(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240228BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240228BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240228BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2020041537
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 威夫
(72)【発明者】
【氏名】川原 慶喜
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208119(JP,A)
【文献】特開2013-033319(JP,A)
【文献】特開2002-170181(JP,A)
【文献】特開2014-225215(JP,A)
【文献】特開2017-207887(JP,A)
【文献】特開2016-048503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-10/30,
30/00-30/08,
50/00-50/20,
50/26-99/00
G08B 19/00-31/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力管理用の計器から電力消費量を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された電力消費量に基づいて、連続する2日間における1日当たりの電力消費量の比である前日比を算出する算出部と、
前記算出部によって算出されたN日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比と、前記取得部によって取得される前記N+1日目の1日当たりの電力消費量との少なくともいずれかに基づいて、前記計器が設置される住宅に居住する需要家の生活状態を仮判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記算出部によって算出された前記N+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比に基づいて、前記需要家の生活状態を仮判定する第2判定部と、
前記第2判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記取得部によって取得された電力消費量に基づいて、前記N+2日目以降の一定時間帯における電力消費量の変動幅を評価する評価部と、
前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する第3判定部と、
前記第1判定部と、前記第2判定部と、前記第3判定部との少なくともいずれかによって判定された判定結果の出力を制御する出力制御部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記N日目の電力消費量と前記N+1日目の電力消費量との比である前日比が所定値A以下である若しくは前記N+1日目の1日当たりの電力消費量が所定値B以下である場合に、前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2判定部は、前記N+1日目の電力消費量と前記N+2日目の電力消費量との比である前日比が所定値C以下である場合に、前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記電力消費量の変動幅として、前記一定時間帯における電力消費量の最大値から電力消費量の最小値を除算した値を評価することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第3判定部は、
前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて判定モードを選択する選択部と、
前記選択部により選択され、前記変動幅が第1閾値以上である場合に、該変動幅に基づいて前記需要家の生活状態を評価する第1判定モード評価部と、
前記選択部により選択され、前記変動幅が前記第1閾値未満であり且つ該第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、ベース電力消費量αと、前記需要家の住居に設置される電気機器のインバータ機器変動量βと、前記一定時間帯内の連続する単位時間における電力消費量の変化量θと、に基づいて、前記需要家の生活状態を評価する第2判定モード評価部と、
前記選択部により選択され、前記変動幅が前記第2閾値未満である場合に、前記ベース電力消費量αと、前記電気機器のインバータ機器変動量βと、前記一定時間帯内の累計電力消費量とに基づいて、前記需要家の生活状態を評価する第3判定モード評価部と、
前記第1判定モード評価部と、第2判定モード評価部と、第3判定モード評価部とのいずれかによって評価された評価結果に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する本判定部と、
を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2判定モード評価部は、前記需要家の生活状態として、前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βと前記電力消費量の変化量θとの関係がθ>α+βとなる回数を評価し、
前記本判定部は、
前記関係がθ>α+βとなる回数が所定値D以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、
前記関係がθ>α+βとなる回数が前記所定値D未満である場合には、翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記本判定部は、前記翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、
前記関係がθ>α+βとなる回数が前記所定値Dと略同等以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、
前記関係がθ>α+βとなる回数が前記所定値Dと略同等未満である場合には、前記需要家の生活状態が正常ではないと本判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第3判定モード評価部は、前記需要家の生活状態として、前記一定時間帯内の単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数と、前記一定時間帯内の累計電力消費量とを評価し、
前記本判定部は、
前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が所定値E以上であり、且つ前記一定時間帯内の累計電力消費量が該一定時間帯と同一の時間帯内における累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、
前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が前記所定値E未満であるか、若しくは前記一定時間帯内の累計電力消費量が前記過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ未満である場合には、翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記本判定部は、前記翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、
前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が前記所定値E以上であり、且つ前記一定時間帯内の累計電力消費量が前記過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、
前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が前記所定値E未満であるか、若しくは前記一定時間帯内の累計電力消費量が前記過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ未満である場合には、前記需要家の生活状態が正常ではないと本判定する
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記出力制御部は、前記第1判定部、前記第2判定部、および前記第3判定部のいずれかによって、前記需要家の生活状態が正常ではないと判定された場合には、警告情報を出力することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第3判定部の判定結果を蓄積する蓄積部をさらに備え、
前記出力制御部は、前記蓄積部が、連続する所定期間において前記第3判定部により記需要家の生活状態が正常ではないと判定された判定結果を蓄積した場合には、緊急警告情報を出力することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータを、
電力管理用の計器から電力消費量を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された電力消費量に基づいて、連続する2日間における1日当たりの電力消費量の比である前日比を算出する算出部と、
前記算出部によって算出されたN日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比と、前記取得部によって取得される前記N+1日目の1日当たりの電力消費量との少なくともいずれかに基づいて、前記計器が設置される住宅に居住する需要家の生活状態を仮判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記算出部によって算出された前記N+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比に基づいて、前記需要家の生活状態を仮判定する第2判定部と、
前記第2判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記
取得部によって
取得された電力消費量に基づいて、前記N+2日目以降の一定時間内における電力消費量の変動幅を評価する評価部と、
前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する第3判定部と、
前記第1判定部と、前記第2判定部と、前記第3判定部との少なくともいずれかによって判定された判定結果の出力を制御する出力制御部と、して機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に在宅者の生活状態の異常を検知する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における高齢化や核家族化の急速な進展の中、単身の高齢者の割合が増加しており、これに伴い突発的な病気等で不測の事態が生じた際誰にも異変に気づかれることなく、いわゆる孤独死のような事態が発生することが社会的な問題となっている。このような問題を解決する手段として、高齢者世帯等に対する見守りサービス等の異常検知システムが活用されている。このような異常検知システムにおいては、例えば、宅内にあるドアや家電機器などにセンサーを設置したり分電盤に特殊な機器を設置したりすることによって、詳細な電気資料量に関する情報を取得して対象となる高齢者等の生活状態を判定し、異常が検知された場合には家族などに通知している。
【0003】
上記のような検知システムでは、高い精度で需要家の生活状態を判定することができる一方、室内外の必要な箇所にセンサー等の機器を設置する必要があり、計測データを収集するための通信設備が必要となる。そこで、特殊な機器を設置せずに見守りサービスを行う方法として、例えば、高齢者等の需要家が宅内で使用する電力等の消費量を計測し、計測された消費量に基づいて需要家の異状を判定し放置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1のような技術においては、異常検知の精度を高め誤報の頻度を低減させるために、基準となる1日分の電力等の消費量と最新の1日分の消費量とを比較しその差分を評価することにより、異常が生じた場合に通信手段を介して家族等へ報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような技術では、ある時点(1日もしくは一定期間)での家電機器や電気の使用方法の変化だけを活用して異常検知を行うので、例えば突発的な外出などが発生した場合にも異常を検知してしまう課題があった。また、異常を検知する対象が家族などである場合には、通知する家族等の身寄りがいない場合若しくは疎遠になっている場合にはサービスを活用することができないといった課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高齢者世帯等に対するいわゆる見守りサービスに活用できるものであり、電力の使用状況を活用することにより高齢者等の需要家の生活状態の高い精度で判定することができる情報処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の態様は、電力管理用の計器から電力消費量を取得する取得部と、前記取得部によって取得された電力消費量に基づいて、連続する2日間における1日当たりの電力消費量の比である前日比を算出する算出部と、前記算出部によって算出されたN日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比と、前記取得部によって取得される前記N+1日目の1日当たりの電力消費量との少なくともいずれかに基づいて、前記計器が設置される住宅に居住する需要家の生活状態を仮判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記算出部によって算出された前記N+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比に基づいて、前記需要家の生活状態を仮判定する第2判定部と、前記第2判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記取得部によって取得された電力消費量に基づいて、前記N+2日目以降の一定時間帯における電力消費量の変動幅を評価する評価部と、前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する第3判定部と、前記第1判定部と、前記第2判定部と、前記第3判定部との少なくともいずれかによって判定された判定結果の出力を制御する出力制御部とを備える。
【0009】
また、前記第1判定部は、前記N日目の電力消費量と前記N+1日目の電力消費量との比である前記前日比が所定値A以下である若しくは前記N+1日目の1日当たりの電力消費量が所定値B以下である場合に、前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定することが好ましい。
【0010】
また、前記第2判定部は、前記N+1日目の電力消費量と前記N+2日目の電力消費量との比である前記前日比が所定値C以下である場合に、前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定することが好ましい。
【0011】
また、前記評価部は、前記電力消費量の変動幅として、前記一定時間帯における電力消費量の最大値から電力消費量の最小値を除算した値を評価することが好ましい。
【0012】
また、前記第3判定部は、前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて判定モードを選択する選択部と、前記選択部により選択され、前記変動幅が第1閾値以上である場合に、該変動幅に基づいて前記需要家の生活状態を評価する第1判定モード評価部と、前記選択部により選択され、前記変動幅が前記第1閾値未満であり且つ該第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、ベース電力消費量αと、前記需要家の住居に設置される電気機器のインバータ機器変動量βと、前記一定時間帯内の連続する単位時間における電力消費量の変化量θと、に基づいて、前記需要家の生活状態を評価する第2判定モード評価部と、前記選択部により選択され、前記変動幅が前記第2閾値未満である場合に、前記ベース電力消費量αと、前記電気機器のインバータ機器変動量βと、前記一定時間帯内の累計電力消費量とに基づいて、前記需要家の生活状態を評価する第3判定モード評価部と、前記第1判定モード評価部と、第2判定モード評価部と、第3判定モード評価部とのいずれかによって評価された評価結果に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する本判定部と、を有することが好ましい。
【0013】
また、前記第2判定モード評価部は、前記需要家の生活状態として、前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βと前記電力消費量の変化量θとの関係がθ>α+βとなる回数を評価し、前記本判定部は、前記関係がθ>α+βとなる回数が所定値D以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、前記関係がθ>α+βとなる回数が前記所定値D未満である場合には、翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定することが好ましい。
【0014】
また、前記本判定部は、前記翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記関係がθ>α+βとなる回数が前記所定値Dと略同等以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、前記関係がθ>α+βとなる回数が前記所定値Dと略同等未満である場合には、前記需要家の生活状態が正常ではないと本判定することが好ましい。
【0015】
また、前記第3判定モード評価部は、前記需要家の生活状態として、前記一定時間帯内の単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数と、前記一定時間帯内の累計電力消費量とを評価し、前記本判定部は、前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が所定値E以上であり、且つ前記一定時間帯内の累計電力消費量が該一定時間帯と同一の時間帯内における累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が前記所定値E未満であるか、若しくは前記一定時間帯内の累計電力消費量が前記過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ未満である場合には、翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定することが好ましい。
【0016】
また、前記本判定部は、前記翌日における前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が前記所定値E以上であり、且つ前記一定時間帯内の累計電力消費量が前記過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ以上である場合には、前記需要家の生活状態が正常であると本判定し、前記単位時間における電力消費量が前記ベース電力消費量αと前記インバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が前記所定値E未満であるか、若しくは前記一定時間帯内の累計電力消費量が前記過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ未満である場合には、前記需要家の生活状態が正常ではないと本判定することが好ましい。
【0017】
また、前記出力制御部は、前記第1判定部、前記第2判定部、および前記第3判定部のいずれかによって、前記需要家の生活状態が正常ではないと判定された場合には、警告情報を出力することが好ましい。
【0018】
また、前記第3判定部の判定結果を蓄積する蓄積部をさらに備え、前記出力制御部は、前記蓄積部が、連続する所定期間において前記第3判定部により前記需要家の生活状態が正常ではないと判定された判定結果を蓄積した場合には、緊急警告情報を出力することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る第2の態様は、プログラムであって、コンピュータを、電力管理用の計器から電力消費量を取得する取得部と、前記取得部によって取得された電力消費量に基づいて、連続する2日間における1日当たりの電力消費量の比である前日比を算出する算出部と、前記算出部によって算出されたN日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比と、前記取得部によって取得される前記N+1日目の1日当たりの電力消費量との少なくともいずれかに基づいて、前記計器が設置される住宅に居住する需要家の生活状態を仮判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記算出部によって算出された前記N+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比に基づいて、前記需要家の生活状態を仮判定する第2判定部と、前記第2判定部によって前記需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、前記計測部によって計測された電力消費量に基づいて、前記N+2日目以降の一定時間内における電力消費量の変動幅を評価する評価部と、前記評価部によって評価された前記電力消費量の変動幅に基づいて、前記需要家の生活状態を本判定する第3判定部と、前記第1判定部と、前記第2判定部と、前記第3判定部との少なくともいずれかによって判定された判定結果の出力を制御する出力制御部と、して機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る態様によれば、複数日にわたる電力消費量を取得するとともに所定条件下において高齢者等の需要家の生活状態を段階的に判定しているので、需要家の生活状態が正常であるか否かを高い精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態に係る情報処理装置が適用される報知システムの一例を示した図である。
【
図2】本実施の形態に係る情報処理装置の機能ブロック構成を表す図である。
【
図3】一定時間内の電力消費量の変動の一例を表す図である。
【
図4】本実施の形態に係る情報処理装置を構成する第3判定部の機能ブロック構成を表す図である。
【
図5】情報処理装置による処理手順を表すフローチャートである。
【
図6】情報処理装置による処理手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0023】
図1に、本実施の形態に係る情報処理装置が適用される報知システムの一例を示す。報知システム100は、高齢者等の電力の需要家が居住する住宅に設置されるスマートメータ等の計器から需要家の電力消費量を取得し、取得された電力消費量に関する情報を活用して、需要家の生活状態を判定し生活状態に異常ありと判定された場合に外部に対して情報を報知する、いわゆる見守りサービスにおいて適用される。この報知システム100は、例えば、見守りサービスの利用契約を結んだ特定の需要家およびその住宅において適用される。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る報知システム100は、情報処理装置1と、記憶装置2と、報知装置3と、計器4と、ネットワーク5とを有している。
【0025】
情報処理装置1は、例えば、サーバやパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のプログラム処理装置(コンピュータ)である。情報処理装置1は、ネットワーク5を介して計器4から取得される電力消費量と記憶装置2に格納されている各種情報とに基づいて、需要家の生活状態を判定し、判定結果を報知装置に対して出力する。
【0026】
記憶装置2は、情報処理装置1によるデータ処理に必要なパラメータやプログラム等を格納する装置である。記憶装置2は、例えば、SSDやHDD等の情報処理装置1の外部記憶装置であってもよいし、情報処理装置1からの要求に応じて必要なデータをネットワーク5を介して情報処理装置1に供給するデータベースサーバであってもよい。
【0027】
記憶装置2には、後述するベース電力消費量α、需要家の住居に設置される電気機器のインバータ機器変動量β、累計電力消費量の過去実績値γなどが格納されている。また記憶装置2には、上記のほか、情報処理装置で取得された電力消費量に関する情報が記憶されてもよい。
【0028】
報知装置3は、情報処理装置1から出力された需要家の生活状態、特に異常状態(正常ではない状態)に関する判定結果を、地域コミュニティ(例えば、自治体、地域ケアマネージャー、警察、電力会社、近隣住民などの第三者)やその他外部機関に対して報知する。報知装置に3による報知手段としては、例えば、電子メールの自動送信による報知や、電話回線を介した自動音声による報知や、専用のアプリケーションを介してスマートフォンやパーソナルコンピュータ(PC)などの端末装置の画面に表示させることによる報知などが挙げられる。
【0029】
また報知装置3は、上記態様に限られず、報知装置3そのものに情報を表示させるものであってもよい。報知装置3が表示装置として機能する場合には、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)および有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置が挙げられる。また、報知装置3としては、視覚的に表示させる表示装置のほかに、音声等によって情報を報知する出力装置であってもよい。
【0030】
計器4は、住宅や事業所等の建物に設置され、その建物で消費された電力を計測する電力量計である。計器4としては、例えば、ネットワーク5に接続可能にされ、ネットワーク5を介して外部と双方向通信可能なスマートメータ(SM)が挙げられる。計器4は、例えば、単位時間(例えば30分間)当たりの電力消費量(30分電力量)を計測し、情報処理装置1からの要求に応じて、電力消費量の計測結果をネットワーク5を介して送信する。
【0031】
図1に示す報知システム100としては、計器4からの電力消費量の情報がネットワーク5を介して直接情報処理装置1に送信される態様を例示しているが、これに限られず、計器4からの電力消費量の情報は電力会社等が保有するサーバに格納され、当該サーバから情報処理装置1に対して電力消費量に関する情報が送信される態様であってもよい。
【0032】
<情報処理装置の構成>
図2を用いて、本実施の形態に係る情報処理装置の機能ブロック構成を説明する。
図2に示すように、情報処理装置1は、取得部11と、算出部12と、第1判定部13と、第2判定部14と、評価部15と、第3判定部16と、蓄積部17と、出力制御部18とを有している。
【0033】
これらの各機能ブロックは、情報処理装置1を構成するハードウェア資源が、情報処理装置1にインストールされたプログラム(ソフトウエア)にしたがって動作することによって実現される。すなわち、情報処理装置(コンピュータ)1は、情報処理装置1にインストールされたプログラムによって、取得部11、算出部12、第1判定部13、第2判定部14、評価部15、第3判定部16、蓄積部17、および出力制御部18として機能する。
【0034】
(取得部)
取得部11は、計器4から発信される電力消費量に関する情報をネットワーク5を介して取得する。取得される情報には、例えば、時間帯別(例えば30分単位)の電力消費量のほか、電力消費量を取得したタイミング(年月日時分など)に関する情報や、どの住宅から発信された情報であるかを特定するための計器IDに関する情報などが含まれている。
【0035】
(算出部)
算出部12は、取得部11によって取得された電力消費量に基づいて、連続する2日間における1日当たりの電力消費量の比である前日比を算出する。具体的に、算出部12は、ある対象日における1日当たりの電力消費量(当日電力消費量)から当該対象日の前日における1日当たりの電力消費量(前日電力消費量)を除算して得られる前日比(当日電力消費量/前日電力消費量)を算出する。なお算出部12は、取得部11から得られる電力消費量の情報を用いて算出することができるが、記憶装置2に一旦格納された各電力消費量の情報を用いて算出することもできる。
【0036】
(第1判定部)
第1判定部13は、算出部12によって算出されたN日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比と、取得部11によって取得された前記N+1日目の1日当たりの電力消費量との少なくともいずれかに基づいて、計器4が設置される住宅に居住する需要家の生活状態を仮判定する。ここで「N日目」とはある対象日を規定するための表現であり、当該対象日の翌日を「N+1日目」、当該対象日の翌々日を「N+2日目」として表すものとする。なお仮判定とは、最終判定(本判定)を実行するための前段階の判定処理であり、仮判定において需要家の生活状態が正常であると判定される場合を除き、さらなる判定処理が実行される。
【0037】
第1判定部13は、N日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比が所定値A以下である若しくはN+1日目の1日当たりの電力消費量が所定値B以下である場合に、需要家の生活状態が正常ではないと仮判定する。具体的に、第1判定部13は、N日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比が50%(所定値A)以下である若しくはN+1日目の1日当たりの電力消費量が1kWh(所定値B)以下である場合に、需要家の生活状態が正常ではないと仮判定する。
【0038】
すなわち、第1判定部13は、電力消費量の前日比が50%(所定値A)を超えているか、N+1日目の電力消費量が1kWh(所定値B)を超えている場合には、需要家によりある程度の電力消費が存在する(需要家が活動している)として需要家の生活状態が正常であると判定し、一方電力消費量の前日比が50%(所定値A)以下である若しくはN+1日目の1日当たりの電力消費量が1kWh(所定値B)以下である場合には、需要家による活動が通常の生活パターンから外れて小さく、何らかの異常が発生している可能性があるものとして正常ではないと仮判定する。なお前日比や電力消費量に関する上記数値は例示であり、適宜変更することができる。
【0039】
第1判定部13によって需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合には、判定結果を出力制御部18に送信し、出力制御部18により判定結果が報知装置3に対して出力されてもよい。報知装置3は、当該判定結果を警告情報として報知したり、表示装置によりリストとして情報出力したりすることができる。一方、第1判定部13により需要家の生活状態が正常であると判定された場合には、判定結果が出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0040】
(第2判定部)
第2判定部14は、第1判定部13によって需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、算出部12によって算出されたN+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比に基づいて、需要家の生活状態を仮判定する。具体的に、第2判定部14は、N+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比が80%(所定値C)以下である場合に需要間簿生活状態が正常ではないと仮判定する。
【0041】
第2判定部14による判定は、第1判定部13による判定の翌日に実行される。すなわち、第2判定部14は、電力消費量の前日比が80%(所定値C)を超えている場合には、前日とは異なり需要家によりある程度の電力消費が存在しており正常な生活状態に戻ったものと判定し、一方電力消費量の前日比が80%(所定値C)以下である場合には、前日に引き続き需要家による活動が通常の生活パターンから外れており、何らかの異常が発生している可能性がより高まったものとして正常ではないと判定する。なお前日比に関する上記数値は例示であり、適宜変更することができる。
【0042】
第2判定部14によって需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合には、判定結果を出力制御部18に送信し、出力制御部18により判定結果が報知装置3に対して出力されてもよい。報知装置3は、当該判定結果を警告情報として報知したり、表示装置によりリストとして情報出力したりすることができる。一方、第2判定部14により需要家の生活状態が正常であると判定された場合には、判定結果が出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0043】
(評価部)
評価部15は、第2判定部14によって需要家の生活状態が正常ではないと仮判定された場合に、取得部11によって取得された電力消費量に基づいて、前記N+2日目以降の一定時間帯における電力消費量の変動幅を評価する。具体的に、評価部15はN+2日目の0時~14時の時間帯における電力消費量の変動を評価する。
図3に示すように、需要家の活動による電力消費量は時間帯ごとに変動する。一般に深夜時間帯(0時~7時頃)は需要家の就寝により電力消費量は小さくなり、起床後(7時頃以降)は需要家の活動により電力消費量が大きくなる。
【0044】
評価部15による評価は、第2判定部14の判定の翌日に実行される。本実施の形態において、評価部15は、N+2日目の0時~14時の時間帯における電力消費量の最大値から電力消費量の最小値を除算した値(電力消費量比)を電力消費量の変動幅として評価する。評価部15によって評価される変動幅が大きい場合には需要家によりある程度の活動が行われている可能性が高い。一方変動幅が小さい場合には需要家による活動が通常の生活パターンから外れている若しくは全く活動していない可能性が高い。なお電力消費量の変動幅の算出方法は上記に限られず、例えば、電力消費量の最大値から電力消費量の平均値を除算した値や、電力消費量の平均値から電力消費量の最小値を除算した値が採用されてもよい。
【0045】
(第3判定部)
第3判定部16は、評価部15によって評価された電力消費量の変動幅に基づいて、需要家の生活状態を本判定する。第3判定部16による判定は、評価部15の評価と同日、すなわち第2判定部14による判定日の翌日に実行される。第3判定部16は、第1判定部13による仮判定、第2判定部14の仮判定いずれにおいても正常な生活状態ではないと判定された需要家についてその生活状態を最終判定する。
【0046】
図4に示すように、第3判定部16は、選択部161と、第1判定モード評価部162と、第2判定モード評価部163と、第3判定モード評価部164と、変化量θ算出部165と、演算部166と、本判定部167とを有している。
【0047】
選択部161は、評価部15によって評価された一定時間帯(0時~14時)における電力消費量の変動幅に基づいて、第1判定モード評価部162、第2判定モード評価部163および第3判定モード評価部164いずれの判定モードにより需要家の生活状態を評価および判定するかを選択する。具体的に、選択部161は、電力消費量の変動幅(電力消費量の最大値から最小値を除算した値)が第1閾値以上である場合には第1判定モード評価部162を選択し、電力消費量の第1閾値未満であり且つ第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合には第2判定モード評価部163を選択し、電力消費量の変動幅が第2閾値未満である場合には第3判定モード評価部164を選択する。本実施の形態においては、第1閾値として3.4、第2閾値として2.0がそれぞれ設定されている。第1閾値および第2閾値は上記数値に限られず、適宜変更することができる。
【0048】
第1判定モード評価部162は、評価部15によって評価された電力消費量の変動幅が3.4以上である場合に選択部161により選択される。第1判定モード評価部162は、需要家の生活状態が正常であると評価し、当該評価結果を本判定部167に送信する。すなわち、第1判定モード評価部162は、前々日(N日目)および前日(N+1日目)とは異なり需要家によりある程度の電力消費が存在しており正常な生活状態に戻ったものと評価する。
【0049】
第2判定モード評価部163は、評価部15によって評価された電力消費量の変動幅が2.0以上であり且つ3.4未満である場合に選択部161によって選択される。第2判定モード評価部163は、ベース電力消費量αと、需要家の住居に設置される電気機器のインバータ機器変動量βと、一定時間帯の連続する単位時間における電力消費量の変化量θと、に基づいて、需要家の生活状態を評価する。
【0050】
ここでベース電力消費量αは、過去の実績に基づく1日当たりの電力消費量の最低値を表すものであり、記憶装置2に格納されている。すなわち、ベース電力消費量αは、需要家において最も活動が少なかった日或いは不在等により活動が認められなかった日における電力消費量であり、需要家の生活状態(活動の有無)を判定するための重要な指標となる。
【0051】
電気機器のインバータ機器変動量βは、需要家の生活状態にかかわらず常時通電された状態にある冷蔵庫等の電気機器に設置されるインバータ機器の変動量を表すものであり、記憶装置2に格納されている。インバータ機器変動量βは、0.1kWhをデフォルト値とし、これを実績値に基づいて補正された状態で記憶装置2に格納されている。
【0052】
また、一定時間帯の連続する単位時間における電力消費量の変化量θは、変化量θ算出部165によって算出される値である。本実施の形態においては、変化量θとして、一定時間帯(0時~14時)における30分単位の電力消費量であって前後する30分単位での変化量(例えば、7:00~7:30の時間帯における電力消費量から7:30~8:00の時間帯における電力消費量への変化量)が適用される。変化量θ算出部165は、取得部11によって取得される30分単位での電力消費量に基づいて算出される。0時~14時の時間帯においては、27の変化量θ値が算出される。
【0053】
第2判定モード評価部163は、需要家の生活状態として、ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと電力消費量の変化量θとの関係がθ>α+βとなる回数を評価し、評価結果を本判定部167に送信する。ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βは、需要家において最も活動が少なく若しくは活動が全くない状態での電力消費量に相当するため、需要家が活動有無を評価する基準となる指標である。ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βは、演算部166によって演算される。
【0054】
第3判定モード評価部164は、評価部15によって評価された電力消費量の変動幅が2.0未満である場合に選択部161によって選択される。第3判定モード評価部164は、ベース電力消費量αと、インバータ機器変動量βと、一定時間における累計電力消費量と、に基づいて、需要家の生活状態を評価する。
【0055】
第3判定モード評価部164は、需要家の生活状態として、一定時間帯内の単位時間における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数と、一定時間帯(0時~14時)内の累計電力消費量とを評価し、評価結果を本判定部167に送信する。ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βは、演算部166によって演算される。
【0056】
第3判定モード評価部164は、一定時間帯内の累計電力消費量の評価において、当該累計電力消費量が一定時間帯(0時~14時)と同一の時間帯における累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積以上となるか否かを評価する。
【0057】
累計電力消費量の過去実績値γは、記憶装置2に格納されている。本実施の形態において累計電力消費量の実績値γは、同じ月における0時~14時の時間帯における複数の過去実績値の中から抽出される下位3つの過去実績値の平均値に設定されている。
【0058】
また補正係数Xは任意に設定されるものであり、記憶装置2に格納されている。補正係数Xは、例えば過去実績値γや過去実績値γの設定に使用されなかった過去実績値における下位3つ以外の実績値を考慮して設定される。本実施の形態において補正係数Xは約1.2と設定されている。
【0059】
本判定部167は、第1判定モード評価部162、第2判定モード評価部163および第3判定モード評価部164によって評価された結果を取得し、当該評価結果に基づいて需要家の生活状態を本判定し、判定結果を蓄積部17若しくは出力制御部18に送信する。
【0060】
本判定部167は、第1判定モード評価部162から評価結果(電力消費量の変動幅が3.4以上である場合の評価結果)を取得した場合には、当該評価結果に基づき需要家の生活状態が正常であるとの本判定を行う。この場合には、判定結果が出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0061】
本判定部167は、第2判定モード評価部163から評価結果(電力消費量の変動幅が2.0以上3.4未満である場合の評価結果)を取得した場合には、ベース電力消費量αと、需要家の住居に設置される電気機器のインバータ機器変動量βと、一定時間帯の連続する単位時間における電力消費量の変化量θとに基づく評価結果から需要家の生活状態を評価する。具体的に、本判定部167は、ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと電力消費量の変化量θとの関係であるθ>α+βとなる回数が3回(所定値D)以上である場合には、需要家の生活状態が正常であると判定する。この場合には、判定結果が出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0062】
一方、上記関係であるθ>α+βとなる回数が3回(所定値D)未満である場合には、本判定部167は、需要家の生活状態が正常ではないと判定した上で、判定精度を高めるために翌日における評価部15によって評価された電力消費量の変動幅に基づいて需要家の生活状態を再度本判定する。本判定部167による上記判定結果(需要家の生活状態が正常ではないという判定結果)は一旦蓄積部17に蓄積される。またこの段階での判定結果は最終判定には至っていないが、判定結果は出力制御部18に送信され、出力制御部18により警告情報として報知装置に対して出力される。報知装置3は、当該判定結果を警告情報として報知し、或いは表示装置によりリストとして情報出力することができる。
【0063】
本判定部167は、翌日における評価部15によって評価された電力消費量の変動幅に基づいて上記関係であるθ>α+βとなる回数が上記3回(所定値D)と略同等以上である場合には、需要家の生活状態が正常であると本判定し、θ>α+βとなる回数が上記3回(所定値D)と略同等未満である場合には、需要家の生活状態が正常ではない異常状態であると本判定する。本判定部167による異常判定の結果は出力制御部18に送信され、出力制御部18により警告情報として報知装置に対して出力される。報知装置3は、当該判定結果を警告情報として報知し、或いは表示装置によりリストとして情報出力することができる。一方、本判定部167による正常判定の結果は出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0064】
なお、本判定部167による異常判定の結果は蓄積部17にさらに蓄積されてもよい。この場合、蓄積部17に本判定部167による異常判定の結果が連続する所定期間(例えば、3日連続)にわたり蓄積された場合には、需要家の生活状態が極めて危険な状態にあるとして、蓄積部17から当該情報が出力制御部18に送信され、出力制御部18により緊急警告情報が出力される態様であってもよい。
【0065】
このように、第2判定モード評価部の評価結果に基づく本判定部167による本判定は、電力消費量の変化量θを考慮して需要家の生活状態を判定しているので、一定期間内において電力消費量の変動幅がある程度認められる場合(電力消費がなされている場合)における異常状態を判定するのに有効である。すなわち、電力消費量にある程度の変動があり照明やエアコンが稼働した状態であっても、需要家が通常生活によって例えばヒートショックが原因で突然死する或いは身体的に動きが取れない状況となる異常状態を高い精度で判定することができる。
【0066】
本判定部167は、第3判定モード評価部163から評価結果(電力消費量の変動幅が2.0未満である場合の評価結果)を取得した場合には、ベース電力消費量αと、需要家の住居に設置される電気機器のインバータ機器変動量βと、一定時間帯における累計電力消費量とに基づく評価結果から需要家の生活状態を評価する。具体的に、本判定部167は、単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上であり、且つ一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(本実施の形態においては、0.5kWh)以上である場合には、需要家の生活状態が正常であると本判定する。この場合本判定部167による正常判定の結果は出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0067】
一方、単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が3回(所定値E)未満であるか、若しくは一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)未満である場合には、本判定部167は、需要家の生活状態が正常ではないと判定した上で、判定精度を高めるために翌日における評価部15によって評価された電力消費量の変動幅に基づいて需要家の生活状態を再度本判定する。本判定部167による上記判定結果(需要家の生活状態が正常ではないという判定結果)は一旦蓄積部17に蓄積される。またこの段階での判定結果は最終判定には至っていないが、判定結果は出力制御部18に送信され、出力制御部18により警告情報として報知装置に対して出力される。報知装置3は、当該判定結果を警告情報として報知し、或いは、表示装置によりリストとして情報出力することができる。
【0068】
本判定部167は、翌日における評価部15によって評価された電力消費量の変動幅に基づいて単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上であり、且つ一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)以上である場合には、需要家の生活状態が正常であると本判定する。この場合本判定部167による正常判定の結果は出力制御部18に送信されるが、出力制御部18においては警告等の情報出力は行われない。
【0069】
一方、本判定部167は、単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βを超える回数が3回(所定値E)未満であるか、若しくは一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)未満である場合には、需要家の生活状態が正常ではない異常状態であると本判定する。本判定部167による異常判定の結果は出力制御部18に送信され、出力制御部18により警告情報として報知装置に対して出力される。報知装置3は、当該判定結果を警告情報として報知し、或いは表示装置によりリストとして情報出力することができる。
【0070】
なお、本判定部167による異常判定の結果は蓄積部17にさらに蓄積されてもよい。この場合、蓄積部17に本判定部167による異常判定の結果が連続する所定期間(例えば、3日連続)にわたり蓄積された場合には、需要家の生活状態が極めて危険な状態にあるとして、蓄積部17から当該情報が出力制御部18に送信され、出力制御部18により緊急警告情報が出力される態様であってもよい。
【0071】
このように、第3判定モード評価部の評価結果に基づく本判定部167による本判定は、ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βとの和α+βの発生回数と一定時間帯における累積電力消費量とを考慮して需要家の生活状態を判定しているので、電力消費量の変化が小さい需要家世帯における異常状態を判定するのに有効である。すなわち、需要家が旅行等で外出している場合とそうではない場合とを区別し、普段から電力消費量の変動が小さい需要家において病死や身体的に動きが取れない状況が発生している場合を高い精度で判定することができる。
【0072】
(情報処理の手順)
図5および
図6を用いて、本実施の形態に係る情報処理装置1を用いて、需要家の生活状態を判定し、警告情報を報知するための情報処理の手順について説明する。
図5に示すように、まず取得部11から取得された電力消費量に関する情報に基づいて、算出部12によりN日目の電力消費量とN+1日目の電力消費量との比である前日比を算出される(ステップS1)。次に第1判定部13により、算出された前日比が50%(所定値A)以下である若しくはN+1日目の1日当たりの電力消費量が1kWh(所定値B)以下であるか否かが判定される(ステップS2)。
【0073】
ステップS2において、算出された前日比が50%以下ではない若しくはN+1日目の1日当たりの電力消費量が1kWh以下ではないと判定された場合には、需要家の生活状態が正常であると判定され(ステップS3)、処理を終了する。一方、算出された50%(所定値A)以下である若しくはN+1日目の1日当たりの電力消費量が1kWh(所定値B)以下であると判定された場合には、需要家の生活状態が正常ではないと仮判定する(ステップS4)。次にステップS4における仮判定結果が報知装置3に対して出力される(ステップS5)。
【0074】
次に算出部12により、N+1日目の電力消費量とN+2日目の電力消費量との比である前日比を算出される(ステップS6)。次に第2判定部14により、算出された前日比が80%(所定値C)以下であるか否かが判定される(ステップS7)。
【0075】
ステップS7において、算出された前日比が80%(所定値C)以下ではないと判定された場合には、需要家の生活状態が正常であると判定され(ステップS8、処理を終了する。一方、算出された前日比が80%(所定値C)以下であると判定された場合には、需要家の生活状態が正常ではないと仮判定する(ステップS9)。次にステップS9における仮判定結果が報知装置3に対して出力される(ステップS10)。
【0076】
次に評価部15により、一定時間帯(0時~14時)における電力消費量の変動量(電力消費量の最大値から電力消費量の最小値を除算した値)が評価される(ステップS11)。次のステップS12において、評価された変動幅の大きさがいくつであるかが判定される。ステップS12では変動幅の大きさに基づき、選択部161によって判定モード評価が選択される。
【0077】
電力消費量の変動幅が3.4以上である場合には、選択部161により第1判定モードによる評価が選択される(ステップS13)。ステップS13では、第1判定モード評価部162により需要家の生活状態が正常であると評価される。次に本判定部167により、第1判定モード評価部162による評価結果に基づき需要家の生活状態が正常であると本判定が行われ(ステップS14)、処理が終了する。
【0078】
電力消費量の変動幅が2.0以上3.4未満である場合には、選択部161により第2判定モードによる評価が選択される(ステップS15)。ステップS15では、第2判定モード評価部163により需要家の生活状態が評価される。第2判定モードでは、第2判定モード評価部163により、ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと電力消費量の変化量θとの関係であるθ>α+βとなる回数が3回(所定値D)以上であるか否かが判定される(ステップS16)。
【0079】
ステップS16において、θ>α+βとなる回数が3回(所定値D)以上であると判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が正常であると本判定され(ステップS17)、処理を終了する。一方、θ>α+βとなる回数が3回(所定値D)以上ではないと判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が正常ではないと判定され、翌日の判定へ移行する(ステップS18)。
【0080】
翌日の判定において、第2判定モード評価部163により、ベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと電力消費量の変化量θとの関係がθ>α+βとなる回数が3回以上であるか否かが再度判定される(ステップS19)。ステップS16において、θ>α+βとなる回数が3回(所定値D)以上であると判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が正常であると本判定され(ステップS17)、処理を終了する。一方、θ>α+βとなる回数が3回(所定値D)以上ではないと判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が異常であると判定される(ステップS20)。
【0081】
ステップS20において本判定部167により異常と判定された本結果は報知装置3に対して出力される(ステップS21)。出力された情報は、報知装置3により警告情報として外部に対して報知され(ステップS22)、処理を終了する。
【0082】
電力消費量の変動幅が2.0未満である場合には、選択部161により第3判定モードによる評価が選択される(ステップS23)。ステップS23では、第3判定モード評価部164により需要家の生活状態が評価される。第3判定モードでは、第3判定モード評価部164により、単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上であり、且つ一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ以上であるか否かが判定される(ステップS24)。
【0083】
ステップS24において、単位時(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上であり、且つ一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)以上であると判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が正常であると本判定され(ステップS25)、処理を終了する。
【0084】
一方ステップS24において、単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上ではない、若しくは一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)以上ではないと判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が正常ではないと判定され、翌日の判定へ移行する(ステップS26)。
【0085】
翌日の判定において、第3判定モード評価部163により、単位時間t毎(30分毎)の電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上であり、且つ一定時間(0時~14時)内の累計電力消費量が累計電力消費量の実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)以上であるか否かが再度判定される(ステップS27)。
【0086】
ステップS27において、単位時(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上であり、且つ一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)以上であると判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が正常であると本判定され(ステップS25)、処理を終了する。
【0087】
一方ステップS27において、単位時間(30分)における電力消費量がベース電力消費量αとインバータ機器変動量βと和α+βを超える回数が3回(所定値E)以上ではない、若しくは一定時間帯(0時~14時)における累計電力消費量が累計電力消費量の過去実績値γと補正係数Xとの積Xγ(0.5kWh)以上ではないと判定される場合には、本判定部167により需要家の生活状態が異常であると判定される(ステップS28)。
【0088】
ステップS28において本判定部167により異常と判定された本結果は報知装置3に対して出力される(ステップS29)。出力された情報は、報知装置3により警告情報として外部に対して報知され(ステップS30)、処理を終了する。
【0089】
本実施の形態に係る情報処理装置1によれば、スマートメータ等の計器4から複数日にわたる電力消費量に関する情報を取得し、電力消費量の前日比など1日ごとの電力消費量の変化を評価しながら需要家の生活状態を判定しているので、電力消費量が比較的少ない高齢者等の需要家の生活状態を高い精度で判定することができる。
【0090】
また本実施の形態に係る情報処理装置1によれば、需要家の生活状態を判定する処理を仮判定と本判定とに分けて行い、本判定においては、一定時間帯における電力消費量の変動量に基づいて、複数の判定モードで需要家の生活状態を評価し、この評価結果に基づいて当該生活状態を判定しているので、需要家の生活状態をより高い精度で判定することができる。特に、電力消費量にある程度の変動があり照明やエアコンが稼働した状態であっても、需要家が通常生活によって例えばヒートショックが原因で突然死する或いは身体的に動きが取れない状況となる異常状態や、普段から電力消費量の変動が小さい需要家において病死や身体的に動きが取れない状況となる異常状態を高い精度で判定することができる。
【0091】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、情報処理装置1が一台のコンピュータによって実現される場合を例示したが、これに限られず、情報処理装置1は、互いにネットワークで通信可能に構成された複数台のコンピュータによって実現されていてもよい。例えば、情報処理装置1によって実現される機能部のうち、計器4から電力消費量の情報を取得する取得部11を電力供給業者側のサーバによって実現し、その他の機能部をコンピュータによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…情報処理装置、2…記憶装置、3…報知装置、4…計器、5…ネットワーク、11…取得部、12…算出部、13…第1判定部、14…第2判定部、15…評価部、16…第3判定部、17…蓄積部、18…出力制御部、100…報知システム、161…選択部、162…第1判定モード評価部、163…第2判定モード評価部、164…第3判定モード評価部、165…変化量θ算出部、166…演算部、167…本判定部