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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電子機器、通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/20 20180101AFI20240228BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240228BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240228BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20240228BHJP
   H04W 12/02 20090101ALI20240228BHJP
【FI】
H04W76/20
H04W84/10 110
H04W84/12
H04W48/16 130
H04W12/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020056950
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158529
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【弁理士】
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】西田 康太
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/011264(WO,A1)
【文献】特開2004-128785(JP,A)
【文献】特開2012-113349(JP,A)
【文献】特開2017-098901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部アクセスポイントを経由した端末装置との通信である第1無線通信と、前記端末装置とのダイレクト接続である第2無線通信と、を実行可能な無線通信部と、
前記無線通信部の通信制御を行う処理部と、
を含み、
前記無線通信部は、
ジョブの実行操作を受け付けたときに前記ジョブの実行指示を送信する前の事前通信を行う前記端末装置から前記事前通信を受信したとき、前記第1無線通信の第1セキュリティー規格に比べて、前記第2無線通信の第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替え
前記処理部は、
前記切り替えが行われなかった場合には前記第1無線通信により、又は前記切り替えが行われた場合には前記第2無線通信により前記無線通信部が前記端末装置からの前記ジョブの実行指示を受信した場合に、前記ジョブを実行することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1において、
前記無線通信部は、
前記第2セキュリティー規格に関する情報を前記端末装置から取得し、
前記処理部は、
前記無線通信部が前記端末装置から前記事前通信を受信した場合に、取得された前記情報に基づいて、前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替えるか否かを判定することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2セキュリティー規格に関する情報は、前記端末装置がサポートするセキュリティー規格を表す端末能力情報であり、
前記処理部は、
前記電子機器がサポートするセキュリティー規格を表す能力情報と、前記端末能力情報とに基づいて、前記第2セキュリティー規格を判定することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記無線通信部は、
前記端末装置から、前記端末装置と前記外部アクセスポイントとの無線通信のセキュリティー規格に関する情報を取得し、
前記処理部は、
前記無線通信部と前記外部アクセスポイントの間のセキュリティー規格、及び、前記端末装置から取得した情報に基づいて、前記第1セキュリティー規格を判定することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項において、
前記第1無線通信の第1セキュリティー規格に比べて、前記第2無線通信の第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、前記無線通信部は、前記第1無線通信から前記第2無線通信への接続変更要求を、前記端末装置に送信することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5において、
前記無線通信部は、
前記第1無線通信を用いて、前記接続変更要求を前記端末装置に送信することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1において、
前記無線通信部は、
前記端末装置から、前記事前通信を受信した場合に、
前記第2セキュリティー規格に関する情報と、前記無線通信部と前記外部アクセスポイントの無線通信のセキュリティー規格に関する情報を、前記端末装置に送信し、
前記端末装置から、前記第2無線通信用の内部アクセスポイントに対する接続要求を受信した場合に、前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記無線通信部は、
前記第2無線通信に用いられる接続情報を、前記端末装置に送信することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記無線通信部は、
前記第2無線通信による前記端末装置との通信が終了した後、前記端末装置との通信を前記第2無線通信から前記第1無線通信に切り替えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記無線通信部は、
前記第1無線通信の第1無線通信規格に比べて、前記第2無線通信の第2無線通信規格の通信品質が高い場合に、前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、
前記ジョブは、印刷ジョブであることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子機器と、
前記端末装置と、
を含むことを特徴とする通信システム。
【請求項13】
外部アクセスポイントを経由した第1無線通信と、ダイレクト接続である第2無線通信のいずれかによって通信を行う電子機器と端末装置による通信方法であって、
前記端末装置がジョブの実行操作を受け付けたときに前記ジョブの実行指示を前記電子機器に送信する前の事前通信において、前記第1無線通信を用いて、前記第2無線通信の第2セキュリティー規格に関する情報を通信し、
通信した情報に基づいて、前記電子機器と前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替えるか否かを判定し、
前記第1無線通信の第1セキュリティー規格に比べて、前記第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、前記電子機器と前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替え
前記切り替えが行われなかった場合には前記第1無線通信により、又は前記切り替えが行われた場合には前記第2無線通信により前記電子機器が前記端末装置からの前記ジョブの実行指示を受信した場合に、前記電子機器が前記前記ジョブを実行する、
ことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、通信システム及び通信方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線セキュリティーや無線通信規格は常に改良が進んでいるため、ユーザーが所有する複数の無線機器の対応するセキュリティー規格は必ずしも同一ではない。そのため、接続の態様に応じて、無線通信のセキュリティー強度が異なる。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の基地局が存在する場合に、最も強度の高い暗号化方式を用いる基地局と、端末局装置を接続させる手法が開示されている。特許文献1における端末局装置とは例えばタブレット端末である。基地局装置とは、無線ルーターや、テザリングを実行しているスマートフォン等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-46841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、複数の基地局のうちの1つを選択する手法である。そのため従来手法では、端末装置と電子機器との無線通信として、ダイレクト接続を含む複数の通信を利用可能である場合に、適切な無線通信を選択することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、外部アクセスポイントを経由した端末装置との通信である第1無線通信と、前記端末装置とのダイレクト接続である第2無線通信と、を実行可能な無線通信部と、前記無線通信部の通信制御を行う処理部と、を含み、前記無線通信部は、前記第1無線通信の第1セキュリティー規格に比べて、前記第2無線通信の第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替える電子機器に関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、上記の電子機器と、前記端末装置と、を含む通信システムに関係する。
【0008】
本開示のさらに他の態様は、外部アクセスポイントを経由した第1無線通信と、ダイレクト接続である第2無線通信のいずれかによって通信を行う電子機器と端末装置による通信方法であって、前記第1無線通信を用いて、前記第2無線通信の第2セキュリティー規格に関する情報を通信し、通信した情報に基づいて、前記電子機器と前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替えるか否かを判定し、前記第1無線通信の第1セキュリティー規格に比べて、前記第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、前記電子機器と前記端末装置との通信を前記第1無線通信から前記第2無線通信に切り替える通信方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】端末装置と電子機器を含む通信システムの構成例。
図2】端末装置の構成例。
図3】電子機器の構成例。
図4】本実施形態の手法を説明する図。
図5】本実施形態の処理の流れを説明する図。
図6】セキュリティー強度の判定処理を説明するフローチャート。
図7】本実施形態の処理の流れを説明する他の図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.システム構成と処理の概要
図1は、本実施形態の通信システム10の一例を模式的に示す図である。通信システム10は、端末装置100と、電子機器200を含む。
【0012】
端末装置100は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末装置であってもよいし、PC(Personal Computer)等の情報処理装置であってもよい。
【0013】
電子機器200は、例えばプリンターである。或いは電子機器200は、スキャナー、ファクシミリ装置又はコピー機であってもよい。電子機器200は、複数の機能を有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)であってもよく、印刷機能を有する複合機もプリンターの一例である。或いは電子機器200は、プロジェクター、頭部装着型表示装置、ウェアラブル機器、生体情報測定機器、ロボット、映像機器、物理量計測機器等であってもよい。生体情報測定機器とは、脈拍計、歩数計、活動量計等である。映像機器とは、カメラ等である。
【0014】
なお、通信システム10は図1の構成に限定されず、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また、構成要素の省略や追加等の変形実施が可能である点は、後述する図2図3においても同様である。
【0015】
端末装置100と電子機器200は、無線による通信が可能である。ここでの無線通信は、Wi-Fi方式を用いた通信である。Wi-Fi方式は、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)の802.11の規格、及び、それに準ずる規格に基づく無線通信方式である。
【0016】
例えば、端末装置100と電子機器200は、ともにステーションとして動作してもよい。端末装置100及び電子機器200がそれぞれ外部アクセスポイントAPと接続することによって、端末装置100と電子機器200の通信が行われる。外部アクセスポイントAPは、例えばルーター機能を有する無線ルーターである。以下、外部アクセスポイントAPを経由した端末装置100と電子機器200の通信を第1無線通信CM1と表記する。図1に示すように、第1無線通信CM1は、端末装置100と外部アクセスポイントAPとの間の第3無線通信CM3と、電子機器200と外部アクセスポイントAPとの間の第4無線通信CM4とによって実現される。
【0017】
或いは、電子機器200は内部アクセスポイントを起動可能であってもよい。内部アクセスポイントは、ソフトウェアアクセスポイントと表記してもよい。端末装置100は、電子機器200の内部アクセスポイントに接続する。以下、内部アクセスポイントを用いた端末装置100と電子機器200のダイレクト接続を第2無線通信CM2と表記する。
【0018】
図2は、端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。端末装置100は、処理部110、無線通信部120、表示部130、操作部140、報知部150、記憶部160を含む。
【0019】
処理部110は、無線通信部120、表示部130、操作部140、報知部150、記憶部160の各部の制御を行う。処理部110は、具体的にはプロセッサー又はコントローラーである。
【0020】
本実施形態の処理部110は、下記のハードウェアによって構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。1又は複数の回路装置は例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0021】
また処理部110は、下記のプロセッサーによって実現されてもよい。本実施形態の端末装置100は、情報を記憶するメモリーと、メモリーに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサーと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサーは、ハードウェアを含む。プロセッサーは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。メモリーは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリーはコンピューターによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサーが実行することによって、処理部110の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサーのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。さらに、処理部110の全部または一部はクラウドコンピューティングで実現されてもよい。
【0022】
無線通信部120は、少なくとも1つの無線通信デバイスにより実現される。無線通信デバイスは、無線通信チップと言い換えてもよい。ここでの無線通信デバイスは、Wi-Fi規格に準拠した無線通信を実行する無線通信デバイスを含む。ただし、無線通信部120は、Wi-Fi規格以外の規格に準拠した無線通信を実行する無線通信デバイスを含んでもよい。Wi-Fi規格以外の規格とは、例えばBluetooth(登録商標)であってもよく、狭義にはBLE(Bluetooth Low Energy)である。
【0023】
表示部130は、各種情報をユーザーに表示するディスプレイ等で構成される。操作部140は、ユーザーからの入力操作を受け付けるボタン等で構成される。なお、表示部130及び操作部140は、例えばタッチパネルにより一体的に構成してもよい。報知部150は、ユーザーに対する報知を行う。報知部150は、例えば音による報知を行うスピーカーであってもよいし、振動による報知を行う振動部であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0024】
記憶部160は、データやプログラムなどの各種の情報を記憶する。処理部110や無線通信部120は例えば記憶部160をワーク領域として動作する。記憶部160は、SRAM、DRAMなどの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、磁気記憶装置であってもよいし、光学式記憶装置であってもよい。
【0025】
図3は、電子機器200の構成の一例を示すブロック図である。なお、図3は、印刷機能を有する電子機器200を示しており、以下の説明においても、適宜、電子機器200がプリンターである例について説明する。ただし、電子機器200をプリンター以外に拡張可能な点は上述したとおりである。電子機器200は、処理部210、無線通信部220、表示部230、操作部240、印刷部250、記憶部260を含む。
【0026】
処理部210は、電子機器200の各部の制御を行う。電子機器200の各部とは、例えば無線通信部220、記憶部260、印刷部250等である。例えば処理部210は、メインCPU、サブCPUなどの複数のCPUを含むことができる。メインCPUは、電子機器200の各部の制御や全体的な制御を行う。サブCPUは、例えば無線通信部220の通信制御を行うCPUである。或いは、電子機器200がプリンターである場合、印刷についての各種の処理を行うCPUが更に設けられてもよい。
【0027】
本実施形態の処理部210は、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子によって構成できる。
【0028】
また処理部210は、ハードウェアを含むプロセッサーにより実現されてもよい。本実施形態の電子機器200は、情報を記憶するメモリーと、メモリーに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサーと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサーは、CPU、GPU、DSP等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。メモリーは、半導体メモリー、レジスター、磁気記憶装置、光学式記憶装置等である。例えば、メモリーはコンピューターによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサーが実行することによって、処理部210の機能が処理として実現される。さらに、処理部210の全部または一部はクラウドコンピューティングで実現されてもよい。
【0029】
無線通信部220は、第1無線通信部221と、第2無線通信部222を含む。第1無線通信部221は、電子機器200がWi-Fiのステーションとして動作する際の無線通信を行う。例えば、第1無線通信部221は、外部アクセスポイントAPとの通信である第4無線通信CM4を実行する。第2無線通信部222は、電子機器200がWi-Fiのアクセスポイントとして動作する際の無線通信を行う。第2無線通信部222は、内部アクセスポイントを起動し、端末装置100からの接続を受け付けることによって第2無線通信CM2を実行する。
【0030】
無線通信部220は、Wi-Fi規格に準拠した無線通信を実行する少なくとも1つの無線通信デバイスにより実現される。具体的には、無線通信部220は、Wi-Fi Direct(登録商標)方式をサポートする。第1無線通信部221と第2無線通信部222は、それぞれ異なる無線通信デバイスにより実現されてもよい。或いは第1無線通信部221と第2無線通信部222は、共通の無線通信デバイスによって実現されてもよい。例えば1つの無線通信デバイスが、第1無線通信CM1と、第2無線通信CM2を時分割に実行することによって、第1無線通信部221と第2無線通信部222が実現されてもよい。また、無線通信部220は、Wi-Fi規格以外の規格に準拠した無線通信を実行可能であってもよい。
【0031】
表示部230は、各種情報をユーザーに表示するディスプレイ等で構成される。操作部240は、ユーザーからの入力操作を受け付けるボタン等で構成される。なお、表示部230及び操作部240は、例えばタッチパネルにより一体的に構成してもよい。
【0032】
印刷部250は、印刷エンジンを含む。印刷エンジンとは、印刷媒体への画像の印刷を実行する機械的構成である。印刷エンジンは、例えば搬送機構やインクジェット方式の吐出ヘッド、当該吐出ヘッドを含むキャリッジの駆動機構等を含む。印刷エンジンは、搬送機構により搬送される印刷媒体に対して、吐出ヘッドからインクを吐出することで、印刷媒体に画像を印刷する。印刷媒体は、紙であってもよいし、布であってもよいし、他の媒体であってもよい。なお、印刷エンジンの具体的構成はここで例示したものに限られず、電子写真方式でトナーにより印刷するものでもよい。
【0033】
記憶部260は、データやプログラムなどの各種の情報を記憶する。処理部210や無線通信部220は例えば記憶部260をワーク領域として動作する。記憶部260は、半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、磁気記憶装置であってもよいし、光学式記憶装置であってもよい。記憶部260は、端末装置100から無線通信により送信されるデータを記憶してもよい。ここでのデータは、例えば印刷部250での印刷に用いられるデータである。
【0034】
図4は、本実施形態における処理の概要を説明する図である。図1図3を用いて上述したように、端末装置100と電子機器200は、外部アクセスポイントAPを経由した無線通信である第1無線通信CM1を実行可能である。例えば、端末装置100から電子機器200にジョブが送信される。電子機器200がプリンターである場合、ジョブとは印刷ジョブである。印刷ジョブとは、印刷対象となる画像情報や、印刷設定情報を含む情報である。印刷設定情報は、用紙サイズ、片面/両面、カラー/モノクロ等の設定項目についての設定値を特定する情報である。このようにすれば、スマートフォンやPC等の端末装置100を用いて、電子機器200に印刷を実行させることが可能になる。
【0035】
無線セキュリティーは常に改良が進んでいる。そのため、ユーザーが所有する複数の無線機器の対応するセキュリティー規格は必ずしも同一ではない。そのため、最新の無線機器を多く使用しているユーザーであっても、接続先の外部アクセスポイントAPが古いことによって、セキュリティーレベルが低くなってしまうことがある。
【0036】
例えば図4に示すように、端末装置100及び電子機器200は、WPA2(Wi-Fi Protected Access2)とWPA3(Wi-Fi Protected Access3)の両方に対応している。外部アクセスポイントAPは、WPA2に対応しているが、WPA3には対応していない。外部アクセスポイントAPがWPA3に対応していないため、端末装置100と外部アクセスポイントAPとの第3無線通信CM3は、例えばセキュリティー規格としてWPA2を用いた通信となる。同様に、電子機器200と外部アクセスポイントAPとの第4無線通信CM4は、セキュリティー規格としてWPA2を用いた通信となる。結果として、端末装置100及び電子機器200は、よりセキュリティー強度の高いWPA3に対応しているにもかかわらず、端末装置100と電子機器200との無線通信がセキュリティー強度の低いWPA2で行われてしまう。
【0037】
本実施形態の電子機器200は、図3に示したように無線通信部220と処理部210を含む。無線通信部220は、外部アクセスポイントAPを経由した端末装置100との通信である第1無線通信CM1と、端末装置100とのダイレクト接続である第2無線通信CM2と、を実行可能である。処理部210は、無線通信部220の通信制御を行う。
【0038】
そして無線通信部220は、第1無線通信CM1の第1セキュリティー規格に比べて、第2無線通信CM2の第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替える。例えば図4に示したように、電子機器200の内部アクセスポイントを用いて端末装置100と電子機器200をダイレクト接続することによって、セキュリティー規格としてWPA3を用いた通信が可能になる。そのため、切り替え前に比べてセキュリティー強度を高くすることが可能になる。
【0039】
なお、本実施形態におけるセキュリティー規格はWPA2とWPA3に限定されない。例えばセキュリティー規格は、WEP(Wired Equivalent Privacy)、WPA(Wi-Fi Protected Access)等の他の規格を含んでもよい。また、セキュリティー規格には暗号化方式に関する情報が含まれてもよい。暗号化方式は、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)、AES(Advanced Encryption Standard)等を含む。
【0040】
第1セキュリティー規格と第2セキュリティー規格のセキュリティー強度の比較は、電子機器200単体で実行することは難しい。例えば、第2セキュリティー規格を特定するには端末装置100の能力を知る必要がある。また第1セキュリティー規格を適切に特定するには、端末装置100と外部アクセスポイントAPとの第3無線通信CM3のセキュリティー規格を知る必要がある。即ち、電子機器200におけるセキュリティー強度の判定には、端末装置100の情報が必要となる。またセキュリティー強度の判定は端末装置100において実行されてもよいが、その場合、端末装置100は電子機器200のセキュリティーに関する情報を取得する必要がある。具体的な処理について、図5図7を用いて後述する。
【0041】
また本実施形態の手法は上記の電子機器200と、端末装置100と、を含む通信システム10に適用できる。このようにすれば、端末装置100と電子機器200との間でセキュリティー強度の高い無線通信を実行可能なシステムを実現できる。
【0042】
また、本実施形態の通信システム10が行う処理は、通信方法として実現されてもよい。本実施形態の通信方法は、外部アクセスポイントAPを経由した第1無線通信CM1と、ダイレクト接続である第2無線通信CM2のいずれかによって通信を行う電子機器200と端末装置100による通信方法である。通信方法は、第1無線通信CM1を用いて、第2無線通信CM2の第2セキュリティー規格に関する情報を通信し、通信した情報に基づいて、電子機器200と端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替えるか否かを判定する。具体的には、通信方法は、第1無線通信CM1の第1セキュリティー規格に比べて、第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、電子機器200と端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替える。
【0043】
なお、特許文献1の手法は、ネットワークと接続された複数のアクセスポイントが存在する場合に、セキュリティー強度の高い通信を実行可能なアクセスポイントに優先的に接続する手法である。ただし、特許文献1等の従来手法は、ダイレクト接続を含めた無線通信のうち、適切な通信態様を選択する手法を開示していない。特に、本実施形態では端末装置100と電子機器200との間で情報の送受信を行うことが重要である。そのため、端末装置100が、電子機器200が属するネットワークとは異なるネットワークに接続することは好ましくない。
【0044】
特許文献1の手法を用いてセキュリティー強度の高いアクセスポイントを選択した場合、端末装置100と電子機器200との間の通信が可能であることが保証されなくなってしまう。例えば特許文献1の手法において、端末装置100と電子機器200のそれぞれをステーションとみなした場合、それぞれが優先度の高いアクセスポイントと接続されるのみである。また電子機器200をアクセスポイントとみなした場合、端末装置100は電子機器200を含む複数のアクセスポイントから優先度の高いものを選ぶのみである。即ち、特許文献1の手法は、一部のケースにおいて第1無線通信CM1又は第2無線通信CM2が実現されることもあるが、端末装置100と電子機器200の接続が保証されない。ましてや、第1無線通信CM1と第2無線通信CM2との間の切り替えについては一切開示されていない。
【0045】
2.処理の流れ
図5は、本実施形態の処理の流れを説明する図である。図5の処理が開始される前に、端末装置100と外部アクセスポイントAPの第3無線通信CM3、及び、電子機器200と外部アクセスポイントAPの第4無線通信CM4が確立されている。即ち、第1無線通信CM1を用いて、端末装置100と電子機器200の通信が可能である。
【0046】
図5の処理が開始されると、まず端末装置100はアプリケーションソフトウェアを起動する(ステップS101)。ここでのアプリケーションソフトウェアとは、端末装置100の記憶部160に記憶されたプログラムである。端末装置100の処理部110は、当該プログラムに従って動作することによって、所定の処理を実行する。アプリケーションソフトウェアは、具体的には電子機器200にジョブを実行させるための処理が規定されたプログラムである。電子機器200がプリンターである場合、アプリケーションソフトウェアとは、ネットワークを介して、印刷ジョブを実行させるための印刷アプリケーションである。
【0047】
ステップS101において、アプリケーションソフトウェアは、ネットワークに接続された電子機器200を探索する処理を行う。ここでのネットワークは、端末装置100が接続している外部アクセスポイントAPによって構築されるネットワークである。例えば端末装置100は、ブロードキャストアドレスを指定したパケット等を送信し、ネットワークに接続する電子機器200からの応答を受け付ける処理を行う。具体的には、端末装置100は、プリンターである電子機器200の探索結果のうち、ユーザーによって選択された電子機器200を、印刷を実行させるプリンターとして登録する処理を行う。
【0048】
電子機器200は、ネットワークにアプリケーションソフトウェアを実行する端末装置100が存在すると判定された場合に、内部アクセスポイントを起動する(ステップS102)。例えば電子機器200は、端末装置100からブロードキャストされたパケットを受信した場合に、内部アクセスポイントを起動する処理を行う。
【0049】
次に端末装置100は、ユーザーによるジョブ実行操作を受け付ける(ステップS103)。ジョブ実行操作とは、例えば、印刷対象となる画像の選択及び印刷設定を行ったうえで、印刷実行ボタンを押下するユーザー操作である。なお、ステップS101及びS102の処理は、ステップS103以降の処理を行うための前処理であり、ステップS101及びS102の処理と、ステップS103の処理は連続して行われる必要はない。
【0050】
従来手法であれば、ステップS103の操作をトリガーとして、端末装置100から電子機器200にジョブが送信され、電子機器200は当該ジョブの実行を開始する。これに対して本実施形態では、端末装置100と電子機器200との無線通信のセキュリティー強度を判定し、必要な場合には無線通信を切り替える処理が行われる。
【0051】
まず端末装置100は、ジョブ実行前の事前通信を行う(ステップS104)。具体的には、端末装置100は、第3無線通信CM3の接続状況を表す情報と、端末装置100の能力を表す情報を出力する。第3無線通信CM3の接続状況とは、具体的には第3無線通信CM3に用いられているセキュリティー規格を表す情報であり、図4の例であればWPA2を表す情報である。上述したように、第3無線通信CM3は既に確立済みであり、端末装置100にとって第3無線通信CM3に用いられているセキュリティー規格は既知の情報である。端末装置100の能力とは、具体的には端末装置100がサポートしているセキュリティー規格に関する情報であり、図4の例であれば、WPA2/WPA3を表す情報である。端末装置100の能力も、端末装置100にとって既知の情報である。ステップS104の処理は、第1無線通信CM1を用いて行われる。
【0052】
電子機器200は、取得した情報と、電子機器200自身の情報に基づいて、第1無線通信CM1のセキュリティー規格と、第2無線通信CM2のセキュリティー規格についてセキュリティー強度の判定を行う(ステップS105)。
【0053】
図6は、セキュリティー強度の判定処理を説明するフローチャートである。この処理が開始されると、電子機器200の処理部210は、まず第3無線通信CM3のセキュリティー規格が、電子機器200がサポートするセキュリティー規格のうち、最もセキュリティー強度の高い規格であるか否かを判定する(ステップS201)。なお図6では、電子機器200がサポートする最もセキュリティー強度の高い規格がWPA3である例を示している。ステップS201でYesの場合、処理部210は、第4無線通信CM4のセキュリティー規格がWPA3であるか否かを判定する(ステップS202)。第4無線通信CM4は既に確立済みであり、電子機器200にとって第4無線通信CM4に用いられているセキュリティー規格は既知の情報である。なおステップS201とS202の処理は、いずれが先に行われてもよい。
【0054】
セキュリティー強度を判定する場合、第1無線通信CM1のセキュリティー規格は、第3無線通信CM3のセキュリティー規格と第4無線通信CM4のセキュリティー規格のうち、より強度が低いセキュリティー規格と考えればよい。よってステップS201とS202の両方でYesの場合、第1無線通信CM1のセキュリティー規格はWPA3である。第1無線通信CM1のセキュリティー強度が十分高いため、処理部210は、端末装置100と電子機器200の無線通信として第1無線通信CM1を選択する(ステップS205)。
【0055】
ステップS201とS202の少なくとも一方がNoの場合、第1無線通信CM1のセキュリティー規格はWPA2、或いはそれよりもセキュリティー強度の低い規格である。そのため、無線通信を切り替えることによって、セキュリティー強度が向上する可能性がある。よって処理部210は、第2無線通信CM2のセキュリティー強度について判定する。
【0056】
具体的には、処理部210は、ステップS104で端末装置100から取得した情報に基づいて、端末装置100の能力がWPA3に対応しているか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203でNoの場合、ダイレクト接続に切り替えたとしてもWPA3を用いた無線通信を行うことができない。よって処理部210は、端末装置100と電子機器200の無線通信として、第1無線通信CM1を選択する(ステップS205)。
【0057】
ステップS203でYesの場合、ダイレクト接続である第2無線通信CM2は、WPA3を用いることが可能である。よって処理部210は、端末装置100と電子機器200の無線通信として、第2無線通信CM2を選択する(ステップS204)。
【0058】
図5に戻って説明を続ける。ステップS105において第1無線通信CM1が選択された場合、第1無線通信CM1が維持される。具体的には、電子機器200は、第1無線通信CM1のままジョブを要求する処理を行う(ステップS106)。端末装置100は、当該ジョブ要求に従ってジョブを送信する(ステップS107)。電子機器200は、送信されたジョブを実行する(ステップS108)。例えば、電子機器200は、端末装置100から送信された情報に基づいて印刷を実行する。
【0059】
一方、ステップS105において第2無線通信CM2が選択された場合、無線通信を切り替える処理が行われる。具体的には、電子機器200は、端末装置100に第2無線通信CM2への接続変更要求を送信する(ステップS109)。この際、電子機器200は、ステップS102で起動した内部アクセスポイントに接続するための情報として、当該内部アクセスポイントのSSID(Service Set Identifier)及びパスワードを送信する。ここでのSSIDは、ESSID(Extended SSID)を含む。以下、内部アクセスポイントに接続するための情報を接続情報と表記する。
【0060】
端末装置100は、取得したSSID及びパスワードを用いて内部アクセスポイントへの接続を行う(ステップS110)。電子機器200が接続を受け付けることによって、第2無線通信CM2が確立される。ステップS109、S110の処理によって、図4に示したように、第1無線通信CM1から第2無線通信CM2への切り替えが行われる。切り替え後に、端末装置100は、ジョブを送信する(ステップS111)。電子機器200は、送信されたジョブを実行する(ステップS112)。
【0061】
第2無線通信CM2に切り替えられた場合、端末装置100は外部アクセスポイントAPと接続していないことが想定される。この状態では、端末装置100は、外部アクセスポイントAPを経由した通信を行うことができない。例えば、端末装置100は、電子機器200以外の機器との接続やインターネット接続等を行えない。
【0062】
よって電子機器200の無線通信部220は、第2無線通信CM2による端末装置100との通信が終了した後、端末装置100との通信を第2無線通信CM2から第1無線通信CM1に切り替えてもよい。このようにすれば、端末装置100は、電子機器200以外の機器との通信を実行できるため、無線通信の切り替えがスムーズになる。
【0063】
具体的には、電子機器200は、ジョブの完了後、内部アクセスポイントを一旦停止する(ステップS113)。これにより、第2無線通信CM2が切断される(ステップS114)。よって端末装置100は、接続履歴のあるアクセスポイントに再接続を行う。例えば端末装置100は、外部アクセスポイントAPに再接続する(ステップS115)。電子機器200は、所与の待機時間だけ待機した後、内部アクセスポイントを再起動する(ステップS116)。ここでの待機時間は、端末装置100と外部アクセスポイントAPとの接続完了までに要する時間よりも長いと判定される時間である。このようにすれば、ジョブ完了後に端末装置100が外部アクセスポイントAPに再接続する蓋然性を高くすることが可能になる。また、ステップS116の処理によって内部アクセスポイントが起動状態となるため、再度、無線通信を第2無線通信CM2に切り替える場合に、当該切り替えをスムーズに行うことが可能になる。
【0064】
以上で説明したように、処理部210は、無線通信部220が端末装置100からのジョブの実行指示を受信した場合に、ジョブを実行する。この処理は、例えば図5のステップS107、S108、S111、S112に対応する。このようにすれば、端末装置100を用いて電子機器200にジョブを実行させることが可能になる。その際、ステップS104に示したように、処理部210は、無線通信部220が端末装置100から、ジョブの実行指示を送信する前の事前通信を受信した場合に、端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替えるか否かを判定してもよい。
【0065】
ジョブを実行する際には、端末装置100からジョブ実行に必要な情報が供給されることが想定される。例えば印刷ジョブであれば、画像情報等が送信されるため、機密性の高い情報が含まれることも考えられる。よって、ジョブ実行を無線通信の切り替え判定のトリガーとすることによって、適切なタイミングで判定を実行することが可能になる。
【0066】
また無線通信部220は、第2セキュリティー規格に関する情報を端末装置100から取得する。第2無線通信CM2は、端末装置100と電子機器200のダイレクト接続であるため、それ以外の機器によってセキュリティー強度が影響を受けることはない。しかし電子機器200からすれば、端末装置100がいずれのセキュリティー規格をサポートしているかは未知の情報であるため、そのままでは第2セキュリティー規格及びその強度を適切に判定することは難しい。ステップS104に示すように、端末装置100の情報を取得することによって、処理部210は、端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替えるか否かを適切に判定できる。
【0067】
第2セキュリティー規格に関する情報は、端末装置100がサポートするセキュリティー規格を表す端末能力情報である。処理部210は、図6に示したように、電子機器200がサポートするセキュリティー規格を表す能力情報と、端末能力情報とに基づいて、第2セキュリティー規格を判定する。このように、端末装置100と電子機器200の能力を考慮することによって、第2セキュリティー規格及びその強度を適切に判定できる。
【0068】
また無線通信部220は、端末装置100から、端末装置100と外部アクセスポイントAPとの無線通信である第3無線通信CM3のセキュリティー規格に関する情報を取得してもよい。処理部210は、無線通信部220と外部アクセスポイントAPの間の第4無線通信CM4のセキュリティー規格、及び、端末装置100から取得した情報に基づいて、第1セキュリティー規格を判定する。
【0069】
上述したように、セキュリティー強度の観点からすれば、第1無線通信CM1のセキュリティー規格は、第3無線通信CM3のセキュリティー規格と、第4無線通信CM4のセキュリティー規格のうち、セキュリティー強度が低いほうの規格と考えればよい。電子機器200にとって既知であるのは、第4無線通信CM4のセキュリティー規格のみであるため、第3無線通信CM3のセキュリティー規格を特定するための情報を端末装置100から取得することによって、第1セキュリティー規格及びその強度を適切に判定できる。
【0070】
ただし、第4無線通信CM4のセキュリティー規格がWPA2である場合、第3無線通信CM3のセキュリティー規格によらず、第1無線通信CM1のセキュリティー規格がWPA3となることはない。この場合、第3無線通信CM3のセキュリティー規格に関する判定を省略して、第2無線通信CM2のセキュリティー規格に関する判定(ステップS203)を実行してもよい。即ち、端末装置100と外部アクセスポイントAPとの無線通信のセキュリティー規格に関する情報の取得は必須ではなく、状況に応じて省略が可能である。
【0071】
また第1無線通信CM1の第1セキュリティー規格に比べて、第2無線通信CM2の第2セキュリティー規格のセキュリティー強度が高い場合に、無線通信部220は、ステップS109に示すように、第1無線通信CM1から第2無線通信CM2への接続変更要求を、端末装置100に送信する。第2無線通信CM2では、電子機器200はアクセスポイントとして動作するため、ステーションとして動作する機器からの接続要求を受け付ける必要がある。接続変更要求を送信することによって、電子機器200を起点として無線接続を切り替えることが可能になる。
【0072】
この際、無線通信部220は、第1無線通信CM1を用いて、接続変更要求を端末装置100に送信する。このようにすれば、既に確立されている接続を利用して、情報の送受信を行うことが可能になる。
【0073】
また無線通信部220は、第2無線通信CM2に用いられる接続情報を、端末装置100に送信してもよい。ここでの接続情報は、例えば内部アクセスポイントの識別情報と、パスワードを含む。識別情報は例えばSSIDである。ただし識別情報は無線通信の接続先として電子機器200を一意に特定可能な情報であればよく、MACアドレス等の他の情報が用いられてもよい。このようにすれば、端末装置100と内部アクセスポイントとの接続を適切に実現できる。
【0074】
3.変形例
以下、いくつかの変形例について説明する。
【0075】
3.1 端末装置における判定
図5では、電子機器200の処理部210において、無線通信を切り替えるか否かの判定が行われる例について説明した。しかし端末装置100が当該判定を実行してもよい。
【0076】
図7は、本変形例の処理の流れを説明する図である。図7のステップS301~S303は、図5のステップS101~S103と同様である。
【0077】
ジョブ実行操作の受付後、端末装置100は、ジョブ実行前の事前通信を行う。具体的には、端末装置100は、電子機器200の情報を要求する(ステップS304)。電子機器200は、当該要求に対する応答として、第4無線通信CM4の接続状況を表す情報と、電子機器200の能力を表す情報を送信する(ステップS305)。第4無線通信CM4の接続状況とは、具体的には第4無線通信CM4に用いられているセキュリティー規格を表す情報である。電子機器200の能力とは、電子機器200がサポートしているセキュリティー規格に関する情報である。
【0078】
端末装置100は、取得した情報と、端末装置100自身に関する情報に基づいて、第1無線通信CM1のセキュリティー規格と、第2無線通信CM2のセキュリティー規格についてセキュリティー強度の判定を行う(ステップS306)。
【0079】
ステップS306の処理は、図6と同様である。即ち、第3無線通信CM3と第4無線通信CM4のセキュリティー規格に基づいて第1無線通信CM1のセキュリティー規格が判定される。また、端末装置100の能力と電子機器200の能力に基づいて、第2無線通信CM2のセキュリティー規格が判定される。
【0080】
第1無線通信CM1が選択された場合、第1無線通信CM1が維持される。端末装置100は、第1無線通信CM1のままジョブを送信する(ステップS307)。電子機器200は、送信されたジョブを実行する(ステップS308)。
【0081】
第2無線通信CM2が選択された場合、無線通信を切り替える処理が行われる。具体的には、端末装置100は、内部アクセスポイントに接続するための接続情報を電子機器200に要求する(ステップS309)。電子機器200は、当該要求に対する応答として内部アクセスポイントのSSID及びパスワードを送信する(ステップS310)。
【0082】
SSID及びパスワード受信後の処理であるステップS311~S313は、図5のステップS110~S112と同様であるため、詳細な説明を省略する。また図7では省略しているが、ステップS313の処理後、図5のステップS113~S116と同様の処理が行われてもよい。
【0083】
以上のように、電子機器200の無線通信部220は、端末装置100から、ジョブの実行指示を送信する前の事前通信を受信した場合に、(ステップS304)、第2セキュリティー規格に関する情報と、無線通信部220と外部アクセスポイントAPの無線通信である第4無線通信CM4のセキュリティー規格に関する情報を、端末装置100に送信してもよい(ステップS305)。第2セキュリティー規格に関する情報は、電子機器200がサポートするセキュリティー規格を表す能力情報である。このように、電子機器200の情報を送信することによって、端末装置100において無線通信の切り替え判定を行うことが可能になる。
【0084】
この場合、無線通信部220は、第2無線通信CM2用の内部アクセスポイントに対する接続要求を、端末装置100から受信した場合に(ステップS311)、端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替える。
【0085】
3.2 仮内部アクセスポイント
図5図7に示す例では、電子機器200は、第1無線通信CM1を用いて、内部アクセスポイントに接続するための接続情報を端末装置100に送信する。ただし、他の通信経路を用いて接続情報が送信されてもよい。
【0086】
例えば電子機器200は、接続情報送受信用の第2内部アクセスポイントを起動してもよい。第2内部アクセスポイントは、例えばSSID及びパスワードが固定されたソフトウェアアクセスポイントである。端末装置100のアプリケーションソフトウェアは、第2内部アクセスポイントのSSID及びパスワードを保持しており、電子機器200との事前通信なしに第2内部アクセスポイントに接続することが可能である。
【0087】
例えば図5のステップS109の処理は、第2内部アクセスポイントの起動、及び当該第2内部アクセスポイントへの接続要求に置き換えられる。端末装置100は、当該接続要求を受信した場合、第2内部アクセスポイントへ接続する。電子機器200は、第2内部アクセスポイントを用いたダイレクト接続によって、接続情報を端末装置100に送信する。接続情報の送信後、電子機器200は第2内部アクセスポイントを停止し、内部アクセスポイントを再起動する。接続情報の送受信後の処理については、図5図7と同様である。
【0088】
3.3 通信規格
以上では、無線通信を切り替えるか否かの判定基準として、セキュリティー強度を用いる例を説明した。ただし、切り替えの判定基準として、セキュリティー強度に加えて他の情報が用いられてもよい。
【0089】
例えば無線通信部220は、第1無線通信CM1の第1無線通信規格に比べて、第2無線通信CM2の第2無線通信規格の通信品質が高い場合に、端末装置100との通信を第1無線通信CM1から第2無線通信CM2に切り替えてもよい。ここでの無線通信規格とは、例えば、IEEE802.11に含まれる規格であって、セキュリティー以外を決定する規格である。無線通信規格は、例えば周波数帯域、変調方式、チャンネル幅等を決定する規格であって、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11n、IEEE802.11acや、これらを発展させた規格を含む。
【0090】
例えば、IEEE802.11acは、IEEE802.11nに比べて通信速度が速い。そのため、セキュリティー強度が同じ場合、IEEE802.11acに従った無線通信は、IEEE802.11nに従った無線通信よりも優先的に選択される。この場合もセキュリティー規格の例と同様に、無線通信規格に関する情報の送受信が行われ、第1無線通信CM1における無線通信規格と、第2無線通信CM2における無線通信規格の比較によって、無線通信を切り替えるか否かの判定が行われる。
【0091】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また電子機器、端末装置、通信システム等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…通信システム、100…端末装置、110…処理部、120…無線通信部、130…表示部、140…操作部、150…報知部、160…記憶部、200…電子機器、210…処理部、220…無線通信部、221…第1無線通信部、222…第2無線通信部、230…表示部、240…操作部、250…印刷部、260…記憶部、AP…外部アクセスポイント、CM1…第1無線通信、CM2…第2無線通信、CM3…第3無線通信、CM4…第4無線通信
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7