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  • 特許-帯電装置及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】帯電装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20240228BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G15/02 103
G03G21/00 512
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020070192
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167854
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 克哉
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-199094(JP,A)
【文献】特開2005-258309(JP,A)
【文献】特開2010-019936(JP,A)
【文献】特開2019-101151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に接触又は対向し、前記像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、
直流電圧と交流電圧が重畳された振動電圧を前記帯電部材に印加する高圧発生回路と、
前記交流電圧のピーク間電圧値Vppを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ピーク間電圧値Vppと、前記帯電部材と前記像担持体との間の直流電流値Idcと、の関係を表す2次元座標上の想定特性曲線を表す変数として、前記ピーク間電圧値Vppを昇圧したときに現れる変曲点の電圧値より低圧側と想定される異なる2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と、前記変曲点の電圧値より高圧側と想定される高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とが、前記帯電部材の帯電特性の変動要因と対応させて予め設定されたテーブルデータと、
前記変動要因に対応する前記2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とを前記テーブルデータから取得し、
取得された前記2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)を示す前記交流電圧が重畳された前記振動電圧を前記高圧発生回路が前記帯電部材に印加したときに計測される直流電流値Idc(A),Idc(B)を表す座標A(Vpp(A),Idc(A))、B(Vpp(B),Idc(B))を通る直線L1と、
取得された前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を示す前記交流電圧が重畳された前記振動電圧を前記高圧発生回路が前記帯電部材に印加したときに計測される直流電流値Idc(C)を表す座標C(Vpp(C),Idc(C))を通り、前記ピーク間電圧値Vppを表す座標軸に平行な直線L2と、
の交点に対応するピーク間電圧値Vppを、適正ピーク間電圧値Vpp(O)として設定する電圧制御部と、
前記帯電部材の電気抵抗値が上限に達した場合の前記適正ピーク間電圧値Vpp(O)の近傍に前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を設定し、前記電圧制御部により設定された前記適正ピーク間電圧値Vpp(O)が前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)以上となった場合に、前記帯電部材が寿命に達したと判定する寿命判定部と、を備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記変動要因として前記帯電装置の周辺の温度を計測する温度計測部と、
前記変動要因として前記帯電装置の周辺の湿度を計測する湿度計測部と、を備え、
前記電圧制御部は、計測された前記温度と前記湿度に対応する前記2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とを前記テーブルデータから取得することを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記像担持体は、アモルファスシリコン膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帯電装置と、
前記寿命判定部による判定の結果を表す情報を表示する表示部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帯電装置と、
前記寿命判定部による判定の結果を表す情報を送信する送信部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置及び帯電装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において感光体を帯電させる装置として、直流成分と交流成分を重畳したバイアス電圧を帯電部材に印加する帯電装置が知られている。この帯電装置によれば、交流成分のピーク間電圧値Vppが直流成分による帯電開始電圧の2倍に達すると、感光体における帯電電位が収束するため、感光体を均一に帯電させることが可能となる。
【0003】
上記の帯電装置においては、帯電部材の特性のばらつき、周辺環境の変動、像担持体の種類等により、適正なピーク間電圧値を設定することが難しいという問題があった。そこで、特許文献1では、ピーク間電圧値Vppと、帯電部材と像担持体との間の直流電流値Idcと、の関係を表す2次元座標上の想定特性曲線を用いて適正ピーク間電圧値を設定する帯電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-199094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案された帯電装置では、高電圧印加による通電が長期にわたって反復されることで電気抵抗値及び放電開始電圧が上昇した場合であっても適正ピーク間電圧値を設定することができる。ところが、帯電部材の電気抵抗値が限界を超えると、帯電部材から像担持体への放電が不安定になるため、画質が不均一になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、帯電部材の電気抵抗値を計測せずに帯電部材の寿命を判定することのできる帯電装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る帯電装置は、像担持体に接触又は対向し、前記像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、直流電圧と交流電圧が重畳された振動電圧を前記帯電部材に印加する高圧発生回路と、前記交流電圧のピーク間電圧値Vppを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ピーク間電圧値Vppと、前記帯電部材と前記像担持体との間の直流電流値Idcと、の関係を表す2次元座標上の想定特性曲線を表す変数として、前記ピーク間電圧値Vppを昇圧したときに現れる変曲点の電圧値より低圧側と想定される異なる2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と、前記変曲点の電圧値より高圧側と想定される高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とが、前記帯電部材の帯電特性の変動要因と対応させて予め設定されたテーブルデータと、 前記変動要因に対応する前記2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とを前記テーブルデータから取得し、取得された前記2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)を示す前記交流電圧が重畳された前記振動電圧を前記高圧発生回路が前記帯電部材に印加したときに計測される直流電流値Idc(A),Idc(B)を表す座標A(Vpp(A),Idc(A))、B(Vpp(B),Idc(B))を通る直線L1と、取得された前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を示す前記交流電圧が重畳された前記振動電圧を前記高圧発生回路が前記帯電部材に印加したときに計測される直流電流値Idc(C)を表す座標C(Vpp(C),Idc(C))を通り、前記ピーク間電圧値Vppを表す座標軸に平行な直線L2と、の交点に対応するピーク間電圧値Vppを、適正ピーク間電圧値Vpp(O)として設定する電圧制御部と、前記帯電部材の電気抵抗値が上限に達した場合の前記適正ピーク間電圧値Vpp(O)の近傍に前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を設定し、前記電圧制御部により設定された前記適正ピーク間電圧値Vpp(O)が前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)以上となった場合に、前記帯電部材が寿命に達したと判定する寿命判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る帯電装置において、前記変動要因として前記帯電装置の周辺の温度を計測する温度計測部と、前記変動要因として前記帯電装置の周辺の湿度を計測する湿度計測部と、
を備え、前記電圧制御部は、計測された前記温度と前記湿度に対応する前記2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と前記高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とを前記テーブルデータから取得するように構成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る帯電装置において、前記像担持体は、アモルファスシリコン膜を有していてもよい。
【0010】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記のいずれかの帯電装置と、前記寿命判定部による判定の結果を表す情報を表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記のいずれかの帯電装置と、前記寿命判定部による判定の結果を表す情報を送信する送信部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、帯電部材の電気抵抗値を計測せずに帯電部材の寿命を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る帯電装置のブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るピーク間電圧値Vppと直流電流値Idcとの関係を表す想定特性曲線である。
図3A】直流電圧値Vdc、温度、湿度を固定した場合の特性曲線である。
図3B】温度を変化させた場合の特性曲線である。
図3C】湿度を変化させた場合の特性曲線である。
図4】本発明の一実施形態に係るテーブルデータを示す表である。
図5】本発明の一実施形態に係る制御部4が実行する寿命判定処理の手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の帯電装置11について説明する。
【0015】
図1は、帯電装置11のブロック図である。画像形成装置10は、電子写真方式にてトナー像を形成するプリンターであり、像担持体1、帯電装置11、露光装置、現像装置、転写ローラー、定着装置等を備える。
【0016】
像担持体1は、アルミニウム製シリンダの表面に正帯電性光導電体であるアモルファスシリコン層が蒸着された感光体を有する感光体ドラムを備え、駆動装置(図示省略)により中心支軸を中心に定速回転駆動される。
【0017】
帯電装置11は、像担持体1に接触するように配置され、像担持体1の表面を帯電させる帯電部材2と、直流電圧と交流電圧が重畳された振動電圧を帯電部材2に印加する高圧発生回路3と、交流電圧のピーク間電圧値Vppを制御する制御部4と、を備える。
【0018】
帯電部材2は、芯金2aと、芯金2aを被覆する導電性を有する弾性材料であるエクロルヒドリンゴム層2bと、を備えている。
【0019】
高圧発生回路3は、昇圧トランスを用いてパルス状に変調した低圧直流電圧から所定の正弦波の交流電圧を発生させる交流定電圧電源3cと、昇圧トランスを用いてパルス状に変調した低圧直流電圧から発生させた正弦波の交流電圧を整流手段により整流し所定の直流電圧を発生させる直流定電圧電源3bと、帯電部材2と像担持体1間の直流電流値Idcを計測検出する直流電流計測部3aと、を備えている。
【0020】
制御部4は、テーブルデータ格納部4bと、電圧制御部4aと、寿命判定部4cと、電子データ作成部4dと、を備える。制御部4は、集積回路等のハードウェアによって実現されてもよく、プロセッサーとソフトウェアとによって実現されてもよく、これらの組み合わせによって実現されてもよい。プロセッサーは、メモリーに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリーは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。メモリーには、画像形成装置10の各部の制御に用いられる制御プログラムが記憶される。
【0021】
外部のコンピューター等から画像形成装置10に画像形成ジョブが入力されると、帯電装置11が像担持体1を所定の電位に帯電させ、露光装置が像担持体1に潜像を書き込み、現像装置がトナーを用いて潜像を現像することでトナー像を形成し、転写ローラーがトナー像をシートに転写し、定着装置がトナー像を加熱してシートに定着させる。
【0022】
図2は、ピーク間電圧値Vppと直流電流値Idcとの関係を表す想定特性曲線である。テーブルデータ格納部4bは、帯電部材2の帯電特性の変動要因に対応する適正ピーク間電圧値Vpp(O)を求めるために用いられるデータが設定されたテーブルデータを格納している。帯電部材2の帯電特性の変動要因は、例えば、温度と湿度である。
【0023】
具体的には、テーブルデータには、ピーク間電圧値Vppと、帯電部材2と像担持体1との間の直流電流値Idcと、の関係を表す2次元座標上の想定特性曲線を表す変数として、ピーク間電圧値Vppを昇圧したときに現れる変曲点の電圧値より低圧側と想定される異なる2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と、変曲点の電圧値より高圧側と想定される高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とが、帯電部材2の帯電特性の変動要因と対応させて予め設定されている。ただし、変曲点とは、ピーク間電圧値Vppを昇圧した場合に想定特性曲線の傾きが正から実質的に0に転じる点を意味する。なお、テーブルデータの詳しい内容については、後述する。
【0024】
電圧制御部4aは、画像形成装置10による画像形成処理の期間外に、温度計測部5、湿度計測部6により計測された帯電部材2近傍の温度と湿度を取得する。具体的には、電圧制御部4aは、変動要因に対応する2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)とをテーブルデータから取得し、取得された2つの低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)を示す交流電圧が重畳された振動電圧を高圧発生回路3が帯電部材2に印加したときに計測される直流電流値Idc(A),Idc(B)を表す座標A(Vpp(A),Idc(A))、B(Vpp(B),Idc(B))を通る直線L1と、取得された高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を示す交流電圧が重畳された振動電圧を高圧発生回路3が帯電部材2に印加したときに計測される直流電流値Idc(C)を表す座標C(Vpp(C),Idc(C))を通り、ピーク間電圧値Vppを表す座標軸に平行な直線L2と、の交点に対応するピーク間電圧値Vppを、適正ピーク間電圧値Vpp(O)として設定する。
【0025】
寿命判定部4cは、高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)と適正ピーク間電圧値Vpp(O)とを用いて帯電部材2の寿命を判定し、判定結果を電子データ作成部4dに送る。寿命判定処理の詳しい内容については、後述する。
【0026】
電子データ作成部4dは、寿命判定部4cが判定した結果を表す電子データを作成する。電子データは、表示部7に表示させる画像を表す画像データ、及び送信部8により送信される電子メールデータである。
【0027】
表示部7は、例えば、液晶表示パネルであり、電子データ作成部4dが作成した画像データを受け取り、受け取った画像データを用いて画像を表示する。
【0028】
送信部8は、例えば、通信インターフェイスであり、電子データ作成部4dが作成した電子メールデータを受け取り、受け取った電子メールデータを所定の宛先に送信する。所定の宛先は、例えば画像形成装置10の保守を担当する事業者のメールアドレスである。
【0029】
次に、帯電部材2の電気抵抗値と適正ピーク間電圧値Vpp(O)との関係について説明する。帯電部材2はエクロルヒドリンゴム層2bを備えているため、高電圧印加による通電が長期にわたって反復されることでイオン導電剤が偏在し、電気抵抗値が上昇する。電気抵抗値が上昇すると放電開始電圧も上昇するため、適正ピーク間電圧値Vpp(O)も上昇する。ところが、放電開始電圧がリーク放電限界を超えると、帯電部材2から像担持体1への放電が不安定になるため、画質が不均一になるおそれがある。そこで、放電開始電圧がリーク放電限界に達したときの電気抵抗値を上限電気抵抗値と定め、上限電気抵抗値に達した場合に、帯電部材2が寿命に達したと判断することができる。
【0030】
実験によると、温湿度23℃/50%における帯電部材2の初期の電気抵抗値(初期電気抵抗値)は、約5.0[logΩ・cm]であった。また、温湿度23℃/50%における上限電気抵抗値は、6.5[logΩ・cm]であった。従って、温湿度23℃/50%における電気抵抗値が6.5[logΩ・cm]に達した場合に、帯電部材2が寿命に達したと判断することができる。
【0031】
しかしながら、供用中の画像形成装置10において帯電部材2の電気抵抗値を計測することは困難である。そこで、本実施形態では、寿命判定部4cが、ピーク間電圧値Vppと直流電流値Idcとの関係を表す特性曲線の変曲点を利用して、帯電部材2の寿命を判定する。
【0032】
図3Aは、直流電圧値Vdc、温度、湿度を固定した場合の特性曲線である。直流電圧値Vdcは、400[V]、温湿度は、23℃/50%である。電気抵抗値の条件は、初期電気抵抗値と上限電気抵抗値である。直流電流値Idcは、帯電部材2から像担持体1への放電量であるから、像担持体1の表面電位と相関があると考えられる。特性曲線には変曲点が存在する。初期電気抵抗値の場合、変曲点のVppは1000Vであり、上限電気抵抗値の場合、変曲点のVppは1600Vである。いずれも、変曲点以上のピーク間電圧値Vppでは直流電流値Idcが安定していることから、初期電気抵抗値から上限電気抵抗値までの範囲内では、像担持体1の表面電位の安定性及び均一性が保たれると考えられる。一方、変曲点のVppが1600V以上になった場合には、帯電部材2の電気抵抗値が上限電気抵抗値を超えているため、像担持体1の表面電位の安定性及び均一性が保たれなくなると考えられる。
【0033】
よって、高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を1600Vの近傍の値に設定することにより、適正ピーク間電圧値Vpp(O)がVpp(C)以上になった場合に、帯電部材2が寿命に達したと判定することができる。
【0034】
図3Bは、温度を変化させた場合の特性曲線である。帯電部材2の電気抵抗値が上限電気抵抗値であり、直流電圧値Vdcが400[V]、湿度が50%に固定されている。この条件下で温度を12℃、23℃、33℃に変化させたところ、それぞれの変曲点は2600V、1600V、1200Vとなった。
【0035】
図3Cは、湿度を変化させた場合の特性曲線である。帯電部材2の電気抵抗値が上限電気抵抗値であり、直流電圧値Vdcが400[V]、温度が23℃に固定されている。この条件下で湿度を15%、50%、75%に変化させたところ、それぞれの変曲点は2000V、1600V、1400Vとなった。
【0036】
図4は、テーブルデータを示す表である。テーブルデータは、上記の変曲点から決定されたVpp(A)、Vpp(B)、Vpp(C)を示している。Vpp(A)、Vpp(B)については、特性曲線の正の傾きの部分から取得する必要があるため、図2aでの帯電部材2の初期電気抵抗値における変曲点より小さいVpp値を設定した。また、変曲点は温湿度によって変化するため、温度と湿度をそれぞれ複数の範囲に区分し、それらの範囲の組み合わせごとにVpp(A)、Vpp(B)を設定した。高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)については、適正ピーク間電圧値Vpp(O)の検出バラツキを考慮し、VPP(O)よりも50V低いピーク間電圧値VppをVpp(C)として設定した。
【0037】
次に、帯電部材2の寿命判定処理について説明する。図5は、制御部4が実行する寿命判定処理の手順を示す流れ図である。
【0038】
最初に、制御部4が、温度計測部5、湿度計測部6によって計測された温度と湿度を取得し(ステップS01)、取得した温度と湿度に対応する低圧側ピーク間電圧値Vpp(A),Vpp(B)と、高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)と、をテーブルデータ格納部4bに格納されているテーブルデータから取得する(ステップS03)。
【0039】
次に、高圧発生回路3が、振動電圧(Vdc+Vpp(A))を帯電部材2に印加し、直流電流計測部3aが、帯電部材2と像担持体1との間に流れる直流電流値Idc(A)を計測する(ステップS05)。
【0040】
次に、高圧発生回路3が、振動電圧(Vdc+Vpp(B))を帯電部材2に印加し、直流電流計測部3aが、帯電部材2と像担持体1との間に流れる直流電流値Idc(B)を計測する(ステップS07)。
【0041】
次に、制御部4が、座標A(Vpp(A)、Idc(A))と座標B(Vpp(B)、Idc(B))と通る直線L1を導出する(ステップS09)。
【0042】
次に、高圧発生回路3が、振動電圧(Vdc+Vpp(C))を帯電部材2に印加し、直流電流計測部3aが、帯電部材2と像担持体1との間に流れる直流電流値Idc(C)を計測する(ステップS11)。
【0043】
次に、制御部4が、座標C(Vpp(C)、Idc(C))を通り、ピーク間電圧値Vppを表す座標軸に平行な直線L2を導出し(ステップS13)、直線L1、L2の交点に対応するピーク間電圧値Vppを適正ピーク間電圧値Vpp(O)として設定する(ステップS15)。
【0044】
次に、寿命判定部4cが、帯電部材2が寿命に達したか否かを判定する(ステップS17)。具体的には、適正ピーク間電圧値Vpp(O)が高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)以上である場合には、寿命判定部4cは、帯電部材2が寿命に達したと判定する。帯電部材2が寿命に達したと判定した場合、電子データ作成部4dが、表示部7に表示される画像を表す画像データ、及び送信部8により送信される電子メールデータを作成する。画像データは、例えば、帯電部材2を含むユニットの交換を促す内容、画像形成装置10のメンテナンスを促す内容等を含む。電子メールデータは、例えば、寿命の判定結果、Vpp(A)、Vpp(B)、Vpp(C)、マシンシリアル番号、ユニットシリアル番号、カウンター、通電時間、温度、湿度等の情報を含む。これらの情報は、テキスト形式で電子メールの本文に記載されてもよく、CSV(Comma-Separated Values)形式、XML(Extensible Markup Language)形式、JSON(JavaScript Object Notation)形式等のファイルに変換され、電子メールに添付されてもよい。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る帯電装置11によれば、帯電部材2の電気抵抗値が上限に達した場合の適正ピーク間電圧値Vpp(O)の近傍に高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)を設定し、電圧制御部4aにより設定された適正ピーク間電圧値Vpp(O)が高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)以上となった場合に、帯電部材2が寿命に達したと判定する寿命判定部4cを備えるから、帯電部材2の電気抵抗値を計測せずに帯電部材2の寿命を判定することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る帯電装置11によれば、温度計測部5と湿度計測部6を備えるから、実測された温度と湿度に応じて帯電部材2の寿命を判定することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る帯電装置11によれば、像担持体1がアモルファスシリコン膜を有するから、直流電流値Idcの計測が容易である。
【0048】
また、本実施形態に係る帯電装置11によれば、寿命判定部4cによる判定の結果を表す情報を表示する表示部7を備えるから、寿命判定の結果を画像形成装置10のユーザーに知らせることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る帯電装置11によれば、寿命判定部4cによる判定の結果を表す情報を送信する送信部8を備えるから、画像形成装置10から離れた場所にいるユーザーや管理者等に寿命の判定結果を知らせることができる。
【0050】
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
【0051】
寿命判定処理は、定期的に実行されてもよく、寿命判定処理のトリガーとして予め定められた事象が発生した場合に実行されてもよい。例えば、計測された温度と湿度の少なくとも一方の変化量が閾値を超えた場合に、実行されてもよい。
【0052】
上記実施形態では、像担持体1として、アルミニウム製シリンダの表面に正帯電性光導電体であるアモルファスシリコン層が蒸着された感光体を有する感光体ドラムが採用された例が示されたが、感光体ドラムは、有機光導電体を有するOPC(Organic Photoconductor)ドラムでもよく、セレン等の光導電性半導体を有するドラムでもよい。その場合、感光体の帯電特性に応じて、帯電部材2に印加する振動電圧の正負の極性を変更してもよい。
【0053】
上記実施形態では、帯電部材2が、芯金2aと、芯金2aを被覆する導電性を有する弾性材料であるエクロルヒドリンゴム層2bと、を備える例が示されたが、帯電部材2は、ファーブラシ、フェルト、布などで被覆されていてもよい。
【0054】
上記実施形態では、帯電部材2が像担持体1と接触するように配置される例が示されたが、帯電部材2が像担持体1と所定距離を保って対向するように配置されていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、適正ピーク間電圧値Vpp(O)の検出バラツキを考慮し、VPP(O)よりも50V低いピーク間電圧値Vppを高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)として設定する例が示されたが、これは一例に過ぎず、Vpp(O)よりも高いVppをVpp(C)として設定してもよく、Vpp(O)と等しいVpp(C)を設定してもよい。要するに、高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)は、帯電部材2の電気抵抗値が上限に達した場合の適正ピーク間電圧値Vpp(O)の近傍に設定されていればよい。換言すれば、高圧側ピーク間電圧値Vpp(C)は、帯電部材2の電気抵抗値が上限に達した場合の適正ピーク間電圧値Vpp(O)の検出バラツキの範囲内に設定されていればよい。
【符号の説明】
【0056】
1 像担持体
2 帯電部材
3 高圧発生回路
4 制御部
4a 電圧制御部
4c 寿命判定部
5 温度計測部
6 湿度計測部
7 表示部
8 送信部
10 画像形成装置
11 帯電装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5