(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】波長変換素子、照明装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240228BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240228BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20240228BHJP
F21V 9/35 20180101ALI20240228BHJP
F21V 13/00 20060101ALI20240228BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240228BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240228BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 311
F21S2/00 340
F21V7/28 240
F21V9/35
F21V13/00 100
H04N5/74 Z
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020051194
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 幸也
(72)【発明者】
【氏名】廣木 瑞葉
(72)【発明者】
【氏名】小泉 竜太
(72)【発明者】
【氏名】清水 鉄雄
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199401(JP,A)
【文献】特開2019-015868(JP,A)
【文献】特開2012-199075(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119783(WO,A1)
【文献】特開2019-174501(JP,A)
【文献】特開2012-009242(JP,A)
【文献】特開2017-142459(JP,A)
【文献】特開2017-215549(JP,A)
【文献】特開2019-040154(JP,A)
【文献】特開2019-079873(JP,A)
【文献】特開2022-144382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する基板と、
前記第1の面に設けられる反射層と、
前記反射層上に設けられ、第1の波長帯の光を前記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の光に変換する波長変換層と、
前記波長変換層上に設けられ、前記第1の波長帯の光を散乱させる構造体と、
前記構造体上に設けられ、前記第1の波長帯の光の一部を反射させ、前記第1の波長帯の光の他の一部を透過させ、前記第2の波長帯の光を透過させる光学層と、を備え、
前記光学層は、前記光学層に入射する前記第1の波長帯の光の入射角度に応じて、前記第1の波長帯の光に対する反射率が異なって
おり、
前記入射角度は、前記光学層に垂直な方向に対してなす角度で規定され、
前記光学層の前記第1の波長帯の光に対する反射率は、前記入射角度が大きいほど、大きく、
前記構造体および前記光学層が設けられた前記波長変換層から散乱して反射される散乱反射光は、前記垂直な方向よりも斜め方向の成分を多く含む配光分布を有する
ことを特徴とする波長変換素子。
【請求項2】
前記第1の波長帯の光が、前記光学層に対して無偏光であるとき、前記光学層の前記第1の波長帯の光に対する反射率は、前記入射角度が大きいほど、大きい
ことを特徴とする請求項
1に記載の波長変換素子。
【請求項3】
前記構造体は、凹部及び凸部のうち少なくともいずれかの散乱構造を複数有する
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の波長変換素子。
【請求項4】
前記散乱構造は、レンズ形状を有する
ことを特徴とする請求項
3に記載の波長変換素子。
【請求項5】
前記光学層に対して垂直に入射する光に対する前記光学層の反射率は、前記第1の波長帯と前記第2の波長帯の間にピークを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項6】
前記構造体は、屈折率が1.3~2.5の範囲の材料で構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項7】
前記光学層は、誘電体多層膜で構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項8】
前記誘電体多層膜は、MgF
2、SiO
2、Al
2O
3、Y
2O
3、CeO
2、HfO
2、La
2O
3、ZrO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2のいずれかを含む
ことを特徴とする請求項
7に記載の波長変換素子。
【請求項9】
前記構造体は、前記波長変換層と一体形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の波長変換素子。
【請求項10】
前記構造体は、複数の散乱構造を有し、
前記複数の散乱構造の各々の平面形状は、正方形状であり、
前記複数の散乱構造の各々は、正方形の一辺に沿う方向および正方形の対角方向における断面形状がいずれも凸レンズ形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の波長変換素子と、
前記第1の波長帯の光を射出する光源と、
前記光源から射出された前記第1の波長帯の光を前記波長変換素子に向けて反射する反射部材と、を備える
ことを特徴とする照明装置。
【請求項12】
前記斜め方向に散乱される前記散乱反射光は、前記反射部材を避け、
前記反射部材を避けた前記散乱反射光と前記第2の波長帯の光とで照明光を生成する
ことを特徴とする請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記反射部材は、前記第2の波長帯の光を透過する
ことを特徴とする請求項11
または請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
請求項11
から請求項
13のいずれか一項に記載の照明装置と、
前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子、照明装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長変換層の表面に設けられた光拡散面で第1波長の光の一部を散乱して反射させ、波長変換層に入射した第1波長の光を波長変換した第2波長の蛍光と、散乱反射した第1波長の光とを合成することで白色照明光を射出する照明装置がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記照明装置では、第1波長の光の散乱角度が十分でなく、散乱特性の制御に改善の余地があるため、第1波長の光を効率良く照明光として取り出せず、光利用効率の低下という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、第1の面を有する基板と、前記第1の面に設けられる反射層と、前記反射層上に設けられ、第1の波長帯の光を前記第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の光に変換する波長変換層と、前記波長変換層上に設けられ、前記第1の波長帯の光を散乱させる構造体と、前記構造体上に設けられ、前記第1の波長帯の光の一部を反射させ、前記第1の波長帯の光の他の一部を透過させ、前記第2の波長帯の光を透過させる光学層と、を備え、前記光学層は、前記光学層に入射する前記第1の波長帯の光の入射角度に応じて、前記第1の波長帯の光に対する反射率が異なっていることを特徴とする波長変換素子が提供される。
【0006】
本発明の第2態様によれば、第1態様の波長変換素子と、前記第1の波長帯の光を射出する光源と、前記光源から射出された前記第1の波長帯の光を前記波長変換素子に向けて反射する反射部材と、を備えることを特徴とする照明装置が提供される。
【0007】
本発明の第3態様によれば、本発明の第2態様の照明装置と、前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】ハーフミラー層の表面反射率スペクトルを示す図である。
【
図5】波長変換素子で反射される第1光の説明図である。
【
図6】第1光におけるハーフミラー層の反射率角度特性を示す図である。
【
図7】波長変換素子における散乱反射光の配光特性を示す図である。
【
図8】第2光におけるハーフミラー層の反射率角度特性を示す図である。
【
図9】変形例の波長変換素子の構成を示す図である。
【
図10】変形例の散乱反射光の配光特性を示す図である。
【
図11】構造体および波長変換層を一体形成した構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調装置として液晶パネルを用いたプロジェクターの一例である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0010】
図1は本実施形態のプロジェクターの構成を示す図である。
図1に示す本実施形態のプロジェクター1は、スクリーン(被投写面)SCR上にカラー画像を表示する投写型画像表示装置である。プロジェクター1は、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの各色光に対応した3つの光変調装置を用いている。
【0011】
プロジェクター1は、照明装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、合成光学系5と、投写光学装置6と、を備えている。
【0012】
照明装置2は、白色の照明光WLを色分離光学系3に向けて射出する。色分離光学系3は、白色の照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aと、第2リレーレンズ9bと、を備えている。
【0013】
第1ダイクロイックミラー7aは、照明装置2からの照明光WLを赤色光LRと、その他の光(緑色光LGおよび青色光LB)とに分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過するとともに、その他の光(緑色光LGおよび青色光LB)を反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、その他の光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。第2ダイクロイックミラー7bは、分離された緑色光LGを反射し、青色光LBを透過する。
【0014】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。一方、第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに向けて反射する。また、緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bによって光変調装置4Gに向けて反射される。
【0015】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bの光射出側に配置されている。第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRや緑色光LGの光路長よりも長いことに起因した青色光LBの照明分布の違いを修正する。
【0016】
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0017】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。また、液晶パネルの入射側および射出側には、偏光板(図示せず)がそれぞれ配置され、特定の方向の直線偏光のみを通過させる構成となっている。
【0018】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R、フィールドレンズ10G、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10R、フィールドレンズ10G、およびフィールドレンズ10Bは、それぞれの光変調装置4R、光変調装置4G、光変調装置4Bに入射する赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの主光線を平行化する。
【0019】
合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出された画像光が入射することにより、赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投写光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0020】
投写光学装置6は、複数の投写レンズから構成されている。投写光学装置6は、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投写する。これにより、スクリーンSCR上に画像が表示される。
【0021】
本実施形態の照明装置2の一例について説明する。
図2は、照明装置2の概略構成を示す図である。
図2に示すように、照明装置2は、光源11と、第1光学系12と、ダイクロイックミラー(反射部材)13と、第2光学系14と、波長変換素子15と、均一化照明光学系16と、を備えている。光源11、第1光学系12およびダイクロイックミラー13は第1光軸AX1に沿って配置されている。波長変換素子15、第2光学系14、ダイクロイックミラー13および均一化照明光学系16は照明装置2の照明光軸AXに沿って配置されている。第1光軸AX1および照明光軸AXは互いに直交する。
【0022】
光源11は第1光Bを射出する。第1光Bの第1の波長帯は、例えば450~460nmであり、発光強度のピーク波長は、例えば455nmである。すなわち、第1光Bは青色光である。光源11は少なくとも1つの半導体レーザー11aで構成される。半導体レーザー11aは、455nm以外のピーク波長を有する第1光Bを射出してもよい。光源11は半導体レーザー11aに対応して設けられたコリメーターレンズ(図示略)を含む。これにより、光源11は半導体レーザー11aから射出された第1光Bを平行光に変換して射出する。
【0023】
光源11から射出した第1光Bは第1光学系12に入射する。第1光学系12は少なくとも1つの凸レンズを含み、第1光Bを集光させた状態でダイクロイックミラー13に入射させる。
【0024】
ダイクロイックミラー13は第1光学系12の焦点あるいは焦点近傍に配置される。これにより、第1光Bは、集光されて光束径が略最小化した状態でダイクロイックミラー13に入射する。このように第1光Bを集光させた状態でダイクロイックミラー13に入射させることで、ダイクロイックミラー13のサイズを小型化することができる。
【0025】
ダイクロイックミラー13は、第1の波長帯を有する第1光Bを反射し、後述する波長変換素子15から射出される第2の波長帯を有する第2光Yを透過させる光学特性を有する。ダイクロイックミラー13は、誘電体多層膜から構成されている。
【0026】
ダイクロイックミラー13で反射された第1光Bは第2光学系14に入射する。第2光学系14は少なくとも1つの凸レンズを含み、発散光として入射する第1光Bを平行化する。第2光学系14により平行化された第1光Bは波長変換素子15に入射する。すなわち、本実施形態において、第1光Bは平行光として波長変換素子15に入射する。
【0027】
図3は波長変換素子15の構成を示す断面図である。
図3に示すように、波長変換素子15は、基板21と、反射層22と、波長変換層23と、構造体24と、ハーフミラー層(光学層)25と、を備えている。基板21は上面(第1の面)21aを有する。基板21は、反射層22、波長変換層23、構造体24およびハーフミラー層25を支持する支持基板である他、当該波長変換層23から伝導された熱を放熱する放熱基板である。基板21は、高い熱伝導率を有する材料である、例えば、金属やセラミックス等により構成できる。
【0028】
反射層22は基板21の第1の面21aに設けられる。すなわち、反射層22は、基板21と波長変換層23との間に位置し、当該波長変換層23から入射する蛍光を、当該波長変換層23側に反射する。反射層22は、誘電体多層膜、金属ミラーおよび増反射膜等を含む積層膜で構成される。
【0029】
波長変換層23は反射層22上に設けられる。波長変換層23は、第1光Bが入射する上面23aと、上面23aとは異なる下面23bと、を有している。波長変換層23は、第1の波長帯の第1光Bを第1の波長帯とは異なる第2の波長帯を有する第2光Yに変換する。
【0030】
波長変換層23は、セラミック蛍光体を含んでいてもよいし、単結晶蛍光体を含んでいてもよい。第2波長帯は、例えば500~680nmである。すなわち、第2光Yは、緑色光成分および赤色光成分を含む黄色光である。
【0031】
波長変換層23は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例にとると、波長変換層23として、Y2O3、Al2O3、CeO3等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法やソルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法や火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等を用いることができる。なお、波長変換層23として多孔質焼結体を用いる場合、蛍光体内部で光が散乱し、横方向へ光が伝搬しにくいため光利用効率の観点でも望ましい。
【0032】
構造体24は、波長変換層23の上面23aに設けられ、第1光Bの一部を散乱させる。構造体24は複数の散乱構造24aを複数有する。本実施形態の散乱構造24aは凸部からなるレンズ形状を有する。
【0033】
本実施形態において、構造体24は波長変換層23と別体で形成される。本実施形態の構造体24は、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、塗布法などによって誘電体を形成した後、フォトリソグラフィーで加工する手法が適している。他にも、ナノインプリントなどの印刷法、転写法を用いても良い。構造体24は、光吸収が小さく、化学的に安定な材料で構成することが好ましい。すなわち、構造体24は、屈折率が1.3~2.5の範囲の材料で構成され、例えば、SiO2、SiON、TiO2等を用いることができる。例えばSiO2を用いて構造体24を構成すれば、ウェットあるいはドライエッチングによって精度良く加工することが可能である。
【0034】
ハーフミラー層25は、構造体24上に設けられ、第1光Bの一部を反射させ、第1光Bの他の一部を透過させ、第2光Yを透過させる。ハーフミラー層25の反射率は、材料および層構成によって反射率および波長特性を自由度高く設計可能である。
【0035】
ハーフミラー層25は、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、塗布法などによって形成される。特にALD(Atomic Layer Deposition)法は構造体24の傾斜面へ均一にハーフミラー層25を成膜することができるため、好適である。なお、ALD法以外の成膜方法では平面部分と斜面部分とで成膜粒子の付着確率が変化するため、膜厚分布ができる場合があるが、平面部分と斜面部分とで生じる膜厚分布を考慮した膜設計を行うことで所望のハーフミラー層25を形成できる。
【0036】
本実施形態のハーフミラー層25は、光吸収を抑制するため、誘電体多層膜で構成している。誘電体多層膜に用いる材料は化学的に安定で一般的に用いられる材料である、例えば、MgF2、SiO2、Al2O3、Y2O3、CeO2、HfO2、La2O3、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、TiO2のいずれかが好ましい。なお、MgF2、SiO2は低屈折率材料として好適であり、Al2O3、Y2O3、CeO2、HfO2、La2O3、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、TiO2は中間~高屈折率材料として好適である。本実施形態のハーフミラー層25は、例えばSiO2とTiO2とが交互に複数積層した誘電体多層膜で構成される。
【0037】
図3に示すように、第1光Bは平行光として波長変換素子15に入射する。第1光Bの一部は波長変換層23の上面23aに設けられた構造体24およびハーフミラー層25により種々な方向に反射される。
【0038】
本実施形態のハーフミラー層25は、該ハーフミラー層25に入射する第1光Bの入射角度に応じて、第1光Bに対する反射率が異なっている。ここで、ハーフミラー層25に入射する光の入射角度は、ハーフミラー層25に垂直な方向に対してなす角度で規定される。つまり、ハーフミラー層25への入射角度が0度とは、ハーフミラー層25の表面に対して垂直方向から入射する状態を意味する。
【0039】
続いて、本実施形態のハーフミラー層25の光学特性について
図4から
図6を参照しながら説明する。
図4はハーフミラー層25の表面反射率スペクトルを示す図である。
図4は、所定の入射角度で入射する光に対するハーフミラー層25の表面での反射率を示している。
【0040】
図4において、横軸はハーフミラー層25に入射する光の波長を示し、縦軸はハーフミラー層25の表面での反射率を示している。なお、
図4では、入射角度0度、30度、45度、60度で入射する光の反射率を示している。
【0041】
図4に示すように、本実施形態のハーフミラー層25は、当該ハーフミラー層25における垂直方向の光線に対する反射率が第1光Bにおける第1の波長帯(450~460nm)と第2光Yにおける第2の波長帯(500~680nm)との間にピークを有する。すなわち、ハーフミラー層25は、当該ハーフミラー層25に対して入射角度0度で入射する光に対する反射率のピークP1が第1の波長帯と第2の波長帯との間となるように設計されている。
【0042】
一般的に誘電体多層膜は、斜め入射の場合、反射スペクトルのピークが短波長側にシフトする特性を有する。本実施形態のハーフミラー層25は、上述のように入射角度0度で入射する光に対する反射率のピークP1が第1の波長帯と第2の波長帯との間となるように設計することで、斜め入射する第1光Bの反射スペクトルのピークを短波長側にシフトさせて所定の反射角度特性を実現している。
【0043】
本実施形態のハーフミラー層25は、レンズ形状を有する複数の散乱構造24aを含む構造体24上に設けられている。そのため、ハーフミラー層25の表面形状は構造体24の表面形状に倣う球面形状を有する。
【0044】
図5は波長変換素子15で反射される第1光Bを説明するための要部拡大図である。
図5において、レンズ形状からなる散乱構造24aの中心を通る軸を中心軸Oとし、中心軸Oに直交する方向を第1方向Aとする。
図5の上段においては、図を見やすくするため、ハーフミラー層25を省略している。
【0045】
図5に示すように、第1方向Aにおいて中心軸Oの近い位置を覆うハーフミラー層25に入射した第1光Bを第1光Baとすると、第1光Baにおけるハーフミラー層25に対する入射角度は0度程度となる。
【0046】
これに対して、中心軸Oから第1方向Aに離間した位置を覆うハーフミラー層25に入射した第1光Bを第1光Bbとすると、第1光Bbにおけるハーフミラー層25に対する入射角度は0度よりも大きくなる。すなわち、中心軸Oから第1方向Aに離れるに従って、第1光Bbにおけるハーフミラー層25に対する入射角度は大きくなる。
【0047】
図5に示すように、本実施形態の波長変換素子15において、第1光Bは、ハーフミラー層25に対する入射角度が大きいほど、垂直方向に対してより角度をなす斜め方向に向かって反射される。
【0048】
図5に示すように、本実施形態の構造体24は、同一形状を有する複数の散乱構造24aを波長変換層23の上面23aに等ピッチで配置することで構成されている。本実施形態の構造体24において、各散乱構造24aの平面形状は円形となっている。そのため、各散乱構造24aの隙間は平面24bとなっている。
【0049】
本実施形態の波長変換素子15において、第1光Bは、構造体24上に設けられたハーフミラー層25に対して種々な角度および方向から入射する。そのため、第1光Bは、ハーフミラー層25に対してS偏光として入射するS偏光成分と、ハーフミラー層25に対してP偏光として入射するP偏光成分とを含んでいる。なお、第1光Bに含まれるS偏光成分およびP偏光成分の割合は同等であると考えられる。
【0050】
したがって、本実施形態の波長変換素子15において、第1光Bはハーフミラー層25に対して無偏光として入射するとみなすことができる。また、波長変換層23で生成された第2光Yについても、第1光Bと同様、S偏光成分およびP偏光成分を含んだ無偏光としてハーフミラー層25に入射するとみなすことができる。
【0051】
図6は第1光Bにおけるハーフミラー層25の反射率角度特性を示す図である。
図6において、横軸は第1光Bの入射角度を示し、縦軸は反射率を示している。
図6には、ハーフミラー層25に対して第1光BがS偏光として入射した場合の反射率角度特性と、ハーフミラー層25に対して第1光BがP偏光として入射した場合の反射率角度特性と、ハーフミラー層25に対して第1光Bが無偏光として入射した場合の反射率角度特性と、が示される。なお、第1光Bが無偏光として入射した場合の反射率角度特性は、第1光BがS偏光として入射した場合の反射率と第1光BがP偏光として入射した場合の反射率との平均値から算出される。
【0052】
図6に示すように、ハーフミラー層25に対して無偏光として入射する第1光Bが入射角度0度、すなわち、ハーフミラー層25に垂直方向から入射する場合の反射率は15%程度である。そして、入射角度が0度よりも大きくなるに従って第1光Bの反射率が高くなる。すなわち、本実施形態のハーフミラー層25は、ハーフミラー層25に対して無偏光として入射するとしたとき、ハーフミラー層25の第1光Bに対する反射率が、第1光Bのハーフミラー層25に対する入射角度が大きいほど大きくなる、という反射角度特性を有する。
【0053】
上記構成を有する本実施形態の波長変換素子15は、ハーフミラー層25に大きい入射角度で入射した第1光Bを相対的に多く反射し、ハーフミラー層25に小さい入射角度で入射した第1光Bを相対的に少なく反射させる。上述のように第1光Bは、ハーフミラー層25に対する入射角度が大きいほど垂直方向から離れた斜め方向に向かって反射される。つまり、本実施形態の波長変換素子15によれば、第1光Bを垂直方向よりも斜め方向に多く反射する。
【0054】
続いて、本実施形態の波長変換素子15から散乱して反射される第1光の配光特性について説明する。以下、波長変換素子15に入射した第1光Bのうち、波長変換素子15から散乱して反射される第1光Bの一部を散乱反射光B1と称す。
【0055】
図7は本実施形態の波長変換素子15における散乱反射光B1の配光特性を示す図である。
図7において、縦軸は散乱反射光B1における0度方向の配光分布を規定し、横軸方向は散乱反射光B1における±90度方向の配光分布を規定する。なお、
図7では、本実施形態の波長変換素子15の配光特性を実施例として示し、比較例として、波長変換層23の上面23a上にTiO
2からなる構造体24のみを設けてハーフミラー層25を設けない波長変換素子の配光特性について図示する。
【0056】
図7に示すように、比較例の波長変換素子では、散乱反射光B1の配光分布が0度方向、すなわち、垂直方向に反射して射出される成分が多いことが分かる。これに対して、本実施形態の波長変換素子15では、散乱反射光B1として、0度方向に沿う垂直方向よりも15~60度の範囲の斜め方向に成分を多く含む配光分布を有する光を射出することが分かる。
本実施形態の波長変換素子15は、
図3に示すように、散乱反射光B1を垂直方向よりも斜め方向に多く反射する。なお、
図3では、図を分かりやすくするため、散乱反射光B1の光束幅を垂直方向よりも斜め方向の方が太く示している。
【0057】
図8は第2光Yにおけるハーフミラー層25の反射率角度特性を示す図である。
図8において、横軸は第2光Yの入射角度を示し、縦軸は反射率を示している。
図8には、ハーフミラー層25に対して第2光YがS偏光として入射した場合の反射率角度特性と、ハーフミラー層25に対して第2光YがP偏光として入射した場合の反射率角度特性と、ハーフミラー層25に対して第2光Yが無偏光として入射した場合の反射率角度特性と、が示される。なお、第2光Yが無偏光として入射した場合の反射率角度特性は、第2光YがS偏光として入射した場合の反射率と第2光YがP偏光として入射した場合の反射率との平均値から算出される。
【0058】
図8に示すように、ハーフミラー層25に対して無偏光として入射する第2光Yの反射率は入射角によらず5%程度と低いことが分かる。なお、本実施形態の構造体24は光吸収が小さい材料で構成されるため、第2光Yは構造体24の表面での反射が抑えられる。
したがって、本実施形態の波長変換素子15において、波長変換層23で生成された第2光Yは、構造体24およびハーフミラー層25を透過して外部に効率良く射出される。
【0059】
本実施形態の波長変換素子15は、散乱反射光B1と第2光Yとを含む白色の照明光WLを第2光学系14に向けて射出する。照明光WLは、第2光学系14により略平行化される。第2光学系14を透過した照明光WLは照明光軸AX上に配置されたダイクロイックミラー13を通過する。
【0060】
ここで、ダイクロイックミラー13は、第1光Bを反射するとともに第2光Yを透過させる光学特性を有する。そのため、照明光WLに含まれる第2光Yはダイクロイックミラー13を透過して均一化照明光学系16に向かう。第2光Yはダイクロイックミラー13を透過するので、ダイクロイックミラー13による第2光Yの光損失を低減できる。
【0061】
一方、照明光WLに含まれる散乱反射光B1は、第1光Bと同じ第1の波長帯の光であるため、ダイクロイックミラー13によって反射されてしまう。本実施形態において、照明光WLに含まれる散乱反射光B1は、上述のように垂直方向よりも斜め方向に成分を多く含む配光分布を有している。そのため、散乱反射光B1に含まれる光線の多くは波長変換素子15の垂直方向に位置するダイクロイックミラー13を避けるように均一化照明光学系16に向かう。
【0062】
これにより、ダイクロイックミラー13に入射する散乱反射光B1の光量が抑制されるので、ダイクロイックミラー13で反射されることで照明光WLとして有効利用されない散乱反射光B1の割合を低減できる。本実施形態では、第1光Bを集光させた状態でダイクロイックミラー13に入射することでダイクロイックミラー13を小型化している。そのため、ダイクロイックミラー13に入射する散乱反射光B1の光量をより低減することができる。
【0063】
照明光WLが入射する均一化照明光学系16は、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳光学系33と、を含む。インテグレーター光学系31は、第1マルチレンズアレイ31aと、第2マルチレンズアレイ31bと、を備えている。
【0064】
偏光変換素子32は、偏光分離膜と位相差板とをアレイ状に並べて構成されている。偏光変換素子32は、照明光WLの偏光方向を所定の方向に揃える。具体的には、偏光変換素子32は、照明光WLの偏光方向を光変調装置4R,4G,4Bの入射側偏光板の透過軸の方向に揃える。
【0065】
これにより、偏光変換素子32を透過した照明光WLを分離して得られる赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの偏光方向は、各光変調装置4R,4G,4Bの入射側偏光板の透過軸方向に一致する。よって、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBは、入射側偏光板でそれぞれ遮光されることなく、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域にそれぞれ入射する。
【0066】
重畳光学系33は、第2マルチレンズアレイ31bとともに、第1マルチレンズアレイ31aの各小レンズの像を各光変調装置4R,4G,4Bの各々の画像形成領域の近傍に結像させる。
【0067】
本実施形態の照明装置2によれば、照明光WLの光利用効率を向上することができ、照明光WLの明るさ向上および消費電力の低減、あるいは光ロスに伴う装置内の発熱を抑制することができる。
【0068】
(第1実施形態の効果)
本実施形態の波長変換素子15は、第1の面21aを有する基板21と、第1の面21aに設けられる反射層22と、反射層22上に設けられ、第1の波長帯の第1光Bを第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の第2光Yに変換する波長変換層23と、波長変換層23上に設けられ、第1の波長帯の第1光Bを散乱させる構造体24と、構造体24上に設けられ、第1の波長帯の第1光Bの一部を反射させ、第1の波長帯の第1光Bの他の一部を透過させ、第2の波長帯の第2光Yを透過させるハーフミラー層25と、を備え、ハーフミラー層25は、ハーフミラー層25に入射する第1の波長帯の第1光Bの入射角度に応じて、第1の波長帯の第1光Bに対する反射率が異なっている。
【0069】
本実施形態の波長変換素子15によれば、構造体24上に、第1光Bの入射角度に応じて第1光Bに対する反射率が異なるハーフミラー層25が設けられるため、垂直方向よりも斜め方向に向かう成分を多く含む配光分布を有する散乱反射光B1を生成することができる。これにより、散乱反射光B1は、波長変換素子15に対して垂直方向に配置されたダイクロイックミラー13を避けるように射出されるので、ダイクロイックミラー13による光損失を低減することができる。
【0070】
本実施形態の波長変換素子15において、入射角度は、ハーフミラー層25に垂直な方向に対してなす角度で規定され、ハーフミラー層25の第1の波長帯の第1光Bに対する反射率は、入射角度が大きいほど、大きい構成としてもよい。
【0071】
この構成によれば、上述のように垂直方向よりも斜め方向に成分を多く含む配光分布の散乱反射光B1を生成することができる。
【0072】
本実施形態の波長変換素子15において、第1の波長帯の第1光Bは、ハーフミラー層25に対して無偏光として入射するとしたとき、第1の波長帯の第1光Bに対する反射率は、入射角度が大きいほど、大きい構成としてもよい。
【0073】
このように第1光Bが無偏光として入射するとすることでハーフミラー層25の設計が容易となる。
【0074】
本実施形態の波長変換素子15において、構造体24は、凹部及び凸部のうち少なくともいずれかの散乱構造24aを複数有する構成としてもよい。
【0075】
この構成によれば、複数の散乱構造24aを有する構造体24によって第1光Bを散乱させて散乱反射光B1を生成することができる。
【0076】
本実施形態の波長変換素子15において、散乱構造24aは、レンズ形状を有する構成としてもよい。
【0077】
レンズ形状の散乱構造24aは容易に製造可能であるため、構造体24のコストを低減できる。また、散乱構造24aがレンズ形状であるため、構造体24上にハーフミラー層25を成膜する工程が容易となる。
【0078】
本実施形態の波長変換素子15において、ハーフミラー層25に対して垂直に入射する光に対する、ハーフミラー層25の反射率は、第1の波長帯と第2の波長帯の間にピークを有する構成としてもよい。
【0079】
この構成によれば、斜め入射する第1光Bの反射スペクトルのピークを短波長側にシフトさせたハーフミラー層25を形成できる。これにより、斜め方向から大きな入射角度で入射した第1光Bを散乱反射光B1として高反射率で反射させることができる。
【0080】
本実施形態の波長変換素子15において、ハーフミラー層25は、屈折率が1.3~2.5の範囲の材料で構成される構成としてもよい。
【0081】
この構成によれば、光吸収が小さく、化学的に安定な材料で構造体24を構成できる。
【0082】
本実施形態の波長変換素子15において、ハーフミラー層25は、誘電体多層膜で構成されていてもよい。
【0083】
この構成によれば、光吸収を抑制したハーフミラー層25を形成できる。
【0084】
本実施形態の波長変換素子15において、誘電体多層膜はMgF2、SiO2、Al2O3、Y2O3、CeO2、HfO2、La2O3、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、TiO2のいずれかを含む構成としてもよい。
【0085】
この構成によれば、光吸収を抑制するとともに化学的に安定なでハーフミラー層25を形成できる。
【0086】
本実施形態の照明装置2は、上記の波長変換素子15と、第1の波長帯の第1光Bを射出する光源11と、光源11から射出された第1の波長帯の第1光Bを波長変換素子15に向けて反射するダイクロイックミラー13と、を備える。
【0087】
本実施形態の照明装置2によれば、ダイクロイックミラー13に入射する散乱反射光B1の光量が抑制されるので、照明光WLの光利用効率を向上することができる。
【0088】
本実施形態の照明装置2において、ダイクロイックミラー13は、第2の波長帯の第2光Yを透過する構成としてもよい。
【0089】
この構成によれば、ダイクロイックミラー13による第2光Yの光損失を低減できる。
【0090】
本実施形態のプロジェクター1は、照明装置2と、照明装置2らの光を画像情報に応じて変調する光変調装置4R,4G,4Bと、光変調装置4R,4G,4Bにより変調された光を投写する投写光学装置6と、を備える。
【0091】
本実施形態のプロジェクター1によれば、照明光WLの光利用効率を向上させた照明装置2を備えるので、光効率が高く、明るい画像を表示するプロジェクターを提供できる。
【0092】
(変形例)
続いて、波長変換素子の変形例について説明する。本変形例の波長変換素子と上記実施形態の波長変換素子15との違いは構造体の構成である。以下では、構造体の構成を主に説明する。なお、上記実施形態と共通の部材については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0093】
図9は本変形例の波長変換素子15Aの構成を示す図である。
図9に示すように、本変形例の波長変換素子15Aにおいて、構造体124は、複数の散乱構造124aを含む。各散乱構造124aの平面形状は正方形状である。
【0094】
図9では、構造体124の平面構成に加え、複数の散乱構造124aが並ぶ方向に沿うA-A線矢視による構造体124の断面構造と、正方形状の散乱構造124aの対角方向に沿うB-B線矢視による構造体124の断面構造とを示している。
【0095】
図9のA-A線断面に示すように、散乱構造124aは正方形の一辺に沿う方向における断面形状が凸レンズ形状を有している。また、
図9のB-B線断面に示すように、散乱構造124aは正方形の対角方向における断面形状も凸レンズ形状を有している。なお、散乱構造124aは、B-B線断面に示す凸レンズ面の曲率がA-A線断面に示す凸レンズ面の曲率よりも大きい。
【0096】
本変形例の構造体124は、複数の散乱構造124aを隙間なく並べることで全体として矩形状の平面形状を有している。そのため、本変形例の構造体124は、上記実施形態の構造体24のような平面24bを有しておらず、波長変換層23の上面23a上の全体に形成されている。なお、散乱構造124aは各々別体でもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0097】
図10は本変形例の波長変換素子15Aにおける散乱反射光B1の配光特性を示す図である。
図10は上記実施形態の
図7に対応する図である。なお、
図10では、本変形例の波長変換素子15Aの配光特性を実施例として示し、比較例として、波長変換層23の上面23a上に構造体124のみを設けてハーフミラー層25を設けない波長変換素子の配光特性について図示する。
【0098】
図10に示すように、本変形例の波長変換素子15Aによれば、上記実施形態の波長変換素子15よりも、垂直方向に射出される散乱反射光B1の光量が少ないことが分かる。これは、本変形例の波長変換素子15Aにおける構造体124が上述のように平面部を有さず、波長変換層23の上面23aの全体に形成されることで相対的に垂直方向に反射される光量が減少したことによる。
【0099】
本変形例の波長変換素子15Aによれば、ダイクロイックミラー13に入射する散乱反射光B1の光量がより抑制される。よって、本変形例の波長変換素子15Aを用いた照明装置は、照明光WLの光利用効率をより向上することができる。
【0100】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態において、構造体24は波長変換層23と別体で形成されたが、構造体24は波長変換層23と一体で形成されてもよい。
図11は構造体24および波長変換層23を一体形成した構成を示す図である。
図11に示すように、構造体24が波長変換層23の上面23aに直接形成された構成によれば、構造体24を形成する工程を削減でき、波長変換素子15のコストを低減できる。また、構造体24および波長変換層23の屈折率が同一のため、構造体24および波長変換層23の界面反射が無くなるので、光が横方向へ逃げにくくなり、結果的にエテンデューを小さくできる。
【0101】
また、散乱構造24aの形状はレンズ形状に限定されず、凹部、例えば、凹レンズ形状でもよい。また、上記実施形態において、複数の散乱構造24aは同一の形状の構造を等ピッチで配置されていたが、同一あるいは異なる形状の散乱構造24aをランダムに配置して構造体24を構成してもよい。
【0102】
また、上記実施形態において、波長変換素子15は、第1光Bに対して波長変換層23が移動しない固定方式の構造を採用したが、第1光Bに対して波長変換層23が回転するホイール方式の構造を採用してもよい。
【0103】
その他、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶ライトバルブを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0104】
上記実施形態では、本発明による光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0105】
本発明の一つの態様の波長変換素子は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の波長変換素子は、第1の面を有する基板と、第1の面に設けられる反射層と、反射層上に設けられ、第1の波長帯の光を第1の波長帯とは異なる第2の波長帯の光に変換する波長変換層と、波長変換層上に設けられ、第1の波長帯の光を散乱させる構造体と、構造体上に設けられ、第1の波長帯の光の一部を反射させ、第1の波長帯の光の他の一部を透過させ、第2の波長帯の光を透過させる光学層と、を備え、光学層は、光学層に入射する第1の波長帯の光の入射角度に応じて、第1の波長帯の光に対する反射率が異なっている。
【0106】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、入射角度は、光学層に垂直な方向に対してなす角度で規定され、光学層の第1の波長帯の光に対する反射率は、入射角度が大きいほど、大きくてもよい。
【0107】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、第1の波長帯の光が、光学層に対して無偏光であるとき、光学層の第1の波長帯の光に対する反射率は、入射角度が大きいほど、大きくてもよい。
【0108】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、構造体は、凹部及び凸部のうち少なくともいずれかの散乱構造を複数有してもよい。
【0109】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、散乱構造は、レンズ形状を有してもよい。
【0110】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、光学層に対して垂直に入射する光に対する、光学層の反射率は、第1の波長帯と第2の波長帯の間にピークを有してもよい。
【0111】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、構造体は、屈折率が1.3~2.5の範囲の材料で構成されてもよい。
【0112】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、光学層は、誘電体多層膜で構成されてもよい。
【0113】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、誘電体多層膜は、MgF2、SiO2、Al2O3、Y2O3、CeO2、HfO2、La2O3、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、TiO2のいずれかを含んでもよい。
【0114】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、構造体は、蛍光体と一体形成されてもよい。
【0115】
本発明の一つの態様の光源装置は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の光源装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、第1の波長帯の光を射出する光源と、光源から射出された第1の波長帯の光を波長変換素子に向けて反射する反射部材と、を備える。
【0116】
本発明の一つの態様の光源装置において、反射部材は、第2の波長帯の光を透過してもよい。
【0117】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の照明装置と、照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える。
【符号の説明】
【0118】
1…プロジェクター、2…照明装置、4B,4G,4R…光変調装置、6…投写光学装置、11…光源、13…ダイクロイックミラー(反射部材)、15,15A…波長変換素子、21…基板、21a…上面(第1の面)、22…反射層、23…波長変換層、24,124…構造体、24a,124a…散乱構造、25…ハーフミラー層(光学層)、L1…第1光(第1の波長帯の光)、Y…第2光(第2の波長帯の光)。