(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
G09B 21/00 20060101AFI20240228BHJP
E03D 9/08 20060101ALI20240228BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20240228BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G09B21/00 B
E03D9/08 A
H04Q9/00 301D
H01H36/00 J
H01H36/00 K
(21)【出願番号】P 2020020745
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩永 貴志
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-067119(JP,A)
【文献】特開2017-186121(JP,A)
【文献】特開2019-082566(JP,A)
【文献】特開2006-053247(JP,A)
【文献】特開2005-251504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0373382(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0135238(US,A1)
【文献】特開2018-097568(JP,A)
【文献】特開平09-081321(JP,A)
【文献】特開2000-353269(JP,A)
【文献】特開2005-084982(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02270639(EP,A1)
【文献】特開2004-265035(JP,A)
【文献】特開2001-290416(JP,A)
【文献】特開2003-029908(JP,A)
【文献】特開2008-140245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 21/00-21/04
G06F 3/01- 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が所定の機能を実現させる場合に操作を受け付けるとともに、同時に操作すると操作を受け付けない静電容量式の複数の操作部と、
前記操作部付近において該操作部に対応する機能が表記された複数の表示部と、
前記表示部上に位置して該表示部に対応する点字が形成された読み取り面を有し、前記操作部との間には
複数の前記操作部のうち少なくとも2つ以上の前記操作部と接触する導電体を有する点字部材と
を備える、操作装置。
【請求項2】
前記操作部は、単一の電極を有し、前記電極および人体の間の静電容量に基づいて前記操作を受け付ける、請求項
1に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ室、洗面所、キッチンなどの水まわり空間には、トイレ装置や便座装置、水栓装置などの水まわり機器を遠隔制御する操作装置が設けられる場合がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような操作装置において、使用者が所定の機能を実現させる場合に操作する操作部付近にこの操作部に対応する機能が表記されるとともに点字が形成されることで、目の不自由な使用者に対しても操作部の機能を認識させることが知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-9505号公報
【文献】特開2003-147834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人体(使用者の手指)および静電素子(電極)の間の静電容量に基づいて操作を受け付ける静電容量式の操作部を備える操作装置においても、操作部付近に点字が形成されることが好ましい。
【0006】
しかしながら、静電容量式の操作部を備える場合、目の不自由な使用者の点字読み取り中に手指が操作部に近づいて、操作部がこれを受け付けてしまうことがあるため、このような使用者の意図しない操作を抑えることが必要となる。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、使用者の点字読み取り中における意図しない操作を抑えることができる操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る操作装置は、使用者が所定の機能を実現させる場合に操作を受け付ける静電容量式の操作部と、前記操作部付近において該操作部に対応する機能が表記された表示部と、前記表示部上に位置して該表示部に対応する点字が形成された読み取り面を有し、前記操作部との間には空間を有する点字部材とを備える。
【0009】
このような構成によれば、点字部材が操作部との間に空間を有することで、寄生容量が増加して読み取り面から操作部に対して電流が流れにくいものとなる。このため、使用者の点字読み取り中、使用者の手指が操作部に近づいても、静電素子への通電を抑制することができる。これにより、目の不自由な使用者の点字読み取り中における意図しない操作(誤操作)を抑えることができる。
【0010】
また、操作装置は、前記操作部および前記表示部を一対としてそれぞれ複数備える。
【0011】
このような構成によれば、使用者の点字読み取り中、使用者の手指が、読み取り中の点字に対応する操作部や他の操作部(たとえば、読み取り中の点字に対応する操作部に隣接する操作部)に近づいても、静電素子への通電を抑制することができる。
【0012】
また、操作装置では、前記点字部材は、前記読み取り面が透明である。
【0013】
このような構成によれば、点字部材が表示部上に配置されても表示部の表記を視認することができる。これにより、点字部材に対して新たに表記する必要がなくなり、コスト低減などが可能となる。
【0014】
また、操作装置は、使用者が所定の機能を実現させる場合に操作を受け付けるとともに、同時に操作すると操作を受け付けない静電容量式の複数の操作部と、前記操作部付近において該操作部に対応する機能が表記された複数の表示部と、前記表示部上に位置して該表示部に対応する点字が形成された読み取り面を有し、前記操作部との間には導電体を有する点字部材とを備える。
【0015】
このような構成によれば、点字部材が操作部との間に導電体を有することで、使用者の手指が読み取り面に触れている間は2つ以上の静電素子への同時通電(ゴースト)を積極的に発生させる状態となる。このため、使用者の点字読み取り中、使用者の手指が、読み取り中の点字に対応する操作部や他の操作部(たとえば、読み取り中の点字に対応する操作部に隣接する操作部)に近づいても、静電素子への通電を抑制することができる。これにより、目の不自由な使用者の点字読み取り中における意図しない操作(誤操作)を抑えることができる。
【0016】
また、操作装置では、前記操作部は、単一の電極を有し、前記電極および人体の間の静電容量に基づいて前記操作を受け付ける。
【0017】
このような構成によれば、操作部の検知方式が、人体(使用者の手指)が静電素子である単一の電極に近づくことで増加する静電容量に基づいて検知する自己容量方式であるため、簡素な構造で感度も良好な操作装置となる。
【発明の効果】
【0018】
実施形態の一態様によれば、使用者の点字読み取り中における意図しない操作を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水まわり機器の一例であるトイレシステムの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るトイレシステムの構成例を示すブロック図(その1)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るトレイシステムの構成例を示すブロック図(その2)である。
【
図4】
図4は、比較例に係る操作装置の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る操作装置の説明図(その1)である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る操作装置の説明図(その2)である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る操作装置の説明図(その1)である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る操作装置の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する操作装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
<トイレシステムの全体構成>
まず、
図1を参照して実施形態に係る水まわり機器の一例であるトイレシステム1の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る水まわり機器の一例であるトイレシステム1の概略斜視図である。
【0022】
なお、
図1には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を右方、X軸の負方向を左方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0023】
図1に示すように、トイレシステム1は、トイレ室TRに設けられ、トイレ本体10と、便座装置20と、操作装置30とを備える。なお、トイレシステム1は、トイレ本体10付近に設置され洗浄水を貯留する洗浄水タンクを備えてもよいし、洗浄水タンクを備えない、いわゆるタンクレス式でもよい。
【0024】
トイレ本体10は、たとえば、トイレ室TRの床面に設置される洋式大便器(以下、便器という)である。トイレ本体である便器10は、たとえば、陶器製である。便器10は、ボウル部11と、リム部12とを備える。
【0025】
ボウル部11は、便器10に形成され、下方に凹んだ形状であり、使用者の排泄物を受ける部位である。リム部12は、便器10に形成され、ボウル部11が臨む開口の端部の全周にわたって形成される。なお、便器10は、
図1に示すような床置き式に限らず、壁掛け式などでもよい。
【0026】
便器10では、たとえば、トイレ室TR内に設置された便器洗浄用の洗浄操作部(図示せず)が使用者によって操作されると、ボウル部11に洗浄水が供給されて便器洗浄が行われる。洗浄操作部は、操作レバーや、後述する操作装置20の操作部32(
図3参照)に対する操作でもよい。なお、便器洗浄は、使用者の手動に限らず、着座センサのような使用者を検知するセンサの人体検知によって行われてもよい。
【0027】
便座装置20は、便器10上に設置される。便座装置20は、本体部21と、便座22と、便蓋23と、ノズル24(
図2参照)とを備える。なお、便座装置20は、便器10に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、便器10と一体化するように取り付けられてもよい。便座装置20の本体部21は、便器10の後部に取り付けられる。
【0028】
便座22は、環状に形成される。便座22は、本体部21に、上下方向に揺動(開閉)可能に軸支される。便座22は、閉じた状態では、便器10のリム部12に沿って、便器10の開口に重なる位置に配置される。便座22は、着座した使用者の臀部を支持する。
【0029】
便蓋23は、本体部21に、上下方向に揺動(開閉)可能に軸支される。便蓋23は、開いた状態では、便器10の後部において直立し、閉じた状態では、便座22を覆う。なお、便座装置20は、便蓋23を備えない場合もある。
【0030】
ノズル24は、局部洗浄用のノズルであり、電動モータなどの駆動源(図示せず)の駆動により本体部21に対して進退自在に構成される。ノズル24は、本体部21から進出した位置で使用者の局部に向けて洗浄水を噴射することで、使用者の局部を洗浄する。
【0031】
操作装置30は、トイレ室TR内に設置される。操作装置30は、たとえば、トイレ室TRの壁面など、使用者が操作可能な位置に設置される。操作装置30は、使用者が便座22に着座した状態で操作可能な位置に設置される。なお、操作装置30は、便座に着座した使用者が使用可能であれば、様々な態様で設けられてよく、たとえば、便座装置20に組み込まれて設けられてもよい。
【0032】
<トイレシステムの機能構成(便座装置の機能構成)>
次に、
図2を参照してトイレシステム1の機能構成について説明する。
図2は、実施形態に係るトイレシステム1の構成例を示すブロック図である。なお、
図2には、トイレシステム1に含まれる便座装置20の機能構成の一例を主に示している。
【0033】
図2に示すように、トイレシステム1に含まれる便座装置20および操作装置30は、有線または無線で通信可能に接続される。このうち、便座装置20は、上記したように、本体部21と、便座22と、便蓋23と、ノズル24とを備える。本体部21は、通信部211と、人体検知部212と、着座検知部213と、制御部214とを備える。
【0034】
通信部211は、たとえば、通信回路などによって実現される。通信部211は、操作装置30側の通信部31(
図3参照)と有線または無線で通信可能、すなわち、情報の送受信が可能なように接続される。なお、通信部211は、所定のネットワークを介して操作装置30側の通信部31と接続されてもよい。
【0035】
人体検知部212は、使用者などの人体を検知する機能を有する。人体検知部212は、たとえば、赤外線センサやマイクロ波センサなどによって実現される。なお、人体検知部212は、これらのセンサに限らず、様々な手段で人体を検知してよい。人体検知部212は、トイレ室TR(
図1参照)内に入室してきた人(使用者など)を検知する。人体検知部212は、人体を検知すると、検知信号を制御部214へ出力する。
【0036】
着座検知部213は、使用者の便座22への着座を検知する機能を有する。着座検知部213は、たとえば、荷重センサによって使用者の着座を検知してもよいし、赤外線投受光式の測距センサによって着座前の便座22付近に存在する人体を検知してもよいし、マイクロ波センサによって着座前の便座22に近づいてくる人体を検知してもよい。なお、着座検知部213は、これらに限らず、様々な手段で着座を検知してよい。着座検知部213は、着座を検知すると、着座検知信号を制御部214へ出力する。
【0037】
制御部214は、便座22、便蓋23およびノズル24を制御する。制御部214は、操作装置30から送信される信号に基づいて、便座22、便蓋23およびノズル24を制御する。
【0038】
制御部214は、操作装置30から送信される便座開閉に関する制御指示の信号に基づいて、便座22を制御する。制御部214は、操作装置30から送信される便蓋開閉に関する制御指示の信号に基づいて、便蓋23を制御する。制御部214は、操作装置30から送信される局部洗浄に関する制御指示の信号に基づいて、ノズル24を制御する。
【0039】
制御部214は、人体検知部212によるトイレ室TRへの使用者の入室が検知されたか否かを判定する。制御部214は、着座検知部213による便座22への使用者の着座が検知されたか否かを判定する。
【0040】
制御部214は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Controller Unit)などによって、記憶部(図示せず)に記憶されるプログラムがRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることで実現される。記憶部は、たとえば、RAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ素子などで実現される。
【0041】
<トイレシステムの機能構成(操作装置の機能構成)>
次に、
図3を参照してトイレシステム1の機能構成について説明する。
図3は、実施形態に係るトイレシステム1の構成例を示すブロック図である。なお、
図3には、トイレシステム1に含まれる操作装置30の機能構成の一例を主に示している。
【0042】
図3に示すように、トイレシステム1に含まれる操作装置30は、通信部31と、操作部32と、記憶部33と、制御部34とを備える。通信部31は、たとえば、通信回路などによって実現される。通信部31は、便座装置20側の通信部211(
図2参照)と有線または無線で通信可能、すなわち、情報の送受信が可能なように接続される。
【0043】
操作部32は、接触検知部321を備える。接触検知部321は、使用者が所定の機能を実現させる場合に使用者の操作を受け付ける部位であり、使用者の操作を検知する部位である。操作部32は、静電容量スイッチであり、また、使用者の操作の検知方式として、自己容量方式が採用される。
【0044】
記憶部33は、たとえば、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置によって実現される。記憶部33は、操作部32に対応する機能を実現させるための信号を生成するために用いる情報を記憶する。記憶部33は、接触検知部321に対する使用者の接触を判定するための情報を記憶する。
【0045】
制御部34は、たとえば、CPUやMCUなどによって、記憶部33に記憶されるプログラムがRAMなどを作業領域として実行されることで実現される。
【0046】
制御部34は、取得部341と、判定部342と、生成部343と、送信部344とを備える。なお、制御部34は、
図3に示す構成に限らず、これら以外の様々な構成でもよい。また、制御部34の各部の接続関係についても、これに限らず、他の接続関係でもよい。
【0047】
取得部341は、各種情報を取得する。取得部341は、接触検知部321によって検知された情報を取得する。取得部341は、記憶部33から各種情報を取得する。なお、取得部341は、これらの他にも、外部の情報処理装置から各種情報を取得するように構成されてもよい。
【0048】
判定部342は、各種情報を判定する。判定部342は、取得部341によって取得された各種情報を用いて情報を判定する。判定部342は、記憶部33に記憶された各種情報を用いて情報を判定する。また、判定部342は、接触検知部321に使用者の手指が触れたか否かを判定する。
【0049】
生成部343は、制御指示の信号を生成する。生成部343は、便座装置20の各部を駆動するための信号を生成する。生成部343は、記憶部33に記憶された情報を用いて、使用者が操作した(触れた)操作部32に関連する制御指示に対応する信号を生成する。
【0050】
送信部344は、各種情報を送信する。送信部344は、通信部31を介して便座装置20へ情報を送信する。送信部344は、記憶部33に記憶された情報、取得部341によって取得された情報、判定部342によって判定された情報、生成部343によって生成された制御指示の信号を送信する。なお、送信部344は、制御部34ではなく、通信部31側に設けられてもよい。
【0051】
<操作装置>
ここで、
図4を参照して比較例に係る操作装置30(300)について説明する。
図4は、比較例に係る操作装置30(300)の説明図である。なお、
図4には、操作装置300の正面図を示している。
【0052】
図4に示すように、操作装置300は、筐体35を備える。筐体35の正面351は、たとえば、薄膜のシート(表面シート)352によって被覆される。操作装置300は、筐体35の正面(操作面ともいう)351に、静電容量式の操作部32と、表示部36とを備える。なお、筐体35は、たとえば、横長の矩形箱状に形成される。
【0053】
操作部32は、上記したように、使用者が所定の機能を実現させる場合に使用者の操作を受け付ける。操作部32は、静電容量スイッチである。このため、操作部35は、筐体35内に静電素子である電極(図示せず)を備える。操作装置300では、接触検知部321(
図3参照)によって使用者の手指などの人体と電極との間に生じる静電容量の変化を検知することで、人体が操作部32に触れたことを検知する。
【0054】
操作部32は、筐体35の正面351に横並びで配置される。
図4に示す例では、複数の操作部32は、図面に向かって左から、局部洗浄を停止する機能、局部洗浄のうち、おしり洗浄機能、やわらか洗浄機能、ビデ洗浄機能、温風などで局部を乾燥させる乾燥機能を実現させる。操作部32は、使用者の手指が操作領域322に触れることで、これらの機能を実現させる。
【0055】
表示部36は、操作部32付近に設けられ、操作部32に対応する機能が表記された部位である。表示部36は、たとえば、筐体35の正面351における複数の操作部32のそれぞれの上方に配置される。
図4に示す例では、複数の表示部36は、各操作部32に対応して、図面に向かって左から、「止」、「おしり」、「やわらか」、「ビデ」、「乾燥」と表記される。
【0056】
また、表示部36付近の所定の領域(点字領域)361には、目の不自由な使用者に対しても操作部32の機能を認識させるために、表示部36(表記)に対応する点字が形成される場合がある。
【0057】
ところが、静電容量式の操作部32では、目の不自由な使用者の点字読み取り中、使用者の手指が、読み取り中の点字に対応する操作部32や、読み取り中の点字に対応する操作部32に隣接する他の操作部32に近づくことで電極に通電して、操作部32が操作を受け付けてしまうことがある。このため、本実施形態においては、使用者の点字読み取り中の意図しない操作、すなわち、誤操作を抑えることができる。以下、その具体的な構成について説明する。
【0058】
<第1実施形態>
図5および
図6を参照して第1実施形態に係る操作装置30A(30)について説明する。
図5および
図6は、第1実施形態に係る操作装置30A(30)の説明図である。なお、
図5には、操作装置30Aの正面図を示し、
図6には、
図5におけるA-A線断面の模式的な端面図を示している。
【0059】
また、第1実施形態に係る操作装置30Aは、上記した操作装置300とは、点字部材38(38A)を備える点で相違し、それ以外は同じ構成である。このため、以下では、操作装置300と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、その同一または同等の箇所の説明を省略する場合がある。
【0060】
図5および
図6に示すように、操作装置30Aは、筐体35と、操作部32と、表示部36と、点字部材38(38A)とを備える。また、操作部32は、静電素子である単一の電極37を有する。電極37は、筐体35内において、正面351の裏面側に配置される。また、電極37は、操作部32に対応する位置に配置される。すなわち、電極37は、操作部32に対応して複数横並びで配置される。
【0061】
操作部32は、人体(使用者の手指)と電極との間の静電容量に基づいて、使用者の操作を受け付ける。操作部32の検知方式は、人体(使用者の手指)が単一の電極37に近づくことで増加する静電容量に基づいて検知する自己容量方式である。
【0062】
点字部材38Aは、筐体35の正面351上に取り付けられる。点字部材38Aは、前部材381と、後部材382とを備える。前部材381は、横長の矩形プレート状の部材である。前部材381の正面は、読み取り面383となる。読み取り面383は、点字部材38Aの取り付け状態において、表示部36上に配置される。読み取り面383には、表示部36に対応する位置に、表示部36(表記)に対応する点字384が形成される。
【0063】
前部材381は、透明な部材であり、好ましくは、無色透明な部材である。前部材381は、たとえば、アクリル樹脂製である。すなわち、読み取り面383は、透明であるため、点字部材38の取り付け状態においても、使用者は表示部36(表記)を視認することができる。
【0064】
後部材382は、両端部が鉤状に屈曲された部材であり、前部材381と筐体35との間に配置されるスペーサ部材である。後部材382は、その前面が、前部材381の上縁部および両側縁部に接合され、その後面が、筐体35の正面351に接合される。
【0065】
点字部材381Aは、その取り付け状態において、後部材382により前部材381と筐体35の正面351との間に形成される空間385Aを有する。すなわち、点字部材381Aは、その取り付け状態では、操作部32との間に空間385Aを有する。
【0066】
このような第1実施形態によれば、点字部材38Aが操作部32との間に空間385Aを有することで、寄生容量が増加して読み取り面383から操作部32に対して電流が流れにくいものとなる。このため、使用者の点字384の読み取り中、使用者の手指が操作部32に近づいても、電極37への通電を抑制することができる。これにより、目の不自由な使用者の点字384の読み取り中における意図しない操作(誤操作)を抑えることができる。
【0067】
また、使用者の点字384の読み取り中、使用者の手指が、読み取り中の点字384に対応する操作部32や、たとえば、読み取り中の点字384に対応する操作部32に隣接する他の操作部32に近づいても、電極37への通電を抑制することができる。
【0068】
また、点字部材38Aの前部材381が透明であるため、点字部材38Aが表示部36上に配置されても表示部36(表記)を視認することができる。これにより、点字部材38Aに対して新たに表記する必要がなくなり、コスト低減などが可能となる。
【0069】
また、操作部32の検知方式が自己容量方式であるため、操作装置30Aは簡素な構造で感度も良好なものとなる。
【0070】
なお、上記した第1実施形態では、筐体35の正面351には操作部32が複数配置されるが、これに限らず、筐体35の正面351に操作部32が一つだけ配置されるものでもよい。
【0071】
<第2実施形態>
次に、
図7および
図8を参照して第2実施形態に係る操作装置30B(30)について説明する。
図7および
図8は、第2実施形態に係る操作装置30B(30)の説明図である。なお、
図7には、操作装置30Bの正面図を示し、
図8には、
図7におけるB-B線断面の模式的な端面図を示している。
【0072】
また、第2実施形態に係る操作装置30Bは、第1実施形態と同様、上記した操作装置300とは、点字部材38(38B)を備える点で相違し、それ以外は同じ構成である。このため、以下では、操作装置300と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、その同一または同等の箇所の説明を省略する場合がある。
【0073】
図7および
図8に示すように、操作装置30Bは、筐体35と、操作部32と、表示部36と、点字部材38(38B)とを備える。また、操作部32は、静電素子である単一の電極37を有する。電極37は、筐体35内において、正面351の裏面側に配置される。また、電極37は、操作部32に対応する位置に配置される。すなわち、電極37は、操作部32に対応して複数横並びで配置される。
【0074】
操作部32は、人体(使用者の手指)と電極との間の静電容量に基づいて、使用者の操作を受け付ける。操作部32の検知方式は、人体(使用者の手指)が単一の電極37に近づくことで増加する静電容量に基づいて検知する自己容量方式である。
【0075】
点字部材38Bは、筐体35の正面351上に取り付けられる。点字部材38Bは、前部材381と、後部材382とを備える。前部材381は、横長の矩形プレート状の部材である。前部材381の正面は、読み取り面383となる。読み取り面383は、点字部材38の取り付け状態において、表示部36上に配置される。読み取り面383には、表示部36に対応する位置に、表示部36(表記)に対応する点字384が形成される。
【0076】
前部材381は、たとえば、樹脂製である。なお、前部材381は、透明でもよいし、不透明でもよい。
【0077】
後部材382は、両端部が鉤状に屈曲された部材であり、前部材381と筐体35との間に配置されるスペーサ部材である。後部材382は、その前面が、前部材381の上縁部および両側縁部に接合され、その後面が、筐体35の正面351に接合される。
【0078】
点字部材38Bは、その取り付け状態において、操作部32との間に導電体385Bを有する。導電体385Bは、電気を通しやすい材料からなる部材であり、たとえば、金属部材である。導電体385Bは、横長の矩形プレート状に形成される。導電体385Bは、後部材382により前部材381と筐体35の正面351との間に形成される空間に配置される。導電体385Bは、点字部材38Bの取り付け状態において、たとえば、複数の操作部32の全てにわたって配置され、全ての操作部32に接触する。
【0079】
このような第2実施形態によれば、点字部材38Bが操作部32との間に導電体385Bを有することで、使用者の手指が読み取り面383に触れている間は2つ以上の電極37への同時通電(ゴースト)を積極的に発生させる状態となる。このため、使用者の点字384の読み取り中、使用者の手指が、読み取り中の点字384に対応する操作部32や、たとえば、読み取り中の点字384に対応する操作部32に隣接する操作部32に近づいても、電極37への通電を抑制することができる。これにより、目の不自由な使用者の点字384の読み取り中における意図しない操作(誤操作)を抑えることができる。
【0080】
また、操作部32の検知方式が自己容量方式であるため、操作装置30Bは簡素な構造で感度も良好なものとなる。
【0081】
なお、上記した実施形態では、筐体35の正面351に操作部32が複数横並びで配置されるが、これに限らず、操作部32が、たとえば、複数縦並びで配置されてもよいし、複数の列(たとえば、2列)で配置されてもよい。
【0082】
また、上記した実施形態では、水まわり機器の一例であるトイレシステム1に含まれる操作装置30について説明したが、水まわり機器は、トイレシステム1に限らず、たとえば、洗面所やキッチンなどの水栓システムや、浴室システムでもよい。
【0083】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
30 操作装置
32 操作部
36 表示部
37 電極
38 点字部材
381 読み取り面
384 点字
385A 空間
385B 導電体