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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】排気浄化装置および車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240228BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240228BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240228BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240228BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/08 B ZAB
F01N3/24 L
F01N3/28 301C
F01N3/28 301J
F01N3/20 B
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020027140
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021131068
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朝幸
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009561(JP,A)
【文献】特開2003-269149(JP,A)
【文献】特開2005-256727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0255285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 3/24
F01N 3/28
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排ガスの流れ方向において上流側に設けられた第1のNOx浄化触媒と、
前記排ガスの流れ方向において前記第1のNOx浄化触媒よりも下流側に設けられた第2のNOx浄化触媒と、
前記第1のNOx浄化触媒と前記第2のNOx浄化触媒との間に設けられた放熱部と、
前記第1のNOx浄化触媒の上流側において還元剤の供給を行う還元剤供給装置と、
前記放熱部および前記還元剤供給装置それぞれの動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記内燃機関の始動直後に前記排ガスを昇温させるために前記放熱部に放熱を開始させ、
その後、前記第2のNOx浄化触媒の下流側の排ガスの温度が予め定められた閾値を超えた場合に、前記還元剤供給装置に前記還元剤の噴射を開始させる、
排気浄化装置。
【請求項2】
前記閾値は、
前記第2のNOx浄化触媒の活性温度域の下限値である、
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記還元剤供給装置、前記第1のNOx浄化触媒、前記放熱部、および前記第2のNOx浄化触媒を直列に収容する筐体をさらに有する、
請求項1または2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記第1のNOx浄化触媒および前記第2のNOx浄化触媒は、前記還元剤から発生した物質による前記NOxの還元を促進する選択還元型触媒である、
請求項3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記第2のNOx浄化触媒よりも下流側に、前記物質を分解する分解触媒をさらに収容する、
請求項4に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記還元剤は、尿素水であり、
前記物質は、アンモニアである、
請求項4または5に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の排気浄化装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガスを浄化する排気浄化装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出された排ガスが流れる排気管に、排ガス中のNOxを低減するNOx浄化触媒が複数設けられた排気浄化装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、上流側のNOx浄化触媒と下流側のNOx浄化触媒との間に、それらの間を流れる排ガスを加熱する加熱装置を配置した排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-132168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の排気浄化装置では、NOx浄化触媒の活性化について改善の余地があった。
【0006】
本開示の一態様の目的は、複数のNOx浄化触媒を早期に活性化させることができる排気浄化装置および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る排気浄化装置は、内燃機関から排出された排ガスの流れ方向において上流側に設けられた第1のNOx浄化触媒と、前記排ガスの流れ方向において前記第1のNOx浄化触媒よりも下流側に設けられた第2のNOx浄化触媒と、前記第1のNOx浄化触媒と前記第2のNOx浄化触媒との間に設けられた放熱部と、前記第1のNOx浄化触媒の上流側において還元剤の供給を行う還元剤供給装置と、前記放熱部および前記還元剤供給装置それぞれの動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記内燃機関の始動直後に前記排ガスを昇温させるために前記放熱部に放熱を開始させ、その後、前記第2のNOx浄化触媒の下流側の排ガスの温度が予め定められた閾値を超えた場合に、前記還元剤供給装置に前記還元剤の噴射を開始させる。
【0008】
本開示の一態様に係る車両は、本開示の一態様に係る排気浄化装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数のNOx浄化触媒を早期に活性化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る排気浄化装置の構成を示す模式図
図2】本開示の実施の形態に係る制御部の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本開示の実施の形態に係る排気浄化装置100の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態の排気浄化装置100の構成の一例を示す模式図である。
【0013】
排気浄化装置100は、車両(図示略)に搭載され、内燃機関(図示略)から排出される排ガスを浄化する装置である。本実施の形態では、内燃機関がディーゼルエンジンである場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、内燃機関は例えばガソリンエンジンであってもよい。また、排気浄化装置100は、車両の内燃機関に限らず、例えば船舶や定置式の内燃機関に適用することも可能である。
【0014】
図1に示すように、排気浄化装置100は、制御部10、第1触媒コンバータ11、および第2触媒コンバータ12を有する。
【0015】
制御部10は、尿素水噴射装置2、8における尿素水(還元剤の一例)の噴射量および噴射タイミングや、放熱部4に対する電力供給のオン/オフなどを制御する。制御部10としては、例えば、ECU(Electronic Control Unit)が挙げられる。
【0016】
図1において、点線の矢印は、制御部10から放熱部4、尿素水噴射装置2、8へ出力される制御信号を示している。また、図1において、一点鎖線の矢印は、後述する温度センサ14から制御部10へ出力される信号を示している。
【0017】
制御部10の動作の詳細については、図2を用いて後述する。
【0018】
第1触媒コンバータ11および第2触媒コンバータ12は、排気管1において直列に設けられている。
【0019】
排気管1の上流側(図中の左側)の端部は、例えば、ディーゼルエンジンの排気マニホールド(図示略)の下流端に接続されている。排気マニホールドから排出された排ガスは、排気管1を、図中の左側から右側へ流れる。図1において、実線の矢印は、排ガスの流れ方向を示している。
【0020】
第1触媒コンバータ11は、排気管1に対して着脱可能な筐体(ケース)である。例えば、第1触媒コンバータ11は、第2触媒コンバータ12よりもディーゼルエンジンに近い位置に設けられている。
【0021】
第1触媒コンバータ11には、上流側から順に、尿素水噴射装置2、SCR(Selective Catalytic Reduction)3、放熱部4、SCR5、温度センサ14が直列に収容されている。
【0022】
尿素水噴射装置2(還元剤供給装置の一例)は、第1触媒コンバータ11内に尿素水(還元剤の一例)を噴射する装置である。尿素水噴射装置2により噴射された尿素水は、加水分解される。これにより発生したアンモニア(還元剤から発生する物質の一例)は、SCR3、5へ供給される。上述したとおり、尿素水の噴射量や噴射タイミングは、制御部10によって制御される。
【0023】
SCR3(第1のNOx浄化触媒の一例)およびSCR5(第2のNOx浄化触媒の一例)は、尿素水から発生したアンモニアにより、排ガス中のNOxを窒素に還元する触媒である。
【0024】
SCR3の担体と、SCR5の担体とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。担体としては、金属(例えば、ステンレス鋼)、セラミックス(例えば、炭化ケイ素またはコージライト)等を用いることができる。
【0025】
放熱部4は、例えば、バッテリ(図示略)からの電力供給により放熱する部材(例えば、ステンレスやセラミックス等)である。放熱部4の放熱により、SCR3とSCR5との間を流れる排ガスが加熱される。その結果、SCR5は、昇温し易くなる。なお、上述したとおり、放熱部4に対する電力供給のオン/オフは、制御部10によって制御される。
【0026】
温度センサ14は、SCR5の下流側に設けられている。温度センサ14は、定期的に、SCR5を通過した排ガスの温度を検出し、その温度(以下、検出温度という)を示す信号(図中の一点鎖線の矢印参照)を制御部10へ出力する。
【0027】
第2触媒コンバータ12は、排気管1に対して着脱可能な筐体(ケース)である。第2触媒コンバータ12は、第1触媒コンバータ11よりもディーゼルエンジンから遠い位置に設けられている。
【0028】
第2触媒コンバータ12には、上流側から順に、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)6、DPF(Diesel Particulate Filter)7、尿素水噴射装置8、SCR9、ASC(Ammonia Slip Catalyst)13が直列に収容されている。
【0029】
DOC6は、排ガス中の一酸化窒素や炭化水素を酸化させる触媒である。
【0030】
DPF7は、排ガス中の粒子状物質(Particulate Matter:PM)を捕集して取り除くフィルタである。
【0031】
尿素水噴射装置8は、第2触媒コンバータ12内に尿素水を噴射する装置である。尿素水噴射装置8により噴射された尿素水は、加水分解される。これにより発生したアンモニアは、SCR9へ供給される。上述したとおり、尿素水の噴射量や噴射タイミングは、制御部10によって制御される。
【0032】
SCR9は、尿素水から発生したアンモニアにより、排ガス中のNOxを窒素に還元する触媒である。
【0033】
SCR9の活性温度域は、例えば、SCR3、5の活性温度域よりも高い。
【0034】
また、SCR9は、金属(例えば、ステンレス鋼)を担体としてもよいし、セラミックス(例えば、炭化ケイ素またはコージライト)を担体としてもよい。
【0035】
ASC13(分解触媒の一例)は、SCR9で消費しきれなかったアンモニアを酸化、分解する触媒である。これにより、アンモニアが大気中に排出されることを防止できる。
【0036】
以上、排気浄化装置100の構成について説明した。
【0037】
次に、制御部10の動作について、図2を用いて説明する。図2は、制御部10の動作の一例を示すフローチャートである。図2に示すフローは、例えば、ディーゼルエンジンの始動直後に開始される。
【0038】
まず、制御部10は、放熱部4への電力供給を開始し、放熱部4に放熱を開始させる(ステップS1)。
【0039】
次に、制御部10は、温度センサ14から通知された検出温度が予め定められた閾値を超えたか否かを判定する(ステップS2)。
【0040】
閾値は、例えば、SCR5の活性温度域の下限値である。または、閾値は、例えば、SCR3の活性温度域の下限値およびSCR5の活性温度域の下限値のうち、小さい方の値であってもよい。
【0041】
検出温度が閾値を超えていない場合(ステップS2:NO)、フローは、ステップS2へ戻る。すなわち、制御部10は、再度、検出温度が閾値を超えたか否かを判定する。
【0042】
一方、検出温度が閾値を超えた場合(ステップS2:YES)、制御部10は、尿素水噴射装置2に尿素水の噴射を開始させる(ステップS3)。なお、このとき、制御部10は、尿素水噴射装置8に尿素水の噴射を開始させてもよい。
【0043】
以上、制御部10の動作について説明した。
【0044】
次に、排気浄化装置100の作用効果について以下に説明する。
【0045】
排気浄化装置100は、ディーゼルエンジンの始動直後に放熱部4の放熱を開始し、SCR5の下流側の排ガスの温度が閾値を超えた場合に、尿素水噴射装置2から尿素水の噴射を開始することを特徴とする。
【0046】
よって、上流側のSCR3は、排ガスにより早期に昇温し、下流側のSCR5は、放熱部4の放熱により早期に昇温するため、SCR3、5全体を早期に活性化させることができる。また、尿素水の噴射は、SCR5の下流側の排ガスの温度が閾値を超えた場合(換言すれば、SCR3、5がともに活性状態となった場合)に開始されるため、尿素水を無駄なく噴射することができる。
【0047】
また、排気浄化装置100では、活性温度域が異なるSCR3、5とSCR9とが別々の筐体(例えば、第1触媒コンバータ11、第2触媒コンバータ12)に収容されている。よって、第2触媒コンバータ12を、ディーゼルエンジンから離れた、充分な設置スペースを確保できる位置に設けることができる。よって、第2触媒コンバータ12に収容されるSCR9のサイズを大きくすることができ、NOx浄化効率をより向上させることができる。
【0048】
また、排気浄化装置100では、SCR3、5に対応して尿素水噴射装置2が設けられ、SCR9に対応して尿素水噴射装置8が設けられている。よって、第1触媒コンバータ11、第2触媒コンバータ12のそれぞれにおいて加水分解を促進でき、SCR3、5、9のそれぞれにおいて効率良くNOxを浄化することができる。
【0049】
また、排気浄化装置100では、第2触媒コンバータ12においてDOC6およびDPF7が設けられている。よって、一酸化炭素および炭化水素の酸化や、粒子状物質の捕集を、より確実に行うことができる。
【0050】
また、排気浄化装置100では、第1触媒コンバータ11および第2触媒コンバータ12は、それぞれ、独立して排気管1に着脱可能である。よって、メンテナンス等が容易となる。
【0051】
以上、排気浄化装置100の作用効果について説明した。
【0052】
なお、本開示は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。以下、各変形例について説明する。
【0053】
実施の形態では、図1に示した構成要素を全て含めて排気浄化装置100と呼称したが、図1に示した構成要素のうち、尿素水噴射装置2、SCR3、5、放熱部4、および制御部10を排気浄化装置100と呼称してもよい。
【0054】
また、実施の形態では、排気浄化装置100が第2触媒コンバータ12を備える場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、排気浄化装置100は、図1に示した構成要素のうち、DOC6、DPF7、尿素水噴射装置8、SCR9、ASC13、第2触媒コンバータ12を備えない構成であってもよい。
【0055】
また、実施の形態では、尿素水噴射装置2、SCR3、5、放熱部4、および温度センサ14が第1触媒コンバータ11に収容される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、尿素水噴射装置2、SCR3、5、放熱部4、および温度センサ14は、第1触媒コンバータ11に収容されることなく、排気管1内に設けられてもよい。
【0056】
また、実施の形態では、第1触媒コンバータ11がASCを備えない場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1触媒コンバータ11は、SCR5の下流側に、ASCを備えてもよい。これにより、第1触媒コンバータ11から流出する排ガス中のアンモニアを低減することができる。よって、アンモニアがDOC6に供給され、アンモニアがDOC6で酸化することを抑制できる。その結果、尿素水から発生したアンモニアの酸化に起因するNOxの発生を抑制できる。
【0057】
また、実施の形態では、第1触媒コンバータ11において、SCR3の上流側にのみ尿素水噴射装置2が設けられる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1触媒コンバータ11は、尿素水噴射装置2に加えて、放熱部4とSCR5との間にさらに尿素水噴射装置を備えてもよい。これにより、SCR5におけるNOx浄化効率をより向上させることができる。
【0058】
また、実施の形態では、NOx浄化触媒がSCR3、5、9である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。SCR3、5、9の代わりに、他の選択還元型触媒、NOx吸着触媒、または三元触媒が用いられてもよい。その場合、尿素水以外の還元剤(例えば、炭化水素等)が用いられてもよい。
【0059】
以上、各変形例について説明した。なお、各変形例は、組み合わせて実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の排気浄化装置および車両は、排ガスを浄化するNOx浄化触媒の早期活性化に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 排気管
2、8 尿素水噴射装置
3、5、9 SCR
4 放熱部
6 DOC
7 DPF
10 制御部
11 第1触媒コンバータ
12 第2触媒コンバータ
13 ASC
14 温度センサ
100 排気浄化装置
図1
図2