(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像読取方法、プログラムおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/195 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H04N1/195
(21)【出願番号】P 2020085653
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釜井 康行
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054560(JP,A)
【文献】特開2000-132340(JP,A)
【文献】特開2011-205172(JP,A)
【文献】特開平08-172530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの画像形成面を縮小光学系により読み取る画像読取部と、制御部とを備える画像読取装置であって、
前記画像読取部は、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有し、
前記複数の読取センサは、前記画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として前記画像形成面を読み取り可能に配置され、
前記制御部は、前記複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、前記第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、前記第1の読取センサと前記第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求め、前記位置ずれ量に基づいて、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別する
画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の画像からノイズを抽出するノイズ抽出部と、
前記ノイズ抽出部によって抽出された前記ノイズが前記第2の画像上に存在する位置を特定するとともに、前記特定した位置の情報に基づいて、前記ノイズが前記第1の画像上に存在する位置と前記第2の画像上の存在する位置とのずれ量である位置ずれ量を検出する位置ずれ検出部と、
前記位置ずれ検出部によって検出された前記位置ずれ量に基づいて、前記画像読取部の読取基準面から前記ノイズの発生源までの距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部によって算出された前記距離に基づいて、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別するノイズ判別部と、
を備える請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記ノイズ判別部は、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別するための閾値を設定する
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ノイズ判別部は、ノズル欠を含むシートの画像を前記第1の読取センサおよび前記第2の読取センサにより読み取って得られる、前記第1の画像および前記第2の画像に基づいて、前記閾値を設定する
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記シートの厚さを検出するシート厚検出部を備え、
前記ノイズ判別部は、前記シート厚検出部によって検出された前記シートの厚さに基づいて、前記閾値を設定する
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記ノイズ判別部は、前記視差を特定可能なパターンを含むシートの画像を前記第1の読取センサおよび前記第2の読取センサにより読み取って得られる、前記第1の画像および前記第2の画像に基づいて、前記閾値を設定する
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記画像読取部で読取対象となるシートが光透過性を有するか否かを判別するシート判別部を備え、
前記距離算出部は、前記シート判別部の判別結果において、前記シートが光透過性を有しない場合は、前記読取基準面から前記画像形成面までの距離を規定する閾値以下の範囲で前記距離を算出し、前記シートが光透過性を有する場合は、前記閾値以下および前記閾値超の範囲で前記距離を算出する
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記ノイズ判別部は、前記距離算出部によって算出された前記距離と前記閾値との比較結果に基づいて、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別する
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記シートのサイズを検出するシートサイズ検出部を備え、
前記ノイズ抽出部は、前記シートサイズ検出部によって検出された前記シートのサイズに応じて、前記ノイズを抽出する対象領域を決定する
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記位置ずれ検出部は、前記ノイズ抽出部によって抽出された前記ノイズが前記第2の画像上に存在する位置を、画像マッチング処理によって特定する
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記位置ずれ検出部は、あらかじめ設定された領域を対象に前記画像マッチング処理を行う
請求項10に記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記ノイズ抽出部は、前記第1の画像から複数のノイズが抽出された場合に、前記複数のノイズを含む領域を画像マッチング領域に決定し、
前記位置ずれ検出部は、前記第2の画像上において前記画像マッチング領域内の画像とマッチング度が最も高い画像の位置を、前記複数のノイズが存在する位置として特定する
請求項10または11に記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記ノイズ抽出部は、前記ノイズとして、線状ノイズを検出する
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項14】
前記ノイズ抽出部は、前記シートの画像形成面と前記画像読取部の読取基準面との間に存在するミスト、塵または紙粉によるノイズ、前記シートの画像形成面に現れるノズル欠によるノイズ、前記シートを搬送するシート搬送体によるノイズ、前記シート搬送体の表面を覆う熱移動抑制シートによるノイズのうち、少なくともいずれかのノイズを抽出する
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項15】
前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かをユーザーに通知する通知部を備える
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項16】
前記ノイズ判別部は、前記読取センサから見て前記ノイズが前記画像形成面よりも手前側に存在すると判断した場合に、所定のメンテナンス作業を行うよう、ユーザーに促す報知処理を行う
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項17】
シートの画像形成面を縮小光学系により読み取ると共に、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有し、前記複数の読取センサが、前記画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として前記画像形成面を読み取り可能に配置された画像読取部を備える画像読取装置を用いた画像読取方法であって、
前記複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、前記第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、前記第1の読取センサと前記第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求めるステップと、
前記位置ずれ量に基づいて、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別するステップと、
を含む画像読取方法。
【請求項18】
シートの画像形成面を縮小光学系により読み取ると共に、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有し、前記複数の読取センサが、前記画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として前記画像形成面を読み取り可能に配置された画像読取部を備える画像読取装置のコンピュータに、
前記複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、前記第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、前記第1の読取センサと前記第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求めるステップと、
前記位置ずれ量に基づいて、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項19】
複数のノズルからインクを吐出してシートに画像を形成する画像形成装置であって、
前記シートの画像形成面を縮小光学系により読み取る画像読取部と、制御部とを備え、
前記画像読取部は、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有し、
前記複数の読取センサは、前記画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として前記画像形成面を読み取り可能に配置され、
前記制御部は、前記複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、前記第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、前記第1の読取センサと前記第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求め、前記位置ずれ量に基づいて、前記ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別する
画像形成装置。
【請求項20】
ノズル欠による画像の欠損を補正する画像補正部を備え、
前記画像補正部は、前記ノイズが前記画像形成面上に存在すると判断された場合のみ、前記補正を実施する
請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記シートに形成される画像の質を調整する画質調整部を備え、
前記画質調整部は、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、一方の画像に発生したノイズの部分を、当該ノイズの位置に対応する他方の画像の一部で補って、画質調整を実施する
請求項19または20に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像読取方法、プログラムおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルからインクを吐出させてシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置において、いずれかのノズルにインクの吐出不良が発生すると、吐出不良を起こしたノズル(以下、「不良ノズル」ともいう。)の位置に対応してシート上の画像に欠損が生じ、この欠損部分がノズル欠となって残る。
【0003】
ノズル欠による画質の低下を抑制する技術として、ノズル欠の位置を特定し、特定したノズル欠の位置に基づいて、不良ノズルに隣接するノズルや、不良ノズルに代替するノズルにより、不良ノズルで形成すべき画像を補う技術が公知となっている。
【0004】
特許文献1には、インク吐出不良の有無を判別すると共に、インク吐出不良に係る不良ノズルを特定する技術が知られている。また、特許文献1には、インクジェットヘッドよりもシート搬送方向の下流側に画像読取部を配置し、画像読取部で読み取ったシートの画像にインク吐出不良があると判別された場合に、その画像を解析して不良ノズルを特定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノズルのインク吐出不良によってシート上の画像に残るノズル欠は、シートの搬送方向に沿う直線状の画像欠陥「以下、「線状欠陥」という。」である。この線状欠陥が生じたシートの画像を画像読取部で読み取ると、その読み取り結果として得られる画像に線状のノイズが現れる。ただし、線状欠陥の発生要因は、ノズルのインク吐出不良に限らない。このため、シートの画像を画像読取部で読み取る場合は、その読み取った画像(電子データ)に含まれるノイズが、ノズルのインク吐出不良に起因するノイズであるか否かを的確に判別する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術には、たとえば、シートの画像形成面と異なる位置に塵が存在し、この塵がシートの画像と共に画像読取部によって読み取られると、その読み取り結果として得られる画像に現れる線状のノイズが、ノズルのインク吐出不良に起因するノイズであるか否かを判別できないという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、シートの画像を画像読取部で読み取る場合に、その読み取り結果として得られる画像に含まれるノイズが、ノズルのインク吐出不良に起因するノイズであるか否かを、より的確に判別することができる画像読取装置、画像読取方法、プログラムおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像読取装置は、シートの画像形成面を縮小光学系により読み取る画像読取部と、制御部とを備える画像読取装置である。画像読取部は、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有する。複数の読取センサは、画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として画像形成面を読み取り可能に配置される。制御部は、複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、第1の読取センサと第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求め、この位置ずれ量に基づいて、ノイズが画像形成面上に存在するか否かを判別する。
【0010】
本発明に係る画像読取方法は、シートの画像形成面を縮小光学系により読み取ると共に、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有し、複数の読取センサが、画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として画像形成面を読み取り可能に配置された画像読取部を備える画像読取装置を用いた画像読取方法であって、複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、第1の読取センサと第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求めるステップと、その位置ずれ量に基づいて、ノイズが画像形成面上に存在するか否かを判別するステップと、を含む。
【0011】
本発明に係るプログラムは、シートの画像形成面を縮小光学系により読み取ると共に、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有し、複数の読取センサが、画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として画像形成面を読み取り可能に配置された画像読取部を備える画像読取装置のコンピュータに、複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、第1の読取センサと第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求めるステップと、その位置ずれ量に基づいて、ノイズが画像形成面上に存在するか否かを判別するステップと、を実行させるプログラムである。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、複数のノズルからインクを吐出してシートに画像を形成する画像形成装置であって、シートの画像形成面を縮小光学系により読み取る画像読取部と、制御部とを備える。画像読取部は、主走査方向に位置をずらして配置された複数の読取センサを有する。複数の読取センサは、画像形成面の少なくとも一部の領域を共通の読取領域として前記画像形成面を読み取り可能に配置される。制御部は、複数の読取センサのうち、第1の読取センサによって得られる第1の画像と、第1の読取センサとは異なる第2の読取センサによって得られる第2の画像とに基づいて、第1の読取センサと第2の読取センサとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求め、その位置ずれ量に基づいて、ノイズが前記画像形成面上に存在するか否かを判別する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートの画像を画像読取部で読み取る場合に、その読み取り結果として得られる画像に含まれるノイズが、ノズルのインク吐出不良に起因するノイズであるか否かを、より的確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す画像形成装置の内部構造を示す概略側面図である。
【
図3】
図2に示す画像形成部の一部を拡大した概略側面図である。
【
図4】複数のインクジェットモジュールの配置状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の参考形態に係る画像形成装置の要部構成を説明する模式図である。
【
図7】搬送ドラムを覆う熱移動抑制シートを説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を説明する模式図である。
【
図9】読取センサからノイズ発生源までの距離が、ノイズの位置に与える影響を説明するための模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る画像形成装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】ノイズ抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】位置ずれ検出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】画像マッチング処理を説明する模式図である。
【
図14】画像マッチング処理における画像同士の一致度を説明する模式図である。
【
図15】距離算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図16】ノイズの発生源となる物体の像を、第1の読取センサの撮像面と第2の読取センサの撮像面とに結像させた状態を示す図である。
【
図17】距離算出部が算出した距離とノイズとを関連付けて記憶した例を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る画像形成装置において、画像読取部の各部の寸法関係を示す図である。
【
図19】ノイズ判別処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態においては、シートの一例として用紙を挙げる。用紙には、白紙、黒紙、色紙などが含まれる。また、シートは、用紙に限らず、たとえば、透明フィルムなどの樹脂シート、あるいは布帛シートなどであってもよい。以降の説明では、用紙をシートと読み替えてもよい。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略斜視図である。
図1に示すように、画像形成装置10は、複数のノズルからインクを吐出させて用紙に画像を形成(記録)するインクジェット記録装置である。画像形成装置10は、カラー画像形成装置でもモノクロ画像形成装置でもよい。本実施形態では、画像形成装置10がカラー画像形成装置である場合を例に挙げて説明する。
【0017】
画像形成装置10は、1パス方式のインクジェット方式によって用紙に画像を形成する装置である。1パス方式のインクジェット方式は、複数のノズルを有する記録ヘッドユニットを主走査方向に移動させずに画像を形成する方式である。主走査方向は、副走査方向に直交する方向である。副走査方向は、用紙の搬送方向と平行な方向である。1パス方式のインクジェット方式は、記録媒体に対して非接触で、かつ、高速に画像を形成することが可能である。
【0018】
画像形成装置10は、給紙部11と、画像形成部12と、排紙部13と、インク供給タンク14と、を備えている。給紙部11は、記録媒体としての用紙を供給する部分である。画像形成部12は、インクを用いて用紙に画像を形成する部分である。排紙部13は、画像の形成を終えた用紙を排出する部分である。インク供給タンク14は、所定量のインクを貯留し、このインクを画像形成部12に供給するためのタンクである。
【0019】
図2は、
図1に示す画像形成装置の内部構造を示す概略側面図である。上述した主走査方向は、
図2の奥行き方向に相当する。
図2に示すように、給紙部11は、給紙トレイ11aを有している。給紙トレイ11aには、画像を形成する前の用紙15、あるいは、所定のパターンまたは画像が形成されたテスト用紙が積載される。給紙部11は、給紙トレイ11aに積載された用紙15を最上位から順に一枚ずつ分離して供給する。
【0020】
画像形成部12は、搬送部としての搬送ドラム20と、複数の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kと、ミストキャッチャ22と、紫外線照射部23と、画像読取部24と、反転部25と、大小2つの搬送ローラ26a,26bと、を備えている。
【0021】
搬送ドラム20は回転可能に設けられている。搬送ドラム20は、給紙部11から供給される用紙15を搬送ドラム20の外周面20aに巻き付けながら回転する。搬送ドラム20は、たとえば、エアーの吸引によって用紙15を搬送ドラム20の外周面20aに吸着させ、この状態で回転することにより、用紙15を搬送方向Aに搬送する。このような搬送方式を実現するために、搬送ドラム20の外周面20aには複数のエアー吸引孔(図示せず)が形成されている。
【0022】
複数の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kは、記録媒体となる用紙15に対し、それぞれに対応する色のインクを用いて画像を形成(記録)するものである。具体的には、記録ヘッドユニット21Yはイエロー(Y)のインクを用いて画像を形成し、記録ヘッドユニット21Mはマゼンタ(M)のインクを用いて画像を形成する。また、記録ヘッドユニット21Cはシアン(C)のインクを用いて画像を形成し、記録ヘッドユニット21Kはブラック(K)のインクを用いて画像を形成する。本実施形態においては、一例として、紫外線硬化型のインクを用いるものとする。
【0023】
各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kは、搬送ドラム20の上側の外周面20aに対向する状態で配置されている。また、各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kは、搬送ドラム20の円周方向に位置をずらして配置されている。本実施形態においては、一例として、4つの記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kが画像形成部12に設けられている。
【0024】
ミストキャッチャ22は、搬送ドラム20による用紙15の搬送方向Aにおいて、記録ヘッドユニット21Kの下流側に配置されている。ミストキャッチャ22は、各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kに設けられるインクジェットヘッドからのインクの吐出によって発生するミストを捕集するものである。紫外線照射部23は、用紙15の搬送方向Aにおいて、ミストキャッチャ22の下流側に配置されている。紫外線照射部23は、搬送ドラム20の回転によって搬送されてくる用紙15に紫外線を照射することにより、用紙15上のインクを硬化させるものである。ここで記述する用紙15上のインクとは、用紙15上で画像を形成しているインクをいう。紫外線照射部23は、インクを用いて用紙15に形成された画像を用紙15に定着させる定着部として機能する。定着部による画像の定着は、紫外線を照射するものに限らず、インクの性質に応じてインクを硬化させ得るエネルギー線を照射するもの、あるいは、用紙15を加熱してインクを乾燥させるものなどであってもよい。
【0025】
画像読取部24は、用紙15の搬送方向Aにおいて、紫外線照射部23の下流側に配置されている。画像読取部24は、用紙15の画像形成面を縮小光学系により読み取る部分である。用紙15の画像形成面とは、搬送ドラム20に用紙15を吸着して搬送する場合に、各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kと対向する用紙15の面をいう。用紙15の画像形成面には、各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kを用いて画像が形成される。反転部25は、用紙15の両面に画像を形成するため、あるいは用紙15の片面に形成された画像を下向きにして用紙15を排出するために、用紙15の表裏を反転する部分である。搬送ローラ26a,26bは、画像の形成を終えた用紙15を排紙部13に向けて搬送するローラである。
【0026】
排紙部13は、排紙トレイ13aを有している。排紙トレイ13aには、画像の形成を終えた用紙15が順に排出される。
【0027】
図3は、
図2に示す画像形成部の一部を拡大した概略側面図である。以降の説明では、各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kやその構成要素をインクの色で区別する必要がある場合を除き、インクの色を表すY,M,C,Kの添え字を省略する。
【0028】
図3に示すように、記録媒体を搬送するための搬送路(図中、破線で示す)31は、搬送ドラム20の外周面20a上に形成されている。記録媒体としての用紙15(
図2参照)は搬送ドラム20の外周面20aに吸着されながら、搬送ドラム20の回転にしたがって搬送される。このため、搬送路31は、搬送ドラム20の外周面20aに沿って形成される。
【0029】
搬送路31の途中には、各々の記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kによる画像記録位置P1,P2,P3,P4,P5が存在する。画像記録位置P1は、記録ヘッドユニット21Yによって画像の記録(形成)が行われる位置であり、画像記録位置P2は、記録ヘッドユニット21Mによって画像の記録が行われる位置である。また、画像記録位置P3は、記録ヘッドユニット21Cによって画像の記録が行われる位置であり、画像記録位置P4は、記録ヘッドユニット21Kによって画像の記録が行われる位置である。
【0030】
用紙15を搬送路31に沿って搬送すると、用紙15の先端は、まず、記録ヘッドユニット21Yによる画像記録位置P1を通過し、その後、他の記録ヘッドユニット21M,21C,21Kによる画像記録位置P2,P3,P4を順に通過する。そして、4つの記録ヘッドユニット21Y,21M,21C,21Kからそれぞれ所定のタイミングでインクを吐出すると、イエローのインクは画像記録位置P1で用紙15に付着し、マゼンタのインクは画像記録位置P2で用紙15に付着する。また、シアンのインクは画像記録位置P3で用紙15に付着し、ブラックのインクは画像記録位置P4で用紙15に付着する。
【0031】
記録ヘッドユニット21Yは、インクジェットヘッド32Yと、このインクジェットヘッド32Yを保持するキャリッジ33Yとを備えている。インクジェットヘッド32Yはインク吐出面34Yを有し、このインク吐出面34Yに設けられたノズル244(
図4参照)からインクを吐出する。インクジェットヘッド32Yのインク吐出面34Yは、搬送ドラム20の外周面20aに対向する状態で配置されている。
【0032】
インクジェットヘッド32Yのインク吐出面34Yには、たとえば、
図4に示すように、複数のインクジェットモジュール243が設けられている。複数のインクジェットモジュール243は、千鳥状に配置されている。各々のインクジェットモジュール243には、2つのノズルユニット242が設けられている。各々のノズルユニット242には、複数のノズル244が設けられている。ノズル244は、インクを吐出する部分である。インクジェットヘッド32Yによって用紙15に画像を形成する場合は、印刷ジョブで指定された画像データに応じてノズル244が選択されると共に、選択されたノズル244から用紙15に向けてインクが吐出される。なお、
図4に示すX方向は主走査方向に相当し、Y方向は副走査方向に相当する。
【0033】
上述した記録ヘッドユニット21Yと同様に、記録ヘッドユニット21Mは、インクジェットヘッド32Mと、このインクジェットヘッド32Mを保持するキャリッジ33Mとを備えている。また、記録ヘッドユニット21Cは、インクジェットヘッド32Cと、このインクジェットヘッド32Cを保持するキャリッジ33Cとを備え、記録ヘッドユニット21Kは、インクジェットヘッド32Kと、このインクジェットヘッド32Kを保持するキャリッジ33Kとを備えている。
【0034】
図5は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、画像形成装置10は、上述した給紙部11、画像形成部12および排紙部13のほかに、制御部51、操作表示部53、記憶部58および通信部59を備えている。
【0035】
画像形成部12は、上述した画像読取部24に加えて、ヘッド駆動部55および搬送用モータ57を備えている。画像読取部24は、複数の読取センサ62を備えている。読取センサ62は、後述する縮小光学系を介して画像を光学的に読み取るイメージセンサであり、具体的には、光電変換素子を直線状に配列したリニアイメージセンサである。画像読取部24は、用紙15の画像形成面を読み取る場合に基準となる面、すなわち読取基準面を有する。画像読取部24の読取基準面は、読取センサ62の撮像面から一定の距離を隔てた位置に設定される。
【0036】
読取センサ62は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどによって構成される。読取センサ62は、用紙15に形成された画像を読み取った場合に、その読み取り結果として得られる画像データを、たとえば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3波長で出力する。本実施形態の効果を得るうえでは、読取センサ62がカラーイメージセンサでもモノクロイメージセンサでもよい。
【0037】
ヘッド駆動部55は、制御部51から与えられる制御指令に基づいて、各々のインクジェットヘッド32Y,32M,32C,32Kを独立に駆動するものである。搬送用モータ57は、用紙15を搬送するためのモータであって、搬送ドラム20を回転させるモータを含む。搬送用モータ57の駆動は、制御部51によって制御される。
【0038】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)61と、ROM(Read Only Memory)63と、RAM(Random Access Memory)65とを備えている。制御部51は、CPU61がROM63からRAM65へと所定の制御プログラムを読み出して実行することにより、画像形成装置10の各部の動作を統括的に制御する。制御部51は、図示しない通信ネットワークに接続された外部装置(たとえば、パーソナルコンピュータなど)との間で各種のデータの送受信を行う。また、制御部51は、操作表示部53または外部装置から印刷ジョブを受け付けると、この印刷ジョブで指定された画像データに基づいて用紙15に画像を形成するよう、画像形成装置10の各部の動作を制御する。
【0039】
また、制御部51は、後述する第1の読取センサ62aによって得られる第1の画像81aと、第2の読取センサ62bによって得られる第2の画像81bとに基づいて、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求め、この位置ずれ量に基づいて、ノイズが用紙15の画像形成面上に存在するか否かを判別する。そのための機能部として、制御部51は、ノイズ抽出部71と、位置ずれ検出部73と、距離算出部74と、ノイズ判別部75とを備えている。さらに、制御部51は、画像補正部76、画質調整部77とを備えている。各々の機能部(71,73,74,75,76,77)は、CPU61がROM63からRAM65へ所定のプログラムを読み出して実行することにより実現されるものである。
【0040】
ノイズ抽出部71は、上述した複数の読取センサ62のうち、所定の読取センサ62によって得られる画像(以下、「第1の画像」ともいう。)からノイズを抽出する部分である。位置ずれ検出部73は、ノイズ抽出部71によって抽出されたノイズが、上記所定の読取センサ62とは異なる読取センサ62によって得られた画像(以下、「第2の画像」ともいう。)上に存在する位置を特定すると共に、特定した位置の情報に基づいて、そのノイズが第1の画像上に存在する(主走査方向の)位置と第2の画像上の存在する(主走査方向の)位置とのずれ量(視差)である位置ずれ量を検出する部分である。
【0041】
距離算出部74は、位置ずれ検出部73によって検出された上記の位置ずれ量に基づいて、画像読取部24の読取基準面からノイズの発生源までの距離を算出する部分である。ノイズ判別部75は、距離算出部74によって算出された上記の距離に基づいて、ノイズが画像形成面上に存在するか否かを判別する部分である。
【0042】
画像補正部76は、ノズル欠による画像の欠損を補正する部分である。画質調整部77は、用紙15に形成される画像の質を調整する部分である。画質調整部77は、画像の質、すなわち画質に関わる調整パラメータとして、たとえば、画像の濃度、位置、傾きなどを調整する。各々の機能部の詳細については、後段で説明する。
【0043】
操作表示部53は、たとえば、タッチパネル付の液晶ディスプレイによって構成されるものである。操作表示部53は、ユーザーに対して各種の情報を表示する機能と、ユーザーから各種の入力操作を受け付ける機能とを有する。操作表示部53に表示される情報には、各種の操作画面、設定画面、報知画面などが含まれる。また、操作表示部53を用いてユーザーが行う入力操作には、印刷ジョブの実行を指示する操作、印刷ジョブの対象となる画像データを選択(指定)する操作、印刷ジョブに使用する用紙15の種類を選択(指定)する操作、印刷ジョブに適用する条件を選択する操作などが含まれる。
【0044】
記憶部58は、たとえば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブなどで構成される。記憶部58には、制御部51が各種の制御処理を行う際に参照する制御データやその他のデータが記憶される。
【0045】
通信部59は、図示しない通信ネットワークを介して外部の装置(たとえば、パーソナルコンピュータなど)と通信可能に接続され、外部の装置との間で各種のデータの送受信を行う。通信部59は、たとえばNIC(Network Interface Card)、MODEM(MOdulator-DEModulator)、USB(Universal Serial Bus)等の各種インターフェースで構成される。
【0046】
ここで、本発明の参考形態について説明する。
図6は、本発明の参考形態に係る画像形成装置の要部構成を説明する模式図である。
図6に示すように、搬送ドラム20の外周面20a(
図2参照)は、熱移動抑制シート27によって覆われている。熱移動抑制シート27は、用紙15を搬送ドラム20の外周面20aに吸着しながら搬送する場合に、用紙15と搬送ドラム20との間に介在することにより、用紙15と搬送ドラム20との間の熱移動を抑制するシートである。インクジェットヘッド32から吐出されるインクの粘度は、温度の影響を受けやすいため、用紙15に形成される画像の質を良好に維持するためには、インクジェットヘッド32、用紙15および搬送ドラム20をそれぞれ適切な温度に制御する必要がある。その際、搬送ドラム20と用紙15との間、さらには搬送ドラム20とインクジェットヘッド32との間で、熱が容易に移動すると、各部の温度を適切に制御することが困難になる。このため、搬送ドラム20の外周面20aを熱移動抑制シート27で覆うことにより、インクジェットヘッド32、用紙15および搬送ドラム20の相互間における熱の移動を抑制している。
【0047】
熱移動抑制シート27は、熱伝導率が低いシートで構成される。具体的には、熱移動抑制シート27は、合成樹脂などの樹脂シートによって構成され、より具体的にはフッ素樹脂シートなどよって構成される。また、搬送ドラム20は、エアーの吸引力を利用して用紙15を吸着する。このため、熱移動抑制シート27は、適度な通気性を有するよう、たとえば
図7に示すように格子状(網目状)に形成された多孔質シート、多孔質フィルムなどによって構成されている。
【0048】
なお、
図7においては、搬送ドラム20の外周面20aが熱移動抑制シート27によって覆われ、この熱移動抑制シート27を通して搬送ドラム20のエアー吸引孔20bが斑点模様のように透けて見ている。また、
図7においては、熱移動抑制シート27の一部を図の右側に拡大して表示している。
【0049】
画像読取部240は、用紙15の画像形成面15cを光学的に読み取る部分である。
図6においては、用紙15の画像形成面15cに画像16が形成され、この画像16にノズル欠17が存在する状態を示している。ノズル欠17は、ノズル244のインク吐出不良によって発生する画像16の欠損である。
【0050】
画像読取部240は、読取センサ62と、縮小光学系64と、読取用プレート66と、光源(図示せず)とを有している。参考形態では、画像読取部240に読取センサ62が1つだけ設けられ、これに対応して縮小光学系64も1つだけ設けられている。
【0051】
縮小光学系64は、図示しない集光レンズを備えている。縮小光学系64は、被読取面から反射する光を集光レンズで集めて読取センサ62の撮像面に結像させる光学系である。参考形態では、被読取面が用紙15の画像形成面15cである場合を想定している。読取用プレート66は、たとえば、透明なガラスプレートによって構成される。参考形態では、読取用プレート66に異物80が付着している場合を想定している。異物80は、たとえば、ミスト、塵、紙粉などである。光源は、被読取面に対して読取用の光(たとえば、白色光)を照射するもので、ライン照明などによって構成される。ライン照明は、ライン状の光を照射するもので、発光ダイオードなどを用いて構成される。
【0052】
本発明の参考形態に係る画像形成装置において、搬送ドラム20により搬送される用紙15の画像16を、縮小光学系64を介して読取センサ62により読み取ると、画像16上に存在するノズル欠17と、読取用プレート66に付着する異物80とが、画像16と共に読み取られる。また、用紙15が薄紙などの場合は、熱移動抑制シート27の格子模様が薄紙を通して読取センサ62により読み取られる。実際に用紙15の画像形成面15cを読取センサ62で読み取ると、
図6の右側に示すような画像81が得られる。この画像81は、読取センサ62の読み取り結果として得られる撮像画像の電子データであり、画像データと言い換えることができる。
【0053】
読取センサ62によって得られる画像81には、異物80によるノイズ82と、ノズル欠17によるノイズ83と、熱移動抑制シート27の格子模様によるノイズ84とが含まれ、これらのノイズ82,83,84が一つの画像81に重畳されて現れる。異物80によるノイズ82は、副走査方向Yに平行に延びる線状ノイズであり、ノズル欠17によるノイズ83も副走査方向Yに平行に延びる線状ノイズである。熱移動抑制シート27の格子模様によるノイズ84は、モアレ状に現れるノイズである。
【0054】
ここで、ノズル欠による画質の低下を抑制する技術として、ノズル欠の位置を特定することにより、不良ノズルの位置を推定し、その不良ノズルに隣接するノズルや、不良ノズルに代わる代替ノズルを用いて、不良ノズルで形成すべき画像を補う技術が公知となっている。この公知技術によれば、ノズル欠の解消または低減を図ることができる。ただし、この公知技術を利用するには、ノズル欠の位置を的確に特定する必要がある。
【0055】
しかしながら、本発明の参考形態に係る画像形成装置では、読取センサ62によって得られる画像81のなかに、ノズル欠17によるノイズ83以外のノイズ82,84が含まれる場合に、ノズル欠17の位置を的確に特定することが困難になる。具体的には、ノズル欠17によるノイズ83と、異物80によるノイズ82とは、いずれも線状ノイズとなって画像81上に存在する。このため、ノイズ82およびノイズ83が、ノズル欠17によるノイズであるか否かを判別することができない。さらに、用紙15が薄紙などの場合は、熱移動抑制シート27によるノイズ84が画像81に重畳されるため、ノイズの判別がますます困難になる。
【0056】
図8は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を説明する模式図である。
図8に示すように、画像読取部24は、2つの読取センサ62a,62bと、2つの縮小光学系64a,64bと、読取用プレート66と、光源(図示せず)とを有している。読取用プレート66および光源については、先述した参考形態で述べたとおりである。本発明の実施形態においては、画像読取部24が、2つの読取センサ62a,62bを有する場合を例に挙げて説明するが、画像読取部24が有する読取センサ62の数は3つ以上であってもよい。
【0057】
読取センサ62a,62bは、主走査方向Xに位置をずらして配置されている。画像読取部24の読取基準面24aは、読取センサ62a,62bの撮像面90a,90b(
図16参照)と読取用プレート66との間に設定されている。画像読取部24は、2つの読取センサ62a,62bを用いて対象物を異なる方向が同時に撮影する、いわゆるステレオカメラ方式によって画像を読み取る。以降の説明では、読取センサ62aを「第1の読取センサ62a」といい、読取センサ62bを「第2の読取センサ62b」という。また、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bを特に区別する必要がない場合は、「読取センサ62」という。なお、読取センサ62a,62bの副走査方向の位置は、互いに同じ位置であることが好ましいが、異なる位置であってもよい。また、読取センサ62a,62bの上下方向の位置は、互いに同じ位置であることが好ましいが、異なる位置であってもよい。ここで記述する上下方向とは、主走査方向Xおよび副走査方向に直交する方向をいう。
【0058】
縮小光学系64aは、第1の読取センサ62aに対応して設けられたもので、縮小光学系64bは、第2の読取センサ62bに対応して設けられたものである。縮小光学系64aは、被読取面から反射する光を集光レンズで集めて第1の読取センサ62aの撮像面に結像させる光学系である。縮小光学系64bは、被読取面から反射する光を集光レンズで集めて第2の読取センサ62bの撮像面に結像させる光学系である。以降の説明では、縮小光学系64aを「第1の縮小光学系64a」といい、縮小光学系64bを「第2の縮小光学系64b」という。
【0059】
第1の読取センサ62aは、第1の縮小光学系64aを介して被読取面を読み取り、その読み取り結果を示す画像データである第1の画像81aを生成する。第2の読取センサ62bは、第2の縮小光学系64bを介して被読取面を読み取り、その読み取り結果を示す画像データである第2の画像81bを生成する。被読取面については、先述した参考形態で述べたとおりである。
【0060】
第1の読取センサ62aによる主走査方向Xの視野角は、搬送ドラム20によって搬送可能な最大幅の用紙15を搬送する場合に、この用紙15の幅方向の一端部15aが視野の端に位置するように設定されている。また、第2の読取センサ62bによる主走査方向Xの視野角は、上記の最大幅の用紙15の幅方向の他端部15bが視野の端に位置するように設定されている。また、主走査方向Xにおける第1の読取センサ62aの視野は、上記の最大幅の用紙15の幅寸法よりも広く設定され、主走査方向Xにおける第2の読取センサ62bの視野も、上記の最大幅の用紙15の幅寸法よりも広く設定されている。
【0061】
これにより、画像読取部24において、第1の読取センサ62aは、用紙15に形成された画像16の全領域を読み取り可能に構成され、第2の読取センサ62bも、用紙15に形成された画像16の全領域を読み取り可能に構成されている。すなわち、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとは、用紙15の画像形成面15cの全領域を共通の読取領域として読み取り可能に配置されている。
【0062】
なお、本実施形態においては、用紙15の画像形成面15cの全領域を共通の読取領域とする場合を例に挙げて説明するが、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとが用紙15の画像形成面15cを読み取る場合の共通の読取領域は、画像形成面15cの一部であってもよい。
【0063】
続いて、主走査方向Xと直交する方向における、読取センサ62a,62bからノイズの発生源(以下、「ノイズ発生源」ともいう。)までの距離が、第1の画像81aに現れるノイズの位置と、第2の画像81bに現れるノイズの位置とに与える影響について、
図8および
図9を参照して説明する。
【0064】
まず、画像読取部24は、
図8に示すように、複数(本形態例では2つ)の読取センサ62a、62bを用いたステレオカメラ方式によって画像を読み取るため、ある1つのノイズ発生源に関して、当該ノイズ発生源が第1の読取センサ62aの撮像面に結像する位置と、当該ノイズ発生源が第2の読取センサ62bの撮像面に結像する位置とは、主走査方向Xにずれる。したがって、ある1つのノイズ発生源に関して、第1の画像81aに発生するノイズの位置と第2の画像81bに発生するノイズの位置も、主走査方向Xにずれる。
【0065】
ここで、
図8および
図9に示すように、読取用プレート66に異物80が付着したことが原因で第1の画像81aにノイズ82aが発生し、かつ、第2の画像81bにノイズ82bが発生した場合の、主走査方向Xにおけるノイズ82a,82bの位置ずれ量をD1(mm)とする。また、ノズル244のインク吐出不良により、用紙15にノズル欠17が発生したことが原因で第1の画像81aにノイズ83aが発生し、かつ、第2の画像81bにノイズ83bが発生した場合の、主走査方向Xにおけるノイズ83a,83bの位置ずれ量をD2(mm)とする。また、熱移動抑制シート27の表面模様が用紙15を通して映り込むことが原因で第1の画像81aにノイズ84aが発生し、かつ、第2の画像81bにノイズ84bが発生した場合の、主走査方向Xにおけるノイズ84a,84bの位置ずれ量をD4(mm)とする。そうした場合、位置ずれ量D1,D2,D3の大小関係は、D1>D2>D3となる。つまり、ある1つのノイズ発生源に関して、第1の画像81aに発生するノイズの位置と第2の画像81bに発生するノイズの位置とのずれ量は、読取センサ62a,62bから見てノイズ発生源が近いほど大きくなる。
【0066】
図10は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、画像形成装置10は、画像読取処理S1と、ノイズ抽出処理S2と、位置ずれ検出処理S3と、距離算出処理S4と、ノイズ判別処理S5とを順に行う。以下、各々の処理について説明する。
【0067】
(画像読取処理)
画像読取処理S1は、画像読取部24によって行われる処理である。画像読取部24は、搬送ドラム20によって搬送される用紙15の画像形成面15cを、第1の読取センサ62aおよび第2の読取センサ62bによって読み取る。このとき、第1の読取センサ62aによって得られる第1の画像81aはRAM65に記憶され、第2の読取センサ62bによって得られる第2の画像81bもRAM65に記憶される。
【0068】
(ノイズ抽出処理)
ノイズ抽出処理S2は、ノイズ抽出部71によって行われる処理である。
ノイズ抽出部71は、用紙15の画像形成面15cと画像読取部24の読取基準面24aとの間に存在するミスト、塵または紙粉によるノイズ、用紙15の画像形成面15cに現れるノズル欠17によるノイズ、シート搬送体である搬送ドラム20によるノイズ、搬送ドラム20の表面を覆う熱移動抑制シート27によるノイズのうち、少なくともいずれかのノイズを抽出する。
【0069】
図11は、ノイズ抽出処理S2の手順を示すフローチャートである。
まず、ノイズ抽出部71は、上述のようにRAM65に記憶された第1の画像81aおよび第2の画像81bのうち、第1の画像81aを用いてエッジ検出処理を行う(ステップS21)。エッジ検出の対象となる第1の画像81aは、R(赤)、G(緑)およびB(青)の3チャネルを有する画像であるため、ノイズ抽出部71は、まず、グレースケール変換によって第1の画像81aを1チャネル化する。これにより、モノクロの濃度で表される第1の画像81aが得られる。このとき、第2の画像81bについてもグレースケール変換によって1チャネル化しておく。次に、ノイズ抽出部71は、グレースケール変換によって得られた第1の画像81aに対し、一次微分フィルタ処理および二次微分フィルタ処理を行うことにより、第1の画像81a内に存在するエッジを検出する。
【0070】
次に、ノイズ抽出部71は、エッジ検出処理の結果に基づいて、第1の画像81aに線状ノイズが含まれているか否かを判断する(ステップS22)。ここで記述する「線状ノイズ」とは、副走査方向Yに平行に延びる線状のノイズを意味する。このため、ノイズ抽出部71は、エッジ検出処理によって検出したエッジのうち、少なくとも1つのエッジが、副走査方向Yに連続して延在するエッジ、すなわち線状ノイズである場合は、線状ノイズが有ると判断(ステップS22でYESと判断)し、次のステップS23の処理を行ってから、ノイズ抽出処理S2を終了する。また、ノイズ抽出部71は、副走査方向Yに連続して延在するエッジが存在しない場合は、線状ノイズが無いと判断(ステップS22でNOと判断)し、そのままノイズ抽出処理S2を終了する。
【0071】
ステップS23において、ノイズ抽出部71は、上述した線状ノイズを含む領域を画像マッチング領域に決定する。画像マッチング領域は第1の画像81aの一部の領域であり、この画像マッチング領域の大きさは、後述する画像マッチング処理において第2の画像81b上でシフトさせる画像領域の大きさに相当する。画像マッチング領域の大きさは、主走査方向Xの領域幅と、副走査方向Yの領域高さによって規定され、ステップS23では、この領域幅と領域高さとを決定する。このステップS23において、画像マッチング領域の大きさが、たとえば、主走査方向XにM画素分の領域幅、副走査方向YにN画素分の領域高さで決定された場合、後述する画像マッチング処理では、第1の画像81a上で線状ノイズを含むM画素×N画素の大きさを持つ画像を、第2の画像81b上でシフトさせることになる。画像マッチング処理については後段で詳しく説明する。
【0072】
なお、上述したノイズ抽出処理S2によって第1の画像81aから複数の線状ノイズが抽出された場合、ノイズ抽出部71は、線状ノイズごとに画像マッチング領域を決定してもよいが、より好ましくは、複数の線状ノイズを含む領域を画像マッチング領域に決定するとよい。その理由は後述する。
【0073】
(位置ずれ検出処理)
位置ずれ検出処理S3は、位置ずれ検出部73によって行われる処理である。
図12は、位置ずれ検出処理S3の手順を示すフローチャートである。
まず、位置ずれ検出部73は、主走査方向Xにおいて第1の画像81aと第2の画像81bとが重複する重複幅Wo(
図13参照)を、記憶部58から読み出す(ステップS31)。重複幅Woは、上記
図8に示すように、最大幅の用紙15の画像形成面15cを第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとによって読み取る場合に、主走査方向Xにおいて両センサの読取領域が重なり合う幅、すなわち用紙15の全幅に相当する。重複幅Woの具体的な数値は、画像形成装置10で取り扱う用紙15の最大幅と、搬送ドラム20と画像読取部24との位置関係、すなわち画像形成部12の機械設計値に応じて、あらかじめ設定される。なお、
図13に示す第1の画像81aおよび第2の画像81bにおいて、重複幅Woから外れた画像部分は、主走査方向Xにおいて最大幅の用紙15から外れた部分を第1の読取センサ62aおよび第2の読取センサ62bによって読み取ることにより得られる画像部分である。
【0074】
次に、位置ずれ検出部73は、副走査方向Yにおいて第1の画像81aと第2の画像81bとが重複する重複ライン数Ho(
図13参照)を、記憶部58から読み出す(ステップS32)。重複ライン数Hoは、搬送ドラム20によって搬送される用紙15の画像形成面15cを、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとによって読み取る場合に、副走査方向Yにおいて両センサの読取領域が重なり合うライン数、すなわち画像の高さに相当する。画像形成装置10で取り扱う用紙15の副走査方向Yの最大長がLmaxであるとすると、重複ライン数Hoは、最大長Lmaxの用紙15の画像形成面15c全域を読取センサ62(62a,62b)で読み取るために必要なライン数未満の条件であらかじめ設定される。また、重複ライン数Hoは、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求めるために必要なライン数以上の条件であらかじめ設定される。
【0075】
重複幅Woおよび重複ライン数Hoによって規定される領域(Wo×Ho)の主走査方向Xの位置は、
図13に示すように、第1の画像81aと第2の画像81bとで反対になる。すなわち、第1の画像81a上では、領域(Wo×Ho)の位置が主走査方向Xの一方側(
図13の右側)に位置し、第2の画像81b上では、領域(Wo×Ho)の位置が主走査方向Xの他方側(
図13の左側)に位置する。その理由は、
図8に示すように、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bが主走査方向Xに位置をずらして配置され、このセンサの位置ずれによって、用紙15の画像形成面15cの読み取り結果を表す画像の位置が主走査方向Xで反対になるからである。
【0076】
次に、位置ずれ検出部73は、上記ステップS31およびステップS32で記憶部58から読み出した重複幅Woおよび重複ライン数Hoによって規定される領域(Wo×Ho)を対象に、第1の画像81aと第2の画像81bとの画像マッチング処理を行う(ステップS33~S35)。画像マッチング処理としては、たとえば、領域ベースマッチングを採用することが可能である。
【0077】
画像マッチング処理において、まず、位置ずれ検出部73は、
図13に示すように、上記のノイズ抽出処理S2によって抽出した線状ノイズを含むM画素×N画素の画像85をテンプレート画像とし、その画像85を第2の画像81b上でシフトさせる(ステップS33)。画像85の各画素の値は、グレースケール変換後の濃度値(画素値)を示している。この点は、後述する画像86についても同様である。第2の画像81b上で画像85をシフトさせる領域の大きさは、重複幅Wo×重複ライン数Hoである。また、1回あたりのシフト量は、主走査方向Xおよび副走査方向Yに最小で1画素分である。1回あたりのシフト量は、画像マッチング処理の精度と、画像マッチング処理に要する時間とを考慮して、適宜設定するとよい。本実施形態においては、一例として、1回あたりのシフト量が主走査方向Xに1画素(Ws)とし、第2の画像81b上で画像85を領域(Wo×Ho)の左端から右端までシフトさせたら、副走査方向Yに1画素分シフトさせるものとする。
【0078】
次に、位置ずれ検出部73は、第2の画像81b上の各シフト位置において、テンプレート画像である画像85と、この画像85とのマッチング対象となる画像(対象画像)86との一致度を算出する(ステップS34)。シフト位置は、第2の画像81b上で画像85をシフトさせた位置である。一致度の算出方法としては、たとえば、次の述べる3つの方法のいずれかを採用すればよい。第1の方法は、画素値差の二乗和を指標とした算出方法であり、SSD(Sum of Squared Differences)と呼ばれる。第2の方法は、画素値差の絶対値差を指標とした算出方法であり、SAD(Sum of Absolute Differences)と呼ばれる。第3の方法は、正規化関数を用いた算出方法であり、NCC(Normalized Cross Correlation)と呼ばれる。本実施形態においては、一例として、SADによる算出方法によって画像の一致度を算出するものとする。
【0079】
また、位置ずれ検出部73は、ステップS34において、各シフト位置で算出した一致度を、この一致度が得られたシフト量と関連づけて記憶部58(またはRAM65)に記憶する。シフト量は、たとえば、第2の画像81bの領域(Wo×Ho)内で左上の画素位置を基準位置とし、この基準位置から主走査方向Xと副走査方向Yにどの程度の距離だけ画像85をシフトさせたかを示す情報として記憶部58に記憶される。
【0080】
次に、位置ずれ検出部73は、第2の画像81bの領域(Wo×Ho)内で画像85のシフトが完了したか否かを判断する(ステップS35)。そして、シフトが完了していない場合は、上記ステップS33の処理に戻り、シフトが完了した場合は、次のステップS36に進む。
【0081】
ステップS36において、位置ずれ検出部73は、記憶部58に記憶されている一致度のなかで、最も高い一致度に関連づけて記憶されているシフト量を抽出する。SADによる算出方法において、テンプレート画像である画像85と、対象画像である画像86との一致度は、SADの算出値が小さいほど高くなる。このため、ステップS36において、位置ずれ検出部73は、記憶部58に記憶されている一致度のなかで、最小のSADの算出値に関連づけて記憶部58に記憶されているシフト量を抽出する。
【0082】
次に、位置ずれ検出部73は、上記ステップS36で抽出したシフト量を基に、上述したノイズ抽出処理S2によって抽出されたノイズ(線状ノイズ)が第2の画像81b上に存在する位置を特定する(ステップS37)。
【0083】
次に、位置ずれ検出部73は、ノイズ抽出処理S2によって抽出されたノイズが第1の画像81a上に存在する位置と第2の画像81b上に存在する位置とのずれ量、すなわち第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を検出する(ステップS38)。この視差によるノイズの位置ずれ量は、第2の読取センサ62bの撮像面の長さ方向で規定される。撮像面の長さ方向は、光電変換素子の並び方向を意味する。
【0084】
上述した位置ずれ検出処理S3により、
図14に示すように、第1の画像81aと第2の画像81bとをマッチング処理した場合に、主走査方向Xにおいて、第1の画像81a上に存在する線状ノイズ87aの位置と第2の画像81b上に存在する線状ノイズ87bの位置とが不一致となる場合の誤差(一致度)と、一致する場合の誤差(一致度)とは、画像のシフト量に応じて変化する。このため、ステップS36において、位置ずれ検出部73は、第1の画像81a上に存在する線状ノイズ87aの位置と第2の画像81b上に存在する線状ノイズ87bの位置とが一致する場合の誤差、すなわち一致度が最小値(極小値)をとるシフト量を抽出する。
【0085】
また、先述したノイズ抽出処理S2によって第1の画像81aから複数の線状ノイズが抽出され、これら複数の線状ノイズを含む領域を画像マッチング領域に決定した場合、位置ずれ検出部73は、第2の画像81b上において画像マッチング領域内の画像とマッチング度が最も高い画像の位置を、上記複数の線状ノイズが存在する位置として特定するとよい。ここで記述する、マッチング度が最も高い画像の位置とは、SADの算出値が最小となる画像の位置、すなわちテンプレート画像である画像85と、対象画像である画像86との一致度が最も高くなるシフト量に対応する画像の位置をいう。
このように、第2の画像81b上で複数の線状ノイズの位置をまとめて特定することにより、複数の線状ノイズの位置を1つずつ特定する場合に比べて、あるノイズの位置とその近傍に存在する別のノイズの位置とを混同しにくくなるため、ノイズの位置をより的確に特定することができる。
【0086】
(距離算出処理)
距離算出処理S4は、距離算出部74によって行われる処理である。
図15は、距離算出処理S4の手順を示すフローチャートである。
まず、距離算出部74は、上述した位置ずれ検出処理S3によって検出したノイズの位置ずれ量をパラメータとする計算式により、画像読取部24の読取基準面24aからノイズの発生源までの距離を算出する(ステップS41)。この算出処理について、以下に
図16を用いて詳しく説明する。
【0087】
図16は、ノイズの発生源となる物体89の像を、第1の読取センサ62aの撮像面90aと第2の読取センサ62bの撮像面90bとに結像させた状態を示している。
図16において、符号Bは、主走査方向Xにおける第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとの間の距離(以下、「カメラ間距離」ともいう。)を示している。距離Bの単位は、ミリメートルとする。
【0088】
符号Fは、第1の縮小光学系64aおよび第2の縮小光学系64bにおける焦点距離を示している。焦点距離Fは、第1の縮小光学系64aおよび第2の縮小光学系64bに用いる集光レンズの光学特性によって決まる距離であって、既知の情報となる。具体的には、焦点距離Fは、各々の縮小光学系64a,64bが有する集光レンズの中心(主点)から撮像面90a,90bまでの距離である。これに対して、画像読取部24の読取基準面24aは、主走査方向Xと直交する方向において、各々の撮像面90a,90bから焦点距離Fだけ離れた位置に設定されている。焦点距離Fは、あらかじめ記憶部58に記憶しておき、必要に応じて記憶部58から読み出せばよい。焦点距離Fの単位は、ミリメートルとする。
【0089】
符号Dは、第1の読取センサ62aの撮像面90aに物体89の像が結像する位置と、第2の読取センサ62bの撮像面90bに物体89の像が結像する位置とのずれ量、すなわち第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとの視差によって生じる物体89の像の位置ずれ量を示している。視差による位置ずれ量Dの単位は、ミリメートルとする。
【0090】
符号Zは、主走査方向Xと直交する方向において、画像読取部24の読取基準面24aから物体89までの距離である。距離Zの単位は、ミリメートルとする。距離Zは、3つの点P11,P12,P13を頂点する三角形91と、3つの点P13,P14,P15を頂点とする三角形92とが相似の関係になることから、以下の(1)式によって求めることができる。
Z=B×F/D …(1)
【0091】
上記(1)式によって算出される距離Zは、物体89がノイズ発生源である場合に、画像読取部24の読取基準面24aからノイズ発生源までの距離に相当する。これにより、距離算出部74において、画像読取部24の読取基準面24aからノイズ発生源までの距離Zを算出することができる。
【0092】
こうして読取基準面24aからノイズ発生源までの距離Zを算出したら、距離算出部74は、算出した距離Zをそのノイズに関連づけて記憶部58に記憶する(ステップS42)。これにより、たとえば、ノイズ抽出処理によって6つのノイズが抽出された場合は、
図17に示すように、各々のノイズに関連づけて6つの距離(mm)が記憶部58に記憶される。
図17においては、6つのノイズに1~6までの番号が付されている。そして、1番のノイズに対応する距離Zは10.5mm、2番のノイズに対応する距離Zは10mm、3番のノイズに対応する距離Zは10.5mm、4番のノイズに対応する距離Zは10.7mm、5番のノイズに対応する距離Zは10.5mm、6番のノイズに対応する距離Zは10.7mmとなっている。
【0093】
図18は、本発明の実施形態に係る画像形成装置10において、画像読取部24の各部の寸法関係を示す図である。
図18に示すように、カメラ間距離Bは10mm、焦点距離Fは3mmであり、これらの距離は一定である。これに対して、上述した距離Zは、視差によるノイズの位置ずれ量Dに応じて変化する。具体的には、視差によるノイズの位置ずれ量Dが小さくなるにつれて距離Zが長くなる。ここで、画像形成装置10の機械設計上、画像読取部24の読取基準面24aから用紙15の画像形成面15cまでの距離が10.5mmに設計されている場合は、上述した距離算出処理S4によって算出された距離Zが10.5mmと同じであるか、それよりも所定量だけ長いか、もしくは短いかによって、ノイズが画像形成面15c上に存在するか否かを判別することができる。
【0094】
具体的には、距離算出処理S4によって算出された距離(以下、「算出距離」ともいう。)Zが10.5mmと同じである場合は、ノイズが画像形成面15c上に存在すると判断することができる。また、算出距離Zが10.5mmよりも所定量だけ短い場合は、ノイズが画像形成面15cよりも手前側に存在すると判断することができる。また、算出距離Zが10.5mmよりも所定量だけ長い場合は、ノイズが画像形成面15cよりも奥側に存在すると判断することができる。このような判断基準に基づくノイズ判別処理につき、以下に説明する。所定量は、熱移動抑制シート27の位置や読取用プレート66の位置によって決まる。その理由は、読取用プレート66に付着する異物80や熱移動抑制シート27の表面模様が、ノイズの発生源になり得るためである。
【0095】
(ノイズ判別処理)
ノイズ判別処理S5は、ノイズ判別部75によって行われる処理である。
図19は、ノイズ判別処理S5の手順を示すフローチャートである。
まず、ノイズ判別部75は、用紙15の厚さに関連づけて記憶部58に記憶されている閾値テーブルを、記憶部58から読み出して取得する(ステップS51)。用紙15の厚さは、たとえば
図2に示すように、画像形成部12に用紙厚検出部18を設け、この用紙厚検出部18によって検出すればよい。用紙厚検出部18の構成としては、たとえば、固定ローラと可動ローラからなる一対の厚み検出ローラで用紙15を挟み込み、そのときの可動ローラの変位量をセンサ等によって検出する構成を採用することが可能である。
【0096】
図20は、閾値テーブルの一例を示す図である。
図20に示す閾値テーブルは、大きくは、3つの閾値を含んでいる。第1の閾値は、ノイズが用紙15の画像形成面15cよりも手前側に存在するか否かを判別するための閾値である。第1の閾値は、「10.3mm以下」に設定されている。第2の閾値は、ノイズが用紙15の画像形成面15c上に存在するか否かを判別するための閾値である。第2の閾値は、「10.5±0.1mm」に設定されている。第3の閾値は、ノイズが用紙15の画像形成面15cよりも奥側に存在するか否かを判別するための閾値である。第3の閾値は、「10.7mm以上」に設定されている。各々の閾値は、読取基準面24aからノイズ発生源までの距離を規定するものである。
【0097】
第2の閾値に関しては、画像読取部24の機械設計上、読取基準面24aから画像形成面15cまでの距離が10.5mmとなるように設計されている場合は、閾値=10.5mmに設定してもよいし、所定の誤差を考慮したマージンを見込んで閾値=10.5±0.1mmに設定してもよい。所定の誤差には、画像読取部24を構成する部品の寸法誤差などが含まれる。
図20に示す閾値テーブルは、一例としてマージンを0.1mmとし、このマージンを見込んで第2の閾値を設定した例を示している。
【0098】
上述した閾値テーブルは、読取基準面24aからノイズ発生源までの距離が10.4mm以上10.6mm以下(10.5±0.1mm)の場合と、当該距離が10.3mm以下の場合と、当該距離が10.7mm以上の場合で、ノイズが存在する位置を分類するように設定されている。具体的には、閾値テーブルは、読取基準面24aからノイズ発生源までの距離が10.4mm以上10.6mm以下の場合は、ノイズが用紙15の画像形成面15c上に存在すると分類し、当該距離が10.3mm以下の場合はノイズが用紙15の画像形成面15cよりも手前側に存在すると分類し、当該距離が10.7mm以上の場合はノイズが用紙15の画像形成面15cよりも奥側に存在すると分類するように設定されている。
【0099】
なお、用紙厚検出部18によって検出される用紙15の厚さが厚くなると、用紙15の画像形成面15cの位置が画像読取部24の読取基準面24aに近くなる。また、用紙厚検出部18によって検出される用紙15の厚さが薄くなると、用紙15の画像形成面15cの位置が画像読取部24の読取基準面24aから遠くなる。このため、記憶部58には、様々な用紙15の厚さに関連づけて複数の閾値テーブルがあらかじめ記憶されている。そして、ノイズ判別部75は、用紙厚検出部18によって検出された用紙15の厚さに関連づけて記憶部58に記憶されている閾値テーブルを、記憶部58から読み出して取得する。ノイズ判別部75が、記憶部58から閾値テーブルを読み出して取得することは、ノイズが画像形成面15c上に存在するか否かを判別するための閾値を設定することに相当する。
【0100】
次に、ノイズ判別部75は、上述した距離算出処理S4により、ノイズに関連づけて記憶部58に記憶されている算出距離Zを、記憶部58から読み出して取得する(ステップS52)。
【0101】
次に、ノイズ判別部75は、ステップS52で取得した算出距離Zを、閾値テーブルに設定されている閾値と比較し(ステップS53)、この比較結果に基づいて、ノイズが存在する位置を分類する。たとえば、
図20に示す閾値テーブルを用いる場合、ノイズ判別部75は、算出距離Zが10.3mm以下であれば、ステップS54でYESと判断した後、ノイズが用紙15の画像形成面15cよりも手前側に存在すると分類する(ステップS55)。また、ノイズ判別部75は、算出距離Zが10.3mmを超える場合は、ステップS54でNOと判断してステップS56の処理に移行する。
【0102】
次に、ノイズ判別部75は、算出距離Zが10.4mm以上10.6mm以下であれば、ステップS56でYESと判断した後、ノイズが用紙15の画像形成面15c上に存在すると分類する(ステップS57)。また、ノイズ判別部75は、算出距離Zが10.6mmを超える場合は、ステップS56でNOと判断してステップS58の処理に移行し、ノイズが用紙15の画像形成面15cよりも奥側に存在すると分類する(ステップS58)。
【0103】
このような分類処理においては、ノイズが画像形成面15c上に存在するか否かを通知部によってユーザーに通知してもよい。通知部は、たとえば、操作表示部53によって構成することができる。通知部を操作表示部53によって構成する場合は、ノイズが画像形成面15c上に存在するか否かを通知するメッセージを操作表示部53に表示すればよい。
【0104】
上述した分類処理において、ノイズが用紙15の画像形成面15cよりも手前側に存在すると分類した場合は、ノイズの発生原因として、読取用プレート66に異物80が付着して可能性が高い。このため、ノイズ判別部75は、ステップS55の処理を行った後の処理として、所定のメンテナンス作業を行うよう、ユーザーに促す報知処理を行う(ステップS60)。所定のメンテナンス作業には、画像読取部24の読取用プレート66に異物80が付着していないかどうかを確認する作業と、読取用プレート66に付着した異物80を取り除く作業とが含まれる。報知処理は、たとえば、操作表示部53にメッセージを表示する処理、あるいは、ユーザーが所持する端末装置に通信部59からメッセージを送信することにより、端末装置の表示画面にメッセージを表示させる処理などである。また、報知処理は、音声を出力する処理であってもよい。
【0105】
また、ノイズが用紙15の画像形成面15cよりも奥側に存在すると分類した場合は、そのノイズの発生原因として、搬送ドラム20や熱移動抑制シート27の映り込みが考えられ、その場合はそのままノイズ判別処理S5を終了する。
【0106】
一方、ノイズが用紙15の画像形成面15c上に存在すると分類した場合、ノイズ判別部75は、そのノイズがノズル欠17によるものであると特定する(ステップS61)。次に、ノイズ判別部75は、ノズル欠17を発生原因と特定したノイズの位置を、画像補正部76による補正対象位置に設定する(ステップS62)。
【0107】
なお、ノイズ判別部75は、次のような閾値設定機能を備えてもよい。この閾値設定機能は、ノズル欠17を含む用紙15の画像を第1の読取センサ62aおよび第2の読取センサ62bによって読み取って得られる、第1の画像81aおよび第2の画像81bに基づいて、閾値を設定する機能である。具体的には、
図10に示す処理を開始する以前に、ノズル欠17を含む用紙15の画像を第1の読取センサ62aおよび第2の読取センサ62bによって読み取る。このとき、第1の読取センサ62aによって得られる第1の画像81aと第2の読取センサ62bによって得られる第2の画像81bには、それぞれノズル欠17によるノイズが含まれる。そして、第1の画像81a上におけるノイズの位置と、第2の画像81b上におけるノイズの位置とは、主走査方向にずれる。そこで、ノイズ判別部75は、第1の画像81a上におけるノイズと第2の画像81b上におけるノイズとの位置ずれ量を、位置ずれ検出部73に検出させ、その検出結果である位置ずれ量を距離算出部74に与えることにより、読取基準面24aからノイズ発生源までの距離を距離算出部74に算出させる。そして、ノイズ判別部75は、距離算出部74の算出結果である距離、または当該距離にマージンを見込んだ値を、第2の閾値として設定する。また、ノイズ判別部75は、第1の閾値を第2の閾値未満の値に設定するとともに、第3の閾値を第2の閾値超の値に設定する。このような閾値設定機能をノイズ判別部75に持たせることにより、用紙15の厚さが特定できない場合でも、用紙15の厚さに応じて閾値を適切に設定することができる。
【0108】
また、閾値設定機能を有するノイズ判別部75の構成としては、上述したノズル欠17を含む用紙15の画像16に代えて、視差を特定可能なパターン(以下、「視差特定パターン」という。)を含む用紙15の画像を第1の読取センサ62aおよび第2の読取センサ62bによって読み取って得られる、第1の画像81aおよび第2の画像81bに基づいて、閾値を設定する構成であってもよい。この構成においては、第1の読取センサ62aによって得られる第1の画像81aと第2の読取センサ62bによって得られる第2の画像81bに、それぞれ視差特定パターンによるノイズが含まれる。このため、ノイズ判別部75は、上記同様の方法により、閾値を設定することができる。視差特定パターンは、視差を特定可能なパターンであれば、どのようなパターンであってもよい。一例を挙げると、視差特定パターンとしては、副走査方向Yに平行な直線パターンを採用することができる。
【0109】
(画像補正処理)
画像補正処理は、画像補正部76によって行われる処理である。画像補正部76は、上述したノイズ判別処理S5により、ノイズが画像形成面15c上に存在すると判断された場合のみ、画像補正処理を行う。画像補正処理は、ノズル欠17による画像の欠損を補正する処理である。画像補正部76は、上述したノイズ判別処理S5により、ノズル欠17によるノイズであると特定されたノイズの位置を補正対象位置として、画像補正処理を行う。ノズル欠17によるノイズの位置は、用紙15に画像を形成するときにインク吐出不良を起こしたノズル244の位置に対応する。
【0110】
このため、画像補正処理において、まず、画像補正部76は、ノズル欠17によるノイズの位置に基づいて、インク吐出不良を起こしたノズル244の位置を特定する。本実施形態においては、一例として、
図4に示す複数のノズル244のうち、ノズル244aがインク吐出不良を起こしたものとする。
【0111】
次に、画像補正部76は、不良ノイズであるノズル244aに隣接するノズル244、あるいはノズル244aに代替するノズル244により、ノズル244aで形成すべき画像を補うように、ヘッド駆動部55によるインクジェットヘッド32の駆動条件を変更する。これにより、ノズル欠17が生じた用紙15の後に搬送される用紙15に画像を形成する場合は、不良ノイズによるノズル欠17の発生を解消または低減することができる。このため、ノズル吐出不良が解消されるまでのあいだ、インク吐出不良に起因した画質の劣化を抑制することができる。
【0112】
(画質調整処理)
画質調整処理は、画質調整部77によって行われる処理である。
画質調整部77は、第1の読取センサ62aによって得られる第1の画像81a、および/または、第2の読取センサ62bによって得られる第2の画像81bに基づいて、画質調整を実施する。その際、
図8に示すように、読取用プレート66に異物80が付着していると、第1の画像81aと第2の画像81bの両方に、異物80を原因とするノイズが発生する。このノイズは、画像の部分的な欠損となって現れる。このため、たとえば、画質調整部77が第1の画像81aに基づいて画質調整を実施する場合は、第1の画像81aに発生したノイズの部分から、画質調整に必要な情報が得られなくなる。
【0113】
そこで、本実施形態に係る画質調整部77は、第1の画像81aおよび第2の画像81bのうち、一方の画像に存在するノイズの部分を、当該ノイズの位置に対応する他方の画像の一部で補って、画質調整を実施する。画像読取部24で用紙15の画像形成面15cを読み取る場合、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bは、用紙15の画像形成面15cを異なる方向から同時に撮像する。このため、
図8に示すように、読取用プレート66に異物80が付着している場合、異物80に遮られて第1の画像81aに現れるノイズの位置と、異物80に遮られて第2の画像81bに現れるノイズの位置とは異なる。換言すると、第1の読取センサ62aでは異物80に遮られて見えない画像部分が、第2の読取センサ62bでは異物80に遮られることなく見える。同様に、第2の読取センサ62bでは異物80に遮られて見えない画像部分が、第1の読取センサ62aでは異物80に遮られることなく見える。つまり、第1の画像81aおよび第2の画像81bのうち、一方の画像ではノイズとなって欠損する部分が、他方の画像では欠損のない正常な部分として見える。
【0114】
このため、画質調整部77は、たとえば、第1の画像81aに基づいて画質調整を実施する場合に、異物80によるノイズが第1の画像81aに発生しても、そのノイズの部分、すなわち画像の欠損部分を、そのノイズの位置に対応する第2の画像81bの一部で補う。これにより、画質調整部77においては、欠損のない画像に基づいて画質調整を実施することができる。その結果、耐ノイズ性に優れた画質調整を実現することが可能となる。
【0115】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態においては、第1の読取センサ62aによって得られる第1の画像81aと、第2の読取センサ62bによって得られる第2の画像81bとに基づいて、第1の読取センサ62aと第2の読取センサ62bとの視差によって生じるノイズの位置ずれ量を求め、この位置ずれ量に基づいて、ノイズが画像形成面15c上に存在するか否かを判別する。これにより、ノズル欠17によるノイズと、それ以外のノイズとを区別して認識することができる。したがって、用紙15の画像16を画像読取部24で読み取る場合に、その読み取り結果として得られる画像81a,81bに含まれるノイズが、ノズルのインク吐出不良に起因するノイズであるか否かを、より的確に判別することが可能となる。
【0116】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件、あるいは、その構成要件の組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0117】
たとえば、画像形成装置10は、画像読取部24で読取対象となる用紙15が光透過性を有するか否かを判別する用紙判別部を備え、距離算出部74は、用紙判別部の判別結果において、用紙15が光透過性を有しない場合は、読取基準面24aから画像形成面15cまでの距離を規定する閾値以下の範囲で距離Zを算出し、用紙15が光透過性を有する場合は、上記閾値以下および上記閾値超の範囲で距離Zを算出する構成を採用してもよい。このような構成を採用することにより、距離算出部74の演算にかかる処理の負荷を軽減することができる。
なお、読取基準面24aから画像形成面15cまでの距離を規定する閾値とは、上述した第2の閾値のことである。また、用紙判別部は、たとえば、用紙搬送路を介して対向する発光部と受光部とを有する透過型のフォトセンサを備え、発光部から発した光のうち、用紙15を透過した光を受光部で受光し、その受光量に基づいて、用紙15が光透過性を有するか否かを判別する構成であってもよい。また、用紙判別部は、ユーザーが操作表示部53を操作して入力した用紙15に関する情報に基づいて、用紙15が光透過性を有するか否かを判別する構成であってもよい。
【0118】
また、画像形成装置10は、用紙15のサイズを検出する用紙サイズ検出部を備え、ノイズ抽出部71は、用紙サイズ検出部によって検出された用紙15のサイズに応じて、ノイズを抽出する対象領域を決定する構成を採用してもよい。このような構成を採用することにより、用紙15のサイズが大きい場合は、ノイズを抽出する対象領域をより大きく確保し、用紙15のサイズが小さい場合は、ノイズを抽出する対象領域をより小さく絞り込むことができる。このため、第1の画像81aに含まれるノイズを確実に抽出しつつ、ノイズ抽出処理を効率よく行うことができる。
なお、用紙サイズ検出部は、たとえば、用紙搬送路を通過する用紙15の幅方向の端部と直交する向きで配置されたリニアイメージセンサを備え、このリニアイメージセンサによって検出される用紙15の幅方向の端部位置に基づいて、用紙幅方向の用紙15のサイズを検出する構成であってもよい。また、用紙サイズ検出部は、ユーザーが操作表示部53を操作して入力した用紙15に関する情報に基づいて、用紙15のサイズを検出する構成であってもよい。
【0119】
また、上記実施形態においては、画像読取部24に設けられた2つの読取センサ62a,62bのうち、一方の読取センサ62aを第1の読取センサとし、他方の読取センサ62bを第2の読取センサとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、読取センサ62bを第1の読取センサとし、読取センサ62aを第2の読取センサとしてもよい。
【0120】
また、上記実施形態においては、シート搬送体の一例として搬送ドラム20を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、シート搬送体として搬送ベルトを備えるものにも適用可能である。
【0121】
また、上記実施形態においては、ノイズ判別部75が閾値設定機能を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ノイズ判別部75とは別に閾値設定部を設け、ノイズ判別部75は、閾値設定部が設定した閾値に基づいて、ノイズが画像形成面上に存在するか否かを判別するものであってもよい。
【0122】
また、上記実施形態においては、画像形成部12に用紙厚検出部18を設けた例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、ユーザーが操作表示部53を操作して用紙15の情報を入力し、この入力情報から用紙15の厚さを検出できる場合は、操作表示部53を用紙厚検出部として機能させることができる。ユーザーが入力する用紙15の情報としては、用紙15の種類、銘柄などの情報が考えられる。
【0123】
また、上述した位置ずれ検出処理、距離算出処理およびノイズ判別処理の各処理は、ノイズ抽出処理によって抽出されたノイズごとに行われるものである。ノイズ抽出処理によって複数のノイズが抽出された場合は、複数のノイズについて、位置ずれ検出処理、距離算出処理およびノイズ判別処理を順に行ってもよいし、1つのノイズについて、位置ずれ検出処理、距離算出処理およびノイズ判別処理を行った後、他のノイズについて、先のノイズと同様に、位置ずれ検出処理、距離算出処理およびノイズ判別処理を行ってもよい。
【0124】
また、本発明は、画像形成装置として実現するだけでなく、画像読取装置、画像読取方法またはプログラムとして実現することも可能であり、画像形成方法として実現することも可能である。本発明を画像読取装置として実現する場合、この画像読取装置は、画像読取部24と、制御部51とを少なくとも備える構成となる。
【0125】
また、本明細書においては、「平行」および「直交」などの用語を使用したが、各々の用語は、厳密な「平行」および「直交」のみを意味する用語ではなく、厳格な意味での「平行」および「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」および「略直交」の意味をも含むものである。
【符号の説明】
【0126】
10…画像形成装置
15…用紙(シート)
15c…画像形成面
17…ノズル欠
18…用紙厚検出部(シート厚検出部)
20…搬送ドラム(シート搬送体)
24…画像読取部
24a…読取基準面
51…制御部
53…操作表示部(通知部)
62…読取センサ
62a…第1の読取センサ
62b…第2の読取センサ
64…縮小光学系
64a…第1の縮小光学系
64b…第2の縮小光学系
71…ノイズ抽出部
73…位置ずれ検出部
74…距離算出部
75…ノイズ判別部
76…画像補正部
77…画質調整部
81a…第1の画像
81b…第2の画像
82,83,84…ノイズ
X…主走査方向