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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】開閉扉機構
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20240228BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H05K5/03 C
G03G21/16 133
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020110346
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007400
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100187492
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 元啓
(72)【発明者】
【氏名】孫 撃
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-057968(JP,A)
【文献】実開平01-085737(JP,U)
【文献】特開2004-317808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0099896(US,A1)
【文献】特開2000-98681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の側面に形成された開口部を開閉する開閉扉と、前記開閉扉を、前記開口部の一端縁に沿って延びる回転軸線を支点として、開位置と閉位置との間で回動可能に支持する軸支部と、係合部を有し且つ前記開閉扉における前記開口部との対向側面における前記回転軸線方向の一側端部及び他側端部にそれぞれ突設された一側係合部材及び他側係合部材と、前記筐体に固定され、前記開閉扉が開位置から閉位置に回動した際に前記一側係合部材の係合部及び前記他側係合部材の係合部にそれぞれ係合する一側被係合部及び他側被係合部とを備えた開閉扉機構であって、
前記開閉扉の前記対向側面における前記一側係合部材及び他側係合部材の間には、係合部を有する中間係合部材が少なくとも一つ突設され、
前記筐体には、前記開閉扉が開位置から閉位置に回動した際に、前記中間係合部材の係合部に係合する中間側被係合部が設けられ、
前記一側係合部材の係合部及び前記他側係合部材の係合部は、前記開閉扉が開位置から閉位置に回動される際に、前記中間係合部材の係合部が前記中間側被係合部と係合するよりも先に、前記一側係合部材の係合部及び前記他側係合部材の係合部にそれぞれ係合するように構成されている、開閉扉機構。
【請求項2】
請求項1記載の開閉扉機構において、
前記中間係合部材の係合部の係合位置は、前記開閉扉の前記対向側面に垂直な方向において、前記一側係合部材の係合部の係合位置及び前記他側係合部材の係合部の係合位置よりも該対向側面に近い側に位置している、開閉扉機構。
【請求項3】
請求項2記載の開閉扉機構において、
前記開閉扉の前記対向側面とは反対側面における前記中間係合部材に対応する箇所には、人が手で把持可能な取手部が設けられている、開閉扉機構。
【請求項4】
請求項3記載の開閉扉機構において、
前記一側係合部材の係合部の係合位置と、前記他側係合部材の係合部の係合位置とは、前記垂直方向において同じ位置にあり、
前記開閉扉が開位置にある状態で、該開閉扉が前記取手部を介して閉じ側に向かって所定荷重Pで押圧された場合の該開閉扉の厚さ方向の撓み量をδmaxとして、
撓み量δmaxを下記の式(1)で算出した場合に、
前記中間係合部材の係合部の係合位置と、前記一側係合部材の係合部の係合位置との前記垂直方向の離間距離は、前記算出した撓み量δmaxよりも大きく設定されている、開閉扉機構。
Eは、開閉扉の縦弾性係数であり、Iは、開閉扉の回転接線方向に沿った断面における断面二次モーメントを、前記回転軸線方向に直交する扉縦方向に等間隔に並ぶ複数の位置で算出してそれらを平均化した値であり、lは、開閉扉の前記回転軸線方向の寸法であり、Pは、前記取手部を人の手で押圧する際の荷重として予め設定した荷重であり、aは、開閉扉の前記回転軸線方向の一側端縁から前記取手部の該回転軸方向の中央位置までの距離であり、bは、前記開閉扉の前記回転軸線方向の他側端縁から前記取手部の該回転軸方向の中央位置までの距離である。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の開閉扉機構において、
前記中間係合部材は、前記開閉扉の前記対向側面における前記回転軸線方向の中央部に一つだけ設けられている、開閉扉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉扉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持軸回りに回動可能な開閉扉によって、筐体の側面に形成された開口部を開閉する開閉扉機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。この開閉扉機構では、開閉扉の下端部が、開口部の下端縁に沿って水平に延びる支持軸に支持されている。開閉扉は、開口部を全閉した閉位置と、支持軸を支点に筐体外側に回動することで開口部を開放した開位置との間で開放可能になっている。開閉扉における筐体内方側の面には、扉幅方向に並ぶ一対のカバー固定用フックが取付けられている。この一対のカバー固定用フックは、開閉扉が開位置から閉位置まで回動した際に、筐体側に設けられた軸体に係合することで開閉扉を閉位置に保持する。開閉扉を閉位置から開放位置に回動させる際には、ユーザーが開閉扉に設けられた操作用取手を手前側に引くことで、前記一対のカバー固定用フックと前記各軸体との係合が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-158624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す従来の開閉扉機構では、開閉扉を開位置から閉位置まで回動させた場合に、一対のカバー固定用フックのうちの一方のみが軸体に係合して、他方のカバー固定用フックと軸体との係合が不十分になる(つまり開閉扉が片閉まり状態になる)場合がある。開閉扉が片閉まりした状態で機器を作動させると、開閉扉が破損したり、開閉扉を取付けた筐体の剛性が低下したりして機械振動が増大する等の問題が生じる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開閉扉の片閉まりが生じ難い開閉扉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る開閉扉機構は、筐体の側面に形成された開口部を開閉する開閉扉と、前記開閉扉を、前記開口部の一端縁に沿って延びる回転軸線を支点として、開位置と閉位置との間で回動可能に支持する軸支部と、係合部を有し且つ前記開閉扉における前記開口部との対向側面における前記回転軸線方向の一側端部及び他側端部にそれぞれ突設された一側係合部材及び他側係合部材と、前記筐体に設けられ、前記開閉扉が開位置から閉位置に回動した際に一側係合部材の係合部及び他側係合部材の係合部と係合することで前記開閉扉を閉位置にロックする被係合部材とを備えている。
【0006】
そして、前記開閉扉の前記対向側面における前記一側係合部材及び他側係合部材の間には、係合部を有する中間係合部材が少なくとも一つ突設され、前記筐体には、前記開閉扉が開位置から閉位置に回動した際に、前記中間係合部材の係合部に係合する中間側被係合部が設けられ、前記一側係合部材の係合部及び前記他側係合部材の係合部は、前記開閉扉が開位置から閉位置に回動される際に、前記中間係合部材の係合部が前記中間側被係合部と係合するよりも先に、前記一側係合部材の係合部及び前記他側係合部材の係合部にそれぞれ係合するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開閉扉の片閉まりが生じ難い開閉扉機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る開閉扉機構を備えた画像形成装置の概略構成図である。
図2図2は、開閉扉が閉位置にある状態を示す画像形成装置の右側面図である。
図3図3は、開閉扉が閉位置に移行する直前の開閉扉機構を上側から見た平面図である。
図4図4は、開閉扉が閉位置に移行する直前の開閉扉機構における各フック部材の側面図であって、(a)が後側フック部材を示し、(b)が中間フック部材を示し、(c)が前側フック部材を示している。
図5図5は、各フック部材の係合動作を説明するための説明図である。
図6図6は、各フック部材の係合動作を説明するための説明図である。
図7図7は、開閉扉が閉位置に移行する際の各フック部材と各軸体との係合動作を説明するための説明図である。
図8図8は、開閉扉が閉位置に移行する際の各フック部材と各軸体との係合動作を説明するための説明図である。
図9図9は、開閉扉の厚さ方向の最大撓み量を予測算出する際に使用する材料力学モデルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
《実施形態》
図1は、実施形態に係る開閉扉機構100を備えた画像形成装置1を示す概略構成図である。以下の説明において、前側、後側は、画像形成装置1の前側、後側(図1の紙面垂直方向の手前側、奥側)を意味し、左側、右側は、画像形成装置1を前側から見たときの左側、右側を意味するものとする。
【0011】
上記画像形成装置1は、胴内排紙型の複写機であって、筐体2と、筐体2の上側に設けられた画像読取装置3とを有している。画像読取装置3は、原稿画像を光学的に読み取ってその画像データを生成する。
【0012】
筐体2内には、画像読取装置3にて読取った原稿の画像データを基に用紙Vに画像を転写形成する画像形成部4が設けられている。画像形成部4の下方には、レーザー光を照射する露光装置5が配置され、画像形成部4の上方には、転写ベルト6が配置されている。露光装置5の下方には、用紙Vを貯留する給紙部7が配置されている。転写ベルト6の右側の上方には、用紙Vに転写形成された画像に定着処理を施す定着部8が配置されている。筐体2と画像読取装置3との間には、定着部8にて定着処理が施された用紙Vを排出する排紙空間Sが設けられている。筐体2の上面には、排紙空間Sに排出された用紙Vを受け止める排紙トレイ部9が形成されている。筐体2内には、給紙部7から排紙トレイ部9に向かって延びる用紙搬送路Tが設けられている。筐体2における用紙搬送路Tに隣接する右側面には矩形状の開口部2aが形成されている。この開口部2aは、開閉扉101を含む開閉扉機構100により開閉可能になっている。
【0013】
画像形成部4は、イエロー、マゼンタ、シアン、又はブラックに対応する4つの画像形成ユニット10を備えている。各画像形成ユニット10は、感光体ドラム11を有していて、露光装置5によって感光体ドラム11に書込まれた静電潜像を現像器により現像して各色のトナー像として可視化する。画像形成部4は、各画像形成ユニット10の感光体ドラム11に形成された各色のトナー像を中間転写ベルトに順次転写して重ね合わせた後、給紙部7から供給される用紙Vに転写する。
【0014】
定着部8は、加熱ローラー8aと加圧ローラー8bとを備えている。定着部8は、画像形成部4より供給される用紙Vに担持されたトナー像を加熱及び加圧することで当該用紙Vに熱定着させる。定着処理後の用紙Vは排紙トレイ部9に排出される。
【0015】
上記開閉扉101は、上下方向に長い矩形板状をなす扉本体101aと、扉本体101aの内側面に取付けられたガイド部材101bとを有している。ガイド部材101bは、筐体2内の不図示のガイド部材との間で前記用紙搬送路Tを形成する。
【0016】
開閉扉101のガイド部材101bの下端部には、扉幅方向の両側に突出する軸部102が設けられている。この両軸部102は同軸に配置されており、その軸線Cは、図2に示すように、開口部2aの下端縁に沿って前後方向に延びている。両軸部102は、筐体の右側壁に固定された軸受部材103の軸受孔103aに回動可能に支持されている。開閉扉101は、この軸部102を支点として閉位置と開位置との間で回動可能に構成されている。閉位置では、図1の実線で示すように、開閉扉101によって筐体の開口部2aが閉塞される。一方、開位置では、図1の二点鎖線で示すように、開閉扉101が軸部102を支点として前記閉位置よりも装置外側(図1の例では右側)に回動して開口部2aが開放される。尚、閉位置における開閉扉101の最大開放角度θは、例えば筐体2と開閉扉101とを連結する帯状の弾性部材やリンク部材によって制限される。
【0017】
ユーザーが開閉扉101を閉位置から開位置側に回動させると、ガイド部材101bが前記軸部102を支点に筐体の外側に回動する。これにより、ユーザーは、用紙搬送路Tに詰まったジャム紙を処理可能になっている。
【0018】
[開閉扉機構100の詳細]
次に、図2及び図3を参照して、開閉扉機構100の詳細構成を説明する。図2は、画像形成装置1を開閉扉機構100側(右側)から見た側面図であり、図3は、開閉扉101が閉位置に移行する直前の開閉扉機構100を上側から見た図である。
【0019】
開閉扉機構100は、開閉扉101を閉位置にロックするための部材として、前側ロック部材104、後側ロック部材105及び中間ロック部材106を有している。各ロック部材104~106は、図4に示すようにいずれもフック形状を有していて、筐体2側に設けられた軸体114~116に係合することで開閉扉101を閉位置に保持する。尚、前側ロック部材104が一側係合部材に相当し、後側ロック部材105他側係合部材に相当し、中間ロック部材106が中間係合部材に相当する。また、
【0020】
具体的には、図2及び図3に示すように、前側ロック部材104及び後側ロック部材105はそれぞれ、開閉扉101の内側面101eにおける前後方向の前側端部及び後側端部に突設され、中間ロック部材106は、開閉扉101の内側面101eにおける前後方向の中央部(中間部の一例)に突設されている。
【0021】
図4に示すように、前側ロック部材104及び後側ロック部材105は、同じ形状であり、先端部に係合爪104a,105aを有している。中間ロック部材106は、前側ロック部材104及び後側ロック部材105と比べて突出長さが短いだけで基本的な形状は同じであり、先端部に係合爪106aを有している。各ロック部材104~106の係合爪104a~106aの先端(開閉扉101が閉位置にあるときの下端)には、図4の左側に向かって上側に傾斜する傾斜面104b~106bが形成されている。
【0022】
図3及び図4に示すように、各ロック部材104~106の基端部は、開閉扉101の内側面101eに沿って前後方向に水平に延びる支持シャフト107に回転一体に連結されている。支持シャフト107の前後方向の両端部はそれぞれ、開閉扉101の内側面101eから突出する突出板108に回動可能に支持されている。
【0023】
支持シャフト107の前後方向の中央部には、中間ロック部材106の他に操作レバー109が回転一体に連結されている。操作レバー109は、前後方向に長い矩形板状のレバー本体109aと、前後方向に間隔を空けて対向する一対の連結板109bとを有している。レバー本体109aは、開閉扉101の外側面(開閉扉101の反対側面)の上端部に形成された凹状の取手部101c(図2参照)から外部に露出している。レバー本体109aは、凹状の取手部101cの奥壁(図2の紙面垂直方向の奥側壁)に形成された貫通孔101dを貫通して一部が筐体2内に位置している。
【0024】
レバー本体109aの筐体2内に位置する部分は、一対の連結板109bの下端部に連結されている。一対の連結板109bの上端部は、中間ロック部材106(図3参照)の基端部を前後方向の両側から挟むようにして支持シャフト107に固定されている。
【0025】
図3に示すように、筐体2内の上端部における前側ロック部材104、後側ロック部材105及び中間ロック部材106に対応する箇所には、前側軸体114、後側軸体115及び中間軸体116が取付けられている。各軸体114~116は、前後方向に延びる円柱状のシャフトからなり互いに同軸に配置されている。前側軸体114が一側被係合部に相当し、後側軸体115が他側被係合部に相当し、中間軸体116が中間側被係合に相当する。
【0026】
図3では、各ロック部材104~106の突出側の端部が、各軸体114~116に当接する直前の状態を示しているが、この状態から開閉扉101を閉側(図3の左側)に回動させることで、図5に示すように、各ロック部材104~106の傾斜面104b~106bが各軸体114~116に当接して、各ロック部材104~106が支持シャフト107と共に図5の時計回り方向に回動し、この状態から開閉扉101をさらに閉側に回動させることで、各ロック部材104~106が各軸体114~116を乗り越えて自重により図5の反時計回り方向に回動する。この結果、図6に示すように、各ロック部材104~106の係合爪104a、105a、106aがそれぞれ、各軸体114,115,116に係合し、これにより開閉扉101が閉位置にロックされる。尚、図5及び図6は動作説明のための簡略図であるため各ロック部材104を同じ長さで描いているが実際には中間ロック部材106の長さがやや短い。
【0027】
この開閉扉101のロックを解除する際には、操作レバー109を手動操作により筐体の内方側に押せばよい。これにより、支持シャフト107が操作レバー109と共に図6の時計回り方向に回動して、三つのロック部材104~106が支持シャフト107と共に図6の時計回り方向に回動するので、各ロック部材104~106と各軸体115~116との係合が解除される。
【0028】
ところで、従来の開閉扉では、ロック部材を開閉扉の幅方向の両端部にのみ設けていたため、開閉扉の押し方(押す位置や押す力など)によっては、一方のロック部材の係合が不十分になって開閉扉がいわゆる片閉まり状態になるという問題があった。
【0029】
この問題を解決するべく、本実施形態では、両端のロック部材に相当する前側ロック部材104及び後側ロック部材105に加えて中間ロック部材106を設けるとともに、中間ロック部材106の係合爪106aの位置に工夫を凝らすようにしている。
【0030】
すなわち、図7及び図8に示すように、中間ロック部材106の係合爪106aは、開閉扉101の内側面101eの垂直方向において、前側ロック部材104の係合爪104a及び後側ロック部材105の係合爪105aより開閉扉101に近い側(換言すると各軸体115~116から遠い側)に配置されている。より詳しくは、中間ロック部材106の係合面106cは、前側ロック部材104の係合面104c及び後側ロック部材105の係合面105cよりも所定量Aだけ開閉扉101に近い側に位置している。
【0031】
この構成によれば、開閉扉101を閉位置に移行させる際には先ず、図7に示すように開閉扉101の両端部に位置する前側ロック部材104及び後側ロック部材105がそれぞれ前側軸体114及び後側軸体115に係合する。ユーザーが手で押すのは開閉扉101の中央部に位置する取手部101cであるため、前側ロック部材104及び後側ロック部材105が係合状態(ロック状態)に切替わったとしてもそのことがユーザーの手に感触として伝わり難い。このため、ユーザーは、自身の手で開閉扉101のロック感が得られるまで開閉扉101を押し続ける。この結果、図8に示すように、開閉扉101が上側から見てアーチ状に撓んで、中間ロック部材106の係合爪106aが中間軸体116と係合する。中間ロック部材106は、開閉扉101におけるユーザーの押圧箇所である幅方向の中央部に位置しているため、そのロック感がユーザーの手に伝わり易い。したがって、ユーザーは、中間ロック部材106が中間軸体116と係合したところで開閉扉101のロックが完了したと判断して、開閉扉101の取手部101cから手を離し、作業を完了する。
【0032】
ここで、上述したように本実施形態では、開閉扉101を閉じる際には、開閉扉101が図9に示すよう厚さ方向にアーチ状に撓むこととなるが、この撓み量が大きいと、中間ロック部材106が、前側ロック部材104及び後側ロック部材105よりも先に軸体116に到達して係合してしまう。このため、ユーザーは中間ロック部材106から伝わるロック感を受けて、前側ロック部材104及び後側ロック部材105のロックが完了する前に開閉扉101を押すのを止めてしまう虞がある。
【0033】
この問題を回避するべく、本実施形態では、開閉扉101の最大撓み量δmaxを予め予測して、中間ロック部材106の係合爪106aの係合位置と、他の二つのロック部材104,105の係合爪104a,105aの係合位置との離間距離が、開閉扉101の内側面101eの垂直方向において上記予測した最大撓み量δmaxよりも大きくなるようにした。
【0034】
これにより、開閉扉101の撓み変形に起因して中間ロック部材106が前側ロック部材104及び後側ロック部材105よりも先に被係合部である中間軸体116と係合する問題を回避することができる。
【0035】
図9は、開閉扉101の最大撓み量δmaxを予測算出する際に使用する材料力学モデルを示す概略図である。この図の横梁200を開閉扉101とみなし、左側支持点201及び右側支持点202を開閉扉101の両端部の軸部102と見なし、所定加重Pをユーザーによる開閉扉101の押圧力とみなすことで、前記最大撓み量δmaxを材料力学に基づいて次式(1)により予測算出することができる。
【数1】
【0036】
ここで、Eは、開閉扉101の縦弾性係数であり、Iは、開閉扉101の回転接線方向に沿った断面(図1の扉高さ方向の所定位置における水平断面)における断面二次モーメントを、該回転軸線方向に直交する扉縦方向に等間隔に並ぶ複数の位置で算出してそれらを平均化した値であり、lは、開閉扉101の前記回転軸線方向の寸法であり、Pは、取手部101cを人の手で掴んで押圧する際の荷重として予め設定した荷重であり、aは、開閉扉101の前記回転軸線方向の前側端縁から前記取手部101cの該回転軸方向の中央位置までの距離であり、bは、前記開閉扉101の前記回転軸線方向の後側端縁から前記取手部101cの該回転軸方向の中央位置までの距離である。
【0037】
本実施形態では、所定加重Pを付与する位置は中央部(取手部101cの位置)であるからa=bであり、式(1)においてa=bとすれば、結局、最大撓み量δmaxは次式(2)により予測算出することができる。
【0038】
所定加重Pは、平均的な大人が開閉扉101を手で押す際の押圧力を設定すればよく、例えば100人の大人に開閉扉101を閉じさせてその際に開閉扉101に付加される押圧力の平均値を採用する等すればよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の開閉扉機構100によれば、前側ロック部材104の係合爪104a及び後側ロック部材105の係合爪105aは、開閉扉101が開位置から閉位置に回動される際に、中間ロック部材106の係合爪106aが中間軸体116と係合するよりも先に、前側軸体114及び後側軸体115にそれぞれ係合するように構成されているため、開閉扉101の片閉まりが発生し難い。したがって、開閉扉101の片閉まりが発生した状態で画像形成装置1が作動することで機械振動が増幅されたり開閉扉101が破損したりするという問題を回避することができる。
【0040】
《他の実施形態》
前記実施形態では、開閉扉101の内側面にガイド部材101bが取付けられているが、これに限ったものでなく、開閉扉101の内側面101eに取付物が存在しない構成であってもよい。
【0041】
前記実施形態では、開閉扉機構100を画像形成装置1に適用した例を示したが、これに限ったものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は、開閉扉機構に有用であり、特に、プリンター、ファクシミリ、複写機、又は複合機(MFP)等の画像形成装置に適用する場合に有用である。
【符号の説明】
【0043】
A :所定量(離間距離)
C :軸線
P :所定荷重
δmax :最大撓み量
2 :筐体
2a :開口部
100 :開閉扉機構
101 :開閉扉
101a :扉本体
101b :ガイド部材
101c :取手部
104 :前側ロック部材(一側係合部材)
105 :後側ロック部材(他側係合部材)
106 :中間ロック部材(中間側係合部材)
104a :係合爪(係合部)
105a :係合爪(係合部)
106a :係合爪(係合部)
104c :係合位置
105c :係合位置
106c :係合位置
114 :前側軸体(一側被係合部)
115 :後側軸体(他側被係合部)
116 :中間軸体(中間側被係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9