒子複合体1の分散液(銀ナノ粒子複合体分散液1)を得た。
【0097】
上記限外濾過装置としては、限外濾過モジュールAHP1010(旭化成株式会社製、分画分子量:50000、使用膜本数:400本)、マグネットポンプ、及び下部にチューブ接続口のある3リットルのステンレスカップをシリコンチューブでつないだものを使用した。
【0098】
(金属光沢膜インク1)
以下の成分を以下の組成で混合して、金属光沢膜インク1を得た。なお、Aqua BI200(Trixene Aqua BI200(LANXESS社製))は、架橋剤(B)であるブロックイソシアネートに相当する、3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートトリマーを固形分として40質量%含有する水系分散液である。得られた金属光沢膜インク1における銀ナノ粒子(A)に対する架橋剤(B)の割合は、0.25質量%である。
【0099】
固形分30質量%の銀ナノ粒子複合体水分散液1 14.35質量部
Aqua BI200 0.025質量部
Na2CO3 0.01M水溶液(pH調整剤) 8.00質量部
F-477(DIC社製、界面活性剤) 0.10質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 37.00質量部
へキシレングリコール 4.00質量部
水 36.53質量部
【0100】
前記金属光沢インク1をスライドガラス上にスピンコート(500rpm、30秒)で、塗布した後、130℃で10分間加熱して金属光沢層を形成した。
【0101】
前記金属銀含有構成物1と同様の水系分散液1を用意した。
その後、スピンコート(3000rpm、30秒)で、前記水系分散液1を前記金属光沢層上に塗布した後、130℃で10分間加熱して有機層を形成し、金属銀含有構成物6を得た。
得られた金属銀含有構成物6についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが310nmであった。また、有機層が連続相であることを確認した。
【0102】
<金属銀含有構成物7の製造>
2-メルカプトナフタレン0.2g、ステアリルメルカプタン0.2g、2-メルカプトベンゾチアゾール0.6gの組成を有する気化性変色防止剤を入れたシャーレを用意した。該シャーレを1Lのガラス製試験瓶内に設置した。
一方、スライドガラス上に、真空蒸着装置(BES-1300、SHINCRON社製)を用いて、水晶振動子による制御により、厚さ150nm、25mm×25mmの大きさの銀蒸着膜を形成した。
その後、前記銀蒸着膜を形成したスライドガラスを前記試験瓶内に蒸着面があたるように、吊り下げた。その後、試験瓶を閉じた。24℃恒温槽内に試験瓶を設置し、20時間放置した。これにより、シャーレ内の気化性変色防止剤を気化させて、銀蒸着膜に吸着させ、金属銀含有構成物7を得た。
【0103】
<金属銀含有構成物8の製造>
固形分25質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウム骨格を含むポリエステル樹脂であるZ-561(互応化学社製)を水で2倍に希釈し、12.5質量%の水系分散液を用意した以外は、前記金属銀含有構成物1の製造と同様にして金属銀含有構成物8を得た。
得られた金属銀含有構成物8についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが460nmであった。
【0104】
<金属銀含有構成物9の製造>
固形分25質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウム骨格を含むポリエステル樹脂であるZ-565(互応化学社製)を水で2倍に希釈し、12.5質量%の水系分散液を用意した以外は、前記金属銀含有構成物1の製造と同様にして金属銀含有構成物9を得た。
得られた金属銀含有構成物9についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが450nmであった。
【0105】
<金属銀含有構成物10の製造>
固形分25質量%のベンゼンカルボン酸骨格を含むポリエステル樹脂であるZ-760(互応化学社製)を水:エタノール=1:2で4倍に希釈し、6.25質量%の水系分散液を用意した以外は、前記金属銀含有構成物1と同様にして金属銀含有構成物10を得た。
得られた金属銀含有構成物10についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが420nmであった。
【0106】
<金属銀含有構成物11の製造>
固形分100%のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩であるデモールN(富士フイルム和光純薬社製)を水で16倍に希釈し、6.25質量%の水系分散液を用意した以外は、前記前記金属銀含有構成物1と同様にして金属銀含有構成物11を得た。
得られた金属銀含有構成物11についてSEMにより5万倍率で断面観察を行ったところ、有機層の厚さが390nmであった。
【0107】
<金属銀含有構成物12の製造>
スライドガラス上に、真空蒸着装置(BES-1300、SHINCRON社製)を用いて、水晶振動子による制御により、厚さ150nm、25mm×25mmの大きさの銀蒸着膜を形成し、銀蒸着膜が未保護膜である金属銀含有構成物12を得た。
【0108】
[評価]
硫化による変色に対する耐性試験を実施した。硫黄5gを入れたシャーレを用意した。該シャーレを1Lのガラス製試験瓶内に設置した。試験片として、前記で作製した各金属銀含有構成物を試験瓶内に設置し、試験瓶を閉じた。80℃恒温槽内に試験瓶を設置し、19時間と95時間放置した。これにより、シャーレ内の硫黄を気化させて、試験片である金属銀含有構成物の耐硫化性を確認した。具体的には、試験前の試験片の平均反射率(450~750nm平均)と、試験後(19時間後及び95時間後)の試験片反射率を比較した。また、試験前(初期)と試験後での外観観察を行い、初期と比較して光沢感の変化について以下の基準で評価した。Aが実用上問題ないレベルである。
(基準)
A:光沢感に変化なし
B:多少暗くなり、若干変化あり
C:光沢感がなく、著しく変化
【0109】
【表1】
【0110】
上記結果に示されるように、本発明の金属銀含有構成物は、比較例のものに比べて、試験前後での反射率の変化及び外観光沢の変化が小さく、変色に対する耐性に優れていることが認められる。
なお、シリコンウェハ上に、Z-687(互応化学社製)のみをスピンコートし、X線反射率測定(ATX-G、理学電機社製、X線:Cu(1.2kW)、ビーム圧縮モノクロメータ使用)により、その膜密度を測定したところ1.31g/cmであった。一方、Z-687を塗布した後、130℃で加熱処理した場合の膜密度を測定したところ、1.34g/cmであった。したがって、ナフタレンスルホン酸塩骨格を有するポリエステル樹脂であるZ-687を塗布した後、加熱処理すると、未処理の場合に比べて膜が緻密化していることが認められる。