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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】射出成形機及び吸気系部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20240228BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240228BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20240228BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C33/42
F02M35/024 521A
F02M35/10 301K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020100841
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194795
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】増亦 泰壽
(72)【発明者】
【氏名】吉田 修平
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-277733(JP,A)
【文献】特開昭63-239037(JP,A)
【文献】特開2004-124741(JP,A)
【文献】特開2002-235618(JP,A)
【文献】特開2000-037736(JP,A)
【文献】特開平1-110109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B22D 17/00-17/32
F02F 1/00- 1/42,7/00
F02M 31/00-33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分を形成するための吸気系部品の製造に用いられるものであって、型締めと型開きとが繰り返される金型同士の型締めの際、それら金型同士の間に形成されるキャビティに対し溶融した樹脂を射出して同樹脂を固化させることにより、センサを組み付けるための雄ねじが形成された突部を有する前記吸気系部品を製造する射出成形機において、
前記金型として、前記キャビティに向けて開口する凹所が形成された金型と、前記雄ねじを形成するための金型と、前記雄ねじを形成するための金型との間で前記エアクリーナの外壁を形成するための金型と、を備え、
前記凹所を有する金型に対し第1の入れ子が取り付けられる一方、その第1の入れ子に代えて第2の入れ子を取り付けることが可能とされており、
前記第1の入れ子及び前記第2の入れ子はそれぞれ、前記凹所内に取り付けられる取付部と、その取付部から前記キャビティ内に突出する棒状部と、を備えており、
前記第1の入れ子は、その取付部が前記凹所から露出して型締め時に前記雄ねじを形成するための金型に当接するとともに棒状部が前記キャビティを通過して前記外壁を形成するための金型に当接し、前記キャビティ内における前記棒状部の周囲に前記吸気系部品における前記雄ねじが形成された突部を形成する一方、前記棒状部によって前記突部に前記吸気系部品の内外を連通する貫通孔を形成するものであり、
前記第2の入れ子は、その取付部が前記凹所内に埋没して型締め時に前記雄ねじを形成するための金型から離れているとともに棒状部が前記キャビティ内に突出しつつ前記外壁を形成するための金型から離れており、前記キャビティ内における前記棒状部の周囲に前記雄ねじよりも径の大きい大径部を先端に有する突部を形成する一方、前記棒状部によって前記突部の内部に前記吸気系部品の内外を不通にする底部を形成するものであることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分を形成するためのものであり、雄ねじを有する突部が外壁から突出するよう形成されている吸気系部品において、
前記突部の先端には、前記雄ねじよりも径の大きい大径部が形成されており、
前記突部には前記外壁と交差する方向に延びる穴が形成されており、
前記穴の内部には、その穴による前記外壁の内外の連通を阻止する底部が形成されている
ことを特徴とする吸気系部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機及び吸気系部品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分を形成するための吸気系部品として、特許文献1に示されるように、センサを組み付けるための雄ねじを有する突部が、吸気系部品の外壁から突出するように設けられているものが知られている。この突部には、吸気系部品(外壁)の内外を連通する貫通孔が形成されている。
【0003】
突部の雄ねじには、内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分の圧力を、突部の上記貫通孔を介して検出する圧力センサが組み付けられる。圧力センサは、例えば次のように用いられる。すなわち、エアクリーナの濾過部に目詰まりが生じることにより、内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分の圧力が下がると、そうした圧力の低下が上記圧力センサによって検出され、それによってエアクリーナの濾過部に目詰まりが生じたことを知ることができる。
【0004】
上記吸気系部品の製造には、例えば次のような射出成形機が用いられる。この射出成形機では、型締めと型開きとが繰り返される金型同士の型締めの際、それら金型同士の間に形成されるキャビティに対し溶融した樹脂を射出して同樹脂を固化させることにより、上記突部を有する吸気系部品が製造される。
【0005】
ところで、大気中の塵埃等が比較的少ない地域で内燃機関を用いる場合、エアクリーナの濾過部に目詰まりが生じにくいため、吸気系部品に上記圧力センサ及び同圧力センサを組み付けるための突部を必ずしも設ける必要はない。ただし、内燃機関を用いる地域に応じて、突部のない吸気系部品と突部のある吸気系部品とを造り分けることは、吸気系部品の製造コスト低減の観点から好ましくない。
【0006】
このため、内燃機関を用いる地域に関係なく上記突部のある吸気系部品を採用し、大気中の塵埃等が比較的少ない地域では、吸気系部品の製造時に上記突部にキャップ等を被せることが考えられている。この場合、上記キャップにより、突部の貫通孔を閉塞することができるとともに、突部に対する圧力センサの組み付けが行われないようにすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3458266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、吸気系部品の製造時に上記突部にキャップ等を被せたとしても、そのキャップが突部から外れてしまうことがある。この場合には、キャップが外れた突部に対し、誤って圧力センサが組み付けられるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、製造コストを低く抑えつつ突部に対するセンサの誤組み付けを防止することができる射出成形機及び吸気系部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する射出成形機は、内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分を形成するための吸気系部品の製造に用いられる。上記射出成形機は、型締めと型開きとが繰り返される金型同士の型締めの際、それら金型同士の間に形成されるキャビティに対し溶融した樹脂を射出して同樹脂を固化させることにより、センサを組み付けるための雄ねじが形成された突部を有する吸気系部品を製造する。上記射出成形機は、金型に対し第1の入れ子が取り付けられる一方、その第1の入れ子に代えて第2の入れ子を取り付けることが可能とされている。第1の入れ子及び第2の入れ子はそれぞれ、金型の凹所内に取り付けられる取付部と、その取付部から前記キャビティ内に突出する棒状部と、を備えている。上記第1の入れ子は、その取付部が金型の上記凹所から露出して型締め時に他の金型に当接するとともに棒状部が上記キャビティを通過して他の金型に当接し、同キャビティ内における上記棒状部の周囲に吸気系部品における雄ねじが形成された突部を形成するものである。更に、第1の入れ子は、上記棒状部によって上記突部に吸気系部品の内外を連通する貫通孔を形成するものでもある。上記第2の入れ子は、その取付部が金型の上記凹所内に埋没して型締め時に他の金型から離れているとともに棒状部が上記キャビティ内に突出しつつ他の金型から離れており、同キャビティ内における前記棒状部の周囲に上記雄ねじよりも径の大きい大径部を先端に有する突部を形成するものである。更に、第2の入れ子は、上記棒状部によって上記突部の内部に吸気系部品の内外を不通にする底部を形成するものでもある。
【0011】
上記構成によれば、突部にセンサを組み付け可能な吸気系部品を製造する際には、第1の入れ子が金型に取り付けられる。この場合、製造された吸気系部品の突部には、センサを組み付けるための雄ねじが形成されるとともに、第1の入れ子の棒状部によって吸気系部品の内外を連通する貫通孔が形成される。また、突部の先端は、第1の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りに形成される。第1の入れ子の取付部は金型から露出して型締め時に他の金型に当接するため、キャビティにおける上記突部の先端を形成する部分、すなわち第1の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りの部分が大きくなることはない。従って、形成された突部の先端が大きくなることもなく、その突部に対しセンサを組み付けることが可能となる。
【0012】
一方、突部に対するセンサの誤組み付けを防止可能な吸気系部品を製造する際には、第2の入れ子が金型に取り付けられる。この場合、製造された吸気系部品の突部には、雄ねじが形成されるとともに、同突部の内部に第2の入れ子の棒状部によって吸気系部品の内外を不通にする底部が形成される。また、突部の先端は、第2の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りに形成される。第2の入れ子の取付部は金型の凹所内に埋没して型締め時に他の金型から離れているため、キャビティにおける上記突部の先端を形成する部分、すなわち第2の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りの部分が大きくなる。これにより、突部の先端には、雄ねじより径の大きい大径部が形成される。そして、その大径部により、突部に対しセンサが誤って組み付けられることは防止される。
【0013】
仮に突部にキャップ等を被せることによって同突部に対するセンサの誤組み付けを防止するようにした場合、吸気系部品の製造数が多くなるに従って、キャップ等を設けることに伴う吸気系部品の製造コストの増大が無視できなくなる。しかし、上記構成によれば、金型に取り付けられる第1の入れ子を第2の入れ子に取り替えるだけで、突部に対するセンサの誤組み付けを防止可能な吸気系部品を製造することができるため、吸気系部品の製造数が多くなるに従って、吸気系部品の製造コストが低く抑えられるようになる。
【0014】
上記課題を解決する吸気系部品は、内燃機関の吸気系におけるエアクリーナの濾過部よりも下流側の部分を形成するためのものであり、雄ねじを有する突部が外壁から突出するよう形成されている。上記突部の先端には、雄ねじよりも径の大きい大径部が形成されている。上記突部には外壁と交差する方向に延びる穴が形成されている。上記穴の内部には、その穴による外壁の内外の連通を阻止する底部が形成されている。
【0015】
上記構成によれば、突部の先端に雄ねじより径の大きい大径部が形成されているため、突部に対しセンサが誤って組み付けられることを上記大径部によって防止することができる。なお、上記突部を有する吸気系部品は、例えば次のような射出成形機によって製造することが可能である。
【0016】
この射出成形機は、金型同士の型締めの際、それら金型同士の間に形成されるキャビティに対し溶融した樹脂を射出して同樹脂を固化させることにより、センサを組み付けるための雄ねじが形成された突部を有する吸気系部品を製造する。上記射出成形機は、金型に対し第1の入れ子が取り付けられる一方、その第1の入れ子に代えて第2の入れ子を取り付けることが可能とされる。第1の入れ子及び第2の入れ子はそれぞれ、金型の凹所内に取り付けられる取付部と、その取付部から前記キャビティ内に突出する棒状部と、を備えるものとする。上記第1の入れ子は、その取付部が金型の上記凹所から露出して型締め時に他の金型に当接するとともに棒状部が上記キャビティを通過して他の金型に当接し、同キャビティ内における上記棒状部の周囲に吸気系部品における雄ねじが形成された突部を形成するものとされる。更に、第1の入れ子は、上記棒状部によって上記突部に吸気系部品の内外を連通する貫通孔を形成するものとされる。一方、上記第2の入れ子は、その取付部が金型の上記凹所内に埋没して型締め時に他の金型から離れているとともに棒状部が上記キャビティ内に突出しつつ他の金型から離れており、同キャビティ内における前記棒状部の周囲に上記雄ねじよりも径の大きい大径部を先端に有する突部を形成するものとされる。更に、第2の入れ子は、上記棒状部によって上記突部の内部に吸気系部品の内外を不通にする底部を形成するものとされる。
【0017】
上記射出成形機では、第2の入れ子が金型に取り付けられることにより、突部に対するセンサの誤組み付けを防止可能な吸気系部品を製造することができる。詳しくは、製造された吸気系部品の外壁には雄ねじを有する突部が形成されるとともに、その突部の内部には第2入れ子の棒状部によって吸気系部品の内外を不通にする底部が形成される。また、上記突部の先端は、第2の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りに形成される。第2の入れ子の取付部は金型の凹所内に埋没して型締め時に他の金型から離れているため、キャビティにおける上記突部の先端を形成する部分、すなわち第2の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りの部分が大きくなる。これにより、突部の先端には、雄ねじより径の大きい大径部が形成される。そして、その大径部により、突部に対しセンサが誤って組み付けられることは防止される。
【0018】
一方、上記射出成形機では、第2入れ子に代えて第1の入れ子が金型に取り付けられることにより、突部にセンサを組み付け可能な吸気系部品を製造することができる。詳しくは、製造された吸気系部品の外壁には、センサを組み付けるための雄ねじを有する突部が形成されるとともに、第1の入れ子の棒状部によって吸気系部品の内外を連通する貫通孔が形成される。また、上記突部の先端は、第1の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りに形成される。第1の入れ子の取付部は金型から露出して型締め時に他の金型に当接するため、キャビティにおける上記突部の先端を形成する部分、すなわち第1の入れ子の棒状部における取付部と繋がる部分の周りの部分が大きくなることはない。従って、形成された突部の先端が大きくなることもなく、その突部に対しセンサを組み付けることが可能となる。
【0019】
こうした射出成形機を用いて吸気系部品を製造する場合、金型に取り付けられる入れ子を第1の入れ子と第2の入れ子とで選択的に用いることにより、突部に対するセンサの誤組み付けを防止可能な吸気系部品と、突部にセンサを組み付け可能な吸気系部品とを造り分けることができる。仮に、突部に対するセンサの組み付けが可能な吸気系部品のみを射出成形機で製造し、必要な場合には上記突部にキャップ等を被せることによって同突部に対するセンサの誤組み付けを防止するようにしたとすると、次のような問題が生じる。すなわち、吸気系部品の製造数が多くなるに従って、キャップ等を設けることに伴う吸気系部品の製造コストの増大が無視できなくなる。しかし、上記射出成形機を用いて吸気系部品を製造する場合、金型に取り付けられる入れ子として第2の入れ子を用いるだけで、突部に対するセンサの誤組み付けを防止可能な吸気系部品を製造することができるため、吸気系部品の製造数が多くなるに従って、吸気系部品の製造コストが低く抑えられるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造コストを低く抑えつつ突部に対するセンサの誤組み付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】内燃機関の吸気系の構造を示す略図。
図2】エアクリーナにおける突部及びその周辺の構造を示す断面図。
図3】エアクリーナにおける突部及びその周辺の構造を示す断面図。
図4】可動型に第1の入れ子を取り付けた状態を示す断面図。
図5】可動型に第2の入れ子を取り付けた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、射出成形機及び吸気系部品の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
図1は、内燃機関1の吸気系の概要を示している。内燃機関1の吸気系は、吸気ダクト2及びエアクリーナ4等の吸気系部品によって構成されている。内燃機関1には、それら吸気系部品によって形成された吸気通路19を介して空気が吸入される。エアクリーナ4は、吸気通路19を通過する吸気中の異物を取り除くための濾過部(フィルタエレメント4a)を備えている。吸気ダクト2は、内燃機関1の吸気系におけるエアクリーナ4のフィルタエレメント4aよりも下流側(図1の右側)に位置しており、内燃機関1とエアクリーナ4とを接続している。
【0023】
ところで、内燃機関1を用いる地域によっては大気中の塵埃等が多いため、その塵埃等によってエアクリーナ4のフィルタエレメント4aに目詰まりが生じやすい。このため、吸気通路19におけるフィルタエレメント4aよりも下流側の部分の圧力を圧力センサ5によって検出し、同圧力センサ5によって検出された圧力が閾値以下に低下したことに基づき、フィルタエレメント4aに目詰まりが生じたことを知るようにしている。上記圧力センサ5については、例えばエアクリーナ4の外壁3におけるフィルタエレメント4aよりも下流側に対応する部分に組み付けることが考えられる。この場合、エアクリーナ4の外壁3におけるフィルタエレメント4aよりも下流側に対応する部分に、圧力センサ5を組み付けるための雄ねじ6を有する突部7が形成される。
【0024】
一方、大気中の塵埃等が比較的少ない地域で内燃機関1を用いる場合、フィルタエレメント4aに目詰まりが生じにくいことから、エアクリーナ4に上記圧力センサ5及び上記突部7を必ずしも設ける必要はない。ただし、内燃機関1を用いる地域に応じて、突部7のないエアクリーナ4と突部7のあるエアクリーナ4とを造り分けることは、エアクリーナ4の製造コスト低減の観点から好ましくない。このため、エアクリーナ4では、大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したものと、大気中の塵埃等が多い地域に対応したものとを、突部7の構造の変更によって造り分けるようにしている。
【0025】
次に、大気中の塵埃等が多い地域に対応したエアクリーナ4と、大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したエアクリーナ4との突部7の構造の違いについて、図2及び図3を参照して詳しく説明する。
【0026】
図2は、大気中の塵埃等が多い地域に対応したエアクリーナ4の突部7の構造を示している。図2から分かるように、突部7は、外壁3からエアクリーナ4の外部(図2の上方)に向けて突出する円筒状に形成されている。突部7の内部にはエアクリーナ4の内外を連通する貫通孔8が形成されている。突部7の外周面には、圧力センサ5を組み付けるための雄ねじ6が形成されている。突部7の突出方向の端部(先端部)は、突部7における雄ねじ6が形成されている部分よりも小径となるように形成されている。圧力センサ5は、突部7の貫通孔8を介して、エアクリーナ4の内部(吸気通路19)におけるフィルタエレメント4aよりも下流側の部分の圧力を検出する。
【0027】
図3は、大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したエアクリーナ4の突部7の構造を示している。図3から分かるように、この突部7も、外壁3からエアクリーナ4の外部(図2の上方)に向けて突出する円筒状に形成されており、且つ、外周面に上記雄ねじ6が形成されている。上記突部7の先端には、同突部7における雄ねじ6が形成された部分よりも径の大きい大径部7aが形成されている。また、上記突部7の内部には、エアクリーナ4の外壁3と交差する方向(図3の上下方向)に延びる穴9が形成されている。穴9の内部には、その穴9によるエアクリーナ4(外壁3)の内外の連通を阻止する底部9aが形成されている。
【0028】
次に、大気中の塵埃等が多い地域に対応したエアクリーナ4と、大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したエアクリーナ4とを、それぞれ製造することができる射出成形機について、図4及び図5を参照して詳しく説明する。
【0029】
図4は、射出成形機におけるエアクリーナ4の突部7及びその周辺を形成するための部分を拡大して示している。射出成形機は、エアクリーナ4の製造のために型締めと型開きとが繰り返される金型である固定型10及び可動型11,12,13を備えている。そして、型開き時には、可動型11,12,13が矢印で示すように互いに離間する。また、型締め時には、可動型11,12,13が互いに接近する、すなわち矢印と逆の方向に移動する。
【0030】
射出成形機における型締めの際には、固定型10と可動型11,12,13との間にキャビティ14が形成される。そして、このキャビティ14に対し、溶融した樹脂を射出して同樹脂を固化させることにより、圧力センサ5(図2)を組み付けるための雄ねじ6が形成された突部7を有するエアクリーナ4が製造される。こうして製造されたエアクリーナ4は、固定型10と可動型11,12,13との型開きの際、それら固定型10と可動型11,12,13との間から取り出される。
【0031】
可動型12,13における両者の移動方向(図4の左右方向)についての対向面はそれぞれ、突部7の雄ねじ6を形成するための形成面12a,13aとなっている。また、可動型12,13における可動型11側の面であって形成面12a,13aよりも可動型11側の部分には、テーパ面12b,13bが形成されている。テーパ面12b,13bは、固定型10側(図4の下側)に向かうほど、図4の左右方向についての互いの距離が接近するように傾斜している。
【0032】
可動型11には、第1の入れ子15を取り付けるための凹所11aが形成されている。第1の入れ子15は、可動型11の凹所11a内に取り付けられる取付部16と、その取付部16からキャビティ14内に突出する棒状部17と、を備えている。第1の入れ子15の取付部16には、可動型11の凹所11aから可動型12,13側に露出する露出部18が形成されている。この露出部18は、型締め時に可動型12,13のテーパ面12b,13bに対し面接触する。第1の入れ子15の棒状部17は、型締め時、キャビティ14を通過して固定型10に当接する。従って、キャビティ14に対し射出された樹脂によって形成されたエアクリーナ4において、上記棒状部17の周囲には雄ねじ6を有する突部7が形成されるとともに、その突部7の内部には上記棒状部17によってエアクリーナ4の内外を連通する貫通孔8が形成される。
【0033】
図5に示すように、可動型11の凹所11aには、第1の入れ子15に代えて、第2の入れ子21を取り付けることも可能となっている。第2の入れ子21は、可動型11の凹所11a内に取り付けられる取付部22と、その取付部22からキャビティ14内に突出する棒状部23と、を備えている。第2の入れ子21の取付部22は、可動型11の凹所11a内に埋没している。これにより、取付部22は、型締め時、他の可動型12,13のテーパ面12b,13bから離れた状態となる。第2の入れ子21の棒状部23は、型締め時、取付部22からキャビティ14内に突出しつつ固定型10から離れた状態となる。従って、キャビティ14に対し射出された樹脂によって形成されたエアクリーナ4において、上記棒状部17の周囲には雄ねじ6よりも径の大きい大径部7aを先端に有する突部7が形成されるとともに、その突部7の内部にはエアクリーナ4の内外を不通にする底部9aを有する穴9が形成される。
【0034】
次に、本実施形態における射出成形機及びエアクリーナ4(吸気系部品)の作用について説明する。
内燃機関1の吸気系に設けられるエアクリーナ4であって、大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したものと、大気中の塵埃等が多い地域に対応したものとは、突部7の構造の変更によって造り分けられる。そして、大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したエアクリーナ4では、図3に示すように、突部7の先端には、同突部7における雄ねじ6が形成された部分よりも径の大きい大径部7aが形成されている。このため、突部7に対し圧力センサ5(図2)が誤って組み付けられることを、上記大径部7aによって防止することができる。
【0035】
突部7を有するエアクリーナ4を製造するための射出成形機では、可動型11の凹所11aに取り付けられる入れ子として、第1の入れ子15と第2の入れ子21とが選択的に用いられる。そして、図4に示すように、可動型11の凹所11aに第1の入れ子15を取り付けることにより、突部7に圧力センサ5を組み付けることが可能なエアクリーナ4、すなわち大気中の塵埃等が多い地域に対応したエアクリーナ4を、射出成形機で製造することが可能になる。また、図5に示すように、可動型11の凹所11aに第1の入れ子15に代えて第2の入れ子21を取り付ければ、突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けを防止することが可能なエアクリーナ4、すなわち大気中の塵埃等が比較的少ない地域に対応したエアクリーナ4を、射出成形機で製造することが可能になる。
【0036】
可動型11の凹所11a内に第1の入れ子15(取付部16)を取り付けた場合(図4)、射出成形機で製造されたエアクリーナ4の突部7には、圧力センサ5を組み付けるための雄ねじ6が形成されるとともに、第1の入れ子15の棒状部17によってエアクリーナ4(外壁3)の内外を連通する貫通孔8が形成される。また、突部7の先端は、第1の入れ子15の棒状部17における取付部16と繋がる部分の周りに形成される。第1の入れ子15の取付部16(露出部18)は、可動型11から露出して型締め時に他の可動型12,13のテーパ面12b,13bに当接する。このため、キャビティ14における上記突部7の先端を形成する部分、すなわち第1の入れ子15の棒状部17における取付部16(露出部18)と繋がる部分の周りの部分が大きくなることはない。従って、形成された突部7の先端が大きくなることもなく、その突部7に対し圧力センサ5を組み付けることが可能となる。
【0037】
一方、可動型11の凹所11a内に第2の入れ子21(取付部22)を取り付けた場合(図5)、射出成形機で製造されたエアクリーナ4の突部7には、雄ねじ6が形成されるとともに、第2の入れ子21の棒状部23によってエアクリーナ4(外壁3)の内外を不通にする底部9aが形成される。また、突部7の先端は、第2の入れ子21の棒状部23における取付部22と繋がる部分の周りに形成される。第2の入れ子21の取付部22は可動型11の凹所11a内に埋没して型締め時に他の可動型12,13のテーパ面12b,13bから離れているため、キャビティ14における上記突部7の先端を形成する部分、すなわち第2の入れ子21の棒状部23における取付部22と繋がる部分の周りの部分が大きくなる。これにより、突部7の先端には、雄ねじ6より径の大きい大径部7aが形成される。そして、その大径部7aにより、突部7に対し圧力センサ5が誤って組み付けられることが防止される。
【0038】
仮に、突部7に対する圧力センサ5の組み付けが可能なエアクリーナ4のみを射出成形機で製造し、必要な場合には上記突部7にキャップ等を被せることによって同突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けを防止するようにしたとすると、次のような問題が生じる。すなわち、エアクリーナ4の製造数が多くなるに従って、キャップ等を設けることに伴うエアクリーナ4の製造コストの増大が無視できなくなる。しかし、上記射出成形機を用いてエアクリーナ4を製造する場合、可動型11に取り付けられる入れ子として第1の入れ子15に代えて第2の入れ子21を用いるだけで、突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けを防止可能なエアクリーナ4を製造することができるようになる。このため、エアクリーナ4の製造数が多くなるに従って、同エアクリーナ4の製造コストが低く抑えられるようになる。
【0039】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)製造コストを低く抑えつつ突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けを防止することができる。
【0040】
(2)可動型11の凹所11aに取り付けられる入れ子として、第1の入れ子15と第2の入れ子21とを選択的に用いることにより、突部7に対する圧力センサ5の組み付けが可能なエアクリーナ4と、突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けを防止可能なエアクリーナ4とを造り分けることができる。そして、それらエアクリーナ4の造り分けを低コストで実現することができる。
【0041】
(3)突部7に対する圧力センサ5の組み付けを防止可能なエアクリーナ4では、その突部7の先端に大径部7aが一体に形成され、その大径部7aによって同突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けが防止される。従って、圧力センサ5の突部7に対する誤組み付け防止のためにキャップ等を突部7に被せる場合と比較して、そのキャップ等が外れてしまうことがないため、突部7に対する圧力センサ5の誤組み付けを一層効果的に防止することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本発明が適用される吸気系部品として突部7が形成された吸気系部品としてエアクリーナ4を例示したが、内燃機関1の吸気系におけるフィルタエレメント4aよりも下流側の部分を形成する他の吸気系部品に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…内燃機関
2…吸気ダクト
3…外壁
4…エアクリーナ
4a…フィルタエレメント
5…圧力センサ
6…雄ねじ
7…突部
7a…大径部
8…貫通孔
9…穴
9a…底部
10…固定型
11…可動型
11a…凹所
12…可動型
12a…形成面
12b…テーパ面
13…可動型
13a…形成面
13b…テーパ面
14…キャビティ
15…第1の入れ子
16…取付部
17…棒状部
18…露出部
19…吸気通路
21…第2の入れ子
22…取付部
23…棒状部
図1
図2
図3
図4
図5