(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240228BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240228BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240228BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 170
(21)【出願番号】P 2020118422
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022320(JP,A)
【文献】特開2016-082617(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー需要設備にエネルギーをそれぞれ出力する複数のエネルギー供給設備の運転を支援する運転支援装置であって、
前記複数のエネルギー供給設備のうち、出力制御の対象としない非対象エネルギー供給設備を除く、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備の出力値を制御することにより、前記複数のエネルギー供給設備の前記出力値を最適化する最適化部を備え、
前記最適化部は、最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、前記対象エネルギー供給設備及び前記非対象エネルギー供給設備を含む全ての前記エネルギー供給設備の前記出力値がそれぞれ最適となるように、前記対象エネルギー供給設備の目標出力値を算出する最適化計算部と、
前記最適化計算部によって算出された前記目標出力値を出力する最適化結果出力部と、を有する、運転支援装置。
【請求項2】
前記制約条件は、前記対象エネルギー供給設備の数が、全ての前記エネルギー供給設備の総数から前記非対象エネルギー供給設備の総数を差し引いた数以下である、との条件を含む、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記複数のエネルギー供給設備は、第1エネルギー供給設備と、前記第1エネルギー供給設備とは異なる第2エネルギー供給設備と、を含み、
前記制約条件は、
前記第1エネルギー供給設備を前記最適化部による出力制御の対象とするとする場合は、前記第2エネルギー供給設備を前記出力制御の対象としないか或いは前記出力制御の対象とし、前記第1エネルギー供給設備を前記出力制御の対象としない場合は、前記第2エネルギー供給設備を前記出力制御の対象としない、との条件を含む、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記複数のエネルギー供給設備は、互いに異なる種類の前記エネルギーをそれぞれ出力する一対の出力部を有する複合エネルギー供給設備を含み、
前記最適化計算部は、前記複合エネルギー供給設備を前記最適化部による出力制御の対象とする場合、前記一対の出力部のそれぞれについて前記目標出力値を算出する、請求項1~3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記最適化計算部は、前記複合エネルギー供給設備を前記最適化部による出力制御の対象とする場合、前記一対の出力部の出力比を調整するための信号を生成する、請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記最適化結果出力部は、前記目標出力値に応じた出力指令を前記対象エネルギー供給設備に出力する、請求項1~5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
エネルギー需要設備にエネルギーをそれぞれ出力する複数のエネルギー供給設備の運転を支援する運転支援方法であって、
前記複数のエネルギー供給設備のうち、出力制御の対象としない非対象エネルギー供給設備を除く、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備の出力値を制御することにより、前記複数のエネルギー供給設備の前記出力値を最適化する最適化ステップを備え、
前記最適化ステップは、
最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、前記対象エネルギー供給設備及び前記非対象エネルギー供給設備を含む全ての前記エネルギー供給設備の前記出力値がそれぞれ最適となるように、前記対象エネルギー供給設備の目標出力値を算出する最適化計算ステップと、
前記最適化計算ステップにおいて算出された前記目標出力値を出力する最適化結果出力ステップと、を有する、運転支援方法。
【請求項8】
エネルギー需要設備にエネルギーをそれぞれ出力する複数のエネルギー供給設備の運転を支援する運転支援プログラムであって、
前記複数のエネルギー供給設備のうち、出力制御の対象としない非対象エネルギー供給設備を除く、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備の出力値を制御することにより、前記複数のエネルギー供給設備の前記出力値を最適化する最適化ステップをコンピュータに実行させ、
前記最適化ステップは、
最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、前記対象エネルギー供給設備及び前記非対象エネルギー供給設備を含む全ての前記エネルギー供給設備の前記出力値がそれぞれ最適となるように、前記対象エネルギー供給設備の目標出力値を算出する最適化計算ステップと、
前記最適化計算ステップにおいて算出された前記目標出力値を出力する最適化結果出力ステップと、を有する、運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるマイクログリッドに関する技術が検討されている。マイクログリッドでは、所定の地域内に複数のエネルギー供給設備が配置され、当該地域内のエネルギー需要が各エネルギー供給設備によって賄われる。マイクログリッドに関する技術として、例えば、特許文献1に記載されたエネルギーシステムが知られている。このエネルギーシステムでは、最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、それぞれのエネルギー供給設備について最適な目標出力値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したエネルギーシステムにおいて、必ずしも、算出された最適な目標出力値を全てのエネルギー供給設備の実際の出力値に反映できる状況になっていないことがある。例えば、複数のエネルギー供給設備が独立して運転され、これらエネルギー供給設備が、限られた人数のオペレータによって操作される場合、人手不足などの理由により、一部のエネルギー供給設備の出力値が制御できない状況になることがある。この場合、当該一部のエネルギー供給設備の実際の出力値に最適な目標出力値を反映することができず、全体としてエネルギー供給設備の出力配分が最適化されたものではなくなってしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、複数のエネルギー供給設備の出力配分の最適化を確実に行うことができる運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る運転支援装置は、エネルギー需要設備にエネルギーをそれぞれ出力する複数のエネルギー供給設備の運転を支援する運転支援装置であって、複数のエネルギー供給設備のうち、出力制御の対象としない非対象エネルギー供給設備を除く、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備の出力値を制御することにより、複数のエネルギー供給設備の出力値を最適化する最適化部を備え、最適化部は、最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、対象エネルギー供給設備及び非対象エネルギー供給設備を含む全てのエネルギー供給設備の出力値がそれぞれ最適となるように、対象エネルギー供給設備の目標出力値を算出する最適化計算部と、最適化計算部によって算出された目標出力値を出力する最適化結果出力部と、を有する。
【0007】
本開示の一形態に係る運転支援方法は、エネルギー需要設備にエネルギーをそれぞれ出力する複数のエネルギー供給設備の運転を支援する運転支援方法であって、複数のエネルギー供給設備のうち、出力制御の対象としない非対象エネルギー供給設備を除く、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備の出力値を制御することにより、複数のエネルギー供給設備の出力値を最適化する最適化ステップを備え、最適化ステップは、最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、対象エネルギー供給設備及び非対象エネルギー供給設備を含む全てのエネルギー供給設備の出力値がそれぞれ最適となるように、対象エネルギー供給設備の目標出力値を算出する最適化計算ステップと、最適化計算ステップにおいて算出された目標出力値を出力する最適化結果出力ステップと、を有する。
【0008】
本開示の一形態に係る運転支援プログラムは、エネルギー需要設備にエネルギーをそれぞれ出力する複数のエネルギー供給設備の運転を支援する運転支援プログラムであって、複数のエネルギー供給設備のうち、出力制御の対象としない非対象エネルギー供給設備を除く、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備の出力値を制御することにより、複数のエネルギー供給設備の出力値を最適化する最適化ステップをコンピュータに実行させ、最適化ステップは、最適化の指標となる目的関数の最適化問題を所定の制約条件の下で解くことにより、対象エネルギー供給設備及び非対象エネルギー供給設備を含む全てのエネルギー供給設備の出力値がそれぞれ最適となるように、対象エネルギー供給設備の目標出力値を算出する最適化計算ステップと、最適化計算ステップにおいて算出された目標出力値を出力する最適化結果出力ステップと、を有する。
【0009】
上記の運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムでは、対象エネルギー供給設備及び非対象エネルギー供給設備を含む全てのエネルギー供給設備の出力値がそれぞれ最適となるように、対象エネルギー供給設備の目標出力値が算出される。この場合、例えばオペレータの人手不足などの理由により一部のエネルギー供給設備を出力制御できない状況であっても、操作できないエネルギー供給設備が存在することを前提として、操作できるエネルギー供給設備のみを対象エネルギー供給設備として出力制御することによって、対象エネルギー供給設備及び非対象エネルギー供給設備を含む全てのエネルギー供給設備の出力値を最適な状態にすることができる。従って、上記の運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムによれば、操作できないエネルギー供給設備が存在する状況においても、全てのエネルギー供給設備の出力配分の最適化を確実に行うことができる。
【0010】
いくつかの態様において、制約条件は、対象エネルギー供給設備の数が全てのエネルギー供給設備の総数から非対象エネルギー供給設備の総数を差し引いた数以下である、との条件を含んでもよい。この場合、非対象エネルギー供給設備が対象エネルギー供給設備として出力制御される事態を回避できる。つまり、全てのエネルギー供給設備の出力値がそれぞれ最適となるように、対象エネルギー供給設備の目標出力値が算出される構成、を確実に実現できる。
【0011】
いくつかの態様において、複数のエネルギー供給設備は、第1エネルギー供給設備と、第1エネルギー供給設備とは異なる第2エネルギー供給設備と、を含み、制約条件は、第1エネルギー供給設備を最適化部による出力制御の対象とする場合は、第2エネルギー供給設備を出力制御の対象としないか或いは出力制御の対象とし、第1エネルギー供給設備を出力制御の対象としない場合は、第2エネルギー供給設備を出力制御の対象としない、との条件を含んでもよい。この場合、第1エネルギー供給設備が出力制御されずに、第2エネルギー供給設備が出力制御される状況が回避されるので、第1エネルギー供給設備を第2エネルギー供給設備よりも優先的に出力制御させることが可能となる。これにより、第2エネルギー供給設備の制御負担が過度に大きくならないようにすることができる。
【0012】
いくつかの態様において、複数のエネルギー供給設備は、互いに異なる種類のエネルギーをそれぞれ出力する一対の出力部を有する複合エネルギー供給設備を含み、最適化計算部は、複合エネルギー供給設備を最適化部による出力制御の対象とする場合、一対の出力部のそれぞれについて目標出力値を算出してもよい。この場合、複合エネルギー供給設備の各出力部から出力される各エネルギー(出力)を同時に出力制御することにより、2種類のエネルギー需要に対する出力配分の最適化を同時に行うことが可能となる。
【0013】
いくつかの態様において、最適化計算部は、複合エネルギー供給設備を最適化部による出力制御の対象とする場合、一対の出力部の出力比を調整するための信号を生成してもよい。この場合、複合エネルギー供給設備の一対の出力部の出力比を調整することにより、2種類のエネルギー需要に対する出力配分の最適化を容易に行うことが可能となる。
【0014】
いくつかの態様において、最適化結果出力部は、目標出力値に応じた出力指令を対象エネルギー供給設備に出力してもよい。この場合、対象エネルギー供給設備の出力値を目標出力値へと自動制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示のいくつかの態様によれば、複数のエネルギー供給設備の出力配分の最適化を確実に行うことができる運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る運転支援装置を備えるエネルギーシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、運転支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、運転支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、電力需要に対する出力配分割合を示すグラフである。
図4(b)は、蒸気需要に対する出力配分割合を示すグラフである。
【
図5】
図5は、最適化部における最適化処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、最適化部における最適化処理の別の例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るマイクログリッドを備えるエネルギーシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係るマイクログリッドを備えるエネルギーシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0018】
<エネルギーシステム>
図1は、本実施形態に係る運転支援装置50を備えるエネルギーシステム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、エネルギーシステム1は、複数のエネルギー需要設備11A及び11B、並びに複数のエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cを有するマイクログリッド10と、マイクログリッド10におけるエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの運転を支援する運転支援装置50と、を備える。
【0019】
マイクログリッド10では、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cからそれぞれエネルギーが出力され、出力されたエネルギーは各エネルギー需要設備11A及び11Bによって消費される。マイクログリッド10において、例えば、エネルギー需要設備11A及び11Bによって要求されるエネルギーの全てが、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cによって賄われてもよい。
図1に示すように、マイクログリッド10は、必要に応じて、外部エネルギー系統80に接続されてもよい。この場合、マイクログリッド10において、エネルギー需要設備11A及び11Bによって要求されるエネルギーの一部が、外部エネルギー系統80によって賄われてもよい。
【0020】
マイクログリッド10において、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cによって出力されたエネルギーの全てが、エネルギー需要設備11A及び11Bによって消費されてもよいし、出力されたエネルギーの一部が、外部エネルギー系統80に流出(いわゆる逆潮流)されてもよい。なお、マイクログリッド10から外部エネルギー系統80へのエネルギーの逆潮流は、外部エネルギー系統80におけるエネルギーの需要と供給とのバランスに影響を与え得る。このため、マイクログリッド10においては、このような逆潮流が発生しないように管理されることが望ましい。
【0021】
以下、エネルギー需要設備11A及び11Bを区別して説明する必要が無い場合には、エネルギー需要設備11A及び11Bをまとめて「エネルギー需要設備11」と称する。同様に、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cを区別して説明する必要が無い場合には、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cをまとめて「エネルギー供給設備12」と称する。
【0022】
エネルギー供給設備12から出力されるエネルギーは、例えば、電気エネルギー(すなわち電力)であってもよいし、熱エネルギー(すなわち蒸気)であってもよいし、水素エネルギーであってもよいし、他の種類のエネルギーであってもよい。このようなエネルギーを出力するエネルギー供給設備12としては、例えば、燃料を用いて電力を供給可能な原動機(例えばガスタービン又はガスエンジン等)、燃料を用いて蒸気を供給可能な蒸気ボイラ、及び電力を充放電可能な蓄電池など、が挙げられる。また、エネルギー供給設備12は、いずれか1種類のエネルギーを出力する1つの出力部を有するエネルギー供給設備であってもよいし、互いに異なる2種類のエネルギーをそれぞれ出力する一対の出力部を有する複合エネルギー供給設備であってもよい。
【0023】
2種類のエネルギーを出力する複合エネルギー供給設備としては、例えば、電力と蒸気とを並行して供給可能なコージェネレーションシステムが挙げられる。コージェネレーションシステムは、例えば、電力を生成可能なガスタービンと、ガスタービンにおける燃焼排ガスの熱量を利用して蒸気を生成可能な蒸気発生器と、を含んで構成される。コージェネレーションシステムは、電力と蒸気との出力比を可変に調整可能な熱電比可変型のコージェネレーションシステムであってもよいし、電力と蒸気との出力比が一定となる熱電比一定型のコージェネレーションシステムであってもよい。
【0024】
本実施形態では、エネルギー供給設備12Aが熱電比可変型のコージェネレーションシステムであり、エネルギー供給設備12Bが熱電比一定型のコージェネレーションシステムであり、エネルギー供給設備12Cが蒸気ボイラである場合を例示する。
図1に示すように、エネルギー供給設備12Aは、電力E1を出力する出力部P1と、蒸気E2を出力する出力部P2と、を有する。エネルギー供給設備12Bは、電力E3を出力する出力部P3と、蒸気E4を出力する出力部P4と、を有する。エネルギー供給設備12Cは、蒸気E5を出力する出力部P5を有する。エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cは、燃料供給源20に接続されており、燃料供給源20から供給される燃料を用いてエネルギー(電力及び/又は電力)を出力可能となっている。
図1において、実線の矢印は電力の流れを示しており、破線の矢印は蒸気の流れを示しており、二点鎖線の矢印は、燃料の流れを示している。
【0025】
マイクログリッド10における電力需要は、エネルギー供給設備12Aからの電力E1と、エネルギー供給設備12Bからの電力E3と、外部エネルギー系統80からの電力E6と、によって賄われる。マイクログリッド10における蒸気需要は、エネルギー供給設備12Aからの蒸気E2と、エネルギー供給設備12Bからの蒸気E4と、エネルギー供給設備12Cからの蒸気E5と、によって賄われる。
【0026】
エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cは、オペレータによる手動操作によって出力制御可能な状態となっている。
図1に示すように、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cに対して、2人のオペレータM1及びM2が配備されている。オペレータM1及びM2のそれぞれは、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cのうちのいずれか1個のエネルギー供給設備12を手動操作可能である。つまり、2人のオペレータM1及びM2は、いずれか2個のエネルギー供給設備12の出力制御することができ、その他の1個のエネルギー供給設備12の出力制御することができない。オペレータM1及びM2には、運転支援装置50から、後述する計算結果データDRが提示される。オペレータM1及びM2は、手動操作により、いずれか2個のエネルギー供給設備12の出力値を、計算結果データDRに応じた出力値に制御する。
【0027】
エネルギー需要設備11A及び11Bは、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cから出力されたエネルギーを消費する。エネルギー需要設備11A及び11Bは、例えば、工場などのプラントである。本実施形態では、エネルギー需要設備11Aが電力を消費するプラントであり、エネルギー需要設備11Bが蒸気を消費するプラントである場合を例示する。エネルギー需要設備11Aは、エネルギー供給設備12Aの出力部P1、及びエネルギー供給設備12Bの出力部P3に接続されており、これらの出力部P1及びP3からそれぞれ出力される電力E1及びE3と、外部エネルギー系統80から出力される電力E6と、を消費する。一方、エネルギー需要設備11Bは、エネルギー供給設備12Aの出力部P2、エネルギー供給設備12Bの出力部P4、及びエネルギー供給設備12Cの出力部P5に接続されており、これらの出力部P2、P4、及びP5からそれぞれ出力された蒸気E2、E4、及びE5を消費する。
【0028】
マイクログリッド10には、エネルギーを計測可能な複数の計測器31、32、33、34、35、及び36が設置されている。計測器31は、エネルギー供給設備12Aの出力部P1から出力される電力E1を計測する。計測器31は、計測した電力E1を示す計測データD1を運転支援装置50に送信する。計測器32は、エネルギー供給設備12Aの出力部P2から出力される蒸気E2を計測する。計測器32は、計測した蒸気E2を示す計測データD2を運転支援装置50に送信する。
【0029】
計測器33は、エネルギー供給設備12Bの出力部P3から出力される電力E3を計測する。計測器33は、計測した電力E3を示す計測データD3を運転支援装置50に送信する。計測器34は、エネルギー供給設備12Bの出力部P4から出力される蒸気E4を計測する。計測器34は、計測した蒸気E4を示す計測データD4を運転支援装置50に送信する。計測器35は、エネルギー供給設備12Cの出力部P5から出力される蒸気E5を計測する。計測器35は、計測した蒸気E5を示す計測データD5を運転支援装置50に送信する。計測器36は、外部エネルギー系統80から出力される電力E6を計測する。計測器36は、計測した電力E6を示す計測データD6を運転支援装置50に送信する。
【0030】
計測器37は、エネルギー需要設備11Aへ供給される電力E1、E3、及びE6の合計値を計測する。計測器37は、計測した電力E1、E3、及びE6の合計値を示す計測データD7を運転支援装置50に送信する。電力E1、E3、及びE6の合計値は、エネルギー需要設備11Aにおける電力需要を示す。計測器38は、エネルギー需要設備11Bへ供給される蒸気E2、E4、及びE5の合計値を計測する。計測器38は、計測した蒸気E2、E4、及びE5の合計値を示す計測データD8を運転支援装置50に送信する。蒸気E2、E4、及びE5の合計値は、エネルギー需要設備11Bにおける蒸気需要を示す。
【0031】
なお、計測器37及び38は、マイクログリッド10に設置されていなくてもよい。この場合、計測器31によって計測された電力E1と、計測器33によって計測された電力E3と、計測器36によって計測された電力E6と、の合計値を計算することによって、エネルギー需要設備11Aにおける電力需要を求めることができる。同様に、計測器32によって計測された蒸気E2と、計測器34によって計測された蒸気E4と、計測器35によって計測された蒸気E5と、の合計値を計算することによって、エネルギー需要設備11Bにおける電力需要を求めることができる。
【0032】
<運転支援装置>
運転支援装置50は、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの運転を支援するために用いられる。
図2は、運転支援装置50のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、運転支援装置50は、物理的には、1又は複数のプロセッサ101と、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記憶装置102と、キーボード等の入力装置103と、ディスプレイ等の表示装置104と、データを送受信するための通信インターフェースである通信装置105と、を備えるコンピュータとして構成される。運転支援装置50は、プロセッサ101等のハードウェアに所定のコンピュータプログラムを読み込ませることにより、プロセッサ101の制御の下で各ハードウェアを動作させると共に、記憶装置102におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。これにより、次の
図3に示す運転支援装置50の各機能が実現される。
【0033】
図3は、運転支援装置50の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、運転支援装置50は、機能構成として最適化部51を有し、最適化部51は、目的関数設定部52と、制約条件設定部53と、データ記憶部54と、最適化計算部55と、最適化結果出力部56と、を含む。最適化部51は、或る一定の指標を目的関数として、マイクログリッド10における将来一定期間のエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力配分を最適化する。具体的には、最適化部51は、所定の制約条件の下で目的関数の最適化問題を解くことにより、各エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値を最適な状態にする。
【0034】
ここで、上述したように、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cのうち2個のエネルギー供給設備12については、オペレータM1及びM2による出力制御が可能な状態となっているが、残りの1個のエネルギー供給設備12については、オペレータM1及びM2による出力制御が可能な状態となっていない。そこで、最適化部51は、オペレータM1及びM2による出力制御が可能な2個のエネルギー供給設備12を、出力制御の対象とする制御対象のエネルギー供給設備(対象エネルギー供給設備)とし、他の1個のエネルギー供給設備12を、出力制御の対象としない非制御対象のエネルギー供給設備(非対象エネルギー供給設備)とする。そして、最適化部51は、出力制御の対象とする2個のエネルギー供給設備12の出力値を制御することによって、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値を最適化する。なお、出力制御の対象とする対象エネルギー供給設備は、オペレータM1及びM2による出力制御が可能な全ての(本実施形態では2個の)エネルギー供給設備12である必要は無く、その全てのエネルギー供給設備12のうちの一部の(本実施形態では1個の)エネルギー供給設備12であってもよい。
【0035】
目的関数設定部52は、最適化の指標となる目的関数を設定する。最適化の指標すなわち目的関数としては、例えば、電気料金単価の最小化、燃料単価の最小化、及び燃料使用量の最小化などが挙げられる。目的関数は、これら指標以外の指標であってもよい。目的関数は、記憶装置102におけるデータを読み出すことによって提供されてもよいし、入力装置103における入力によって提供されてもよい。
【0036】
目的関数は、以下の式(1)のように定式化される。式(1)において、Δfは、最適化の指標を最小化する目的関数であり、エネルギー供給設備12の出力値が制御される際の指標の変化を示している。Δxは、エネルギー供給設備12の目標出力変化量(目標出力値)を示す決定変数であり、式(2)に示す行列式で表される。式(2)において、Nは、マイクログリッド10におけるエネルギー供給設備12の総数(2以上の整数)を示している。
【数1】
【数2】
【数3】
【0037】
目標出力変化量Δxの成分Δxnは、式(3)に示すベクトルで表される。式(3)において、目標出力変化量Δxnは、N個のエネルギー供給設備12のうちのn番目のエネルギー供給設備12の目標出力変化量を示している。従って、nは、1以上N以下の整数で表される。また、式(3)において、Qnは、n番目のエネルギー供給設備12の出力数(1以上の整数)を示している。
【0038】
本実施形態では、マイクログリッド10に3個のエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cが設置されているので、Nは3と表される。また、エネルギー供給設備12Aは、2つの出力部P1及びP2を有するので、Qnは2と表される。このため、エネルギー供給設備12Aを1番目(n=1)のエネルギー供給設備12とすると、エネルギー供給設備12Aについては、2つの目標出力変化量x11及びx12が決定変数として設定される。同様に、エネルギー供給設備12Bも、2つの出力部P3及びP4を有するので、Qnは2と表される。このため、エネルギー供給設備12Bを2番目(n=2)のエネルギー供給設備12とすると、エネルギー供給設備12Bについては、2つの目標出力変化量x21及びx22が決定変数として設定される。
【0039】
一方、エネルギー供給設備12Cは、1つの出力部P5を有するので、Qnは1と表される。このため、エネルギー供給設備12Cを3番目(n=3)のエネルギー供給設備12とすると、エネルギー供給設備12Cについては、1つの目標出力変化量x31が決定変数として設定される。目的関数設定部52は、以上の式(1)~式(3)で表される目的関数を示す目的関数データD11を、最適化計算部55に送信する。
【0040】
制約条件設定部53は、最適化問題の制約条件を設定する。制約条件は、記憶装置102におけるデータを読み出すことによって提供されてもよいし、入力装置103における入力によって提供されてもよい。制約条件は、例えば、以下の式(4)~式(8)のように表される。式(4)及び式(5)において、h及びgはそれぞれ、最適化問題を解くための等式制約条件及び不等式制約条件を示している。等式条件は、例えば、エネルギー供給設備12から供給される電力の上下限を制約する条件としてよい。不等式制約条件は、例えば、マイクログリッド10における電力の受給バランスを制約する条件としてよい。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0041】
式(6)、式(7)、及び式(8)は、最適化部51が出力制御する制御対象のエネルギー供給設備12の数を制約する制約条件を示している。具体的には、式(6)、式(7)、及び式(8)に示す制約条件は、制御対象のエネルギー供給設備12の数が、全てのエネルギー供給設備12の総数から非制御対象のエネルギー供給設備12の総数を差し引いた数以下である、との条件を示している。式(6)、式(7)、及び式(8)において、znは、N個のエネルギー供給設備12のうちのn番目のエネルギー供給設備12を出力制御するためのバイナリ決定変数である。式(8)に示すように、znは、0又は1で表され、エネルギー供給設備12ごとに決定される。式(6)に示すように、znが0に設定される場合、n番目のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqは0になる。この場合、n番目のエネルギー供給設備12は、最適化部51の制御対象ではなくなり、最適化計算前後においてn番目のエネルギー供給設備12の出力値が変化しない。
【0042】
一方、znが1に設定される場合、n番目のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqは-M以上且つ+M以下の範囲で決定される。この場合、n番目のエネルギー供給設備12は、最適化部51の制御対象となり、最適化計算後におけるn番目のエネルギー供給設備12の出力値が変化する。znが1に設定されるエネルギー供給設備12は、オペレータが任意に選んでもよい。この場合、オペレータが選んだエネルギー供給設備12に対応するznを1に設定する制約条件を付加すればよい。なお、Mは、十分に大きな正の整数であり、任意に定められる。また、式(6)において、Qnは、n番目のエネルギー供給設備12の出力の総数(1以上の整数)を示している。
【0043】
式(7)に示すように、1に設定されるznの数は、最大でK個に制限される。Kは、N個のエネルギー供給設備12から非制御対象のエネルギー供給設備12の総数を差し引いた数(2以上の整数)を示している。つまり、式(7)に示す制約条件は、制御対象のエネルギー供給設備12の数が、N個のエネルギー供給設備12から非制御対象のエネルギー供給設備12の総数を差し引いた数、を超えないように制限する。本実施形態では、3個のエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cのうち1個のエネルギー供給設備12が非制御対象とされるため、Kは、3から1を差し引いた2と表される。この場合、制御対象のエネルギー供給設備12の数が、2個を超えないように制限される。この場合、3個のエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cのうちの1個のみが制御対象とされてもよいし、3個のエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cのうちの2個が制御対象とされてもよい。本実施形態では、最適化計算の結果、2個のエネルギー供給設備12A及び12Cが制御対象とされ、1個のエネルギー供給設備12Bが非制御対象とされる。その結果、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの目標出力変化量Δxnqが算出され、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの目標出力変化量Δxnqは算出されない。制約条件設定部53は、以上の式(4)~式(8)で表される制約条件を示す制約条件データD12を、最適化計算部55に送信する。
【0044】
データ記憶部54は、最適化問題の求解に必要な機器特性データD13を記憶する。機器特性データD13は、エネルギー供給設備12に関する情報を示すデータである。機器特性データD13は、エネルギー供給設備12の出力効率に関する数式、及びその数式のパラメータなどを含む。データ記憶部54は、機器特性データD13を最適化計算部55に送信する。なお、データ記憶部54は、目的関数設定部52によって設定される目的関数と、制約条件設定部53によって設定される制約条件と、を記憶してもよい。
【0045】
最適化計算部55は、目的関数設定部52から送信された目的関数データD11と、制約条件設定部53から送信された制約条件データD12と、データ記憶部54から送信された機器特性データD13と、各計測器31~38から送信された各計測データD1~D8と、を受信する。最適化計算部55は、制約条件データD12が示す制約条件の下で、目的関数データD11が示す目的関数の最適化問題を求解する。本実施形態では、最適化計算部55は、式(4)~式(8)に示す制約条件の下で、式(1)~式(3)に示す目的関数を最小化するような制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを算出する。
【0046】
機器特性データD13及び計測データD1~D8は、最適化問題におけるパラメータとして用いられる。計測データD1、D3、及びD6に示す電力E1、E3、及びE6は、現在の電力供給(又は電力需要)を示す現況値として用いられる。計測データD2、D4、及びD5に示す蒸気E2、E4、及びE5は、現在の蒸気供給(又は蒸気需要)を示す現況値として用いられる。最適化問題の求解手法としては、例えば、線形計画法又は2次計画法などの公知の最適化問題の求解手法を用いることができる。最適化計算部55は、最適化問題の求解処理を行うために、専用のプログラムを用いてもよいし、公知のソルバを用いてもよい。
【0047】
要するに、最適化計算部55は、次のように最適化計算を行う。最適化計算部55は、式(2)及び(3)に示すΔxnqと、式(8)に示すznとを決定変数として、式(1)に示す目的関数データD11の最適化問題を、式(4)~(8)に示す制約条件データD12の下で求解する。最適化計算部55は、最適化問題を解くにあたり、計測データD1~D8(現況値)と、機器特性データD13と、式(2)及び(3)に示すN及びQnと、を定数としてΔxnqに代入する。また、最適化計算部55は、定数Mを式(6)に代入し、定数Kを式(7)に代入する。そして、最適化計算部55は、式(4)~(8)に示す制約条件を満たすように最適化問題を解くことにより、決定変数であるΔxnq及びznを求める。詳細には、最適化計算部55は、式(6)~(8)の下で採り得るznのパターン(各エネルギー供給設備12に対応する0及び1の組み合わせパターン)の中から、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値が最適な状態となるznのパターンを決定する。より詳細には、最適化計算部55は、まず、最適解として採り得るznのパターン毎にΔxnqを算出する。そして、最適化計算部55は、それぞれのznのパターンに応じたΔxnqの中から、最適なΔxnqを決定する。つまり、最適化計算部55は、或るznのパターンの下で算出されるΔxnq、及び別のznのパターンの下で決定される最適なΔxnq等を含む全てパターンのΔxnqの中から、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値を最適な状態にする最適なΔxnqを決定する。同時に、最適化計算部55は、その最適なΔxnqに対応するznのパターンを決定する。このようにして、最適化計算部55は、最適化計算の中で、最適なΔxn及びそのΔxnに対応するznを同時に決定する。
【0048】
最適化計算部55は、上述したように、非制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを算出しない(すなわち、Δxnq=0とする)。つまり、最適化計算部55は、非制御対象のエネルギー供給設備12の出力値を変化させないことを前提として、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値が最適な状態となるように、制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを算出する。制御対象のエネルギー供給設備12は、最適化計算結果に応じて、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの中から設定される。本実施形態では、最適化計算の結果、エネルギー供給設備12A及び12Cが制御対象とされ、エネルギー供給設備12Bが非制御対象とされる。しかし、最適化計算の結果によっては、エネルギー供給設備12A及び12Cが制御対象とされることもあるし、エネルギー供給設備12A及び12Bが制御対象とされることもあるし、エネルギー供給設備12B及び12Cが制御対象とされることもあるし、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cのいずれか1個のみが制御対象とされることもある。
【0049】
本実施形態では、エネルギー供給設備12Aは、2つの出力部P1及びP2を有する。このため、エネルギー供給設備12Aを制御対象とした場合には、最適化計算部55は、出力部P1及びP2のそれぞれについて目標出力変化量Δxnqを算出する。同様に、エネルギー供給設備12Bは、2つの出力部P3及びP4を有する。このため、エネルギー供給設備12Bを制御対象とした場合には、最適化計算部55は、出力部P3及びP4のそれぞれについて目標出力変化量Δxnqを算出する。一方、エネルギー供給設備12Cは、1つの出力部P5を有する。このため、エネルギー供給設備12Cを制御対象とした場合には、最適化計算部55は、出力部P5の目標出力変化量Δxnqを算出する。最適化計算部55は、制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを示す計算結果データDRを最適化結果出力部56に送信する。また、最適化計算部55は、エネルギー供給設備12Aを制御対象とする場合、エネルギー供給設備12Aの出力部P1及びP2の出力比を調整するための情報(信号)を生成し、当該情報を計算結果データDRに反映させる。
【0050】
最適化結果出力部56は、最適化計算部55から送信された計算結果データDRを各オペレータM1及びM2に出力(提示)する。各オペレータM1及びM2に提示する際の計算結果データDRの出力形式は、特に限定されない。例えば、最適化結果出力部56は、計算結果データDRを表示装置104又は外部の表示装置に表示するための画像情報として出力してもよいし、記憶装置102又は外部の記憶装置に保存するためのファイル情報として出力してもよい。各オペレータM1及びM2への計算結果データDRの提示は、モニタ等の画面表示によって行ってもよいし、計算結果データDRをグラフ化した結果をプリンタで印刷した用紙の提供によって行ってもよいし、各オペレータM1及びM2へのメール配信によって行ってもよいし、各オペレータM1及びM2のスマートフォンのアプリへの通知配信によって行ってもよい。
【0051】
本実施形態では、上述したように、エネルギー供給設備12A及び12Cが制御対象とされ、エネルギー供給設備12Bが非制御対象とされる。この場合、オペレータM1は、最適化結果出力部56から計算結果データDRが提示されると、計算結果データDRに応じた出力制御をエネルギー供給設備12Aに行う。これにより、エネルギー供給設備12Aの出力値は、計算結果データDRに応じた出力値に制御される。同様に、オペレータM2は、最適化結果出力部56から計算結果データDRが提示されると、計算結果データDRに応じた出力制御をエネルギー供給設備12Cに行う。これにより、エネルギー供給設備12Cの出力値は、計算結果データDRに応じた出力値に制御される。非制御対象のエネルギー供給設備12Bは出力制御されないため、最適化計算前後においてエネルギー供給設備12Bの出力値は変化しない。なお、最適化結果出力部56は、計算結果データDRを、オペレータM1及びM2を介さずに、エネルギー供給設備12A及び12Cに直接出力してもよい。
【0052】
上述したように、最適化計算部55は、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力値を変化させないことを前提として、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値が最適化されるように、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cのそれぞれの目標出力変化量Δxnqを算出している。従って、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの出力値を、最適化計算により算出された目標出力変化量Δxnqに応じた出力値に制御すれば、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力配分(出力配分割合)が最適化されたものとなる。
【0053】
図4は、最適化部51による最適化計算結果を示すグラフである。
図4(a)は、電力需要に対する出力配分割合[%]を示すグラフであり、
図4(b)は、蒸気需要に対する出力配分割合[%]を示すグラフである。
図4(a)において、出力配分割合P11、P13、及びP16は、最適化計算前における、電力需要に対する出力配分割合を示しており、出力配分割合P21、P23、及びP26は、最適化計算後における、電力需要に対する出力配分割合を示している。出力配分割合P11及びP21は、制御対象のエネルギー供給設備12Aの出力部P1の出力配分割合を示している。出力配分割合P13及びP23は、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力部P3の出力配分割合を示している。出力配分割合P16及びP26は、外部エネルギー系統80の出力配分割合、すなわち買電電力の割合を示している。
【0054】
制御対象のエネルギー供給設備12Aの出力部P1の出力値は、最適化部51によって出力制御される。その結果、最適化計算後における出力配分割合P21は、最適化計算前における出力配分割合P11よりも大きくなっている。これに応じて、最適化計算後における出力配分割合P26が、最適化計算前における出力配分割合P16よりも小さくなっている。一方、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力部P3の出力値は、最適化部51によって出力制御されないので、最適化計算前後において変化しない。すなわち、最適化計算後における出力配分割合P23は、最適化計算前における出力配分割合P13と同一である。
【0055】
図4(b)において、出力配分割合P12、P14、及びP15は、最適化計算前における、蒸気需要に対する出力配分割合を示しており、出力配分割合P22、P24、及びP25は、最適化計算後における、蒸気需要に対する出力配分割合を示している。出力配分割合P12及びP22は、制御対象のエネルギー供給設備12Aの出力部P2の出力配分割合を示している。出力配分割合P14及びP24は、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力部P4の出力配分割合を示している。出力配分割合P15及びP25は、制御対象のエネルギー供給設備12Cの出力部P5の出力配分割合を示している。
【0056】
制御対象のエネルギー供給設備12Aの出力部P2の出力値は、最適化部51によって出力制御される。その結果、最適化計算後における出力配分割合P22は、最適化計算前における出力配分割合P12よりも小さくなっている。同様に、制御対象のエネルギー供給設備12Cの出力部P5の出力値は、最適化部51によって出力制御される。その結果、最適化計算後における出力配分割合P25は、最適化計算前における出力配分割合P15よりも大きくなっている。一方、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力部P4の出力値は、最適化部51によって出力制御されないので、最適化計算前後において変化しない。すなわち、最適化計算後における出力配分割合P24は、最適化計算前における出力配分割合P14と同一である。
【0057】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、最適化計算後においては、最適化計算前と比べ、制御対象のエネルギー供給設備12Aの蒸気出力に対応する出力配分割合P22が小さくなる一方、エネルギー供給設備12Aの電力出力に対応する出力配分割合P21が大きくなっている。エネルギー供給設備12Aでは、蒸気出力と電力出力との出力比が調整され、これにより、電力出力に対応する出力配分割合P21が大きくなるように制御されている。出力配分割合P21が大きくなることで、外部エネルギー系統80における電力の出力配分割合P26、すなわち買電電力の割合が低減されている。
【0058】
エネルギー供給設備12Aにおける蒸気出力と電力出力との出力比の調整の結果、
図4(b)に示すように、最適化計算後においては、エネルギー供給設備12Aにおける蒸気の出力配分割合P22が小さくなっている。その一方で、制御対象のエネルギー供給設備12Cにおける蒸気の出力配分割合P25は大きくなっている。つまり、エネルギー供給設備12Aにおける蒸気の出力配分割合P22の減少分が、エネルギー供給設備12Cにおける蒸気の出力配分割合P25の増加分によって賄われている。
【0059】
このように、最適化計算後においては、制御対象のエネルギー供給設備12Aにおける電力出力及び蒸気出力の制御、並びに、制御対象のエネルギー供給設備12Cにおける蒸気出力の制御がそれぞれ行われることにより、電力需要及び蒸気需要の2種類のエネルギー需要の最適化が同時に行われる。その結果、電力需要及び蒸気需要をそれぞれ満たしつつ、電力需要における買電電力の割合が過剰に大きくならないように、電力需要に対する出力配分割合P21、P23、及びP26、並びに蒸気需要に対する出力配分割合P22、P24、及びP25が最適化されている。
【0060】
なお、
図4(a)及び
図4(b)において、電力需要及び蒸気需要それぞれに対する出力配分割合[%]が示されているが、出力配分割合[%]以外の形式で示されてもよい。例えば、
図4(a)では、電力需要に対する出力配分量[kW]が示されてもよいし、電力需要に対する出力配分量[kW]と電力需要に対する出力配分割合[%]とが併せて示されてもよい。同様に、
図4(b)では、蒸気需要に対する出力配分量[t/h]が示されてもよいし、蒸気需要に対する出力配分量[t/h]と蒸気需要に対する出力配分割合[%]とが併せて示されてもよい。
【0061】
<運転支援方法及び運転支援プログラム>
続いて、
図5を参照して、運転支援装置50の最適化部51において実行される最適化処理、すなわち本実施形態に係る運転支援方法の一例について説明する。最適化部51における最適化処理は、記憶装置102に記憶されたプログラムをプロセッサ101が読み出し実行することによって実行される。
図5は、最適化部51における最適化処理(最適化ステップ)の一例を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、オペレータによる手動操作を受けて各ステップS11~S17が開始される場合を例示する。
【0062】
図5に示す例では、まず、目的関数設定部52が、最適化の指標となる目的関数を設定する(ステップS11)。ステップS11では、目的関数は、前述した式(1)~式(3)で表される。目的関数設定部52は、式(1)~式(3)で表される目的関数を示す目的関数データD11を、最適化計算部55に送信する。
【0063】
次に、制約条件設定部53は、制約条件を設定する(ステップS12)。ステップS12では、制約条件は、前述した式(4)~式(8)で表される。式(6)~式(8)は、上述したように、制御対象となるエネルギー供給設備12の数を制約する制約条件を示している。制約条件設定部53は、式(4)~式(8)で表される制約条件を示す制約条件データD12を、最適化計算部55に送信する。
【0064】
次に、最適化部51は、最適化計算の実行を最適化計算部55に指令する(ステップS13)。ステップS13では、最適化部51は、入力装置103におけるオペレータの入力操作を受けて、最適化計算の実行指令を最適化計算部55に送信する。
【0065】
次に、最適化計算部55は、最適化計算を実行するために、各計測器31~38から提供される現況値を入力する(ステップS14)。現況値は、各計測器31~38からの各計測データD1~D8に含まれる。現況値は、電力E1、E3、及びE6によって示される現在の電力供給(又は電力需要)と、蒸気E2、E4、及びE5によって示される現在の蒸気供給(又は蒸気需要)と、を意味する。
【0066】
次に、最適化計算部55は、最適化計算を実行するために、データ記憶部54から提供される機器特性データD13を読み込む(ステップS15)。
【0067】
次に、最適化計算部55は、最適化計算を実行する(ステップS16:最適化計算ステップ)。すなわち、最適化計算部55は、ステップS12において設定された制約条件の下で、ステップS11において設定された目的関数の最適化問題を求解する。機器特性データD13及び計測データD1~D8は、最適化問題におけるパラメータとして用いられる。
【0068】
ステップS16では、最適化計算部55は、式(4)~式(8)に示す制約条件の下で、式(1)~式(3)に示す目的関数を最小化するような制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを算出する。つまり、最適化計算部55は、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値が最適となるように、制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを算出する。最適化計算部55は、制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqを示す計算結果データDRを最適化結果出力部56に送信する。本実施形態では、最適計算の結果、エネルギー供給設備12A及び12Cが制御対象とされる。
【0069】
次に、最適化結果出力部56は、ステップS16において計算された最適化計算結果(すなわち、計算結果データDR)を出力する(ステップS17:最適化結果出力ステップ)。ステップS17では、最適化結果出力部56は、最適化計算部55からの計算結果データDRをオペレータM1及びM2にそれぞれ提示する。その結果、各オペレータM1及びM2による手動操作によって、制御対象のエネルギー供給設備12(本実施形態では、エネルギー供給設備12A及び12C)の出力値が、最適化計算により算出された目標出力変化量Δxnqに応じた出力値に制御される。これにより、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値が最適化された状態となる。
【0070】
続いて、
図6を参照して、最適化部51における最適化処理の別の例について説明する。
図6は、最適化部51における最適化処理(最適化ステップ)の別の例を示すフローチャートである。
図6に示す最適化部51における最適化処理についても、記憶装置102に記憶されたプログラムをプロセッサ101が読み出し実行することによって実行される。
図6に示すフローチャートは、最適化部51による制御指令を受けて各ステップS21、S11~S17、及びS22が自動的に開始される場合を例示する。
【0071】
図6に示す例では、まず、最適化部51は、最適化計算を行う計算タイミングであるか否かを逐次判断する(ステップS21)。最適化部51が最適化計算を行う頻度は、例えば、一定間隔(例えば30分ごと)としてもよい。最適化部51は、最適化計算を行う計算タイミングであると判断した場合(ステップS21においてYes)、上述したステップS11~ステップS17と同様の処理を実行する。但し、ステップS13においては、最適化部51は、オペレータの入力操作を受けずに、最適化計算の実行指令を最適化計算部55に自動的に送信する。一方、最適化部51は、最適化計算を行う計算タイミングでないと判断した場合(ステップS21においてNo)、ステップS21の判断を繰り返す。
【0072】
最適化部51は、ステップS11~ステップS17を実行した後、最適化処理を終了するか否かを判断する(ステップS22)。最適化部51は、最適化処理を終了すると判断した場合(ステップS22においてYes)、最適化処理を終了する。一方、最適化部51は、最適化処理を終了しないと判断した場合(ステップS22においてNo)、最適化処理を継続する。すなわち、最適化部51は、再度、ステップS21、及びステップS11~S17を実行する。
【0073】
このように、最適化部51における最適化処理は、
図5に示す手動操作によって実行されてもよいし、
図6に示す自動操作によって実行されてもよい。また、全てのエネルギー供給設備12の最適化処理が、手動操作又は自動操作のいずれか一方のみによって実行されなくてもよい。例えば、エネルギー供給設備12Aに対する最適化処理が自動操作によって行われ、エネルギー供給設備12Cに対する最適化処理が手動操作によって行われてもよい。
【0074】
最適化部51は、一連の最適化処理のうちの一部のステップを手動操作によって実行し、他のステップを自動操作によって実行してもよい。この場合、最適化部51は、最適化処理の途中で手動操作から自動操作に切り替えてもよい。例えば、最適化部51は、目標出力変化量Δxnqの変化、又は計測データD1~D8の変化に基づいて、オペレータの手動操作がなされたことを自動で検知し、手動操作を検知した以降の処理を手動操作から自動操作に変更してもよい。最適化部51は、オペレータによって手動操作の完了がスマートフォンを介して送信されたときに、手動操作の完了を検知してもよい。このような場合、最適化処理の操作の順番は、特に限られず、自動操作の後に手動操作が実行されてもよいし、安全面を考慮して手動操作の後に自動操作が実行されてもよい。
【0075】
<作用効果>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50、運転支援方法、及び運転支援プログラムによって奏される作用効果について説明する。本実施形態では、例えば人手不足により出力制御することができないエネルギー供給設備12が存在する状況であっても、そのエネルギー供給設備12が非制御対象として扱われ、その他のエネルギー供給設備12が制御対象として扱われる。例えば、最適化計算の結果、エネルギー供給設備12Bが非制御対象とされ、エネルギー供給設備12A及び12Cのみが制御対象として出力制御される。この場合、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値がそれぞれ最適となるように、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの目標出力変化量Δxnqが算出される。そして、算出された目標出力変化量Δxnqをエネルギー供給設備12A及び12Cの出力値に反映することにより、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値を最適な状態にすることができる。つまり、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値を、エネルギー需要設備11A及び11Bにおけるエネルギー需要を満たしつつ最適化の指標を最小化(又は最大化)する最適な状態にすることができる。
【0076】
本実施形態においては、
図1に示すように、制御対象のエネルギー供給設備12Aの出力部P1からの電力E1を制御することによって、この電力E1と、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力部P3からの電力E3とを、エネルギー需要設備11Aにおける電力需要を満たしつつ式(1)の指標を最小するための最適な状態にすることができる。同様に、制御対象のエネルギー供給設備12Aの出力部P2からの蒸気E2と、制御対象のエネルギー供給設備12Cの出力部P5からの蒸気E5とを制御することによって、これら蒸気E2及びE5と、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの出力部P4からの蒸気E4とを、エネルギー需要設備11Bにおける蒸気需要を満たしつつ式(1)の指標を最小化するための最適な状態にすることができる。その結果、本実施形態によれば、出力制御を行うことができないエネルギー供給設備12Bが存在する状況においても、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力配分の最適化を確実に行うことができる。
【0077】
本実施形態では、制約条件は、制御対象のエネルギー供給設備12の数が、エネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの総数(3個)から非制御対象のエネルギー供給設備12の総数(1個)を差し引いた数(2個)以下である、との制約条件(式(6)~式(8))を含んでいる。これにより、非制御対象のエネルギー供給設備12Bの目標出力変化量Δxnqが算出される事態を回避できる。つまり、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値がそれぞれ最適となるように、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの目標出力変化量Δxnqが算出される構成、を確実に実現できる。
【0078】
本実施形態では、エネルギー供給設備12Aは、互いに異なる種類のエネルギーを出力する出力部P1及びP2を有する複合エネルギー供給設備であり、最適化計算部55は、出力部P1及びP2のそれぞれについて目標出力変化量Δxnqを算出する。この構成によれば、エネルギー供給設備12Aの出力部P1及びP2から出力される各エネルギー(電力及び蒸気)を同時に制御することにより、2種類のエネルギー需要に対する出力配分の最適化を同時に行うことが可能となる。
【0079】
本実施形態では、最適化計算部55は、エネルギー供給設備12Aの一対の出力部P1及びP2の出力比を調整するための信号を生成する。この構成によれば、エネルギー供給設備12Aの出力比を調整することにより、2種類のエネルギー需要に対する出力配分の最適化を容易に行うことが可能となる。
【0080】
<変形例>
本開示は、上述した実施形態に限られず、他に様々な変形が可能である。
【0081】
マイクログリッド10の構成は、
図1に示す構成に限られない。
図7は、第1変形例に係るマイクログリッド10Aを備えるエネルギーシステム1Aの概略構成を示すブロック図である。上述した実施形態では、運転支援装置50が、オペレータM1及びM2による手動操作を介して制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cを出力制御する場合を例示した。
図7に示す例では、運転支援装置50が、オペレータによる手動操作を介さずに、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cを自動制御する場合を例示する。
【0082】
図7に示す例では、エネルギー供給設備12A及び12Cが、運転支援装置50と通信可能に接続されており、運転支援装置50から出力される出力指令に従ってエネルギーを自動的に出力する構成となっている。一方、エネルギー供給設備12Bが、運転支援装置50と通信可能に接続されておらず、エネルギーを自動的に出力する構成となっていない。従って、各エネルギー供給設備12A及び12Cは、運転支援装置50による出力制御が可能な状態となっており、エネルギー供給設備12Bは、運転支援装置50による出力制御が不能な状態となっている。そこで、運転支援装置50は、エネルギー供給設備12A及び12Cを、出力制御の対象とする制御対象のエネルギー供給設備(対象エネルギー供給設備)とし、エネルギー供給設備12Bを、出力制御の対象としない非制御対象のエネルギー供給設備(非対象エネルギー供給設備)とする。この場合、運転支援装置50は、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cに対応するz
n(式(6)~式(8)参照)を予め1に設定し、非制御対象のエネルギー供給設備12Bに対応するz
nを予め0に設定する。運転支援装置50は、この条件の下で、上述した最適化計算と同様の計算を行うことによって、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力値が最適な状態となるように、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの目標出力変化量Δx
nqを算出する。
【0083】
運転支援装置50の最適化計算部55(
図3参照)は、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの目標出力変化量Δx
nqを示す計算結果データDRを運転支援装置50の最適化結果出力部56(
図3参照)に送信する。その後、運転支援装置50の最適化結果出力部56(
図3参照)が、最適化計算部55からの計算結果データDRに応じた出力指令を、エネルギー供給設備12A及び12Cにそれぞれ直接出力する。その結果、エネルギー供給設備12A及び12Cの出力値は、その出力指令に応じた出力値に自動制御される。このような構成であっても、非制御対象のエネルギー供給設備12Bを除く、制御対象のエネルギー供給設備12A及び12Cの出力値を制御することによって、全てのエネルギー供給設備12A、12B、及び12Cの出力配分を最適化することができる。すなわち、
図7に示す例においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
図8は、第2変形例に係るマイクログリッド10Bを備えるエネルギーシステム1Bの概略構成を示すブロック図である。
図8に示すように、マイクログリッド10は、単一の出力部を有する複数のエネルギー供給設備22A、22B、22C、22D、及び22Eと、単一のエネルギー需要設備11Aと、を有してもよい。
図8に示す例では、各エネルギー供給設備22A、22B、22C、22D、及び22Eから各電力E21、E22、E23、E24、及びE25が出力され、外部エネルギー系統80から電力E26が出力される。これら電力E21~E26は、エネルギー需要設備11Aにおいて消費される。
【0085】
各電力E21~E26は、各計測器41~46によって計測され、電力E21~E26の合計値は、計測器47によって計測される。各計測器41~47から出力される各計測データD21~D27は、運転支援装置50に送信される。運転支援装置50は、各計測データD21~D27などに基づいて、上述した実施形態と同様に、エネルギー供給設備22A、22B、及び22Cの目標出力変化量Δxnqをそれぞれ算出する。
【0086】
図8に示す例では、エネルギー供給設備22A~22Eには、3人のオペレータM1、M2、及びM3が配備されている。オペレータM1、M2、及びM3のそれぞれは、エネルギー供給設備22A~22Eのいすれか1個のエネルギー供給設備22を手動操作可能である。つまり、3人のオペレータM1、M2、及びM2は、いずれか3個のエネルギー供給設備22の出力制御することができ、その他の2個のエネルギー供給設備22の出力制御することができない。そこで、運転支援装置50は、オペレータM1及びM2による出力制御が可能な3個のエネルギー供給設備22を、出力制御の対象とする制御対象のエネルギー供給設備(対象エネルギー供給設備)とし、他の3個のエネルギー供給設備22を、出力制御の対象としない非制御対象のエネルギー供給設備(非対象エネルギー供給設備)とする。そして、運転支援装置50は、出力制御の対象とする3個のエネルギー供給設備22の出力値を制御することによって、全てのエネルギー供給設備22A~22Eの出力値を最適化する。出力制御の対象とする3個のエネルギー供給設備22は、最適化計算結果に応じて、エネルギー供給設備22A~22Eの中から設定される。
【0087】
図8に示す例では、最適化計算の結果、エネルギー供給設備22A、22B、及び22Cが制御対象とされる場合を例示する。この場合、運転支援装置50は、各エネルギー供給設備22A、22B、及び22Cの目標出力変化量Δx
nqを算出し、各エネルギー供給設備22A、22B、及び22Cの目標出力変化量Δx
nqを示す計算結果データDR1を各オペレータM1、M2、及びM3に提示する。各エネルギー供給設備22A、22B、及び22Cの出力値は、各オペレータM1、M2、及びM3による手動操作によって、計算結果データDR1に応じた出力値に制御される。このような構成であっても、非制御対象のエネルギー供給設備22D及び22Eを除く、制御対象のエネルギー供給設備22A、22B、及び22Cの出力値を制御することによって、全てのエネルギー供給設備22A~22Eの出力配分を最適化することができる。すなわち、
図8に示す例においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
最適化部51における最適化処理は、上述した実施形態に限られず、適宜変更可能である。例えば、制約条件設定部53は、制御対象のエネルギー供給設備12の数を制約する制約条件として、式(4)~式(8)に加えて、以下の式(9)を設定してもよい。式(9)に示す制約条件は、n番目のエネルギー供給設備12(第2エネルギー供給設備)よりもm番目のエネルギー供給設備12(第1エネルギー供給設備)を優先して制御させるための条件である。
【数9】
【0089】
式(9)において、mは、1以上N以下の整数である。式(9)に示す制約条件の下では、以下に示す第1のパターン~第4のパターンを採り得る。
【0090】
[第1のパターン]
m番目のエネルギー供給設備12に対応するznが0であるとき、n番目のエネルギー供給設備12に対応するznは0となる。この場合、m番目のエネルギー供給設備12及びn番目のエネルギー供給設備12がいずれも出力制御されない。つまり、以下の通りとなる。
m番目のエネルギー供給設備12:zn=0(出力制御されない)。
n番目のエネルギー供給設備12:zn=0(出力制御されない)。
【0091】
[第2のパターン]
m番目のエネルギー供給設備12に対応するznが1であるとき、n番目のエネルギー供給設備12に対応するznは0又は1となる。この場合、少なくともm番目のエネルギー供給設備12が出力制御される。つまり、以下の通りとなる。
m番目のエネルギー供給設備12:zn=1(出力制御される)。
n番目のエネルギー供給設備12:zn=0(出力制御されない)又はzn=1(出力制御される)。
【0092】
[第3のパターン]
n番目のエネルギー供給設備12に対応するznが1であるとき、n番目のエネルギー供給設備12に対応するznは1となる。この場合、m番目のエネルギー供給設備12及びn番目のエネルギー供給設備12がいずれも出力制御される。つまり、以下の通りとなる。
m番目のエネルギー供給設備12:zn=1(出力制御される)。
n番目のエネルギー供給設備12:zn=1(出力制御される)。
【0093】
[第4のパターン]
n番目のエネルギー供給設備12に対応するznが0であるとき、m番目のエネルギー供給設備12に対応するznは0又は1となる。この場合、少なくともn番目のエネルギー供給設備12が出力制御されない。つまり、以下の通りとなる。
m番目のエネルギー供給設備12:zn=0(出力制御されない)又はzn=1(出力制御される)。
n番目のエネルギー供給設備12:zn=0(出力制御されない)。
【0094】
このように、式(9)に示す制約条件の下では、m番目のエネルギー供給設備12が出力制御される場合は、n番目のエネルギー供給設備12が出力制御されるか、或いはn番目のエネルギー供給設備12が出力制御されない。一方、m番目のエネルギー供給設備12が出力制御されない場合は、n番目のエネルギー供給設備12が出力制御されない。従って、n番目のエネルギー供給設備12及びm番目のエネルギー供給設備12のうちn番目のエネルギー供給設備12のみが出力制御されることはない。つまり、m番目のエネルギー供給設備12が出力制御されずに、n番目のエネルギー供給設備12が出力制御される状況が回避される。これにより、m番目のエネルギー供給設備12をn番目のエネルギー供給設備12よりも優先的に出力制御させることができる。その結果、一部のエネルギー供給設備12に制御負担が過度に大きくならないよう、全体のエネルギー供給設備12の稼働率又は利用率の平準化を図ることができる。
【0095】
上述した実施形態において、制約条件設定部53が、制御対象のエネルギー供給設備12の数を制約する制約条件として、式(4)~式(8)を設定する場合について説明した。しかし、制御対象のエネルギー供給設備12の数を制約する制約条件は、上述した式(6)~式(8)に示す条件に限られず、以下の式(11)~式(13)に示す条件であってもよい。この場合、目的関数として式(10)が設定される。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【0096】
式(11)~式(13)において、pは、N個のエネルギー供給設備12のうちの制御対象のエネルギー供給設備12を示す選択パターンを示しており、Pは、選択パターンpの選択パターンpの総数(1以上の整数)を示している。従って、選択パターンpは、1以上P以下の整数で表される。例えば、選択パターンpが1(選択パターン1)であるとき、1番目のエネルギー供給設備12と2番目のエネルギー供給設備12と3番目のエネルギー供給設備12とを制御対象のエネルギー供給設備12としてよい。選択パターンpが2(選択パターン2)である場合、4番目のエネルギー供給設備12と5番目のエネルギー供給設備12とを制御対象のエネルギー供給設備12としてよい。このように、制御対象のエネルギー供給設備12の数は、選択パターンpごとに異なっていてもよい。
【0097】
wpは、選択パターンpを決定するためのバイナリ決定変数である。式(13)に示すように、wpは、0又は1で表され、選択パターンpごとに決定される。例えば、w1が0に設定され且つw2が1に設定される場合、選択パターン1は選択されず、選択パターン2が選択されることを意味する。式(12)は、いずれか一つの選択パターンpが選択されることを示している。式(11)において、δpnは、選択パターンpが選択されたときにn番目のエネルギー供給設備12が制御対象であるか否かを示す定数である。δpnは、0又は1で表され、選択パターンpに応じて事前に定められる。
【0098】
例えば、非制御対象のエネルギー供給設備12に対応するδpnは、全て0に設定され、制御対象のエネルギー供給設備12に対応するδpnは、全て1に設定される。その結果、δpnが1に設定されるエネルギー供給設備12の数(すなわち、制御対象のエネルギー供給設備12の数)は、全てのエネルギー供給設備12の総数から、δpnが0に設定されるエネルギー供給設備12の総数(すなわち、非制御対象のエネルギー供給設備12の総数)を差し引いた数となる。δpnが1に設定されるエネルギー供給設備12は、エネルギー供給設備12の運用状況に応じて決定される。
【0099】
式(11)に示すように、選択パターンpが選択された(wp=1)ときに、δpnが0である場合、すなわち、選択パターンpにおいてn番目のエネルギー供給設備12が制御対象でない場合、n番目のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqは0になる。この場合、最適化計算前後においてn番目のエネルギー供給設備12の出力値は変化しない。一方、選択パターンpが選択された(wp=1)ときに、δpnが1である場合、すなわち、選択パターンpにおいてn番目のエネルギー供給設備12が制御対象である場合、n番目のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqは-M以上且つ+M以下の範囲で決定される。この場合、n番目のエネルギー供給設備12の出力値は、算出された目標出力変化量Δxnqに応じた出力値に変化する。
【0100】
従って、式(11)では、選択パターンpが選択されたときに、δpnが1に設定されたn番目のエネルギー供給設備12のみが制御対象となる。従って、式(11)の下では、制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqのみが算出される。その結果、制御対象のエネルギー供給設備12の出力値が、算出された目標出力変化量Δxnqに応じた出力値に制御されることにより、全てのエネルギー供給設備12の出力配分が最適化される。
【0101】
このように、制約条件として式(11)~式(13)を用いた場合であっても、制御対象のエネルギー供給設備12の数が制約され、制御対象のエネルギー供給設備12の目標出力変化量Δxnqのみが算出される。すなわち、制御対象のエネルギー供給設備12の数を制約する制約条件として、式(11)~式(13)に示す条件を用いた場合であっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。更に、式(11)~式(13)に示す制約条件では、制御対象のエネルギー供給設備12を示す選択パターンpを選択可能とすることにより、エネルギー供給設備12の運用状況に応じてオペレータを適切に配備することができる。例えば、一人での出力制御が可能なエネルギー供給設備12であるのか、或いは複数人での出力制御が必要なエネルギー供給設備12であるのかに応じて選択パターンpを選択することで、エネルギー供給設備12に対するオペレータに割り振りを適切に行うことができる。
【0102】
上述した実施形態において、マイクログリッド10におけるエネルギー需要を示す情報は、運転支援装置50の外部の計測器31~38によって運転支援装置50に提供されている。しかし、エネルギー供給設備12の構成によっては、一部のエネルギー需要が、最適化部51における最適計算によって決定されることがある。例えば、エネルギー供給設備12として、水素需要に対する水電解装置が存在する場合、水電解装置を動かすための消費電力は、電力需要として制約条件に加味される。同様に、エネルギー供給設備12として、熱需要に対する電気ボイラが存在する場合、電気ボイラを動かすための消費電力は、電力需要として制約条件に加味される。
【0103】
上述した実施形態において、オペレータは、最適化計算によって算出された目標出力変化量Δxnqを、必ずしもエネルギー供給設備12の出力値に毎回反映する必要は無い。例えば、目標出力変化量Δxnqをエネルギー供給設備12の出力値に反映しても、コストなどの指標が僅かに下がるのみで、最適化計算による大きな改善効果が見込めない場合がある。このような場合、オペレータの操作負担を考慮すると、費用対効果の面で望ましくないことがある。そこで、最適化結果出力部56は、最適化計算による大きな改善効果が見込める場合にのみオペレータへの提示を行う処理(フィルタ処理)を行ってもよい。
【0104】
例えば、最適化の指標がコストである場合、最適化結果出力部56は、現在のエネルギー供給設備12の運転状況に応じたコストと、最適化計算によって求められるコスト(すなわち、目的関数の値)との差分が、或る閾値以下であるときは、オペレータへの最適化計算結果の提示を行わず、当該差分が当該閾値を超えたときに、オペレータへの最適化計算結果の提示を行ってもよい。
【0105】
最適化結果出力部56は、このようなフィルタ処理を行わない場合であっても、最適化計算によって算出された目標出力変化量Δxnqに加えて、最適化計算による改善効果(例えば、コストの低減効果)を、オペレータに提示してもよい。最適化計算による改善効果は、目的関数で示す最適化の指標と必ずしも一致しなくてもよい。例えば、最適化の指標が燃料使用量の最小化を示す一方、改善効果は、燃料使用量に燃料単価を乗算した燃料使用額の最適化前後における差額を示してもよい。
【0106】
上述した実施形態において、最適化計算によって算出される「目標出力値」が、目標出力変化量Δxnqである場合を例示した。しかし、「目標出力値」は、エネルギー供給設備12の出力値を制御可能な情報であればよく、例えば、最適化計算後のエネルギー供給設備12の出力値(すなわち、現在の出力値に目標出力変化量Δxnqを加算した値)であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
11A,11B エネルギー需要設備
12,22 エネルギー供給設備
12A,12C,22A,22B,22C エネルギー供給設備(対象エネルギー供給設備)
12B,22D,22E エネルギー供給設備(非対象エネルギー供給設備)
50 運転支援装置
51 最適化部
55 最適化計算部
56 最適化結果出力部
P1,P2,P3,P4,P5 出力部
Δxnq 目標出力変化量(目標出力値)