(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】血液成分測定装置及び血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240228BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20240228BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61M1/36 100
A61M1/16 110
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2020093112
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】星野 歩
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523254(JP,A)
【文献】特開2018-021940(JP,A)
【文献】特開2012-237758(JP,A)
【文献】特開2009-136326(JP,A)
【文献】国際公開第2012/049753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/16
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液に向けて照射された光の透過光又は反射光の強度に基づいて、血液成分の濃度変化を継続的に測定する血液成分測定装置であって、
可視光を含む複数の波長帯の光を発光する発光部と、
前記発光部から照射される光の透過光又は反射光を受光し、電圧に変換して出力する受光部と、
前記発光部の点灯及び消灯を制御する発光制御部と、
前記受光部の出力電圧に基づいて、血液成分の濃度を算出する濃度算出部と、
を備え、
前記発光制御部は、所定の周期で点灯区間が重ならないように複数の波長帯で前記発光部をそれぞれ点滅させ、複数の消灯区間のうち、1つの消灯区間の長さが前記受光部の出力電圧の立ち下がり時間よりも長く、かつ、その他の消灯区間の長さが前記1つの消灯区間よりも短くなるように制御し、
前記濃度算出部は、前記1つの消灯区間において前記受光部の出力電圧を外光の出力電圧として取得し、前記点灯区間における前記受光部の出力電圧から前記外光の出力電圧を減じた値に基づいて血液成分の濃度を算出する血液成分測定装置。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記その他の消灯区間が前記受光部の出力電圧の立ち下がり時間よりも短くなるように制御する請求項1に記載の血液成分測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、複数の受光素子を有しており、
前記複数の受光素子は、それぞれ異なる波長帯の光を受光し、
前記濃度算出部は、前記1つの消灯区間において、前記複数の受光素子の各出力電圧を各外光の出力電圧として取得し、それぞれの波長帯の点灯区間における前記複数の受光素子の各出力電圧から前記各外光の出力電圧を減じた値に基づいて血液成分の濃度を算出する請求項1又は2に記載の血液成分測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の血液成分測定装置と、
血液浄化器と、
血液回路と、
前記血液回路に設けられ、前記血液浄化器に血液を送るための血液ポンプと、
前記血液回路を流れる血液の成分濃度を測定するための測定部と、
制御装置と、
を備える血液浄化装置であって、
前記発光部及び前記受光部は、前記測定部に設けられ、
前記発光制御部及び前記濃度算出部は、前記制御装置に設けられる血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外循環する血液中の血液成分の濃度変化を継続的に測定可能な血液成分測定装置及び血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透析治療等の血液浄化療法において、患者の血液に含まれる血液成分の濃度は、治療の効果や効率を判断するための重要な指標となる。血液成分の濃度は、治療中にも変化していくので、体外循環する血液成分の濃度変化を継続的に測定する必要がある。継続的な血液成分の濃度の測定方法として、チューブ等を介して血液に非接触で所定の波長の光を発光部から照射し、その透過光や反射光の強度を受光部で電圧に変換し、受光部の出力電圧に基づいて濃度を測定する方法が知られている。
【0003】
このように光を用いた測定においては、受光部に入射する外光により受光部の出力電圧に誤差が生じる。この誤差を低減するため、例えば、特許文献1には、発光部の消灯及び点灯を繰り返し行い、消灯中における出力電圧を外光の出力電圧として、点灯中における出力電圧から減じて補正を行い、濃度を算出する方法が記載されている。発光部の点滅ごとに補正を行うので、継続的に精度よく成分濃度の測定が可能となっている。
【0004】
また、特許文献2には、複数の発光部を用いて、血液中のヘマトクリット値や酸素飽和度等の血液成分濃度を測定可能な血液浄化装置が記載されている。
一般的に、酸素飽和度の測定には、約600nm及び約800nmの2つの波長帯の光が用いられ、また、ヘマトクリット値の測定には、約800nmの波長帯の光が用いられる。また、ヘマトクリット値を精度よく測定するために、約800nmに加えて、約1300nmの2つの波長帯の光が用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-97782号公報
【文献】特開2016-125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献2に記載されているように、複数の波長帯の光を用いる測定において、特許文献1に記載の方法で精度よく測定するには、それぞれの消灯の時間を残光がなくなる程度まで長くして外光の出力電圧を測定すればよい。しかしながら、複数の波長帯の光を発光させるので、消灯の時間を長くすると、それぞれの波長帯の光の点灯の周期が長くなってしまう。そのため、測定にかかる時間が長くなってしまう。
【0007】
従って、本発明は、短時間で血液成分の濃度を精度よく測定できる血液成分測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血液に向けて照射された光の透過光又は反射光の強度に基づいて、血液成分の濃度変化を継続的に測定する血液成分測定装置であって、可視光を含む複数の波長帯の光を発光する発光部と、前記発光部から照射される光の透過光又は反射光を電圧に変換して出力する受光部と、前記発光部の点灯及び消灯を制御する発光制御部と、前記受光部の出力電圧に基づいて、血液成分の濃度を算出する濃度算出部と、を備え、前記発光制御部は、所定の周期で点灯区間が重ならないように複数の波長帯で前記発光部をそれぞれ点滅させ、複数の消灯区間のうち、1つの消灯区間の長さが前記受光部の出力電圧の立ち下がり時間よりも長く、かつ、その他の消灯区間の長さが前記1つの消灯区間よりも短くなるように制御し、前記濃度算出部は、前記1つの消灯区間において前記受光部の出力電圧を外光の出力電圧として取得し、前記点灯区間における前記受光部の出力電圧から前記外光の出力電圧を減じた値に基づいて血液成分の濃度を算出する血液成分測定装置に関する。
【0009】
また、前記発光制御部は、前記その他の消灯区間が前記受光部の出力電圧の立ち下がり時間よりも短くなるように制御することが好ましい。
【0010】
また、前記受光部は、複数の受光素子を有しており、前記複数の受光素子は、それぞれ異なる波長帯の光を受光し、前記濃度算出部は、前記1つの消灯区間において、前記複数の受光素子の各出力電圧を各外光の出力電圧として取得し、それぞれの波長帯の点灯区間における前記複数の受光素子の各出力電圧から前記各外光の出力電圧を減じた値に基づいて血液成分の濃度を算出することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記血液成分測定装置と、血液浄化器と、血液回路と、前記血液回路に設けられ、前記血液浄化器に血液を送るための血液ポンプと、前記血液回路を流れる血液の成分濃度を測定するための測定部と、制御装置と、を備える血液浄化装置であって、前記発光部及び前記受光部は、前記測定部に設けられ、前記発光制御部及び前記濃度算出部は、前記制御装置に設けられる血液浄化装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の血液成分測定装置によれば、複数の消灯区間のうち、1つの消灯区間を長くすることで外光の出力電圧を正確に取得して血液成分の濃度を精度よく測定可能であると共に、その他の消灯区間を短くすることにより短時間で血液成分の濃度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る血液成分測定装置を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態における測定部の構成を説明するための模式図である。
【
図3】第1実施形態における受光部の出力電圧を示すグラフである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る血液成分測定装置を備える血液浄化装置の概略構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態における血液浄化装置のブロック図である。
【
図6】第2実施形態における測定部の構成を説明するための模式図である。
【
図7】第2実施形態における受光部の出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の血液成分測定装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の血液成分測定装置は、透析療法等を行う血液浄化装置や人工心肺装置等を用いて患者の血液を体外循環させて行う治療において、血液成分の濃度を血液に非接触で継続的に測定可能とするものである。第1実施形態では、血液成分として酸素飽和度を測定可能な血液成分測定装置について説明し、第2実施形態では、血液成分として、酸素飽和度及びヘマトクリット値を測定可能な血液成分測定装置を備える血液浄化装置について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1~
図3を参照して第1実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る血液成分測定装置1を示すブロック図である。
図1に示すように、血液成分測定装置1は、測定部10と、制御部20と、表示部30と、を備える。
【0016】
測定部10は、2つの波長帯の光を発光する発光部11と、発光部11から照射される透過光又は反射光を受光して電圧に変換し出力する受光部12と、を有し、血液が流れるチューブや血液チャンバ等の流路に取り付けられる。
【0017】
発光部11は、2つの発光素子L1、L2と、発光回路LCと、を含んで構成される。本実施形態では、血液成分の一例として、酸素飽和度を測定するので、発光素子L1として、可視光である約600nmの波長帯の光を発光する発光ダイオードを用い、発光素子L2として、約800nmの波長帯の光を発光する発光ダイオードを用いる。発光回路LCは、後述する発光制御回路21から送られる信号に基づいて、発光素子L1、L2を点灯又は消灯させる。約600nmの波長帯の光は、主に還元ヘモグロビンにより吸収され、約800nmの波長帯の光は、主に還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンにより吸収される。これら2つの波長帯の光が血液に照射されると、一部は吸収され、一部は透過し、一部は反射する。
【0018】
受光部12は、1つの受光素子F1と、受光回路RCと、を含んで構成されている。本実施形態で用いる2つの波長帯は、約600nmと約800nmで近いため、受光素子F1は、両方の波長帯の光を受光可能なフォトダイオードを用いる。2つの波長帯についてそれぞれ別のフォトダイオードを用いてもよい。受光回路RCは、受光素子F1に入射された光の強度に応じて流れる微弱な電流を電圧に変換して増幅させて出力する回路である。
本実施形態では、
図2に示すように、発光部11と受光部12は並列に配置されて、チューブを流れる血液Bに向けて発光部11から光が照射され、血液の表面部において反射された反射光が受光部12に入射して、電圧に変換される。
【0019】
制御部20は、発光制御部21と、濃度算出部22と、を備える。
発光制御部21は、発光部11におけるそれぞれの発光素子L1、L2を所定の周期で点滅させるための信号を発光回路LCに送り、発光部11の点灯及び消灯を制御する。
濃度算出部22は、受光回路RCから出力された電圧に基づいて血液成分としての酸素飽和度を算出する。具体的な算出方法については、後に詳しく説明する。
【0020】
表示部30は、濃度算出部22で算出された血液成分の濃度や、血液成分の経時変化等を表示する液晶パネル等により構成される。
【0021】
次に、具体的な血液成分の濃度の測定方法について、
図3を参照しながら説明する。
発光制御部21は、発光素子L1、L2をそれぞれ所定の周期Tで点滅させるように発光部11を制御する。このように所定の周期Tで発光部11を点滅させた場合、受光部12の出力電圧は、
図3に示すような波形となる。
【0022】
図3において、発光素子L1の点灯開始から消灯開始までの区間を点灯区間Ton1とし、発光素子L2の点灯開始から消灯開始までの区間を点灯区間Ton2とする。また、発光素子L2の消灯開始から発光素子L1の点灯開始までの区間を消灯区間Toff1とし、発光素子L1の消灯開始から発光素子L2の点灯開始までの区間を消灯区間Toff2とする。
【0023】
この場合、所定の周期T=Toff1+Ton1+Toff2+Ton2の関係が成立する。ここで、発光制御部21は、2つの消灯区間Toff1、Toff2のうち、消灯区間Toff1よりも消灯区間Toff2が短くなるように制御する。また、消灯区間Toff1は、発光素子L2の点灯による残光の影響がなくなった後も続くように、長さが設定される。
【0024】
つまり、点灯区間Ton2において、所定の値まで上昇した出力電圧は、消灯区間Toff1において、所定の立ち下がり時間で立ち下がって収束する。つまり、消灯区間Toff1において、所定の立ち下がり時間が過ぎた後は、受光部12の出力電圧は、外光の入射による出力電圧Vnであるとみなすことができる。
【0025】
本実施形態では、一例として、Ton1=Ton2=Toff1=8msとし、Toff2=4msとした。このように外光の出力電圧Vnを取得するための消灯区間Toff1以外の消灯区間Toff2を短く設定すると、周期Tを短くすることができる。これにより、短時間で血液濃度の測定が可能となる。例えば、本実施形態の場合、周期T=28msとなり、可視光を発光する発光素子L1の1秒間の点滅回数は、35.7回となる。一般的に1秒間に35回以上の点滅は、ちらついて見えないため、上述の設定でちらつきを低減することもできる。
【0026】
濃度算出部22は、消灯区間Toff1において、受光部12の出力電圧を外光の出力電圧Vnとして取得する。次に、発光素子L1の点灯区間Ton1において、出力電圧V1から外光の出力電圧Vnを減じた値を、補正電圧Vc1として取得する。最後に、発光素子L2の点灯区間Ton2において、出力電圧V2から外光の出力電圧Vnを減じた値を、補正電圧Vc2として取得する。濃度算出部22は、還元ヘモグロビンの濃度に依存する補正電圧Vc1と、還元ヘモグロビンの濃度及び酸化ヘモグロビンの濃度に依存する補正電圧Vc2から、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの割合を求めて、酸素飽和度を算出する。以下、これを繰り返し、継続的に濃度を算出する。
【0027】
以上説明した第1実施形態の血液成分測定装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0028】
(1)血液成分測定装置1は、発光制御部21に、所定の周期Tで点灯区間が重ならないように複数の波長帯で発光部11をそれぞれ点滅させ、複数の消灯区間Toff1、Toff2のうち、1つの消灯区間Toff1の長さが受光部12の出力電圧の立ち下がり時間よりも長く、かつ、その他の消灯区間Toff2の長さが1つの消灯区間Toff1よりも短くなるように制御させるものとし、濃度算出部22に、1つの消灯区間Toff1において外光の出力電圧Vnを取得させ、点灯区間Ton1、Ton2における受光部12の出力電圧V1、V2から外光の出力電圧Vnを減じた値Vc1、Vc2に基づいて血液成分の濃度を算出させた。これにより、すべての消灯区間を残光がなくなる程度まで長くする必要がないので、血液濃度の測定を短時間で、かつ、精度よく濃度を算出させられる。また、周期Tを短くしてちらつきを低減することができる。
【0029】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る血液成分測定装置1Aについて
図4~
図7を参照して説明する。第2実施形態においては、体外循環装置が血液成分測定装置1Aを備える構成について説明する。体外循環装置の一例として、透析療法を実施可能な血液浄化装置100Aについて説明する。本実施形態で説明する血液浄化装置100Aは、腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化すると共に、装置の構成部材の洗浄を行うプライミング工程、患者から血液を脱血する脱血工程、血液中の余分な水分を除去する透析工程、患者に血液を返す返血工程等の各工程を、血液回路内の透析液の流れを制御することで連続して自動的に行う自動血液浄化装置である。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態に係る血液成分測定装置1Aを含む血液浄化装置100Aの概略構成を示す図であり、透析工程における状態を示しており、
図5は、血液浄化装置100Aのブロック図である。
【0031】
図4に示すように、血液浄化装置100Aは、血液を流すための血液回路110と、血液浄化器120と、測定部10Aと、透析液回路130と、制御装置140と、を備える。
【0032】
血液回路110は、動脈側ライン111と、静脈側ライン112と、薬剤ライン113と、排液ライン114と、血液チャンバ115と、を有する。動脈側ライン111、静脈側ライン112、薬剤ライン113及び排液ライン114は、いずれも液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
【0033】
動脈側ライン111は、一端側が後述する血液浄化器120の血液導入口122aに接続される。動脈側ライン111には、動脈側接続部111a、動脈側気泡検知器111b、及び血液ポンプ111c、動脈側クランプ111dが配置される。
動脈側接続部111aは、動脈側ライン111の他端側に配置される。動脈側接続部111aには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
動脈側気泡検知器111bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
血液ポンプ111cは、動脈側ライン111における動脈側気泡検知器111bよりも下流側に配置される。血液ポンプ111cは、動脈側ライン111を構成するチューブをローラーでしごくことにより、動脈側ライン111の内部の血液やプライミング液等の液体を送出する。
動脈側クランプ111dは、動脈側気泡検知器111bよりも上流側に配置される。動脈側クランプ111dは、例えば、動脈側ライン111を介して返血する場合に、動脈側気泡検知器111bによる気泡の検出結果に応じて制御され、動脈側ライン111の流路を開閉する。
【0034】
静脈側ライン112は、一端側が後述する血液浄化器120の血液導出口122bに接続される。静脈側ライン112には、静脈側接続部112a、静脈側気泡検知器112b、ドリップチャンバ112c、及び静脈側クランプ112dが配置される。
静脈側接続部112aは、静脈側ラインの他端側に配置される。静脈側接続部112aには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
静脈側気泡検知器112bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
ドリップチャンバ112cは、静脈側気泡検知器112bよりも上流側に配置される。ドリップチャンバ112cは、静脈側ライン112に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、また、静脈圧を測定するため、一定量の血液を貯留する。
静脈側クランプ112dは、静脈側気泡検知器112bよりも下流側に配置される。静脈側クランプ112dは、静脈側気泡検知器112bによる気泡の検出結果に応じて制御され、静脈側ライン112の流路を開閉する。
【0035】
薬剤ライン113は、血液透析中に必要な薬剤を動脈側ライン111に供給する。薬剤ライン113は、一端側が薬剤を送り出す薬液ポンプ113aに接続され、他端側が動脈側ライン111に接続される。また、薬剤ライン113には不図示のクランプ手段が設けられており、薬剤を注入するとき以外は、クランプ手段により流路は閉鎖された状態である。第2実施形態では、薬剤ライン113の他端側は、動脈側ライン111における血液ポンプ111cよりも下流側に接続される。
【0036】
排液ライン114は、ドリップチャンバ112cに接続される。排液ライン114には、排液ラインクランプ114aが配置される。排液ライン114は、血液回路110及び血液浄化器120を洗浄して清浄化するプライミング工程でプライミング液を排液するためのラインである。
【0037】
血液チャンバ115は、血液回路110のうち測定部10Aを取り付ける箇所に設けるものである。血液チャンバ115は、透明で硬質のポリカーボネイト等の樹脂により形成されており、血液回路110を構成するチューブに比べて発光部11Aからの照射面積が大きくなるように扁平な形状に構成されている。本実施形態では、患者から取り出す血液の状態を測定するため、血液チャンバ115を動脈側ライン111に設けるものとした。血液チャンバ115の取り付け箇所は、動脈側ライン111のどこに取り付けてもよいが、動脈側ライン111の一端側である血液浄化器120の血液導入口122aとの接続部に取り付けるものとした。
【0038】
血液浄化器120は、筒状に形成された容器本体121と、この容器本体121の内部に収容された透析膜(図示せず)と、を備え、容器本体121の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体121には、血液回路110に連通する血液導入口122a及び血液導出口122bと、透析液回路130に連通する透析液導入口123a及び透析液導出口123bと、が形成される。
【0039】
以上の血液回路110及び血液浄化器120によれば、対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ111cにより動脈側ライン111を流通して血液浄化器120の血液側流路に導入される。血液浄化器120に導入された血液は、透析膜を介して後述する透析液回路130を流通する透析液により浄化される。血液浄化器120において浄化された血液は、静脈側ライン112を流通して対象者の静脈に返血される。
【0040】
測定部10Aは、
図5に示すように、3つの波長帯の光を発光する発光部11Aと、発光部11Aから照射される透過光又は反射光を電圧に変換して出力する受光部12Aと、を有し、血液チャンバ115に取り付けられる。
発光部11Aは、3つの発光素子L1、L2、L3と、発光回路LCAと、を含んで構成されている。本実施形態では、血液成分の一例として、酸素飽和度及びヘマトクリット値を測定する。酸素飽和度を測定するための発光素子L1、L2は、第1実施形態で説明したものと同様の発光ダイオードを用いるので、説明を省略する。発光素子L3は、約1300nmの波長帯の光を発光する発光ダイオードを用いる。発光回路LCAは、後述する発光制御回路21Aから送られる信号に基づいて、発光素子L1、L2、L3を点灯又は消灯させる。約1300nmの波長帯の光は、主に水により吸収され、約800nmの波長帯の光は、主にヘモグロビンにより吸収される。これら2つの波長帯の光を用いてヘマトクリット値の測定を行う。
【0041】
受光部12Aは、2つの受光素子F1、F2と、受光回路RCAと、を含んで構成されている。本実施形態で用いる3つの波長帯のうち、約600nmと約800nmは近いため、第1実施形態で説明したのと同様に受光素子F1は、両方の波長帯の光を受光可能なフォトダイオードを用いる。受光素子F2は、約1300nmの波長帯の光を受光可能なフォトダイオードを用いる。受光回路RCAは、受光素子F1、F2にそれぞれ入射された光の強度に応じて流れる微弱な電流を電圧に変換して増幅させてそれぞれの電圧を出力する回路である。
【0042】
本実施形態では、
図6に示すように、発光部11Aと受光部12Aとは、血液チャンバ115を挟んで対向して配置される。血液チャンバ115を流れる血液Bに向けて発光部11から光が照射され、血液を透過した光が受光部12Aに入射して、電圧に変換される。
【0043】
透析液回路130は、第2実施形態では、いわゆる密閉容量制御方式の透析液回路130により構成される。この透析液回路130は、透析液供給ライン131aと、透析液排液ライン131bと、透析液導入ライン132aと、透析液導出ライン132bと、透析液送液部133と、を備える。
【0044】
透析液送液部133は、透析液チャンバ1331と、バイパスライン1332と、除水/逆濾過ポンプ1333と、を備える。
透析液チャンバ1331は、一定容量(例えば、300mL~500mL)の透析液を収容可能な硬質の容器で構成され、この容器の内部は軟質の隔膜(ダイアフラム)により、送液収容部1331a及び排液収容部1331bに区画される。
バイパスライン1332は、透析液導出ライン132bと透析液排液ライン131bとを接続する。
【0045】
除水/逆濾過ポンプ1333は、バイパスライン1332に配置される。除水/逆濾過ポンプ1333は、バイパスライン1332の内部の透析液を透析液排液ライン131b側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン132b側に流通させる方向(逆濾過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0046】
透析液供給ライン131aは、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ1331に接続される。透析液供給ライン131aは透析液チャンバ1331の送液収容部1331aに透析液を供給する。
【0047】
透析液導入ライン132aは、透析液チャンバ1331と血液浄化器120の透析液導入口123aとを接続し、透析液チャンバ1331の送液収容部1331aに収容された透析液を血液浄化器120の透析液側流路に導入する。
【0048】
透析液導出ライン132bは、血液浄化器120の透析液導出口123bと透析液チャンバ1331とを接続し、血液浄化器120から排出された透析液を透析液チャンバ1331の排液収容部1331bに導出する。
【0049】
透析液排液ライン131bは、基端側が透析液チャンバ1331に接続され、排液収容部1331bに収容された透析液の排液を排出する。
【0050】
以上の透析液回路130によれば、透析液チャンバ1331を構成する硬質の容器の内部を軟質の隔膜(ダイアフラム)により区画することで、透析液チャンバ1331からの透析液の導出量(送液収容部1331aへの透析液の供給量)と、透析液チャンバ1331(排液収容部1331b)に回収される排液の量と、を同量にできる。
これにより、除水/逆濾過ポンプ1333を停止させた状態では、血液浄化器120に導入される透析液の流量と血液浄化器120から導出される透析液(排液)の量とを同量にできる。また、除水/逆濾過ポンプ1333を除水方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液から所定の速度で所定量の除水が行われる。また、除水/逆濾過ポンプ1333を逆濾過方向に送液するように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液回路110に所定量の透析液が注入(逆濾過)される。
【0051】
制御装置140は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、血液浄化装置100Aの動作を制御する。
図5に示すように、具体的には、制御装置140は、血液回路110及び透析液回路130に配置された各種のポンプやクランプ等の動作を制御して、血液浄化装置100により行われる各種工程、例えば、プライミング工程、脱血工程、透析工程、補液工程、返血工程等を実行する。
【0052】
また、制御装置140は、血液成分測定装置1Aを構成する制御部20Aを備える。制御部20Aは、発光制御部21Aと、濃度算出部22Aと、を備える。
発光制御部21Aは、発光部11Aにおけるそれぞれの発光素子L1、L2、L3を所定の周期で点滅させるための信号を発光回路LCAに送り、発光部11Aの点灯及び消灯を制御する。
濃度算出部22Aは、受光回路RCAから出力された電圧に基づいて血液成分としての酸素飽和度及びヘマトクリット値を算出する。具体的な算出方法については、後に詳しく説明する。
【0053】
上述した血液浄化装置100Aで実施される各種工程のうち、
図4に示す透析工程について簡単に説明する。
【0054】
透析工程では、患者の余剰水分の除水及び老廃物の除去が行われる。
透析工程において、動脈側接続部111aから導入される患者の血液は、動脈側ライン111を通って血液浄化器120で浄化され、静脈側ライン112を通って静脈側接続部112aから患者に戻される。
【0055】
透析工程では、
図4に示すように、動脈側接続部111a及び静脈側接続部112aは、それぞれ患者の血管に穿刺される針に接続された状態であり、排液ラインクランプ114aは閉状態、静脈側クランプ112dは開状態である。
【0056】
不図示の透析液供給装置は、透析液チャンバ1331に対して平均500mL/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆濾過ポンプ1333を、除水方向に一例として10mLで送液するように作動させ、血液浄化器120において、10mL/minの除水が行われる。
血液ポンプ111cは、例えば200mL/minの流量で動脈側接続部111a側から血液浄化器120側に血液を送出する。
血液浄化器120内には、血液導入口122aから200mL/minの流量で血液が流入し、10mL/minの流量で除水されて、血液導出口122bから190mL/minの流量で導出される。また、透析排液は、透析液導出口123bから導出される。
このようにして、透析工程において10mL/minの流量で除水が行われる。
【0057】
このように透析工程では、徐々に除水が行われて患者の血液が濃縮されて行くので、血液成分としてヘマトクリット値を測定することで、除水速度の調整が可能となり、再循環の測定等が可能となる。また、ヘマトクリット値に基づいて、患者の循環血液量の変化も算出することが可能である。また、透析工程において、酸素飽和度を測定することで、睡眠時無呼吸症候群等を検出できる可能性がある。
【0058】
次に、本実施形態における具体的な血液成分の濃度の測定方法について、
図7を参照しながら説明する。
発光制御部21Aは、発光素子L1、L2、L3をそれぞれ所定の周期T
Aで点滅させるように発光部11Aを制御する。このように所定の周期T
Aで発光部11Aを点滅させた場合、受光部12Aの出力電圧としては、受光素子F1からの出力電圧1と、受光素子F2からの出力電圧2と、が得られる。それぞれの出力電圧1及び出力電圧2は、
図7に示すような波形となる。
図7において、発光素子L1の点灯開始から消灯開始までの区間を点灯区間T
Aon1とし、発光素子L2の点灯開始から消灯開始までの区間を点灯区間T
Aon2とし、発光素子L3の点灯開始から消灯開始までの区間を点灯区間T
Aon3とする。また、発光素子L3の消灯開始から発光素子L1の点灯開始までの区間を消灯区間T
Aoff1とし、発光素子L1の消灯開始から発光素子L2の点灯開始までの区間を消灯区間T
Aoff2とし、発光素子L2の消灯開始から発光素子L3の点灯開始までの区間を消灯区間T
Aoff3とする。所定の周期T
A=T
Aoff1+T
Aon1+T
Aoff2+T
Aon2+T
Aoff3+T
Aon3の関係が成立する。発光制御部21Aは、3つの消灯区間T
Aoff1、T
Aoff2、及び、T
Aoff3のうち、1つの消灯区間T
Aoff3よりも、その他の消灯区間T
Aoff1、T
Aoff2が短くなるように制御する。また、消灯区間T
Aoff3は、発光素子L2の点灯による残光の影響がなくなった後も続くように、長さを設定する。つまり、点灯区間T
Aon2において、所定の値まで上昇した出力電圧は、消灯区間T
Aoff3において、所定の立ち下がり時間で立ち下がって収束する。つまり、消灯区間T
Aoff3において、所定の立ち下がり時間が過ぎれば、受光部12Aの受光素子F1、F2の各出力電圧は、外光の入射による各出力電圧V
An1、V
An2であるとみなすことができる。また、消灯区間T
Aoff1、T
Aoff2においては、それぞれ発光素子L3の残光及び発光素子L1の残光が収束しないまま、次の発光素子L1及び発光素子L2の点灯が開始される。つまり、直前に発光した発光素子の点灯により、所定の値まで上昇した出力電圧の立ち下がり時間よりも短い時間になるよう、消灯区間T
Aoff1、T
Aoff2を設定する。
【0059】
本実施形態では、一例として、TAon1=TAon2=TAon3=5msとし、TAoff3=7msとし、TAoff1=TAoff2=3msとした。このように外光の出力電圧VAnを取得するための消灯区間TAoff3以外の消灯区間TAoff1、TAoff2を残光が収束しない程度の短い時間に設定することで、周期TAを更に短くすることができる。これにより、更に短時間で血液濃度の測定が可能となる。例えば、本実施形態の場合、周期T=28msとなり、可視光を発光する発光素子L1の1秒間の点滅回数は、35.7回となる。一般的に1秒間に35回以上の点滅は、ちらついて見えないため、上述の設定でちらつきを低減することもできる。
【0060】
濃度算出部22Aは、消灯区間TAoff3において、受光部12Aにおけるそれぞれの受光素子F1、F2からの各出力電圧を外光の出力電圧VAn1、VAn2、として取得する。次に、発光素子L3の点灯区間TAon3において、出力電圧VA3から外光の出力電圧VAn2を減じた値を、補正電圧VAc3として取得する。続いて、発光素子L1の点灯区間TAon1において、出力電圧VA1から外光の出力電圧VAn1を減じた値を、補正電圧VAc1として取得する。最後に、発光素子L2の点灯区間TAon2において、出力電圧VA2から外光の出力電圧VAn1を減じた値を、補正電圧VAc2として取得する。濃度算出部22Aは、還元ヘモグロビンの濃度に依存する補正電圧VAc1と、還元ヘモグロビンの濃度及び酸化ヘモグロビンの濃度に依存する補正電圧VAc2から、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの割合を求めて、酸素飽和度を算出する。また、濃度算出部22Aは、ヘモグロビンの濃度に依存する補正電圧VAc2と、水の割合に依存する補正電圧VAc3から、ヘマトクリット値を算出する。以下、これを繰り返し、継続的に酸素飽和度及びヘマトクリット値を算出する。
【0061】
以上説明した第2実施形態の血液成分測定装置1Aによれば、上述の効果(1)に加えて、以下のような効果を奏する。
【0062】
(2)血液成分測定装置1Aの発光制御部21Aは、消灯区間TAoff1、TAoff2が受光部12Aの受光素子F3、F1からの出力電圧の立ち下がり時間よりも短くなるように制御するものとした。これにより、更に周期を短くすることができるので、血液濃度の測定をより短時間化できる。また、ちらつきを更に低減可能である。
【0063】
(3)血液成分測定装置1Aの受光部12Aは、複数の受光素子F1、F2を有しており、複数の受光素子F1、F2は、それぞれ異なる波長帯の光を受光し、濃度算出部22Aは、1つの消灯区間TAoff3において、複数の受光素子F1、F2からの各出力電圧を各外光の出力電圧VAn1、VAn2として取得し、それぞれの波長帯の点灯区間TAon1、TAon2、TAon3における複数の受光素子F1、F2の各出力電圧VA1、VA2、VA3から各外光の出力電圧VAn1、VAn2を減じた値VAc1、VAc2、VAc3に基づいて血液成分の濃度を算出するものとした。これにより、受光部が有する受光素子が多くなっても、長くする消灯区間は1つだけでよいので、周期を短くできる。
【0064】
以上、本発明の血液成分測定装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0065】
例えば、上述の各実施形態では、発光部は、異なる波長帯で発光する複数の発光素子を用いる構成を示したが、1つの発光素子にフィルタをかけることにより、複数の波長帯の光を発光可能とするように構成してもよい。
また、上述の各実施形態では、測定部を血液回路のチューブや血液チャンバに取り付ける場合を示したが、例えば、体外循環装置の装置本体の筐体に測定部を備え付けて、血液回路を構成するチューブを測定部に取り付けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1A 血液成分測定装置
10、10A 測定部
11、11A 発光部
12、12A 受光部
20、20A 制御部
21、21A 発光制御部
22,22A 濃度算出部
30 表示部
100A 透析装置
110 血液回路
111 動脈側ライン
111c 血液ポンプ
112 静脈側ライン
120 血液浄化器
130 透析液回路
133 透析液送液部
140 制御部