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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240228BHJP
   G03G 21/20 20060101ALI20240228BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/20
G03G21/00 386
G03G21/00 500
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020095521
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021189339
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄治
(72)【発明者】
【氏名】辻本 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】江口 博
(72)【発明者】
【氏名】井田 奈津世
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067475(JP,A)
【文献】特開2008-009183(JP,A)
【文献】特開2017-065126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する画像形成装置であって、
画像を形成したシートを加熱する回転方式の加熱部と、
前記加熱部の温度を検知する温度センサーと、
前記加熱部に電力を供給する電力供給部と、
前記温度センサーで検知した温度に基づいて前記電力供給部が供給する電力を制御する制御部と、を備え、
前記温度センサーは、複数のセンサーを有し、
前記制御部は、
複数のセンサーのうち第1温度センサーで検知した温度が所定温度以上で、前記第1温度センサーと異なる第2温度センサーで検知した温度が基準温度未満の場合、前記電力供給部から前記加熱部への電力の供給を中止し、
前記加熱部への電力の供給を中止した後に前記第2温度センサーで検知される温度状況に基づいて、前記画像形成装置の使用を停止するか否かを判断し、
前記第2温度センサーで検知した温度が基準温度未満であれば、前記画像形成装置の使用を停止せず、
前記第2温度センサーで検知した温度が基準温度以上であれば、前記画像形成装置の使用を停止する、画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱部は、ローラー形状もしくはベルト形状の回転部を有している、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記温度センサーは、前記加熱部の周辺に配置してある、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度センサーは、前記加熱部の回転軸方向に対して水平に配置してある、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記加熱部への電力の供給を中止した後に前記温度センサーで検知される温度状況に基づいて、前記画像形成装置のうち前記加熱部を使用する部分について停止するか否かを判断する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記温度センサーは、主走査方向に複数のセンサーを配置してある、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記加熱部への電力の供給を中止した後、所定時間を経過したときに前記温度センサーで検知された温度が前記所定温度以上の場合、前記画像形成装置の使用の停止を判断する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記温度センサーで検知した温度が所定温度以上となった回数を記憶し、当該回数が所定回数以上となった場合、前記画像形成装置の使用を停止する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記画像形成装置の使用を停止した場合、表示部に故障もしくは修理が必要の旨を表示する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記加熱部への電力の供給を中止した後、所定時間を経過したときに前記温度センサーで検知された温度が前記所定温度未満の場合、前記電力供給部から前記加熱部への電力の供給を再開する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記加熱部への電力の供給を中止した後、前記画像形成装置の使用を停止するまでの間、前記表示部にマシンチェック中の表示を行う、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第1温度センサーと前記第2温度センサーとは、温度を検知する構成が異なる、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第1温度センサーは、前記加熱部に対して非接触であり、前記加熱部と対向する面に開口部を持つ第1温度検知部と、前記開口部を持たない第2温度検知部と、を有する、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記温度センサーで検知した温度が所定温度以上の場合、前記電力供給部から前記加熱部への電力の供給を中止し、
前記温度センサーで検知した温度が前記所定温度以上となるまでの温度上昇カーブを演算し、
演算した前記温度上昇カーブに基づいて、前記画像形成装置の使用を停止するか否かを判断する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、
演算した前記温度上昇カーブが所定の傾き以上であれば、前記画像形成装置の使用を停止せず、
演算した前記温度上昇カーブが所定の傾き未満であれば、前記画像形成装置の使用を停止する、請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記加熱部への電力の供給を中止した後に前記温度センサーで検知される温度状況に基づいて、前記画像形成装置の使用を停止しないと判断した場合、前記温度センサーを可動させて、前記温度センサーに付着した異物を除去する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記温度センサーは、回転駆動する可動機構を有し、
前記制御部は、前記可動機構で前記温度センサーを回転させ、前記温度センサーに付着した異物を除去する、請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
画像を形成する画像形成装置であって、
画像を形成したシートを加熱する回転方式の加熱部と、
前記加熱部の温度を検知する温度センサーと、
前記加熱部に電力を供給する電力供給部と、
前記温度センサーで検知した温度に基づいて前記電力供給部が供給する電力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度センサーで検知した温度が所定温度以上の場合、前記電力供給部から前記加熱部への電力の供給を中止し、
前記温度センサーで検知した温度が前記所定温度以上となるまでの温度上昇カーブを演算し、
演算した前記温度上昇カーブに基づいて、前記画像形成装置の使用を停止するか否かを判断する、画像形成装置。
【請求項19】
画像を形成する画像形成装置であって、
画像を形成したシートを加熱する回転方式の加熱部と、
前記加熱部の温度を検知する温度センサーと、
前記加熱部に電力を供給する電力供給部と、
前記温度センサーで検知した温度に基づいて前記電力供給部が供給する電力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度センサーで検知した温度が所定温度以上の場合、前記電力供給部から前記加熱部への電力の供給を中止し、
前記加熱部への電力の供給を中止した後に前記温度センサーで検知される温度状況に基づいて、前記画像形成装置の使用を停止するか否かを判断し、
前記加熱部への電力の供給を中止した後に前記温度センサーで検知される温度状況に基づいて、前記画像形成装置の使用を停止しないと判断した場合、前記温度センサーを可動させて、前記温度センサーに付着した異物を除去する、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関し、特に、加熱部を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置として、下記の特許文献1~3等に記載のものがある。特許文献1に記載の画像形成装置では、加熱部に2つの接触式の温度センサーを設け、一方の温度センサーが紙粉・トナー等で汚れた場合、検知する温度が実温度より低めになるので、他方の温度センサーとの温度差から加熱部の温度を補正している。また、特許文献1に記載の画像形成装置では、温度センサーの検知時間を切り換える制御を行い、最初は短い検知時間で、その後、検知時間を少し長くする。
【0003】
さらに、特許文献2に記載の画像形成装置では、電源投入時に加熱部の高温状態を検知した場合、冷却手段を駆動し、駆動しても規定時間の高温状態のとき高温異常と判断する。また、特許文献3に記載の画像形成装置では、加熱部の温度異常の情報を記憶して、所定の条件を満たさないと異常状態を解除できなくしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-283782号公報
【文献】特開平08-006479号公報
【文献】特開平11-143284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真方式の画像形成装置において、用紙(シート)にトナー画像を付着させるために、加熱および加圧する必要があり、高温度に制御したローラー(ベルト)で用紙を押さえる定着処理が行われている。定着処理に用いるローラー(ベルト)部(加熱部)の温度を安定化させるために温度センサーをローラー(ベルト)部の周辺に配置し、その温度センサーで検知した温度に基づき、ハロゲンヒーター等の熱源に供給する電力を制御している。
【0006】
しかし、ローラー(ベルト)部の温度を検知する温度センサーは、ローラー(ベルト)部の周辺に配置されるため、ローラー(ベルト)部で発生した用紙の紙粉・トナー・ゴミ等が、ローラー(ベルト)を経由して温度センサーに付着することがあった。ローラー(ベルト)自体は、ハロゲンヒーター等の熱源により高温状態であるので、ローラー(ベルト)で運ばれる用紙の紙粉・トナー・ゴミ等も高温状態となる。そのため、用紙の紙粉・トナー・ゴミ等が高温状態のまま温度センサーに付着して、瞬時的に温度センサーが高温と誤検知する。画像形成装置は、温度センサーが高温を検知すると、ローラー(ベルト)部の高温異常と判断して故障状態と判断するので、サービスマンによる故障対応が必要となり、不必要な装置の停止による生産性のダウンをユーザーに強いることとなる。
【0007】
そこで、本開示では、温度センサーの誤検知か否かを判断して、不必要な装置の停止による生産性のダウンをユーザーに強いることがない画像形成装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施のある局面に従う画像処理装置は、画像を形成する画像形成装置であって、画像を形成したシートを加熱する回転方式の加熱部と、加熱部の温度を検知する温度センサーと、加熱部に電力を供給する電力供給部と、温度センサーで検知した温度に基づいて電力供給部が供給する電力を制御する制御部と、を備え、温度センサーは、複数のセンサーを有し、制御部は、複数のセンサーのうち第1温度センサーで検知した温度が所定温度以上で、第1温度センサーと異なる第2温度センサーで検知した温度が基準温度未満の場合、電力供給部から加熱部への電力の供給を中止し、加熱部への電力の供給を中止した後に第2温度センサーで検知される温度状況に基づいて、画像形成装置の使用を停止するか否かを判断し、第2温度センサーで検知した温度が基準温度未満であれば、画像形成装置の使用を停止せず、第2温度センサーで検知した温度が基準温度以上であれば、画像形成装置の使用を停止する
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、加熱部への電力の供給を中止した後に温度センサーで検知される温度状況に基づいて、画像形成装置の使用を停止するか否かを判断するので、温度センサーの誤検知か否かを判断することができ、不必要な装置の停止による生産性のダウンをユーザーに強いることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る画像形成装置における加熱部の構成の一例を示す図である。
図3】実施の形態1に係る画像形成装置の電力制御を説明するためのブロック図である。
図4】実施の形態1に係る画像形成装置の温度センサーの構成を示す図である。
図5】実施の形態1に係る画像形成装置の温度センサーに高温状態のゴミ等が付着した場合の温度変化を示すグラフである。
図6】実施の形態1に係る画像形成装置の電力制御を説明するためのフローチャートである。
図7】実施の形態2に係る画像形成装置の温度センサーの温度変化を示すグラフである。
図8】実施の形態2に係る画像形成装置おいて使用を停止するか否かを判断する温度上昇カーブを示すグラフである。
図9】実施の形態2に係る画像形成装置の電力制御を説明するためのフローチャートである。
図10】実施の形態3に係る画像形成装置の温度センサーの構成を示す図である。
図11】実施の形態3に係る画像形成装置の温度センサーが誤動作時の温度変化を示すグラフである。
図12】実施の形態3に係る画像形成装置の温度センサーが故障状態の温度変化を示すグラフである。
図13】実施の形態3に係る画像形成装置の電力制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る画像形成装置1の全体構成を示す図である。図2は、実施の形態1に係る画像形成装置1における加熱部5(定着部)の構成の一例を示す図である。画像形成装置1は、例えば、複写機、プリンタまたはファクシミリ、もしくは、これらの機能を備えた複合機であって、画像をシート状の印刷媒体M(例えば用紙)に印刷する。そのために、画像形成装置1は、大略的に、給紙部2と、レジストローラ対3と、画像形成部4と、加熱部5と、操作入力/表示部6と、制御基板7と、電源部8を備える。以下、画像形成装置1の印刷動作時の各構成の動作について説明する。
【0013】
給紙部2には、印刷媒体Mが積載される。給紙部2は、印刷媒体Mを一枚ずつ、図1中に破線で示す搬送経路FPに送り出す。レジストローラ対3は、搬送経路FP上であって、給紙部2の下流側に設けられる。レジストローラ対3は、給紙部2から送り出された印刷媒体Mを一旦停止させた後、所定のタイミングで二次転写領域に送り出す。
【0014】
画像形成部4は、例えば、周知の電子写真方式およびタンデム方式により、トナー画像を中間転写ベルト上に生成する。かかるトナー画像は、中間転写ベルトにより担持され、二次転写領域に向けて搬送される。
【0015】
二次転写領域には、レジストローラ対3から印刷媒体Mが送り込まれ、また、画像形成部4からトナー画像が搬送されてくる。二次転写領域において、トナー画像は中間転写ベルトから印刷媒体Mに転写される。
【0016】
加熱部5は、トナー像を用紙に定着させるときに加熱するための加熱部材と、加圧するための加圧ローラーとを少なくとも有している。そして、加熱部材は、局所的に加熱する加熱源50(例えばハロゲンヒータなど)を有しており、加熱部5を駆動することで均一に加熱することができる。なお、加熱源50は、制御基板7により温度が制御されている。
【0017】
加熱部5は、局所加熱を行う定着器であり、図2に示す加熱部5は、加熱源にハロゲンヒーターを採用している。局所的に加熱部5を加熱する構成とは、例えば、加熱ベルト51(定着ベルト)の一部を加熱することができる加熱部材57を有しており、加熱ベルト51を駆動することで加熱部5の全体を加熱する構成である。具体的に、加熱部5は、加熱ベルト51(定着回転体)と、加圧ローラー58と、加熱ベルト51内側に配置され加圧ローラー58に押圧してニップを形成すると共に加熱ベルト51の回転をガイドする固定の加圧部材52(52a、52b)と、加熱ベルト51と加圧部材52(52a)の間に配置される摺動部材53と、加圧部材52を支持する支持部材54と、フェルト部材55と、熱源56を有し、加圧部材52と共に加熱ベルト51を張架する加熱部材57とを有している。
【0018】
加圧ローラー58は、定着モーター(図示せず)によって、所定の回転速度で回転することできる。これにより、加圧ローラー58に対して加熱ベルト51を回転させることができる。加熱ベルト51は、基層と、弾性層と、離形層との三層構造から成る。外径は任意であるが、10mm~100mm程度が望ましい。基層は、ポリイミドやステンレス鋼(例えばSUS304など)、Ni電鋳等から成り、厚さが5μm~100μm程度である。弾性層は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高い材料が望ましく、厚さが10μm~100μm程度である。離型層は、フッ素チューブおよびフッ素系コーティング等の離型性を付与した構成が望ましく、厚さが5μm~100μm程度である。
【0019】
加圧部材52は、ポリフェニレンスルファイド、ポリイミド、液晶ポリマー等の樹脂や、アルミ、鉄等の金属、セラミック等から成り、形状については任意である。加圧部材52は、加圧する部分と、シリコーンゴム、フッ素ゴム等から成る固定部分との2部品構成としてもよい。
【0020】
摺動部材53は、ガラスクロスを基材とし、摺動面をフッ素系樹脂で被覆した構成が一般的であるが、フッ素繊維の織物や、フッ素樹脂シート、ガラスコートなどが用いてもよい。摺動部材53を設けることで加熱ベルト51と加圧部材52との摺動抵抗が減少し、安定して加熱ベルト51を回転させることができる。
【0021】
加熱部材57は、アルミやステンレス鋼(例えばSUS304など)等の金属の円筒から成る。加熱部材57の外径は任意であるが、10mm~100mmが望ましく、厚みを0.1mm~5mm程度にするのが望ましい。熱源56にハロゲンヒーターを採用する場合、加熱部材57の内表面を黒色にすることが望ましい。また、異物等による加熱部材57の外表面への傷を防止するため、加熱部材57の外表面にPTFE(polytetrafluoroethylene)コートなどを行ってもよい。なお、熱源56と加熱部材57とが、加熱ベルト51を加熱する加熱源50に相当する。
【0022】
加圧ローラー58は、芯金と、弾性層と、離形層との3つの部材から成る。外径は任意であるが、20mm~100mm程度が望ましい。弾性層は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性の高い材料が望ましく、厚さが1mm~20mm程度である。芯金はアルミ、鉄等の金属が望ましく、パイプ形状で厚さが0.1mm~10mm程度の場合や、中実や断面形状が三ツ矢形状等の異型の場合もある。離型層は、フッ素チューブおよびフッ素系コーティング等の離型性を付与した構成が望ましく、厚さが5μm~100μm程度である。
【0023】
熱源56は、ハロゲンヒーターを採用し、温度センサー59により検出した温度が予め設定した温度となるように電源部8から供給する電力が制御基板7により制御されている。なお、加熱源50の温度は温度センサー59により検出し、温度センサー59が高温を検知すると、制御基板7で加熱部5の高温異常と判断して故障状態と判断する。なお、温度センサー59は、加熱部5の周辺に配置してあることが好ましく、加熱部5の回転軸方向(長手方向)に対して水平に配置してあることが好ましい。
【0024】
図2に示す加熱部5では、加圧部材52が加熱ベルト51を加圧ローラー58に押圧して定着ニップ部を形成している。なお、定着ニップ部の近傍には、図示していないが搬送されてきた用紙を検出するセンサーが設けられている。加熱部5に搬送された用紙は、トナー像が転写された表面を加熱された加熱ベルト51に向けた状態で、搬送方向M1より定着ニップ部を通過することで、加熱ベルト51により加熱および加圧されてトナー像が用紙に定着する。なお、加熱部5では、定着ニップ部が加熱ベルト51(加熱ベルト)と加圧ローラー58との間で形成されると説明したが、加熱ベルト51に代えて加熱ローラーを用い、当該加熱ローラーと加圧ローラー58との間で形成してもよい。なお、加熱ベルト51の回転(駆動)方向については、回転方式の加熱部5の接線方向が下向きになるように配置してある。
【0025】
操作入力/表示部6は、テンキーやタッチパネル等を含んでいる。ユーザーは、操作入力/表示部6を操作して、各種情報を入力する。
【0026】
制御基板7において、CPUは、ROMに格納されたプログラムを、RAMを作業領域として使いながら実行する。制御基板7は、様々な制御を行うが、本実施形態で重要であるのは、熱源56の通電制御である。具体的には、制御基板7は、効率よく温度センサー59の検出結果が目標温度となるように、電源部8から熱源56に直接電流を供給するのか、PWM制御して電源部8から熱源56に電流を供給するのかを切り替えている。
【0027】
電源部8は、商用電源(交流電源)に接続して、熱源56、制御基板7、温度センサー59などに電力を供給する構成である。図3は、実施の形態1に係る画像形成装置1の電力制御を説明するためのブロック図である。電源部8は、具体的に、商用電源10からの電力を低電圧の電力に変換する低電圧電源部20と、商用電源10からの電力を高電圧の電力に変換、あるいはそのままの電圧の電力を熱源56に供給する定着電源部30とを有している。低電圧電源部20は、定着モーター、クラッチ等の画像形成装置1の駆動負荷21、温度センサー59、制御基板7などの低電圧の電力で駆動できる部分に電力を供給する。
【0028】
一方、定着電源部30は、熱源56であるハロゲンヒーターに電力を供給する。定着電源部30の前段には、安全回路として、商用電源10からの電力を遮断するリレー27が設けられている。このリレー27により、商用電源10から加熱部5の熱源56への電力の供給を中止することができる。リレー27は、制御基板7により制御され、制御基板7は、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上の場合、リレー27を開いて商用電源10から熱源56への電力を遮断する。なお、制御基板7は、図3に示すように温度センサー59で検知した温度に基づいて、駆動負荷21、定着電源部30等を制御することができる。
【0029】
制御基板7は、加熱部5内の加熱ベルト51の温度を安定させるために、加熱源50の周辺に配置された温度センサー59で検知した温度に基づき、定着電源部30に対して熱源56のオン・オフ制御の指示を行い、加熱ベルト51の温度の安定化を図っている。
【0030】
図4は、実施の形態1に係る画像形成装置の温度センサー59の構成を示す図である。温度センサー59は、加熱部5に対して非接触であり、加熱部5と対向する面に開口部Nを持つ温度検知素子59a(第1温度検知部)と、開口部Nを持たない温度検知素子59b(第2温度検知部)と、を有している。そして、温度センサー59は、温度検知素子59aと温度検知素子59bとの検知結果を演算して加熱ベルト51の温度を検知する。
【0031】
温度検知素子59bは、例えばアルミケースの内部に配置され、加熱ベルト51に対して開口部Nを持たず、主に温度センサー59の周辺部の温度を検知する。一方、温度検知素子59aは、加熱ベルト51に対して開口部Nを持ち、加熱ベルト51の温度を検知する。
【0032】
ところで、温度センサー59は、加熱ベルト51の周辺に配置されるため、加熱ベルト51で発生した用紙の紙粉・トナー・ゴミ等が、加熱ベルト51を経由して温度センサーに付着することがあった。具体的に、図2を用いて用紙の紙粉・トナー・ゴミ等が、加熱ベルト51を経由して温度センサーに付着する様子を説明する。まず、加熱部5を通過した用紙は、分離用の爪60により加圧ローラー58から分離される。この分離用の爪60は、加熱部5に用紙が通過する際に、加圧ローラー58への用紙の、巻き込み防止のために装備されている。
【0033】
分離用の爪60と用紙とがこすれる事により、用紙から紙粉・トナー・ゴミ等が削られ、細かいゴミPとなり、加熱ベルト51および加圧ローラー58側に運ばれる。加熱ベルト51は、加熱源50により高温状態に維持されているので、加熱ベルト51で運ばれるゴミPも高温状態となる。特に、ゴミPは、非常に細かいため熱容量が小さく瞬時に高温状態になる。ゴミPが高温状態のまま温度センサーに付着すると、瞬時的に温度センサー59が高温を検知する。
【0034】
しかし、温度センサー59は、高温状態のゴミPが付着することで高温を検知したに過ぎず、加熱ベルト51自体が高温になった訳ではなく通常の温度状態であり、誤検知である。温度センサー59の誤検知であったとしても、制御基板7は、温度センサー59で検知した高温の検知結果に基づいて、加熱ベルト51の熱源56、定着電源部30、その他の温度制御に異常が発生していると判断し、電力供給を遮断するためリレー27で電力を遮断し、安全を優先して故障状態(マシン停止状態)とする。
【0035】
画像形成装置1が故障状態と判断されるとユーザーでは対応することができず、専門のサービスマンに連絡して、状況確認および不具合の解消を行ってもらう必要がある。このような状況になると、ユーザーは一旦、印刷作業を止めることになり生産性が著しくダウンする。本来、温度センサー59に付着した用紙の紙粉・トナー・ゴミ等は熱容量が小さいため、高温を検知後、瞬間(数秒程度)的に通常の検知状態に戻るので、画像形成装置1を問題なく動作できる状態になるはずである。しかし、制御基板7が故障状態と判断すると、サービスマンに状況確認および不具合の解消が行われるまで画像形成装置1を使えない状況が維持されてしまう。
【0036】
図5は、実施の形態1に係る画像形成装置1の温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着した場合の温度変化を示すグラフである。開口部Nに用紙の紙粉・トナー・ゴミ等が付着することで、温度検知素子59aで検知する温度が急激に変化する。なお、開口部Nのない温度検知素子59bは、図示していないが検知する温度に変化はない。温度検知素子59aは、少なくとも1~3秒の間に急激な温度変化を検知している。図5に示すグラフでは、1秒程度の微小な時間に100℃以上の温度上昇を温度検知素子59aが検知しており、通常の加熱源50の温度変化では実現できないレベルの温度上昇である。
【0037】
また、図5に示すグラフでは、100℃以上の温度上昇を温度検知素子59aが検知した後、数秒程度で元の温度まで下降する温度変化を温度検知素子59aが検知している。加熱源50への電力供給を遮断することで温度検知素子59aが検知する温度変化は、図5に示すグラフのような急激な温度の下降ではなく、数十秒以上かけて温度が徐々に下降する。そのため、図5に示すグラフのような温度変化は、温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着した場合の誤検知であると判断できる。
【0038】
そこで、実施の形態1に係る画像形成装置1では、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況として、その後の温度センサー59で検知される温度変化に注目して、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断する。つまり、制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後、所定時間を経過したときに温度センサー59で検知された温度が所定温度以上の場合、画像形成装置1の使用の停止を判断する。
【0039】
以下に、フローチャートを用いての画像形成装置1の電力制御について説明する。図6は、実施の形態1に係る画像形成装置1の電力制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御基板7は、温度センサー59で検知した温度が所定温度(例えば、250℃)以上であるか否かを判断する(ステップS1)。温度センサー59で検知した温度が所定温度未満の場合(ステップS1でNO)、制御基板7は、処理をステップS1に戻し、画像形成装置1の電源が停止されるまで温度センサー59で加熱部5の温度を検知し続ける。
【0040】
一方、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上の場合(ステップS1でYES)、制御基板7は、商用電源10から供給される電力をリレー27で遮断し、加熱部5への電力の供給を中止する(ステップS2)。なお、画像形成装置1が印刷中の場合、印刷の駆動を停止する。また、制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止するとともに、定着電源部30を停止して熱源56への電力供給をOFF(ハロゲンヒーターの点灯制御を非点灯)とする。
【0041】
制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後から10秒間待ち、その間、操作入力/表示部6に「不具合チェック中」等の自己診断モードに入っている状態を説明するためにマシンチェック中の表示を行う(ステップS3)。制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後から10秒間、加熱部5の温調制御を行わず、10秒後に温度センサー59で加熱部5の温度を検出する。
【0042】
制御基板7は、10秒後に温度センサー59で検知した温度が所定温度(例えば、250℃)以上であるか否かを判断する(ステップS4)。温度センサー59で検知した温度が所定温度未満の場合(ステップS4でNO)、制御基板7は、温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着したことによる誤検知であると判断して、リレー27をオンにして商用電源10から加熱部5への電力の供給を再開して、通常動作モードに戻す(ステップS5)。例えば、印刷中に、自己診断モードに移行する不具合が発生したのであれば、印刷中の用紙がJAM状態となっているので、制御基板7は、操作入力/表示部6にJAM状態を表示し、JAM状態が解消された後に通常動作モードに移行する。
【0043】
一方、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上の場合(ステップS4でYES)、制御基板7は、画像形成装置1の使用を停止する(ステップS6)。制御基板7は、加熱部5の高温異常であると判断して、画像形成装置1が故障状態で電源をOFF/ONしても再動作ができない状態に制御する。また、制御基板7は、操作入力/表示部6に画像形成装置1が故障状態で、専門のサービスマンを呼んで故障修理を依頼する旨の表示(故障もしくは修理が必要の旨を表示)を行う。なお、制御基板7は、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断するのではなく、画像形成装置1のうち加熱部5を使用する部分(印刷に関係する部分)について停止するか否かを判断してもよい。つまり、制御基板7は、加熱部5の高温異常であると判断しても、加熱部5を使用しないFAXやスキャナー部分の使用を可能にしてもよい。
【0044】
ステップS4では、ステップS1の所定温度と同じ250℃を所定温度として設定するが、所定温度を250℃から変更してもよく、例えば、所定温度を240℃と低めに設定してより安全を確保して加熱部5の高温異常と判断してもよい。
【0045】
また、制御基板7は、ステップS2で加熱部5への電力の供給を中止した回数をカウントして、その回数を記憶しておき、たとえステップS4で加熱部5の高温異常でない(ステップS4でNO)と判断しても、その回数が所定回数(例えば2回)以上の場合、ステップS6のように画像形成装置1の使用を停止する。このように、加熱部5への電力の供給を中止するような不具合の回数より故障状態と判断することで、制御基板7は、より安全性を重視した判断を行うことができる。
【0046】
さらに、画像形成装置1は、図示していないが温度センサー59そのものを回転や振動等させる可動機構を設けておく。制御基板7は、温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着したことによる誤検知であると判断した場合に、商用電源10から加熱部5への電力の供給を再開して、通常動作モードに戻す際に可動機構により温度センサー59自体を回転駆動や振動駆動させて、温度センサー59に付着したゴミ等を落とすように制御してもよい。
【0047】
以上のように、実施の形態1に係る画像形成装置1では、画像を形成する画像形成装置1であって、画像を形成したシートを加熱する回転方式の加熱部5と、加熱部5の温度を検知する温度センサー59と、加熱部5に電力を供給する定着電源部30と、温度センサー59で検知した温度に基づいて定着電源部30が供給する電力を制御する制御基板7と、を備える。制御基板7は、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上の場合、定着電源部30から加熱部5への電力の供給を中止し、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況に基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断する。
【0048】
これにより、実施の形態1に係る画像形成装置1では、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況に基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断するので、不必要な装置の停止による生産性のダウンをユーザーに強いることがない。
【0049】
加熱部5は、ローラー形状もしくはベルト形状の回転部を有していることが好ましい。温度センサー59は、加熱部5の周辺に配置してあることが好ましい。温度センサー59は、加熱部5の回転軸方向に対して水平に配置してあることが好ましい。
【0050】
制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況に基づいて、画像形成装置1のうち加熱部5を使用する部分について停止するか否かを判断してもよい。これにより、画像形成装置1のうち加熱部5を使用しない部分については使用可能とできる。
【0051】
制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後、所定時間を経過したときに温度センサー59で検知された温度が所定温度以上の場合、画像形成装置1の使用の停止を判断することが好ましい。これにより、制御基板7は、温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着したことによる誤検知でなく、加熱部5の高温異常であると判断することができる。
【0052】
制御基板7は、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上となった回数を記憶し、当該回数が所定回数以上となった場合、画像形成装置1の使用を停止してもよい。これにより、制御基板7は、より安全性を重視した判断を行うことができる。
【0053】
制御基板7は、画像形成装置1の使用を停止した場合、操作入力/表示部6に故障もしくは修理が必要の旨を表示してもよい。これにより、ユーザーは、専門のサービスマンに連絡して、状況確認および不具合の解消を行ってもらう必要を認識することができる。
【0054】
制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後、所定時間を経過したときに温度センサー59で検知された温度が所定温度未満の場合、定着電源部30から加熱部5への電力の供給を再開することが好ましい。これにより、画像形成装置1は、不必要な装置の停止による生産性のダウンをユーザーに強いることがない。
【0055】
制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後、画像形成装置1の使用を停止するまでの間、操作入力/表示部6にマシンチェック中の表示を行ってもよい。これにより、ユーザーは、マシンチェック中であることを認識することができる。
【0056】
制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況に基づいて、画像形成装置1の使用を停止しないと判断した場合、温度センサー59を可動させて、温度センサー59に付着した異物を除去してもよい。これにより、温度センサー59に付着した異物を除去して、通常動作モードで画像形成装置1を動作させることができる。なお、温度センサー59は、回転駆動する可動機構を有し、制御基板7は、可動機構で温度センサー59を回転させ、温度センサー59に付着した異物を除去してもよい。
【0057】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る画像形成装置1では、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況として、所定時間を経過したときに温度センサー59で検知された温度に注目して、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断していた。実施の形態2に係る画像形成装置では、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー59で検知される温度状況として、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上となるまでの温度上昇カーブに注目して、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断する。なお、実施の形態2に係る画像形成装置は、実施の形態1に係る画像形成装置1で説明した構成と同じであるため、同じ構成について同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0058】
具体的に、制御基板7が、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上となるまでの温度上昇カーブに基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断する処理について説明する。図7は、実施の形態2に係る画像形成装置1の温度センサー59の温度変化を示すグラフである。図7に示すグラフAは、高温状態のゴミ等が温度センサー59に付着したことにより温度上昇したときの温度変化を示す。グラフBは、部品故障による熱源56の暴走で温度上昇したときの温度変化を示す。破線Tは、制御基板7が、加熱部5への電力の供給を中止と判断する閾値(所定温度=250℃)を示す。
【0059】
まず、グラフBに示すように、部品故障による熱源56の暴走で温度上昇した場合、画像形成装置1の筐体と熱源56の電力を考慮すると4秒間で100℃程度の温度上昇になる。つまり、グラフBの温度上昇カーブは傾きが25℃/秒となる。また、部品故障による熱源56の暴走で温度上昇した場合、温度センサー59で検知した温度は270℃の状態で10秒間以上継続する。
【0060】
一方、グラフAに示すように、高温状態のゴミ等が温度センサー59に付着したことにより温度上昇した場合、0.3秒間で100℃程度の温度上昇になる。つまり、グラフAの温度上昇カーブは傾きが330℃/秒となる。また、高温状態のゴミ等が温度センサー59に付着したことにより温度上昇した場合、温度センサー59で検知した温度は、ゴミ等の熱容量が小さいため、2秒後には270℃以下となる。なお、図7に示すグラフA,Bが270℃で飽和しているのは、検知温度として270℃以上を270℃と認識する装置の制約によるものである。
【0061】
部品故障による熱源56の暴走で温度上昇した場合と、高温状態のゴミ等が温度センサー59に付着したことにより温度上昇した場合とで温度上昇カーブに大きな差があるため、制御基板7が、温度上昇カーブに基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断することが可能であることが分かる。
【0062】
図8は、実施の形態2に係る画像形成装置おいて使用を停止するか否かを判断する温度上昇カーブを示すグラフである。図8では、一点鎖線Sが、高温状態のゴミ等が温度センサー59に付着したことにより温度上昇した場合か否かを判断するための温度上昇カーブである。つまり、一点鎖線Sは、傾きが50℃/秒となる閾値カーブである。そのため、制御基板7は、一点鎖線Sの傾き(所定の傾き)以上の傾きの温度上昇カーブの場合、高温状態のゴミ等が温度センサー59に付着したことにより温度上昇と判断し、一点鎖線Sの傾き未満の傾きの温度上昇カーブの場合、部品故障による熱源56の暴走で温度上昇と判断する。
【0063】
図9は、実施の形態2に係る画像形成装置1の電力制御を説明するためのフローチャートである。なお、図9に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートに温度上昇カーブの判断(ステップS2a)を加えた以外、同じ処理である。つまり、図9に示すフローチャートでは、温度上昇カーブを利用して、加熱部5への電力の供給を中止した後、10秒間待たずに早い時点で温度センサー59の誤検知か故障状態かを判断することができる。
【0064】
制御基板7は、商用電源10から供給される電力をリレー27で遮断し、加熱部5への電力の供給を中止する(ステップS2)。その後、制御基板7は、中止前の2秒間に温度センサー59で検知した温度上昇カーブの傾きが、50℃/秒(所定の傾き)未満か否かを判断する(ステップS2a)。温度上昇カーブの傾きが、50℃/秒(所定の傾き)未満の場合(ステップS2aでYES)、制御基板7は、加熱部5の高温異常であると判断して、画像形成装置1の使用を停止する(ステップS6)。
【0065】
一方、温度上昇カーブの傾きが、50℃/秒(所定の傾き)以上の場合(ステップS2aでNO)、制御基板7は、温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着したことによる誤検知である可能性が高いとして、加熱部5への電力の供給を中止した後から10秒間待ち、その間、操作入力/表示部6に「不具合チェック中」等の自己診断モードに入っている状態を説明するためにマシンチェック中の表示を行う(ステップS3)。図9に示すフローチャートでは、温度上昇カーブの傾きが、50℃/秒(所定の傾き)以上の場合であっても、直ちに温度センサー59の誤検知と判断せずに、10秒間待ってステップS4の処理で判断すると説明したが、直ちに温度センサー59の誤検知と判断して通常動作モードに戻してもよい。
【0066】
以上のように、実施の形態2に係る画像形成装置1では、制御基板7が、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上の場合、定着電源部30から加熱部5への電力の供給を中止し、温度センサー59で検知した温度が所定温度以上となるまでの温度上昇カーブを演算し、演算した温度上昇カーブに基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断する。これにより、実施の形態2に係る画像形成装置1では、10秒間待つことなく、加熱部5の高温異常の故障状態かの判断をより早期に判断することができる。なお、制御基板7は、演算した温度上昇カーブが所定の傾き以上であれば、画像形成装置1の使用を停止せず、演算した温度上昇カーブが所定の傾き未満であれば、画像形成装置の使用を停止することが好ましい。
【0067】
<実施の形態3>
実施の形態1に係る画像形成装置1では、加熱部5への電力の供給を中止した後に1つの温度センサー59で検知される温度状況として、所定時間を経過したときに1つ温度センサー59で検知された温度に注目して、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断していた。実施の形態3に係る画像形成装置では、複数の温度センサーで検知される温度状況に基づいて、画像形成装置の使用を停止するか否かを判断していた。なお、実施の形態3に係る画像形成装置は、実施の形態1に係る画像形成装置1で説明した構成と同じであるため、同じ構成について同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0068】
図10は、実施の形態3に係る画像形成装置1の温度センサーの構成を示す図である。図10では、図2に示す加熱部5の加熱ベルト51周辺部の概略を示している。加熱ベルト51周辺部には、温度センサー59(第1温度センサー)と、温度異常時の保護のための温度センサー590(第2温度センサー)とを主走査方向に配置してある。温度センサー59は、図4で説明した構成の温度センサーである。一方、温度センサー590は、温度センサー59と温度を検知する構成が異なり、センター側の温度センサー590Aと、サイド側の温度センサー590Bと、それぞれ水平方向(加熱ベルト51の長手方向)の異なる位置に配置しある。温度センサー590は、温度センサー59の構成と異なり、1つの素子で加熱部5と非接触に検出する構成でもよく、また温度センサー59の位置と変更することで異物(ゴミ・トナー・紙粉)の影響を受け難くしてもよい。
【0069】
図11は、実施の形態3に係る画像形成装置の温度センサーが誤動作時の温度変化を示すグラフである。図11に示す温度センサー59のグラフでは、高温状態のゴミ等が付着し温度センサー59で検知する温度が急激に変化する様子を示している。一方、温度センサー590A,590Bのグラフでは、高温状態のゴミ等が付着していないので、温度センサー590A,590Bで検知する温度が変化せず一定である様子を示している。
【0070】
図12は、実施の形態3に係る画像形成装置の温度センサーが故障状態の温度変化を示すグラフである。図12に示す温度センサー59のグラフでは、部品故障による熱源56の暴走で温度上昇の様子を示している。部品故障による熱源56の暴走で温度上昇は、温度センサー590A,590Bでも検知されるので、図12に示す温度センサー590A,590Bのグラフでは、温度センサー59のグラフと同様の温度上昇の様子を示している。
【0071】
図11および図12に示すグラフから分かるように、制御基板7は、加熱部5への電力の供給を中止した後に複数の温度センサーで検知される温度状況に基づいて、画像形成装置の使用を停止するか否かを判断することができる。
【0072】
図13は、実施の形態3に係る画像形成装置1の電力制御を説明するためのフローチャートである。なお、図13に示すフローチャートは、図9に示すフローチャートに温度センサー590A,590Bで検知した温度に基づく判断(ステップS2b)を加えた以外、同じ処理である。つまり、図13に示すフローチャートでは、温度センサー590A,590Bで検知した温度、温度上昇カーブを利用して、加熱部5への電力の供給を中止した後、10秒間待たずに早い時点で温度センサー59の誤検知か故障状態かを判断することができる。
【0073】
制御基板7は、商用電源10から供給される電力をリレー27で遮断し、加熱部5への電力の供給を中止する(ステップS2)。その後、制御基板7は、温度センサー590A,590Bで検知した温度が共に基準温度(例えば、220℃とし所定温度の250℃より低い)未満か否かを判断する(ステップS2b)。温度センサー590A,590Bで検知した温度のいずれか一方が基準温度以上の場合(ステップS2bでNO)、制御基板7は、加熱部5の高温異常であると判断して、画像形成装置1の使用を停止する(ステップS6)。
【0074】
一方、温度センサー590A,590Bで検知した温度が共に基準温度未満の場合(ステップS2bでYES)、制御基板7は、温度センサー59に高温状態のゴミ等が付着したことによる誤検知である可能性が高いとして、中止前の2秒間に温度センサー59で検知した温度上昇カーブの傾きが、50℃/秒(所定の傾き)未満か否かを判断する(ステップS2a)。図13に示すフローチャートでは、温度センサー590A,590Bで検知した温度が共に基準温度未満の場合であっても、直ちに温度センサー59の誤検知と判断せずに、ステップS2aの処理と、10秒間待ってステップS4の処理で判断すると説明したが、直ちに温度センサー59の誤検知と判断して通常動作モードに戻してもよい。また、図13に示すフローチャートでは、ステップS2aの処理と、ステップS4の処理とのいずれか一方のみ行うように選択してもよい。
【0075】
以上のように、実施の形態3に係る画像形成装置1では、温度センサーが、複数のセンサーを有し、制御基板7が、各々のセンサーで検知した温度に基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断する。これにより、制御基板7は、温度センサーの誤検知か否かの判断をより精度よく判断することができる。なお、温度センサーは、主走査方向に複数のセンサー(温度センサー590A,590B)を配置してあることが好ましい。
【0076】
また、制御基板7は、複数のセンサーのうち温度センサー59(第1温度センサー)で検知した温度が所定温度以上で、温度センサー59と異なる温度センサー590(第2温度センサー)で検知した温度が基準温度未満の場合、定着電源部30から加熱部5への電力の供給を中止し、加熱部5への電力の供給を中止した後に温度センサー590で検知される温度状況に基づいて、画像形成装置1の使用を停止するか否かを判断し、温度センサー590で検知した温度が基準温度未満であれば、画像形成装置1の使用を停止せず、温度センサー590で検知した温度が基準温度以上であれば、画像形成装置1の使用を停止することが好ましい。さらに、温度センサー59と温度センサー590とは、温度を検知する構成が異なってもよい。また、温度センサー59は、加熱部5に対して非接触であり、加熱部5と対向する面に開口部Nを持つ温度検知素子59aと、開口部Nを持たない温度検知素子59bと、を有していてもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置、2 給紙部、4 画像形成部、5 加熱部、6 操作入力/表示部、7 制御基板、8 電源部、10 商用電源、20 低電圧電源部、21 駆動負荷、27 リレー、30 定着電源部、50 加熱源、51 加熱ベルト、52 加圧部材、53 摺動部材、54 支持部材、55 フェルト部材、56 熱源、57 加熱部材、58 加圧ローラー、59,590,590A,590B 温度センサー、60 爪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13