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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240228BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L31/02 B
H01L27/146 F
H01L31/10 A
H01L31/10 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020062024
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163808
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町長 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 毅
(72)【発明者】
【氏名】大内 明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 理絵
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150174(JP,A)
【文献】特開2012-156374(JP,A)
【文献】特開2010-192815(JP,A)
【文献】特開2009-004644(JP,A)
【文献】特開2017-157755(JP,A)
【文献】特開2011-146603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子と回路基板とが導電接続部により接続された光検出装置において、
前記受光素子は、
基板と、
前記基板の一方の面に設けられた半導体層と、
前記半導体層を画素ごとに分離する第1の溝と、
前記画素となる半導体層の上に設けられた第1の電極と、
を有し、
前記導電接続部は、前記第1の電極のPt層の上のTi層と、前記Ti層の上方のAu層とを含む接続コア層と、前記接続コア層を覆うIn層と、を有し、
前記第1の電極は、半導体層の上に、Ti層とPt層とが順に積層されており、
前記導電接続部は、前記第1の電極のPt層の上に設けられている光検出装置。
【請求項2】
前記第1の電極におけるTi層の厚さは、50nm以上、100nm以下であり、
前記第1の電極におけるPt層の厚さは、50nm以上、100nm以下である請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記半導体層は、
前記基板の一方の面に設けられた第1のコンタクト層と、
前記第1のコンタクト層の上に設けられた受光層と、
前記受光層の上に設けられた第1のワイドギャップ層と、
前記第1のワイドギャップ層の上に設けられた第2のワイドギャップ層と、
前記第2のワイドギャップ層の上に設けられた第2のコンタクト層と、
を有し、
前記第1の溝は、前記第2のコンタクト層、前記第2のワイドギャップ層及び前記第1のワイドギャップ層の一部が除去された溝である請求項1または請求項に記載の光検出装置。
【請求項4】
複数の前記画素の周囲には、前記第2のコンタクト層、前記第2のワイドギャップ層、前記第1のワイドギャップ層及び受光層を除去することにより形成された第2の溝と、
前記第2の溝の底面において露出している前記第1のコンタクト層の上に設けられた第2の電極と、
前記第2の溝の周囲の前記半導体層のメサの上に設けられた配線電極と、
前記第2の電極と前記配線電極とを接続する配線と、
を有し、
前記配線電極は、Ti層とPt層とが順に積層されており、
前記導電接続部は、前記配線電極のPt層の上にも設けられている請求項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記配線は、Ti層とAu層とが順に積層されている請求項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記受光層は、InGaAsを含むものである請求項から請求項のいずれか1項に記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近赤外光を検出する光検出装置として、半導体基板の上にn電極及びp電極が形成されている近赤外光を吸収する受光素子と、信号処理基板とが、インジウムバンプ(Inバンプ)により接続されている光検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-249791号公報
【文献】特開平11-261084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、近赤外光を検出する光検出装置は低温下で使用されているが、近年、このような光検出装置を車両等に搭載することの検討がなされている。しかしながら、Inバンプを形成しているInは、融点が低いため、使用環境が高温となった場合に、Inが拡散し、受光素子と信号処理基板との間で接続不良が生じる可能性がある。
【0005】
このため、高温になっても、受光素子と信号処理基板との間における接続不良が生じることのない信頼性の高い光検出装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一観点によれば、受光素子と回路基板とが導電接続部により接続された光検出装置において、前記受光素子は、基板と、前記基板の一方の面に設けられた半導体層と、前記半導体層を画素ごとに分離する第1の溝と、前記画素となる半導体層の上に設けられた第1の電極と、を有し、前記導電接続部はInを含んでおり、前記第1の電極は、半導体層の上に、Ti層とPt層とが順に積層されており、前記導電接続部は、前記第1の電極のPt層の上に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の光検出装置によれば、高温になっても、受光素子と信号処理基板との間における接続不良の発生を防ぐことができ、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、光検出装置の断面図である。
図2図2は、図1に示す光検出装置に用いられる電極の説明図(1)である。
図3図3は、図1に示す光検出装置に用いられる電極の説明図(2)である。
図4図4は、図1に示す光検出装置について信頼性試験を行った結果の説明図である。
図5図5は、本開示の実施形態の光検出装置の断面図である。
図6図6は、本開示の実施形態の光検出装置の近赤外光が入射する側の平面図である。
図7図7は、本開示の実施形態の光検出装置に用いられる電極の説明図(1)である。
図8図8は、本開示の実施形態の光検出装置に用いられる電極の説明図(2)である。
図9図9は、図1に示す光検出装置のInの拡散を説明する説明図である。
図10図10は、本開示の実施形態の光検出装置のInの拡散を説明する説明図である。
図11図11は、本開示の実施形態の光検出装置においてp電極に導電接続部が形成されている部分の上面図である。
図12図12は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(1)である。
図13図13は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(2)である。
図14図14は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(3)である。
図15図15は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(4)である。
図16図16は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(5)である。
図17図17は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(6)である。
図18図18は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(7)である。
図19図19は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(8)である。
図20図20は、本開示の実施形態の光検出装置の製造方法の工程図(9)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る光検出装置は、受光素子と回路基板とが導電接続部により接続された光検出装置において、前記受光素子は、基板と、前記基板の一方の面に設けられた半導体層と、前記半導体層を画素ごとに分離する第1の溝と、前記画素となる半導体層の上に設けられた第1の電極と、を有し、前記導電接続部はInを含んでおり、前記第1の電極は、半導体層の上に、Ti層とPt層とが順に積層されており、前記導電接続部は、前記第1の電極のPt層の上に設けられている。
【0012】
これにより、受光素子と回路基板とが接続されている導電接続部に含まれるInが拡散することを抑制することができ、信頼性を向上させることができる。
【0013】
〔2〕 前記導電接続部は、前記第1の電極のPt層の上のTi層と、前記Ti層の上方のAu層とを含む接続コア層と、前記接続コア層を覆うIn層と、を有する。
【0014】
これにより、In層に含まれるInの拡散を抑制するとともに、AuとInとの合金化により密着性を高めることができ、溶融したInの位置を安定にすることができる。
【0015】
〔3〕 前記第1の電極におけるTi層の厚さは、50nm以上、100nm以下であり、前記第1の電極におけるPt層の厚さは、50nm以上、100nm以下である。
【0016】
これにより、光検出装置の信頼性をより一層高めることができる。
【0017】
〔4〕 前記半導体層は、前記基板の一方の面に設けられた第1のコンタクト層と、前記第1のコンタクト層の上に設けられた受光層と、前記受光層の上に設けられた第1のワイドギャップ層と、前記第1のワイドギャップ層の上に設けられた第2のワイドギャップ層と、前記第2のワイドギャップ層の上に設けられた第2のコンタクト層と、を有し、前記第1の溝は、前記第2のコンタクト層、前記第2のワイドギャップ層及び前記第1のワイドギャップ層の一部が除去された溝である。
【0018】
これにより、受光素子における暗電流を小さくすることができ、S/Nを向上させることができる。
【0019】
〔5〕 複数の前記画素の周囲には、前記第2のコンタクト層、前記第2のワイドギャップ層、前記第1のワイドギャップ層及び受光層を除去することにより形成された第2の溝と、前記第2の溝の底面において露出している前記第1のコンタクト層の上に設けられた第2の電極と、前記第2の溝の周囲の前記半導体層のメサの上に設けられた配線電極と、前記第2の電極と前記配線電極とを接続する配線と、を有し、前記配線電極は、Ti層とPt層とが順に積層されており、前記導電接続部は、前記配線電極のPt層の上にも設けられている。
【0020】
これにより、受光素子と回路基板とが接続されている導電接続部に含まれるInが拡散することを抑制することができ、信頼性を向上させることができる。
【0021】
〔6〕 前記配線は、Ti層とAu層とが順に積層されている。
【0022】
配線にAuを用いた場合であっても、配線電極の上のInは拡散しないため、信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0023】
〔7〕 前記受光層は、InGaAsを含むものである。
【0024】
これにより、信頼性の高い近赤外光を検出することのできる光検出装置を得ることができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0026】
最初に、図1に基づき受光素子900と信号処理基板90とが、Inバンプ80により接合されている光検出装置について説明する。
【0027】
図1に示される光検出装置の受光素子900は、基板10の一方の面10aの上に、n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23、p型ワイドギャップ層24、p型コンタクト層25が積層して形成されている。尚、基板10の他方の面10bには、SiN等により反射防止膜31が形成されている。
【0028】
基板10は、厚さが約350μmであり、不純物元素としてFe(鉄)がドープされており半絶縁化されている。n型コンタクト層21は、膜厚が約2μmのn-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1018cm-3の濃度でドープされている。受光層22は、膜厚が約3.5μmの不純物元素がドープされていないIn0.53Ga0.47Asにより形成されており、室温におけるバンドギャップは、0.75eVである。尚、受光層22には不純物元素がドープされていないため、含まれる不純物元素の濃度が、1×1015cm-3以下である。
【0029】
n型ワイドギャップ層23は、膜厚が約0.5μmのn-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1015cm-3の濃度でドープされている。p型ワイドギャップ層24は、膜厚が約0.2μmのp-InPにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約2×1015cm-3の濃度でドープされている。これにより、n型ワイドギャップ層23とp型ワイドギャップ層24との界面にはpn接合が形成される。p型コンタクト層25は、膜厚が約0.1μmのp-InGaAsにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約1×1019cm-3の濃度でドープされている。
【0030】
図1に示される光検出装置の受光素子900には、画素分離するための第1の溝71と、n型コンタクト層21を露出させるための第2の溝72が形成されている。第1の溝71は、p型コンタクト層25、p型ワイドギャップ層24、n型ワイドギャップ層23の一部を除去することにより形成されており、底面においてn型ワイドギャップ層23が露出している。このように第1の溝71を形成することにより、画素ごとにメサ70が形成され画素分離される。p型コンタクト層25の上には、p電極50が形成されている。
【0031】
第2の溝72は、更に、n型ワイドギャップ層23、受光層22を除去することにより形成されており、底面において、n型コンタクト層21が露出している。露出したn型コンタクト層21の上には、n電極40が形成されている。
【0032】
露出しているp型コンタクト層25及びn型ワイドギャップ層23、n型コンタクト層21の上、p型コンタクト層25、p型ワイドギャップ層24、n型ワイドギャップ層23、受光層22の側面には、パッシベーション膜30が形成されている。パッシベーション膜30はSiNにより形成されている。
【0033】
第2の溝72により、画素領域11と電極接続領域12に分離されており、電極接続領域12では、p型コンタクト層25の上は、パッシベーション膜30を介し、配線電極60が形成されている。電極接続領域12における配線電極60と、n型コンタクト層21の上のn電極40とは、配線61により接続されている。尚、配線61は、配線電極60の一部、n電極40、配線電極60とn電極40との間のメサ73の電極接続領域12の側面を覆っているパッシベーション膜30の上に形成される。
【0034】
図1に示される光検出装置は、受光素子900に設けられたp電極50及び配線電極60と、信号処理基板90に設けられた不図示の電極とが、Inバンプ80により接続されている。Inバンプ80はInにより形成されており、導電性を有しているため、Inバンプ80により受光素子900と信号処理基板90とが電気的に接続される。
【0035】
図2は、信号処理基板90に接続される前の状態の受光素子900の画素領域11におけるp電極50及びInバンプ80の拡大図であり、図3は、電極接続領域12における配線電極60及びInバンプ80の拡大図である。
【0036】
p電極50及び配線電極60は、Ti(チタン)層51、Ni(ニッケル)層52、Au(金)層53を順に積層した金属積層膜により形成されている。尚、図示はしないが、n電極40についても同様に、Ti層51、Ni層52、Au層53を順に積層した金属積層膜により形成されている。Ti層51の膜厚は50nmであり、Ni層52の膜厚は100nmであり、Au層53の膜厚は30nmである。配線61は、Ti層62、Au層63とを順に積層した積層金属膜により形成されている。
【0037】
信号処理基板90と受光素子900とをInバンプ80により接続する際には、Inバンプ80に含まれるInの一部が、p電極50及び配線電極60におけるAu層53の内部に進入して拡散し、一部が合金化される。このように、Inバンプ80に含まれるInの一部が、Au層53の内部に拡散し合金化されることにより、Inバンプ80とAu層53との密着性を高めることができる。
【0038】
ところで、図1に示される光検出装置を、車両や衛星などに搭載した場合、使用環境が比較的高温になる場合があることから、光検出装置の信頼性試験は、例えば125℃の温度で1000時間の高温放置試験がある。このような信頼性試験において、光検出装置が長時間高温状態におかれると、Inバンプ80を形成しているInのp電極50及び配線電極60におけるAu層53の内部への拡散が増加する。このため、信号処理基板90と受光素子900との接続に寄与しているInバンプ80は徐々に減少し、図4に示されるように、信号処理基板90の不図示の電極から、Inバンプ80が離れてしまう場合がある。この場合になると、受光素子900と信号処理基板90との間における接続不良が生じ、光検出装置としての機能が失われてしまう。
【0039】
即ち、従来の近赤外光を検出するための光検出装置は、一般に冷却して用いられており、車両等に搭載することは想定されてはいなかった。Inバンプを形成しているInの融点は比較的低く、156.6℃である。このため、長時間、100℃以上の温度の環境下におかれると、InのAu層53の内部への拡散が進行し、Inバンプ80が減少し、受光素子と信号処理基板との間に接続不良が生じ、光検出装置としての機能が失われてしまう。
【0040】
(光検出装置)
次に、本実施の形態における光検出装置について説明する。本実施の形態における光検出装置は、受光素子100と信号処理基板90とがInを含む導電接続部180により接続されている。本願においては、信号処理基板90を回路基板と記載する場合がある。図5は、本実施の形態における光検出装置の要部の断面構造を示し、図6は、光が入射する受光素子100側から見た平面図である。受光素子100は、縦が4.3mm、横が13.9mmの大きさであり、90μmピッチで、32×128画素が形成されている。その他の例としては、30μmピッチで256×320画素、15μmピッチで512×640画素がある。
【0041】
本実施の形態における光検出装置の受光素子100は、基板10の一方の面10aの上に、n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23、p型ワイドギャップ層24、p型コンタクト層25が積層して形成されている。尚、基板10の他方の面10bには、SiN等により反射防止膜31が形成されている。本願においては、n型コンタクト層21を第1のコンタクト層と記載し、p型コンタクト層25を第2のコンタクト層と記載する場合がある。また、n型ワイドギャップ層23を第1のワイドギャップ層と記載し、p型ワイドギャップ層24を第2のワイドギャップ層と記載する場合がある。
【0042】
受光素子100には、画素分離するための第1の溝71と、n型コンタクト層21を露出させるための第2の溝72が形成されている。第1の溝71は、p型コンタクト層25、p型ワイドギャップ層24、n型ワイドギャップ層23の一部を除去することにより形成されており、底面においてn型ワイドギャップ層23が露出している。このように第1の溝71を形成することにより、画素ごとにメサ70が形成され画素分離される。p型コンタクト層25の上には、p電極150が形成されている。
【0043】
第2の溝72は、更に、n型ワイドギャップ層23、受光層22を除去することにより形成されており、底面において、n型コンタクト層21が露出している。露出したn型コンタクト層21の上には、n電極140が形成されている。本願においては、p電極150を第1の電極と記載し、n電極140を第2の電極と記載する場合がある。
【0044】
第2の溝72により、画素領域11と電極接続領域12に分離されている。電極接続領域12には、メサ73が形成され、メサ73の上面のp型コンタクト層25の上は、パッシベーション膜30が形成されており、パッシベーション膜30の上には配線電極160が形成されている。電極接続領域12におけるパッシベーション膜30の上の配線電極160と、n型コンタクト層21の上のn電極140とは、配線61により接続されている。尚、配線61は、配線電極160の一部、n電極140、配線電極160とn電極140との間の電極接続領域12のメサ73の側面を覆うパッシベーション膜30の上に形成される。
【0045】
図7は、信号処理基板90に接続される前の状態の受光素子100の画素領域11におけるp電極150及び導電接続部180の拡大図であり、図8は、電極接続領域12における配線電極160及び導電接続部180の拡大図である。
【0046】
本実施の形態における光検出装置においては、p電極150及び配線電極160は、Ti層151、Pt(白金)層152を順に積層した金属積層膜により形成されている。尚、ここでは、図示はしないが、n電極140についても、Ti層151、Pt層152を順に積層した金属積層膜により形成されている。Ti層151の厚さは、50nm以上、100nm以下が好ましく、Pt層152の厚さは、50nm以上、100nm以下が好ましい。Ti層151及びPt層152は、均一な膜を得るためには、ある程度の厚さが必要であるが、厚すぎると膜の応力が大きくなるため好ましくない。本実施形態においては、Ti層151の膜厚は50nmであり、Pt層152の膜厚は80nmである。
【0047】
導電接続部180は、p電極150及び配線電極160のPt層152の上に形成されており、Pt層152の上に設けられた接続コア層181と、In(インジウム)層185とを有している。接続コア層181は、p電極150及び配線電極160のPt層152の上に、Ti層182、Ni層183、Au層184が順に積層された金属積層膜により形成されている。In層185は、接続コア層181の上面及び側面を覆うように形成されている。
【0048】
TiとPtとは密着性が高いため、接続コア層181のTi層182は、p電極150及び配線電極160のPt層152の上に形成されており、Ti層182とPt層152とは接触している。
【0049】
本実施の形態における光検出装置においては、信号処理基板90と受光素子100とが導電接続部180により接続されている。導電接続部180により接続する際には、導電接続部180のIn層185に含まれるInの一部が、接続コア層181のAu層184の内部に進入し、更に拡散して、一部が合金化される。このように、In層185に含まれるInの一部がAu層184の内部に拡散し合金化されることにより、In層185とAu層184との密着性を高めることができる。
【0050】
また、導電接続部180は、p電極150及び配線電極160のPt層152の上に形成されているため、導電接続部180のIn層185に含まれるInの一部が、Pt層152に進入し拡散することはない。このため、長時間高温状態におかれても、導電接続部180のIn層185におけるInが進入するのは、狭いAu層184のみであり、導電接続部180のIn層185の減少は極めて少ない。従って、長時間高温状態が続いても、配線電極160を介した信号処理基板90の不図示の電極と、p電極150及び配線電極160との電気的な接続が維持されるため、車両等に搭載された場合における信頼性を向上させることができる。
【0051】
例えば、図1に示される光検出装置では、長時間高温状態におかれた場合、図9の破線矢印に示されるように、電極接続領域12におけるInバンプ80のInは、配線電極60のAu層53の内部に進入し拡散する。このInの拡散は、更に、配線61のAu層63まで進行する場合がある。
【0052】
これに対し、本実施の形態における光検出装置では、長時間高温状態におかれた場合、図10の破線矢印に示されるように、導電接続部180のIn層185のInは、Au層184の内部に進入し拡散する。上面視したAu層184の面積は、配線電極160の面積に比べて十分小さく、Au層184に進入するInの量は限定的である。また、導電接続部180は、配線電極160のPt層152の上に形成されているため、導電接続部180のIn層185のInが、配線電極160のPt層152に進入することはない。
【0053】
図11は、図7に示される画素領域11における1つの画素を上面から見た上面図である。図11に示されるように、画素領域11における画素の各々には、一辺が約85μmの略正方形のメサ70の上面に、一辺が約73μmの略正方形のp電極150が形成されており、p電極150の上の中央部分には導電接続部180が形成されている。尚、導電接続部180の直径は約30μmである。
【0054】
(光検出装置の製造方法)
次に、本実施の形態における光検出装置の製造方法について、図12から図20に基づき説明する。
【0055】
最初に、図12に示されるように、基板10の一方の面10aに、エピタキシャル成長により、n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23、p型ワイドギャップ層24、p型コンタクト層25を順に形成する。上記の化合物半導体のエピタキシャル成長には、MOVPE(Metalorganic vapor phase epitaxy:有機金属気相エピタキシャル成長)法が用いられる。
【0056】
基板10は、厚さが約350μmであり、不純物元素としてFeがドープされており半絶縁化されている。n型コンタクト層21は、膜厚が約2μmのn-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1018cm-3の濃度でドープされている。受光層22は、膜厚が約3.5μmのノンドープのIn0.53Ga0.47Asにより形成されており、バンドギャップは、0.75eVである。
【0057】
n型ワイドギャップ層23は、膜厚が約0.5μmのn-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1015cm-3の濃度でドープされている。p型ワイドギャップ層24は、膜厚が約0.2μmのp-InPにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約5×1018cm-3の濃度でドープされている。p型コンタクト層25は、膜厚が約0.1μmのp-InGaAsにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約1×1019cm-3の濃度でドープされている。
【0058】
次に、図13に示されるように、画素分離のための第1の溝71を形成する。具体的には、p型コンタクト層25の上に、プラズマCVDにより膜厚が100nmの不図示のSiN膜を成膜し、成膜されたSiN膜の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、不図示のレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、第1の溝71が形成される領域に開口部を有しており、レジストパターンの開口部におけるSiN膜をバッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより除去することにより、SiN膜によりマスクを形成する。この後、不図示のレジストパターンを有機溶剤等により除去する。この後、SiN膜が除去された領域のp型コンタクト層25、p型ワイドギャップ層24、n型ワイドギャップ層23の一部をRIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングにより除去する。これにより、画素分離するための第1の溝71を形成する。尚、この工程において、後述する第2の溝72が形成される領域の半導体層も同様に除去される。この後、不図示のSiN膜はバッファードフッ酸により除去する。
【0059】
第1の溝71の深さは約0.6μmであり、幅Wは約5μmであり、底面においてn型ワイドギャップ層23が露出している。このように、第1の溝71を形成することにより、第1の溝71により分離されたメサ70により、各々の画素が形成される。各々の画素は、例えば、縦方向に90μmピッチで128個、横方向に90μmピッチで32個、計4096個形成されている。
【0060】
次に、図14に示されるように、基板10の外周に沿って第2の溝72を形成する。具体的には、p型コンタクト層25等の上に、プラズマCVDにより膜厚が100nmの不図示のSiN膜を成膜し、成膜されたSiN膜の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、不図示のレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、第2の溝72が形成される領域に開口部を有しており、レジストパターンの開口部におけるSiN膜をバッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより除去することにより、SiN膜によりマスクを形成する。この後、不図示のレジストパターンを有機溶剤等により除去し、更に、SiN膜が除去された領域のn型ワイドギャップ層23、受光層22をRIE等のドライエッチングにより除去することにより、n型コンタクト層21の表面を露出させる。この後、不図示のSiN膜はバッファードフッ酸により除去する。これにより、第2の溝72の外側には、メサ73が形成される。
【0061】
次に、図15に示されるように、パッシベーション膜30を形成する。具体的には、全面に、プラズマCVDにより膜厚が100nmの不図示のSiN膜を成膜し、成膜されたSiN膜の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、不図示のレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、n電極140及びp電極150が形成される領域に開口部を有しており、レジストパターンの開口部におけるSiN膜をRIE等のドライエッチングにより除去する。これにより、メサ70の上面のp型コンタクト層25の表面及びn型コンタクト層21の表面を露出させる。
【0062】
次に、図16に示されるように、n型コンタクト層21の上にn電極140を形成し、p型コンタクト層25の上にp電極150を形成し、外周のメサ73の上に、パッシベーション膜30を介し配線電極160を形成する。n電極140、p電極150、配線電極160は、リフトオフ法により形成する。具体的には、各々の電極が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成し、EB蒸着によりTi層151、Pt層152が順に積層された金属積層膜を成膜した後、有機溶剤等に浸漬させる。これにより、レジストパターンとともにレジストパターンの上の金属積層膜を除去し、残存している金属積層膜により、n電極140、p電極150、配線電極160を形成する。
【0063】
次に、図17に示されるように、n電極140と配線電極160とを接続する配線61をリフトオフ法により形成する。配線61は、膜厚が約50nmのTi層62と、膜厚が約600nmのAu層63の積層膜により形成されている。この後、基板10の他方の面10bを研磨により鏡面にする。
【0064】
次に、図18に示されるように、基板10の他方の面10bにSiN膜により反射防止膜31を形成する。反射防止膜31は、プラズマCVDにより、SiN膜を成膜することにより形成されており、屈折率が約1.71~1.83であり、膜厚が140~160nmである。
【0065】
次に、図19に示されるように、p電極150及び配線電極160の上に、導電接続部180をリフトオフ法により形成する。具体的には、導電接続部180が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成し、EB蒸着によりTi層182、Ni層183、Au層184、In層185が順に積層された金属積層膜を成膜する。この後、有機溶剤等に浸漬させることにより、レジストパターンとともにレジストパターンの上の金属積層膜を除去する。これにより、残存している金属積層膜により、Ti層182、Ni層183、Au層184、In層185が形成され、導電接続部180が形成される。尚、リフトオフ法により、導電接続部180を形成する際に用いられるレジストパターンは、開口部よりも奥が広くなっている逆テーパのレジストパターンである。このため、In層185は、Ti層182、Ni層183、Au層184により形成される接続コア層181を覆うように形成される。このように形成される導電接続部180は、高さが約6~9μmである。
【0066】
この後、チップに分割することにより受光素子100を形成し、図20に示されるように、受光素子100の導電接続部180と、信号処理基板90の不図示の電極とを仮圧着により接合した後、170℃~180℃の温度でリフローする。これにより、In層185のInを溶融させて、受光素子100の導電接続部180と、信号処理基板90の不図示の電極とを接合し、電気的に接続する。尚、リフローの際には、In層185の溶融したInは、表面張力等により接続コア層181の周囲に存在するため、信号処理基板90の不図示の電極と接合する際には、セルフアライメントがなされる。
【0067】
本実施の形態における光検出装置では、信号処理基板90が接合されていない基板10の他方の面10b側より反射防止膜31を介し入射した近赤外光を検出する。
【0068】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 基板
10a 一方の面
10b 他方の面
11 画素領域
12 電極接続領域
21 n型コンタクト層
22 受光層
23 n型ワイドギャップ層
24 p型ワイドギャップ層
25 p型コンタクト層
30 パッシベーション膜
31 反射防止膜
40 n電極
50 p電極
51 Ti層
52 Ni層
53 Au層
60 配線電極
61 配線
62 Ti層
63 Au層
70 メサ
71 第1の溝
72 第2の溝
73 メサ
80 Inバンプ
90 信号処理基板
100 受光素子
140 n電極
150 p電極
151 Ti層
152 Pt層
160 配線電極
180 導電接続部
181 接続コア層
182 Ti層
183 Ni層
184 Au層
185 In層
900 受光素子
図1
図2
図3
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