(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】車両のサイドドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240228BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240228BHJP
B21D 19/00 20060101ALI20240228BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B60J5/00 Z
B60J5/04 Z
B21D19/00 B
B21D53/88 Z
(21)【出願番号】P 2020100856
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-535517(JP,A)
【文献】特開昭64-070224(JP,A)
【文献】特開2006-096179(JP,A)
【文献】特開2008-126944(JP,A)
【文献】特開2008-105437(JP,A)
【文献】特開2007-296953(JP,A)
【文献】特表2007-528319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 5/04
B21D 19/00
B21D 53/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタ部材と、このアウタ部材に連結されると共に車体前後方向前側縦壁部及び後側縦壁部を有するインナ部材とを備えた車両のサイドドア構造において、
前記アウタ部材が、アウタパネルと、このアウタパネルの外周縁部にヘミング加工により接続された前記インナ部材に比較し板厚が薄い環状の枠部材とを有し、
前記インナ部材は、前記前側縦壁部と後側縦壁部が鋳造成形若しくは高強度樹脂材料にて構成されると共に着脱可能な複数の締結部材を介して前記枠部材に固定され
、
前記インナ部材が車体との間をシールする第1シール部材を有し、
前記第1シール部材は、前記インナ部材の外周縁部の少なくとも一部において前記複数の締結部材を覆うように設けられたことを特徴とする車両のサイドドア構造。
【請求項2】
前記前側縦壁部と後側縦壁部は、外周縁部において車幅方向内側に屈曲されると共に前記第1シール部材に係合可能な折曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項3】
前記第1シール部材は、前記前側縦壁部及び後側縦壁部の外周縁部と前記枠部材とが形成する隙間を覆う隙埋部を有することを特徴とする請求項
1又は2に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項4】
前記インナ部材が、前記第1シール部材の内周側に車体との間をシールする第2シール部材を有し、
前記第1シール部材は、前記第2シール部材よりも車体に対する内接圧が低く設定されたことを特徴とする請求項
1~3
の何れか1項に記載の車両のサイドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタ部材に連結されると共に車体前後方向前側縦壁部及び後側縦壁部を有するインナ部材を備えた車両のサイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、意匠面部を構成するアウタパネルと、このアウタパネルの外周縁部にヘミング加工によって接続されたインナパネルと、このインナパネル側に取り付けられたドアガラスユニット等のドア部品(付属品)から構成されたサイドドア構造は知られている。
また、サイドドアを機能毎にモジュール化することにより、組み付けや調整等の作業性を向上する技術についても種々提案されている。
【0003】
特許文献1のドア構造及びその組付け方法は、メインフレームモジュールとサッシュモジュールとで構成されたドアメインモジュールと、アウタパネルと、インナトリム(ドアトリム)とを有し、メインフレームモジュールが、板金製のヒンジパネルと、板金製のラッチパネルと、これらを水平方向に連結する上下1対のインパクトバーから形成され、アウタパネルの前後及び下側縁部を鉤状に形成し、アウタパネルの鉤状縁部とメインフレームモジュールとが着脱可能な複数のリベットを介して締結されている。
【0004】
近年、車両の軽量化による燃費改善を目的として、アウタパネルとインナパネルとをアルミニウム合金(以下、Al合金と略す)等の軽合金材料やCFRP等の高強度樹脂材料で形成する傾向にある。
材料特性上、鋳物や高強度樹脂材料は剛性が高く、展伸材に比べて造形性が優れていることから、通常、三次元的に複雑な形状であるインナパネル側のインナ部材はAl合金鋳物や高強度樹脂材料で成形し、単純形状であるアウタパネル側のアウタ部材はAl合金展伸材で成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インナ部材をAl合金鋳物や高強度樹脂材料で成形し、アウタ部材をAl合金展伸材で成形する場合、Al合金鋳物や高強度樹脂材料で成形するインナ部材を1mm以下の薄肉構造にすることは容易ではない。
そして、1mm以上の厚肉状インナ部材にアウタ部材をヘミング加工した場合、アウタ部材の折り返し部分に皺が発生することが想定され、外観性の低下を招く虞がある。
また、アウタ部材とインナ部材の接合部の厚さ寸法が大きくなるため、ヒンジ周辺の接続部分と車体側との干渉回避スペースを確保する必要があり、サイドドアの開閉性能に制約が生じることも懸念される。
【0007】
特許文献1のドア構造及びその組付け方法のように、アウタ部材の外周縁部を鉤状に形成し、鋳物製インナ部材を締結部材を介して鉤状縁部に締結することが考えられる。
しかし、意匠面部を構成するアウタ部材に鉤状縁部を機械加工により成形する場合、アウタ部材に肉余りに伴う皺が発生する。
即ち、サイドドアの軽量化と外観性向上とを両立することは容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、サイドドアの軽量化と外観性向上とを両立可能な車両のサイドドア構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の車両のサイドドア構造は、アウタ部材と、このアウタ部材に連結されると共に車体前後方向前側縦壁部及び後側縦壁部を有するインナ部材とを備えた車両のサイドドア構造において、前記アウタ部材が、アウタパネルと、このアウタパネルの外周縁部にヘミング加工により接続された前記インナ部材に比較し板厚が薄い環状の枠部材とを有し、前記インナ部材は、前記前側縦壁部と後側縦壁部が鋳造成形若しくは高強度樹脂材料にて構成されると共に着脱可能な複数の締結部材を介して前記枠部材に固定され、前記インナ部材が車体との間をシールする第1シール部材を有し、前記第1シール部材は、前記インナ部材の外周縁部の少なくとも一部において前記複数の締結部材を覆うように設けられたことを特徴としている。
【0010】
この車両のサイドドア構造では、アウタパネルの外周縁部がインナ部材に比較し板厚が薄い環状の枠部材に対してヘミング加工により接続されるため、意匠面部を構成するアウタパネルに皺や歪を発生させることなくアウタパネルと枠部材とを接続することができ、見栄え向上を図ることができる。前記インナ部材は、前記前側縦壁部と後側縦壁部が鋳造成形若しくは高強度樹脂材料にて構成されているため、軽量材料を適用することができ、サイドドアを軽量化することができる。また、アウタ部材の枠部材は、着脱可能な複数の締結部材を介してインナ部材に固定されるため、アウタ部材とインナ部材の着脱容易性を確保することができ、組付作業性やリペア性を向上することができ、例えば、アウタパネルに大きな傷や凹み等が生じた場合にドア全体を交換する必要がなく、アウタ部材のみの交換で済む。
【0011】
また、前記インナ部材が第1シール部材を有し、前記第1シール部材は、インナ部材の外周縁部の少なくとも一部において前記複数の締結部材を覆うように設けられているため、乗員による締結部材の視認を回避することができ、一層見栄え向上を図ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記前側縦壁部と後側縦壁部は、外周縁部において車幅方向内側に屈曲されると共に前記第1シール部材に係合可能な折曲部を有することを特徴としている。この構成によれば、第1シール部材の取付強度を増加することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記第1シール部材は、前記前側縦壁部及び後側縦壁部の外周縁部と前記枠部材とが形成する隙間を覆う隙埋部を有することを特徴としている。この構成によれば、アウタ部材とインナ部材の接続部分の隙間を第1シール部材を用いて覆うことができ、外観性とシール性とを確保することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記インナ部材が、前記第1シール部材の内周側に車体との間をシールする第2シール部材を有し、前記第1シール部材は、前記第2シール部材よりも車体に対する内接圧が低く設定されたことを特徴としている。この構成によれば、サイドドアの閉操作時、第1シール部材の反発力を抑えることにより、シール性を担保しつつ閉操作性を向上している。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両のサイドドア構造によれば、ヘミング加工による接続部分をアウタ部材に移行することにより、サイドドアの軽量化と外観性向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係るサイドドア構造を備えた車両の右側面図である。
【
図6】アウタパネルとインナパネルを省略したサイドドアの外側面図である。
【
図7】アウタパネルとインナパネルと被覆部材を省略したサイドドアの内側面図である。
【
図13】
図6のXIII-XIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について
図1~
図18に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施例1に係る車両Vは、2ドアハードトップ型乗用車であり、左右1対のサッシュレスタイプのサイドドア1を備えている。この車両Vは、左右対称構造であるため、以下、右側部分を主に説明する。また、図において、矢印F方向は前方、矢印OUT方向は車幅方向外方、矢印U方向は上方を夫々示すものとして説明する。
【0019】
車両Vは、前後方向に延びるサイドシル2と、このサイドシル2から上方に立設したヒンジピラー3と、このヒンジピラー3の後方にてサイドシル2から上方に立設したセンタピラー4と、ヒンジピラー3の上端部から上側後方に延びるフロントピラー5と、このフロントピラー5とセンタピラー4の上端部を連結するルーフサイドレール6等を有している。サイドドア1は、これら車体側骨格部材2~6が形成するドア開口部を開閉自在に構成されている。
【0020】
図2に示すように、サイドドア1は、車幅方向外側部分を構成するアウタ部材10と、車幅方向内側部分を構成するインナ部材30と、アルミニウム合金(以下、Al合金と略す)製インパクトバー46やドアガラスユニット60等を含む機能系ドア部品(付属品)を主な構成要素としている。アウタ部材10とインナ部材30は、基本的に軽合金材料、例えば、Al合金材料で構成されている。
【0021】
まず、アウタ部材10について説明する。
図3に示すように、アウタ部材10は、湾曲した意匠面部を形成すると共に側面視にて略矩形状に形成されたアウタパネル11と、このアウタパネル11の外周縁部にヘミング加工により接続され且つ側面視にて略矩形環状の枠部材12等を備えている。
アウタパネル11と枠部材12は、Al合金材料のパネル材、例えば、厚さ0.8mmの展伸材が夫々プレス成形されている。
【0022】
枠部材12は、上下方向に延びる前枠部21と、この前枠部21の後方にて上下方向に延びる後枠部22と、前枠部21と後枠部22との上端部を前後方向に連結する上枠部23と、前枠部21と後枠部22との下端部を前後方向に連結する下枠部24とによって構成されている。各枠部21~24は、アウタパネル11の外周縁部にヘミング加工にて挟み込まれたヘム部21a~24aと、締結部材b1を介してインナ部材30に締結固定される接続壁部21b~24bとを夫々有している。接続壁部23bには、ベルトラインシールアウタ部材(図示略)が取り付けられている。
【0023】
図13,
図15に示すように、接続壁部21bは、ヘム部21aの後側(内周側)部分から車幅方向内側に屈曲されると共に車幅方向に略直交する面を構成するフレーム締結部21cが形成されている。
図11,
図12,
図14,
図16に示すように、接続壁部22bは、ヘム部22aの前側(内周側)部分から車幅方向内側に屈曲されると共に車幅方向に略直交する面を構成するフレーム締結部22cが形成されている。接続壁部23b,24bについても、同様に、車幅方向に略直交する面を構成するフレーム締結部23c,24cが形成されている。
【0024】
次に、インナ部材30について説明する。
図2に示すように、インナ部材30は、車室側壁部を形成すると共に側面視にて略矩形状に形成されたインナパネル31と、このインナパネル31及び各種機能系ドア部品を支持すると共にサイドドア1の骨格部を構成する略矩形環状のフレーム部材32等を備えている。インナパネル31は、Al合金材料のパネル材、例えば、厚さ0.8mmの展伸材がプレス成形されている。
【0025】
図4に示すように、フレーム部材32は、上下方向に延びる前側縦壁部41と、この前側縦壁部41の後方にて上下方向に延びる後側縦壁部42と、前側縦壁部41と後側縦壁部42との上端部を連結するベルトラインレインアウタ部材43と、前側縦壁部41と後側縦壁部42との上端部を連結すると共にベルトラインレインアウタ部材43から車幅方向内側に離隔配置されたベルトラインレインインナ部材44と、前側縦壁部41と後側縦壁部42との下端部を締結部材を介して連結する下壁部45により構成されている。
【0026】
前側縦壁部41と後側縦壁部42は、Al合金材料を用いた鋳造で成形され、例えば、厚さ1.5~2.0mmのAl合金鋳物によって夫々構成されている。ベルトラインレインアウタ部材43とベルトラインレインインナ部材44は、Al合金材料を用いた押出成形により形成されている。下壁部45は、Al合金材料のパネル材、例えば、厚さ0.8mmの展伸材がプレス成形されている。
【0027】
図7~
図9,
図13,
図15に示すように、前側縦壁部41は、前後方向に直交する前壁部41aと、この前壁部41aの車幅方向内端部に連なり車幅方向に直交する内壁部41bと、外周縁部に車幅方向に直交するフランジ部41fとを有し、下端部に形成されたコーナ部41cから後方に延設されている。コーナ部41cから後方のフランジ部41fの外周縁部には、屈曲して車幅方向内方に延びる折曲部41eが形成されている。フランジ部41fは、フレーム締結部21cに重ね合わされて着脱可能な複数の締結部材b1を介して締結固定される。
【0028】
前側縦壁部41の中段部近傍部分には、インパクトバー46を前側縦壁部41に固定するための前後1対の前側取付部41s,41tと、複数のリブ部41uが設けられている。
1対の前側取付部41s,41tは、部分円筒状に夫々形成され、内壁部41bから車幅方向外方に膨出するように形成されている。前側取付部41s,41tは、インパクトバー46の軸心に沿って配置され、前側取付部41sは、前側取付部41tよりも前側上方位置に配設されている。複数のリブ部41uは、内壁部41bから車幅方向外方に延びるように形成されて前側取付部41s,41tの側壁部に連結されている。
図9に示すように、複数のリブ部41uのうち一部のリブ部41uは、前側取付部41sの側壁部と前側取付部41tの側壁部とを上下に並んで連結している。
【0029】
図5~
図8,
図13,
図15に示すように、前側縦壁部41には、上半部に設けられた上下1対のスチール製ヒンジ51と、これら1対のヒンジ51を取り付けるための上下1対のヒンジ取付部41dと、これらヒンジ取付部41dを補強するヒンジ補強部材54を有している。
図9に示すように、1対のヒンジ取付部41dは、前側取付部41sを間に介して配設されている。1対のヒンジ51は、前端部がヒンジピラー3に締結固定されると共に他端部が前壁部41aに設定されたヒンジ取付部41dに締結固定され、サイドドア1を上下方向に延びる回動軸回りに回動自在に支持している。
【0030】
ヒンジ補強部材54は、Al合金鋳物よりも延性が高い素材、例えば、スチール鋼鈑をプレス成形にて成形している。
図8,
図17に示すように、ヒンジ補強部材54は、1対のヒンジ取付部41dの後面部に重複可能な上下1対のヒンジ連結部54aと、これら1対のヒンジ連結部54aに略直交状に連なり且つ前側取付部41s,41tの頂部に重複可能なインパクトバー連結部54bとを一体的に備えている。
【0031】
1対のヒンジ連結部54aには3個のボルト穴が夫々形成され、インパクトバー連結部54bには2個のボルト穴が形成されている。
図13に示すように、インパクトバー連結部54bは、前側取付部41s,41tの頂部にボルト穴に挿通した締結部材b2を介してインパクトバー46の前端部と共締めされている。
図15に示すように、1対のヒンジ連結部54aは、1対のヒンジ取付部41dにボルト穴に挿通した締結部材b3を介して1対のヒンジ51と夫々共締めされている。これにより、インパクトバー46に作用した衝撃荷重をヒンジ補強部材54から1対のヒンジ51を介してヒンジピラー3に分散伝達している。
【0032】
図7,
図8,
図10~
図12,
図14に,
図16示すように、後側縦壁部42は、前後方向に直交する後壁部42aと、この後壁部42aの車幅方向内端部に連なり車幅方向に直交する内壁部42bと、外周縁部に車幅方向に直交するフランジ部42fとを有し、下端部に形成されたコーナ部42cから前方に延設されている。フランジ部42fの外周縁部には、屈曲して車幅方向内方に延びる折曲部42eが形成されている。フランジ部42fは、フレーム締結部22cに重ね合わされて着脱可能な複数の締結部材b1を介して締結固定される。尚、符号7は、インテリアトリムであり、符号59は、ドアトリムである。
複数の締結部材b1は、ボルト及びナットから構成され、ドア後側の締結構造を以下に詳述する。フランジ部42fとフレーム締結部22cとの重ね合わされた箇所にはボルト貫通孔が形成され、この貫通孔に一致するフレーム締結部22cの車幅方向外側の面にナットが溶接されている。ボルトをフランジ部42fの車幅方向内側から貫通孔を介してナットに螺合させることで締結されている。
【0033】
コーナ部42cには、インパクトバー46を後側縦壁部42に固定するための前後1対の後側取付部42s,42tと、複数のリブ部42uが設けられている。
1対の後側取付部42s,42tは、部分円筒状に夫々形成され、内壁部42bから車幅方向外方に膨出するように形成されている。後側取付部42s,42tは、インパクトバー46の軸心に沿って配置され、後側取付部42sは、後側取付部42tよりも前側上方位置に配置されている。複数のリブ部42uは、内壁部42bから車幅方向外方に延びるように形成されて後側取付部42s,42tの側壁部に連結されている。
図10に示すように、複数のリブ部42uのうち一部のリブ部42uは、後側取付部42sの側壁部と後側取付部42tの側壁部とをインパクトバー46の軸心方向に沿って連結し、他の一部のリブ部42uは、後壁部42aと後側取付部42sの側壁部とを連結している。
【0034】
図6,
図8,
図11,
図12,
図16に示すように、後側縦壁部42には、中段部に設けられたラッチ装置52と、このラッチ装置52を取り付けるためのラッチ取付部42dと、このラッチ取付部42dを補強するラッチ補強部材55を有している。
ラッチ装置52は、スチール製のロック部材(図示略)と、これらを収容するスチール製のケーシング等から構成され、センタピラー4に固定されたU字状のストライカ53に係脱可能に形成されている。ロック部材がストライカ53に係合したとき、サイドドア1がロック状態にされ、ロック部材がストライカ53から係合解除されたとき、サイドドア1がアンロック状態にされる。
【0035】
ラッチ補強部材55は、Al合金鋳物よりも延性が高い素材、例えば、スチール鋼鈑をプレス成形にて形成している。
図8,
図18に示すように、ラッチ補強部材55は、ラッチ取付部42dの前面部に重複可能なラッチ連結部55aと、このラッチ連結部55aに略直交状に連なり且つ後側取付部42s,42tの頂部に重複可能なインパクトバー連結部55bとを一体的に備えている。ラッチ連結部55aは、車幅方向内側部分が屈曲されて内壁部42bに沿って前方に延設され、下側部分がコーナ部42cまで延設されている。
【0036】
ラッチ連結部55aには3個のボルト穴とストライカ53が挿通されるストライカ開口部55cとが形成され、インパクトバー連結部55bには2個のボルト穴が形成されている。
図14に示すように、インパクトバー連結部55bは、後側取付部42s,42tの頂部にボルト穴に挿通した締結部材b2を介してインパクトバー46の後端部と共締めされている。
図16に示すように、ラッチ連結部55aは、ラッチ取付部42dにボルト穴に挿通した締結部材(図示略)を介してラッチ装置52と夫々共締めされている。これにより、インパクトバー46に作用した衝撃荷重をラッチ補強部材55からストライカ53を介してセンタピラー4に分散伝達している。
【0037】
次に、ベルトラインレインアウタ部材43とベルトラインレインインナ部材44について説明する。
図4,
図6に示すように、前後方向に直線状に延びるベルトラインレインアウタ部材43は、閉断面(中空)状に形成されている。このベルトラインレインアウタ部材43は、閉断面部分の前端部及び後端部が、前側縦壁部41及び後側縦壁部42の車幅方向外側上端部に夫々複数の締結部材を介して締結されている。このベルトラインレインアウタ部材43は、上端部に直線状に延びるアウタ上縦壁部43aと、下端部に直線状に延びるアウタ下縦壁部43bとを備えている。アウタ上縦壁部43aの上部には、接続壁部23bが取り付けられている。
【0038】
図4,
図7に示すように、前後方向に直線状に延びるベルトラインレインインナ部材44は、閉断面(中空)状に形成されている。このベルトラインレインインナ部材44は、上端部に直線状に延びるインナ上縦壁部44aと、下端部に直線状に延びるインナ下縦壁部44bとを備えている。ベルトラインレインインナ部材44は、インナ上縦壁部44aが前側縦壁部41及び後側縦壁部42の車幅方向内側上端部に締結部材を介して夫々1箇所締結され、インナ下縦壁部44bが前側縦壁部41及び後側縦壁部42の車幅方向内側上端部に締結部材を介して夫々2箇所締結されている。
【0039】
図5~
図7に示すように、フレーム部材32には、インパクトバー46と、スティフナ47と、被覆部材48と、第1~第3シール部材56~58と、ドアガラスユニット60と、1対のベルトラインシール部材等が装着されている。
インパクトバー46は、前述したように、前側縦壁部41の中段部から後側縦壁部42のコーナ部42cに亙って前方上り傾斜状に配設されている。このインパクトバー46の車幅方向外側壁面には、アウタパネル11の裏面に接着可能な複数のシーラ部材56aが設けられている。
【0040】
スティフナ47は、アウタパネル11の後半部分の張り剛性を確保する部材である。
Al合金製のスティフナ47は、側面視にて逆三角形状に形成され、上部3箇所がアウタ下縦壁部43bに締結され、下部1箇所がインパクトバー46に締結されている。スティフナ47には、軽量化を狙いと下複数(例えば、3個)の肉抜き部が形成され、これら肉抜き部の周囲にアウタパネル11の裏面に接着可能な複数のシーラ部材57aが設けられている。
【0041】
図2,
図5に示すように、ベルトラインレインインナ部材44(インナ上縦壁部44a)の上部には、前後に延びると共にベルトラインシールインナ部材(図示略)が装着された被覆部材48が取り付けられている。被覆部材48は、断面略L字状に形成され、ドアガラス61とベルトラインレインインナ部材44との隙間を上側で覆うように形成されている。ドアガラスユニット60は、ドアガラス61と、このドアガラス61を昇降駆動するレギュレータ機構62等によって構成されている。レギュレータ機構62は、ドアガラス61をガイドする前後1対のガイドレールと、ドアガラス61を昇降駆動するモータ部等を備えている。レギュレータ機構62は、上部がインナ上縦壁部44aに2個所及びインナ下縦壁部44bに1個所固定され、下部が下壁部45に1個所固定されている。
【0042】
次に、第1~第3シール部材56~58について説明する。
第1~第3シール部材56~58は、中空部を備えた弾性体(例えば、ゴム材等)から構成されている。
図2,
図5,
図7に示すように、第1シール部材56は最も外周側に配置され、第2シール部材57は第1シール部材56よりも内周側に配置され、第3シール部材58は第2シール部材57よりも内周側に配置されている。
【0043】
第1シール部材56は、フレーム部材32のコーナ部41cを含む下部及び後部を車体側に対してシールしている。インナ部材30の前端縁部にシール部材を配設した場合、ヒンジ51の近傍領域に反発力が発生し、ドアの閉操作性を阻害する虞があるためである。
第2,第3シール部材57,58は、フレーム部材32の前側上端部から下部を経由して後側上端部に亙り車体側に対してシールしている。
【0044】
図11,
図12,
図14,
図16に示すように、第1シール部材56は、前側縦壁部41の下部と後側縦壁部42と下壁部45に車幅方向に延びる複数のファスナf1を介して固定されている。後側縦壁部42において、複数のファスナf1は締結部材b1と周方向に近接して並ぶようにフランジ部42fに配設され、フランジ部42fに固定された第1シール部材56は、センタピラー4との間をシールしている。これにより、第1シール部材56が締結部材b1の頭部を車幅方向内側から覆うため、乗員による締結部材b1の視認を防止し、見栄え向上を図っている。ここで、例えば、アウタパネル11に大きな傷や凹み等が生じた場合のアウタ部材10の取り外し手順を説明する。まず、第1シール部材56を前記縦壁部41,42,45から離間する方向に引っ張ってファスナf1の固定を外し、締結部材b1のボルトにアクセス可能な状態にする。次に、工具等を用いて締結部材b1のボルトをナットから外すことで、アウタ部材10をインナ部材30から取り外すことができる。交換された新規アウタ部材10のインナ部材30への取り付け手順は前記取り外し手順と逆の手順である。
【0045】
また、第1シール部材56は、外周縁部から車幅方向外側に延びる隙埋部56aを備えている。この隙埋部56aは、折曲部42eに係合、換言すれば、内周部と協働して折曲部42eを挟持すると共にフレーム締結部22cとフランジ部42fとの突合せ部に生じた隙間を外周から覆うように構成されている。これにより、フランジ部42fに対する第1シール部材56の取付性を強固にすると共に見栄え向上を図っている。
前側縦壁部41の下部においても、後側縦壁部42と同様に、複数のファスナf1は締結部材b1と周方向に並ぶようにフランジ部42fに配設され、隙埋部56aがフランジ部41fとの突合せ部に生じる隙間を外周から覆っている。この第1シール部材56のシール圧(内接圧)は、第2シール部材57のシール圧よりも低くなるように設定されている。
【0046】
図11,
図12,
図14~
図16に示すように、第2シール部材57は、前側縦壁部41と後側縦壁部42に前後方向に延びる複数のファスナf2を介して固定され、下壁部45に上下方向に延びる複数のファスナf2を介して固定されている。第2シール部材57は、サイドシル2、ヒンジピラー3及びセンタピラー4とインナ部材30との間で車室内外をシールするメインシール部材である。第2シール部材57のシール圧は、第1,第3シール部材56,58のシール圧よりも高く設定されている。
【0047】
図11~
図16に示すように、第3シール部材58は、前側縦壁部41と後側縦壁部42と下壁部45に車幅方向に延びる複数のファスナf3を介して固定されている。
第3シール部材58は、インテリアトリム7及びドアトリム59との間でシールするシール部材である。第3シール部材58は、インテリアトリム7及びドアトリム59に夫々対応して中空部が形成され、各々の中空部の間にファスナf3が配置されている。
【0048】
次に、車両Vのサイドドア構造の作用、効果について説明する。
このサイドドア構造によれば、アウタパネル11の外周縁部がインナ部材30に比較し板厚が薄い環状の枠部材12に対してヘミング加工により接続されるため、意匠面部を構成するアウタパネル11に皺や歪を発生させることなくアウタパネル11と枠部材12とを接続することができ、見栄え向上を図ることができる。前記インナ部材30は、前側縦壁部41と後側縦壁部42が鋳造成形にて構成されているため、軽量材料を適用することができ、サイドドア1を軽量化することができる。また、アウタ部材10の枠部材12は、着脱可能な複数の締結部材b1を介してインナ部材30に固定されるため、アウタ部材10とインナ部材30の着脱容易性を確保することができ、組付作業性やリペア性を向上することができ、例えば、アウタパネル11に大きな傷や凹み等が生じた場合にドア全体を交換する必要がなく、アウタ部材10のみの交換で済む。
【0049】
インナ部材30が車体との間をシールする第1シール部材56を有し、第1シール部材56は、インナ部材30の外周縁部の少なくとも一部において複数の締結部材b1を覆うように設けられたため、乗員による締結部材b1の視認を回避することができ、一層見栄え向上を図ることができる。
【0050】
前側縦壁部41と後側縦壁部42は、外周縁部において車幅方向内側に屈曲されると共に第1シール部材56に係合可能な折曲部41e,42eを有するため、第1シール部材56の取付強度を増加することができる。
【0051】
第1シール部材56は、前側縦壁部41及び後側縦壁部42の外周縁部と枠部材12とが形成する隙間を覆う隙埋部56aを有するため、アウタ部材10とインナ部材30の接続部分の隙間を第1シール部材56を用いて覆うことができ、外観性とシール性とを確保することができる。
【0052】
インナ部材30が、第1シール部材56の内周側に車体との間をシールする第2シール部材57を有し、第1シール部材56は、第2シール部材57のよりも車体に対する内接圧が低く設定されたため、サイドドア1の閉操作時、第1シール部材56の反発力を抑えることにより、シール性を担保しつつ閉操作性を向上している。
【0053】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、2ドアハードトップ型乗用車においてサッシュレスタイプのサイドドア1の例を説明したが、車両の型式は任意に選択することができ、また、サッシュタイプのサイドドアに適用することも可能である。
【0054】
2〕前記実施形態においては、アウタ部材10とインナ部材30を基本的にAl合金材料を用いて構成した例を説明したが、少なくとも軽量化効果を達成可能な材料であれば良く、マグネシウム合金やCFRPのような高強度材料等任意の材料を適用することが可能である。
【0055】
3〕前記実施形態においては、第1~第3シール部材56~58を設けた例を説明したが、少なくとも締結部材b1を覆う第1シール部材56とメインシール部材である第2シール部材57とを備えれば良く、第3シール部材58を省略することも可能である。
【0056】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 サイドドア
10 アウタ部材
11 アウタパネル
12 枠部材
30 インナ部材
41 前側縦壁部
41e 折曲部
42 後側縦壁部
42e 折曲部
56 第1シール部材
56a 隙埋部
57 第2シール部材
b1 締結部材
V 車両