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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】増圧装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 3/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
F15B3/00 F
F15B3/00 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020053573
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021152399
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】高桑 洋二
(72)【発明者】
【氏名】門田 謙吾
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044047(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110307191(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0283512(US,A1)
【文献】特開2000-027801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増圧ユニットとバイパスユニットからなる圧力流体の増圧装置であって、
前記増圧ユニットは、流体供給源側に接続される入力ポートとタンク側に接続される出力ポートを備え、前記入力ポートに供給される圧力流体を増圧して前記出力ポートから出力するものであり、前記バイパスユニットは、一端が前記流体供給源側に接続されるとともに他端が前記出力ポート側に接続されるバイパス流路を備え、前記バイパス流路に前記出力ポート側から前記流体供給源側への圧力流体の流れを阻止するバイパスチェック弁が設けられ
前記増圧ユニットは、増圧用シリンダの両側に駆動用シリンダが設けられたシリンダ構造を有し、
前記バイパス流路は、前記増圧ユニットに設けられた接続ポートを介して前記出力ポートに接続され、前記バイパスユニットは、前記入力ポートおよび前記接続ポートが開口する前記増圧用シリンダの前面に取り付けられる増圧装置。
【請求項2】
請求項1記載の増圧装置において、
前記入力ポートは、前記バイパスユニットに設けられた主流路を介して前記流体供給源に接続され、前記バイパス流路は、前記主流路から分岐する流路である増圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給源からの圧力流体を増圧して出力することが可能な増圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンプレッサから供給される一次圧としてのエアを増圧し、これを所定の二次圧として出力する増圧装置が知られている。
【0003】
このような増圧装置として、例えば、特許文献1には、増圧用シリンダの両側に駆動用シリンダを配設した増圧装置が記載されている。同文献にも記載されているように、増圧装置から出力された圧力流体は、通常、外部のタンクに貯留され、該タンクから流体圧機器に供給する形態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-84270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タンクを大気圧から充填する場合、特に増圧装置が小型であるときは、タンクの充填に長い時間を要する。また、増圧装置が作動するときは、流体供給源からの圧力流体の一部が外部に排出されるので、増圧装置に依存する度合いが大きいほど、圧力流体の消費量が増大する。
【0006】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、タンクへの充填効率が高く、圧力流体の消費量が少ない増圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る増圧装置は、増圧ユニットとバイパスユニットからなり、増圧ユニットは、流体供給源側に接続される入力ポートとタンク側に接続される出力ポートを備え、入力ポートに供給される圧力流体を増圧して出力ポートから出力するものである。また、バイパスユニットは、一端が流体供給源側に接続されるとともに他端が出力ポート側に接続されるバイパス流路を備え、バイパス流路に出力ポート側から流体供給源側への圧力流体の流れを阻止するバイパスチェック弁が設けられている。
【0008】
上記増圧装置によれば、タンクに対する充填効率が向上するほか、圧力流体の消費量が少なくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る増圧装置は、流体供給源からの圧力流体を直接的にタンクに供給する経路を含むので、タンクを短時間で充填することができる。また、圧力流体の消費量を可及的に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る増圧装置の外観斜視図である。
図2図1の増圧装置のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の増圧装置を増圧ユニットとバイパスユニットに分離した状態を示す図である。
図4】回路図を用いた図1の増圧装置の全体概略図である。
図5図1の増圧装置の側面図である。
図6図1の増圧装置を図5のVI-VI線に沿って切断したときの断面図である。
図7図1の増圧装置を図5のVII-VII線に沿って切断したときの断面図である。
図8図1の増圧装置における第1パイロット弁の構造を示す図である。
図9図8の第1パイロット弁が別の動作位置にあるときの図である。
図10】タンクを大気圧から充填するときの時間とタンクの圧力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る増圧装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1および図2に示されるように、本発明の増圧装置10は、増圧ユニット12とバイパスユニット88から構成され、流体供給源(コンプレッサ)とタンクとの間に配設される。なお、流体供給源とタンクの図示は省略してある。
【0013】
(増圧ユニット12の構成)
図3に示すように、増圧ユニット12は、増圧用シリンダ14の一端側および他端側にそれぞれ第1駆動用シリンダ16および第2駆動用シリンダ18が連設された3連式のシリンダ構造を有する。第1駆動用シリンダ16と増圧用シリンダ14との間には第1カバー部材20が介挿され、増圧用シリンダ14と第2駆動用シリンダ18との間には第2カバー部材22が介挿されている。
【0014】
図6に示すように、増圧用シリンダ14の内部には増圧室24が形成され、第1駆動用シリンダ16および第2駆動用シリンダ18の内部にはそれぞれ第1駆動室26および第2駆動室28が形成されている。この場合、第1駆動用シリンダ16のA1方向の端部に第3カバー部材30が固定され、A2方向の端部に第1カバー部材20が配設されることにより、第1駆動室26が形成される。また、第2駆動用シリンダ18のA1方向の端部に第2カバー部材22が配設され、A2方向の端部が壁部31で閉塞されることにより、第2駆動室28が形成される。
【0015】
第1カバー部材20および第2カバー部材22を貫通してピストンロッド32が配設される。ピストンロッド32の一端部は第1駆動室26に延在し、ピストンロッド32の他端部は第2駆動室28に延在している。増圧室24において、ピストンロッド32の中央部に増圧用ピストン34が連結され、増圧室24は、A1方向側の第1増圧室24aとA2方向側の第2増圧室24bとに区画される(図4参照)。
【0016】
第1駆動室26において、ピストンロッド32の一端部に第1駆動用ピストン36が連結され、第1駆動室26は、A1方向側の加圧室26aとA2方向側の背圧室26bとに区画される(図4参照)。第2駆動室28において、ピストンロッド32の他端部に第2駆動用ピストン38が連結され、第2駆動室28は、A2方向側の加圧室28aとA1方向側の背圧室28bとに区画される(図4参照)。増圧用ピストン34、第1駆動用ピストン36および第2駆動用ピストン38は、ピストンロッド32を介して一体的に連結されている。
【0017】
図3に示すように、増圧用シリンダ14には、バイパスユニット88を介して流体供給源から圧力流体(圧縮空気)が供給される入力ポート40が設けられている。入力ポート40は、増圧用シリンダ14の前面上部に開口する。
【0018】
図4および図7に示すように、第1カバー部材20および第2カバー部材22の内部には、増圧ユニット12に供給された圧力流体を第1増圧室24aおよび第2増圧室24bに供給する流体供給機構が設けられている。この流体供給機構は、入力ポート40と第1増圧室24aとを連通する第1供給流路42aと、入力ポート40と第2増圧室24bとを連通する第2供給流路42bとを有する。
【0019】
第1供給流路42aには、第1増圧室24aから入力ポート40に向かう流体の流れを阻止する第1供給チェック弁42cが設けられている。第2供給流路42bには、第2増圧室24bから入力ポート40に向かう流体の流れを阻止する第2供給チェック弁42dが設けられている。
【0020】
図2および図3に示すように、増圧用シリンダ14には、増圧された圧力流体をタンクに向けて出力する出力ポート44と、出力ポート44をバイパスユニット88に接続する合流ポート(接続ポート)46が設けられている。出力ポート44は、増圧用シリンダ14の下面に開口し、合流ポート46は、増圧用シリンダ14の前面下部に開口する。
【0021】
図4および図7に示すように、第1カバー部材20および第2カバー部材22の内部には、第1増圧室24aまたは第2増圧室24bで増圧された流体を出力ポート44から出力する流体出力機構が設けられている。この流体出力機構は、第1増圧室24aと出力ポート44とを連通する第1出力流路47aと、第2増圧室24bと出力ポート44とを連通する第2出力流路47bとを有する。
【0022】
第1出力流路47aには、出力ポート44から第1増圧室24aへ向かう流体の流れを阻止する第1出力チェック弁47cが設けられている。第2出力流路47bには、出力ポート44から第2増圧室24bへ向かう流体の流れを阻止する第2出力チェック弁47dが設けられている。
【0023】
図3に示すように、第1駆動用シリンダ16の上部には、第1作動弁48を備えた第1ハウジング50が配設され、第2駆動用シリンダ18の上部には、第2作動弁52を備えた第2ハウジング54が配設されている。
【0024】
図4に示すように、第1作動弁48は、第1ポート56Aないし第5ポート56Eを有し、第1駆動用ピストン36を駆動するための第1位置と第2駆動用ピストン38の駆動に伴い第1駆動用ピストン36を従動させるための第2位置との間で切り換え可能に構成される。
【0025】
第1ポート56Aは、流路58aにより第1駆動用シリンダ16の加圧室26aに接続されている。第2ポート56Bは、流路58bにより第1駆動用シリンダ16の背圧室26bに接続されている。第3ポート56Cは、流路58cにより第1供給流路42aに接続されている。第4ポート56Dは、流路58dにより排出ポートを備えた第1サイレンサ62に接続されている。第5ポート56Eは、流路58eにより流路58aの途中に接続されている。流路58dには第1固定絞り60が介装されている。
【0026】
第1作動弁48が第1位置にあるときは、第1ポート56Aと第3ポート56Cが繋がり、かつ、第2ポート56Bと第4ポート56Dが繋がる。これにより、入力ポート40からの圧力流体が流路58cおよび流路58aを通って加圧室26aに供給され、背圧室26bの流体が流路58bおよび流路58dを通り第1固定絞り60および第1サイレンサ62を介して排出される。
【0027】
第1作動弁48が第2位置にあるときは、第1ポート56Aと第4ポート56Dが繋がり、かつ、第2ポート56Bと第5ポート56Eが繋がる。これにより、加圧室26aの流体の一部が流路58a、流路58eおよび流路58bを通って背圧室26bに回収され、残部が流路58dを通り第1固定絞り60および第1サイレンサ62を介して排出される。
【0028】
第1作動弁48は、さらに、後述する第2パイロット弁74からパイロット圧を導入するためのパイロットポート56Fを有する。第1作動弁48は、パイロットポート56Fに圧力流体が供給されているときは、第1位置にあり、パイロットポート56Fに圧力流体が供給されていないときは、第2位置にある。
【0029】
第2作動弁52は、第1ポート64Aないし第5ポート64Eを有し、第2駆動用ピストン38を駆動するための第1位置と第1駆動用ピストン36の駆動に伴い第2駆動用ピストン38を従動させるための第2位置との間で切り換え可能に構成される。
【0030】
第1ポート64Aは、流路66aにより第2駆動用シリンダ18の加圧室28aに接続されている。第2ポート64Bは、流路66bにより第2駆動用シリンダ18の背圧室28bに接続されている。第3ポート64Cは、流路66cにより第2供給流路42bに接続されている。第4ポート64Dは、流路66dにより排出ポートを備えた第2サイレンサ70に接続されている。第5ポート64Eは、流路66eにより流路66aの途中に接続されている。流路66dには第2固定絞り68が介装されている。
【0031】
第2作動弁52が第1位置にあるときは、第1ポート64Aと第3ポート64Cが繋がり、かつ、第2ポート64Bと第4ポート64Dが繋がる。これにより、入力ポート40からの圧力流体が流路66cおよび流路66aを通って加圧室28aに供給され、背圧室28bの流体が流路66bおよび流路66dを通り第2固定絞り68および第2サイレンサ70を介して排出される。
【0032】
第2作動弁52が第2位置にあるときは、第1ポート64Aと第4ポート64Dが繋がり、かつ、第2ポート64Bと第5ポート64Eが繋がる。これにより、加圧室28aの流体の一部が流路66a、流路66eおよび流路66bを通って背圧室28bに回収され、残部が流路66dを通り第2固定絞り68および第2サイレンサ70を介して排出される。
【0033】
第2作動弁52は、さらに、後述する第1パイロット弁72からパイロット圧を導入するためのパイロットポート64Fを有する。第2作動弁52は、パイロットポート64Fに圧力流体が供給されているときは、第1位置にあり、パイロットポート64Fに圧力流体が供給されていないときは、第2位置にある。
【0034】
第1カバー部材20の内部には第1パイロット弁72が配設され、第2カバー部材22の内部には第2パイロット弁74が配設されている。第1パイロット弁72は、第1ポート76Aないし第4ポート76Dを有し、第2作動弁52に対してパイロット圧を生成させるための第1位置と該パイロット圧を消失させるための第2位置との間で切り換え可能に構成されている。
【0035】
第1ポート76Aは、第1パイロット流路78bにより第2作動弁52のパイロットポート64Fに接続されている。第2ポート76Bは、流路78aにより第1供給流路42aに接続されている。第3ポート76Cは、排出ポートを構成している。第4ポート76Dは、後述する分岐流路82cおよび第2パイロット流路82bにより後述する第2パイロット弁74の第1ポート80Aに接続されている。また、後述する第2パイロット弁74の第4ポート80Dに至る分岐流路78cが第1パイロット流路78bから分岐して設けられている。
【0036】
第1パイロット弁72が第1位置にあるときは、第1ポート76Aと第2ポート76Bが繋がる。これにより、入力ポート40からの圧力流体が流路78aおよび第1パイロット流路78bを通って第2作動弁52のパイロットポート64Fに供給されるとともに、第1パイロット流路78bから分岐する分岐流路78cを通って後述する第2パイロット弁74の第4ポート80Dに供給される。
【0037】
第1パイロット弁72が第2位置にあるときは、第1ポート76Aと第3ポート76Cが繋がる。これにより、第2作動弁52のパイロットポート64Fに供給されていた圧力流体が第1パイロット流路78bを通って排出されるとともに、第2パイロット弁74の第4ポート80Dに供給されていた圧力流体が分岐流路78cおよび第1パイロット流路78bを通って排出される。
【0038】
第2パイロット弁74は、第1ポート80Aないし第4ポート80Dを有し、第1作動弁48に対してパイロット圧を生成させるための第1位置と該パイロット圧を消失させるための第2位置との間で切り換え可能に構成されている。
【0039】
第1ポート80Aは、第2パイロット流路82bにより第1作動弁48のパイロットポート56Fに接続されている。第2ポート80Bは、流路82aにより第2供給流路42bに接続されている。第3ポート80Cは、排出ポートを構成している。第4ポート80Dは、分岐流路78cおよび第1パイロット流路78bにより第1パイロット弁72の第1ポート76Aに接続されている。また、第1パイロット弁72の第4ポート76Dに至る分岐流路82cが第2パイロット流路82bから分岐して設けられている。
【0040】
第2パイロット弁74が第1位置にあるときは、第1ポート80Aと第2ポート80Bが繋がる。これにより、入力ポート40からの圧力流体が流路82aおよび第2パイロット流路82bを通って第1作動弁48のパイロットポート56Fに供給されるとともに、第2パイロット流路82bから分岐する分岐流路82cを通って第1パイロット弁72の第4ポート76Dに供給される。
【0041】
第2パイロット弁74が第2位置にあるときは、第1ポート80Aと第3ポート80Cが繋がる。これにより、第1作動弁48のパイロットポート56Fに供給されていた圧力流体が第2パイロット流路82bを通って排出されるとともに、第1パイロット弁72の第4ポート76Dに供給されていた圧力流体が分岐流路82cおよび第2パイロット流路82bを通って排出される。
【0042】
さらに、図8および図9を参照しながら、第1パイロット弁72の具体的構造について説明する。第2パイロット弁74の構造もこれと同じである。なお、便宜上、第1パイロット弁72のノックピンの参照符号を61とし、第2パイロット弁74のノックピンの参照符号を69として、両者を区別した。
【0043】
第1パイロット弁72は、第1カバー部材20に設けられたバルブ収容孔84に収容されるバルブシート86、バルブシート押え87およびノックピン61を含む。先端部61aが第1駆動用シリンダ16の背圧室26b内に突出するノックピン61は、バルブ収容孔84の底面に当接する位置(図9参照)とバルブシート押え87の端面に当接する位置(図8参照)との間で摺動可能である。ノックピン61の突出長さが大きいとき、第1ポート76Aは第3ポート76Cに連通し、ノックピン61の突出長さが小さいとき、第1ポート76Aは第2ポート76Bに連通する構造となっている。
【0044】
第4ポート76Dに圧力流体が供給されると、ノックピン61は突出長さが増大する向きに付勢される。ノックピン61の突出長さを増大させる方向に加わる第4ポート76Dの流体圧が作用する面積は、ノックピン61の突出長さを減少させる方向に加わる第2ポート76Bの流体圧が作用する面積より大きいからである。
【0045】
一方、第4ポート76Dに圧力流体が供給されなくなると、ノックピン61は突出長さが減少する向きに付勢される。ノックピン61の突出長さを増大させる方向に加わる第4ポート76Dの流体圧が消失する一方で、ノックピン61の突出長さを減少させる方向に加わる第2ポート76Bの流体圧は継続して作用しているからである。
【0046】
(バイパスユニット88の構成)
図3に示すように、直方体状のバイパスユニット88は、入力ポート40および合流ポート46が開口する増圧用シリンダ14の前面に対して、複数のボルト90を用いて取り付けられる。図2および図4に示すように、バイパスユニット88の内部には、主流路92およびバイパス流路94が設けられている。
【0047】
主流路92は、バイパスユニット88の上部に設けられ、バイパスユニット88の前面から増圧用シリンダ14に接する後面まで貫通している。バイパスユニット88の前面に開口する主流路92の入口側端部92A(図1参照)は、図示しない配管を介して流体供給源に接続され、バイパスユニット88の後面に開口する主流路92の出口側端部92Bは、増圧用シリンダ14の入力ポート40に接続される。
【0048】
バイパス流路94は、主流路92の途中から分岐してバイパスユニット88内を下方に延び、その出口側端部94Aがバイパスユニット88の後面に開口して増圧用シリンダ14の合流ポート46に接続される。バイパス流路94には、流体供給源から合流ポート46に向かう圧力流体の流れを許容し、合流ポート46から流体供給源に向かう圧力流体の流れを阻止するバイパスチェック弁96が設けられている。
【0049】
流体供給源からの圧力流体がタンクに向けて出力される経路には、次の二つの経路が含まれる。第1の経路は、バイパスユニット88の主流路92とバイパスチェック弁96が介在されたバイパス流路94を通った後、増圧ユニット12の合流ポート46を経て出力ポート44に至る経路である(以下「第1経路」という)。第2の経路は、バイパスユニット88の主流路92を通った後、入力ポート40から増圧ユニット12に入り、第1供給流路42aまたは第2供給流路42bと、第1増圧室24aまたは第2増圧室24bと、第1出力流路47aまたは第2出力流路47bとを通って出力ポート44に至る経路である(以下「第2経路」という)。
【0050】
本発明の実施形態に係る増圧装置10は、以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。図4に示すように、第1作動弁48が第2位置に切り換わった状態にあるとともに第2作動弁52が第1位置に切り換わった状態にあり、かつ、増圧用ピストン34が増圧室24の中央寄りに位置している状態を初期状態とする。また、このとき、タンクの圧力は大気圧となっているものとする。
【0051】
この初期状態において、流体供給源からの圧力流体がバイパスユニット88の主流路92の入口側端部92Aに供給される。出力ポート44は、圧力の低いタンクと繋がっているので、合流ポート46における圧力は、主流路92における圧力よりも低くなっている。このため、流体供給源からの圧力流体の一部は、第1経路を通り、出力ポート44からタンクに向けて出力される。また、流体供給源からの圧力流体の他の一部は、第2経路を通り、増圧ユニット12により増圧されて、出力ポート44からタンクに向けて出力される。増圧ユニット12における増圧作用については後述する、
【0052】
このように、合流ポート46における圧力が主流路92における圧力よりも低い間は、流体供給源からの圧力流体は、バイパス流路94を通って直接的にタンクに供給されるとともに、増圧ユニット12により増圧されてタンクに供給される。したがって、タンクの圧力を迅速に上昇させることができる。
【0053】
タンクへの充填が進んで、合流ポート46における圧力が主流路92における圧力よりも高くなると、バイパスチェック弁96の作用によりバイパス流路94が閉鎖される。このため、出力ポート44からタンクに向けて出力される圧力流体は、第2経路を経た増圧後の圧力流体のみとなる。したがって、タンクの圧力を流体供給源からの供給圧力よりも高い所定圧力まで上昇させることができる。
【0054】
(増圧ユニット12における増圧作用)
増圧ユニット12の入力ポート40に圧力流体が供給されると、該圧力流体は、第1供給流路42aおよび第2供給流路42bに流入し、第1供給チェック弁42cおよび第2供給チェック弁42dを介して増圧用シリンダ14の第1増圧室24aおよび第2増圧室24bに導入される。
【0055】
入力ポート40から供給される圧力流体の一部は、流路66c、第1位置にある第2作動弁52および流路66aを通って、第2駆動用シリンダ18の加圧室28aに供給される。これにより、第2駆動用ピストン38がA1方向に駆動され、第2駆動用ピストン38と一体的に連結された増圧用ピストン34が摺動し、増圧用シリンダ14の第1増圧室24aの圧力流体が増圧される。この増圧した圧力流体は、第1出力流路47aおよび第1出力チェック弁47cを通って出力ポート44へと導かれて出力される。
【0056】
一方、第2駆動用ピストン38と一体的に連結された第1駆動用ピストン36が摺動すると、第1駆動用シリンダ16の加圧室26aの容積が小さくなる。第1作動弁48は第2位置にあるので、加圧室26a内の圧力流体は、その一部が流路58a、流路58eおよび流路58bを通って背圧室26bに回収され、残部が流路58dを通って排出される。
【0057】
上記のとおり、初期位置から増圧用ピストン34がA1方向に所定距離まで移動する行程において、第1パイロット弁72は第1位置にあり、入力ポート40からの圧力流体が第1パイロット弁72を介して第2パイロット弁74の第4ポート80Dに供給されている。一方、第2パイロット弁74は第2位置にあり、第1パイロット弁72の第4ポート76Dに圧力流体は供給されていない。したがって、第1パイロット弁72においては、ノックピン61の突出長さが減少する向きに付勢され、第1パイロット弁72は、安定して第1位置に保持されている。また、第2パイロット弁74においては、ノックピン69の突出長さが増大する向きに付勢され、第2パイロット弁74は、安定して第2位置に保持されている。
【0058】
そして、増圧用ピストン34がA1方向に変位するストロークエンド近傍において、第2駆動用ピストン38が第2パイロット弁74のノックピン69に当接する。ノックピン69は第2駆動用ピストン38に押圧されて変位し、第2パイロット弁74の第1ポート80Aと第2ポート80Bが連通するに至る。すると、入力ポート40からの圧力流体が、第2パイロット流路82bを通って第1作動弁48のパイロットポート56Fに供給されるとともに、分岐流路82cを通って第1パイロット弁72の第4ポート76Dに供給される。これにより、第1作動弁48が第1位置に切り換わるとともに、第1パイロット弁72が第2位置に切り換わる。
【0059】
第1パイロット弁72が第2位置に切り換わると、第2作動弁52のパイロットポート64Fに供給されていた圧力流体が第1パイロット流路78bを通って第1パイロット弁72の第3ポート76Cから排出される。これにより、第2作動弁52が第2位置に切り換わる。
【0060】
また、第1パイロット弁72が第2位置に切り換わると、第2パイロット弁74の第4ポート80Dに供給されていた圧力流体が分岐流路78cおよび第1パイロット流路78bを通って第1パイロット弁72の第3ポート76Cから排出される。このため、第2パイロット弁74においては、ノックピン69の突出長さを減少せしめる方向に流体圧が作用する。こうして、第2駆動用ピストン38の押圧によって第2パイロット弁74の第1ポート80Aと第2ポート80Bが連通するに至るまで変位したノックピン69は、さらに流体圧を受けながら、バルブ収容孔84の底面に当接した位置に保持される。すなわち、第2パイロット弁74は安定して第1位置に保持される。
【0061】
今度は、入力ポート40から供給された圧力流体の一部は、流路58c、第1位置にある第1作動弁48および流路58aを通って、第1駆動用シリンダ16の加圧室26aに供給される。この加圧室26aに供給された圧力流体によって第1駆動用ピストン36がA2方向に駆動される。これにより、第1駆動用ピストン36と一体的に連結された増圧用ピストン34が摺動し、増圧用シリンダ14の第2増圧室24bの圧力流体が増圧される。この増圧した圧力流体は、第2出力流路47bおよび第2出力チェック弁47dを通って出力ポート44へと導かれて出力される。
【0062】
一方、第1駆動用ピストン36と一体的に連結された第2駆動用ピストン38が摺動すると、第2駆動用シリンダ18の加圧室28aの容積が小さくなる。第2作動弁52は第2位置にあるので、加圧室28a内の圧力流体は、その一部が流路66a、流路66eおよび流路66bを通って背圧室28bに回収され、残部が流路66dを通って排出される。
【0063】
そして、増圧用ピストン34がA2方向に変位するストロークエンド近傍において、第1駆動用ピストン36が第1パイロット弁72のノックピン61に当接する。ノックピン61は第1駆動用ピストン36に押圧されて変位し、第1パイロット弁72の第1ポート76Aと第2ポート76Bが連通するに至る。すると、入力ポート40からの圧力流体が、第1パイロット流路78bを通って第2作動弁52のパイロットポート64Fに供給されるとともに、分岐流路78cを通って第2パイロット弁74の第4ポート80Dに供給される。これにより、第2作動弁52が第1位置に切り換わるとともに、第2パイロット弁74が第2位置に切り換わる。
【0064】
第2パイロット弁74が第2位置に切り換わると、第1作動弁48のパイロットポート56Fに供給されていた圧力流体が第2パイロット流路82bを通って第2パイロット弁74の第3ポート80Cから排出される。これにより、第1作動弁48が第2位置に切り換わる。
【0065】
また、第2パイロット弁74が第2位置に切り換わると、第1パイロット弁72の第4ポート76Dに供給されていた圧力流体が分岐流路82cおよび第2パイロット流路82bを通って第2パイロット弁74の第3ポート80Cから排出される。このため、第1パイロット弁72においては、ノックピン61の突出長さを減少せしめる方向に流体圧が作用する。こうして、第1駆動用ピストン36の押圧によって第1パイロット弁72の第1ポート76Aと第2ポート76Bが連通するに至るまで変位したノックピン61は、さらに流体圧を受けながら、バルブ収容孔84の底面に当接した位置に保持される。すなわち、第1パイロット弁72は安定して第1位置に保持される。以下、同様に増圧用ピストン34が往復運動を繰り返し、増圧された圧力流体が出力ポート44から連続的に出力される。
【0066】
図10は、タンクを大気圧から充填するときの充填開始からの経過時間とタンクの圧力(出力ポート44における圧力)との関係を示す図である。実線は、本実施形態に係る増圧装置10のようにバイパスユニット88を設けた場合を示し、点線は、バイパスユニット88を設けない場合を示す。P0、P1、P2は、それぞれ大気圧、圧力流体源から供給される流体の圧力、タンクの目標圧力を表している。同図から理解されるように、バイパスユニット88を設けることで、タンクの圧力をP1まで上昇させるのに要する時間を短縮することができる。
【0067】
本実施形態に係る増圧装置10によれば、流体供給源からの圧力流体を直接的にタンクに供給する第1経路を含むので、タンクの充填時間を可及的に短くすることができるほか、圧力流体の消費量を可及的に少なくすることができる。
【0068】
また、入力ポート40がバイパスユニット88に設けられた主流路92を介して流体供給源に接続され、主流路92からバイパス流路94が分岐しているので、増圧ユニット12と流体供給源との接続、および、バイパスユニット88と流体供給源との接続を1本の配管で済ませることができ、配管の取り回しが簡単である。
【0069】
また、バイパス流路94が増圧ユニット12に設けられた合流ポート46を介して出力ポート44に接続されているので、増圧ユニット12とタンクとの接続、および、バイパスユニット88とタンクとの接続を1本の配管で済ませることができ、配管の取り回しが簡単である。
【0070】
また、入力ポート40および合流ポート46が開口する増圧用シリンダ14の前面にバイパスユニット88が取り付けられるので、装置全体をコンパクトな構成とすることができる。
【0071】
本発明に係る増圧装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0072】
10…増圧装置 12…増圧ユニット
14…増圧用シリンダ 16…第1駆動用シリンダ
18…第2駆動用シリンダ 40…入力ポート
44…出力ポート 46…合流ポート
88…バイパスユニット 92…主流路
94…バイパス流路 96…バイパスチェック弁
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10