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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20240228BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240228BHJP
【FI】
F01N3/28 311T
F01N13/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020033259
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134758
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】杉 和篤
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0115847(US,A1)
【文献】特開2008-196328(JP,A)
【文献】特開2015-024815(JP,A)
【文献】特開2012-180806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジンの排気を浄化する浄化部材を収容するとともに、前記排気の流通方向が長手方向となるケーシングと、
前記ケーシングの側面における長手方向の一端部に設けられ、前記排気が前記ケーシング内に流入するための入口開口部と、
前記ケーシングの前記側面における長手方向の他端部に設けられ、前記排気が前記ケーシングから流出するための出口開口部と、
前記入口開口部に接続された第1パイプと、
前記出口開口部に接続された第2パイプと、を備え、
前記第1パイプの前記ケーシングに対する接続端部、及び、前記第2パイプの前記ケーシングに対する接続端部の少なくとも一方は、前記ケーシングの外側から前記ケーシングの短手方向に延在して前記入口開口部及び前記出口開口部の前記少なくとも一方に接続されており、当該接続端部を前記ケーシングの長手方向に切断したときの断面形状は、前記ケーシングの長手方向寸法が前記ケーシングの短手方向寸法に比して短い扁平形状であり、
前記扁平形状である前記第1パイプ及び前記第2パイプの少なくとも一方の前記接続端部は、前記ケーシングの内部に延設されて前記ケーシングの内面に接触配置されている
ことを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項2】
前記第1パイプ及び前記第2パイプの少なくとも一方は、前記ケーシングの外側で前記扁平形状である前記接続端部と繋がる外側パイプ部を備え、
前記扁平形状である前記接続端部の断面積と前記外側パイプ部の断面積との大きさは同じである
ことを特徴とする、請求項1に記載の排気浄化装置
【請求項3】
前記第1パイプの前記接続端部及び前記第2パイプの前記接続端部がともに前記扁平形状であり、
前記扁平形状が、楕円形状又は角アールの矩形状又はトラック形状である
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記ケーシングには、前記浄化部材としての選択還元型触媒が収容されている
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記長手方向が前記車両の車幅方向と一致する向きで前記車両に搭載されている
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備えた車両には、排ガスを浄化するための排気浄化装置が設けられる。排気浄化装置としては、排気に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルター(DPF)を備えたDPF装置と、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元し浄化する選択還元型触媒(SCR)を備えたSCR装置とから構成されるものが知られている。例えば特許文献1には、前段酸化触媒及びDPFが収容された上流側ケーシングと、SCR触媒及び後段酸化触媒が収容された下流側ケーシングとを備えた排気浄化装置の設置構造が開示されている。この構造では、排気浄化装置がブラケットを介してサイドフレームに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-78591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ケーシング内に流入した排気はケーシングの長手方向に流れるが、車両への搭載性やレイアウトの関係上、ケーシングの長手方向寸法は短い方が好ましいことがある。しかしながら、ケーシングを短くすると、その内部に収容される触媒(浄化部材)が小さくなってしまい、排気浄化性能の向上を図ることが困難になる。
本開示の排気浄化装置は、このような課題に鑑み創案されたものであり、ケーシングに接続されるパイプを工夫することで、ケーシングを短くすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
(1)本適用例に係る排気浄化装置は、車両に搭載されるエンジンの排気を浄化する浄化部材を収容するとともに、前記排気の流通方向が長手方向となるケーシングと、前記ケーシングの長手方向の一端部に設けられ、前記排気が前記ケーシング内に流入するための入口開口部と、前記ケーシングの長手方向の他端部に設けられ、前記排気が前記ケーシングから流出するための出口開口部と、前記入口開口部に接続された第1パイプと、前記出口開口部に接続された第2パイプと、を備える。前記第1パイプの前記ケーシングに対する接続端部、及び、前記第2パイプの前記ケーシングに対する接続端部の少なくとも一方の断面形状は、前記ケーシングの長手方向寸法が前記ケーシングの短手方向寸法に比して短い扁平形状である。
【0006】
このように、第1パイプ及び第2パイプの少なくとも一方の接続端部の断面形状を、ケーシングの長手方向寸法が短手方向寸法よりも短い形状にすることで、ケーシングの長手方向端部にパイプを接続したときの、パイプがケーシング内で占める長手方向寸法が小さくなる。このため、浄化部材の大きさを確保しつつケーシングの長手方向寸法が短くなり、これにより、排気浄化装置の車両搭載性やレイアウトの自由度が高まる。あるいは、ケーシングの長手方向寸法を、例えば設計上取りうる最大の長さに設定した場合には、より大きな容量の浄化部材がケーシングに収容可能となる。
【0007】
(2)本適用例に係る排気浄化装置において、前記第1パイプ及び前記第2パイプの少なくとも一方は、前記ケーシングの外側で前記扁平形状である前記接続端部と繋がる外側パイプ部を備え、前記扁平形状である前記接続端部の断面積と前記外側パイプ部の断面積との大きさは同じ(同程度の大きさを含む)であってもよい。
このように断面積の大きさを互いに同じにすることで、排気の流量をほぼ同じにすることができ、流量の変化による抵抗を低減させることができる。
【0008】
(3)本適用例に係る排気浄化装置において、前記扁平形状である前記第1パイプ及び前記第2パイプの少なくとも一方の前記接続端部が、前記ケーシングの内部に延設されて前記ケーシングの内面に接触配置されてもよい。
このように、扁平形状であるパイプの接続端部をケーシングの内部に延設して内面に接触配置することで、ケーシングが内側から補強され、ケーシングの強度が向上する。
【0009】
(4)本適用例に係る排気浄化装置において、前記第1パイプの前記接続端部及び前記第2パイプの前記接続端部がともに前記扁平形状であり、前記扁平形状が、楕円形状又は角アールの矩形状又はトラック形状であってもよい。
このように、二つのパイプの接続端部がともに扁平形状であれば、二つのパイプがケーシング内で占める長手方向寸法がより小さくなり、浄化部材の大きさを確保しつつケーシングがより短くなる。あるいは、ケーシングの長さを所定長さに設計した場合には、より大きな容量の浄化部材がケーシングに収容可能となる。
【0010】
(5)本適用例に係る排気浄化装置において、前記ケーシングには、前記浄化部材としての選択還元型触媒が収容されてもよい。
このように、ケーシングに浄化部材としての選択還元型触媒(SCR)が収容されているため、ケーシングの長手方向寸法を拡大することなく、SCRの長さを確保できる。これにより、排気がSCRを通過する距離を長くできるため、排気浄化性能が向上する。
【0011】
(6)本適用例に係る排気浄化装置において、前記ケーシングは、前記長手方向が前記車両の車幅方向と一致する向きで前記車両に搭載されてもよい。
このような向きでケーシングが配置されていても、上述した第1パイプ及び第2パイプの少なくとも一方の接続端部の断面が扁平形状とされることで、車幅規制をクリアしつつ、浄化部材の長さ(容量)を確保でき、排気浄化性能が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の排気浄化装置によれば、浄化部材を格納したケーシングに接続されるパイプの断面形状を部分的に工夫することで、ケーシングの長手方向寸法を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態としての排気浄化装置を説明するための模式的な斜視図である。
図2】実施形態としての排気浄化装置に含まれるSCR装置とこれに繋がるパイプとを示した側面図である。
図3図2のX-X矢視断面図である。
図4図2及び図3のY-Y矢視断面図である。
図5図2のZ-Z矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての排気浄化装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.全体構成]
本実施形態の排気浄化装置1は、車両に搭載されたエンジン(例えばディーゼルエンジン、図示略)から排出される排気を浄化する装置である。本実施形態では、図1に示すように、DPF装置2及びSCR装置3を備えた排気浄化装置1を例示する。また、本実施形態では、排気浄化装置1が、車両の右側のサイドフレーム10(図1中に二点鎖線で一部を示す)に取り付けられる構成を例示する。サイドフレーム10は、車両前後方向に延設された左右一対の骨格部材であり、例えば断面コ字状に形成される。
【0016】
図1中の白抜き矢印は、DPF装置2に流入する排気の流れを示す。DPF装置2は、排気浄化装置1のうち上流側に配置される浄化装置であり、筒状の第1ケーシング2C内に、図示しない前段酸化触媒及びパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下「DPF」という)が収容されて構成される。前段酸化触媒は、排気中の一酸化窒素(NO)や未燃燃料中の炭化水素(HC)等を酸化する酸化触媒であり、ハニカム状の担体に触媒物質を担持して構成される。DPFは、排気に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下「PM」という)を捕集する多孔質フィルタであり、前段酸化触媒の下流に配置される。前段酸化触媒及びDPFは、排気浄化用の浄化部材である。
【0017】
SCR装置3は、排気浄化装置1のうち下流側に配置される浄化装置であり、筒状の第2ケーシング3C内に、選択還元型触媒3A(図3参照、Selective Catalytic Reduction、以下「SCR3A」という)及び後段酸化触媒3B(図3参照)が収容されて構成される。SCR3Aは、排気中の窒素酸化物(NOx)を還元して除去する触媒であり、ハニカム状の担体に触媒を担持して構成される。SCR3Aは、SCR装置3の上流側に設けられた還元剤噴射装置6から供給される添加剤(尿素水)をアンモニア(NH3)に加水分解するとともにアンモニアを吸着し、吸着したアンモニアを還元剤として排気中のNOxを窒素(N2)へと還元する。後段酸化触媒3Bは、SCR3Aの下流に配置され、SCR3Aでの還元反応における余剰分のアンモニアを除去するための酸化触媒であり、例えば前段酸化触媒と同様に構成される。SCR3A及び後段酸化触媒3Bも、排気浄化用の浄化部材である。
【0018】
ケーシング2C,3Cはいずれも、排気の流通方向が長手方向と一致する。本実施形態の排気浄化装置1は、第1ケーシング2Cの長手方向に対し、第2ケーシング3Cの長手方向がほぼ直交する向きで車両に搭載される。より具体的には、第1ケーシング2Cが、その長手方向を車両前後方向に略一致する向きで搭載され、第2ケーシング3Cが、その長手方向を車幅方向に略一致する向きで搭載される。
【0019】
第1ケーシング2Cには、長手方向の一端部(車両前側の端部)に、排気が第1ケーシング2C内に流入するための入口開口部(図示略)が設けられ、長手方向の他端部(車両後側の端部)に、排気が第1ケーシング2Cから流出するための出口開口部(図示略)が設けられる。なお、第1ケーシング2Cの入口開口部には、エンジンとDPF装置2とを繋ぐ図示しない配管が接続される。この配管及び第1ケーシング2Cの上流端の少なくとも一方は、図示しないブラケット等を介してサイドフレーム10に固定される。
【0020】
また、第2ケーシング3Cには、長手方向の一端部(車両右側の端部)に、排気が第2ケーシング3C内に流入するための入口開口部3d(図3参照)が設けられ、長手方向の他端部(車両左側の端部)に、排気が第2ケーシング3Cから流出するための出口開口部3e(図3参照)が設けられる。なお、図3及び図5には、排気の流通方向を白抜き矢印で示す。
【0021】
排気浄化装置1には、二種類のパイプ4,5が設けられる。第1パイプ4は、二つのケーシング2C,3Cを連通する配管であり、第1ケーシング2Cを流通した排気を第2ケーシング3Cへ案内する流路を構成する。すなわち、第1パイプ4は、その上流端が第1ケーシング2Cの出口開口部に接続され、その下流端が第2ケーシング3Cの入口開口部3dに接続される。なお、本実施形態の第1パイプ4は、車幅方向に延設された部分において、二つの管材がフランジ4fを介して連結されることで一つの配管を構成している。ただし、第1パイプ4が分割式ではなく、一本の配管で構成されてもよい。
【0022】
図2及び図5に示すように、第2パイプ5は、その上流端が第2ケーシング3Cの出口開口部3eに接続された配管であり、排気浄化装置1で浄化された排気を車両外部へ排出する流路を構成する。なお、本実施形態の第2パイプ5も、第1パイプ4と同様、車幅方向に延設された部分において、二つの管材がフランジ5fを介して連結されることで一つの配管を構成している。ただし、第2パイプ5が分割式ではなく、一本の配管で構成されてもよい。
【0023】
本実施形態の排気浄化装置1では、第1パイプ4が車幅方向に延設されており、この第1パイプ4に上記の還元剤噴射装置6が設けられる。なお、還元剤噴射装置6の位置はこれに限られず、例えば、第1ケーシング2Cと第1パイプ4との接続箇所であってもよいし、第1ケーシング2C内に第1パイプ4の上流端が入り込んでいる場合には第1ケーシング2C内であってもよい。
【0024】
本実施形態の排気浄化装置1は、第1ケーシング2Cと第2ケーシング3Cとを連結した状態で二つのケーシング2C,3Cを車体(本実施形態ではサイドフレーム10)に取り付ける取付部材20を有する。取付部材20は、第1ケーシング2Cの外周面を挟持するDPFバンド21と、第2ケーシング3Cの外周面を挟持する二つのSCRバンド22と、第2ケーシング3Cを車両前後方向から挟む二つの側面部23と、DPFバンド21と側面部23とを連結する連結面部24とを有する。
【0025】
DPFバンド21は、第1ケーシング2Cの車両後方側を挟持し、連結面部24に締結される。各SCRバンド22は、第2ケーシング3Cを長手方向に離隔した位置で挟持し、側面部23に締結され、側面部23は連結面部24に締結される。このように、本実施形態の排気浄化装置1では、DPF装置2及びSCR装置3がコンパクト化された状態で車両に搭載される。
【0026】
排気浄化装置1は、少なくとも第1ケーシング2C及び第2ケーシング3Cのそれぞれに配置されて内部を流通する排気の状態を検知する複数のセンサー7と、複数のセンサー7のそれぞれを制御する複数のコントローラ8とを有する。センサー7としては、例えば、温度センサー,圧力センサー,NOxセンサー,PMセンサー,NH3センサーが挙げられる。なお、図1中に符号7Aを付したセンサーは温度センサーであり、符号7Bを付したセンサーはNOxセンサー又はNH3センサーである。各種センサー7は、ケーシング2C,3Cに加え、第1ケーシング2Cの上流側の配管や、第1パイプ4,第2パイプ5に配置されてもよい。
【0027】
コントローラ8はセンサー7ごとに設けられ、ハーネス9を介して対応するセンサー7に接続される。コントローラ8としては、例えば、圧力センサー用コントローラ,温度センサー用コントローラ,NOxセンサー用コントローラ,PMセンサー用コントローラ,NH3センサー用コントローラが挙げられる。ハーネス9は、第1ケーシング2C及び第2ケーシング3Cの周囲に配索され、図示しないクリップ等により位置ずれが防止される。本実施形態の排気浄化装置1では、複数のコントローラ8がブラケット11に取り付けられることで一箇所に集約されているが、各コントローラ8を対応するセンサー7の位置にそれぞれ配置することでブラケット11を省略してもよい。
【0028】
[2.要部構成]
次に、排気浄化装置1の第2ケーシング3C(以下、単に「ケーシング3C」という)に接続される二つのパイプ4,5の構造を説明するとともに、ケーシング3Cに対する各パイプ4,5の接続構造について説明する。図2は、ケーシング3Cに各パイプ4,5が接続された状態を示す側面図であり、図3図5はそれぞれ、図2のX-X,Y-Y,Z-Zの矢視断面図である。なお、これらの図では、各パイプ4,5を各フランジ4f,5fで切り離した状態で示している。
【0029】
図1及び図3に示すように、第1パイプ4は、車両後方から見て(後面視で)略L字形状に形成される。本実施形態の第1パイプ4は、車幅方向に延在する主部4aと、主部4aの車両外側の端部から上方に湾曲形成されたコーナー部4cと、ケーシング3Cに接続される接続端部4bとを有する。これらの主部4a,コーナー部4c及び接続端部4bは連続しており、主部4aの延在方向と接続端部4bの延在方向とは直交する。本実施形態では、主部4aの延在方向がケーシング3Cの長手方向(車幅方向)と一致し、接続端部4bの延在方向がケーシング3Cの短手方向(ケーシング3Cが円筒であれば径方向)と一致する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の主部4aの断面形状は略円形であり、主部4aの長手方向(すなわち車幅方向)において断面一様となっている。以下、主部4aの断面の外径寸法をL1とする。また、図3に示すように、第1パイプ4は、主部4aからコーナー部4cを経て接続端部4bに向かうに連れ、その断面形状が変化する。具体的には、主部4aの断面が略円形状であるのに対し、図4に示すように接続端部4bの断面は、主部4aの断面を潰した(狭くした)ような扁平形状となっている。
【0031】
図3及び図4に示すように、接続端部4bの断面形状は、ケーシング3Cの長手方向に一致する寸法(長手方向寸法L1′)が、短手方向に一致する寸法(短手方向寸法)に比して短い扁平形状である。なお、図4では、接続端部4bの断面の短手方向寸法が、主部4aの断面の外径L1と等しい第1パイプ4を例示しているが、接続端部4bの断面の短手方向寸法はこれに限られない。また、図4では、接続端部4bの断面が略楕円形状である第1パイプ4を例示しているが、楕円以外の扁平形状(例えば、角アールの矩形状や多角形状,トラック形状)であってもよい。
【0032】
図3に示すように、本実施形態の第1パイプ4では、接続端部4bがケーシング3Cの内部に延設されてケーシング3Cの内面(ここでは車両外側の端面)に接触配置されている。このように、接続端部4bが入口開口部3dからケーシング3Cの奥まで延設され、ケーシング3Cの内面に接触して配置されることで、接続端部4bがケーシング3Cの内面側からケーシング3Cを補強する機能を持つ。接続端部4bには多数の孔部4dが貫設されている。第1パイプ4を流通してきた排気は、これらの孔部4dを通じてケーシング3C内に流入する。
【0033】
第1パイプ4と同様に、第2パイプ5も車両後方から見て(後面視で)略L字形状に形成される。図5に示すように、本実施形態の第2パイプ5は、車幅方向に延在する主部5aと、主部5aの車両内側の端部から上方に湾曲形成されたコーナー部5cと、ケーシング3Cに接続される接続端部5bとを有する。これらの主部5a,コーナー部5c及び接続端部5bは連続しており、主部5aの延在方向と接続端部5bの延在方向とは直交する。本実施形態では、主部5aの延在方向がケーシング3Cの長手方向(車幅方向)と一致し、接続端部5bの延在方向がケーシング3Cの短手方向(ケーシング3Cが円筒であれば径方向)と一致する。
【0034】
図2に示すように、本実施形態では、第2パイプ5の主部5aの断面形状も略円形であり、主部5aの長手方向(すなわち車幅方向)において断面一様となっている。以下、主部5aの断面の外径寸法をL2とする。また、第2パイプ5も第1パイプ4と同様に、主部5aからコーナー部5cを経て接続端部5bに向かうに連れ、その断面形状が変化する。具体的には、主部5aの断面が略円形状であるのに対し、図5に示すように接続端部5bの断面は、主部5aの断面を潰した(狭くした)ような扁平形状となっている。
【0035】
図5に示すように、接続端部5bの断面形状は、ケーシング3Cの長手方向に一致する寸法(長手方向寸法L2′)が、短手方向に一致する寸法(短手方向寸法)に比して短い。なお、図5では、接続端部5bの断面の短手方向寸法が、主部5aの断面の外径L2と等しい第2パイプ5を例示しているが、接続端部5bの断面の短手方向寸法はこれに限られない。図5では、接続端部5bの断面が角アールの略矩形状である第2パイプ5を例示している。なお、接続端部5bの断面形状は、他の扁平形状(例えば、楕円形状やトラック形状,矩形以外の扁平な多角形状)であってもよい。
【0036】
図5に示すように、本実施形態の第2パイプ5では、接続端部5bがケーシング3Cの内部に延設されてケーシング3Cの内面(ここでは車両内側の端面)に接触配置されている。このように、接続端部5bが出口開口部3eからケーシング3Cの奥まで延設され、ケーシング3Cの内面に接触して配置されることで、接続端部5bも、ケーシング3Cの内面側からケーシング3Cを補強する機能を持つ。なお、第2パイプ5の接続端部5bはケーシング3C内で開口しており、ケーシング3C内のSCR3A及び後段酸化触媒3Bを通過した排気が開口を通じて第2パイプ5内に流入し、外部へと排出される。
【0037】
また、本実施形態の排気浄化装置1では、図2に示すように、第1パイプ4が、ケーシング3Cの下方且つ斜め後方に接続され、第2パイプ5が、ケーシング3Cの下方かつ斜め前方に接続される。これにより、二つのパイプ4,5の干渉が回避される。
【0038】
[3.作用,効果]
上述した排気浄化装置1では、浄化部材としてのSCR3A及び後段酸化触媒3Bを収容したケーシング3Cの長手方向の一端に入口開口部3d、他端に出口開口部3eが設けられる。さらに、これらの開口部3d,3eに接続されるパイプ4,5の接続端部4b,5bの少なくとも一方の断面形状は、ケーシング3Cの長手方向寸法L1′,L2′が短手方向寸法L1,L2に比して短い扁平形状となっている。
【0039】
このように、パイプ4,5の接続端部4b,5bの断面形状を、ケーシング3Cの長手方向寸法L1′,L2′が短手方向寸法L1,L2よりも短くすることで、ケーシング3Cの長手方向端部にパイプ4,5を接続したときの、パイプ4,5がケーシング3C内で占める長手方向寸法を小さくすることができる。例えば、ケーシング3Cの長手方向寸法を100とした場合、パイプ4,5の接続端部4b,5bの長手方向寸法L1′,L2′がより短いほど、ケーシング3C内に配置される浄化部材の長手方向寸法を100に近い値にすることができる。
【0040】
したがって、ケーシング3Cに接続されるパイプ4,5を工夫することで、浄化部材の大きさを確保しつつケーシング3Cを短くできる。これにより、SCR装置3、ひいては排気浄化装置1の車両搭載性やレイアウトの自由度を高めることができる。あるいは、ケーシング3Cの長手方向寸法を、例えば設計上取りうる最大の長さに設定した場合に、より大きな容量の浄化部材をケーシング3Cに収容することができる。
【0041】
上述した排気浄化装置1によれば、パイプ4,5の接続端部4b,5bがケーシング3Cの内部に延設されるとともにケーシング3Cの内面に接触配置されていることから、ケーシング3Cの強度を向上させることができる。
【0042】
上述した排気浄化装置1によれば、第1パイプ4の接続端部4b及び第2パイプ5の接続端部5bがともに扁平形状であるため、二つのパイプ4,5がケーシング3C内で占める長手方向寸法をより小さくすることができる。これにより、浄化部材の大きさを確保しつつケーシング3Cをより短くできる。あるいは、ケーシング3Cの長さを所定長さに設計した場合には、より大きな容量の浄化部材をケーシング3Cに収容することができる。
【0043】
上述した排気浄化装置1では、ケーシング3Cに浄化部材としてのSCR3Aが収容されているため、ケーシング3Cの長手方向寸法を拡大することなく、SCR3Aの長さを確保できる。これにより、排気がSCR3Aを通過する距離を長くできるため、排気浄化性能の向上を図ることができる。
【0044】
上述した排気浄化装置1では、ケーシング3Cの長手方向が車幅方向と一致する向きで、ケーシング3Cが車両に搭載されている。言い換えると、このような向きでケーシング3Cを配置しても、上述したパイプ4,5の接続構造が採用された排気浄化装置1であれば、車幅規制をクリアしつつ、浄化部材の長さ(容量)を確保することができ、排気浄化性能の向上を図ることができる。
【0045】
[4.変形例]
上述した排気浄化装置1の構成は一例である。上述した排気浄化装置1では、二つのパイプ4,5の接続端部4b,5bがともに扁平形状である場合を例示したが、少なくとも一方の接続端部4b,5bが扁平形状であれば、ケーシング3Cの長手方向端部にパイプ4,5を接続したときの、パイプ4,5がケーシング3C内で占める長手方向寸法を小さくすることができる。また、パイプ4,5の主部4a,5aの断面形状は円形に限られない。
【0046】
上述したパイプ4,5の接続端部4b,5bはいずれもケーシング3Cの内部に延設され、ケーシング3Cの内面に接触配置されているが、接続端部4b,5bがケーシング3Cの内面に非接触に配置されてもよい。また、接続端部4b,5bがケーシング3Cの内部に延設されていなくてもよい。例えば、第1パイプの接続端部の端面に開口が設けられ、この端面の開口が入口開口部3dと連通するように接続端部がケーシング3Cに接続されてもよい。なお、第2パイプの接続端部もこれと同様に構成してもよい。
【0047】
上述した接続部分の構造が適用されたケーシングに収容されている浄化部材はSCR3A及び後段酸化触媒3Bに限られない。言い換えると、SCR3A及び後段酸化触媒3Bに代えて又は加えて、他の浄化部材を収容したケーシングに接続されるパイプの接続端部の断面形状を、上記の扁平形状としてもよい。
【0048】
上述したDPF装置2及びSCR装置3の配置は上記のものに限られない。例えば、これらの装置2,3が逆の配置になっていてもよいし、平行に配置されていてもよいし、車両前後方向に延びるように(略直線状に)配置されてもよい。また、DPF装置2及びSCR装置3の車体に対する固定方法は、上記の取付部材20による方法でなくてもよい。また、DPF装置2及びSCR装置3に代えてあるいは加えて、他の浄化部材、例えば、フィルタに選択還元型触媒を塗ったSCRF(Selective Catalytic Reduction on filter)を収容する排気浄化装置が設けられてもよい。DPF装置2に代えてSCRFを収容する排気浄化装置が設けられる場合には、SCRFを収容するケーシングに、上記の還元剤噴射装置6を設けてもよい。
【0049】
また、第1パイプ4の主部4aの断面積やコーナー部4cの断面積を、接続端部4bの断面積と同じ大きさとなるようにすることができる。このように同じ大きさの面積(同程度の大きさの面積であればよい)にすることで、排気の流量を主部4aやコーナー部4cと接続端部4bとでほぼ同じにすることができ、流量の変化による抵抗を低減させることができる。同様に、第2パイプ5の主部5aの断面積やコーナー部5cの断面積を、接続端部5bの断面積と同じ大きさ(同程度の大きさの面積であればよい)となるようにすることができる。この場合も、上記と同じように流量の変化による抵抗を低減させることができる。
なお、本変形例では、第1パイプの主部4a及びコーナー部4c、並びに、第2パイプの主部5a及びコーナー部5cがそれぞれ外側パイプ部に該当するが、外側パイプ部はこれに限られず、接続端部4bまたは接続端部5bに繋がるケーシングの外側のパイプ部であればよい。
【0050】
また、前述の実施形態では、第2ケーシング3C内の排気が浄化部材を通過する方向を長手方向とし、この長手方向と直交する方向を短手方向としているが、本発明は、例えば、排気が浄化部材を通過する方向のケーシングの長さが、排気が浄化部材を通過する方向と直交する方向のケーシングの長さに対して短いケーシングにも適用できる。本明細書では、便宜上、長手方向及び短手方向と記載するが、ケーシング内の排気が浄化部材を通過する方向を長手方向と表現し、ケーシング内の排気が浄化部材を通過する方向と直交する方向を短手方向と表現している。
【符号の説明】
【0051】
1 排気浄化装置
3A SCR触媒(浄化部材)
3C 第2ケーシング(ケーシング)
3d 入口開口部
3e 出口開口部
4 第1パイプ
4b 接続端部
5 第2パイプ
5b 接続端部
図1
図2
図3
図4
図5